(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザ発振器は、前記光ファイバから出射された前記光が励起光として前記レーザ媒質に入射させられる光共振器である、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ装置。
前記レーザ発振器は、前記光ファイバから出射された前記光が励起光として前記レーザ媒質に入射させられる光増幅器である、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ装置。
前記レーザ発振器は、前記光ファイバから出射された前記光が種光として前記レーザ媒質に入射させられる光増幅器である、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようなレーザ装置においては、レーザ光の出力が不安定となったり、レーザ光の出力が低下したりする場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、安定且つ十分な出力のレーザ光を得ることができるレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、従来のレーザ装置において、レーザ光の出力が不安定となったり、レーザ光の出力が低下したりする現象は、光源からレーザ媒質に光を導波する光ファイバの特性に起因するものであることを突き止めた。
【0008】
光源からレーザ媒質に光を導波する光ファイバとしては、SI(Step
Index)ファイバ又はGI(Gra
ded
Index)ファイバが用いられるのが一般的である。SIファイバは、コアの屈折率が一定であり、導波される光のビームプロファイルがトップハット形状となり易い。レーザ媒質に入射させられる光のビームプロファイルがトップハット形状であると、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力が十分なものとなり易い。しかし、SIファイバは、コアの屈折率が一定であり、コアの中心と周辺とで光の伝搬速度が異なるため、導波される光の出力がファイバの形状変化の影響を受け易く不安定となり易い。レーザ媒質に入射させられる光の出力が不安定であると、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力も不安定となり易い。したがって、光源からレーザ媒質に光を導波する光ファイバとしてSIファイバを用いる場合、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力が十分なものとなり易い反面、当該出力が不安定となり易いのである。
【0009】
一方、GIファイバは、コアの屈折率が一定ではなく、コアの中心と周辺とで光の伝搬速度が同じであるため、導波される光の出力がファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易い。レーザ媒質に入射させられる光の出力が安定すると、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力も安定し易い。しかし、GIファイバは、コアの屈折率が一定ではなく、導波される光のビームプロファイルがガウス波形となる。レーザ媒質に入射させられる光のビームプロファイルがガウス波形であると、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力が低下し易い。したがって、光源からレーザ媒質に光を導波する光ファイバとしてGIファイバを用いる場合、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力が安定し易い反面、当該出力が低下し易いのである。
【0010】
このように、光源からレーザ媒質に光を導波する光ファイバとして、SIファイバ及びGIファイバのいずれを用いる場合でも、安定且つ十分な出力のレーザ光を得ることが困難となる。本発明者らは、この知見に基づいて更に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明のレーザ装置は、光を出射する光源と、光源から出射された光が入射させられ、該光を導波して出射する光ファイバと、光ファイバから出射された光が入射させられるレーザ媒質を有し、レーザ光を出射するレーザ発振器と、を備え、光ファイバは、光入射側の部分をなすGIファイバと、GIファイバに接合され、光出射側の部分をなすSIファイバと、を有する。
