特許第6132725号(P6132725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132725
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】バリ除去装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/126 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B22D11/126 F
   B22D11/126 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-198642(P2013-198642)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-62928(P2015-62928A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】西原 隆
(72)【発明者】
【氏名】日野 博文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 善朗
(72)【発明者】
【氏名】中鶴 星志
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−173425(JP,U)
【文献】 実開昭58−008523(JP,U)
【文献】 特開平08−141714(JP,A)
【文献】 実公平06−038606(JP,Y2)
【文献】 実公昭61−017771(JP,Y2)
【文献】 韓国登録特許第10−1260056(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
B23K 7/10
B23D 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインの下方に前記搬送ラインに沿って搬送されるスラブの搬送送方向に沿って前進後退可能に配置された走行フレームと、前記搬送ラインに沿って搬送される前記スラブの前縁部及び後縁部のバリを除去するため前記走行フレームに設けられた切断手段と、前記切断手段を昇降させるため前記搬送ラインの側方に配置された昇降用シリンダと、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退させるため前記搬送ラインの側方に配置された進退用シリンダと、を備え
前記切断手段が、スラブの前縁部のバリを除去する前方切断刃群と、スラブの後縁部のバリを除去する後方切断刃群と、を備え、
前記前方切断刃群及び前記後方切断刃群が、前記搬送ラインの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃と、前記切断刃をそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段と、を備えたことを特徴とするバリ除去装置。
【請求項2】
前記進退用シリンダは、その前進動作速度が前記スラブの搬送速度より大となるように設定されたシリンダである請求項1記載のバリ除去装置。
【請求項3】
少なくとも前記後方切断刃群を構成する切断刃に所定値を超える外力が加わったときに破断して前記切断刃の少なくとも一部を前記弾性保持手段側から離脱させる優先破断手段を設けた請求項1または2記載のバリ除去装置。
【請求項4】
前記優先破断手段として、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに、自ら破断する連結部材を前記切断刃と前記弾性保持部手段との間に介在させ、若しくは前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに応力集中により優先的に破断する優先破断部を前記切断刃に設けた請求項記載のバリ除去装置。
【請求項5】
前記連結部材が、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに剪断破断するシヤーピンである請求項記載のバリ除去装置。
【請求項6】
搬送中のスラブが前方切断刃群の背面側に当接したとき当該スラブの当接圧力により当該前方切断刃群が押し下げられるように誘導するガイド面を前記前方切断刃群の背面側に設けた請求項のいずれかに記載のバリ除去装置。
【請求項7】
前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退可能に保持するための車輪及び軌道と、前記車輪が前記軌道から離脱するのを防止する拘束手段とを設けた請求項1〜のいずれかに記載のバリ除去装置。
【請求項8】
前記昇降用シリンダがエアシリンダであり、前記進退用シリンダが油圧シリンダである請求項1〜のいずれかに記載のバリ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備などのスラブ搬送ラインにおいて、ガス切断されたスラブの端面に形成されたバリを剪断除去するバリ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造によって製造されたスラブのガス切断部分に形成されたバリを搬送ラインにおいて機械的に除去する技術については、従来、様々な方式が提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の「スラブトップのバリ取り装置」、特許文献2記載の「溶断鋳片のバリ取り装置」あるいは特許文献3記載の「スラブの切断バリ除去装置」などがある(以下、「バリ除去装置」と総称する。)。
