特許第6132756号(P6132756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132756
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/16 20060101AFI20170515BHJP
   B62D 5/09 20060101ALI20170515BHJP
   B62D 11/08 20060101ALI20170515BHJP
   B62D 11/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B62D7/16
   B62D5/09 Z
   B62D11/08 E
   B62D11/08 D
   B62D11/12
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-258505(P2013-258505)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113087(P2015-113087A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】児島 祥之
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−325528(JP,A)
【文献】 特開2001−106094(JP,A)
【文献】 特開昭63−232079(JP,A)
【文献】 特開2002−225729(JP,A)
【文献】 実開昭53−042932(JP,U)
【文献】 特開2012−051530(JP,A)
【文献】 特開2005−160407(JP,A)
【文献】 特開平11−099957(JP,A)
【文献】 特開平06−144036(JP,A)
【文献】 実開昭57−055667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/00− 5/32
B62D 7/00−15/02
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端側をミッションケース内に挿入した状態で配設されたステアリングシャフトと、
前記ミッションケースの下側に配備されたピットマンアームと、
前記ピットマンアームを揺動操作するように前記ミッションケースの底部に配設されたアーム支軸とを備え、
前記ミッションケース内で前記ステアリングシャフトの下部に備えたピニオンギヤと、
前記ミッションケース内で前記アーム支軸に備えた操向ギヤとを噛合させて、前記ステアリングシャフトと前記アーム支軸とが連係作動するように構成されているとともに、
前記ステアリングシャフトが、前記ピニオンギヤの下側に設けられた下部第1軸受部と、前記ミッションケース内空間の下部で前記ピニオンギヤの上側に設けられた上部第1軸受部とにより、前記ピニオンギヤを挟む上下両位置で支持され、
前記上部第1軸受部は、前記ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部に支持され、前記シャフト側取付部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成され、
前記アーム支軸は、前記操向ギヤよりも上側に備えた上部第2軸受部で枢支され、この上部第2軸受部が前記ミッションケースの横壁に設けられたアーム側取付部に支持され、前記ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、そのシャフト側取付部とアーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結され、前記中間接続部は前記ミッションケースの横壁内面からリブ状に突出形成されている作業車。
【請求項2】
前記ミッションケースが、左右方向での一端側に開口部を形成した箱状のケース本体部と、前記開口部を閉塞する蓋状ケース部とを備えて開閉可能に構成され、前記シャフト側取付部が前記ケース本体部に備えられたものである請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記ミッションケースの底壁に前記ステアリングシャフトの挿抜用の底部開口が形成され、この底部開口に前記下部第1軸受部が設けられている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記下部第1軸受部は、前記底部開口に対して下方側から着脱可能に構成され、その下部第1軸受部の内径が前記ピニオンギヤの外径よりも小さく、当該下部第1軸受部の外径が前記ピニオンギヤの外径よりも大きく形成されている請求項3記載の作業車。
【請求項5】
前記上部第1軸受部は、その外径が前記底部開口の内径よりも小径であるように形成されている請求項3又は4記載の作業車。
【請求項6】
前記シャフト側取付部と、前記アーム側取付部と、前記中間接続部とを備えて軸受取付部が構成され、この軸受取付部は、前記ステアリングシャフトの周辺に相当する前記シャフト側取付部及び前記アーム支軸の周辺に相当する前記アーム側取付部が、前記中間接続部よりも平面視で左右方向に幅広く形成されている請求項1〜5のいずれか一項記載の作業車。
【請求項7】
前記ステアリングシャフトの上端側は前記ミッションケースの上側に備えたパワーステアリング装置の出力軸に連結されている請求項1〜6のいずれか一項記載の作業車。
【請求項8】
前記アーム側取付部には、上下方向の負荷に対する補強用の縦リブが形成されている請求項1記載の作業車。
【請求項9】
前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって形成されている請求項8記載の作業車。
【請求項10】
前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されたシャフト側取付部に支持され、
そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結されている請求項8又は9記載の作業車。
【請求項11】
前記縦リブは、前記上部第2軸受部の前後両側位置に形成されている請求項8〜10のいずれか一項記載の作業車。
【請求項12】
前記縦リブは、前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成されている請求項11記載の作業車。
【請求項13】
前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されている請求項11又は12記載の作業車。
【請求項14】
