(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリレート化合物(B)が、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有しかつ環構造を有しない(メタ)アクリレート化合物(B1)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有しかつ脂環式構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B2)とから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の光学材料。
前記シリカ微粒子(A)が、前記重合性シラン化合物(A1)と前記重合性シラン化合物(A1)以外のシラン化合物(A2)とを含むシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子である、請求項1または2に記載の光学材料。
シリカ微粒子(A)における表面修飾前のシリカ微粒子換算の量と、(メタ)アクリレート化合物(B)の量との合計量100質量部に対し、シリカ微粒子(A)における表面修飾前のシリカ微粒子換算の量が1〜90質量部である、請求項1または2に記載の光学材料。
前記シリカ微粒子(A)が、表面修飾前のシリカ微粒子100質量部に対して、前記シラン化合物5〜100質量部で表面修飾されたシリカ微粒子である、請求項1または2に記載の光学材料。
前記シリカ微粒子(A)の表面修飾に用いられる前記シラン化合物の全量に対して、前記重合性シラン化合物(A1)の量が1〜100質量%である、請求項1または2に記載の光学材料。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の硬化性組成物、前記組成物を硬化させて得られる硬化物(以下、単に「硬化物」ともいう。)およびその製造方法、ならびに前記硬化物からなる光学材料・電子材料の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、以下に説明する具体的な実施形態に何ら限定されない。
【0031】
〔硬化性組成物〕
本発明の硬化性組成物は、(A)一般式(1)で表される重合性シラン化合物(A1)を少なくとも含む1種以上のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子と、(B)(メタ)アクリレート化合物と、(C)重合開始剤とを含有する。以下、これらの各成分を「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」ともいい、上記シラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)を「表面修飾シリカ微粒子」ともいう。なお、重合性シラン化合物のここでいう「重合性」とは、炭素−炭素二重結合の反応に基づく重合を示す。
【0032】
本明細書において、表面修飾されるシリカ微粒子として、有機溶媒に分散したシリカ微粒子を用いる場合、「表面修飾前のシリカ微粒子100質量部」とは、特に言及のない限り、「有機溶媒に分散したシリカ微粒子のみの質量」(すなわち、有機溶媒の質量は含まない。)を指す。
【0033】
本明細書において、「(メタ)アクリレート化合物」とは、アクリレート化合物および/またはメタクリレート化合物を意味する。以降、その他の(メタ)アクリレート化合物においても同様の意味である。同様に「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を意味する。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、特定のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)を含有しているために、組成物の状態での粘度が低く、ハンドリング性に優れる。また、表面修飾によりシリカ微粒子に結合した重合性シラン化合物(A1)(化学構造は変化している)が、(メタ)アクリレート化合物(B)(好ましくは後述する(メタ)アクリレート化合物(B1)または(メタ)アクリレート化合物(B2))と反応することにより、硬化性組成物中のシリカ微粒子(A)の分散安定性が向上する。
【0035】
本発明では、(メタ)アクリレート化合物(B)と特定のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)とが重合開始剤(C)とともに使用されることで、本発明の硬化性組成物は重合反応により強固に硬化するため、耐熱性に優れ(指標として、線膨張係数が小さい)、かつ従来品と同等以上の透明性を有する(指標として、光線透過率が大きい)硬化物が得られる。この硬化の際には、特定のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)の存在により、組成物の硬化収縮が抑制され、結果として硬化物(これは、基板上に硬化膜として形成されることが多い。)の反りも抑制され、硬化物が脆くなる、あるいはクラックが発生することを防止することもできる。
【0036】
以下、本発明の硬化性組成物の各含有成分について説明する。
【0037】
〈シリカ微粒子(A)〉
シリカ微粒子(A)は、少なくとも重合性シラン化合物(A1)を含む1種以上のシラン化合物で、シリカ微粒子を表面修飾することにより得られた表面修飾シリカ微粒子である。
【0038】
《シラン化合物で表面修飾されるシリカ微粒子》
シラン化合物で表面修飾されるシリカ微粒子としては、従来公知のシリカ微粒子を用いることができる。また、多孔質シリカゾルや、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等とケイ素との複合金属酸化物を用いてもよい。
【0039】
上記シリカ微粒子としては、粒径に特に制限はないが、平均粒子径が1〜1000nmの粒子を用いることが好ましい。前記硬化物の透明性の観点から、平均粒子径は1〜500nmがさらに好ましく、1〜100nmが最も好ましい。また、シリカ微粒子の本発明の硬化物への充填量を上げるために、平均粒子径が異なるシリカ微粒子を混合して用いてもよい。
【0040】
上記シリカ微粒子(表面修飾前)の平均粒子径は、高分解能透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−9000型)でシリカ微粒子を観察し、観察される微粒子像から任意に100個のシリカ粒子像を選び、公知の画像データ統計処理手法により数平均粒子径として求められた値である。なお、上記シリカ微粒子(表面修飾前)の平均粒子径の好適範囲は、通常、シリカ微粒子(A)(表面修飾後)の平均粒子径の好適範囲でもある。
【0041】
《シリカ微粒子の表面修飾に用いられるシラン化合物》
シリカ微粒子(A)は、少なくとも重合性シラン化合物(A1)を含む1種以上のシラン化合物で、シリカ微粒子を表面修飾することにより得られた表面修飾シリカ微粒子である。重合性シラン化合物(A1)は、硬化性組成物中でのシリカ微粒子の分散安定性を向上させるために用いられる。
【0042】
すなわち、シリカ微粒子を重合性シラン化合物(A1)で表面修飾すると、シリカ微粒子の分散安定性を向上させることができる。一方、表面修飾されていないシリカ微粒子のみを用いた場合、硬化性組成物の粘度が著しく増加し、ゲル化するので好ましくない。
【0043】
シラン化合物としては、少なくとも重合性シラン化合物(A1)が用いられ、硬化性組成物を硬化させる際の収縮率を低減させる観点から、重合性シラン化合物(A1)に加えて後述するシラン化合物(A2)を用いることができる。
【0044】
<シラン化合物(A1)>
重合性シラン化合物(A1)は、一般式(1)で表される。
【0045】
【化4】
式(1)中、各記号の意味は以下のとおりである:
