【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のバリ除去装置は、スラブの前縁部のバリの除去しか行えないので、スラブの後縁部のバリを除去するためには、スラブの搬送方向に対する切断手段(バイト)の配置姿勢が異なる、別のバリ除去装置を設ける必要がある。
【0006】
同様に、特許文献2記載のバリ除去装置も、スラブの後縁部のバリ除去しか行えないので、スラブの前縁部のバリ除去を行うためには、スラブの搬送方向が相異なる、別の搬送ラインにバリ除去装置を設ける必要がある。
【0007】
また、特許文献1,2記載のバリ除去装置においては、バリ除去用の切断手段の支持機構や切断手段を昇降させる機構などがスラブ搬送ラインの下方に配置されているため、高温状態にあるスラブが発する大量の熱によって前記機構が加熱されて高温になったり、バリ除去作業中にスラブから落下したバリや金属剥離片あるいは搬送ライン冷却用の散水などが前記機構に降りかかったりするため、前記機構が故障する原因となっていた。前記機構が故障すると、バリ除去装置が稼働不能となるので、スラブの搬送を中止して修理を行わなければならず、稼働率を低下させる大きな要因となっている。
【0008】
一方、特許文献3記載のバリ除去装置においては、切断手段の昇降機構や往復機構などがスラブの搬送ラインの外側に配置されているため、前述したスラブが発する熱やスラブからの落下物あるいは搬送ライン冷却用の散水などによる悪影響は回避することができるが、バリ除去作業を行うときに、その都度、スラブの搬送を停止する必要があるため、作業効率が悪く、製造ラインの稼働率を低下させる要因の一つとなっている。また、特許文献3記載のバリ除去装置は、カッタ及びこれを保持するフレームのみをシリンダで往復移動させてバリを切断する方式であるため、バリに対するカッタの衝撃力(打撃力)が足りず、バリ除去機能が劣る面がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、故障が少なく、優れたバリ除去機能を安定的に発揮することができ、製造ラインの稼働率を高水準に維持可能なバリ除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバリ除去装置は、
搬送ラインの下方に前記搬送ラインに沿って搬送されるスラブの搬送方向に沿って前進後退可能に配置された走行フレームと、前記搬送ラインに沿って搬送される
前記スラブの前縁部及び後縁部のバリを除去するため
前記走行フレームに設けられた切断手段と、前記切断手段を昇降させるため前記搬送ラインの側方に配置された昇降用シリンダと、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退させるため前記搬送ラインの側方に配置された進退用シリンダと、を備え
、
前記切断手段が、スラブの前縁部のバリを除去する前方切断刃群と、スラブの後縁部のバリを除去する後方切断刃群と、を備え、
前記前方切断刃群及び前記後方切断刃群が、前記搬送ラインの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃と、前記切断刃をそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段と、を備えたことを特徴とする。ここで、前記「前進後退」中の「前進」とは搬送ラインにおけるスラブの進行方向と同方向に移動することをいい、前記「後退」とはスラブの進行方向と逆方向(180度反対方向)に移動することをいう。
【0011】
このような構成とすれば、昇降用シリンダ及び進退用シリンダがスラブ搬送ラインの下方に存在しない状態となるので、スラブからの熱影響、搬送ライン冷却用の散水及びスラブから落下する剥片などに起因する昇降用シリンダや進退用シリンダの故障を防止することができ、安定したバリ除去作業を行うことが可能となり、製造ラインの稼働率を高水準に維持することができる。
【0012】
また、進退用シリンダを用いて、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを全体的に進退させる構造としたことにより、重りなどの質量増大手段を付加することなく、当該バリ除去装置の構成部材の範囲内において、切断手段と連動して進退動作する部分の質量を最大限に確保することができるので、進退動作中の切断手段に大きな運動エネルギを持たせることができ、バリに対する切断手段の衝撃力が高まり、優れたバリ除去機能を発揮する。
【0013】
ここで、前記進退用シリンダ
は、その前進動作速度が前記スラブの搬送速度より大
となるように設定されたシリンダであることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、進退用シリンダの前進動作により、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを、スラブの搬送速度より速い速度で搬送方向に移動させることが可能となるため、搬送ラインに沿って搬送されているスラブを停止させることなく、当該スラブのバリを除去することが可能となり、製造ラインの稼働率の向上に有効である。なお、進退用シリンダの後退動作速度については限定しないので、作業条件に適した速度に設定することができる。
【0015】
また、
