(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学部材を変位させて、配光パターン形成部上の前記第1照度領域及び前記第2照度領域の少なくとも一方の位置を変位させる光学部材変位部をさらに備える請求項1に記載の車両用灯具。
前記光源は、前記配光パターン形成部上に前記第1照度領域を形成する光を出射する第1光源と、前記配光パターン形成部上に前記第2照度領域を形成する光を出射する第2光源とを含み、
前記配光パターン形成部は、前記第1照度領域と重なる前記光学素子を用いて前記第1配光パターンを形成し、前記第2照度領域と重なる前記光学素子を用いて前記第2配光パターンを形成する請求項1又は2に記載の車両用灯具。
前記光学部材は、前記第1光源の光を前記配光パターン形成部に照射する第1光学部材と、前記第2光源の光を前記配光パターン形成部に照射する第2光学部材と、を含み、
前記第1光学部材を変位させて、配光パターン形成部上の前記第1照度領域の位置を変位させる第1光学部材変位部、及び前記第2光学部材を変位させて、配光パターン形成部上の前記第2照度領域の位置を変位させる第2光学部材変位部の少なくとも一方と、をさらに備える請求項3に記載の車両用灯具。
前記光源は、赤色レーザ光源と、緑色レーザ光源と、青色レーザ光源とを含み、各レーザ光源の出射強度を互いに独立に調節可能である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2は、実施形態1に係る車両用灯具の内部構造を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、
図1には車両用灯具1として一方の前照灯ユニットの構造を示す。
【0014】
車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、光源10と、光学部材20と、配光パターン形成部30と、光学部材変位部40と、投影レンズ50とが収容される。各部は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0015】
本実施形態の光源10は、レーザダイオード、固体レーザ、ガスレーザ等のレーザ装置で構成される。レーザ光は高輝度で指向性が高いため、光源10をレーザ装置で構成することで配光パターン形成部30上に後述する照度分布を形成しやすくすることができる。
図3は、光源の概略構造を示す断面図である。
図3に示すように、光源10は、青色レーザ光源102と、緑色レーザ光源104と、赤色レーザ光源106と、ヒートシンク110と、第1レンズ112〜第3レンズ116と、光インテグレータ120と、集光部200とを有する。
図3では、レーザダイオードで構成される青色レーザ光源102〜赤色レーザ光源106を例として示す。
【0016】
青色レーザ光源102は青色レーザ光Bを出射し、緑色レーザ光源104は緑色レーザ光Gを出射し、赤色レーザ光源106は赤色レーザ光Rを出射する。青色レーザ光源102〜赤色レーザ光源106は、共通の基板に搭載される。基板の裏面にはヒートシンク110が接続される。第1レンズ112〜第3レンズ116は、例えばコリメートレンズで構成される。第1レンズ112は青色レーザ光Bを平行光に変換し、第2レンズ114は緑色レーザ光Gを平行光に変換し、第3レンズ116は赤色レーザ光Rを平行光に変換する。
【0017】
集光部200は、青色レーザ光B、緑色レーザ光G及び赤色レーザ光Rを束ねて光インテグレータ120に導出する。集光部200は、第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206を有する。第1ダイクロイックミラー202は、青色レーザ光Bを光インテグレータ120に向けて反射する。第2ダイクロイックミラー204は、緑色レーザ光Gを光インテグレータ120に向けて反射し、青色レーザ光Bを透過させる。第3ダイクロイックミラー206は、赤色レーザ光Rを光インテグレータ120に向けて反射し、青色レーザ光B及び緑色レーザ光Gを透過させる。集光部200により、青色レーザ光B、緑色レーザ光G及び赤色レーザ光Rが束ねられ、この束ねられたRGBレーザ光は光インテグレータ120に向かう。光インテグレータ120は、光源10の筐体に設けられた開口101に嵌め合わされる。光インテグレータ120により、青色レーザ光B、緑色レーザ光G及び赤色レーザ光Rが混ぜ合わされて均質化され、白色レーザ光Wが生成される。白色レーザ光Wは、光インテグレータ120から光学部材20に向かう。
【0018】