【0012】
このレーザ装置は、光源から出射された光が入射させられる光入射側の部分の光ファイバがGIファイバからなるので、この部分で導波される光の出力がファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易い。また、導波された光を出射する光出射側の部分の光ファイバがSIファイバからなるので、光ファイバから出射される光のビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このため、レーザ媒質に入射させられる光は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。よって、このレーザ装置によれば、安定且つ十分な出力のレーザ光を得ることができる。
【0013】
本発明のレーザ装置では、GIファイバの長さは、SIファイバの長さよりも長くてもよい。この場合、GIファイバの部分が長く、この部分で導波される光の出力がファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易いので、光源とレーザ発振器との配置設計の自由度を高めることができる。
【0014】
本発明のレーザ装置では、SIファイバは、湾曲された状態で固定されていてもよい。この場合、SIファイバの部分の長さが短い場合でも、光ファイバから出射される光のビームプロファイルがトップハット形状となり易い。
【0015】
本発明のレーザ装置は、GIファイバのコア径をΦ
GIとし、GIファイバの開口数をNA
GIとし、SIファイバのコア径をΦ
SIとし、SIファイバの開口数をNA
SIとすると、NA
GI>NA
SIの場合には下記の式(1)を満たし、NA
GI<NA
SIの場合には下記の式(2)を満たしていてもよい。これによれば、GIファイバから出射された光をSIファイバに効率よく入射させることができる。このため、GIファイバとSIファイバとの接合界面における光の伝搬ロスを抑えることができる。
2Φ
GI(NA
SI/NA
GI)≧Φ
SI≧Φ
GI(NA
SI/NA
GI)・・・(1)
2Φ
GI≧Φ
SI≧Φ
GI・・・(2)
【0016】
本発明のレーザ装置では、光源は、半導体レーザであってもよい。この場合、レーザ発振器の励起光や種光の光源として好適である。
【0017】
本発明のレーザ装置では、レーザ発振器は、光ファイバから出射された光が励起光としてレーザ媒質に入射させられる光共振器であってもよい。この場合、レーザ媒質に入射させられる励起光は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このような励起光を用いるので、光共振器から出射されるレーザ光の出力が安定し易く且つ十分なものとなり易い。
【0018】
本発明のレーザ装置では、レーザ発振器は、光ファイバから出射された光が励起光としてレーザ媒質に入射させられる光増幅器であってもよい。この場合、レーザ媒質に入射させられる励起光は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このような励起光を用いるので、光増幅器から出射されるレーザ光の出力が安定し易く且つ十分なものとなり易い。
【0019】
本発明のレーザ装置では、レーザ発振器は、光ファイバから出射された光が種光としてレーザ媒質に入射させられる光増幅器であってもよい。この場合、レーザ媒質に入射させられる種光は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このような種光を用いるので、光増幅器から出射されるレーザ光の出力が安定し易く且つ十分なものとなり易い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定して十分な出力のレーザ光を得ることができるレーザ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0023】
