【実施例1】
【0020】
図1ないし
図3は、本発明の実施例1による工作機械用テーブル装置を説明するための図である。
【0021】
図において、1は本実施例のテーブル装置2を取り付けた門形の5面加工機を示している。
【0022】
この5面加工機1は、5面加工を連続して行なうことが可能な複合型の工作機械であり、設置面に固定されたベッド5と、該ベッド5上にY軸方向に移動可能に搭載された矩形状の移動テーブル6と、前記ベッド5を跨ぐように配設された門形のコラム7と、該コラム7の機械正面側の壁面にX軸方向に移動可能に搭載されたサドル8と、該サドル8にZ軸方向に移動可能に挿入されたラム9と、該ラム9の下端部に装着された旋回・割り出し機能を有する主軸ヘッド10とを備えている。
【0023】
前記コラム7は、左,右一対の垂直コラム部材7a,7aと、該左,右のコラム部材7aの上面に架設されたクロスレール7bとを有する。このクロスレール7bには、前記サドル8を移動自在に支持する上,下一対のガイドレール11,11及び前記サドル8を駆動制御するボールネジ送り機構(不図示)が配設されている。
【0024】
また前記主軸ヘッド10は、縦主軸10aと横主軸10bとを備えている。この各主軸10a,10bには、工具(不図示)が着脱可能に装着されており、各工具は、ワーク加工が終了すると、工具自動交換装置(不図示)により次工程の工具に交換される。
【0025】
前記テーブル装置2は、ワーク(不図示)が載置される円形状のテーブル本体13と、該テーブル本体13をテーブル中心軸C回りに回転可能に支持するベース部材15と、前記テーブル本体13を回転駆動する駆動機構16とをユニット化した構造を有する。そして、このユニット化したテーブルユニット2′は、前記5面加工機1の移動テーブル6上に着脱可能に搭載されており、詳細には、以下の構造を有する。
【0026】
前記テーブル本体13は、直径Dが1500〜3000mm、高さhが200mm程度の大きさを有する。また前記ベース部材15を含めた全体の高さHは400mm程度に設定されている。
【0027】
前記テーブル本体13のワーク載置面13aの反対側裏面には、これの外周面近傍まで広がる大きさの円形凹部13bが形成されており、該円形凹部13b内に前記ベース部材15が配置されている。
【0028】
前記駆動機構16は、ダイレクトドライブ型のビルトインサーボモータ16′により構成されている。このビルトインサーボモータ16′は、テーブル中心軸Cと同軸をなし、前記テーブル本体13に固定されたロータ16aと、該ロータ16aに対向するよう前記ベース部材15に固定されたステータ16bとを有する。これによりテーブル本体13を、タイミングベルト機構や減速ギヤ機構を介することなく直接回転駆動する。
【0029】
前記ロータ16aは、リング形状のロータ支持ブロック20の外周面に取り付けられている。このロータ支持ブロック20は、円形凹部13に固定されている。
【0030】
また前記ステータ16bは、前記ベース部材15に固定されたリング形状のステータ支持ブロック21の内周面に取り付けられている。
【0031】
前記ビルトインサーボモータ16′により前記テーブル本体13は、所定の角度に割り出し位置決め可能に、かつ旋削加工が可能な回転数,例えば50〜150rpmに回転駆動される。
【0032】
ここで、ビルトインサーボモータ16′を採用した場合には、その出力からして発熱し易く、この発熱の如何によってはテーブル本体13に熱変位が生じる懸念がある。そこで、ロータ支持ブロック20及びステータ支持ブロック21にそれぞれロータ16a,ステータ16bを囲むように冷却ジャケット(不図示)を形成し、該冷却ジャケットに冷却液を循環させることでモータ全体を冷却することが好ましい。
【0033】
またビルトインサーボモータ16′を採用したことにより、前述のようにテーブルユニット2′の高さHは400mm程度と、従来の一般的なテーブル高さの1/2以下となっている。これによりZ軸ストロークのさらなる有効利用が可能となる。
【0034】
前記テーブル本体13は、クロスローラベアリング24を介して前記ベース部
材15により回転自在に支持されている。
【0035】
前記クロスローラベアリング24は、テーブル中心軸Cと同軸をなし、かつビルトインサーボモータ16の外方を囲むように配設されており、前記テーブル本体13に固定された外輪24aと、前記ベース部材15に固定された内輪24bとの間に多数の円筒形コロ24cを配置した構造を有する。