R
1はエチレン性不飽和基を有する炭素数11〜20の炭化水素基、または、炭素数11〜20の置換炭化水素基を表す。ここで置換炭化水素基は、エチレン性不飽和基を有し、かつエーテル結合および/またはエステル結合を有する。置換炭化水素基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が挙げられる。
【0046】
なお、置換炭化水素基の炭素数は、これがエステル結合およびエチレン性不飽和基を有する場合、エステル結合およびエチレン性不飽和基の炭素数も含めた合計の炭素数を意味する。
【0047】
R
1は好ましくはエチレン性不飽和基を有する炭素数11〜20の置換炭化水素基であり、より好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数11〜20の置換炭化水素基である。
【0048】
本発明では、シリカ微粒子の表面修飾に、特定の長鎖の炭素系鎖(R
1)を有する重合性シラン化合物(A1)を用いるので、硬化性組成物の粘度を低下させることができる。シリカ微粒子の表面修飾に、R
1が炭素数10以下の(置換)炭化水素基のシラン化合物(例:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)のみを用いた場合、硬化性組成物の粘度が著しく増加し、ゲル化するので好ましくない。
【0049】
R
2は水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基(例:アルキル基)を表す。
【0050】
R
3はハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子)を表す。
【0051】
R
4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基(例:アルキル基)を表す。
【0052】
aは1〜3の整数であり、好ましくは1であり;bは0〜2の整数であり、好ましくは0であり;cは0〜3の整数であり、好ましくは0であり;aとbの和は1〜3であり;aとbとcの和は1〜4であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0053】
なお、aが2以上である場合に複数存在するR
1は互いに同一でも異なっていてもよく、bが2である場合に複数存在するR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、cが2以上である場合に複数存在するR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、aとbとcの和が1または2の場合に複数存在するR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0054】
重合性シラン化合物(A1)としては、本発明の硬化性組成物の透明性の観点から、一般式(1’)で表される重合性シラン化合物(A1’)((メタ)アクリロイルオキシ基を有するシラン化合物)が好ましい。
【0055】
【化5】
式(1’)中、各記号の意味は以下のとおりである:
R
2は水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基(例:アルキル基)を表し、シラン化合物の保存安定性やハンドリング性の観点からメチル基またはエチル基であることが好ましく、シラン化合物の合成の容易さからメチル基であることが特に好ましい。
【0056】
R
3はハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子)を表し、シラン化合物の保存安定性やハンドリング性の観点から、塩素原子であることが好ましい。
【0057】
R
4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基(例:アルキル基)を表し、シラン化合物の保存安定性やハンドリング性の観点、シラン化合物の合成の容易さから、R
4がメチル基またはエチル基であることが好ましい。
【0058】
R
5は水素原子またはメチル基を表す。
【0059】
dは8〜16の整数であり、好ましくは8〜10の整数であり;eは0〜2の整数であり、好ましくは0であり;fは0〜3の整数であり、好ましくは0であり;eとfの和は0〜3であり、好ましくは0〜2の整数である。シラン化合物の合成の容易さからdが8〜10の整数であり、eが0〜2の整数であり、fが0であることが好ましく、dが8〜10の整数であり、eが0であり、fが0であることが特に好ましい。
【0060】
なお、eが2である場合に複数存在するR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、fが2以上である場合に複数存在するR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、eとfの和が0または1である場合に複数存在するR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0061】
重合性シラン化合物(A1)、(A1’)としては、例えば、8−アクリロイルオキシオクチルジメチルメトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルジエチルメトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルエチルジメトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルジメチルエトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルジエチルエトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルエチルジエトキシシラン、8−アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルジメチルメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルジエチルメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルエチルジメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルジメチルエトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルジエチルエトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルエチルジエトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、12−アクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、12−メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、12−アクリロイルオキシドデシルトリエトキシシラン、12−メタクリロイルオキシドデシルトリエトキシシランが挙げられる。
【0062】
これらの中でも、本発明の硬化性組成物の粘度の低減および保存安定性の向上の観点から、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリエトキシシランが好ましい。
【0063】
重合性シラン化合物(A1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
重合性シラン化合物(A1)は公知の方法で製造することができ、市販もされている。
【0065】
<シラン化合物(A2)>