図1に示されるように、レーザ装置1Aは、半導体レーザ装置2と、光ファイバ3と、光学系4と、光共振器(レーザ発振器)5と、を備えている。半導体レーザ装置2は、半導体レーザ21と、半導体レーザ21から出射された励起光L1を光ファイバ3の入射端面3aに集光する光学系(図示せず)と、を有している。光ファイバ3の入射端面3aには、半導体レーザ21から出射された励起光L1が入射させられる。光ファイバ3は、入射端面3aから入射させられた励起光L1を導波して出射端面3bから出射する。光ファイバ3は、光入射側の部分(入射端面3aから光ファイバ3の所定部3cまでの部分)をなすGIファイバ31と、光出射側の部分(出射端面3bから所定部3cまでの部分)をなすSIファイバ32と、を有している。GIファイバ31とSIファイバ32とは、所定部3cにおいて溶融接合等によって接合されている。GIファイバ31の長さは、SIファイバ32の長さよりも長くなっている。GIファイバ31の長さは、例えば15cm以上となっており、SIファイバ
32の長さは、例えば15cm以下となっている。
【0024】
GIファイバ31及びSIファイバ32は、接合界面における光の伝搬ロスを抑えるために、それぞれのコア径及び開口数が以下のように設定されている。すなわち、GIファイバ31のコア径をΦ
GIとし、GIファイバ31の開口数をNA
GIとし、SIファイバ32のコア径をΦ
SIとし、SIファイバ32の開口数をNA
SIとすると、NA
GI>NA
SIの場合には下記の式(1)を満たし、NA
GI<NA
SIの場合には下記の式(2)を満たすようになっている。
2Φ
GI(NA
SI/NA
GI)≧Φ
SI≧Φ
GI(NA
SI/NA
GI)・・・(1)
2Φ
GI≧Φ
SI≧Φ
GI・・・(2)
【0025】
光学系4は、集光レンズ系であり、光ファイバ3
の出射端面3bから出射された励起光L1を光共振器5に集光する。光共振器5は、レーザ媒質51と、レーザ媒質51を挟んで対向する全反射ミラー52及び部分反射ミラー53と、を有している。レーザ媒質51は、例えば、YAG(Y
3Al
5O
12)やYVO
4等のレーザ媒質に、レーザ活性種としてネオジウム(Nd)がドープされた固体レーザ媒質である。レーザ媒質51では、光学系4によって集光された励起光L1が入射させられることによって、レーザ活性種が励起させられて、所定波長の光が放出される。
【0026】
全反射ミラー52は、励起光L1を透過させる一方で、レーザ媒質51で自然放出される光を全反射する。部分反射ミラー53は、全反射ミラー52よりも、レーザ媒質51で自然放出される光の波長に対して低い反射率を有している。全反射ミラー52及び部分反射ミラー53は、レーザ媒質51で放出された光をそれぞれで反射し、それぞれの間を往復させ、レーザ媒質51において誘導放射を生じさせる。これにより、光共振器5は、部分反射ミラー53からレーザ光L2を出射する。なお、光共振器5は、全反射ミラー52から部分反射ミラー53までが一体となったコンポジット結晶でもよい。
【0027】
図2に示されるように、SIファイバ32は、固定具33によって湾曲された状態で固定されている。固定具33は、板部材34,35を備えている。板部材34,35は、互いに対向する対向面34a,35aをそれぞれ有している。対向面34aには、凹状の湾曲面が形成されている。対向面35aには、対向面34aに形成された湾曲面と相補的な凸状の湾曲面が形成されている。これにより、板部材34,35は、SIファイバ32を対向面34a,35aの間に挟み込み、湾曲した状態で固定することができる。SIファイバ32は、コアの屈折率が一定であるため、SIファイバ32を直線配線すると、直進してきた励起光L1がコアの中央部から出射されて、コアの中央部で出力が高くなってしまう。固定具33を用いることによって、直進する励起光L1もコアの壁で反射を繰り返すため、出力が面内方向で均一になり、導波される励起光L1のビームプロファイルがトップハット形状になる。固定具33の具体的な構成としては、上記構成以外にも様々な構成を用いることができる。
【0028】
図3は、レーザ装置のSIファイバの固定具の他の例の構成図である。
図2の場合と異なる点は、固定具33は、板部材34,35の対向面34a,35aに複数の湾曲面が形成されている点である。これにより、SIファイバ32を、湾曲面に沿って複数回湾曲させて固定することができる。
【0029】
図4は、レーザ装置のSIファイバの固定具の更に他の例の構成図である。
図4に示されるように、固定具33は、箱体36と、ボルト37と、を備えている。箱体36は、矩形状の底面36a及び矩形状の側面36b〜
