【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ミリ波を用いたトラフィックストリーム、並びに、現在のMCS値、及び当該トラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を送信する少なくとも1つの無線局と、前記無線局が前記トラフィックストリームを送信するためのスケジューリングを行う無線通信装置と、を備えた無線通信システムにおける前記無線通信装置が行う無線通信方法であって、
各無線局が送信した、現在のMCS値、及び当該無線局が送信するトラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信したQoS要求に基づいて、前記少なくとも1つの無線局が送信する複数のトラフィックストリームの各送信時間を定期的に割り当てる周期を設定し、各周期における前記複数のトラフィックストリームの隣り合う送信時間の間に間隔を設けたスケジュールを生成するスケジュール生成ステップと、
前記スケジュール生成ステップで生成したスケジュールを報知信号で前記無線局に送信する送信ステップと、
を有することを特徴とする無線通信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、例えばIEEE Std 802.11eに準拠したマイクロ波通信における、複数のリアルタイム性トラフィックストリームに適用したスケジューリング方法が開示されている。特許文献1に記載されたスケジューリング方法では、複数のトラフィックストリームに対して一様の周期(いわゆる「サービス間隔SI」)を割り当てる。当該方法はマイクロ波通信に対しては有効であるが、非特許文献1に示すIEEE Std 802.11ad等に準拠したミリ波通信に適用すると、通信のサービス品質が低下する可能性がある。
【0007】
ミリ波通信の通信品質は、通信距離への依存性が高い。つまり、通信距離の変化による通信品質への影響が大きい。そのため、通信距離の変化に応じてMCS(Modulation and Coding Scheme)を頻繁に変化させる可能性が高い。MCSの変化によって変調方式及び符号化方式が変わるため、伝送速度及び伝送に必要な送信時間も変わる。したがって、ミリ波通信のサービス品質を確保するためには、PCPが計画したスケジュールを迅速に変更しなければならない場合があり得る。
【0008】
図13(a)及び
図13(b)に示す例では、特許文献1に記載されたスケジューリング方法に従って、2つのトラフィックストリームに対し一様のサービス間隔(SI)が割り当てられている。また、各トラフィックストリームには、周期毎の入力されたアプリケーションのデータの量と当該データの伝送速度の割り算によって各々決定されるサービス時間(TXOP(Transmission Opportunity))が割り当てられる。
図13(a)は、PCPが生成した最初のスケジュールを示す図である。最初のスケジュールでは、第1のトラフィックストリームにはサービス時間TXOP1が割り当てられ、第2のトラフィックストリームにはサービス時間TXOP2が割り当てられている。しかし、MCSの変更によって、第1のトラフィックストリームに割り当てるサービス時間を、
図13(b)に示すように、「TXOP1+TXOP1e」に拡張しなければならない場合があり得る。
【0009】
マイクロ波通信の場合、変更したスケジュールをアクセスポイントが報知できるのは次のビーコン周期からであるが、ミリ波通信では「Pseudo-Static帯域」と呼ばれる技術を用いているため、変更したスケジュールをPCPが報知できるまでには一定の時間(例えば、数ビーコン周期)が必要となる。つまり、ミリ波通信の場合には、
図13(a)に示すスケジュールから
図13(b)に示すスケジュールに変更する要求があっても、実際に変更されるまでの間は
図13(a)に示すスケジュールをそのまま利用しなければならない。しかし、スケジュールが実際に変更されるまでの間、必要な帯域よりも狭い帯域、言い換えれば、必要な送信時間よりも短い送信時間しか確保できないため、ミリ波通信におけるサービス品質は低下する。このため、スケジュールの変更を迅速に変更できるスケジューリング方法が期待されている。
【0010】
