【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された作業車では、ステアリングシャフトは、下端側ではボールベアリングによって精度良く支持されている。
しかしながら上端側では、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合から上端側での支持箇所までの距離が長くなって、僅かではあるがスプラインシャフトに撓みを生じる虞がある。
あるいは、トルクジェネレータの出力軸に対して、ステアリングシャフトがスプライン嵌合などの着脱可能な連結構造を用いて支持され、その支持構造部分で生じるガタツキによって、僅かではあるがスプラインシャフトに傾きを生じる虞がある。
このように、スプラインシャフトの撓みやガタツキによって、スプラインシャフトの上部側が下部側に対して僅かでも傾倒すると、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合箇所では、ピニオンギヤとセクトギヤとに偏摩耗が生じ易くなって耐久性低下の要因となる虞があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
また、上記の特許文献1に記載された作業車では、ピットマンアームと一体に回動するアーム支軸の下端側と上端側とが、ともにボールベアリングで支持されるので、アーム支軸を安定良く支持し得る点で有用なものである。しかしながら、この構造のものでは、アーム支軸の上端側を支持するボールベアリングの支持部分がミッションケースの横側壁から延出されたものであるため、ミッションケースの底部側からアーム支軸を装着する際に、アーム支軸が下側から打ち込まれることがある。その場合に、ミッションケースの横側壁から延出されたボールベアリングの支持部分に大きな、あるいは衝撃的な負荷が作用することがあるので、この支持部分の強度向上のためにミッションケースの重量が増大する傾向があり、この点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ステアリングシャフトとピットマンアームとの間での動力伝達構造における耐久性の向上を図り得た作業車を提供しようとするものである。
本発明は、ピットマンアームのアーム支軸の上端側支持部分における支持強度を、ミッションケース重量の増大化を避けながら向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明における作業機の技術手段は、下端側をミッションケース内に挿入した状態で配設されたステアリングシャフトと、前記ミッションケースの下側に配備されたピットマンアームと、前記ピットマンアームを揺動操作するように前記ミッションケースの底部に配設されたアーム支軸とを備え、前記ミッションケース内で前記ステアリングシャフトの下部に備えたピニオンギヤと、前記ミッションケース内で前記アーム支軸に備えた操向ギヤとを噛合させて、前記ステアリングシャフトと前記アーム支軸とが連係作動するように構成されているとともに、前記ステアリングシャフトが、前記ピニオンギヤの下側に設けられた下部第1軸受部と、前記ミッションケース内空間の下部で前記ピニオンギヤの上側に設けられた上部第1軸受部とにより、前記ピニオンギヤを挟む上下両位置で支持さ
れ、前記上部第1軸受部は、前記ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部に支持され、前記シャフト側取付部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成され、前記アーム支軸は、前記操向ギヤよりも上側に備えた上部第2軸受部で枢支され、この上部第2軸受部が前記ミッションケースの横壁に設けられたアーム側取付部に支持され、前記ミッションケースのケース壁から延出された前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結され、前記中間接続部は前記ミッションケースの横壁内面からリブ状に突出形成されているということである。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる本発明の構成によると、ステアリングシャフトが、ピニオンギヤの下側に設けられた下部第1軸受部と、ミッションケース内空間の下部で前記ピニオンギヤの上側に設けられた上部第1軸受部とにより支持されている。つまり、ミッションケース内空間の下部において、ピニオンギヤを挟む上下両位置でステアリングシャフトが支持されている。これによって、ステアリングシャフトは、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合箇所に近い上下両側位置で水平方向の位置が規制された状態となる。
したがって、セクトギヤとの噛合箇所で生じる負荷等によってステアリングシャフトに撓みが生じるような虞は少なくなり、また、ステアリングシャフトの上部が多少ガタツキのある支持構造であっても、ピニオンギヤの位置は精度良く位置保持される。これによって、ピニオンギヤとセクトギヤとに偏摩耗が生じる可能性は少なくなり、ステアリングシャフトとピットマンアームとの間における動力伝達構造の耐久性の向上を図り得る利点がある。
【0009】
【0010】
上部第1軸受部は、ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部に支持されているので、ミッションケースのケース壁自体の強度を有効利用して、ピニオンギヤを挟む上下両位置におけるステアリングシャフトの支持を強固に行うことができる。
したがって、簡単な構造で上部第1軸受部の支持構造を強固に構成し得る利点がある。
また、ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部が、ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されているので、そのシャフト側取付部のケース壁に対する取付強度を、簡単な構造で強固に保ち易いという利点がある。