青色レーザ光源102〜赤色レーザ光源106の各レーザ光源は、それぞれの出射強度を互いに独立に調節可能である。これにより、車両用灯具1は、所望の色のレーザ光を灯具前方に照射することができる。形成する配光パターンの種類に応じて、配光パターンを形成する光源光の色を異ならせることで、運転者が配光パターンを視認しやすくなる。すなわち、配光パターンの被視認性を高めることができ、運転者に注意喚起を促すことができる。
【0019】
光学部材20は、光源10から出射される光源光を配光パターン形成部30に照射するための部材である。本実施形態の車両用灯具1は、2つの光学部材20A,20Bを有する。光学部材20A及び光学部材20Bは、例えば平面ミラーで構成される。光学部材20A,20Bは、光学部材20Aが光源10から出射される光を光学部材20Bに向けて反射し、光学部材20Bが光学部材20Aで反射された光を配光パターン形成部30に照射するように、互いの位置関係が定められる。
【0020】
光学部材変位部40は、光学部材20A及び光学部材20Bを変位させる部材である。光学部材20Aに設けられる光学部材変位部40は、配光パターン形成部30に照射される光が灯具上下方向(例えば鉛直方向)に変位するように、光学部材20Aの反射面を変位させる。光学部材20Bに設けられる光学部材変位部40は、配光パターン形成部30に照射される光が灯具左右方向(例えば水平方向)に変位するように、光学部材20Bの反射面を変位させる。光学部材変位部40は、例えば光学部材20を支持するピボット機構と、当該ピボット機構に支持された光学部材20を揺動させる、ステッピングモータ等のアクチュエータとで構成することができる。なお、光学部材20A及び光学部材20Bはいずれか一方のみであってもよい。この場合、光学部材変位部40は、配光パターン形成部30に照射される光が灯具上下左右方向に変位するように、当該一方の光学部材を変位させる。
【0021】
配光パターン形成部30は、光源が出射する光源光を灯具前方に照射する状態(以下では適宜、「照射状態」という)と非照射とする状態(以下では適宜、「非照射状態」という)又は照射状態よりも灯具前方への照射量が少ない減光状態とを個別に切り替え可能な複数の光学素子が配列されてなる。本実施形態の配光パターン形成部30は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーアレイで構成される。MEMSミラーアレイの構造は公知であるため、その詳細な説明は省略する。配光パターン形成部30は、前記光学素子としてのマイクロミラーそれぞれへの給電のオン/オフの切り替えによって、配光パターン形成部30に照射される光を灯具前方に反射する照射状態と、光吸収材に向けて反射する非照射状態とを切り替えることができる。照射状態にあるマイクロミラーにより灯具前方に反射された光は、配光パターン形成部30の灯具前方側に配置される投影レンズ50に入射する。なお、マイクロミラーの単位時間当たりの、光源光を灯具前方に照射する状態の時間が最も長い状態を照射状態とし、次に長い状態を減光状態とし、最も短い状態を非照射状態とすることもできる。この場合、MEMSミラーアレイの各マイクロミラーは、照射状態、減光状態及び非照射状態をとることができるといえる。
【0022】
投影レンズ50は、例えば、前方側表面及び後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなり、投影レンズ50の後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ50は、その後方焦点が車両用灯具1の光軸上、且つ配光パターン形成部30の光出射面(マイクロミラーアレイの反射面)の近傍に位置するように配置される。
【0023】
光源10から出射される光は、光学部材20A及び光学部材20Bで反射されて、配光パターン形成部30のマイクロミラーアレイに照射される。ここで、光源光は、配光パターン形成部30上に分布をもって照射される。したがって、
図2に示すように、配光パターン形成部30上には、第1照度領域R1と、当該第1照度領域R1よりも照度の低い第2照度領域R2を含む所定の照度分布が形成される。本実施形態では、第1照度領域R1は、光源光が照射される領域であり、第2照度領域R2は光源光が実質的に照射されない領域である。例えば、第1照度領域R1及び第2照度領域R2は、次のようにして形成される。すなわち、光源10の第1レンズ112〜第3レンズ116、光インテグレータ120、集光部200、光学部材20A及び/又は光学部材20B等により、配光パターン形成部30のマイクロミラーアレイ全面を照射する程に光源光が拡散しないように、光源光の集光度(拡散度)が調節される。これにより、配光パターン形成部30に局所的に光源光が照射されて、第1照度領域R1と第2照度領域R2とが形成される。
【0024】