本発明では、必要ならば(例えば、硬化性組成物を硬化させる際の収縮率を低減させる観点から)、重合性シラン化合物(A1)に加えて、(重合性シラン化合物(A1)以外の)1種以上のシラン化合物(A2)を用いることができる。
【0066】
シラン化合物(A2)は特に限定されないが、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、フェニル基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、チオール基、アミノ基などを有するシラン化合物が挙げられる。
【0067】
シラン化合物(A2)として、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0068】
ただし、硬化性組成物の粘度上昇やゲル化を防止する観点から、シラン化合物(A2)としては、下記一般式(2’)で表される重合性シラン化合物(A2’)を用いなくともよい。
【0069】
【化6】
式(2’)中、R
2〜R
5およびe、fはそれぞれ式(1')中の同記号と同義であり、R
5が水素原子の場合はgは1〜7の整数であり、R
5がメチル基の場合はgは1〜6の整数である。
【0070】
シラン化合物(A2)として、前記の化合物のなかでも硬化物の耐熱性の観点からジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0071】
シラン化合物(A2)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その種類の数は特に限定されないが、合成時の簡便化の観点から、好ましくは1〜2種、より好ましくは1種である。
【0072】
《シリカ微粒子の表面修飾に用いられるシラン化合物の使用量》
シリカ微粒子(A)(表面修飾シリカ微粒子)において、少なくとも重合性シラン化合物(A1)を含む1種以上のシラン化合物で、シリカ微粒子が表面修飾されている。表面修飾の詳細な条件は、後述する〈硬化性組成物の製造方法〉の《工程1》の欄に記載したとおりである。
【0073】
表面修飾に用いられるシラン化合物の全量(例:シラン化合物(A2)を用いる場合、重合性シラン化合物(A1)の量に加えて、シラン化合物(A2)の量を含む)は、表面修飾前のシリカ微粒子100質量部(これは溶媒を含まないシリカのみの量である。)に対して、通常5〜100質量部、好ましくは20〜50質量部、最も好ましくは25〜35質量部である。
【0074】
シラン化合物の使用量が上記範囲を下回ると、組成物の粘度が高くなり、組成物中でのシリカ微粒子(A)の分散性が悪化してゲル化したり、前記組成物から得られる硬化物の耐熱性が低下したりする場合がある。シラン化合物の使用量が上記範囲を上回ると、シリカ微粒子の表面修飾時にシリカ微粒子間での反応が起こることにより、組成物中でのシリカ微粒子(A)の凝集またはゲル化を引き起こす場合がある。
【0075】
表面修飾に用いられるシラン化合物の全量に対して、重合性シラン化合物(A1)の量は、通常1〜100質量%、好ましくは10〜100質量%、更に好ましくは20〜100質量%である。
【0076】
表面修飾に用いられるシラン化合物の全量に対して、重合性シラン化合物(A2’)の量は、硬化性組成物の粘度上昇やゲル化を防止する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0質量%である。
【0077】
《シリカ微粒子(A)の含有量》
本発明の硬化性組成物中のシリカ微粒子(A)は、シリカ微粒子(A)における表面修飾前のシリカ微粒子換算の量と、(メタ)アクリレート化合物(B)の量との合計量100質量部に対し、シリカ微粒子(A)における表面修飾前のシリカ微粒子換算の量が1〜90質量部となるように配合することが好ましく、15〜65質量部であることがより好ましく、45〜55質量部であることが最も好ましい。
【0078】
シリカ微粒子(A)の「表面修飾前のシリカ微粒子換算」の量とは、例えば、x質量部のシリカ微粒子をy質量部のシラン化合物にて表面修飾して得られたz質量部のシリカ微粒子(A)を含有する硬化性組成物の場合、x質量部のシリカ微粒子に基づいて算出される量を指す。
【0079】
シリカ微粒子(A)の含有量が上記範囲であれば、組成物の流動性および組成物中のシリカ微粒子(A)の分散性が良好である。よって、当該組成物を用いれば、充分な強度および耐熱性を有する硬化物を製造することができる。
【0080】
〈(メタ)アクリレート化合物(B)〉
(メタ)アクリレート化合物(B)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。
【0081】
(メタ)アクリレート化合物(B)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有しかつ環構造を有しない(メタ)アクリレート化合物(B1)、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有しかつ脂環式構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B2)が挙げられる。以下、これらを単に(メタ)アクリレート(B1)、(メタ)アクリレート(B2)ともいう。
【0082】
本発明の硬化性組成物は、(メタ)アクリレート化合物(B)として、少なくとも(メタ)アクリレート(B1)または(メタ)アクリレート(B2)のいずれか一方を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート(B1)と(メタ)アクリレート(B2)とを共に含むことがより好ましい。
【0083】
本発明の硬化性組成物中の(メタ)アクリレート化合物(B)は、シリカ微粒子(A)における表面修飾前のシリカ微粒子換算の量と、(メタ)アクリレート化合物(B)の量との合計量100質量部に対し、(メタ)アクリレート化合物(B)の量が10〜99質量部となるように配合することが好ましく、35〜85質量部であることがより好ましく、45〜55質量部であることが最も好ましい。
【0084】
《(メタ)アクリレート(B1)》
(メタ)アクリレート(B1)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有し、かつ環構造を有しない(メタ)アクリレート化合物である。上記(B1)の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は1以上であるかぎり特に限定されないが、好ましくは2以上、より好ましくは2〜6である。
【0085】
(メタ)アクリレート(B1)としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)メタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0086】
(メタ)アクリレート(B1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
《(メタ)アクリレート(B2)》
(メタ)アクリレート(B2)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有し、かつ脂環式構造を有する(メタ)アクリレート化合物である。なお、脂環式構造とは、炭素原子が環状に結合した構造のうち、芳香環構造を除外した構造である。上記(B2)の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は1以上であるかぎり特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
【0088】
