(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの分野においては、半導体チップ上に形成されるトランジスタの微細化が進行するのに伴って、半導体チップの面積は小さくなり続けている。また、携帯電話等、半導体パッケージを搭載する機器の小型化により、半導体パッケージのさらなる小型化への要求が高まっている。
【0003】
この要求に対し、半導体パッケージの大きさを小さく保ったままプリント基板上に実装することができるウェハレベルパッケージ(wafer level package;WLP)あるいはウェハレベルチップサイズパッケージ(wafer level chip size package;WL−CSP)が開発されている。WLPはウェハ状態で半導体チップ上にいわゆる再配線層を設け、当該再配線層の電極上にはんだボールを搭載した後、個片化することで作製される半導体パッケージである。WLPによれば、半導体パッケージのサイズを半導体チップとほぼ同サイズにすることができる。
【0004】
しかしながら、半導体チップに求められる機能の高度化に伴い、半導体パッケージに搭載される入出力端子数が増大し、小面積のWLPでは端子を全て搭載できないという不具合が発生している。
【0005】
この不具合に対し、ファンアウトWLP(fan out WLP)が提案されている。このファンアウトWLPは、半導体チップの周辺にエポキシ樹脂等の材料で拡張部分を設け、半導体チップ上の電極から拡張部分に再配線を施し、拡張部分にもはんだボールを搭載することで必要な端子数を確保した半導体パッケージである。
【0006】
ファンアウトWLPにおいては、半導体チップの主面とエポキシ樹脂体の主面とが形成する境界線を跨ぐように配線が設置される。これ以外にも、半導体チップをガラスエポキシ樹脂基板に形成された凹部に埋め込んだタイプの半導体パッケージでは、半導体チップの主面とプリント基板の主面との境界線を跨ぐように配線が設置される。
【0007】
互いに異なる2つの基材に跨って設けられた配線を有するパッケージが、特許文献1に記載されている。
【0008】
図10は、特許文献1に記載された、従来の半導体装置の構成を示す斜視図である。同図に示すように、従来の半導体装置は、回路基板101上に半導体チップ106がフリップチップ接合されることで形成される。
【0009】
回路基板101の一面には回路部103が形成され、半導体チップ106の一面にはチップ接合部107が設置されている。回路基板101の一面上には回路部103と電気的に接続された配線102、104a及び接合配線部104が設けられている。接合配線部104は低誘電体材料105上に設けられる。
【0010】
半導体チップ106は、回路基板101の回路部103が形成された面と半導体チップ106の回路形成面とが対向するように回路基板101上に接合される。この際、接合配線部104とチップ接合部107とが重なるように半導体チップ106を回路基板101上に搭載する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。また、
図2(a)は、
図1に示すIIa-IIa線における本実施形態の半導体装置の断面図であり、
図2(b)は、
図1に示すIIb-IIb線における当該半導体装置の断面図である。
【0023】
本実施形態の半導体装置は、
図1に示すように、基材1と、基材1の一方の主面19と同じ方向を向いて当該主面19に隣接する主面20を有し、基材1と接する基材2と、基材1の主面19上及び基材2の主面20上に、平面視における基材1と基材2との境界線28を跨ぐようにそれぞれ設けられた配線31、32、33とを備えている。なお、ここでの境界線28は、主面19と主面20との境界線となっている。
【0024】
基材1と基材2とは、互いに線膨張係数(CTE)が異なる材料で構成されている。基材1、2は、それぞれシリコン(Si)等で構成された半導体チップ、FR4、FR5、BTレジン等で構成されたエポキシ系樹脂基板であってもよい。また、基材1、2は、エポキシ系封止樹脂、セラミック、ガラス、銅もしくは金等の金属や、これらのめっきを施した固体材料、合金などで構成されていてもよく、CTEが互いに異なる固体であれば構成材料は問わない。ただし、基材1、2の形状は板状であってもよい。また、主面19と主面20とは面一であってもよいし、直接あるいは絶縁保護膜を介して配線が形成できる範囲内で両主面間に段差があってもよい。
【0025】
また、基材1、2の少なくとも一方には配線31、32、33に電気的に接続された回路(図示せず)が形成されていてもよい。当該回路は主面19上又は主面20上に形成されていてもよい。