そして、配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーを用いて所定の配光パターンを形成するための光を灯具前方に照射する。第2照度領域R2と重なるマイクロミラーは、非照射状態とされる。ここで、配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーの一部を照射状態として配光パターンを形成するための光を灯具前方に照射するとともに、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーの残部を非照射状態として所定の配光パターン形状を形成することができる。車両用灯具1が形成する配光パターンについては、後に詳細に説明する。
【0025】
光源10が有する各レーザ光源の出射強度調節、光学部材変位部40の駆動、配光パターン形成部30の各マイクロミラーのオン/オフ制御は、制御部300により実行される。制御部300は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部300は、
図1では灯室3外に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部300は、撮像装置312に接続された画像処理装置310、ステアリングセンサ320、ナビゲーションシステム330、図示しないライトスイッチ等からの信号を受信する。そして、制御部300は、受信した信号に応じて、光源10、配光パターン形成部30、光学部材変位部40等に各種の制御信号を送信する。
【0026】
続いて、車両用灯具1による配光パターンの形成方法と形成される配光パターンの形状について説明する。
図4(A)、
図4(B)、
図5(A)及び
図5(B)は、実施形態1に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
図4(A)〜
図5(B)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
【0027】
図2に示すように、配光パターン形成部30上には、略楕円形状の第1照度領域R1が形成される。そして、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーが照射状態とされて、第1照度領域R1を形成する光が投影レンズ50を介して灯具前方に照射される。これにより、
図4(A)に示すように、略楕円形状のハイビーム用配光パターンPHが形成される。すなわち、第1照度領域R1とハイビーム用配光パターンPHとは略相似形状である。配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーのうち、周縁部に位置するマイクロミラーを非照射状態として、ハイビーム用配光パターンPHの輪郭を明瞭化する等の処理を実施してもよい。ハイビーム用配光パターンPHの形状は公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0028】
また、車両用灯具1は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーの一部を照射状態とし、残部を非照射状態とすることで、所望の形状の配光パターンを形成することができる。例えば、
図4(B)に示すように、水平線Hより上方且つ左側に光照射領域を有し、右側に遮光領域が形成された、いわゆる左片ハイ用配光パターンPHLを形成することができる。また、左片ハイ用配光パターンPHLに限らず、右片ハイ用配光パターンやロービーム用配光パターン、水平線Hより上方の中央部に遮光領域を有し、この遮光領域の水平方向両側に光照射領域を有する、いわゆるスプリット配光パターン等も形成することができる。
【0029】
また、
図5(A)に示すように、車両用灯具1は、ハイビーム用配光パターンPHにおける他車両や歩行者と重なる領域に、遮光領域Sを形成することができる。これにより、他車両や歩行者にグレアを与えるおそれの低減と、運転者の視認性の向上との両立を図ることができる。
図5(A)では、対向車と重なる位置に遮光領域Sが形成されたハイビーム用配光パターンPHを図示している。遮光領域Sは、例えば次のようにして形成することができる。
【0030】