前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって、前記上部第2軸受部の前後両側に形成され、
前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されたシャフト側取付部に支持され、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結され、
前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成され、
前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されている請求項8記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミッションケース内に下端側を挿入した状態で支持されるステアリングシャフトと、ミッションケースの下側に配備されたピットマンアームとを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、ステアリングシャフトやピットマンアームをミッションケースに支持させた作業車としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1] すなわち、ミッションケース内において、ステアリングシャフトは、上端側が、ミッションケースの上部に固定されたトルクジェネレータによって支持され、下端側はミッションケースの底壁に装備されたボールベアリングによって支持されている。
そして、ボールベアリングによって支持された箇所よりも少し上方位置でステアリングシャフトに備えられたピニオンギヤと、ピットマンアームと一体に回動する回転軸に備えたセクトギヤとが噛合するように構成してある。このピニオンギヤとセクトギヤとの噛合によって、ステアリングシャフトの回転がピットマンアームに伝えられるように構成してある(特許文献1参照)。
また、この作業車では、ピットマンアームと一体に回動するアーム支軸の下端側がミッションケースの底壁に装備されたボールベアリングによって支持され、上端側はセクトギヤよりも上側でミッションケースの横側壁から延出された支持部分に対してボールベアリングで支持されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−325528号公報(段落〔0043、0044〕、図8図9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された作業車では、ステアリングシャフトは、下端側ではボールベアリングによって精度良く支持されている。
しかしながら上端側では、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合から上端側での支持箇所までの距離が長くなって、僅かではあるがスプラインシャフトに撓みを生じる虞がある。
あるいは、トルクジェネレータの出力軸に対して、ステアリングシャフトがスプライン嵌合などの着脱可能な連結構造を用いて支持され、その支持構造部分で生じるガタツキによって、僅かではあるがスプラインシャフトに傾きを生じる虞がある。
このように、スプラインシャフトの撓みやガタツキによって、スプラインシャフトの上部側が下部側に対して僅かでも傾倒すると、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合箇所では、ピニオンギヤとセクトギヤとに偏摩耗が生じ易くなって耐久性低下の要因となる虞があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
また、上記の特許文献1に記載された作業車では、ピットマンアームと一体に回動するアーム支軸の下端側と上端側とが、ともにボールベアリングで支持されるので、アーム支軸を安定良く支持し得る点で有用なものである。しかしながら、この構造のものでは、アーム支軸の上端側を支持するボールベアリングの支持部分がミッションケースの横側壁から延出されたものであるため、ミッションケースの底部側からアーム支軸を装着する際に、アーム支軸が下側から打ち込まれることがある。その場合に、ミッションケースの横側壁から延出されたボールベアリングの支持部分に大きな、あるいは衝撃的な負荷が作用することがあるので、この支持部分の強度向上のためにミッションケースの重量が増大する傾向があり、この点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ステアリングシャフトとピットマンアームとの間での動力伝達構造における耐久性の向上を図り得た作業車を提供しようとするものである。
本発明は、ピットマンアームのアーム支軸の上端側支持部分における支持強度を、ミッションケース重量の増大化を避けながら向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明における作業機の技術手段は、下端側をミッションケース内に挿入した状態で配設されたステアリングシャフトと、前記ミッションケースの下側に配備されたピットマンアームと、前記ピットマンアームを揺動操作するように前記ミッションケースの底部に配設されたアーム支軸とを備え、前記ミッションケース内で前記ステアリングシャフトの下部に備えたピニオンギヤと、前記ミッションケース内で前記アーム支軸に備えた操向ギヤとを噛合させて、前記ステアリングシャフトと前記アーム支軸とが連係作動するように構成されているとともに、前記ステアリングシャフトが、前記ピニオンギヤの下側に設けられた下部第1軸受部と、前記ミッションケース内空間の下部で前記ピニオンギヤの上側に設けられた上部第1軸受部とにより、前記ピニオンギヤを挟む上下両位置で支持され、前記上部第1軸受部は、前記ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部に支持され、前記シャフト側取付部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成され、前記アーム支軸は、前記操向ギヤよりも上側に備えた上部第2軸受部で枢支され、この上部第2軸受部が前記ミッションケースの横壁に設けられたアーム側取付部に支持され、前記ミッションケースのケース壁から延出された前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結され、前記中間接続部は前記ミッションケースの横壁内面からリブ状に突出形成されているということである。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる本発明の構成によると、ステアリングシャフトが、ピニオンギヤの下側に設けられた下部第1軸受部と、ミッションケース内空間の下部で前記ピニオンギヤの上側に設けられた上部第1軸受部とにより支持されている。つまり、ミッションケース内空間の下部において、ピニオンギヤを挟む上下両位置でステアリングシャフトが支持されている。これによって、ステアリングシャフトは、ピニオンギヤとセクトギヤとの噛合箇所に近い上下両側位置で水平方向の位置が規制された状態となる。