上記(B2)の脂環式構造は特に限定されないが、好ましくは基本骨格としてシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロデカン構造、イソボルニル構造、アダマンタン構造、これらの構造が連なったもの、またはこれらの構造に二重結合を加えた構造を1つ以上有するもの、より好ましくはシクロヘキサン構造、シクロペンタン構造、ジシクロペンタン構造、シクロデカン構造、トリシクロデカン構造、アダマンタン構造、またはこれらの構造に二重結合を加えた構造を1つ以上有するもの、さらに好ましくはトリシクロデカン構造またはアダマンタン構造を1つ以上有するものである。
【0089】
(メタ)アクリレート(B2)としては、例えば、
シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ボルニルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメチロールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、アダマンタントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、ノルボルナントリメチロールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、パーヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、単官能(メタ)アクリレートが好ましく、硬化物の透明性および耐熱性の観点から、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0091】
(メタ)アクリレート(B2)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
(メタ)アクリレート化合物(B)は、(B1)および(B2)のいずれか一方を含むのみでもよいが、(B1)および(B2)の両方を含むことが好ましい。
【0093】
(メタ)アクリレート化合物(B)が(B1)および(B2)の両方を含む場合は、その質量比が(B1):(B2)=1:99〜99:1であることが好ましく、40:60〜90:10であることがより好ましく、40:60〜60:40であることが最も好ましい。
【0094】
〈重合開始剤(C)〉
重合開始剤(C)としては、例えば、ラジカルを発生する光重合開始剤および熱重合開始剤が挙げられる。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物の硬化性に寄与する。
【0095】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
本発明の硬化性組成物中の光重合開始剤の含有量は、組成物を適度に硬化させる量であればよく、光重合開始剤を除いた組成物100質量部に対して、通常0.01〜15質量部、好ましくは0.02〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が多すぎると、組成物の保存安定性が低下したり、着色したり、架橋して硬化物を得る際の架橋が急激に進行して硬化時の割れ等の問題が発生することがある。また、光重合開始剤の含有量が少なすぎると、組成物を充分に硬化させることができないことがある。
【0097】
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンが挙げられる。これらの熱重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明の硬化性組成物中の熱重合開始剤の含有量は、組成物を適度に硬化させる量であればよく、熱重合開始剤を除いた組成物100質量部に対して、通常0.01〜15質量部、好ましくは0.02〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。熱重合開始剤の含有量が多すぎると、組成物の保存安定性が低下したり、着色したり、架橋して硬化物を得る際の架橋が急激に進行して硬化時の割れ等の問題が発生することがある。また、熱重合開始剤の含有量が少なすぎると、組成物を充分に硬化させることができないことがある。
【0099】
〈その他の成分〉
本発明の硬化性組成物は、上記必須成分(A)〜(C)の他に、必要に応じて、組成物の粘度、ならびに硬化物の透明性および耐熱性等の特性を損なわない範囲で、重合禁止剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、顔料、他の無機フィラー等の充填剤、反応性希釈剤、その他改質剤等を含有してもよい。
【0100】
なお、本発明の硬化性組成物は、実質的に有機溶媒および水を含有しないことが好ましい。ここでいう実質的とは、本発明の硬化性組成物を用いて実際に硬化物を得る際に、脱溶媒する工程を再度経る必要がないことを意味し、具体的には、硬化性組成物中の有機溶媒および水のそれぞれの残存量が、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることを意味する。
【0101】
《重合禁止剤》
重合禁止剤は、保存中に硬化性組成物の含有成分が重合反応を起こすことを防止するために用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。
【0102】
重合禁止剤の含有量は、組成物の透明性、硬化物の耐熱性の観点から、重合禁止剤を除いた硬化性組成物100質量部に対して0.1質量部以下であることが好ましい。重合禁止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
《レベリング剤》
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物およびポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物が挙げられる。レベリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
《酸化防止剤》
酸化防止剤とは、フリーラジカルなどの酸化促進因子を捕捉する機能を有する化合物である。酸化防止剤としては、工業的に一般に使用される酸化防止剤であれば特に限定はなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0105】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス1010(IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス1076(IRGANOX 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス1330(IRGANOX 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス3114(IRGANOX 3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス3790(IRGANOX 3790:1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス1035(IRGANOX 1035:チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ− t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス1135(IRGANOX 1135:ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス1520L(IRGANOX 1520L:4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス3125(IRGANOX 3125、BASFジャパン(株)製)、イルガノックス565(IRGANOX 565:2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン(株)製)、アデカスタブAO−80(アデカスタブAO−80:3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、(株)ADEKA製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学(株)製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、住友化学(株)製)、スミライザーGS(Sumilizer GS、住友化学(株)製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、(株)サイテック製)、ビタミンE(エーザイ(株)製)が挙げられる。