すなわち、画像処理装置310は、カメラ等の撮像装置312で撮像された画像データを取得し、画像処理を施す。これにより、画像処理装置310は、画像データ中に含まれる車両や歩行者を特定し、これらの位置を検出する。車両や歩行者を特定する技術や位置を検出する技術は公知であるため説明を省略する。検出された車両や歩行者の位置情報は制御部300に送られる。制御部300は、車両や歩行者の位置情報を用いて、ハイビーム用配光パターンPHにおける車両や歩行者の存在位置に遮光領域Sを形成するよう、配光パターン形成部30を制御する。配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーのうち、遮光領域Sに対応するマイクロミラーを非照射状態とする。これにより、ハイビーム用配光パターンPH中に遮光領域Sが形成される。
【0031】
また、
図5(B)に示すように、車両用灯具1は、形成した配光パターンを例えば走行する道路の形状に合わせて変位させることができる。これにより、運転者の視認性を向上させることができる。例えば、車両前方の道路形状が曲線である場合、ハイビーム用配光パターンPHの照射方向が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先(出口方向)を向くように、ハイビーム用配光パターンPHを変位させる。このような配光パターンの変位は、例えば次のようにして実施することができる。
【0032】
すなわち、ステアリングセンサ320は、車両の操舵角情報を制御部300に送る。制御部300は、ステアリングセンサ320から得た操舵角に応じて光学部材変位部40の駆動を制御し、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1を変位させる。
図5(B)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHを水平方向に変位させる場合、制御部300は、光学部材20Bを変位させる光学部材変位部40を制御して、光学部材20Bを回動させることで第1照度領域R1を水平方向に変位させる。あるいは、制御部300は、ナビゲーションシステム330から得られる車両前方の道路形状情報を用いて、第1照度領域R1を変位させてもよい。
【0033】
また、車両用灯具1は、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に示すような、各種の情報表示用配光パターンP1〜P3を形成することができる。
図6(A)〜
図6(C)は、実施形態1に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
図6(A)〜
図6(C)において、(i)は灯具前方の様子を示し、(ii)は配光パターン形成部30のマイクロミラーアレイを示す。
図6(A)〜
図6(C)の各(ii)に示すように、情報表示用配光パターンP1〜P3を形成する場合、配光パターン形成部30に照射される光の集光度が、上述したハイビーム用配光パターンPH等を形成する場合に比べて高く設定される。これにより、配光パターン形成部30上には、より面積の小さい第1照度領域R1が形成される。また、制御部300は、光学部材20A,20Bに接続される光学部材変位部40を制御して、情報表示用配光パターンP1〜P3に対応する配光パターン形成部30上の位置に、第1照度領域R1を移動させる。
【0034】
そして、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーのうち、情報表示用配光パターンP1〜P3の形状と重なるマイクロミラーを照射状態とし、残りのマイクロミラーを非照射状態とする。これにより、灯具前方に情報表示用配光パターンP1〜P3が形成される。情報表示用配光パターンP1〜P3を形成することで、運転者の走行を支援することができる。また、制御部300は、形成する配光パターンの種類に応じて、青色レーザ光源102〜赤色レーザ光源106の出射強度を調整する。例えば、情報表示用配光パターンP1〜P3を形成する場合は、赤色や黄色、青色、緑色等の白色以外のレーザ光を光源10から出射させる。これにより、情報表示用配光パターンP1〜P3の被視認性を高めることができる。
【0035】
車両用灯具1は例えば、
図6(A)に示すように、自車前方の交差点等において自車両が進むべき方向を指し示す、矢印形状の情報表示用配光パターンP1を形成することができる。この場合、例えばナビゲーションシステム330に登録された走行ルート情報が制御部300に送られ、制御部300は、この情報をもとに自車両が進むべき方向を取得して、配光パターン形成部30が形成すべき情報表示用配光パターンP1の形状を決定することができる。
【0036】
また、車両用灯具1は例えば、
図6(B)に示すように、目的地や次に右左折すべき交差点といった所定の地点までの距離等を示す、数字形状の情報表示用配光パターンP2を形成することができる。この場合、例えばナビゲーションシステム330に登録された走行ルート情報が制御部300に送られ、制御部300は、この情報をもとに所定の地点までの距離情報を取得して、配光パターン形成部30が形成すべき情報表示用配光パターンP2の形状を決定することができる。なお、情報表示用配光パターンP2は、例えば外気温や燃料残量、走行道路の制限速度、前走車との車間距離等の数値であってもよい。