本開示の目的は、ミリ波を用いてトラフィックストリームの送受信を行う無線通信システムにおいて、スケジュールの変更に伴う通信のサービス品質の低下を防止できる無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る無線通信装置は、現在のMCS値、及びトラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を受信する受信部と、前記受信部が受信したQoS要求に基づいて、複数のトラフィックストリームの各送信時間を定期的に割り当てる周期を設定し、各周期における前記複数のトラフィックストリームの隣り合う送信時間の間に間隔を設けたスケジュールを生成するスケジュール生成部と、前記スケジュール生成部が生成したスケジュールを報知信号で送信する送信部と、を有する。
【0012】
本開示に係る無線通信装置は、ミリ波を用いてトラフィックストリームの送受信を行う無線通信システムにおける無線通信装置であって、当該無線通信装置と通信を行う少なくとも1つの無線局が送信する複数のトラフィックストリームのためのスケジューリングを行うスケジュール生成部と、前記スケジュール生成部が生成したスケジュールを報知信号で前記無線局に送信する送信部と、各無線局が送信した、当該無線局が送信する現在のMCS値、及びトラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を受信する受信部と、を備え、前記スケジュール生成部は、前記受信部が受信したQoS要求に基づいて、前記複数のトラフィックストリームの各送信時間を定期的に割り当てる周期を設定し、各周期における前記複数のトラフィックストリームの隣り合う送信時間の間に間隔を設けたスケジュールを生成する。
【0013】
本開示に係る無線通信システムは、ミリ波を用いてトラフィックストリームの送受信を行う無線通信システムであって、トラフィックストリーム、並びに、現在のMCS値、及び当該トラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を送信する少なくとも1つの無線局と、前記無線局が前記トラフィックストリームを送信するためのスケジューリングを行う無線通信装置と、を備え、前記無線通信装置は、前記少なくとも1つの無線局が送信する複数のトラフィックストリームのためのスケジューリングを行うスケジュール生成部と、前記スケジュール生成部が生成したスケジュールを報知信号で前記無線局に送信する送信部と、各無線局が送信したトラフィックストリーム及びQoS要求を受信する受信部と、を備え、前記スケジュール生成部は、前記受信部が受信したQoS要求に基づいて、前記複数のトラフィックストリームの各送信時間を定期的に割り当てる周期を設定し、各周期における前記複数のトラフィックストリームの隣り合う送信時間の間に間隔を設けたスケジュールを生成する。
【0014】
本開示に係る無線通信方法は、ミリ波を用いたトラフィックストリーム、並びに、現在のMCS値、及び当該トラフィックストリームに相応しいMCS値の範囲を含むQoS要求を送信する少なくとも1つの無線局と、前記無線局が前記トラフィックストリームを送信するためのスケジューリングを行う無線通信装置と、を備えた無線通信システムにおける前記無線通信装置が行う無線通信方法であって、各無線局が送信した、当該無線局が現在のMCS値、及び送信するトラフィックストリームに相応しい当該無線局において利用可能なMCS値の範囲を含むQoS要求を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信したQoS要求に基づいて、前記少なくとも1つの無線局が送信する複数のトラフィックストリームの各送信時間を定期的に割り当てる周期を設定し、各周期における前記複数のトラフィックストリームの隣り合う送信時間の間に間隔を設けたスケジュールを生成するスケジュール生成ステップと、前記スケジュール生成ステップで生成したスケジュールを報知信号で前記無線局に送信する送信ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法によれば、ミリ波を用いてトラフィックストリームの送受信を行う無線通信システムにおいて、スケジュールの変更に伴う通信のサービス品質の低下を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、IEEE Std 802.11ad等に準拠したミリ波を用いた無線通信システムを例に説明する。但し、本開示の内容は、ミリ波に限らずマイクロ波を用いた無線通信システムにも適用可能である。
