特許第6132720号(P6132720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6132720液浸現像を用いてインクベースのデジタル印刷を行うシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132720
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】液浸現像を用いてインクベースのデジタル印刷を行うシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/06 20060101AFI20170515BHJP
   B41C 1/10 20060101ALI20170515BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B41M1/06
   B41C1/10
   B41F7/02
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-193907(P2013-193907)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-71453(P2014-71453A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2016年9月15日
(31)【優先権主張番号】13/631,989
(32)【優先日】2012年9月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュ−ヘン・リウ
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−250027(JP,A)
【文献】 特開平11−020124(JP,A)
【文献】 特開昭47−021207(JP,A)
【文献】 特開2011−133848(JP,A)
【文献】 特開2013−256113(JP,A)
【文献】 米国特許第8586277(US,B1)
【文献】 米国特許第8833254(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00 − 1/42
B41F 7/00 − 7/40
B41C 1/00 − 1/18
G03G 15/00 −15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク印刷に有用なインクベースのデジタル印刷システムであって、
画像形成部材上に液浸流体の画像を形成するように構成された画像形成部材と、
転写部材と前記画像形成部材により形成された液体画像転写ニップで、前記画像形成部材から転写部材に前記液浸流体を転写する間に、前記液浸流体の一部を引き付ける又は弾かせるように電気的にバイアスをかけられる転写部材と、
前記画像形成部材の表面上の液浸流体の均一な層を調量して、前記液浸流体の画像を形成するためのローラを含む液浸流体調量システムと、
前記液浸流体の画像を現像するために、前記転写部材の表面上の前記液浸流体の画像にインクを塗布するように構成されたインク塗布システムと、
を含み、
前記液浸流体は、
分散した固体粒子を含む湿し水と、
前記固体粒子に電荷を与えて前記液浸体の画像の転写を可能にする電荷誘導剤と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記液浸流体は、湿し水と固体粒子とを含み、
前記画像形成部材と前記転写部材は、少なくとも前記液浸流体の画像の湿し水の部分を、前記液体画像転写ニップで、前記転写部材の表面に転写して、前記転写部材の表面上に、湿し水画像を形成するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記液浸体は、
シリコン液体(D4,D5、OS20,OS30を含む)とアイソーパ液体を実質的に含むグループから選択された湿し水と、
湿し水に分散された二酸化ケイ素の固体粒子と、
を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記画像形成部材は、シリコン弾性体、フルオロシリコン弾性体及びVitonを実質的に含むグループから選択された表面を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記画像形成部材及び前記転写部材の中の少なくとも1つは、電気的にバイアスをかけられて、前記画像形成部材の表面上に前記固体粒子を保持する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記画像形成部材は感光体であり、前記液浸流体の画像は、前記画像形成部材上に形成された静電潜像に従って、前記画像形成部材上に形成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
ラスタ出力スキャナイメージャを更に含み、
前記ラスタ出力スキャナイメージャは、画像データに従って、前記画像形成部材の表面を露光することで、前記画像形成部材の一部を選択的に放電させて、前記静電潜像を形成する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
液浸流体調量システムを更に含み、
前記液浸流体調量システムは、前記静電潜像に従って、前記画像形成部材の表面に前記液浸流体が付着するように、前記画像形成部材の表面に液浸流体の均一な層を供給して、前記液浸流体の画像を形成するように構成されている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
感光体を更に含み、
前記感光体は、前記感光体の表面上に静電潜像を形成するように構成されており、
前記感光体と前記画像形成部材は、前記静電潜像に従って、前記画像形成部材から前記感光体へ固体粒子を転写するための固体粒子転写ニップを形成するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記画像形成部材の表面に液浸流体の均一な層を供給するための液浸流体調整システムを更に含み、
前記感光体は、前記静電潜像に従って、前記画像形成部材から、選択された領域における液浸流体を除去し、
前記画像形成部材上に残存する前記液浸流体は、前記画像形成部材上において前記液浸流体の画像を形成する、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