【0026】
配線31、32、33はそれぞれ銅やアルミニウム等からなる金属配線である。基材1、2が絶縁体で構成されている場合には基材1、2上に配線31、32、33を直接設けてもよい。しかし、少なくとも基材1、2が導電体又は半導体で構成されている場合、
図2(a)、(b)に示すように、配線31、32、33は、基材1、2上に絶縁保護膜4を挟んで設けられる。なお、
図1では、基材1と基材2との境界線を明示するために絶縁保護膜4の図示を省略している。
【0027】
本実施形態の半導体装置では、
図1及び
図2(a)、(b)に示すように、配線31の境界線28上での断面積は、配線31のうち主面19上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積、及び(又は)配線31のうち主面20上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積よりも大きくなっている。
【0028】
配線32、33についても同様に、境界線28上での各配線の断面積は、配線32、33のうち主面19上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積、及び(又は)配線32、33のうち主面20上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積よりも大きくなっている。
【0029】
具体的には、境界線28を含む境界領域8上における配線31(すなわち配線拡幅部31a)の配線幅は、非境界領域9、10上における配線31の配線幅よりも広くなっている。ここで、境界領域8とは、主面19、20のうち境界線28の近傍にある領域を指し、非境界領域9、10とは、主面19、20のうち、境界領域8以外の、境界線28から離れた領域をそれぞれ指すものとする。境界領域8の範囲は半導体装置の設計によって任意に設定される。
【0030】
また、配線32のうち、境界線28を含む境界領域8上における部分32aの延伸方向は、境界線28に対して直交していない。
図1に示す例では、部分32aは非境界領域9、10上における配線32の延伸方向に対して斜行している。
【0031】
また、配線33は、境界線28を含む境界領域8上で複数本(
図1では2本)に分岐する。このため、分岐部分33aの境界線28上における断面の面積と分岐部分33bの境界線28上における断面の面積との和は、非境界領域9、10上における配線33の配線幅方向断面の面積よりも大きくなっている。
【0032】
本実施形態の半導体装置を作製するには、まず基材1と基材2とを接合させる。この際に、一方の基材がエポキシ等の樹脂材料で構成されている場合には、樹脂の硬化により両基材が接合される。また、基材がシリコンやセラミック、あるいは銅等の金属で構成される場合は、接着剤を用いて接合してもよいし、一方の基材に凹部を設け、当該凹部内に他方の基材を埋め込んでもよい。あるいは、両基材の裏面をテープで固定した状態で基材1の主面19及び基材2の主面20にポリイミド製の保護膜を塗布することで、両基材を接合することもできる。
【0033】
次に、必要に応じて主面19上及び主面20上に電極を形成する。次いで、スピンコート等により基材1、2の主面19、20上に絶縁保護膜4を形成する。この絶縁保護膜4の厚さは特に限定されないが、ここでは一例として5μm程度とする。続いて、エッチングにより絶縁保護膜4の一部を除去することで、基材1の主面19上、及び基材2の主面20上に設けられた電極(図示せず)上に開口を設ける。次いで、サブトラクト法やアディティブ法等によって、上述の形状の配線31、32、33を形成する。以上のようにして、本実施形態の半導体装置が作製できる。
【0034】
この方法によれば、配線形成時に用いるマスク等の形状を変えるだけで、従来の半導体装置に比べて工程数を増やすことなく本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0035】
本実施形態の半導体装置においては、上述のように、配線31、32、33の境界線28上での断面積が、非境界領域9、10上での配線幅方向断面の断面積よりもそれぞれ大きくなっている。そのため、温度変化があった場合、基材1と基材2との境界面でずれや歪みが生じても、各配線は断線しにくくなっている。
【0036】
これに対し、