したがって、セクトギヤとの噛合箇所で生じる負荷等によってステアリングシャフトに撓みが生じるような虞は少なくなり、また、ステアリングシャフトの上部が多少ガタツキのある支持構造であっても、ピニオンギヤの位置は精度良く位置保持される。これによって、ピニオンギヤとセクトギヤとに偏摩耗が生じる可能性は少なくなり、ステアリングシャフトとピットマンアームとの間における動力伝達構造の耐久性の向上を図り得る利点がある。
【0009】
【0010】
上部第1軸受部は、ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部に支持されているので、ミッションケースのケース壁自体の強度を有効利用して、ピニオンギヤを挟む上下両位置におけるステアリングシャフトの支持を強固に行うことができる。
したがって、簡単な構造で上部第1軸受部の支持構造を強固に構成し得る利点がある。
また、ミッションケースのケース壁から延出されたシャフト側取付部が、ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されているので、そのシャフト側取付部のケース壁に対する取付強度を、簡単な構造で強固に保ち易いという利点がある。
【0011】
上部第2軸受部がミッションケースの横壁に設けられたアーム側取付部に支持されているので、ミッションケースのケース壁自体の強度を有効利用して、ミッションケースの底部に配設されたアーム支軸の支持を強固に行うことができる。したがって、簡単な構造で上部第2軸受部の支持構造を強固に構成し得る利点がある。
【0012】
中間接続部によってシャフト側取付部と前記アーム側取付部とが一体的に連結され、これによって、シャフト側取付部に支持されるステアリングシャフト、及び前記アーム側取付部に支持されるアーム支軸の支持強度をさらに高め得る利点がある。
中間接続部を、ミッションケースの横壁内面から突出形成されるリブ状の部材によって構造簡単に構成し得る利点がある。
【0013】
〔解決手段2
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ミッションケースが、左右方向での一端側に開口部を形成した箱状のケース本体部と、前記開口部を閉塞する蓋状ケース部とを備えて開閉可能に構成され、前記シャフト側取付部が前記ケース本体部に備えられたものであるということである。
【0014】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる発明の構成によると、シャフト側取付部は蓋状ケース部ではなく箱状のケース本体部に備えられているので、シャフト側取付部自体を大きく形成し易いものであるとともに、そのャフト側取付部を箱状のケース本体部の補強リブとして機能するように設けることも可能である。したがって、簡単な構造で、シャフト側取付部を備えたミッションケースを構成し易いという利点がある。
【0015】
〔解決手段3
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ミッションケースの底壁に前記ステアリングシャフトの挿抜用の底部開口が形成され、この底部開口に前記下部第1軸受部が設けられているということである。
【0016】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3にかかる発明の構成によると、ステアリングシャフトの挿抜用の底部開口を下部第1軸受部の取付部として利用することにより、下部第1軸受部の取付構造の簡素化を図り得る利点がある。
【0017】
〔解決手段4
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記下部第1軸受部は、前記底部開口に対して下方側から着脱可能に構成され、その下部第1軸受部の内径が前記ピニオンギヤの外径よりも小さく、当該下部第1軸受部の外径が前記ピニオンギヤの外径よりも大きく形成されているということである。
【0018】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4にかかる発明の構成によると、内径がピニオンギヤの外径よりも小さく、外径が前記ピニオンギヤの外径よりも大きく形成されている下部第1軸受部を備えることによって、その下部第1軸受部によってピニオンギヤの下方側への抜け止めを図ることができるとともに、下部第1軸受部を取り外せば、ステアリングシャフトも、ピニオンギヤごと脱着することができる。
したがって、ステアリングシャフト及びピニオンギヤの脱着操作を行い易く構成し得る利点がある。
【0019】
〔解決手段5
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記上部第1軸受部は、その外径が前記底部開口の内径よりも小径であるように形成されているということである。
【0020】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5にかかる発明の構成によると、下部第1軸受部を取り外すことによって、底部開口から上部第1軸受部も脱着することができる。
したがって、ステアリングシャフトのピニオンギヤの上下両側に、予め軸受部を装着した状態で底部開口からステアリングシャフトを脱着することができ、ステアリングシャフト及び上下の軸受部の脱着操作を簡便に行い易くなる利点がある。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
〔解決手段6
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記シャフト側取付部と、前記アーム側取付部と、前記中間接続部とを備えて軸受取付部が構成され、この軸受取付部は、前記ステアリングシャフトの周辺に相当する前記シャフト側取付部及び前記アーム支軸の周辺に相当する前記アーム側取付部が、前記中間接続部よりも平面視で左右方向に幅広く形成されているということである。
【0028】
〔解決手段6にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段6にかかる発明の構成によると、ステアリングシャフトやアーム支軸を支持するシャフト側取付部及びアーム側取付部の平面視での左右方向幅が、中間接続部よりも左右方向に幅広く形成されているので、左右方向での突出長さが短い中間接続部は、全体がコンパクトであるとともに、突出長さが短いことで上下方向での負荷に対する支持強度を強固に保ちやすく形成されている。