ラスタ出力スキャナイメージャを更に含み、
前記ラスタ出力スキャナイメージャは、画像データに従って、前記感光体の表面を露光することで、前記感光体の一部を選択的に放電させて、前記静電潜像を形成する、
請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
液浸流体を使用したインクベースのデジタル印刷方法であって、
液浸流体調量システムを使用して画像形成部材上に液浸流体の画像を形成するステップであって、前記液浸流体調量システムはローラを含み、前記液浸流体は、湿し水と前記湿し水に分散された固体粒子とを含む、ステップと、
転写部材と前記画像形成部材とによって形成された液体画像転写ニップで、前記液浸流体画像の湿し水の一部を前記転写部材に転写するステップと、
前記画像形成部材と共に固体粒子転写ニップを形成する感光体の表面に静電潜像を形成するステップと、
電気的に前記画像形成部材にバイアスをかけて前記画像形成部材に前記液浸流体の一部を弾かせる又は引きつけさせることにより、前記固体粒子転写ニップにて、前記感光体上の前記静電潜像に従って、均一な層の前記固体粒子の少なくとも一部を前記感光体に転写して、前記画像形成部材上に前記液浸流体の画像を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
インク印刷に有用なインクベースのデジタル印刷システムであって、
画像形成部材上に液浸流体の画像を形成するように構成された画像形成部材であって、前記液浸流体は、湿し水と、前記湿し水内に分散した固体粒子と、を含み、前記液浸流体は、液浸流体調量システムのローラによって調量される、画像形成部材と、
転写部材と前記画像形成部材とによって構成される流体画像転写ニップで、前記画像形成部材から転写部材に前記液浸流体の画像を転写するように構成された転写部材であって、前記液浸流体の画像の転写と転写部材上において前記液浸流体の画像の形成を促進するように、電気的にバイアスをかけられる転写部材と、
前記液浸流体の画像にインクを塗布することで、前記転写部材上の前記転写された液浸流体の画像を現像するように構成されたインク塗布システムと、
を含むシステム。
【請求項14】
画像データに従って、前記画像形成部材の表面に静電潜像を形成するためのイメージャシステムと、
前記静電潜像に従って、前記画像形成部材の表面に液浸流体を供給して、流体画像を形成するように構成された液浸流体調量システムと、
を更に含む請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
電気的にバイアスがかけられる前記画像形成部材と前記転写部材の中の少なくとも1つを含む請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
画像データに従って、感光体の表面に静電潜像を形成するイメージャシステムであって、前記感光体は前記画像形成部材と共に固体粒子転写ニップを形成する、イメージャシステムと、
前記画像形成部材に液浸流体を供給して液浸流体の均一な層を形成するように構成された液浸流体調量システムと、
を更に含み、
前記感光体と前記画像形成部材は、前記固体粒子転ニップにて、前記感光体上の前記静電潜像に従って、前記均一な層の固体粒子の少なくとも一部を前記感光体に転写して、前記画像形成部材上に前記液浸流体の画像を形成するように構成されている、
請求項13に記載のシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、画像形成部材、およびその画像形成部材からの液浸流体の画像を受ける画像転写部材を有する印刷システムを用いて、インクベースのデジタル印刷を行う方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のインクベースのデジタル印刷システム、すなわちデジタル平板印刷用に構成された、可変データの平板印刷システムは、画像形成部材に塗布される湿し水の層をレーザでパターン化するための画像形成システムを含む。この画像形成システムは、光エネルギーを発光するための高出力レーザを含む。この画像形成部材は、その他の画像作成に関して必要な要求事項とは別であり、プレートまたはブランケットなどの、光エネルギーを吸収可能な高価な画像再形成可能面の層を含まなければならない。従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは、高出力のレーザレーザでパターン化するためにコストのかかるプレートを有する画像形成部材が必要であり、湿し水とインクの相互作用に関する適合性を含む、厳しい設計要求を満たさなければならない。画像形成部材上に塗布される湿し水を調量し、レーザ画像形成器を用いて、画像データに従い湿し水をパターン化し、インクを塗布するための別の部材に、その湿し水の画像を転写するシステムの開発が行われてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
画像形成部材の一部に付着する粒子が、相補型電荷を有するために、高出力のレーザを必要とすることなく、湿し水の画像を作成する、実施形態による、システム、方法、および液浸流体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、従来技術のデジタルアーキテクチャを有する印刷システムの線図である。
図2図2は、本実施形態による、インクベースのデジタル印刷システムの図である。
図3図3は、本実施形態による、インクベースのデジタル印刷システムの液浸流体の画像転写ニップの図である。
図4図4は、別の実施形態による、インクベースのデジタル印刷システムの図である。
図5図5は、本実施形態による、インクベースのデジタル印刷の方法のブロック図である。
図6図6は、別の実施形態による、インクベースのデジタル印刷の方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは、レーザによって画像形成プレート上で湿し水をパターン化するための高出力のレーザを用いており、コストのかかり、その印刷速度が制限される。本明細書と同一の出願人によるものでありその開示内容を参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第13/095,714号明細書(714出願)では、可変データの平板印刷およびオフセット平板印刷、または画像受取り媒体へマーキングを行うためのシステムおよび方法が提案される。714出願によると、画像形成部材上に画像再形成可能面が提供され、この画像形成部材は、ドラム、プレート、ベルトなどでよい。この画像再形成可能面は、例えば、一般にシリコンと呼ばれる、材料の種類から構成され得、中でもポリジメチルシロキサン(PDMS)がその代表である。この画像再形成可能面は、土台層を覆う比較的薄い層で形成され得、この比較的薄い層の厚さは、印刷すなわちマーキング性能、耐久性および製造性のバランスをとって選択される。