【0018】
(第1の実施形態)
ミリ波を用いた無線通信システムには、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、PCP(Personal basic service set Control Point)及び無線局(STA)が含まれる。無線局(STA)からPCPへのトラフィックストリームをアップストリームといい、PCPから無線局(STA)へのトラフィックストリームをダウンストリームといい、
図1(b)に示す無線局(STA)から別の無線局(STA)へのトラフィックストリームをサイドストリームという。本開示の内容は、何れのストリームに対しても適用可能であり、トラフィックストリームが複数存在する場合に特に効果を奏する。
【0019】
図2は、
図1(a)及び
図1(b)に示した第1の実施形態の無線局(STA)の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、無線局(STA)は、送信データ処理部202と、送信部204と、QoS要求生成部206と、送信品質監視部210と、MCS決定部208と、受信部214と、送信スケジュール制御部212と、受信データ処理部216とを備える。
【0020】
送信データ処理部202は、送信データを指定のフレームフォーマットに従いパッケージングする処理を行う。送信部204は、QoS要求を含む制御データ及びトラフィックストリームを送信する。なお、送信部204は、MCS決定部208が決定したMCS値を取得し、かつ、送信スケジュール制御部212から送信スケジュールを取得した上で、制御データまたはトラフィックストリームを送信する。なお、無線局(STA)とPCPでは、利用可能なMCS値の範囲が共有される。
【0021】
QoS要求生成部206は、QoSを要求するトラフィックストリームに応じたQoS要求を生成する。QoS要求生成部206が生成したQoS要求は指定のフォーマットで送信フレームに記載され、送信部204からPCPに送信される。QoS要求を記載するデータフォーマットについては後述する。
【0022】
送信品質監視部210は、送信部204の送信状況を計測し、送信品質を評価するための統計データを算出する。例えば、送信品質監視部210は、送信部204におけるパケットの再送回数を計測し、一定期間の再送率を算出した結果を、送信品質を評価するための指標とする。MCS決定部208は、送信品質監視部210から送信品質の評価結果を取得し、当該評価結果及び自局(STA)が送信するトラフィックストリームのリアルタイム性等のデータ特性に基づいて、適当なMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定する。MCS決定部208は、決定したMCSを示す値(MCS値)を送信部204及びQoS要求生成部206に設定する。
図3は、IEEE Std 802.11adにおけるMCS値と伝送速度の対応を示す図である。
【0023】
さらに、MCS決定部208は、現在のMCS値、並びに、MCSを変更する場合のMCS値の予測最小値(Minimum MCS)及び予測最大値(Maximum MCS)を、QoS要求生成部206に設定する。MCS値の予測最小値(Minimum MCS)〜予測最大値(Maximum MCS)は、現在の通信環境状況とトラフィックストリームのデータ特性より算出される必要な伝送速度に応じた、利用可能なMCS値の範囲である。通常、MCS値を小さくすると、伝送速度が遅くなりトラフィックストリームのデータを全部送信できなくなる可能性が高くなる。そのため、トラフィックストリームのデータ特性より利用可能なMCS値の予測最小値を確定できる。一方、MCS値を大きくすると、伝送速度が速くなるが、送信距離が短くなったりデータのパケットロスが大きくなったりなる。そのため、現在の通信環境状況に従い、利用可能なMCS値の予測最大値を確定できる。更に、MCS決定部208は、PCPから送信されたビーコン信号を受信する受信部214から、スケジュールを遅延なく迅速に変更可能なMCS値の範囲(即ち、後述する「NonPseudoStatic Minimum MCS〜NonPseudoStatic Maximum MCS」)を取得できる場合、上記現在のMCS値の決定を、上記遅延なく変更可能なMCS値の範囲内に限定しても良い。この場合、MCS値の変更に対応するスケジュールの変更が遅延なく迅速に実施される。