【0003】
特許文献1〜3に記載されているバリ除去装置においては、スラブの搬送ラインの下方に配置された切断手段を用いて、スラブの端面から垂下しているバリを剪断除去する方式が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−141714号公報
【特許文献2】実公平6−38606号公報
【特許文献3】実公昭61−17771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のバリ除去装置は、スラブの前縁部のバリの除去しか行えないので、スラブの後縁部のバリを除去するためには、スラブの搬送方向に対する切断手段(バイト)の配置姿勢が異なる、別のバリ除去装置を設ける必要がある。
【0006】
同様に、特許文献2記載のバリ除去装置も、スラブの後縁部のバリ除去しか行えないので、スラブの前縁部のバリ除去を行うためには、スラブの搬送方向が相異なる、別の搬送ラインにバリ除去装置を設ける必要がある。
【0007】
また、特許文献1,2記載のバリ除去装置においては、バリ除去用の切断手段の支持機構や切断手段を昇降させる機構などがスラブ搬送ラインの下方に配置されているため、高温状態にあるスラブが発する大量の熱によって前記機構が加熱されて高温になったり、バリ除去作業中にスラブから落下したバリや金属剥離片あるいは搬送ライン冷却用の散水などが前記機構に降りかかったりするため、前記機構が故障する原因となっていた。前記機構が故障すると、バリ除去装置が稼働不能となるので、スラブの搬送を中止して修理を行わなければならず、稼働率を低下させる大きな要因となっている。
【0008】
一方、特許文献3記載のバリ除去装置においては、切断手段の昇降機構や往復機構などがスラブの搬送ラインの外側に配置されているため、前述したスラブが発する熱やスラブからの落下物あるいは搬送ライン冷却用の散水などによる悪影響は回避することができるが、バリ除去作業を行うときに、その都度、スラブの搬送を停止する必要があるため、作業効率が悪く、製造ラインの稼働率を低下させる要因の一つとなっている。また、特許文献3記載のバリ除去装置は、カッタ及びこれを保持するフレームのみをシリンダで往復移動させてバリを切断する方式であるため、バリに対するカッタの衝撃力(打撃力)が足りず、バリ除去機能が劣る面がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、故障が少なく、優れたバリ除去機能を安定的に発揮することができ、製造ラインの稼働率を高水準に維持可能なバリ除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバリ除去装置は、搬送ラインの下方に前記搬送ラインに沿って搬送されるスラブの搬送方向に沿って前進後退可能に配置された走行フレームと、前記搬送ラインに沿って搬送される前記スラブの前縁部及び後縁部のバリを除去するため前記走行フレームに設けられた切断手段と、前記切断手段を昇降させるため前記搬送ラインの側方に配置された昇降用シリンダと、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退させるため前記搬送ラインの側方に配置された進退用シリンダと、を備え
前記切断手段が、スラブの前縁部のバリを除去する前方切断刃群と、スラブの後縁部のバリを除去する後方切断刃群と、を備え、
前記前方切断刃群及び前記後方切断刃群が、前記搬送ラインの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃と、前記切断刃をそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段と、を備えたことを特徴とする。ここで、前記「前進後退」中の「前進」とは搬送ラインにおけるスラブの進行方向と同方向に移動することをいい、前記「後退」とはスラブの進行方向と逆方向(180度反対方向)に移動することをいう。
【0011】
このような構成とすれば、昇降用シリンダ及び進退用シリンダがスラブ搬送ラインの下方に存在しない状態となるので、スラブからの熱影響、搬送ライン冷却用の散水及びスラブから落下する剥片などに起因する昇降用シリンダや進退用シリンダの故障を防止することができ、安定したバリ除去作業を行うことが可能となり、製造ラインの稼働率を高水準に維持することができる。
【0012】
また、進退用シリンダを用いて、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを全体的に進退させる構造としたことにより、重りなどの質量増大手段を付加することなく、当該バリ除去装置の構成部材の範囲内において、切断手段と連動して進退動作する部分の質量を最大限に確保することができるので、進退動作中の切断手段に大きな運動エネルギを持たせることができ、バリに対する切断手段の衝撃力が高まり、優れたバリ除去機能を発揮する。
【0013】
ここで、前記進退用シリンダは、その前進動作速度が前記スラブの搬送速度より大となるように設定されたシリンダであることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、進退用シリンダの前進動作により、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを、スラブの搬送速度より速い速度で搬送方向に移動させることが可能となるため、搬送ラインに沿って搬送されているスラブを停止させることなく、当該スラブのバリを除去することが可能となり、製造ラインの稼働率の向上に有効である。なお、進退用シリンダの後退動作速度については限定しないので、作業条件に適した速度に設定することができる。