【0006】
図1で示す通り、例示的なシステム100は、画像形成部材110を含むことができる。図1に示す実施形態では、画像形成部材110はドラムであるが、この例示的な表現により、画像形成部材110にはプレートまたはベルト、あるいはその他の現在周知の、または、今後開発される構成が含まれる、実施形態を除外すると解釈されないものとする。画像形成部材110は、転写ニップ112で、インク画像を画像受取り媒体の基材114に塗布するために用いられる。転写ニップ112は画像転写機構160の一部として、加圧ローラ118により形成され、この加圧ローラにより、画像形成部材110の方向に対して圧力がかけられる。画像受取り媒体基材114は、例えば、紙、プラスチック、または複合シートフィルムなど、全ての特定の構成に限定されると解釈されないものとする。例示的なシステム100を用いて、多種多様な画像受取り媒体基材上に、画像を作成することができる。714出願には、色素密度が質量に換算で10%より高いマーキング材料を含む、使用可能なマーキング(印刷)材料の広い許容範囲も説明されている。714出願で使用される通り、本明細書では、インクという用語を用いて、広い範囲の印刷材料、すなわちマーキング材料を指し、その中には、例示的なシステム100により、塗布されて、画像受取り媒体基材114上に出力画像を作成するインク、色素、およびその他の材料と一般に理解されるものも含まれる。
【0007】
714出願には、画像形成部材110の詳細が記載、説明されている。この画像形成部材110は、その画像形成部材110の構造の土台層を覆う画像再形成可能面の層を含み、この構造の土台層は、例えば、円筒状の芯、または円筒状の芯を覆う1枚以上の構造層でよい。
【0008】
例示的なシステム100は、湿し水塗布サブシステム120を含む。この湿し水塗布サブシステム120は、一連のローラを一般に含み、画像形成部材110の画像再形成可能面を湿し水で均一に湿らせるために用いる水付けローラ、または水付けユニットとしてこれらのローラを見なすことができる。この湿し水塗布サブシステム120の目的は、一般には、画像形成部材110の画像再形成可能面に、均一に制御された厚さの湿し水の層を供給することである。上記の通り、湿し水は、主に水を含み、随意的には、下記により詳細に説明する通り、表面張力を下げるために、および、その後のレーザによるパターン化をサポートするために必要な蒸発エネルギーを下げるために、加えられる少量のイソプロピルアルコール、またはエタノールを含むことができることで知られている。湿し水が、湿し水溶液の場合、少量の特定な界面活性剤を、湿し水溶液に加えることができる。あるいは、その他の好適な湿し水を用いて、インクベースのデジタル平面印刷システムの性能を向上させることができる。例として挙げると、好適な湿し水は、「デジタル平板印刷に関する湿し水(DAMPENING FLUID FOR DIGITAL LITHOGRAPHIC PRINTING)」と題する、同時係属中の米国特許出願公開第13/214,114号明細書に開示され、その開示内容を参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0009】
画像形成部材110の画像再形成可能面上に湿し水が調量されると、その湿し水の厚さは、センサ125を用いて計測され、このセンサ125がフィードバックを行って、制御に湿し水塗布サブシステム120により、画像形成部材110の画像再形成可能面上への湿し水の調量を制御することができる。
【0010】
湿し水塗布サブシステム120により、画像形成部材110の画像再形成可能面上に均一な量の湿し水が供給されたあと光学パターン化サブシステム130を用いて、例えば、レーザエネルギーで、湿し水の層を画像状にパターン化することにより、均一な湿し水層内に選択的に潜像を形成することができる。一般には、湿し水は、効率的に光エネルギー(IRまたは可視)を吸収しない。理想的には、高い空間解像能力を維持するために、画像形成部材110の画像再形成可能面は、表面近くに配置された光学パターン化サブシステム130により、発光されるほとんどのレーザエネルギー(IRまたは可視)吸収して、湿し水を加熱する際に無駄になってしまうエネルギーを最小に抑え、熱が横方向に拡散することを最小限に抑えなければならない。あるいは、好適な照射線感知成分を湿し水に加えて、入射放射レーザエネルギーの吸収を促進することができる。上記の光学パターン化サブシステム130は、レーザ照射器とした記載されているが、様々な異なるシステムを用いて、光エネルギーを供給して、湿し水をパターン化することができることは言うまでもない。
【0011】
714出願の図5を参照して、例示的なシステム100の光学パターン化サブシステム130により、実行されるパターン化処理の作業手順を、詳細に説明する。手短に言うと、光学パターン化サブシステム130から、光学パターン化エネルギーを照射することにより、湿し水の層の一部を選択的に蒸発させる。
【0012】
光学パターン化サブシステム130により湿し水層がパターン化されたあと、画像形成部材110の画像再形成可能面上でパターン化された層は、インク塗布器サブシステム140に渡される。このインク塗布器サブシステム140を用いて、湿し水の層および画像形成部材110の画像再形成可能面層の上にインクの均一な層を塗布する。インク塗布器サブシステム140は、オフセット平板印刷インクを、アニロックスローラを用いて、1つ以上のインク形成ローラ上に調量することができ、このインク形成ローラが、画像形成部材110の画像再形成可能面の層と接触する。インク塗布器サブシステム140は独立して、一連の調量ローラなどの別の従来要素を含んで、画像再形成可能面に正確な供給率でインクを供給することができる。インク塗布器サブシステム140は、画像再形成可能面上の画像形成された部分を示すポケットに、インクを塗布することができ、湿し水のフォーマットされていない部分上のインクは、その部分に付着されない。
【0013】