図10に示す従来の半導体装置では、回路基板101の上面と低誘電体材料105の上面との境界線上における、配線104aと接合部配線104との接続部分の断面積は、接合部配線104の断面積よりも小さくなっている。また、回路基板101上の配線104aの配線幅は、低誘電体材料105上の接合部配線104の配線幅方向の幅よりも小さくなっている。このため、従来の半導体装置においては、回路基板101の上面と低誘電体材料105の上面との境界線上において、配線104aは温度変化による歪み等応力を受けやすくなっている。
【0037】
このように、本実施形態の半導体装置では、従来の半導体装置に比べて配線のうち境界領域上に設けられた部分の断面積を大きくして配線の強度を上げているので、温度変化が繰り返し生じた場合であっても断線のおそれが小さくなり、信頼性がより向上している。
【0038】
特に、配線31では、境界領域8上に配線拡幅部31aが設けられているので、境界領域8上における配線31の強度が大幅に向上している。
【0039】
また、配線32では、主面19と主面20との境界領域8上における配線の強度を高めつつ、配線全体を通して配線幅が変わらないので、配線密度の低下を防ぐことができる。
【0040】
また、配線33は、境界領域8上で複数の分岐部分33a、33bに分岐するので、境界線28上における断面積を大きくして配線強度を向上できる。さらに、分岐部分33a、33bのうちいずれか1つが断線しても残りの分岐部分が導通しているので、配線33では故障が生じにくくなっている。
【0041】
なお、境界領域8上における配線の平面形状は、配線31、32、33の形状に限られない。例えば、配線拡幅部31aのコーナー部を平面的に見て丸めた形状にしてもよいし、配線32の斜行する部分32aの配線幅を他の部分よりも大きくしてもよい。あるいは、配線33の分岐部分33a、33bに斜行部分を設けてもよい。
【0042】
また、基材1、2上には、一又は複数本の配線31、32、33の全てが設けられていてもよいし、配線31、32、33のうちの1つ又は2つのみが設けられていてもよい。
【0043】
図3は、本発明の実施形態に係る半導体装置の他の一例を示す平面図である。
【0044】
基材1、2上に設けられる配線は、
図3に示す配線44のように、基材1と基材2との境界線28上において、配線幅方向の一方にのみ幅が拡張された形状であってもよい。また、配線46のように、境界線28上での配線の断面積が、当該配線のうち少なくとも一方の基材上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積よりも大きくなっていてもよい。すなわち、境界線28上での配線の断面積が、当該配線のうち一方の基材上に設けられた部分の少なくとも一部の配線幅方向断面の面積よりも大きければよい。この際、配線48のように、他方の基材上で境界線28から離れるに従って配線幅が放射状に拡がっていてもよい。
【0045】
−半導体装置の変形例−
図4は、本発明の実施形態に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。同図では、配線34を通り、且つ配線34の延伸方向に平行な方向における断面を示している。
【0046】
本変形例に係る半導体装置においても、
図1に示す半導体装置と同様に、配線34の、主面19と主面20との境界線上における断面の面積は、配線34のうち非境界領域9、10の少なくとも一部上に設けられた部分の配線幅方向断面よりも大きくなっている。
【0047】
ただし、
図4に示す配線34は、主面19、20のうちの境界領域8上に設けられ、他の部分より厚みが厚い配線肉厚部34aを有している点で
図1に示す配線31、32、33と異なっている。本変形例に係る半導体装置における配線の形状以外の構成は、
図1に示す半導体装置と同様である。
【0048】
本変形例に係る半導体装置を作製するには、基材1と基材2とを接合させた後、スピンコート等により基材1、2の主面19、20上に絶縁保護膜4を形成する。次いで、絶縁保護膜4上に公知の方法により、金属からなる配線34を形成する。配線肉厚部34aは、例えば、厚い配線を形成した後、当該配線のうち配線肉厚部34aとなる部分をシルクスクリーン印刷やフォトレジスト等の手法でマスクし、配線肉厚部34a以外の部分をエッチングして形成することで形成される。あるいは、配線のうち配線肉厚部34aとなる部分以外の部分上にめっきレジストを形成し、この状態で当該配線上にめっきを成長させることで、配線肉厚部34aを形成することもできる。これにより、本変形例に係る半導体装置を作製できる。
【0049】
本変形例に係る半導体装置のように、基材1の主面19と基材2の主面20との境界線上での配線34の厚みが非境界領域9、10での配線34の厚みより厚くしても、境界線上での断面積を大きくすることができるので、配線34の強度を向上させ、断線発生の可能性を低減することができる。また、境界領域8上での配線肉厚部34aの配線幅を、非境界領域9、10上での配線34の配線幅と同じにすれば、配線密度の低下を防ぐことができる。