【0024】
受信部214は、PCPまたは他の無線局(STA)から送信された自局(STA)宛のデータを受信する。受信部214は、PCPから送信されたビーコン信号に含まれるスケジュールを送信スケジュール制御部212に送り、他のデータを受信データ処理部216に送る。送信スケジュール制御部212は、受信部214から送られたスケジュールに従って、自局(STA)から送信する各トラフィックストリームの送信時間を制御する。受信データ処理部216は、受信部214から送られたデータを処理して相応通信プロトコルスタックの上位レイヤに送る。
【0025】
IEEE Std 802.11adに準拠したミリ波通信の場合、送信部204からPCPに送信されるQoS要求を記載するデータフォーマットとして、ADDTS(Add Traffic Stream)フレームのDMG(Directional MultiGigabit) TSPEC(Traffic SPECification)エレメントを利用できる。
図4(a)に、DMG TSPECエレメントの関連フィールドを示す。
図4(a)に示すフィールドの内、帯域要求に関連するフィールドは、「Allocation Period」、「Minimum Allocation」、「Maximum Allocation」及び「Minimum Duration」の4つである。「Allocation Period」は、周期を示す。「Minimum Allocation」は、周期毎の必要最小帯域を示す。「Maximum Allocation」は、周期毎の必要最大帯域を示す。「Minimum Duration」は、帯域の最小連続時間(必要帯域を複数のブロックに分ける場合における1つのブロックの最小幅)を示す。
【0026】
本実施形態では、上記DMG TSPECエレメントのフィールドを拡張してQoS要求を記載する。
図4(a)に示すフィールドに、例えば、
図4(b)に示す「Present MCS」、「Minimum MCS」及び「Maximum MCS」の3つのフィールドを加える。「Present MCS」はSTA側の現在利用中のMCS値を示し、「Minimum MCS」はMCSを変更する場合のMCS値の予測最小値を示し、「Maximum MCS」はMCSを変更する場合のMCS値の予測最大値を示す。なお、追加するフィールドは3つに限定されず、例えば、「Present MCS」と「Minimum MCS」又は「Present MCS」と「Maximum MCS」といった2つのフィールドだけが追加されてもよい。但し、「Present MCS」と「Minimum MCS」の2つを追加した場合、MCS値を下げる変更には対応できるが、MCS値を上げる変更に対応できない。逆に、「Present MCS」と「Maximum MCS」の2つを追加した場合、MCS値を上げる変更には対応できるが、MCS値を下げる変更に対応できない。
【0027】
図5は、
図1(a)及び
図1(b)に示した第1の実施形態のPCPの内部構成を示すブロック図である。
図5に示すように、PCPは、受信部402と、受信データ処理部404と、QoS要求抽出部406と、スケジュール生成部408と、送信データ処理部410と、送信部412とを備える。
【0028】
受信部402は、無線局(STA)から送信された自局(PCP)宛のデータを受信する。受信データ処理部404は、受信部402が受信したデータを処理して上位レイヤに送る。QoS要求抽出部406は、受信部402が受信したデータからQoS要求を抽出する。QoS要求抽出部406は、抽出したQoS要求をスケジュール生成部408に送る。なお、無線局(STA)から送信されたQoS要求には、
図4(b)に示したように、「Minimum MCS」及び「Maximum MCS」の各フィールドが含まれている。IEEE Std 802.11adに準拠したミリ波通信の場合、PCPと各無線局(STA)の間では利用可能なMCS値の範囲が共有される。
【0029】
スケジュール生成部408は、QoS要求抽出部406から送られたトラフィックストリームの全てのQoS要求に対してスケジューリングを行って、スケジュールを生成する。スケジュール生成部408によるスケジューリングの処理手順の詳細については後述する。送信データ処理部410は、スケジュール以外の送信データを指定のフレームフォーマットに従いパッケージングする処理を行う。送信部412は、スケジュールを含む制御データ及びトラフィックストリームを送信する。送信部412は、スケジュールを含む制御データを全ての無線局(STA)にビーコン信号で報知する。