36eを有している。箱体36の向かい合う側面36b,36cには、底面36a側に貫通孔36f,36gがそれぞれ設けられている。SIファイバ32は、貫通孔36f,36gを通り、箱体36を貫通するように配線されている。箱体36の側面36b,36cと直交する側面36dには、ボルト37が螺合されるねじ穴36hが設けられている。ボルト37は、箱体36内において先端部37aでSIファイバ32を押圧するようにして設けられている。これにより、SIファイバ32を、湾曲させて固定することができる。湾曲量はボルト37の送り量によって調整することができる。なお、SIファイバ32は、貫通孔36f,36g
間において、底面36aと貫通孔36f,36gとによって、ファイバの径方向に移動しないように固定されるとともに、貫通孔36f,36g間において底面36aに接しているので、振動等の外部応力を受け難い。また、複数のボルト37を側面36d及び側面36dに対向する側面36eに設け、これらによってSIファイバ32を複数箇所で押圧して、複数回湾曲させる構成であってもよい。
【0030】
以上のように構成されたレーザ装置1Aにおいては、半導体レーザ21から出射された励起光L1は、光ファイバ3によって導波され、光学系4で集光され、光共振器5に入射する。光共振器5のレーザ媒質51に入射した励起光L1は、レーザ媒質51のレーザ活性種を励起し、所定波長の光を放出させる。レーザ媒質51において放出された光は、反射
ミラー52,53それぞれで反射し、反射
ミラー52,53間を往復することで、レーザ媒質51において誘導放出を生じさせる。これにより、レーザ光L2が光共振器5から出射される。
【0031】
励起光L1は、光ファイバ3によって導波される際、入射側の部分をなすGIファイバ31において、出力がファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易い。また、励起光L1は、SIファイバ32において、ビームプロファイルがトップハット形状となり易い。SIファイバ32は、固定具33によって、湾曲された状態で固定されているので、励起光L1のビームプロファイルは、より確実にトップハット形状となり易い。
【0032】
したがって、励起光L1は、出力が安定すると共に、ビームプロファイルがトップハット形状となった状態で、光ファイバ3から出射される。このような励起光L1がレーザ媒質51に入射するので、光共振器5から出射されるレーザ光L2の出力が安定且つ十分なものとなる。励起光L1がトップハット形状であると、レーザ媒質51に複雑な熱レンズが発生し難いという点でも、レーザ光L2の出力を十分なものとする上で有利である。熱レンズが発生すると、例えば、レーザ光L2の光軸がずれたり(指向性の低下)、レーザ光L2が発散または収束したりして(集光性の低下)、レーザ光L2の品質が低下し易くなる。
【0033】
ここで、GIファイバ31及びSIファイバ32の特性について説明する。
図5に示されるように、リール6及び支点7,8を用いて、光ファイバ3を湾曲させた状態で支持した。リール6として、直径が300mmの円筒形リールを用いて、リール6の外周面に光ファイバ3を接触させた。更に、支点7と支点8との間の距離dを68mmとして、支点7,8に光ファイバ3を点接触させた。そして、支点7,8間で支持されて自重によってたわんだ光ファイバ3に対し、支点7,8の逆側から自重によるたわみと同じ方向に、加圧部9を用いて力を作用させた。加圧部9による応力を段階的に変えてパルスエネルギー(PE)及びディレイを評価した。なお、自重によるたわみは、直線配線された場合を基準として、18mm(曲率半径322mm)であった。評価は、光ファイバ3をGIファイバ31のみで構成したとき、及び、SIファイバ32のみで構成したときとそれぞれ行った。GIファイバ31、SIファイバ32ともに、長さが同じで、且つ許容曲率半径が150mm以上のものを用いた。固定具33は使用しなかった。
【0034】
以上の方法で評価した評価結果を表1及び
図6に示す。
図6は、表1をグラフ化したものである。表1中のPE相対値とは、許容曲率半径付近である曲率半径154mm時のPEを100としたときの相対値である。曲率半径は、支点7,8間の距離dと、加圧時における加圧部9の位置と、から概算した。
【表1】
【0035】
また、光ファイバ3が自重でたわんだ状態で、半導体レーザ21の温度調整、光共振器5の温度調整を最適化し、パルスエネルギーを評価した評価結果を表2に示す。
【表2】