【0015】
また、前記バリ除去装置においては、前記切断手段は、スラブの前縁部のバリを除去する前方切断刃群と、スラブの後縁部のバリを除去する後方切断刃群と、を備えている。ここで、前記「前縁部」中の「前」とはスラブの搬送ラインにおけるスラブの進行方向の先頭側をいい、前記「後縁部」中の「後」とはスラブの進行方向の後尾側をいう。
【0016】
このような構成とすれば、前記切断手段が前進するときに前方切断刃群でスラブの前縁部のバリを除去することができ、前記切断手段が後退するときに後方切断刃群でスラブの後縁部のバリを除去することができるので、バリ除去作業の効率化を図ることができる。
【0017】
また、前記バリ除去装置においては、前記前方切断刃群及び前記後方切断刃群が、前記搬送ラインの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃と、前記切断刃をそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段と、を備えている
【0018】
このような構成とすれば、完全な平面をなしていない曲面状(あるいは凹凸状)のスラブ下面に前方切断刃群や後方切断刃群が当接したとき、複数の切断刃がそれぞれスラブ下面の凹凸曲面に沿って下降し、全ての切断刃がスラブ下面に当接した状態となるので、バリを確実に除去することができる。
【0019】
一方、少なくとも前記後方切断刃群を構成する切断刃に所定値を超える外力が加わったときに破断して前記切断刃の少なくとも一部を前記弾性保持手段側から離脱させる優先破断手段を設けることが望ましい。
【0020】
このような構成とすれば、動作不良などの原因により、上昇した状態にある後方切断刃群に、搬送されてきたスラブが当接して所定値を超える外力が加わると優先破断手段が機能して、当接した部分に位置する切断刃の少なくとも一部を弾性保持手段側から離脱させることが可能となるので、バリ除去装置の重大な損傷を回避することができる。従って、バリ除去装置の重大損傷によるスラブ搬送ラインの長時間停止や、これに起因する連続鋳造機の途中停止、及び、停止中の温度低下による連鋳スラブの硬化などを防止することができ、製造ラインの稼働率の維持に有効である。
【0021】
この場合、前記優先破断手段として、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに自ら破断する連結部材を前記切断刃と前記弾性保持部手段との間に介在させたり、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに応力集中により優先的に破断する優先破断部を設けたりすることもできる。なお、優先破断部としては、例えば、切断刃の一部に、括れ部や切欠き部などを設けることができる。
【0022】
また、前記連結部材として、前記切断刃に所定値を超える外力が加わったときに剪断破断するシヤーピンを用いることができる。
【0023】
このような構成とすれば、簡素な構造でありながら、確実な破断機能を持たせることができ、スラブが当接して所定値を超える外力が切断刃に加わったときにシヤーピンのみが剪断破断して切断刃が離脱するので、破断後の切断刃の交換も容易である。
【0024】
また、搬送中のスラブが前方切断刃群の背面側に当接したとき当該スラブの当接圧力により当該前方切断刃群が押し下げられるように誘導するガイド面を前記前方切断刃群の背面側に設けることが望ましい。
【0025】
このような構成とすれば、前記後方切断刃群に当接して前記連結手段を破断させた後、後方切断刃群があった位置を通過したスラブが前記前方切断刃群に当接したような場合、当該スラブはガイド面に沿って滑動しながら搬送方向に移動するが、この過程で前方切断刃群がスラブとの当接圧力によって押し下げられるので、前方切断刃群などの重大な損傷を回避することが可能となり、スラブ搬送ラインの停止を防止することができる。
【0026】
一方、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダを搬送方向に沿って前進後退可能に保持するための車輪及び軌道と、前記車輪が前記軌道から離脱するのを防止する拘束手段とを設けることができる。
【0027】
このような構成とすれば、バリ除去作業中のスラブと切断刃との衝突に起因する衝撃などにより、前記走行フレーム、前記切断手段及び前記昇降用シリンダなどを支える車輪が前記軌道から浮き上がるのを防止することができ、バリ除去作業の安定化に有効である。
【0028】
また、前記昇降用シリンダがエアシリンダであり、前記進退用シリンダが油圧シリンダであることが望ましい。
【0029】
このように、昇降用シリンダをエアシリンダとすれば、走行フレーム及び切断手段の昇降動作を瞬速化することができるので、作業効率を高めることができ、エアシリンダ内のエアの弾性的な圧縮性により、曲面状あるいは凹凸状をなすスラブ下面に対する切断刃の接触性や追従性が向上するので、バリの取り残しを防止することができる。また、進退用シリンダを油圧シリンダとすれば、切断手段、走行フレーム及び昇降用シリンダを強力かつ迅速に進退させることが可能となり、切断手段に強力な打撃力を持たせることができるので、バリ除去機能の向上に有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、故障が少なく、優れたバリ除去機能を安定的に発揮することができ、製造ラインの稼働率を高水準に維持可能なバリ除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態であるバリ除去装置を示す一部省略斜視図である。