前記バリ除去装置においては、前記切断手段は、スラブの前縁部のバリを除去する前方切断刃群と、スラブの後縁部のバリを除去する後方切断刃群と、を備え
ている。ここで、前記「前縁部」中の「前」とはスラブの搬送ラインにおけるスラブの進行方向の先頭側をいい、前記「後縁部」中の「後」とはスラブの進行方向の後尾側をいう。
【0016】
このような構成とすれば、前記切断手段が前進するときに前方切断刃群でスラブの前縁部のバリを除去することができ、前記切断手段が後退するときに後方切断刃群でスラブの後縁部のバリを除去することができるので、バリ除去作業の効率化を図ることができる。
【0017】
また、
前記バリ除去装置においては、前記前方切断刃群及び前記後方切断刃群が、前記搬送ラインの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃と、前記切断刃をそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段と、を備え
ている。
【0018】
このような構成とすれば、完全な平面をなしていない曲面状(あるいは凹凸状)のスラブ下面に前方切断刃群や後方切断刃群が当接したとき、複数の切断刃がそれぞれスラブ下面の凹凸曲面に沿って下降し、全ての切断刃がスラブ下面に当接した状態となるので、バリを確実に除去することができる。
【0019】
一方、少なくとも前記後方切断刃群を構成する切断刃に所定値を超える外力が加わったときに破断して前記切断刃の少なくとも一部を前記弾性保持手段側から離脱させる優先破断手段を設けることが望ましい。
【0020】
このような構成とすれば、動作不良などの原因により、上昇した状態にある後方切断刃群に、搬送されてきたスラブが当接して所定値を超える外力が加わると優先破断手段が機能して、当接した部分に位置する切断刃の少なくとも一部を弾性保持手段側から離脱させることが可能となるので、バリ除去装置の重大な損傷を回避することができる。従って、バリ除去装置の重大損傷によるスラブ搬送ラインの長時間停止や、これに起因する連続鋳造機の途中停止、及び、停止中の温度低下による連鋳スラブの硬化などを防止することができ、製造ラインの稼働率の維持に有効である。
【0021】
この場合、前記優先破断手段として、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに自ら破断する連結部材を前記切断刃と前記弾性保持部手段との間に介在させたり、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに応力集中により優先的に破断する優先破断部を設けたりすることもできる。なお、優先破断部としては、例えば、切断刃の一部に、括れ部や切欠き部などを設けることができる。
【0022】
また、前記連結部材として、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに剪断破断するシヤーピンを用いることができる。
【0023】
このような構成とすれば、簡素な構造でありながら、確実な破断機能を持たせることができ、スラブが当接して所定値を超える外力が切断刃に加わったときにシヤーピンのみが剪断破断して切断刃が離脱するので、破断後の切断刃の交換も容易である。
【0024】
また、搬送中のスラブが前方切断刃群の背面側に当接したとき当該スラブの当接圧力により当該前方切断刃群が押し下げられるように誘導するガイド面を前記前方切断刃群の背面側に設けることが望ましい。
【0025】
このような構成とすれば、前記後方切断刃群に当接して前記連結手段を破断させた後、後方切断刃群があった位置を通過したスラブが前記前方切断刃群に当接したような場合、当該スラブはガイド面に沿って滑動しながら搬送方向に移動するが、この過程で前方切断刃群がスラブとの当接圧力によって押し下げられるので、前方切断刃群などの重大な損傷を回避することが可能となり、スラブ搬送ラインの停止を防止することができる。
【0026】
一方、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退可能に保持するための車輪及び軌道と、前記車輪が前記軌道から離脱するのを防止する拘束手段とを設けることができる。
【0027】
このような構成とすれば、バリ除去作業中のスラブと切断刃との衝突に起因する衝撃などにより、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダなどを支える車輪が前記軌道から浮き上がるのを防止することができ、バリ除去作業の安定化に有効である。
【0028】
また、前記昇降用シリンダがエアシリンダであり、前記進退用シリンダが油圧シリンダであることが望ましい。
【0029】
このように、昇降用シリンダをエアシリンダとすれば、走行フレーム及び切断手段の昇降動作を瞬速化することができるので、作業効率を高めることができ、エアシリンダ内のエアの弾性的な圧縮性により、曲面状あるいは凹凸状をなすスラブ下面に対する切断刃の接触性や追従性が向上するので、バリの取り残しを防止することができる。また、進退用シリンダを油圧シリンダとすれば、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを強力かつ迅速に進退させることが可能となり、切断手段に強力な打撃力を持たせることができるので、バリ除去機能の向上に有効である。