したがって、ミッションケースのケース壁からの突出長さの短い中間接続部が、前後のシャフト側取付部及びアーム側取付部の前後方向のみならず、上下方向でも強固に支持し得る利点がある。
【0029】
〔解決手段7
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ステアリングシャフトの上端側は前記ミッションケースの上側に備えたパワーステアリング装置の出力軸に連結されているということである。
【0030】
〔解決手段7にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段7にかかる発明の構成によると、パワーステアリング装置の出力軸に対するステアリングシャフトの支持を、その連結箇所に多少のガタツキなどが存在するか否かに関わらず、安定的に支持し得る利点がある。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
〔解決手段8
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記アーム側取付部には、上下方向の負荷に対する補強用の縦リブが形成されているということである。
【0042】
〔解決手段8にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段8にかかる発明の構成によると、アーム支軸の上部側を支持する上部第2軸受部がミッションケースのケース壁から延出されたアーム側取付部に支持され、そのアーム側取付部が、上下方向の負荷に対する補強用の縦リブを備えているので、比較的軽量な構造で上下方向の負荷に対するアーム側取付部の強度を向上させられる。
したがって、ミッションケース重量の増大化を避けながら、ピットマンアームのアーム支軸にミッションケースの底部側に装備させる際、アーム支軸を下側から打ち込んでアーム側取付部に下方側からの大きな負荷が作用した場合にも、アーム側取付部の損傷等を抑制し易くなる利点がある。
【0043】
〔解決手段9
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって形成されているということである。
【0044】
〔解決手段9にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段9にかかる発明によると、アーム側取付部への上下方向の負荷に対する補強用の縦リブが、アーム側取付部の上面とミッションケースの横壁とにわたって形成されているので、アーム側取付部の補強構造を、ミッションケースの横壁と縦リブとを利用して構造簡単に構成し得たものである。
【0045】
〔解決手段10
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成されたシャフト側取付部に支持され、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する中間接続部によって互いに一体的に連結されているということである。
【0046】
〔解決手段10にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段10にかかる発明によると、シャフト側取付部とアーム側取付部とが中間接続部によって一体的に連結されているので、シャフト側取付部に支持されるステアリングシャフト、及び前記アーム側取付部に支持されるアーム支軸の支持強度を、簡単な構造で高め得る利点がある。
【0047】
〔解決手段11
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記上部第2軸受部の前後両側位置に形成されているということである。
【0048】
〔解決手段11にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段11にかかる発明によると、上部第2軸受部の前後両側位置における強度を高め得る利点がある。
【0049】
〔解決手段12
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成されているということである。
【0050】
〔解決手段12にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段12にかかる発明によると、ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成されているので、いずれの側のリブも小さく形成されている場合に比べて、より強度と高め得るとともに、シャフト側取付部とアーム側取付部とが中間接続部によって連結されている場合に、中間接続部に連結されていないところのステアリングシャフトから遠い側を強固に補強し得て、より耐久性を高め得る利点がある。
【0051】
〔解決手段13
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されているということである。
【0052】
〔解決手段13にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段13にかかる発明によると、縦リブ同士が連結されることで、より一層強度を高め得る利点がある。
【0053】
〔解決手段14
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記縦リブは、前記アーム側取付部の上面と前記ミッションケースの横壁とにわたって、前記上部第2軸受部の前後両側に形成され、前記ピニオンギヤの上側に近接して位置する前記上部第1軸受部は、前記ミッションケースの前壁と横壁とにわたって形成された前記シャフト側取付部に支持され、そのシャフト側取付部と前記アーム側取付部とは、前記シャフト側取付部と前記アーム側取付部との間に位置する前記中間接続部によって互いに一体的に連結され、前記ステアリングシャフトに近い側の縦リブよりも、前記ステアリングシャフトから遠い側の縦リブが大きく形成され、前記縦リブ同士は、水平方向に沿う横向きリブによって互いに連結されているということである。
【0054】
〔解決手段14にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段14にかかる発明によると、前記解決手段8、9、10、11、12、及び13と同様の作用及び効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】乗用型田植機の右側面図である。