図2図1に示すバリ除去装置の平面図である。
図3図2中のA−A線における断面図である。
図4図2中のB−B線における断面図である。
図5図2中のC−C線における断面図である。
図6図3中のD−D線における断面図である。
図7図3中のE−E線における断面図である。
図8】(a)は図1に示すバリ除去装置によるスラブ前縁部のバリ除去作業を示す図であり、(b)は同じくスラブ後縁部のバリ除去作業を示す図である。
図9図8に示すバリ除去作業中における切断刃の離脱状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1図7に示すように、本実施形態のバリ除去装置100は、搬送ラインLの搬送方向Tに沿って搬送されるスラブSの前縁部Sf及び後縁部SrのバリBuを剪断除去するため搬送ラインLの下方に配置された走行フレーム200に設けられた切断手段300と、切断手段300を昇降させるため搬送ラインLの左右両側方に配置された昇降用シリンダ400,400と、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400を搬送方向Tに沿って前進後退させるため搬送ラインLの側方に配置された進退用シリンダ500,500と、を備えている。
【0033】
進退用シリンダ500の前進動作速度(搬送方向Tの動作速度)はスラブSの搬送速度(搬送方向Tの移動速度)より大となるように設定されている。本実施形態では、昇降用シリンダ400としてエアシリンダを採用し、進退用シリンダ500として油圧シリンダを採用しているが、これらに限定するものではない。
【0034】
切断手段300が設けられた走行フレーム200の前後(搬送方向Tの前方、後方)には、スラブSの搬送方向Tに移動させるための搬送ロール101,102が配置されている。切断手段300は、スラブSの前縁部SfのバリBuを剪断除去する前方切断刃群300fと、スラブSの後縁部SrのバリBuを剪断除去する後方切断刃群300rと、を備えている。
【0035】
図2図7に示すように、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rは、搬送ラインLの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃301f,301rと、切断刃301f,301rをそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段304f,304rと、を備えている。図7に示すように、弾性保持手段304f,304r内にはそれぞれ切断刃301f,301rを弾性保持するための皿ばね302f,302rが設けられている。
【0036】
図2に示すように、前方切断刃群300fの平面視形状が搬送方向Tに向かって凸の鈍角山形状をなすように複数の切断刃301fが配列され、後方切断刃群300rの平面視形状が搬送方向Tと逆方向に向かって凸の鈍角山形状をなすように複数の切断刃301rが配列されている。本実施形態では、弾性保持手段304f,304rはそれぞれ弾性発生手段として皿ばね302f,302rを設けたものを用いているが、これに限定しないので、コイルばねやエアシリンダなどを採用することもできる。
【0037】
図2図7及び図9に示すように、後方切断刃群300rを構成する切断刃301r及び前方切断刃群300fを構成する切断刃301fに所定値を超える外力が加わったときに自ら破断して、切断刃301r,301fを弾性保持手段304r,304fから離脱させる連結部材303を用いて、それぞれの切断刃301r,301fが弾性保持手段304r,304fに取り付けられている。本実施形態では、連結部材303として、破断後の切断刃301r,301fの交換が容易なシヤーピンを採用しているが、これに限定するものではないので、切断刃301r,301fに所定値を超える外力が加わったときの応力集中により優先的に破断する括れ部や切欠き部などを切断刃301r,301fに設けることもできる。
【0038】
なお、本実施形態においては、後方切断刃群300rを構成する切断刃301r及び前方切断刃群300fを構成する切断刃301fはいずれも連結部材(シヤーピン)303を用いて弾性保持手段304r,304fに取り付けられているが、この構造に限定する主旨ではないので、ガイド面301gを有する切断刃301fについては連結部材(シヤーピン)303を用いることなく弾性保持手段304fに取り付けた構造とすることもできる。
【0039】
また、図9に示すように、搬送方向Tに沿って搬送中のスラブSの前縁部Sfが、前方切断刃群300fを構成する切断刃301fの背面側(搬送方向Tの後方側)に当接したとき、当該スラブSの前縁部Sfの当接圧力により当該切断刃301fが押し下げられるように誘導するためのガイド面301gがそれぞれの切断刃301fの背面側に設けられている。
【0040】