【0050】
なお、
図1に示す配線31の配線拡幅部31a、配線32の斜行する部分32a、配線33の分岐部分33a、33bのそれぞれの厚みを、各配線の非境界領域9、10の少なくとも一部上に設けられた部分の厚みよりも厚くすることで、各配線の境界線28での断面積をさらに大きくすることができる。この構成によれば、配線の強度をより向上させることができる。このような配線構成は、特に基材1と基材2との線膨張係数差が大きい場合には、特に有効である。
【0051】
なお、
図3に示す配線44、46、48においても、境界線28上での厚みを非境界領域での厚みより厚くすることでこれらの配線が断線する可能性を低減することができる。
【0052】
−第1の応用例に係る半導体装置の説明−
図1、
図2(a)、(b)を用いて説明した構成を、ファンアウトWLPタイプの半導体装置に適用した第1の応用例について以下説明する。
【0053】
図5は、本発明の実施形態の第1の応用例に係る半導体装置を示す平面図である。同図では、理解しやすいように絶縁保護膜は図示していない。
【0054】
図5に示すように、この応用例に係る半導体装置は、一方の主面49側に凹部40が設けられた拡張部材21と、主面49と実質的に同じ方向を向いて主面49と隣接する主面50を有し、凹部40内に配置された半導体チップ11と、主面49上及び主面50上に設けられた第1の絶縁保護膜と、主面50上に設けられ、第1の絶縁保護膜を貫通するチップ電極51、52、53と、主面49と主面50との各境界線を跨いで主面50上から主面49上へと延伸する再配線35、36、37と、第1の絶縁保護膜上及び再配線35、36、37上に設けられた第2の絶縁保護膜と、第2の絶縁保護膜を貫通する電極(図示せず)と、電極を介して再配線35、36、37にそれぞれ接続された電極61、62、63とを備えている。
【0055】
再配線35、36、37は、それぞれチップ電極51、52、53を介して半導体チップ11の主面50上に設けられた回路(図示せず)に電気的に接続されている。
【0056】
本応用例に係る半導体装置と
図1に示す半導体装置とを比較すると、半導体チップ11は基材1、2の一方に相当し、拡張部材21は基材1、2の他方に相当し、再配線35、36、37は、それぞれ配線31、32、33に相当している。
【0057】
すなわち、再配線35は、配線31と同様に、半導体チップ11と拡張部材21の主面同士の境界領域上に配線幅が広い配線拡幅部35aを有している。再配線36は、配線32と同様に、半導体チップ11と拡張部材21の主面同士の境界領域上に斜行する部分36aを有している。再配線37は、配線33と同様に、半導体チップ11と拡張部材21の主面同士の境界領域上に分岐部分37a、37bを有している。
【0058】
また、本応用例に係る半導体装置において、拡張部材21の主面49は、平面視において半導体チップ11の主面50を囲んでいる。
【0059】
拡張部材21の構成材料としては、例えばエポキシ樹脂からなる封止樹脂が用いられるが、エポキシ樹脂に限定されることはなく、セラミック、ガラス等で構成されていてもよい。また、拡張部材21は、有機基板であってもよい。
【0060】
本応用例に係る半導体装置を作製するためには、まず、半導体チップ11の主面50を露出させた状態で、半導体チップ11の側面から(半導体チップ11の)外方に拡張部材21を形成する。この際には、主面50を下に向けた状態で半導体チップ11全体を金型で覆い、当該金型の空間部分に封止樹脂を注入することで拡張部材21を形成できる。この結果として、拡張部材21の凹部40内に半導体チップ11配置された形状となる。
【0061】
次いで、半導体チップ11上にチップ電極51、52、53を形成する。その後、半導体チップ11の主面50上及び拡張部材21の主面49上に、スピンコート等により第1の絶縁保護膜を形成する。
【0062】
次に、絶縁保護膜のうちチップ電極51、52、53を覆う部分をエッチングにより除去し、チップ電極51、52、53を露出させる。次に、サブトラクト法やアディティブ法により、第1の絶縁保護膜の上面に任意の形状に金属からなる再配線35、36、37を形成する。その後、再配線35、36、37のうち拡張部材21の主面49上に設けられた部分上に、電極61、62、63をそれぞれ形成する。次に、第2の絶縁保護膜を電極61、62、63上及び第1の絶縁保護膜上に形成した後、第2の絶縁保護膜のうち電極61、62、63を覆う部分を除去して電極61、62、63を露出させる。次いで、電極61、62、63上に適宜バンプ(図示せず)を形成する。