表1によれば、ファイバの形状変化が曲率半径137mm以上の範囲では、SIファイバ32を用いた場合は、GIファイバ31を用いた場合より、高いパルスエネルギーのレーザ光L2が得られている。しかし、ファイバの形状変化が曲率半径123mm以下の範囲では、GIファイバ31を用いた場合は、安定したパルスエネルギーのレーザ光L2が得られているのに対し、SIファイバ32を用いた場合は、発振が停止している。また、ディレイについては、GIファイバ31を用いた場合は、SIファイバ32を用いた場合よりも、変化が少なく安定である。すなわち、外的応力に対する出力変化特性に関しては、GIファイバ31の方がSIファイバ32よりも優れていることが明らかになった。また、表2によれば、GIファイバ31のパルスエネルギーは、半導体レーザ21の温度調整、光共振器5の温度調整を最適化した状態で、SIファイバ32の60%程度であった。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のレーザ装置1Aでは、半導体レーザ21から出射された励起光L1が入射させられる光入射側の部分(入射端面3aから光ファイバ3の所定部3cまでの部分)の光ファイバ3がGIファイバ31からなっている。また、導波された励起光L1を出射する光出射側の部分(出射端面3bから所定部3cまでの部分)の光ファイバ3がSIファイバ32からなっている。GIファイバ31の長さは、SIファイバ32の長さよりも長く、例えば15cm以上である。GIファイバ3
1によれば、導波される励起光L1の出力がファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易い。このため、光ファイバ3は、全体として形状変化の影響を受け難い部分の長さが長く、導波される励起光L1の出力が安定し易いものとなる。一方、SIファイバ32の長さは短く、例えば15cm以下である。SIファイバ32によれば、導波される励起光L1の出力がファイバの形状変化の影響を受け易く安定し難いが、SIファイバ32の長さが短いため、その影響を小さく抑えることができる。
【0037】
また、SIファイバ32によれば、光ファイバ3から出射される励起光L1のビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このため、光ファイバ3によれば、レーザ媒質51に入射させられる励起光L1は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。したがって、光共振器5から出射されるレーザ光L2の出力も安定する。更に、レーザ装置1Aでは、SIファイバ32は、固定具33によって湾曲された状態で固定されている。これにより、SIファイバ32の部分の長さが短い場合でも、光ファイバ3から出射される励起光L1のビームプロファイルがトップハット形状となり易い。また、固定されることによって、導波される光の出力がファイバの形状変化の影響を受け易く不安定となり易いというSIファイバ32のデメリットが生じ難い。したがって、このレーザ装置1Aによれば、安定且つ十分な出力のレーザ光L2を得ることができる。
【0038】
また、レーザ装置1Aは、半導体レーザ装置2と光共振器5とを離して設置することができるので、半導体レーザ21を駆動する際の熱の影響がレーザ媒質51に及ぶのを抑えることができる。更に、半導体レーザ21と光共振器5とを同じ場所に配置することができないようなスペースにも設置し易い。加えて、励起光L1を光ファイバ3で伝搬させるので、レーザ光L2の波長が光ファイバ3での伝搬に適さない場合であっても光ファイバ3を用いてレーザ装置1Aを構成することができる。
【0039】
また、レーザ装置1Aでは、GIファイバ31の長さが長く、GIファイバ31の部分で導波される励起光L1の出力は、ファイバの形状変化の影響を受け難く安定し易いので、半導体レーザ装置2と光共振器5との配置設計の自由度をより高めることができる。例えば、光ファイバ3の大部分を曲げなければ配置できないようなより狭い空間又は複雑な空間であっても、SIファイバ32が用いられる光ファイバ3の光出射側の部分だけを曲げないようにすればよいので、容易に配置できる。
【0040】
また、レーザ装置1Aは、GIファイバ31のコア径をΦ
GIとし、GIファイバ31の開口数をNA
GIとし、SIファイバ32のコア径をΦ
SIとし、SIファイバ32の開口数をNA
SIとすると、NA
GI>NA
SIの場合には下記の式(1)を満たし、NA
GI<NA
SIの場合には下記の式(2)を満たしている。これによれば、GIファイバ31から出射された励起光L1をSIファイバ32に原理的には全て入射させることができる。このため、GIファイバ31とSIファイバ32との接合界面における励起光L1の伝搬ロスを抑えることができる。