画像形成部材110の画像再形成可能層内に常駐するインクの密着性および粘着性は、様々な機構で変更することが可能である。それらの機構のうちの1例として、レオロジ(複合体の粘弾性係数)制御サブシステム150を用いることができる。レオロジ制御システム150により、インクの部分橋架コアを、画像再形成可能面上に形成して、例えば、画像再形成可能面の層に対するインクの結合力を向上させることができる。硬化機構には、光硬化工程、すなわち感光硬化工程、熱硬化工程、乾燥工程、または種々の形態の化学硬化工程が含まれ得る。複数の物理冷却機構、および化学冷却機構を介して冷却工程を行ってレオロジを変更することもできる。
【0014】
次いで、転写サブシステム160を用いて、インクを画像形成部材110の画像再形成可能面から、基材画像受取り媒体114に転写する。画像形成部材110と加圧ローラ118の間のニップ112を基材114が通過するときに、画像形成部材110の画像再形成可能面の間隙内のインクが基材114と物理的に接触しないように転写が行われる。レオロジ制御システム150により、インクの粘着力を変更した状態で、変更されたインクの粘着力により、インクが基材114に付着して、画像形成部材110の画像再形成可能面から分離される。転写ニップ112での温度と圧力の状態を慎重に制御することにより、画像形成部材110の画像再形成可能面から基材114へのインクの転写効率が95%を超えることができる。中には基材114を湿らせてしまう湿し水もあるが、そのような湿し水の容量はごく僅かで、容易に蒸発させることができる、または基材114により吸収させることができる。
【0015】
あるオフセット平板印刷システムでは、図1のオフセットローラ、(図示せず)が、最初にインク画像のパターンを受け、次いで、周知の間接転写法により、インク画像パターンを基材に転写させる。
【0016】
インクの大部分が基材114に転写したあと、全ての残余インク、および/または、全ての残余湿し水を、好ましくは、表面を削る、または擦り減らすことなく、画像形成部材110の画像再形成可能面から取り除かなければならない。残余湿し水を取り除くために、エアーナイフ175を用いることができるが、残余インクが幾分残ってしまうことが予測される。いくつかの清掃サブシステム170の形態を用いて、そのような残りの残余インクを除去することができる。714出願には、画像形成部材110の画像再形成可能面と物理的に接触するスティッキ部材、すなわちタッキ部材などの少なくとも第1の清掃部材を含む、そのような清掃サブシステム170の詳細が記載されており、スティッキ部材すなわちタッキ部材により、残っている残余インクおよびン残っている少量の界面活性剤の組成物を、全て画像形成部材110の画像再形成可能面の湿し水から取り除くことができる。次いで、スティッキ部材すなわちタッキ部材を、平坦化ローラと接触させ、スティッキ部材すなわちタッキ部材から、この平坦化ローラに残余インクを転写させることができ、次いで、そのインクを、例えば、ドクタブレードにより、平坦化ローラから剥がすことができる。
【0017】
714出願には、画像形成部材110の画像再形成可能面の清掃を容易にすることができる、その他の機構が詳述される。しかし、清掃機構に関係なく、残余インクおよび湿し水を画像形成部材110の画像再形成可能面から清掃することが、ゴーストの発生を防止するために重要である。清掃が完了すると、画像形成部材110の画像再形成可能面は再度、湿し水塗布サブシステム120に渡され、そこで新しい湿し水の層が画像形成部材110の画像再形成可能面に供給され、この処理が繰り返される。
【0018】
従来技術の可変データのデジタル平板印刷は、平板印刷画像形成システム内で忠実に可変デジタル画像を作成することで注目を集めてきた。上記のアーキテクチャは、画像形成プレート、および将来的には転写ブランケットの機能を単一の画像形成部材110に組み合わせたものであり、この画像形成部材110は、光吸収可能な面でなくてはならない。
【0019】
従来技術のインクベースのデジタル印刷システムは、高出力の画像形成レーザを備えるためコストがかかる。高出力のレーザ画像形成器は高価であり、画像形成部材は高価な画像再形成可能なプレートまたは表面の層を含まなければならず、それらには多くに設計による制限が設けられる。例えば、従来技術の画像形成部材は、光エネルギーを吸収可能な再画像形成可能なプレート、ブランケット、または表面層を含まなければならない。従来技術の画像形成プレートは、以下の要求を満たさなければならない。インクを塗布し、インク画像を解放することができる。多種多様な基材にインク画像を転写し易くするための順応性を有する。温度耐性を有する。例えば、炭素または酸化鉄(III)などの、酸化鉄を組み込むことにより、IRの吸収を可能にする。インク/プレート/湿し水の相互作用に対して適切に表面を湿らせる。レーザ画像を形成またはパターン化したあと、湿し水を印刷するために構成された好適な表面の質感を持たせる。上記の要求および、例えば、数万枚の印刷枚数以上の長時間に亘る、空間的均一性を維持することができる。
【0020】
具体的には、1)従来技術の画像形成プレートは、インク塗布器からのインクを受け入れ、インク転写ニップで受け入れたインクのほぼ100%の解放を可能にするよう設定されなければならい。2)画像形成部材は、紙、プラスチックを含む様々な基材、および梱包に適した基材に印刷できるよう馴染み易くなくてはならない。3)画像形成プレートは、レーザでパターン化するために、200℃よりも高い温度に耐えられるよう設定されていなければない。4)画像形成プレートは、IR光を吸収し、カーボンブラックまたは酸化鉄プレートの本体内に組み込むことができるよう設定されていなければならない。例えば、吸収深さを最小限に抑えるために、IR吸収材の密度が例えば、10%と高くなければならない。5)画像形成プレートは、湿し水、インク、およびプレートの相互作用のために湿らす面に設定されていなければならない。6)画像形成プレートは、その表面に質感を持たせるよう設定されなければならない。
【0021】
レーザでパターン化したあとの湿し水の画像は不安定である。レーザ出力により湿し水が取り除かれたあと、画像の縁/角は、液体の表面張力により、再形成され易い。その結果、プルバック(pull−back)(レーザでパターン化後の過度な縁の再形成)として知られる画像不具合が発生し得、画像解像度および画像忠実度が落ちる。レーザでパターン化したあと湿し水を固定するために、細かい表面の質感が重要である。これはレーザの照射中、湿し水が極端な温度勾配に晒されているときは特に難しい。それに加えて、表面の質感は、インク塗布処理に対しても重要である。質感のない滑らかなプレートの表面により、ベタとハーフトーン均一性の様々な問題が発生し得る。プレートをプラズマエッチングすることが、質感形成の好適な方法であることが分かってきた。しかし、プラズマエッチングは、全ての材料に対して効果的という訳わけではない。さらに、プラズマエッチングにより、プレート内に埋め込まれたIR吸収材が露出してしまう可能性もある。