【0063】
本応用例に係る半導体装置では、
図1に示す半導体装置と同様に、主面49と主面50との境界線上における再配線35、36、37の断面積が、境界線から離れた領域での各配線の配線幅方向断面の断面積よりも大きくなっている。このため、温度変化があった場合に、半導体チップ11のCTEと拡張部材21のCTEが異なることで発生する歪みやずれに対する各配線の強度を向上させることができる。従って、本応用例に係るファンアウトWLPタイプの半導体装置では、従来の半導体装置に比べて信頼性が大きく向上している。
【0064】
なお、再配線37では、分岐部分37a、37bを有することにより、歪みに対する強度が向上できる上、分岐部分37a、37bのいずれか一本が断線しても、残りの分岐部分が導通していれば故障とならない。
【0065】
なお、
図5に示す第1の応用例に係る半導体装置において、再配線38の形状を、
図3に示す配線44、46、48と同様の形状としてもよい。
【0066】
また、
図6は、
図5に示す第1の応用例に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。同図では、
図5と同様の部材については同じ符号を付している。
【0067】
本変形例の半導体装置において、再配線38は、半導体チップ11上に設けられたチップ電極54と、外部部材に接続するための電極64とを接続している。この電極64は、第1の絶縁保護膜41上に設けられた第2の絶縁保護膜42を貫通している。電極64上にははんだボール等からなるバンプ71が設けられている。
【0068】
図6に示すように、本変形例に係る半導体装置では、再配線38が、主面49と主面50との境界線を含む境界領域上において、他の部分よりも厚い配線肉厚部38aを有している点が、
図5に示す半導体装置と異なっている。
【0069】
本変形例に係る半導体装置を作製するには、まず、
図5に示す半導体装置の製造方法と同様にして半導体チップ11の主面50上及び拡張部材21の主面49上に第1の絶縁保護膜41を形成した後、主面50上にチップ電極54を形成する。チップ電極54は、例えば半導体チップ11内の周辺領域に形成されてもよい。
【0070】
次に、配線肉厚部38aを有する再配線38を第1の絶縁保護膜41上に形成する。この配線肉厚部38aは、例えば、配線全体を厚く形成した後、再配線のうち配線肉厚部38aとなる部分をシルクスクリーン印刷やフォトレジスト等の手法でマスクし、配線肉厚部38a以外の部分をエッチングして厚みを薄くすることで形成できる。あるいは、再配線を形成した後、当該再配線のうち配線肉厚部38aとなる部分以外の部分上にめっきレジストを形成し、この状態で当該配線上にめっきを成長させることで、配線肉厚部38aを形成することもできる。
【0071】
その後、再配線38のうち拡張部材21の主面49上に設けられた部分上に、電極64を形成する。電極64は、外部部材との電気的導通を取るための電極である。次に、電極64上及び第1の絶縁保護膜41上に第2の絶縁保護膜42を形成する。次いで、第2の絶縁保護膜42のうち電極64を覆う部分をエッチングにより除去することで、電極64を露出させる。次に、露出した電極64上にUBM(under barrier metal)等の金属層を形成し、はんだボール等からなるバンプ71を形成することで、ファンアウトWLPタイプの本変形例に係る半導体装置が形成できる。
【0072】
本変形例に係る半導体装置のように、主面49と主面50との境界線上で再配線38の厚みを厚くすることによっても、当該境界線上での再配線38(配線肉厚部38a)の断面積を、境界線から離れた領域での再配線38の配線幅方向の断面積よりも大きくすることができる。このため、再配線38の強度を向上させることができ、断線の可能性を低減することができる。
【0073】
また、再配線38と同様に、
図5に示す再配線35の配線拡幅部35a、再配線36の斜行する部分36a、及び再配線37の分岐部分37a、37bの厚みを他の部分の厚みよりも厚くすることで、再配線35、36、37の強度をより向上させることができる。従って、半導体チップ11の線膨張係数と拡張部材21の線膨張係数との差が大きい場合でも、再配線の断線を効果的に低減することができる。
【0074】
なお、