【0037】
また、車両用灯具1は例えば、
図6(C)に示すように、車両前方に歩行者等の障害物が存在することを運転者に報知するための情報表示用配光パターンP3を形成することができる。この場合、例えば画像処理装置310から歩行者等の障害物の位置情報が制御部300に送られ、制御部300は、この情報をもとに障害物の存在位置の近傍に情報表示用配光パターンP3を形成することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、照射状態と非照射状態とを個別に切り替え可能な複数の光学素子が配列されてなる配光パターン形成部30と、高照度の第1照度領域R1と低照度の第2照度領域R2を含む所定の照度分布が配光パターン形成部30上に形成されるよう配光パターン形成部30に光源光を照射する光学部材20とを備える。そして、配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なる光学素子を用いて所定の配光パターンを形成するための光を灯具前方に照射し、第2照度領域R2と重なる光学素子を非照射状態とする。
【0039】
すなわち、車両用灯具1は、配光パターンの形成に用いられない光学素子への照射光量を、配光パターンの形成に用いられる光学素子に比べて低く抑えている。これにより、配光パターンの形成に用いられない光学素子にも配光パターンの形成に用いられる光学素子と同量の光を照射し、この光を光吸収材に吸収させることで灯具前方への照射を回避して所望の配光パターンを形成していた従来の車両用灯具に比べて、配光パターンの形成に利用されない光の量を減らすことができる。したがって、本実施形態の車両用灯具1によれば、車両用灯具における光利用率の向上を図ることができる。
【0040】
また、配光パターンの形成に用いる光学素子への光照射量を増大させることができるため、配光パターンの照度をより高めることができる。よって、運転者の視認性をより高めることができる。また、光源に要求される輝度を下げることができるため、光源の選択自由度を高めることができる。また、車両用灯具1は、複数の光学素子を備える配光パターン形成部30を備えるため、配光パターンの形状を自在に変化させることができる。したがって、形成可能な配光パターンのバリエーションを増やすことと光利用効率の向上との両立を図ることができる。なお、第1照度領域R1と重なるマイクロミラーの一部のオン/オフ制御のデューティ比を制御して単位時間当たりの非照射状態の時間を長くし、灯具前方への照射光量を低減して(すなわち、上述した減光状態として)、形成する配光パターン中に低照度領域を形成してもよい。これにより、形成可能な配光パターンのバリエーションを増やすことができる。
【0041】
また、車両用灯具1は、光学部材変位部40により光学部材20を変位させて、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1を変位させる。これにより、灯具前方に照射される配光パターンを変位させることができるため、運転者の視認性をより向上させることができる。また、従来の車両用灯具では、灯具全体をスイブルやレベリングすることで配光パターンを変位させていた。これに対し、本実施形態では、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1の変位によって、配光パターンの変位を実現している。したがって、本実施形態によれば、灯具のスイブル機構やレベリング機構を省略することができるため、車両用灯具の構造の簡略化や製造コストの削減を図ることができる。
【0042】
また、光学部材変位部40は、
図1及び
図2に示すように、光学部材20(図では光学部材20B)の光軸Oを変位させている。これにより、光軸Oと配光パターン形成部30とが重なる位置Cが、配光パターン形成部30上で変位する。光学設計上、光学部材20は、照度の高い第1照度領域R1は光学部材20の光軸Oに近い領域で形成し、照度の低い第2照度領域R2は光軸Oから離間した領域で形成するように設計される。この場合の第2照度領域R2は、照度が実質的に0ではなく、ある程度の明るさをもつ領域とする。仮に、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1及び第2照度領域R2の位置を固定した状態で、照射状態をとらせる光学素子の領域を変位させて配光パターンを変位させる場合、照射状態をとる光学素子群が、第1照度領域R1から外れてしまうことがある。