2Φ
GI(NA
SI/NA
GI)≧Φ
SI≧Φ
GI(NA
SI/NA
GI)・・・(1)
2Φ
GI≧Φ
SI≧Φ
GI・・・(2)
【0041】
また、レーザ装置1Aでは、半導体レーザ21を用いているので、光量の調整が容易で、好適な励起光L1が得られる。
[第2実施形態]
【0042】
図7に示されるように、レーザ装置1Bは、光共振器5のかわりに光増幅器(レーザ発振器)11を備える点で、レーザ装置1Aと主に異なっている。光増幅器11は、レーザ媒質51を有している。レーザ媒質51は、例えば、YAG(Y
3Al
5O
12)やYVO
4等のレーザ媒質に、レーザ活性種としてネオジウム(Nd)がドープされた固体レーザ媒質である。レーザ媒質51では、光学系4によって集光された励起光L1と、別の光源(図示せず)から出射された種光L3とがそれぞれ入射させられる。レーザ媒質51は、励起光L1によってレーザ活性種が励起させられるとともに、種光L3によって誘導放出を生じ、種光L3が増幅される。これ
により、光増幅器11は、レーザ光L2を出射する。
【0043】
以上のように構成されたレーザ装置1Bにおいては、半導体レーザ21ら出射された励起光L1は、光ファイバ3によって導波され、光学系4で集光され、光増幅器11に入射する。光増幅器11のレーザ媒質51に入射した励起光L1は、レーザ媒質51のレーザ活性種を励起する。レーザ媒質51に入射した種光L3は、レーザ媒質51に誘導放出を生じさせ、増幅する。これにより、レーザ光L2が光増幅器11から出射される。
【0044】
励起光L1は、レーザ装置1Aの場合と同様に、出力が安定すると共に、ビームプロファイルがトップハット形状となった状態で、光ファイバ3から出射される。このような励起光L1がレーザ媒質51に入射するので、光増幅器11から出射されるレーザ光L2の出力が安定且つ十分なものとなる。励起光L1がトップハット形状であると、レーザ媒質51に複雑な熱レンズが発生し難いという点でも、レーザ光L2の出力を十分なものとする上で有利である。
【0045】
以上説明したように、このレーザ装置1Bは、レーザ装置1Aと同様に、光入射側の部分(入射端面3aから光ファイバ3の所定部3cまでの部分)の光ファイバ3がGIファイバ31からなり、導波された励起光L1を出射する光出射側の部分(出射端面3bから所定部3cまでの部分)の光ファイバ3がSIファイバ32からなる光ファイバ3を備えている。光ファイバ3によれば、レーザ媒質51に入射させられる励起光L1は、出力が安定し易く且つビームプロファイルがトップハット形状となり易い。このため、光増幅器11から出射されるレーザ光L2の出力も安定且つ十分なものとなる。したがって、このレーザ装置1Bによれば、安定且つ十分な出力のレーザ光L2を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、光ファイバ3から出射された光が種光L3として光増幅器11のレーザ媒質51に入射させられてもよい。光ファイバ3から出射された光を種光L3として用いた場合、種光L3の出力が安定し易いため、レーザ装置1Bから出射されるレーザ光L2の出力も安定し易い。更に、トップハット形状のレーザ光L2が得られ易いため、例えば、レーザ光L2をミラーに入射させるような場合に、トップハット形状によれば、ミラーの一部にレーザ光L2のエネルギーが集中せず、ミラーが破損し難い。したがって、レーザ光L2の高出力化を図り易く、レーザ加工等のレーザ光の高出力化が求められる分野に用いることができる。
【0047】
また、光増幅器11のレーザ媒質51に入射させられる励起光L1及び種光L3の両方に対して、光ファイバ3から出射された光を用いるようにしてもよい。レーザ装置1Bから出射されるレーザ光L2の出力がより安定且つ十分なものとなり易い。
【0048】
また、光増幅器11のレーザ媒質51の複数箇所に励起光L1を入射させるようにしてもよい。これにより、レーザ媒質51に熱レンズが発生し難くなる。
図7では簡単のため1箇所に励起光L1を入射させる構成を説明したが、熱分布の発生を防ぐために複数箇所に励起光L1を入射させる構成が一般的である。
【0049】
また、
図7では光増幅器11のレーザ媒質51の側面に励起光L1を入射させる側面励起型について説明したが、レーザ媒質51の端面に励起光L1を入射させる端面励起型としてもよい。レーザ媒質51の両端面に励起光L1を入射させるようにしてもよい。