図6では、拡張部材21の主面49と半導体チップ11の主面50とが面一である例を示しているが、これに限られず、主面49と主面50との間の段差が第1の絶縁保護膜41の厚み(10μm以下)の範囲内であれば、再配線38を形成することができる。この場合、第1の絶縁保護膜41を厚めに形成することで、主面49と主面50との間に段差があっても第1の絶縁保護膜41の上面を再配線38が形成できる程度に平坦にすることができる。なお、主面49と主面50との間に段差がある場合、上述の説明において「主面49と主面50との境界線」とあるのは、「平面視における主面49と主面50との境界線」とする。
【0075】
−第2の応用例に係る半導体装置の説明−
図7は、本発明の実施形態の第2の応用例に係る半導体装置を示す平面図である。本応用例に係る半導体装置は、
図5又は
図6に示すファンアウトWLPを用いたSiP(system in package)である。なお、
図7に示す再配線39のうち少なくとも一本は、配線肉厚部39aを有している再配線であってもよいし、
図5に示す再配線35、36、37のいずれかと同様に、配線拡幅部、斜行部分、分岐部分を有する形状の再配線であってもよい。また、半導体チップ11上の回路と再配線39とを電気的に接続させるチップ電極は図示していない。
【0076】
図7に示すように、本応用例に係る半導体装置は、
図5又は
図6に示すファンアウトWLPと、ファンアウトWLP内の半導体チップ11の主面(回路形成面)上に、回路形成面を半導体チップ11側に向けた状態でフリップチップ接合された半導体チップ12と、ファンアウトWLPを接着剤83を挟んで上面上に搭載する基板81と、ファンアウトWLPの電極65と基板81上に設けられたランド82とを接続するワイヤ(接続部材)91と、封止樹脂22とを備えている。
【0077】
なお、
図7に示すファンアウトWLPでは、再配線39上に設けられた電極65上にバンプは形成されていない。また、半導体チップ11の回路形成面上には電極55が形成されており、はんだボール等からなるバンプ71aが半導体チップ11上の回路と半導体チップ12上の回路とを電気的に接続している。
【0078】
また、封止樹脂22は、基板81の上面上に設けられ、拡張部材21の側面及び再配線39が形成された主面、半導体チップ12の面のうち回路形成面に対向する面、及びワイヤ91を覆っている。第2の絶縁保護膜42と半導体チップ12との間はアンダーフィル材86が設けられている。
【0079】
本応用例に係る半導体装置を作製するには、まず、
図6に示す半導体装置と同様の方法でファンアウトWLPを形成する。ここで、半導体チップ11上に形成された電極55を露出するために、第1の絶縁保護膜41及び第2の絶縁保護膜42の一部をあらかじめエッチング等により除去しておく。その後、互いの回路形成面同士が向き合うように半導体チップ11上に半導体チップ12をフリップチップ接合する。
【0080】
次に、ファンアウトWLPと半導体チップ12を、互いに回路実装面を向き合った形でフリップチップ接合させる。半導体チップ12上にはバンプ71aがあらかじめ形成されている。そのため、半導体チップ11上の電極55とバンプ71aの位置を合わせ、加熱しながら圧着することにより、半導体チップ11と半導体チップ12とを電気的に接合させることができる。バンプ71aは、はんだの他、金などで構成されていてもよく、金属ポスト等であってもよい。
【0081】
次に、半導体チップ12とフリップチップ接合されたファンアウトWLPは、接着剤83により基板81上に接着される。次に、基板81の上面上に設けられたランド82と、ファンアウトWLPの表面に設けられた電極65とをワイヤ91により接続することで、ランド82を半導体チップ11上の回路に電気的に接続させる。
【0082】
次に、ファンアウトWLP、半導体チップ12、ワイヤ91は金型内で封止樹脂22により封止される。次いで、基板81の裏面にはんだボール、あるいは電極を設置することで、本応用例に係る半導体装置は、BGA(ball grid array)あるいはLGA(land grid array)タイプの半導体パッケージとなる。
【0083】
このように、
図5又は
図6に示す信頼性の高いファンアウトWLPを用いることで、同じく信頼性の高い半導体パッケージを作製することができる。
【0084】
なお、異なる基材同士の境界部分上での断面積を非境界領域上での断面積よりも大きくした配線を用いれば、上で述べた半導体パッケージに限らず、ファンアウトWLPを具備する種々の半導体装置において、高い信頼性を得ることができる。
【0085】
−第3の応用例に係る半導体装置の説明−
図8(a)は、本発明の実施形態の第3の応用例に係る半導体装置を示す平面図である。また、
図8(b)は、本応用例に係る半導体装置のA部を拡大して示す断面図であり、
図8(c)は、当該A部を拡大して示す平面図である。