この場合、高照度の第1照度領域R1の光が配光パターン形成に利用されないため、光利用率が低下するとともに、低照度の第2照度領域R2の光を用いて配光パターンを形成するため配光パターンの照度が低下する。これに対し本実施形態では、光学部材変位部40が、光軸Oと配光パターン形成部30が重なる位置Cを、配光パターンの変位に合わせて移動させるため、配光パターンを変位させる場合により多くの第1照度領域R1の光を用いて配光パターンを形成することができる。よって、光利用率の向上と配光パターンの照度低下抑制とを図ることができる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具は、2つの光源と、当該2つの光源のそれぞれに対応する光学部材とを備える点を除き、実施形態1に係る車両用灯具1の構成と概ね共通する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明及び図示は適宜省略する。
図7は、実施形態2に係る車両用灯具の内部構造を模式的に示す鉛直断面図である。
図8は、実施形態2に係る車両用灯具の内部構造を模式的に示す斜視図である。
図9(A)、
図9(B)、
図10(A)及び
図10(B)は、実施形態2に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
【0044】
本実施形態に係る車両用灯具1は、光源10として、第1光源10Aと、第2光源10Bとを含む。また、光学部材20として、第1光学部材20Cと、第2光学部材20Dとを含む。第1光源10Aは、配光パターン形成部30上に第1照度領域R1を形成する光を出射する。第2光源10Bは、配光パターン形成部30上に第2照度領域R2を形成する光を出射する。第1光学部材20Cは、第1光源10Aの光を配光パターン形成部30に照射する。第2光学部材20Dは、第2光源10Bの光を配光パターン形成部30に照射する。そして、配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なる光学素子を用いて所定の第1配光パターンを形成するための光を灯具前方に照射し、第2照度領域R2と重なる光学素子を用いて第1配光パターンよりも照度の低い第2配光パターンを形成するための光を灯具前方に照射する。したがって、本実施形態では、第2照度領域R2は、照度が実質的に0でなく、第1照度領域R1よりも少量の光が照射されてなる領域である。
【0045】
本実施形態では、
図9(A)に示すように、車両用灯具1が形成するハイビーム用配光パターンPHは、水平線Hと鉛直線Vとの交点である消失点近傍(いわゆるホットゾーン)を照射する集光パターンPH1と、集光パターンPH1より照度が低くより広い範囲を照射する拡散パターンPH2とで構成される。集光パターンPH1は、第1照度領域R1の光で形成される高照度の第1配光パターンに対応し、拡散パターンPH2は、第2照度領域R2の光で形成される低照度の第2配光パターンに対応する。この場合、第1照度領域R1を形成する第1光源10Aは、高輝度のレーザ光を出射するレーザ光源で構成されることが好ましい。また、第2照度領域R2を形成する第2光源10Bは、指向性は低いが光量の多い発光ダイオード(LED)で構成されることが好ましい。本実施形態では、第1光源10Aがレーザ光源で構成され、第2光源10BがLEDで構成される。また、第1光学部材20Cは、例えば平面ミラーで構成され、第2光学部材20Dは曲面ミラーで構成される。
【0046】
また、
図9(B)に示すように、本実施形態の車両用灯具1でも実施形態1と同様に、ハイビーム用配光パターンPHにおける他車両や歩行者と重なる領域に遮光領域Sを形成することができる。この場合、配光パターン形成部30は、第1照度領域R1と重なるマイクロミラー及び第2照度領域R2と重なるマイクロミラーのうち、遮光領域Sに対応するマイクロミラーを非照射状態とする。これにより、遮光領域Sが形成される。
【0047】
また、車両用灯具1は、第1光学部材変位部40Aと、第2光学部材変位部40Bとを有する。第1光学部材変位部40Aは、第1光学部材20Cを変位させて、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1の位置を変位させる。第2光学部材変位部40Bは、第2光学部材20Dを変位させて、配光パターン形成部30上の第2照度領域R2の位置を変位させる。第1光学部材変位部40A及び第2光学部材変位部40Bは、配光パターン形成部30に照射される光が灯具左右方向に変位するように、第1光学部材20C、第2光学部材20Dを変位させる。第1光学部材変位部40Aと第2光学部材変位部40Bとは、第1照度領域R1の位置と第2照度領域R2の位置とを互いに独立に変位させることができる。これにより、配光パターンのバリエーションを増やすことができ、運転者の視認性をより向上させることができる。なお、第1光学部材変位部40A及び第2光学部材変位部40Bは、第1照度領域R1及び第2照度領域R2を灯具上下方向に変位可能であってもよい。