【0022】
さらに、7)画像形成プレートは、湿し水、およびインク内の画像形成プレートと、種々の化学成分と、の間の混和性の要求を満たさなければならない。8)画像形成プレートは、耐摩擦性で、上記に挙げられる要求1〜7を長期間にわたって維持しなくてはならない。少なくとも、要求1〜7のうちの多くがプレートの表面特性に関し、絶え間ない加熱と加圧のサイクルにも耐えなくてはならないため、これは難しい。故障モードには、表面摩擦、画像形成プレートの嵩からのプレート表面を介したIR吸収材の侵出などが含まれる。
【0023】
本実施形態のシステムおよび方法により、画像形成プレートの機能を分離し、画像形成部材と転写部材とに分ける。これらの画像形成部材および転写部材は、ローラまたは円筒体でよい。画像形成部材は、印刷システム内で液浸流体を含む湿し水を受けるよう設定され得る。液浸流体には、例えば、液体中に分散した固体粒子が含まれ得る。固体粒子は画像形成および転写部材に液体を運び供給するよう機能する。具体的には、本実施形態による液浸流体は、湿し水溶液などの、湿し水を含むことができる。好適な湿し水溶液には、D4、D5、OS20、OS30、アイソーパ液体を含むアイソーパG、L、Mおよびその他の液体を含むシリコン液体が含まれ、これらのシリコン液体は、i)絶縁性で、ii)例えば、10センチポアズより下の低い粘着性を有し、iii)低い界面エネルギーを有して、個体設計を容易にする。
【0024】
本実施形態による液浸流体は、担体粒子すなわち固体粒子を含み、この担体粒子すなわち固体粒子が湿し水を運ぶ。固体粒子は、記録媒体に定着するよう機能する必要はなく、着色される必要もない。多種多様な固体粒子を用いることができる。例えば、約1マイクロメートルの直径を有する二酸化ケイ素の粒子が適している。粉状の固体粒子、すなわち、擬集しない固体粒子は、複数の印刷動作で固体粒子を再使用するのに好ましい。
【0025】
本実施形態による液浸流体は、電荷誘導剤を含む。この電荷誘導剤は、液体中に溶けたイオン化合物でよい。電荷誘導剤により、固体粒子に電荷が与えられる。好適な電荷誘導剤には、溶解性の有機アルミニウム化合物が含まれる。
【0026】
本実施形態によるシステムは画像形成部材を含む。この画像形成部材は感光体でよい。帯電ステーションでの印刷動作のために、感光体は均一な電圧を帯びる。従来のROSスキャナを含む画像形成器を実装することができ、画像データに従って、選択的に感光体の表面の部分を帯電させて、画像形成部材の表面上に配置される静電潜像を生成するよう設定される。
【0027】
システムは、液浸現像器を含むことができる。この液浸現像器は、動作可能に配列して液浸流体を画像形成部材の表面に塗布するよう設定される。静電潜像を画像形成部材の表面上に生成したあと、画像形成部材の表面に液浸流体を塗布する。一実施形態では、液浸流体は低い密度の固体粒子を含む。例えば、質量換算で5%より少ない固体粒子を、湿し水内に有する液浸流体を用いることができる。個体密度の低い液体を、静電潜像を有する画像形成部材の表面に塗布することができ、これにより、帯電した固体粒子が、静電潜像による画像形成部材の部分に引き付けられて、液浸流体の画像が形成される。次いで、現像された液体画像は、湿し水内に現像されて質量換算で20%より高い高個体密度の個体を実現することができる。
【0028】
別の実施形態では、高い個体密度の液体画像を、画像形成部材の表面上に直接現像するために、システムが、高い個体密度の液浸流体を塗布するよう設定され得る。好適な液浸流体の実施形態は、高い密度の固体粒子を含むことができる。この実施形態に関する好ましい画像の個体密度は25%より高い。高い個体密度の液浸流体を帯電した画像形成部材の表面に塗布して、高い個体密度の液浸流体の画像を形成することができ、この液浸流体の画像は、その後画像を転写するために、その縁を残している。液浸流体により、静電潜像が現像されたあと、いくつかの空気乾燥システムを導入して空気流を吹き付け、この空気流により、画像形成部材の表面の非画像領域から余剰の液体を取り除かれる。
【0029】
本実施形態によるシステムは、転写部材を含み、この転写部材が、現像された液浸流体の画像を有する画像形成部材の表面の対応領域から液体を受ける。液浸流体内の電荷誘導剤により、液浸流体の固体粒子に電荷が与えられ、この固体粒子が帯電したため、その粒子は画像形成部材の静電潜像に対応する、その表面の部分に引き付けられ、その静電潜像は、均一に帯電した画像形成部材に照射することにより生成される。画像形成部材に電気的にバイアスをかけて、画像形成部材の表面の液浸流体が、固体粒子を引き付け保持する力を向上させることができる。一実施形態では、画像形成部材と転写部材により形成された、湿し水の画像転写ニップで、転写部材に電気的にバイアスをかけて、その表面から固体粒子を弾かせることができる。バイアスをかけられた転写部材により、湿し水の画像転写ニップでの画像形成部材の表面による固体粒子の保持力を向上させることができる。
【0030】
画像形成部材と転写部材の1方または両方に電気的バイアスをかけることにより、印刷動作の転写ステップ中に画像形成部材から転写部材に固体粒子が転移することを防ぐ。液浸流体の固体粒子の転移は防止されるが、液浸流体の湿し水は転移することができる。転写ニップで、転写部材の表面が画像形成部材の表面と接触するとき、画像形成部材の表面から液体が分離して、画像形成部材の表面上に現像された液浸流体の画像に対応する転写部材の表面上に湿し水の層を形成する。湿し水が転移するときの物理現象は、液体トナーが転写されるときの物理現象、および接触静電式印刷と類似するが、電気的バイアスが反対方向にかけられて、固体粒子を転移させる代わりに、固体粒子を保持する。
【0031】
具体的には、画像形成部材の表面上で現像された液浸流体が、液浸流体の画像転写ニップまたは湿し水の画像転写ニップ内に入るとき、ニップでの電界は弱く、その画像は固体と液体の混合物を含む。転写ニップ内では、電界が強く、この転写ニップにより、画像形成部材の表面に個体が押し付けられ、画像形成部材の表面上に配置された個体画像と転写部材との間に薄い液体層を生成する。