【0106】
リン系酸化防止剤としては、例えば、イルガフォス168(IRGAFOS 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、BASFジャパン(株)製)、イルガフォス12(IRGAFOS 12:トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、BASFジャパン(株)製)、イルガフォス38(IRGAFOS 38:ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、BASFジャパン(株)製)、アデカスタブ329K((株)ADEKA製)、アデカスタブPEP36((株)ADEKA製)、アデカスタブPEP−8((株)ADEKA製)、Sandstab P−EPQ(クラリアント社製)、ウェストン618(Weston 618、GE社製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE社製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE社製)、スミライザーGP(Sumilizer GP:6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン)、住友化学(株)製)が挙げられる。
【0107】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチルまたはジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート化合物、テトラキス[メチレン(3−ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物が挙げられる。
【0108】
酸化防止剤の含有量は、多量に加えると着色したり、硬化を妨げることがあることから、酸化防止剤を除いた硬化性組成物100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。酸化防止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
《紫外線吸収剤》
紫外線吸収剤とは、一般的に波長約200〜380nmの紫外線を吸収して、熱や赤外線などのエネルギーに変化させて放出させることができる化合物である。
【0110】
紫外線吸収剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ジフェニルメタン系、2−シアノプロペン酸エステル系、サリチル酸エステル系、アントラニレート系、ケイヒ酸誘導体系、カンファー誘導体系、レゾルシノール系、オキザリニド系、クマリン誘導体系の紫外線吸収剤等を本発明に使用することができる。紫外線吸収剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノールが挙げられる。
【0112】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4,6−トリス−(ジイソブチル4’−アミノ−ベンザルマロネート)−s−トリアジン、4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0113】
ジフェニルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジフェニルメタノン、メチルジフェニルメタノン、4−ヒドロキシジフェニルメタノン、4−メトキシジフェニルメタノン、4−オクトキシジフェニルメタノン、4−デシルオキシジフェニルメタノン、4−ドデシルオキシジフェニルメタノン、4−ベンジルオキシジフェニルメタノン、4,2’,4’−トリヒドロキシジフェニルメタノン、2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシジフェニルメタノン、4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ−ジフェニルメタノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0114】
2−シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルα−シアノ−β,β−ジフェニルプロペン酸エステルおよびイソオクチルα−シアノ−β,β−ジフェニルプロペン酸エステルが挙げられる。
【0115】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸イソセチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸フェニルが挙げられる。アントラニレート系紫外線吸収剤としては、例えば、メンチルアントラニレートが挙げられる。
【0116】
ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルヘキシルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリル−エチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、メチル−α−カルボメトキシシンナメート、メチル−α−シアノ−β−メチル−p−メトキシシンナメートが挙げられる。
【0117】
カンファー誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファーが挙げられる。レゾルシノール系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンゾイルレゾルシノールビス(4−t−ブチルベンゾイルレゾルシノール)が挙げられる。
【0118】
オキザリニド系紫外線吸収剤としては、例えば、4,4’−ジ−オクチルオキシオキザニリド、2,2’−ジエトキシオキシオキザニリド、2,2’−ジ−オクチルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキザニリド、2,2’−ジ−ドデシルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキザニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキザニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキザニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エトキシオキザニリドが挙げられる。クマリン誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、7−ヒドロキシクマリンが挙げられる。
【0119】
《赤外線吸収剤》