【0030】
図6は、PCPの送信部412から報知されるビーコン信号におけるExtended Scheduleエレメントの関連フィールドを示す図である。IEEE Std 802.11adに準拠したミリ波通信の場合、スケジュールを記載するデータフォーマットとして、ビーコンフレームのExtended Scheduleエレメントを利用できる。
図6に、Extended Scheduleエレメントの関連フィールドを示す。
図6に示すフィールドの内、「Allocation 1〜Allocation n」は、n個のQoS要求の各々に割り当てた帯域状況を表す。各Allocationに含まれる、帯域に関連するフィールドは、「Allocation Start」、「Allocation Block Duration」、「Number of Blocks」及び「Allocation Block Period」の4つである。4つのフィールドの意味を
図7に示す。「Allocation Start」は、割り当てた帯域の開始時間を示す。「Allocation Block Duration」は、割り当てた帯域を形成するブロックの幅を示す。「Number of Blocks」は、ビーコン周期におけるブロックの数を示す。「Allocation Block Period」は、ブロックの繰り返す周期を示す。基本的に、帯域の割り当てはビーコン周期毎に更新される。
【0031】
なお、上記説明したExtended Scheduleエレメントをそのまま利用してもよいが、Extended Scheduleエレメントを拡張して利用しても良い。Extended Scheduleエレメントを拡張する場合、
図6に示したExtended Scheduleエレメントに、スケジュールを遅延なく迅速に変更可能なMCS値の範囲を表す予測最小値(NonPseudoStatic Minimum MCS)と予測最大値(NonPseudoStatic Maximum MCS)の2つのフィールドを追加する。
図8は、Extended Scheduleエレメントの拡張に用いられる、MCS値の範囲を表す予測最小値(NonPseudoStatic Minimum MCS)と予測最大値(NonPseudoStatic Maximum MCS)の2つのフィールドを示す図である。
【0032】
以下、スケジュール生成部408によるスケジューリングの処理手順について具体的に説明する。以下の説明では、受信部402が2つのQoS要求を受信し、スケジュール生成部408が当該2つのQoS要求に対してスケジューリングを行う場合について説明する。なお、各無線局(STA)が送信を希望するトラフィックストリームに対する専用の送信時間を計画することを「帯域の割り当て」ともいう。したがって、各トラフィックストリームに割り当てられた送信時間を「帯域」ともいう。
【0033】
また、本実施形態のスケジューリングでは、
図4(a)に示したQoS要求を記載するデータフォーマットにおける、帯域要求に関連した「Allocation Period」と「Minimum Allocation」が用いられる。帯域要求に関連した他の2つのフィールドである「Minimum Duration」と「Maximum Allocation」に関しては特に制限しない。以下の説明において、「Allocation Period」を「周期要求」といい、「Minimum Allocation」を「帯域幅要求」という。
【0034】
(ステップ1:各MCSに対応するQoSの導出)
PCPの受信部402が、各無線局(STA)から現在のMCS値と利用可能性のあるMCS値の範囲を含むQoS要求を受信すると、スケジュール生成部408は、受信したQoS要求に含まれるMCS値に対応する各QoSを導出する。例えば、受信部402が無線局(STA)から現在のMCS値=6に対応するQoS要求を受信すると、スケジュール生成部408は、MCS値=Minimum MCS〜Maximum MCS(例えば、MCS値=3〜9)の各MCS値に対応するQoSを導出する。
【0035】