【0032】
転写ニップの出口では、薄い液体層が分離し、液浸流体の画像の固体粒子が画像形成部材の表面上に保持される。画像形成部材から転写部材に液体が転移し、転写部材の表面上に個体画像から湿し水の画像が形成される。湿し水の画像の固体粒子の密度は、液浸流体の画像の密度より低い。その後、インク塗布システムを用いて、転写部材の表面にインクを塗布することにより、湿し水の画像を現像することができる。湿し水の画像に対して、陽画または陰画のどちらかを、現像することができる。随意的に予備硬化ステップを実行することができ、これにより、現像されたインク画像に照射をあてて、粘着性を増すことができる、あるいは画像転写の準備としてインクの密着性を高めることができる。転写部材と搬送部材により画定された転写ニップを通過する記録媒体に、現像されたインク画像を転写することができる。その後、印刷画像をさらに硬化させることができる。
【0033】
本実施形態によるインクベースのデジタル印刷システムおよび方法により、IR吸収、湿し水、およびインクの要求の全てを満たす画像形成部材の材料のセットの開発に関連するリスクおよびコストを抑えることができる。さらに、このシステムおよび方法により、画質を向上させ、印刷速度を上げ、廃棄を減少させることができる。本実施形態によるシステムおよび方法は、プルバックを含む処理の問題に取り組む。具体的には、従来技術のデジタルインクベースの印刷システムの高出力のレーザ画像形成では、画像形成する位置で湿し水が急速に増量してしまう。さらに、この」システムおよび方法では、好ましい均一な湿し水に対応している。転写部材の表面上では液体は非常に均一でなければならない。例えば、湿し水層が約0.5マイクロメートル厚さの場合、5%の許容範囲により、湿し水の厚さのばらつきは、25nmより小さくなければならない。画像形成の位置での蒸気制御に関連する問題は事前に解決される。従来技術のシステムにより画像が形成されたあと、蒸発した湿し水は、画像領域に留まり得る。蒸発した湿し水は、画像形成部材または隣接する領域に再付着する可能性がある。蒸気を中和させるために使用される空気流が、誘発された、または増加した蒸気を流すことにより、湿し水層の均一性を妨げる可能性がある。図1に示すそれらの従来技術システムなどの従来技術のシステムでは、画像形成位置周辺の空気流は慎重に制御しなければならない。
【0034】
図2には、本実施形態によるインクベースのデジタル印刷システムが示される。具体的には、図2には、画像形成部材205が示される。この画像形成部材205は、電荷保持面207を含むことができ、この電荷保持面207には均一な電圧が印可できるよう設定される。本実施形態では、画像形成部材の表面は、シリコン弾性体、フルオロシリコン弾性体、およびVitonを含むことができる。好ましくは、画像形成部材の表面207は、感光体でよい。システムは、湿し水/固体粒子除去システム210を含むことができ、この湿し水/固体粒子除去システム210は、画像形成部材の表面207に隣接して配置される。このシステムは、帯電ステーション211を含むことができ、この帯電ステーション211は配置され、画像形成部材205の表面207を帯電させるよう設定される。このシステムは、ラスタ出力スキャナ(「ROS」)または画像形成器212を含むことができ、このラスタ出力スキャナまたは画像形成器212は、画像形成部材205の表面207上に静電潜像(図示せず)を生成するために、画像データに従って均一に帯電した表面に選択的に照射するよう設定される。
【0035】
システムは、液浸流体調量システム217を含むことができる、この液浸流体調量システム217は、画像形成部材205の表面207上に液浸流体の均一な層(図示せず)を塗布する。液浸流体は、ROS画像形成器212により、その上に現像された静電潜像従って、画像形成部材の表面207の一部に付着するよう設定される。この液浸流体は、湿し水およびその中に分散した固体粒子を含む。好ましくは、液浸流体は低い密度の、例えば、5%より低い固体粒子を含む。例えば、この流体は、約1マイクロメートルの直径を有する二酸化ケイ素の粒子を含むことができる。液浸流体は、固体粒子に電荷を与えるためにこの流体の中に溶けた電荷誘導剤を含む。画像形成部材205に電気的にバイアスをかけて、液浸流体の固体粒子を画像形成部材の表面207上に引き付け、保持することができる。
【0036】
画像形成部材205と共に湿し水の画像転写ニップを形成するよう転写部材235を設定することができる。液浸流体調量システム217およびROS画像形成器212により、画像形成部材の表面207の領域に塗布された液浸流体の画像の湿し水は、転写部材の表面231に転写ニップでの圧力により転移される。具体的には、転写部材の表面231と画像形成部材の表面207との間に軽い圧力をかけることができる。湿し水の画像転写ニップでは、圧力により湿し水の画像が分離し、一定の量の湿し水が転写部材235に転移し、湿し水の画像を形成する。転移される湿し水の量は、接触する圧力を調整することにより、調整することができる。例えば、約1マイクロメートル以下の湿し水の層を転写部材の表面231に転移させることができる。
【0037】
湿し水の画像が転写部材235に転写されたあと、インク塗布器219によりインクが転写部材の表面231に塗布されて、インクのパターンすなわち画像が形成される。インクのパターンすなわち画像は、湿し水のパターンの陰画でよい、すなわち湿し水のパターンに対応し得る。転写部材235と基材搬送ローラ240により形成されたインク画像転写ニップで、インク画像を媒体に転写することができる。基材搬送ローラ240は、用紙搬送241を、例えば、転写部材の表面231に対して押し付けて、転写部材235から、用紙搬送241により運ばれる媒体へのインク画像の接触転写を容易にすることができる。
【0038】
システムは、レオロジ調整システム245を含むことができ、インク画像転写ニップにてインク画像が転写される前に、このレオロジ調整システム245により、インク画像のインクの粘着性を増す。このシステムは、硬化システム247を含むことができる、転写部材235から、例えば、用紙搬送241により運ばれる媒体にインク画像が転写されたあとに、この硬化システム247により、媒体上のインク画像を硬化させる。レオロジ調整システム245を、媒体処理方向に対して転写ニップ前に配置することができる。硬化システム247を、媒体処理方向に対して転写部材235の後に配置することができる。転写部材235から媒体にインク画像を転写したあと、転写部材清掃システム239により、残余インクを取り除くことができる。