図8(a)、(b)で第2の絶縁保護膜42と半導体チップ12との間に示すのは、アンダーフィル材86である。また、
図8(c)において、再配線39のうち半導体チップ12の下に設けられた部分は破線で示している。
【0086】
図8(a)〜(c)に示すように、第3の応用例に係る半導体装置は、
図7に示す第2の応用例に係る半導体装置において、半導体チップ11の平面面積を半導体チップ12の平面面積よりも大きくしたものである。
【0087】
本応用例に係る半導体装置の再配線39において、半導体チップ11の線膨張係数と拡張部材21の線膨張係数との差が大きい場合には、上述のように半導体チップ11と拡張部材21の界面上で最も応力が集中する。また、再配線39のうち、半導体チップ12と封止樹脂22との線膨張係数の違いによって、上側の半導体チップ12の端面直下に位置する部分にも応力が集中しやすくなっている。
【0088】
このため、本応用例に係る半導体装置では、少なくとも半導体チップ11と拡張部材21の界面上での再配線39の断面積を他の部分での幅方向断面の面積よりも大きくして断線の発生を効果的に抑えている。
【0089】
さらに、
図8(c)に示すように、再配線39のうち半導体チップ11と拡張部材21との境界面上の領域から半導体チップ12の端面直下の領域に至る部分の配線幅方向の断面積を他の部分の配線幅方向の断面積よりも大きくしてもよい。再配線39の断面積を大きくするためには、上述の配線肉厚部39aを形成したり、配線幅を太くする等の構成をとることができる。また、再配線39のうち半導体チップ11と拡張部材21との境界面上を含む所定の部分の配線幅方向断面積と半導体チップ12の端面直下を含む所定の部分の配線幅方向断面積を、それぞれを応力が集中しない他の部分の配線幅方向断面積よりも大きくしてもよい。
【0090】
このように、再配線39の複数箇所に応力が集中する場合、応力が集中する部分の配線幅や厚みを他の部分よりも大きくすることで、製造工程を増やすことなく低コストで、再配線の破断や破損をさらに効果的に抑えることが可能となる。
【0091】
−第4の応用例に係る半導体装置の説明−
図9(a)は、本発明の実施形態の第4の応用例に係る半導体装置を示す平面図である。また、
図9(b)は、本応用例に係る半導体装置のA部を拡大して示す断面図であり、
図9(c)は、当該A部を拡大して示す平面図である。
【0092】
図9(a)〜(c)に示すように、第4の応用例に係る半導体装置は、
図7に示す第2の応用例に係る半導体装置において、半導体チップ11の平面面積を半導体チップ12の平面面積よりも小さくしたものである。
図9(c)において、再配線39のうち半導体チップ12の下に設けられた部分、及び半導体チップ11は、破線で示している。
【0093】
本応用例に係る半導体装置の再配線39において、半導体チップ11の線膨張係数と拡張部材21の線膨張係数との差が大きい場合には、上述のように半導体チップ11と拡張部材21の界面上で最も応力が集中する。また、再配線39のうち、半導体チップ12と封止樹脂22との線膨張係数の違いによって、上側の半導体チップ12の端面直下に位置する部分にも応力が集中しやすくなっている。
【0094】
このため、本応用例に係る半導体装置では、少なくとも半導体チップ11と拡張部材21の界面上での再配線39の断面積を他の部分での幅方向断面の面積よりも大きくして断線の発生を効果的に抑えている。
【0095】
さらに、
図9(c)に示すように、再配線39のうち半導体チップ11と拡張部材21との境界面上の領域から半導体チップ12の端面直下の領域に至る部分の配線幅方向の断面積を他の部分の配線幅方向の断面積よりも大きくしてもよい。再配線39の断面積を大きくするためには、上述の配線肉厚部39aを形成したり、配線幅を太くする等の構成をとることができる。また、再配線39のうち半導体チップ11と拡張部材21との境界面上を含む所定の部分の配線幅方向断面積と半導体チップ12の端面直下を含む所定の部分の配線幅方向断面積を、それぞれを応力が集中しない他の部分の配線幅方向断面積よりも大きくしてもよい。
【0096】
このように、半導体チップ11と半導体チップ12とで平面サイズが異なる場合など、再配線39の複数箇所に応力が集中する場合、応力が集中する部分の配線幅や厚みを他の部分よりも大きくすることで、製造工程を増やすことなく低コストで、再配線の破断や破損をさらに効果的に抑えることが可能となる。
【0097】
なお、本発明は、以上で説明した実施形態並びにその変形例及び応用例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でこれらの半導体装置の構成を変更したものも含む。