赤外線吸収剤としては、例えば、金属錯体系化合物を用いることができ、具体的にはフタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物が挙げられる。
【0120】
《光安定剤》
光安定剤とは、光エネルギーによって発生したラジカルによる自動酸化分解を低減させ、硬化物の劣化を抑制する効能を有する化合物である。
【0121】
光安定剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、ヒンダードアミン系化合物(以下「HALS」ともいう。)、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。なお、光安定剤のなかには(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物も含まれる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する光安定剤のなかには前記(メタ)アクリレート化合物(B)に該当するものもあるが、それらは(メタ)アクリレート化合物(B)であると同時に光安定剤であるとみなす。
【0122】
HALSとしては、例えば、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS;ペンタメチルピペリジニルメタクリレートが挙げられる。
【0123】
光安定剤の含有量は、着色性の観点から、光安定剤を除いた硬化性組成物100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。光安定剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
《充填剤、顔料》
充填剤または顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、アルミノケイ酸塩、アエロジル(登録商標)、黒鉛、カーボンナノチューブ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ステアリン酸亜鉛、亜鉛華、ベンガラ、アゾ顔料が挙げられる。
【0125】
〈硬化性組成物の粘度〉
本発明の硬化性組成物の、B型粘度計DV−III ULTRA(BROOKFIELD社製)で測定される25℃における粘度は、通常50〜20,000mPa・s、好ましくは100〜8,000mPa・sである。
【0126】
本発明の硬化性組成物は、溶媒を含有していなくとも適度な粘度を有しており、良好なハンドリング性を有する。これは、上述のシリカ微粒子の表面修飾に基づくシリカ微粒子(A)の、(メタ)アクリレート化合物(B)との高い反応性および相溶性、(メタ)アクリレート化合物(B)中における高い分散安定性に起因する。
【0127】
〈硬化性組成物の製造方法〉
本発明の硬化性組成物は、例えば、シリカ微粒子を上述のシラン化合物で表面修飾して、シリカ微粒子(A)を得る工程(工程1);工程1で得られたシリカ微粒子(A)と、(メタ)アクリレート化合物(B)と、必要に応じてその他の成分とを混合して、混合液を得る工程(工程2);工程2で得られた混合液から揮発分を留去(以下「脱溶媒」ともいう。)して、混合物を得る工程(工程3);工程3で得られた混合物に重合開始剤(C)と、必要に応じてその他の成分とを添加・混合して、硬化性組成物を得る工程(工程4)を順次行うことにより、製造することができる。
【0128】
《工程1》
工程1では、シリカ微粒子を、少なくとも重合性シラン化合物(A1)を含む1種以上のシラン化合物で表面修飾する。表面修飾では、シリカ微粒子の表面において、シラン化合物の加水分解・縮重合が進行する。
【0129】
シリカ微粒子としては、硬化性組成物におけるその分散性の点から、有機溶媒にシリカ微粒子が分散してなる分散体(コロイダルシリカ)を用いることが好ましい。前記有機溶媒としては、硬化性組成物中に含有される有機成分(例:(メタ)アクリレート化合物(B))が溶解するものを用いることが好ましい。
【0130】
上記分散体中のシリカ微粒子の含有量は、硬化性組成物におけるその分散性の点から、通常1〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。
【0131】
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒およびグリコールエーテル溶媒が挙げられる。工程3における揮発分の留去のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;などの有機溶媒が好ましい。
【0132】
上記分散体は従来公知の方法で製造することができ、市販されている。その他の上記で説明したシリカ微粒子も、従来公知の方法で製造することができ、また市販もされている。
【0133】
表面修飾は、シリカ微粒子(好ましくはコロイダルシリカ)を反応器に入れ、攪拌しながら、少なくとも重合性シラン化合物(A1)を含む1種以上のシラン化合物を添加して、攪拌混合し、さらに当該シラン化合物の加水分解を行うのに必要な水および触媒を添加して、攪拌しながら、当該シラン化合物を加水分解し、シリカ微粒子表面にて縮重合させることにより行う。
【0134】
加水分解の過程において、シラン化合物の加水分解による消失は、ガスクロマトグラフィーにより確認することができる。その測定条件は、実施例に記載したとおりである。
【0135】
〈シリカ微粒子(A)〉の欄で上述したように、シリカ微粒子を表面修飾する際のシラン化合物の使用量(例:シラン化合物(A2)を用いる場合、重合性シラン化合物(A1)の量に加えて、シラン化合物(A2)の量を含む)は、表面修飾前のシリカ微粒子100質量部に対して、通常5〜100質量部、好ましくは20〜50質量部、最も好ましくは25〜35質量部である。
【0136】
加水分解を行うのに必要な水の量は、シラン化合物1モル等量に対して通常0.1〜10モル等量であり、好ましくは1〜10モル等量、より好ましくは1〜5モル等量である。水の量が過度に少ないと、加水分解速度が極端に遅くなり経済性に欠ける、表面修飾が充分進行しない、などの恐れがある。水の量が過度に多いと、シリカ微粒子(A)がゲルを形成する恐れがある。
【0137】
加水分解を行う際には、通常、加水分解反応用の触媒が使用される。
【0138】
加水分解反応用の触媒としては、例えば、塩酸(塩化水素水溶液)、酢酸、硫酸およびリン酸等の無機酸;蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸およびマレイン酸等の有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよびアンモニア等のアルカリ触媒;有機金属;金属アルコキシド;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチレートおよびジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)およびジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物;ホウ素ブトキシドおよびホウ酸等のホウ素化合物が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性や、充分な加水分解速度が得られることから、塩酸、酢酸、マレイン酸およびホウ素化合物が好ましい。
【0139】
加水分解反応用の触媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
工程1において1種または複数種のシラン化合物の加水分解を行う際には、非水溶性触媒を使用してもよいが、水溶性触媒を使用することが好ましい。加水分解反応用の水溶性触媒を使用する場合は、水溶性触媒を適当量の水に溶解し、反応系に添加すると、触媒を均一に分散させることができるので好ましい。