図2】ミッションケース及び車体フレームを示す右側面図である。
図3】ミッションケースを示す平面図である。
図4】ミッションケースの縦断面図である。
図5】ステアリングシャフトの下部軸受け箇所を示す断面図である。
図6】ミッションケース本体部分の斜視図である。
図7】走行装置への動力伝達系統を示す線図である。
図8】苗植付装置への動力伝達系統を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に、作業車の一例としての乗用型田植機の右側面が示されている。
この乗用型田植機は、車体フレーム10の下方に、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪11Fと、左右一対の駆動自在な後輪11Rとを備え、車体フレーム10に搭載されたエンジンEからの動力を受けて、前記前輪11Fと後輪11Rとが駆動される自走式の走行車体1を備えている。
走行車体1には、エンジンEを内装した原動部13が機体前部に備えられ、その左右両側に予備苗のせ台14が配備されている。原動部13の後方側で走行車体1の前後方向中央部に、前輪11Fを操向操作するステアリングハンドル15及び運転座席12を有した搭乗運転部が備えられている。走行車体1の後部には、リフトシリンダ18を有したリンク機構17を介して苗植付装置2が昇降自在に支持されている。
このように構成された乗用型田植機は、苗植付装置2によって圃場に対する稲等の苗の植え付け作業を「対地作業」として行うものである。
【0057】
苗植付装置2は8条植型式に構成されており、4個の伝動ケース21、伝動ケース21の後部の右及び左の横側部に回転駆動自在に支持された植付ケース22、植付ケース22の両端に備えられた一対の植付アーム23、接地フロート24、及び苗が載置される苗のせ台20等を備えている。これにより、苗のせ台20が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース22が回転駆動され、苗のせ台20の下部から植付アーム23が交互に苗を取り出して田面に植え付けるように構成されている。
【0058】
走行車体1における車体フレーム10の前部には、前輪11Fを軸支したミッションケース3が連結固定されるとともに、車体フレーム10の後部には、後輪11Rを左右に装備した後部伝動ケース19がローリング可能に支持されている。ミッションケース3からは前方に向けて前フレーム10Fが延出され、この前フレーム10FにエンジンEが横向きに搭載されている。
図2乃至図4に記載のように、ミッションケース3の左右両側には、前車軸ケース3Aが左右両外側に向けて延出され、左右の前輪11F,11Fが設けられている。ミッションケース3の上側には、トルクジェネレータ4(パワーステアリング装置に相当する)を設けてあり、このトルクジェネレータ4から上方へ立設されたステアリング操作軸15aの上端にステアリングハンドル15が設けられている。ステアリングハンドル15の横側部には、後述する静油圧式無段変速装置61を操作して車速を変更する主変速レバー16が配設されている。
【0059】
〔動力伝達系〕
エンジンEの動力が走行駆動系の前輪11F及び後輪11Rに伝達される動力伝達系、ならびに、作業装置としての苗植付装置2に対して伝達される動力伝達系について説明する。
【0060】
〔走行駆動系について〕
図3に示されるように、ミッションケース3の左右両横側には、左右一対の前車軸ケース3Aが備えられている。前車軸ケース3Aには、上記前輪11Fが上下方向に沿う軸心周りに回動して操向自在となるように支持されている。
【0061】
図3及び図7に示すように、ミッションケース3には、ミッションケース3の上部側の左横側部に位置する状態で、静油圧式無段変速装置61が連結されている。静油圧式無段変速装置61は、中立停止位置を有し、中立停止位置から前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されている。静油圧式無段変速装置61は、外部へ延出される変速入力軸61a及び変速出力軸61bを有している。エンジンEの動力は、ベルト伝動機構61cを介して、静油圧式無段変速装置61の変速入力軸61aに伝達されるようになっている。変速入力軸61aのベルト伝動機構61cの反対側に位置する部分と、変速出力軸61bは、ミッションケース3の内部に入り込むように配置されている。
【0062】
ミッションケース3の右横側部には、油圧ポンプ62が連結されている。油圧ポンプ62のポンプ入力軸62aは、ミッションケース3の内部に入り込むように配置されている。ポンプ入力軸62aは、変速入力軸61aと同芯状に配置されており、延長入力軸61dによって変速入力軸61aと一体回転するようにスプライン連結されている。これにより、エンジンEの動力が、静油圧式無段変速装置61の変速入力軸61aから油圧ポンプ62に伝達され、油圧ポンプ62が駆動される。
【0063】
変速出力軸61bには、ミッションケース3の内部に回転自在に支持されている第一伝動軸63がスプライン連結されている。第一伝動軸63には、第一伝動軸63と一体回転し、かつ、第一伝動軸63に対してスライド移動自在とされる第一シフトギヤ64がスプライン構造により外嵌されて備えられている。第一シフトギヤ64には、第一高速ギヤ64aと、第一高速ギヤ64aよりも大径な第一低速ギヤ64bとが一体として備えられている。
【0064】
第一伝動軸63の伝動下手側には、第一伝動軸63に平行な第二伝動軸65がミッションケース3内に支持されて備えられている。第二伝動軸65には、大径ギヤ65aと大径ギヤ65aよりも小径な中径ギヤ65bとが第二伝動軸65に固定して備えられている。第一シフトギヤ64をシフト操作することにより、第一高速ギヤ64aと大径ギヤ65aとの噛み合いと、第一低速ギヤ64bと中径ギヤ65bとの噛み合いとのいずれかを選択して、第一伝動軸63から第二伝動軸65へ動力を伝達できる。そして、第二伝動軸65には、中径ギヤ65bよりも小径な小径ギヤ65cが固定されている。
【0065】
第二伝動軸65の伝動下手側には、第二伝動軸65に平行な第三伝動軸67がミッションケース3内に支持されて備えられている。第三伝動軸67には、第三伝動軸67と一体回転し、かつ、第三伝動軸67に対してスライド移動自在とされる第二シフトギヤ68がスプライン構造により外嵌されて備えられている。第二シフトギヤ68には、第二高速ギヤ68aと、第二高速ギヤ68aよりも大径な第二低速ギヤ68bとが一体として備えられている。第二シフトギヤ68をシフト操作することにより、中径ギヤ65bと第二高速ギヤ68aとの噛み合いと、小径ギヤ65cと第二低速ギヤ68bとの噛み合いとのいずれかを選択して、第二伝動軸65から第三伝動軸67へ動力を伝達できる。そして、第三伝動軸67には、伝動ギヤ69が固定されている。また、第三伝動軸67には、第一ベベルギヤ70が固定されている。