【0048】
第1光学部材変位部40A及び第2光学部材変位部40Bにより、車両用灯具1は、例えば走行する道路の形状に合わせて配光パターンを変位させることができる。このとき車両用灯具1は、
図10(A)に示すように、集光パターンPH1及び拡散パターンPH2の位置関係を維持したまま、ハイビーム用配光パターンPH全体を変位させることも、
図10(B)に示すように、集光パターンPH1のみを変位させることもできる。もちろん、拡散パターンPH2のみを変位させることもできる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具1は、照度の高い集光パターンPH1を、配光パターン形成部30上の照度の高い第1照度領域R1で形成し、照度の低い拡散パターンPH2を、配光パターン形成部30上の照度の低い第2照度領域R2で形成して、ハイビーム用配光パターンPHを完成させている。このため、配光パターン形成部30上に略均一の照度領域を形成し、言い換えれば配光パターン形成部30に第1照度領域R1のみを形成し、第1照度領域R1と重なる光学素子の一部で集光パターンPH1を形成するとともに、残りの光学素子のオン/オフ制御のデューティ比を制御して単位時間当たりの非照射状態の時間を長くし、灯具前方への照射光量を低減して拡散パターンPH2を形成する場合に比べて、光利用率を向上させることができる。なお、第2照度領域R2と重なる光学素子の全部又は一部のオン/オフ制御のデューティ比を制御して単位時間当たりの照射状態の時間を第1照度領域R1と重なるマイクロミラーよりも短くすることで(すなわち、上述した減光状態とすることで)、より照度の低い拡散パターンPH2や、部分的に低照度領域を有する拡散パターンPH2を形成することができる。この場合であっても、光利用率を向上させることができる。
【0050】
また、車両用灯具1は、第1照度領域R1用の第1光源10Aと、第2照度領域R2用の第2光源10Bとを備える。このため、照度の異なる2つの照度領域を、配光パターン形成部30上により簡単に形成することができる。なお、本実施形態の車両用灯具1には、
図6(A)〜
図6(C)に示す情報表示用配光パターンP1〜P3を形成するための光源がさらに設けられてもよい。あるいは、第1光源10Aで情報表示用配光パターンP1〜P3を形成してもよい。情報表示用配光パターンP1〜P3を形成するために、配光パターン形成部30上に高照度領域(第1照度領域R1)を形成するこれらの光源は、
図3に示すように、青色レーザ光源102、緑色レーザ光源104及び赤色レーザ光源106を含み、各レーザ光源の出射強度を互いに独立に調節可能であることが好ましい。
【0051】
第1光源10Aで情報表示用配光パターンP1〜P3を形成する場合、第2光源10Bと第2光学部材20Dとで集光パターンPH1用の第1照度領域R1と、拡散パターンPH2用の第2照度領域R2とを形成することができる。また、実施形態1の車両用灯具1においても、光学部材20A,20Bの反射面形状を調整することで、配光パターン形成部30上に第1照度領域R1と、照度が実質的に0でない第2照度領域R2を形成することができる。
【0052】
(実施形態3)
実施形態3に係る車両用灯具は、配光パターン形成部が液晶シャッタである点を除き、実施形態1又は2に係る車両用灯具1の構成と概ね共通する。実施形態1又は2と同様の構成については同一の符号を付し、その説明及び図示は適宜省略する。
図11(A)は、実施形態3に係る車両用灯具の内部構造を模式的に示す鉛直断面図である。
図11(B)は、実施形態3に係る車両用灯具の内部構造を模式的に示す斜視図である。
【0053】
本実施形態の車両用灯具1は、光源10として、第1光源10Aと、第2光源10Bとを含む。また、光学部材20として、第1光学部材20Cと、第2光学部材20Dとを含む。第1光源10Aは、配光パターン形成部30上に、情報表示用配光パターンP1〜P3を形成するための第1照度領域R1aを形成する光を出射する。第2光源10Bは、配光パターン形成部30上にハイビーム用配光パターンPHの集光パターンPH1を形成するための第1照度領域R1bと拡散パターンPH2を形成するための第2照度領域R2とを形成する光を出射する。第1光学部材20Cは、第1光源10Aの光を配光パターン形成部30に照射する。第2光学部材20Dは、第2光源10Bの光を配光パターン形成部30に照射する。本実施形態では、第1光源10Aがレーザ光源で構成され、第2光源10BがLEDで構成される。また、第1光学部材20C及び第2光学部材20Dは、ともに曲面ミラーで構成される。第1光源10Aは、青色レーザ光源102、緑色レーザ光源104及び赤色レーザ光源106を含み、各レーザ光源の出射強度を互いに独立に調節可能である。