現在のMCS値に対応する周期要求(Allocation Period)をPcで表し、帯域幅要求(Minimum Allocation)をTcで表し、他のMCS値に対応する周期要求をPiで表し、帯域幅要求をTiで表す場合、周期要求Piと帯域幅要求Tiは以下の式(1)及び式(2)に示す関係を有する。なお、i=1〜nであり、Piはi番目のMCS値に対応する周期要求を指し、Tiはi番目のMCS値に対応する帯域幅要求を指す。また、nは、現在のMCS値を含むMCSの個数であり、
図4(b)に示したMCS値の予測最小値である「Minimum MCS」と、MCS値の予測最大値である「Maximum MCS」から確定される。式(1)はデータ量の制限に基づき、式(2)はバッファの制限に基づく。
【0037】
上記式(1),(2)において、BIはビーコン周期であり、ρは送信データの入力速度である。なお、ビーコン周期BI及び送信データの入力速度ρは、それぞれ値が分からなくても周期要求Piと帯域幅要求Tiの算出には影響しない。Rcは現在のMCS値に対応する伝送速度であり、RiはMCS値=iに対応する伝送速度である。なお、各MCS値に対応する伝送速度は、
図3に示したように、規格によって決められている。
【0038】
スケジュール生成部408は、受信部402が受信した各QoS要求に対し、上記説明したQoSの導出を実施する。受信部402がQoS要求(P1,T1)とQoS要求(P2,T2)の2つのQoS要求を受信すると、スケジュール生成部408は、QoS要求(P1,T1)に基づき、QoS(P1,T1)を含むN1組のQoS(P1i,T1i)(i=1〜N1)を導出し、QoS要求(P2,T2)に基づき、QoS(P2,T2)を含むN2組のQoS(P2j,T2j)(j=1〜N2)を導出する。N1は、QoS要求(P1,T1)に関連するMCSの個数であり、MCS値の予測最小値である「Minimum MCS」から予測最大値である「Maximum MCS」までの範囲に含まれるMCS値の数である。したがって、「Minimum MCS」に対応するQoSをQoS(P11,T11)とし、「Maximum MCS」に対応するQoSをQoS (P1N1,T1N1)とすることができる。同様に、N2は、QoS要求(P2,T2)に関連するMCSの個数である。
【0039】
(ステップ2:帯域割り当て周期SIの計算)
従来ではQoS要求の周期要求P1,P2を利用して計算した帯域割り当て周期(サービス間隔)SIを、本実施形態では、QoS(P1i,T1i)(i=1〜N1)のP1iと、QoS(P2j,T2j)(j=1〜N2)のP2jを利用する。つまり、スケジュール生成部408は、MCSの変動を事前に考慮して、帯域割り当て周期SIを決定する。帯域割り当て周期SIは、以下の式(3)から得られる。式(3)で示されるように、スケジュール生成部408は、全ての周期要求の内の最小値を帯域割り当て周期SIに設定する。
【0041】
(ステップ3:送信時間TXOPと間隔Mの計算)
各QoS要求に対応したトラフィックストリームに割り当てる送信時間(サービス時間)TXOPは、QoS要求に含まれる周期要求及び帯域幅要求、並びに、帯域割り当て周期SIに基づく以下の式(4),(5)から算出される。
【0043】
従来では、
図13(a)に示すように、サービス時間TXOP1とサービス時間TXOP2は連続するが、本実施形態では、
図9に示すMCSの変更に伴う送信時間の拡張を事前に考慮して、隣り合う送信時間TXOP1と送信時間TXOP2の間に間隔M1を設定する。間隔M1を設けることによって、サービス時間TXOP1を遅延なく拡張できるようになる。つまり、通信状況の変化によってより長い送信時間が必要な場合に、送信時間の延長を遅延なく実施できるようになる。
図9は、MCSの変更を事前に考慮したスケジュールの一例と、MCSの変更後における送信時間を拡張(TXOP1→TXOP1+TXOP1e)した場合のスケジュールの一例を示す図である。
【0044】
間隔M1は、送信時間の最大値TXOP1maxと前記算出した送信時間TXOP1との差分から算出される。以下の式(6)に示すように、送信時間の最大値TXOP1maxと前記算出した送信時間TXOP1との差分から算出される。
M1=TXOP1max-TXOP1 …(6)
但し、式(6)中の「TXOP1max」は以下の式(7)から得られる。
【0046】
なお、間隔M1は、送信時間TXOP1の拡張のためにも、送信時間TXOP2の拡張のためにも利用できる。
【0047】
(ステップ4:Pseudo-Static帯域技術による遅延のないMCS値の範囲の決定)