【0066】
第三伝動軸67の伝動下手側には、第三伝動軸67と平行に、一対の前側伝動軸71が突き合わせて配置されている。一対の前側伝動軸71の間にデフ機構72が備えられている。デフ機構72のデフケース72aは、ミッションケース3の内部に回転自在に支持されている。第三伝動軸67に固定された伝動ギヤ69は、デフケース72aに固定された被伝動ギヤ72bに噛み合わされている。
【0067】
一対の前側伝動軸71のうち一方の前側伝動軸71には、デフロック体72cがキー構造により一体回転及びスライド移動自在に外嵌されている。デフロック体72cは、デフケース72aに対して係合解除された差動可能状態(デフロック解除状態)と、デフケース72aに対して係合された差動不能状態(デフロック状態)と、に切り換えできるように構成されている。
【0068】
図2図7に示されるように、ミッションケース3の後部には、ミッションケース3の後端部から後ろ向きに突出する走行出力軸74が備えられている。走行出力軸74の前端部には第二ベベルギヤ75が備えられている。第二ベベルギヤ75は、第三伝動軸67に固定された第一ベベルギヤ70に噛み合わされており、これにより、第三伝動軸67から走行出力軸74へ動力が伝達される。
【0069】
上記左右一対の後輪11Rを支持する後部伝動ケース19が備えられており、走行出力軸74と、後部伝動ケース19の後側伝動軸76とに亘って後方伝動軸77が連動連結されている。後側伝動軸76に伝達される動力は、サイドクラッチ73を介して、左右の後輪11Rにそれぞれ伝達される。
【0070】
これにより、エンジンEの動力が、静油圧式無段変速装置61の変速出力軸61b、第一伝動軸63、第二伝動軸65、第三伝動軸67、デフ機構72、前側伝動軸71を介して左右一対の前輪11Fに伝達され、デフ機構72のデフケース72a、走行出力軸74、後側伝動軸76を介して左右一対の後輪11Rに伝達される。
【0071】
〔作業装置駆動系について〕
次に、作業装置であるところの苗植付装置2への伝動構造について説明する。
図8に示されるように、第二伝動軸65の伝動下手側には、第二伝動軸65に平行な第四伝動軸80がミッションケース3内に支持されて備えられている。第二伝動軸65には、作業用出力ギヤ81が固定されている。第二伝動軸65の動力は、作業用出力ギヤ81からトルクリミッターTを介して第四伝動軸80に伝達されるように構成されている。
【0072】
第四伝動軸80には、第四伝動軸80と一体回転し、かつ、第四伝動軸80に対してスライド移動自在とされる植付用シフトギヤ84がスプライン構造により外嵌されて備えられている。植付用シフトギヤ84には、第一植付用低速ギヤ84aと、第一植付用低速ギヤ84aよりも小径な第一植付用高速ギヤ84bとが一体として備えられている。
【0073】
第一伝動軸63には、第一遊嵌ギヤ85a、第二遊嵌ギヤ85b、第三遊嵌ギヤ85c、第四遊嵌ギヤ85d、第五遊嵌ギヤ85e、が第一伝動軸63に対して相対回動自在に支持されて備えられている。第一遊嵌ギヤ85a、第二遊嵌ギヤ85b、第三遊嵌ギヤ85c、第四遊嵌ギヤ85d、第五遊嵌ギヤ85eは一体回転するように互いに固定されている。ギヤの径は、第一遊嵌ギヤ85a、第二遊嵌ギヤ85b、第三遊嵌ギヤ85c、第四遊嵌ギヤ85d、第五遊嵌ギヤ85eの順に大径となるようにされている。
【0074】
植付用シフトギヤ84は、第二変速操作ロッド27をスライド移動操作されることにより、第一植付用低速ギヤ84aと第一遊嵌ギヤ85aとの噛み合いと、第一植付用高速ギヤ84bと第五遊嵌ギヤ85eとの噛み合いとのいずれかを選択できるようにされている。これにより、植付用シフトギヤ84から伝動下手側へ伝達される動力を2段に変速できるように構成されている。このように、植付用シフトギヤ84、第二変速操作ロッド27、第一遊嵌ギヤ85a、第五遊嵌ギヤ85e等により、ミッションケース3内に配置される第二変速機構S2が構成されている。つまり、第二変速機構S2は、エンジンEからの動力を2段(「複数段」の一例)に変速することにより、「作業装置」である苗植付装置2による「対地作業」としての苗植付作業の間隔(株間)を2段階に変化させる。
【0075】
第四伝動軸80及び第一伝動軸63の伝動下手側には、第一伝動軸63に平行な第五伝動軸86がミッションケース3内に支持されて備えられている。第五伝動軸86には、第一伝達ギヤ87a、第二伝達ギヤ87b、第三伝達ギヤ87c、第四伝達ギヤ87dが相対回動自在に支持されて備えられている。ギヤの径は、第一伝達ギヤ87a、第二伝達ギヤ87b、第三伝達ギヤ87c、第四伝達ギヤ87dの順に小径となるようにされている。第一遊嵌ギヤ85aには第一伝達ギヤ87aが常時噛み合いされ、第二遊嵌ギヤ85bには第二伝達ギヤ87bが常時噛み合いされ、第三遊嵌ギヤ85cには第三伝達ギヤ87cが常時噛み合いされ、第四遊嵌ギヤ85dには第四伝達ギヤ87dが常時噛み合いされている。そして、第五伝動軸86には、第三ベベルギヤ88が固定されている。
【0076】
第五伝動軸86の中心に挿入された第一変速操作ロッド26を軸心方向にスライド移動操作して第一変速操作ロッド26の一端側に備えた大径カム部26bによって第五伝動軸86に係合支持される伝動ボール(図示せず)を半径方向外方に押し出し変位させる。伝動ボールを、第一伝達ギヤ87a、第二伝達ギヤ87b、第三伝達ギヤ87c、第四伝達ギヤ87dのいずれか一つの中心孔に係合させることにより、4組の常噛ギヤ対のうちの一組のみを選択して噛み合い伝動を行い、従動側の第五伝動軸86に伝達される動力を4段に変速できるように構成されている。このように、第一伝達ギヤ87a、第二伝達ギヤ87b、第三伝達ギヤ87c、第四伝達ギヤ87d、第一変速操作ロッド26、伝動ボール等により、ミッションケース3内に配置される第一変速機構S1が構成されている。つまり、第一変速機構S1は、エンジンEからの動力を4段(「複数段」の一例)に変速することにより、「作業装置」である苗植付装置2による「対地作業」としての苗植付作業の間隔(株間)を4段階に変化させる。
【0077】
このように、植付系の動力は、第一変速操作ロッド26の操作による4段の変速と、第二変速操作ロッド27の操作による2段の変速との組み合わせにより、合計8段の変速を行うことができるように構成されている。
【0078】
ミッションケース3の後部側には、ミッションケース3に対して相対回動自在に支持された筒体90が備えられている。筒体90には、第四ベベルギヤ91が備えられている。
第四ベベルギヤ91は、第五伝動軸86に固定された第三ベベルギヤ88に噛み合わされている。
【0079】