図3図4及び図5に示すように、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400を搬送方向Tに沿って前進後退可能に保持するための車輪600及び軌道700と、車輪600が軌道700から離脱するのを防止するための拘束手段である車輪601とが設けられている。車輪601は車輪600との間で軌道700の上面板701を挟持した状態で、上面板701の下面に沿って車輪600とともに走行する。なお、本実施形態では、拘束手段として車輪601を設けているが、これに限定するものではない。
【0041】
ここで、図1に示すバリ除去装置100を使用するバリ除去作業について説明する。スラブSが搬送方向Tに沿ってバリ除去装置100に向かって移動してくるとき、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400は搬送ロール101に最接近した位置にあり、切断手段300は下限まで下降した状態で待機している。このとき、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rの切断刃301f,301rはこれらの上方を通過するスラブSに接触しない位置まで下降した状態で待機している。
【0042】
搬送方向Tに沿って搬送されてきたスラブSが切断手段300の上方を通過して所定位置まで移動すると、昇降用シリンダ400が作動して切断手段300が上昇し、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rの切断刃301f,301rがスラブSの下面に接触する。この後、進退用シリンダ500が作動して走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400を、搬送方向Tと同方向に、スラブSの搬送速度よりも大きな速度で前進させる。
【0043】
この前進過程において、図8(a)に示すように、前方切断刃群300fの切断刃301fがそれぞれスラブSの下面に沿って、搬送ロール102に最接近する位置まで前進して前縁部SfのバリBuに衝突するので、剪断作用により、バリBuがスラブSから切断除去される。
【0044】
スラブSの前縁部SfのバリBuの除去が終わると、昇降用シリンダ400が作動して切断手段300が下限まで下降し、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rの切断刃301f,301rがスラブSの下面に接触しない位置まで下降し、その状態で待機する。
【0045】
この後、スラブSが搬送方向Tに沿って所定位置まで移動すると、再び、昇降用シリンダ400が作動して切断手段300が上昇し、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rの切断刃301f,301rがスラブSの下面に接触する。この後、進退用シリンダ500が作動して、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400を搬送方向Tと逆方向に向かって搬送ロール101に最接近する位置まで後退させる。
【0046】
この後退過程において、図8(b)に示すように、後方切断刃群300rの切断刃301rがスラブSの下面に沿って後退して後縁部SrのバリBuに衝突するので、剪断作用により、バリBuがスラブSから切断除去される。
【0047】
スラブSの後縁部SrのバリBuの除去が終わると、昇降用シリンダ400が作動して、切断手段300を下限まで下降させた後、その状態で次のスラブSが所定位置に搬送されてくるまで待機する。この後は、前述した過程を繰り返すことによってスラブSの前縁部Sf及び後縁部SrのバリBuの除去が行われる。
【0048】
図1図2に示すように、バリ除去装置100においては、昇降用シリンダ400及び進退用シリンダ500がスラブSの搬送ラインLの下方に存在しないので、スラブSからの熱影響、搬送ラインLの冷却用の散水及びスラブSから落下する剥片などに起因する昇降用シリンダ400や進退用シリンダ500の故障を防止することができる。このため、安定したバリ除去作業を行うことができ、製造ラインの稼働率を高水準に維持することができる。
【0049】
また、進退用シリンダ500の前進動作速度をスラブSの搬送速度より大としたことにより、搬送中のスラブSを停止させることなく、当該スラブSのバリBuを除去することができるため、製造ラインの稼働率の向上に有効である。
【0050】
さらに、進退用シリンダ500で、切断手段300、走行フレーム200及び昇降用シリンダ400を全体的に進退させる構造としたことにより、重りなどの質量増大手段を付加することなく、当該バリ除去装置100の構成部材の範囲内において、切断手段300と連動して進退動作する部分の質量を最大限に確保することができるので、進退動作中の切断手段300に大きな運動エネルギを持たせることができ、バリBuに対する切断手段300の衝撃力が極めて強力となり、優れたバリ除去機能を発揮する。
【0051】
一方、切断手段300が、スラブSの前縁部SfのバリBuを剪断除去する前方切断刃群300fと、スラブSの後縁部Srのバリを剪断除去する後方切断刃群300rと、を備えたことにより、切断手段300が前進するときに前方切断刃群300fでスラブSの前縁部SfのバリBuを除去することができ、切断手段300が後退するときに後方切断刃群300rでスラブSの後縁部Srのバリを除去することができるので、バリ除去作業の効率化を図ることができる。
【0052】