ステップ1〜ステップ3を行うことによって2つのトラフィックストリームの各々に割り当てる帯域を算出したが、算出した帯域を実際に確保できるかの判断も必要である。当該判断には、例えば、以下の式(8)を利用できる。なお、式(8)の右辺に示されるβは、1以下の正数(例えば、0.8)であって、実験によって得られる係数である。
【0049】
式(8)を満たさない場合、スケジュール生成部408は、帯域の割り当てを再計算する。具体的には、MCS値の範囲を本来のMinimum MCS〜Maximum MCSから縮め、スケジュール生成部408は上記ステップ1から再度計算する。通常、MCS値の予測最大値(Maximum MCS)を下げると、必要な帯域割り当て周期SIが大きくなる。逆に、MCS値の予測最小値(Minimum MCS)を上げると、必要なTXOPmax及び間隔M1が小さくなる。いずれもの場合も帯域の割り当てが確保しやすくなり、スケジュールを遅延なく変更することができる。
【0050】
スケジュール生成部408は、ステップ1〜ステップ4を行うことによって最終的に決定したMCS値の範囲(予測最小値〜予測最大値)を「NonPseudoStatic Minimum MCS〜NonPseudoStatic Maximum MCS」に設定したスケジュールを生成する。NonPseudoStatic Minimum MCSは、スケジュールを変更する場合にPseudo Static帯域技術による遅延が発生しないMCS値の予測最小値であり、NonPseudoStatic Maximum MCSは、同様の予測最大値である。
【0051】
上記説明では、MCSの変更に伴う送信時間の拡張を事前に考慮することで、隣り合う送信時間TXOP1と送信時間TXOP2の間に間隔M1を設定したが、
図10に示すように、送信時間TXOP2の間隔M1とは逆側に間隔M2をさらに設定しても良い。
図10は、MCSの変更を事前に考慮したスケジュールの他の例と、MCSの変更後における送信時間を拡張(TXOP1→TXOP1+TXOP1e、TXOP2→TXOP2+TXOP2e)した場合のスケジュールの他の例を示す図である。
【0052】
間隔M2は、以下の式(9)から算出される。
M2=TXOP2max-TXOP2 …(9)
但し、式(9)中の「TXOP2max」は以下の式(10)から得られる。
【0054】
このように、間隔M1と間隔M2が設定された場合、ステップ4において、算出した帯域を実際に確保できるかの判断に利用される式には以下の式(11)が利用される。
【0056】
なお、TXOP1とTXOP2の間に設定される間隔Mは、送信時間TXOP1の拡張のためにも、送信時間TXOP2の拡張のためにも利用できる。この場合の間隔Mの計算式は、以下の式(12)によって示される。なお、式(12)の右辺を構成する間隔M1は上記式(6)によって算出される値であり、間隔M2は上記式(9)によって算出される値である。
M=max(M1, M2) …(12)
【0057】
また、間隔Mが設定された場合、ステップ4において、算出した帯域を実際に確保できるかの判断に利用される式には以下の式(13)が利用される。
【0059】
以下、MCSの変更前後のスケジューリングを示すシーケンスについて、
図11を参照して説明する。
図11は、MCSの変更前後のスケジューリングを示すシーケンスである。無線局(STA)は、現在のMCS値を取得して(S101)、送信を希望するトラフィックストリームのデータ特性、及び当該MCS値に応じたQoS要求を生成する(S103)。次に、無線局(STA)は、前記トラフィックストリームの送信要求としてQoS要求をPCPに送信する(S105)。PCPは、QoS要求を受け付けた旨の通知(Ack)を無線局(STA)に送信した(S107)後、QoS要求に応じたスケジューリングを行う(S109)。PCPは、スケジューリングを行うことで生成したスケジュールをビーコン信号で報知する(S111)。無線局(STA)は、報知されたビーコン信号に含まれるスケジュールに従って、トラフィックストリーム送信を行う(S113)。
【0060】
その後、無線局(STA)とPCPの間の通信距離等の変化のために、無線局(STA)がMCSを変更すると決定した(S115)場合、無線局(STA)は、QoS要求のデータフォーマットを用いて、MCSを変更する旨をPCPに通知する(S117)。すなわち、無線局(STA)は、