ミッションケース3の後部には、ミッションケース3の後端部から後ろ向きに突出され、筒体90と同心状に、筒体90の内側に位置する植付出力軸92が備えられている。植付出力軸92には、植付出力軸92と一体回転し、かつ、植付出力軸92に対してスライド移動自在とされる植付クラッチ93がスプライン構造により外嵌されて備えられている。植付クラッチ93は、筒体90に係合する係合状態と、筒体90に係合しない係合解除状態とに切り換えることができる。植付クラッチ93を係合状態にすると、第五伝動軸86の動力は、第三ベベルギヤ88、第四ベベルギヤ91、筒体90、植付クラッチ93を介して、植付出力軸92に動力が伝達される。一方、植付クラッチ93を係合解除状態にすると、第五伝動軸86から植付出力軸92への動力伝達を切ることができる。植付クラッチ93は、係合状態となる側に付勢されており、ブッシュ95に支持された操作軸94を出退することにより、係合状態と係合解除状態との切り換えを行うように構成されている。
【0080】
図8に示されるように、植付出力軸92の動力は、回転伝動軸96を介してフィードケース97の入力軸98に伝達される。入力軸98に入力された動力により、植付アーム23の駆動及び植付アーム23での苗植え動作に連動して苗のせ台20の往復運動が行われる。これにより、機体の走行速度に対応して第一変速機構S1及び第二変速機構S2によって変速された植付速度にて圃面への苗の植え付けが行われる。これにより、第一変速機構S1及び第二変速機構S2の操作により、所望の植え付け間隔(株間)で田植えを行うことができる。
【0081】
〔ミッションケースの構造〕
上記ミッションケース3の内部構造が図3乃至図6に示されている。
ミッションケース3は、左右方向での一端側に開口部30aを形成した箱状のケース本体部30と、前記開口部30aを閉塞するように設けられた蓋状ケース部31との、分割ケース体の組み合わせによって構成されている。このケース本体部30と蓋状ケース部31とは、アルミダイキャスト製であり、ケース本体部30の開口部30aに対向させて蓋状ケース部31をボルト連結することにより一体化されている。
図4及び図6に示すように、ケース本体部30は、箱状のミッションケース3の機体進行方向での前面を構成する前壁30fと、ミッションケース3の後面を構成する後壁30rと、ミッションケース3の上面を構成する上壁30tと、ミッションケース3の底面を構成する底壁30bと、ミッションケース3の左側面を構成する横壁30sとを備えている。そして、前記蓋状ケース部31が、ミッションケース3の右側面を構成し、ミッションケース3が全体としてほぼ矩形の箱状となるように形成されている。
【0082】
図2乃至図4に示すように、ミッションケース3の上面には、ケース本体部30の上壁30tの前部位置に、パワーステアリング装置としての油圧式トルクジェネレータ4が若干後倒れ姿勢で搭載設置されている。そのトルクジェネレータ4からは、前記ステアリング操作軸15aが斜め後方上方に向けて延出されている。トルクジェネレータ4の下側からは、ステアリング操作軸15aと同軸心状で下向きの出力軸4aが、ミッションケース3内に突入するように配備されている。
出力軸4aの下端側には、内周側にスプライン部を備えたジョイント40を介して、前記出力軸4a及び前記ステアリング操作軸15aと同軸心状にステアリングシャフト41が連結されている。つまり、ステアリングシャフト41の上端部41aには外周にスプラインが形成されていて、前記ジョイント40の内周側のスプラインに係合している。
【0083】
図4乃至図6に示すように、ミッションケース3のケース本体部30の底壁30b側の前部位置には、ステアリングシャフト41の挿抜用の底部開口32が形成されている。
この底部開口32は、ミッションケース3の下方側からステアリングシャフト41を挿抜可能であるように形成されたものであるとともに、ステアリングシャフト41の下端側を枢支するための下部ベアリング43d(下部第1軸受部に相当する)の装着部としても用いられている。
ステアリングシャフト41は、上端部41aとは反対側の下端近くにピニオンギヤ42が一体形成されており、下部ベアリング43dはステアリングシャフト41のピニオンギヤ42が存在する箇所よりも下方側へ延出された軸部分に外嵌して、前記底部開口32に嵌着されている。
【0084】
ミッションケース3のケース本体部30の底壁30bには、ステアリングシャフト41の挿抜用の底部開口32が形成された箇所よりも後方側寄りに離れた箇所に、ピットマンアーム44と一体に回動するように設けられたアーム支軸45を装着するための、別の底部開口33が形成されている。この別の底部開口33は、前記アーム支軸45を枢支するための下部ベアリング48d(下部第2軸受部に相当する)の装着部としても用いられている。
アーム支軸45の前記下部ベアリング48dに枢支された箇所よりも上方側の外周面には、セクトギヤ46(操向ギヤに相当する)の内周側に形成されたスプラインと係合するスプラインが形成され、セクトギヤ46が、アーム支軸45に対して挿抜可能に、かつ一体回動するように装着されている。
【0085】
上記のセクトギヤ46がステアリングシャフト41のピニオンギヤ42と噛合して、ステアリングシャフト41の回動に伴ってセクトギヤ46が回動操作される。セクトギヤ46の回動に伴ないアーム支軸45を介してピットマンアーム44が所定角度範囲内で揺動作動する。
ピットマンアーム44の遊端部に連結されたタイロッド47が図示されていないナックルアームに連動連結されて、左右の前輪11F,11Fがピットマンアーム44の揺動作動量に応じて操向操作されるように構成されている。
【0086】
図4及び図5に示すように、前記ステアリングシャフト41は、ピニオンギヤ42が存在する箇所よりも下方側へ延出された軸部分のみならず、ピニオンギヤ42の上方側でも、上部ベアリング43u(上部第1軸受部に相当する)によって枢支されている。
図4乃至図6に示すように、上部ベアリング43uは、ミッションケース3の前壁30fと横壁30sとから、ミッションケース3の内部で水平方向に延出されたシャフト側取付部34に取り付けられている。
図5に示すように、シャフト側取付部34は、その下面側に、上部ベアリング43uを下方から嵌入可能な凹部34aが形成されており、上部ベアリング43uを下方から嵌入させてステアリングシャフト41を枢支するように構成されている。
【0087】
この上部ベアリング43u及び下部ベアリング43dの外径は、前記底部開口32の内径D3よりも僅かに小径で、適宜のはめ合い公差を有して嵌合し、ミッションケース3の底部開口32を通して挿抜可能に構成されている。また、上部ベアリング43u及び下部ベアリング43dの内径は、ステアリングシャフト41の外径D1よりも僅かに大径で、適宜のはめ合い公差を有して嵌合し、かつピニオンギヤ42の外径D2よりも小さく設定されている。