【0011】
上部第2軸受部がミッションケースの横壁に設けられたアーム側取付部に支持されているので、ミッションケースのケース壁自体の強度を有効利用して、ミッションケースの底部に配設されたアーム支軸の支持を強固に行うことができる。したがって、簡単な構造で上部第2軸受部の支持構造を強固に構成し得る利点がある。
【0012】
中間接続部によってシャフト側取付部と前記アーム側取付部とが一体的に連結され、これによって、シャフト側取付部に支持されるステアリングシャフト、及び前記アーム側取付部に支持されるアーム支軸の支持強度をさらに高め得る利点がある。
中間接続部を、ミッションケースの横壁内面から突出形成されるリブ状の部材によって構造簡単に構成し得る利点がある。
【0013】
〔解決手
段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ミッションケースが、左右方向での一端側に開口部を形成した箱状のケース本体部と、前記開口部を閉塞する蓋状ケース部とを備えて開閉可能に構成され、前記シャフト側取付部が前記ケース本体部に備えられたものであるということである。
【0014】
〔解決手
段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段2にかかる発明の構成によると、シャフト側取付部は蓋状ケース部ではなく箱状のケース本体部に備えられているので、シャフト側取付部自体を大きく形成し易いものであるとともに、そのャフト側取付部を箱状のケース本体部の補強リブとして機能するように設けることも可能である。したがって、簡単な構造で、シャフト側取付部を備えたミッションケースを構成し易いという利点がある。
【0015】
〔解決手
段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ミッションケースの底壁に前記ステアリングシャフトの挿抜用の底部開口が形成され、この底部開口に前記下部第1軸受部が設けられているということである。
【0016】
〔解決手
段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段3にかかる発明の構成によると、ステアリングシャフトの挿抜用の底部開口を下部第1軸受部の取付部として利用することにより、下部第1軸受部の取付構造の簡素化を図り得る利点がある。
【0017】
〔解決手
段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記下部第1軸受部は、前記底部開口に対して下方側から着脱可能に構成され、その下部第1軸受部の内径が前記ピニオンギヤの外径よりも小さく、当該下部第1軸受部の外径が前記ピニオンギヤの外径よりも大きく形成されているということである。
【0018】
〔解決手
段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段4にかかる発明の構成によると、内径がピニオンギヤの外径よりも小さく、外径が前記ピニオンギヤの外径よりも大きく形成されている下部第1軸受部を備えることによって、その下部第1軸受部によってピニオンギヤの下方側への抜け止めを図ることができるとともに、下部第1軸受部を取り外せば、ステアリングシャフトも、ピニオンギヤごと脱着することができる。
したがって、ステアリングシャフト及びピニオンギヤの脱着操作を行い易く構成し得る利点がある。
【0019】
〔解決手
段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記上部第1軸受部は、その外径が前記底部開口の内径よりも小径であるように形成されているということである。
【0020】
〔解決手
段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段5にかかる発明の構成によると、下部第1軸受部を取り外すことによって、底部開口から上部第1軸受部も脱着することができる。
したがって、ステアリングシャフトのピニオンギヤの上下両側に、予め軸受部を装着した状態で底部開口からステアリングシャフトを脱着することができ、ステアリングシャフト及び上下の軸受部の脱着操作を簡便に行い易くなる利点がある。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
〔解決手
段6〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記シャフト側取付部と、前記アーム側取付部と、前記中間接続部とを備えて軸受取付部が構成され、この軸受取付部は、前記ステアリングシャフトの周辺に相当する前記シャフト側取付部及び前記アーム支軸の周辺に相当する前記アーム側取付部が、前記中間接続部よりも平面視で左右方向に幅広く形成されているということである。
【0028】
〔解決手
段6にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段6にかかる発明の構成によると、ステアリングシャフトやアーム支軸を支持するシャフト側取付部及びアーム側取付部の平面視での左右方向幅が、中間接続部よりも左右方向に幅広く形成されているので、左右方向での突出長さが短い中間接続部は、全体がコンパクトであるとともに、突出長さが短いことで上下方向での負荷に対する支持強度を強固に保ちやすく形成されている。
したがって、ミッションケースのケース壁からの突出長さの短い中間接続部が、前後のシャフト側取付部及びアーム側取付部の前後方向のみならず、上下方向でも強固に支持し得る利点がある。
【0029】
〔解決手
段7〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ステアリングシャフトの上端側は前記ミッションケースの上側に備えたパワーステアリング装置の出力軸に連結されているということである。
【0030】
〔解決手