【0039】
湿し水のパターンが、画像形成部材の表面207から転写されたあと、除去システム210を用いて、湿し水および固体粒子を取り除くことにより、新しいサイクルへの準備のために、画像形成部材205を清掃することができる。画像形成部材の表面207を清掃するために様々な方法を用いることができる。
【0040】
画像形成部材205と同様に、転写部材235にも電気的なバイアスをかけて、転写ニップ236での湿し水の画像の転写効率を向上させることができる。図3には、図2の転写ニップ236の拡大図が示される。本実施形態では、システムは、画像形成部材305を含むことができ、この画像形成部材305は、転写部材335と共に転写ニップを形成する。図3には、ROS画像形成装置に生成された静電潜像に従って、画像形成部材305の表面307上に位置する液浸流体350が示される。液浸流体350には、帯電した固体粒子351、およびその固体粒子351により運ばれる湿し水355が含まれる。転写ニップで、湿し水は画像形成部材の表面307と転写部材の表面331とに挟まれる液体の層を形成する。画像形成部材305に電気的にバイアスをかけて、転写ニップで固体粒子を表面307に引き付け、その表面307に保持する。湿し水の層が分離し、均一な湿し水の層355を転写部材の表面331の部分に残して、対応する湿し水の層の画像を形成するとき、転写部材335に電気的にバイアスをかけて、固体粒子を画像形成部材の表面307に向け、転写部材の表面331から弾く。
【0041】
図4には、別の実施形態による、インクベースのデジタル印刷システムが示される。具体的には、図4には、電荷保持面403を有する感光体401が示される。この感光体は、画像形成部材405と共に、固体粒子転写ニップを形成する。この実施形態では、画像形成部材の表面は、シリコン弾性体、フルオロシリコン弾性体、およびVitonを含むことができる。システムは、湿し水/固体粒子除去システム410を含むことができ、この湿し水/固体粒子除去システム410は、感光体401に隣接して配置される。システムは、ROS画像形成器412を含むことができ、この画像形成器412は、感光体401の表面403上に静電潜像(図示せず)を生成するために、画像データに従って均一に帯電した感光体401の表面403に選択的に照射するよう設定される。
【0042】
システムは、液浸流体調量システム417を含むことができ、この液浸流体調量システム417が、液浸流体の均一な層(図示せず)を画像形成部材405の表面407上に調量する。液浸流体の固体粒子は、ROS画像形成器412により、その上に現像された静電潜像に従って、感光体の表面403の部分に付着するよう設定される。液浸流体は湿し水、およびその湿し水の中に分散した高い密度の個体粒を含む。例えば、この流体は、約1マイクロメートルの直径の二酸化ケイ素の粒子を含むことができる。この実施形態では、液浸流体高い密度、例えば、25%より高い固体粒子を含むことができる。液浸流体はその流体中に溶けた電荷誘導剤を含み、この電荷誘導剤により固体粒子に電荷が与えられる。画像形成部材と感光体により形成される画像形成ニップを液浸流体の層が通過するとき、感光体401上に形成された静電画像に従って、固体粒子が液浸層から取り除かれ、それと共に流体が運ばれる。残った液浸流体は固体粒子を含み、インクを用いて、現像される画像を形成する。
【0043】
画像形成部材405と共に湿し水の画像転写ニップを形成するよう転写部材435を設定することができる。この湿し水の画像転写ニップで、画像形成部材405の表面407上で生成された液浸流体の画像の液体部分を、圧力により、転写部材の表面431に部分的に転写する。具体的には、転写部材の表面431と画像形成部材の表面407との間に軽い圧力をかけることができる。湿し水の画像転写ニップで、圧力により湿し水の画像は分離し、一定の量の湿し水が、転写部材435に転移し、湿し水の画像を形成する。転移される湿し水の量は、接触圧力を調整することにより調整することができる。例えば、約1マイクロメートル以下の湿し水層を転写部材の表面431に転移することができる。
【0044】
湿し水の画像が、転写部材435に転写されたあと、インク塗布器419により、インクが転写部材の表面431に塗布されて、インクのパターンすなわち画像が形成される。インクのパターンすなわち画像は、湿し水のパターンの陰画でよい、すなわち湿し水のパターン、すなわち画像に対応し得る。転写部材435と基材搬送ローラ440により形成されたインク画像転写ニップで、インク画像を媒体に転写することができる。基材搬送ローラ440は、用紙搬送441を、例えば、転写部材の表面431に対して押し付けて、転写部材435から、用紙搬送441により運ばれる媒体へのインク画像の接触転写を容易にすることができる。
【0045】
システムは、レオロジ調整システム445を含むことができ、インク画像転写ニップにてインク画像が転写される前に、このレオロジ調整システム445により、インク画像のインクの粘着性を増す。このシステムは、硬化システム447を含むことができ、転写部材435から、例えば、用紙搬送441により運ばれる媒体に、インク画像が転写されたあとに、この硬化システム447により、媒体上のインク画像を硬化させる。レオロジ調整システム445を、媒体処理方向に対して転写部材ニップの前に配置することができる。硬化システム447を、媒体処理方向に対して転写部材435の後に配置することができる。インク画像が転写部材435から媒体に転写されたあと、転写部材清掃システム439により、残余インクを取り除くことができる。
【0046】
湿し水のパターンを画像形成部材の表面407から転写したあと、除去システム(図示せず)を用いて、湿し水および固体粒子を取り除くことにより、新しいサイクルへの準備のために、画像形成部材405を清掃することができる。画像形成部材の表面407を清掃するために様々な方法を用いることができる。画像形成部材405、および/または転写部材435に電気的にバイアスをかけて、転写部材上への湿し水の転写効率、および画像形成部材405上への固体粒子の保持効率を向上させることができる。
【0047】
図5には、本実施形態による、インクベースのデジタル印刷を行う方法が示される。具体的には、図5には、インクベースのデジタル印刷処理500が示される。この方法では、S501で、感光体の表面を均一な電位に帯電させるステップを含むことができる。S505で、感光体の帯電面をROS画像形成器で照射して、印刷される画像の画像データに従って、感光体表面の一部を選択的放電させて、静電潜像を形成する。