図4(b)に示した「Present MCS」と、変更後MCS値に対応するQoS要求をPCPに送信する。PCPは、MCS変更通知を受け付けた旨の通知(Ack)を無線局(STA)に送信した(S119)後、無線局(STA)から通知されたMCS変更に応じたスケジューリングを行う。すなわち、PCPは、先に生成したスケジュールを修正する(S121)。なお、当該スケジュールの修正によって、上記説明した送信時間の拡張(TXOP1→TXOP1+TXOP1e)が行われる。PCPは、修正したスケジュールをビーコン信号で報知する(S123)。無線局(STA)は、MCSを変更した上で(S125)、報知されたビーコン信号に含まれる修正されたスケジュールに従ってトラフィックストリーム送信を行う(S127)。
【0061】
以上説明したように、
図9に示したように、MCSの変更に伴いトラフィックストリームのための送信時間を「TXOP1」から「TXOP1+TXOP1e」に拡張する必要がある場合、本実施形態では、当該拡張に備えた十分な間隔M1(M1>=TXOP1e)が設定されているため、Pseudo-Static帯域技術の影響なくスケジュールを迅速に変更できる。また、最初のスケジュールの生成時に間隔M1に対して割り当ては行われないため、チャネル利用率に影響しない。
【0062】
本実施形態では、PCPと無線局(STA)の各構成を別々に説明したが、PCPが無線局(STA)の機能を有した構成であっても良い。この場合、PCPも無線局(STA)の1つとして利用することができる。
【0063】
また、本実施形態では、専用送信帯域を要求するトラフィックストリームを例に説明したが、競合帯域(いわゆるCBAP(Contention Based Access Period))の利用を排除しない。つまり、全送信帯域を競合帯域と非競合帯域に分けると、本実施形態は非競合帯域の割り当てに関する。なお、競合帯域と非競合帯域の分け方に関しては特に制限しない。例えば、非競合帯域の割り当てを優先し、残った帯域を競合帯域として利用できる。また、競合帯域幅を先に設定し、それ以外の帯域を非競合帯域として利用することも可能である。
【0064】
さらに、本実施形態では、PCPが受け付けたQoS要求に応じたスケジューリングを行うが、QoS要求を受け付けるか否かを判断する流量制御をPCPが行っても良い。つまり、PCPがQoS要求を受信した後、まず現在の帯域利用状況によって要求帯域を付与可能かを判断する。付与不可能と判断した場合、PCPは当該QoS要求を拒否する。当該流量制御の方法については特に制限しない。
【0065】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、無線局(STA)が現在のMCS値に対応するQoS要求しかPCPに送信しない。MCS値の変更に際しては、スケジュール生成部408によるステップ1の処理として説明したように、PCPが現在のMCS値以外の各MCS値に対応したQoSを導出する。第2の実施形態では、当該ステップ1の処理を無線局(STA)が行い、PCPが無線局(STA)が行った当該処理の結果を取得する。したがって、本実施形態では、QoS要求を記載するデータフォーマットが第1の実施形態で説明した
図4(a)及び
図4(b)に示したデータフォーマットとは異なる。なお、この点以外は第1の実施形態と同じである。また、無線局(STA)は、上記説明したステップ1の処理結果をテーブル等の形態でメモリに格納しても良い。
【0066】
図12は、第2の実施形態のQoS要求を記載するデータフォーマットを示す図である。
図12に示すように、当該データフォーマットには、MCS 1 Allocation〜MCS n Allocationで示されるn個のフィールドが含まれ、各フィールドには、MCS値及び各MCS値に対応するQoSが記載される。例えば、「MCS 1 Allocation」のフィールドには、MCS 1が示すMCS値と、当該MCS値に対応する「Allocation Period」、「Minimum Allocation」、「Maximum Allocation」及び「Minimum Duration」が含まれる。
【0067】
第1の実施形態と比べると、制御データの通信は多くなるが、第2の実施形態のPCPは、より的確に無線局(STA)のQoS要求を把握できる。例えば、無線局(STA)が異なるMCSにおける送信に対する特定のオーバーヘッド要求等がある場合、第2の実施形態の性能の方が良いと考えられる。