また、前方切断刃群300f及び後方切断刃群300rが、搬送ラインLの横断方向を含む方向に沿って配列された複数の切断刃301f,301rと、切断刃301f,301rをそれぞれ個別に下降可能に保持する弾性保持手段304f,304rと、を備えている。このため、完全な平面をなしていない曲面状のスラブSの下面に前方切断刃群300fや後方切断刃群300rが当接したとき、複数の切断刃301f,301rがそれぞれスラブSの下面の凹凸曲面に沿って下降し、全ての切断刃301f,301rがスラブSの下面に当接した状態となるので、バリBuを確実に除去することができる。
【0053】
さらに、図9に示すように、昇降用シリンダ400の動作不良などにより、後方切断刃群300r及び前方切断刃群300fが上昇した状態にあるときにスラブSが搬送されてきて、スラブSの前縁部Sfなどが、後方切断刃群300rを構成する切断刃301rに当接し、切断刃301rに所定値を超える外力が加わったときは、連結部材(シヤーピン)303のみが優先的に破断し、切断刃301rが弾性保持手段304rから離脱する。
【0054】
従って、上昇状態にある後方切断刃群300rに、搬送されてきたスラブSが当接したとき、バリ除去装置100の主要部の損傷を回避することができ、バリ除去装置100の重大な損傷によるスラブ製造ラインの長時間停止や、これに起因する連続鋳造機の途中停止、及び、停止中の温度低下による連鋳スラブの硬化などを防止することができ、製造ラインの稼働率の維持に有効である。
【0055】
また、連結部材(シヤーピン)303は、簡素な構造でありながら、スラブSが後方切断刃群300rに当接したときに確実に破断する機能を持たせることができ、破断後の切断刃301rの交換も容易である。
【0056】
さらに、図9に示すように、連結部材(シヤーピン)303を破断させ、後方切断刃群300rの切断刃301rを離脱させた後のスラブSの前縁部Sfが、前方切断刃群300fの背面側に当接したとき、スラブSの前縁部Sfは前方切断刃群300fの切断刃301fのガイド面301gに沿って滑動するが、この過程において、スラブSの前縁部Sfの当接圧力により前方切断刃群300fが押し下げられるので、前方切断刃群300fの重大な損傷を回避することが可能となり、スラブ製造ラインの停止を防止することができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、前方切断刃群300fの切断刃301fもそれぞれ連結部材(シヤーピン)303を介して弾性保持手段304fに取り付けられているので、何らかの原因により、スラブSから切断刃301fに所定値を超える外力が加わったときは、連結部材(シヤーピン)303が優先的に破断して、切断刃301fが弾性保持手段304fから離脱する機能を備えている。
【0058】
前述したように、本実施形態においては、切断刃301r及び切断刃301fはいずれも連結部材(シヤーピン)303を用いて弾性保持手段304r,304fに取り付けられているが、この構造に限定しないので、現場の使用条件などに応じて、ガイド面301gを有する切断刃301fについては連結部材(シヤーピン)303を用いることなく弾性保持手段304fに取り付けた構造とすることもできる。
【0059】
また、スラブ除去装置100においては、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400を搬送方向Tに沿って前進後退可能に保持するための車輪600及び軌道700と、車輪600が軌道700から離脱するのを防止する拘束手段である車輪601とを設けている。
【0060】
従って、バリ除去作業中のスラブSと切断刃301f,301rとの衝突に起因する衝撃などにより、走行フレーム200、切断手段300及び昇降用シリンダ400などを支える車輪600が軌道700から浮き上がるのを防止することができ、バリ除去作業の安定化に有効である。
【0061】
さらに、昇降用シリンダ400がエアシリンダであることにより、走行フレーム200及び切断手段300の昇降動作を瞬速化することができるので、作業効率を高めることができる。また、昇降用シリンダ400(エアシリンダ)内のエアの弾性的な圧縮性により、曲面状あるいは凹凸状をなすスラブSの下面に対する切断刃301f,301rの接触性及び追従性が良好であるため、バリBuの取り残しを防止することができる。
【0062】
一方、進退用シリンダ500を油圧シリンダとしたことにより、切断手段300、走行フレーム200及び昇降用シリンダ400を強力かつ速く進退させることが可能となり、切断手段300に強力な打撃力を持たせることができるので、バリ除去機能の向上に有効である。
【0063】
なお、図1図9に基づいて説明したバリ除去装置100は本発明の一例を示すものであり、本発明のバリ除去装置は前述したバリ除去装置100に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のバリ除去装置は、製鉄業における連続鋳造設備などのスラブ搬送ラインにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 バリ除去装置
101,102 搬送ロール
200 走行フレーム
300 切断手段
300f 前方切断刃群
300r 後方切断刃群
301f,301r 切断刃
301g ガイド面
302f,302r 皿ばね
303 連結部材
304f,304r 弾性保持手段
400 昇降用シリンダ
500 進退用シリンダ
600,601 車輪
700 軌道
701 上面板
Bu バリ
L 搬送ライン
S スラブ
Sf 前縁部
Sr 後縁部
T 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9