この上部ベアリング43uと下部ベアリング43dとが、ピニオンギヤ42の上端縁と下端縁とに接触して、ピニオンギヤ42を上下で挟む状態で、上部ベアリング43uが凹部34aに嵌入され、下部ベアリング43dが底部開口32内で、止めリング32aによって抜け止め状態に保持されている。
【0088】
図4及び図5に示すように、前記アーム支軸45は、セクトギヤ46が存在する箇所よりも下方側位置する軸部分のみならず、セクトギヤ46の上方側でも、上部ベアリング48u(上部第2軸受部に相当する)によって枢支されている。
図4乃至図6に示すように、上部ベアリング48uは、ミッションケース3の横壁30sから、ミッションケース3の内部で水平方向に延出されたアーム側取付部36に取り付けられている。
図5に示すように、アーム側取付部36は、その下面側に、上部ベアリング48uを下方から嵌入可能な凹部36aが形成されており、上部ベアリング48uを下方から嵌入させてアーム支軸45を枢支するように構成されている。
【0089】
この上部ベアリング48u及び下部ベアリング48dの外径は、前記底部開口33の内径D6よりも僅かに小径で、適宜のはめ合い公差を有して嵌合し、ミッションケース3の底部開口33を通して挿抜可能に構成されている。
また、下部ベアリング48dの内径は、アーム支軸45のスプライン部分の外径D5よりも僅かに大径で、適宜のはめ合い公差を有して嵌合し、上部ベアリング48uの内径は、前記アーム支軸45のスプライン部分よりも上方側の軸部分における外径D4よりも僅かに大径で、適宜のはめ合い公差を有して嵌合している。
この上部ベアリング48uと下部ベアリング48dとが、セクトギヤ46の上端縁と下端縁とに接触して、セクトギヤ46を上下で挟む状態で、上部ベアリング48uが凹部36aに嵌入され、下部ベアリング48dが底部開口33内で、止めリング33aによって抜け止め状態に保持されている。
【0090】
図4乃至図6に示すように、シャフト側取付部34とアーム側取付部36は、そのシャフト側取付部34とアーム側取付部36との中間に位置する中間接続部35によって互いに一体的に接続されている。中間接続部35は、ケース本体部30の左横壁30sの内面からリブ状に突出形成されていて、軸受け取付用の凹部などが形成されるものではないので、図示のように、上下方向厚みはシャフト側取付部34やアーム側取付部36よりも薄く、また、平面視でも、シャフト側取付部34やアーム側取付部36よりも左横壁30sからの突出量は少なく形成されている。
つまり、ステアリングシャフト41を支持する上部ベアリング43uが取り付けられるシャフト側取付部34や、アーム支軸45を支持する上部ベアリング48uが取り付けられるアーム側取付部36は、中間接続部35よりも上下方向での厚みが厚く、水平方向でも、中間接続部35よりも左右方向に幅広く形成されている。
中間接続部35は、シャフト側取付部34やアーム側取付部36よりも厚みも少なく、面積も狭いものであるが、シャフト側取付部34とアーム側取付部36とを接続することで、ミッションケース3の重量増加をできるだけ避けながら、シャフト側取付部34やアーム側取付部36の強度を効果的に増強し得る。
【0091】
アーム側取付部36には、そのアーム側取付部36の上面とミッションケース3のケース本体部30の左横壁30sとにわたって縦リブ37が一体に形成されている。この縦リブ37は、アーム側取付部36に支持されるアーム支軸45の軸心に平行な上下方向の板面を有しており、アーム側取付部36に作用する上下方向の負荷に対する補強を効果的に行えるように設けられている。
この縦リブ37は、アーム支軸45を枢支する上部ベアリング48uの前後両側に位置する状態で設けられている。そして、前後の縦リブ37のうち、ステアリングシャフト41に近い側の縦リブ37aよりも、ステアリングシャフト41から遠い側の縦リブ37bが大きく形成されている。
また、両縦リブ37a,37bは、水平方向に沿う横向きリブ38によって互いに連結され、さらに剛性を増すように構成されている。
【0092】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、ステアリングハンドル15の操作をステアリング操作軸15aを介してトルクジェネレータ4に伝え、そのトルクジェネレータ4の出力を、ステアリングシャフト41を介してピットマンアーム44に伝えるように構成した構造のものを例示したが、このような構造に限られるものではない。
例えば、トルクジェネレータ4を省略して、ステアリングハンドル15の操作が直接的にステアリングシャフト41に伝えられるように構成し、そのステアリングシャフト41の操作にともなってピットマンアーム44が操作されるように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0093】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、ミッションケース3として、割面が前後方向の上下に沿い、左右に分割されたケース本体部30と蓋状ケース部31との分割ケース体で構成した構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。例えば、割面が左右方向の上下に沿い、前後に分割された構造、もしくは、割面が水平方向に沿い、上下に分割された構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0094】
【0095】
【0096】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明が適用される作業車としては、乗用型田植機に限らず、歩行型田植機、乗用型直播機、歩行型直播機等の他の水田作業機であってもよく、また、水田作業機に限らず、トラクタ等の各種農作業機や芝刈り機あるいは運搬車などであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
3 ミッションケース
4 パワーステアリング装置
4a 出力軸
30 ケース本体部
31 蓋状ケース部
30b 底壁
30f 前壁
30s 横壁
32 底部開口
34 シャフト側取付部
35 中間接続部
36 アーム側取付部
37 縦リブ
37a 近い側の縦リブ
37b 遠い側の縦リブ
38 横向きリブ
41 ステアリングシャフト
42 ピニオンギヤ
43d 下部第1軸受部
43u 上部第1軸受部
44 ピットマンアーム
45 アーム支軸
46 操向ギヤ
48u 上部第2軸受部
D2 外径
D3 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8