【0054】
また、車両用灯具1は、第1光学部材20Cを変位させて、配光パターン形成部30上の第1照度領域R1aの位置を変位させる第1光学部材変位部40Aを有する。第1光学部材変位部40Aは、配光パターン形成部30に照射される光が灯具左右方向及び上下方向に変位するように、第1光学部材20Cを変位させることができる。なお、第2光学部材20Dにも光学部材変位部が設けられてもよいし、第2光学部材20Dのみに光学部材変位部が設けられてもよい。
【0055】
本実施形態の配光パターン形成部30は、液晶シャッタで構成され、光源光の進路上であって第1光学部材20C及び第2光学部材20Dと投影レンズ50との間に配置される。したがって、配光パターン形成部30には、灯具後方側から光源光が入射される。配光パターン形成部30は、液晶の偏光方向とレーザ光の偏光方向とが揃うように配置される。これにより、光の利用効率を向上させることができる。配光パターン形成部30は、前記光学素子としての液晶素子それぞれにおける光の透過量を変化させることで、照射状態、非照射状態、及び照射状態よりも灯具前方への照射量が少ない減光状態を個別に切り替え可能である。液晶シャッタの構造は公知であるため、その詳細な説明は省略する。配光パターン形成部30は、照射状態及び減光状態にある液晶素子により、第1光学部材20C及び第2光学部材20Dから当該液晶素子に照射される光を灯具前方に透過させる。この透過光は、配光パターン形成部30の灯具前方側に配置される投影レンズ50に入射する。
【0056】
このように、配光パターン形成部30として液晶シャッタを用いる場合であっても、実施形態1及び2と同様に配光パターンを形成することができ、同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態の車両用灯具1において、光源10、光学部材20及び光学部材変位部40の構成は、
図11(A)及び
図11(B)に図示されたものに限られず、実施形態1又は2の構成を採用することができる。また、実施形態1及び2に、実施形態3の構成を採用してもよい。
【0057】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述した各実施形態同士の組み合わせ、及び上述した各実施形態と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0058】
上述した各実施形態において、投影レンズ50に代えてリフレクタが設けられてもよい。また、複数枚の投影レンズ50が設けられてもよい。また、車両用灯具1は、ミラーで構成される光学部材20A〜20Dを備えなくてもよい。この場合、例えば光源10にレーザ光を集光させる等の光学機能を有するレンズを設け、あるいは光インテグレータ120にこのような光学機能を持たせて、このレンズや光インテグレータ120を光学部材20とすることができる。このレンズや光インテグレータ120を光学部材20として用いる場合、光学部材変位部40は、例えば光源10全体を変位させることでレンズや光インテグレータ120を変位させる。ただし、一般に光源10には放熱フィン等が配置され比較的大型であるため、ミラーで構成される光学部材20A〜20Dを変位させる構成とした方が、車両用灯具1の構造の簡略化を図りやすい。光源10と光学部材20の間や、光学部材20と配光パターン形成部30の間に、集光光学系が設けられてもよい。
【0059】
実施形態2において、配光パターン形成部30上の第2照度領域R2の外側に光源光が照射されない領域が存在するが、第1照度領域R1を除く領域が全て第2照度領域R2であってもよい。そして、第2照度領域R2と重なる光学素子のうち、拡散パターンPH2に対応する光学素子のみを照射状態及び又は減光状態とし、他の光学素子を非照射状態としてもよい。この場合であっても、配光パターン形成部30上に第1照度領域R1のみを形成し、第1照度領域R1と重なる光学素子を用いて拡散パターンPH2を形成する場合に比べて、車両用灯具1の光利用率を向上させることができる。上述した各実施形態において、光源としては、青色や紫外領域の波長のレーザ光を照射するレーザ光源と、このレーザ光の照射によりレーザ光の波長よりも長波長の光を蛍光発光する蛍光部材とを組み合わせてなる高輝度光源を用いてもよい。