段7にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段7にかかる発明の構成によると、パワーステアリング装置の出力軸に対するステアリングシャフトの支持を、その連結箇所に多少のガタツキなどが存在するか否かに関わらず、安定的に支持し得る利点がある。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
〔解決手
段8〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、
前記アーム側取付部には、上下方向の負荷に対する補強用の縦リブが形成されているということである。
【0042】
〔解決手
段8にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段8にかかる発明の構成によると、アーム支軸の上部側を支持する上部第2軸受部がミッションケースのケース壁から延出されたアーム側取付部に支持され、そのアーム側取付部が、上下方向の負荷に対する補強用の縦リブを備えているので、比較的軽量な構造で上下方向の負荷に対するアーム側取付部の強度を向上させられる。
したがって、ミッションケース重量の増大化を避けながら、ピットマンアームのアーム支軸にミッションケースの底部側に装備させる際、アーム支軸を下側から打ち込んでアーム側取付部に下方側からの大きな負荷が作用した場合にも、アーム側取付部の損傷等を抑制し易くなる利点がある。
【0043】
〔解決手
段9〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって形成されているということである。
【0044】
〔解決手
段9にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段9にかかる発明によると、アーム側取付部への上下方向の負荷に対する補強用の縦リブが、アーム側取付部の上面とミッションケースの横壁とにわたって形成されているので、アーム側取付部の補強構造を、ミッションケースの横壁と縦リブとを利用して構造簡単に構成し得たものである。
【0045】
〔解決手
段10〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されたシャフト側取付部に支持され、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結されているということである。
【0046】
〔解決手
段10にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段10にかかる発明によると、シャフト側取付部とアーム側取付部とが中間接続部によって一体的に連結されているので、シャフト側取付部に支持されるステアリングシャフト、及び前記アーム側取付部に支持されるアーム支軸の支持強度を、簡単な構造で高め得る利点がある。
【0047】
〔解決手
段11〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記上部第2軸受部の前後両側位置に形成されているということである。
【0048】
〔解決手
段11にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段11にかかる発明によると、上部第2軸受部の前後両側位置における強度を高め得る利点がある。
【0049】
〔解決手
段12〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成されているということである。
【0050】
〔解決手
段12にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段12にかかる発明によると、ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成されているので、いずれの側のリブも小さく形成されている場合に比べて、より強度と高め得るとともに、シャフト側取付部とアーム側取付部とが中間接続部によって連結されている場合に、中間接続部に連結されていないところのステアリングシャフトから遠い側を強固に補強し得て、より耐久性を高め得る利点がある。
【0051】
〔解決手
段13〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されているということである。
【0052】
〔解決手
段13にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段13にかかる発明によると、縦リブ同士が連結されることで、より一層強度を高め得る利点がある。
【0053】
〔解決手
段14〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、
前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって、前記上部第2軸受部の前後両側に形成され、前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する
前記上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成された
前記シャフト側取付部に支持され、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する
前記中間接続部によって互いに一体的に連結され、前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成され、前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されているということである。
【0054】
〔解決手
段14にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手
段14にかかる発明によると、前記解決手段
8、9、10、11、12、及び13と同様の作用及び効果を奏する。