【0141】
加水分解に使用される触媒の添加量は、特に限定されない。なお、上記触媒は水に溶解した水溶液として加水分解反応に使用されることがあるが、その場合には、上記触媒の添加量は、水溶液中に含まれる触媒(例えば、酸や塩基)のみの量を表す。
【0142】
加水分解反応の反応温度は特に限定されないが、通常10〜80℃の範囲であり、好ましくは20〜50℃の範囲である。反応温度が過度に低いと、加水分解速度が極端に遅くなり経済性に欠ける、表面修飾が充分進行しない、などの恐れがある。反応温度が過度に高いと、ゲル化反応が起こりやすくなる傾向がある。
【0143】
加水分解反応を行うための反応時間は特に限定されないが、通常10分間〜48時間、好ましくは30分間〜24時間の範囲である。
【0144】
なお、工程1における2種以上のシラン化合物による表面修飾は、シラン化合物ごとに逐次に行ってもよいが、同時に一段で行う方が反応プロセスの単純化や効率化の点で好ましい。
【0145】
《工程2》
工程2において、工程1で得られたシリカ微粒子(A)と、(メタ)アクリレート化合物(B)と、必要に応じてその他の成分とを混合する方法としては、特に制限は無いが、例えば、室温または加熱条件下でミキサー、ボールミルまたは3本ロールなどの混合機により前記各成分を混合する方法、工程1を行った反応器中で連続的に攪拌しながら(メタ)アクリレート化合物(B)と、必要に応じてその他の成分とを添加・混合する方法が挙げられる。
【0146】
《工程3》
工程3において、シリカ微粒子(A)と(メタ)アクリレート化合物(B)等との混合液から有機溶媒および水等の揮発分の留去(脱溶媒)を行うには、減圧状態で当該混合液を加熱することが好ましい。
【0147】
温度は、20〜100℃に保つことが好ましく、凝集ゲル化防止と脱溶媒スピードとのバランスで、より好ましくは30〜70℃、更に好ましくは30〜50℃である。温度を上げすぎると、硬化性組成物の流動性が極端に低下したり、ゲル状になってしまったりすることがある。
【0148】
減圧する際の真空度は、通常10〜4,000kPaであり、脱溶媒スピードと凝集ゲル化防止とのバランスを図る上で、更に好ましくは10〜1,000kPa、最も好ましくは10〜500kPaである。真空度の値が大きすぎると、脱溶媒スピードが極端に遅くなり経済性に欠けることがある。
【0149】
脱溶媒後の混合物は、実質的に有機溶媒および水を含有しないことが好ましい。ここでいう実質的とは、本発明の硬化性組成物を用いて実際に硬化物を得る際に、脱溶媒する工程を再度経る必要がないことを意味し、具体的には、硬化性組成物中の有機溶媒および水のそれぞれの残存量が、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることを意味する。
【0150】
工程3においては、脱溶媒する前に、脱溶媒後の混合物100質量部に対して0.1質量部以下の添加量となるように、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤は、脱溶媒過程中や脱溶媒後の硬化性組成物の保存中にその含有成分が重合反応を起こすことを防止するために用いることができる。
【0151】
工程3は、工程2で得られた、シリカ微粒子(A)と(メタ)アクリレート化合物(B)等との混合液を専用の装置に移して行うこともできるし、工程2を工程1で実施した反応器を用いて行ったのであれば、工程2に引き続いて当該反応器中で行うこともできる。
【0152】
《工程4》
工程4において、工程3で脱溶媒後の混合物に重合開始剤(C)と、必要に応じてその他の成分とを添加・混合する方法としては、特に制限は無いが、例えば、室温でミキサー、ボールミルまたは3本ロールなどの混合機により前記各成分を混合する方法、工程1〜3を行った反応器中で連続的に攪拌しながら重合開始剤(C)と、必要に応じてその他の成分とを添加・混合する方法が挙げられる。
【0153】
さらに、このような重合開始剤(C)等の添加・混合を行って得られた硬化性組成物に対して、必要に応じて濾過を行ってもよい。この濾過は、硬化性組成物中のゴミ等の外来の異物除去を目的として行う。濾過方法には、特に制限は無いが、加圧濾過孔径1.0μmのメンブレンタイプ、カートリッジタイプ等のフィルターを使用し、加圧濾過する方法が好ましい。
【0154】
以上のようにして、本発明の硬化性組成物が得られる。
【0155】
〔硬化物〕
本発明の硬化性組成物を硬化させることにより、硬化物が得られる。
【0156】
本発明の硬化物は、重合性シラン化合物(A1)を含む少なくとも1種以上のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)および(メタ)アクリレート化合物(B)等が強固に硬化したことにより、耐熱性に優れ(指標として、線膨張係数が小さい)、しかも従来品と同等以上の透明性を有する(指標として、光線透過率が大きい)。したがって、前記硬化物は、後述するように光学材料・電子材料として好適に用いることができる。
【0157】
表面修飾されたシリカ微粒子(A)を含有せず、(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する硬化性組成物からなる硬化物に対して、重合性シラン化合物(A1)を含む少なくとも1種以上のシラン化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(A)を含有し、(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する硬化性組成物からなる本発明の硬化物は、35℃から250℃までの範囲における平均線膨張係数が、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上小さくなる。平均線膨脹係数の測定方法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0158】
本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下である。収縮率の定義・測定方法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0159】
〔硬化物の製造方法〕
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の硬化性組成物を硬化させる工程を有する。
【0160】
硬化の方法としては、例えば、活性エネルギー線の照射によりエチレン性不飽和基を架橋させる方法、熱をかけてエチレン性不飽和基を熱重合させる方法があり、これらを併用することもできる。
【0161】
硬化性組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる場合は、上記の工程4において、硬化性組成物中に光重合開始剤を含有させる。硬化性組成物に熱をかけて硬化させる場合は、上記の工程4において、硬化性組成物中に熱重合開始剤を含有させる。
【0162】
本発明の硬化物は、例えば、本発明の硬化性組成物をガラス板、プラスチック板、金属板またはシリコンウエハ等の基板上に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜に活性エネルギー線を照射することによって、あるいは当該塗膜を加熱することによって、得ることができる。硬化のために、活性エネルギー線の照射と加熱との両方を行ってもよい。
【0163】
前記硬化性組成物の塗布方法としては、例えば、バーコーター、アプリケーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレーコーター、カーテンコーターまたはロールコーターなどによる塗布、スクリーン印刷などによる塗布、ならびにディッピングなどによる塗布が挙げられる。
【0164】