【0036】
ここで、クロスローラベアリング24の発熱対策としては、内輪24b側を冷却することで内部圧力の上昇を防止することが有効であり、そのためには軸心冷却・潤滑方式を採用するのが好ましい。
【0037】
前記ベース部材15には、前記テーブル本体13を所定の割り出し位置にクランプする複数のクランプ機構25が周方向に所定間隔をあけて配設されている。
【0038】
このクランプ機構25は、有底筒状のシリンダ25a内にピストン25bを軸方向に進退可能に挿入し、該ピストン25bとシリンダ25aの底部との間に油圧室25cを設けるとともに、前記ピストン25bを後退方向に付勢するばね25dを配設した構造を有する。
【0039】
前記シリンダ25aは、前記ベース部材15の半径方向外端部に固定されており、前記ピストン25bの先端面は、前記テーブル本体13の円形凹部13bの内周面13cに当接可能に対向している。
【0040】
前記油圧室25cに油圧が供給されると、ピストン25bが突出してテーブル本体13を押圧することで回転不能にクランプする。油圧が解放されるとばね25dの付勢力によりピストン25bが後退することでアンクランプ状態となる。
【0041】
ここで、図示していないが、油圧供給源は、エアハイドロブースターと油圧タンクとで構成されており,これらは前記ベース部材15に内蔵されている。またテーブル本体13のクランプ,アンクランプは、不図示のスイッチのオン,オフにより検出している。
【0042】
また前記テーブル本体13をクランプした状態で、旋削加工を行なう場合には、旋削用工具の回り止めを行なう必要がある。このため主軸ヘッド10に回り止めの固定キーを追加することとなるが、固定キーを追加するだけで済むことから、構造の複雑化を回避しつつ回り止めを行なうことができる。
【0043】
本実施例によれば、ワークが載置されるテーブル本体13と、該テーブル本体13を回転可能に支持するベース部材15と、前記テーブル本体13を回転駆動するビルトインサーボモータ16とでテーブルユニット2′を構成し、該テーブルユニット2′を前記5面加工機1の移動テーブル6に着脱可能に搭載したので、予め組み立てておいたテーブルユニット2′をそのまま移動テーブル6に取り付けることができ、従来の一体型のものに比較して組み付け構造及び工数を大幅に低減でき、ひいては機械全体の価格を抑えることができる。
【0044】
また前記テーブルユニット2′を、既存の5面加工機や門形立型マシニングセンタにそのまま付加することもでき、このようにした場合には、安価にかつ場所をとることなくNCターニング盤の機能を得ることができ、特に設備費,設置スペースに制約のある中小企業における活性化に貢献することができる。
【0045】
本実施例では、前記ビルトインサーボモータ16により、前記テーブル本体13を割り出し位置決め可能に、かつ旋削加工が可能な回転数に回転駆動したので、ワークを移動させることなく、1台の5面加工機や門形立型マシニングセンタ1で割り出しミーリング加工と旋削加工との両方を行なうことができる。これにより作業効率を高めることができ、納期,コスト面での競争力を強めることができ、さらには旋削加工を行なうための加工機の設置を不要にできる。
【0046】
本実施例では、駆動機構16をビルトインサーボモータ16′により構成したので、1台のモータで割り出し位置決めと、旋削加工に必要な50〜150rpmの回転数に駆動することができ、モータ冷却構造とあいまって、直径が1500〜3000mmの大型のテーブル本体13であっても加工精度を確保しつつ、旋削加工を可能にできる。また1台のモータで済むことから、前述の従来公報のように2台のモータを用いる場合に比べてコストを低減できるとともに、装置全体を小型化できる。
【0047】
本実施例では、前記テーブル本体13をクロスローラベアリング24により回転自在に支持したので、ラジアル荷重、スラスト荷重およびモーメント荷重に対する必要な強度,剛性を確保でき、大型でかつ重量物であるテーブル本体13の支持剛性を高めることができ、ベアリング冷却構造とあいまって、該テーブル本体13を高速で回転駆動する際の変位を防止することができる。
【0048】
本実施例では、前記ベース部材15にテーブル本体13を所定の割り出し位置にクランプするクランプ機構25を設けたので、ワーク加工時における加工精度を確保することができる。