【0048】
方法は、S507で、電気的に帯電した粒子を有する液浸流体を、画像形成部材の表面に塗布するステップを含むことができ、この画像形成部材の表面は電荷保持面である。それにより、この潜像に従って、画像形成部材の表面上に液浸流体の画像を形成することができる。
【0049】
方法は、S509で、画像形成部材と転写部材とで形成された湿し水の画像転写ニップで、液浸流体の画像の湿し水を、転写部材に転写するステップを含むことができる。それにより、画像形成部材の潜像に対応する湿し水の画像が形成される。この湿し水の画像の固体粒子の密度は、液浸流体の画像よりも低い。
【0050】
方法は、S511で、画像形成部材から転写部材に湿し水が転移されるとき、画像形成部材と転写部材とのうちの少なくとも1方にバイアスをかけて、固体粒子を画像形成部材の表面上に維持するステップを含むことができる。画像形成部材に電気的にバイアスをかけて、液浸流体の帯電した固体粒子を引き付け維持させることができる、かつ/または、転写部材に電気的にバイアスをかけて、湿し水の転写中に帯電した固体粒子を画像形成部材から転写部材に弾かせることができる。
【0051】
方法は、S515で、湿し水の画像を有する転写部材の表面にインクを塗布するステップを含むことができる。このインクは、湿し水の画像に従って、転写部材の部分に付着することができる。例えば、このインクにより、湿し水の画像に対して陽画または陰画画像あるいはパターンを形成することができる。この方法は、S521で、インク画像転写ニップで、インク画像を記録媒体に転写するステップを含むことができる。転写ローラと転写部材により、転写ニップを形成することができ、カットシートまたは連続ウェブのどちらかである挟まれた記録媒体に圧力をかけるよう設定することができる。
【0052】
図6には、一実施形態による、インクベースのデジタル印刷の方法が示される。具体的には、図6には、インクベースのデジタル印刷処理600が示され、このインクベースのデジタル印刷処理600では、固体粒子密度が高い液浸流体を使用する。この方法は、S601で、感光体表面を均一な電位に帯電させるステップを含むことができる。この方法は、S605で、印刷される画像の画像データに従って、ROS画像形成器で、感光体の帯電面に照射して、感光体表面の部分に選択的に放電させて静電潜像を形成する。
【0053】
方法は、S607で、電気的に帯電した粒子を有する液浸流体を、画像形成部材の表面に塗布するステップを含むことができ、この画像形成部材の表面は感光体の電荷保持面から分離されている。それにより、画像形成部材の表面上に、液浸流体の画像の層を形成することができる。この液浸流体は、例えば、25%より高い固体粒子の高コンテンツを有する。静電潜像に従って、感光体の表面の所望の部に付着させるために、固体粒子は帯電している。
【0054】
方法は、塗布された液浸流体内の帯電した固体粒子、およびそれに付随する湿し水を、S608で、画像形成部材の表面から転写された静電潜像を有する感光体に転写して、画像形成部材の表面上に液浸流体の画像、すなわち湿し水の画像を生成するステップを含むことができる。画像形成後、液浸流体の固体粒子および湿し水の成分を、システムの成分から取り除くことができる。
【0055】
方法は、S609で、画像形成部材と転写部材により形成された湿し水の画像転写ニップで、液浸流体の画像の湿し水を、転写部材に転移させるステップを含むことができる。それにより、画像形成部材の潜像に対応する湿し水の画像が形成される。この湿し水の画像の、固体粒子の密度は、画像形成部材の表面上に形成される液浸流体の画像より低い。
【0056】
方法は、S611で、画像形成部材から転写部材に湿し水が転移されるとき、画像形成部材と転写部材とのうちの少なくとも1方にバイアスをかけて、固体粒子を画像形成部材の表面に保持するステップを含むことができる。画像形成部材から転写部材への湿し水の転移中に、画像形成部材に電気的にバイアスをかけて、液浸流体の帯電した固体粒子を、引き付け、保持することができる、および/または、転写部材にも電気的にバイアスをかけて、帯電した固体粒子を弾くころができる。
【0057】
方法は、S615で、湿し水の画像を有する転写部材の表面に、インクを塗布するステップを含むことができる。この湿し水の画像に従って、転写部材の一部にインクを付着させることができる。例えば、このインクにより、湿し水の画像に対して陽画の画像または陰画の画像あるいはパターンを形成することができる。この方法は、S621で、インク画像転写ニップで、インク画像を記録媒体に転写するステップを含むことができる。この転写ニップは転写ローラと転写部材とにより形成され得、カットシートまたは連続ウェブのどちらかの挟まれた記録媒体に圧力かけるよう設定され得る。なお、以下に本発明の構成の一例を付記として示す。
(付記1)
インク印刷に有用なインクベースのデジタル印刷システムであって、
画像形成部材上に液浸流体の画像を形成するよう設定された画像形成部材であって、前記液浸流体が、湿し水、および前記湿し水内に分散した固体粒子を含む、画像形成部材と、
転写部材と前記画像形成部材により形成された液体画像転写ニップで、前記液浸流体の画像の湿し水の部分を、前記画像形成部材から転写部材に転写するよう設定された転写部材と、を含むシステム。
(付記2)
画像データによって、画像形成部材の表面に静電潜像を形成する画像形成器システムと、
前記潜像によって、液浸流体を前記画像形成部材の表面に供給して、液体画像を形成するよう設定された液浸流体調量システムと、含む付記1に記載のインクベースのデジタル印刷システム。
(付記3)
電気的にバイアスをかけられる、前記画像形成部材および前記転写部材のうちの少なくとも1方を含む付記1に記載のシステム。
(付記4)
画像データによって、感光体の表面上に静電潜像を形成する画像形成器システムであって、前記感光体が前記画像形成部材と共に固体粒子転写ニップを形成する、画像形成器システムと、
液浸流体を前記画像形成部材に供給して、液浸流体の均一な層を形成するよう設定された液浸流体塗布システムであって、前記感光体と前記画像形成部材が、前記感光体上の前記潜像に従って、前記均一な層の前記固体粒子の少なくとも一部を、前記固体粒子転写ニップで、前記感光体に転移させて、前記画像形成部材上に、前記液浸流体の画像を形成するよう設定された液浸流体塗布システムと、を含む付記1に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6