本発明の硬化性組成物の基板上への塗布量は特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができ、活性エネルギー線照射および/または加熱での硬化処理後に得られる塗膜の膜厚が、1μm〜10mmとなる量が好ましく、10〜1000μmとなる量がより好ましい。
【0165】
硬化のために使用される活性エネルギー線としては、電子線、または紫外から赤外の波長範囲の光が好ましい。光源としては、例えば、紫外線であれば超高圧水銀光源またはメタルハライド光源、可視光線であればメタルハライド光源またはハロゲン光源、赤外線であればハロゲン光源が使用できるが、この他にもレーザー、LEDなどの光源が使用できる。
【0166】
活性エネルギー線の照射量は、光源の種類、塗膜の膜厚などに応じて適宜設定されるが、好ましくは(メタ)アクリレート化合物(B)の(メタ)アクリロイルオキシ基の反応率が80%以上、より好ましくは90%以上になるように適宜設定できる。反応率は、赤外吸収スペクトルにより、反応前後の(メタ)アクリロイルオキシ基の吸収ピーク強度の変化から算出される。
【0167】
また、活性エネルギー線を照射して硬化させた後、必要に応じて、加熱処理(アニール処理)をして硬化を更に進行させてもよい。その際の加熱温度は80〜220℃の範囲にあることが好ましく、加熱時間は10分〜60分の範囲にあることが好ましい。
【0168】
本発明の硬化性組成物の硬化のために加熱処理により熱重合させる場合は、加熱温度は、好ましくは80〜200℃の範囲であり、より好ましくは100〜160℃の範囲である。加熱温度が前記範囲を下回ると、加熱時間を長くする必要があり経済性に欠ける傾向にあり、加熱温度が前記範囲を上回ると、エネルギーコストがかかるうえに、加熱昇温時間および降温時間がかかるため経済性に欠ける傾向にある。
【0169】
加熱時間は、加熱温度、塗膜の膜厚などに応じて適宜設定されるが、好ましくは(メタ)アクリレート化合物(B)の(メタ)アクリロイルオキシ基の反応率が80%以上、より好ましくは90%以上になるように適宜設定できる。反応率は、上述したように、赤外吸収スペクトルにより、反応前後の(メタ)アクリロイルオキシ基の吸収ピーク強度の変化から算出される。
【0170】
〔光学材料・電子材料〕
本発明の硬化物は、透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池用基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等の光学材料・電子材料として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0172】
〈硬化性組成物の調製〉
[実施例1]
表面修飾されるシリカ微粒子として、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ微粒子含量30質量%、平均粒子径10〜20nm、商品名:スノーテックIPA−ST;日産化学工業(株)製)を用いた。
【0173】
セパラブルフラスコにイソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ100g(溶媒を含む量)を入れ、当該セパラブルフラスコにシラン化合物(A1)として8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン(MOS)を9g(コロイダルシリカ中の表面修飾前のシリカ微粒子量100部に対して30部となる量)加え、攪拌混合し、さらに濃度0.1825質量%の塩酸を2g加え、25℃で24時間撹拌することにより、シリカ微粒子の表面修飾を行い、表面修飾シリカ微粒子を含む分散液を得た。
【0174】
シラン化合物(ここではMOS)の加水分解による消失は、ガスクロマトグラフィー(型式6850;アジレント(株)製)により確認した。無極性カラムDB−1(J&W社製)を使用し、温度50〜300℃、昇温速度10℃/分、キャリアガスとしてHeを使用し、流量1.2cc/分、水素炎イオン化検出器にて内部標準法で測定した。MOSは、上記塩酸を添加後24時間で消失した。
【0175】
前記表面修飾シリカ微粒子を含む分散液に、(メタ)アクリレート(B1)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を15g(分散液中の表面修飾前換算のシリカ微粒子量50部に対して、25部となる量)と、(メタ)アクリレート(B2)としてアダマンチルメタクリレート(ADMA)15g(分散液中の表面修飾前換算のシリカ微粒子量50部に対して、25部となる量)と、酸化防止剤としてイルガノックス1135(IRGANOX1135:ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル;BASFジャパン(株)製)0.09g(分散液中の表面修飾前換算のシリカ微粒子量と、TMPTAとADMAの合計質量100部に対して0.15部となる量)と、HALSとしてペンタメチルピペリジニルメタクリレート(商品名:FA−711MM;日立化成(株)製)0.09g(分散液中の表面修飾前換算のシリカ微粒子量と、TMPTAとADMAの合計質量100部に対して0.15部となる量)を加え、均一に混合した。その後、攪拌しながら40℃、100kPaにて減圧加熱して、揮発分を除去して母液を得た。
【0176】
得られた母液100部に、熱重合開始剤としてパーブチルO(日油(株)製)1.0部を添加して、硬化性組成物(X−1)を得た。結果を表1に示す。
【0177】
[実施例2]
シラン化合物を、表面修飾前のシリカ微粒子100部に対して、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン(MOS)18部とフェニルトリメトキシシラン(PhS)12部との混合物に替えたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物(X−2)を得た。
【0178】
[実施例3]〜[実施例7]
実施例2において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は実施例2と同様にして、硬化性組成物(X−3)〜(X−7)を得た。
【0179】
[比較例1]
実施例1において、シリカ微粒子およびシラン化合物を用いず、(メタ)アクリレート化合物(B)の使用量を表2に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物(Y−1)を得た。なお、本比較例は、実施例1と異なり、組成物中にコロイダルシリカ分散液由来の溶媒は添加されていないため、溶媒留去の工程は省略した。
【0180】
[比較例2]
実施例1において、シラン化合物により表面修飾されたシリカ微粒子を使用せず、未修飾のイソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカをそのまま使用し、各成分の使用量を表2に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物(Y−2)を得た。
【0181】
[実施例8〜16、比較例3〜32]
実施例1において、シリカ微粒子、シラン化合物および(メタ)アクリレート化合物(B)の、種類・添加量を表2〜8に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物(X−8)〜(X−16)、(Y−3)〜(Y−32)を得た。
【0182】
ただし、表中の「重合系」の欄に「光重合」と記載のある例については、実施例1における熱重合開始剤の代わりに、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、BASFジャパン(株)製)を母液100部に対して0.5部加えた。
【0183】
なお、シリカ微粒子の添加量がゼロである例は、比較例1のようにシリカ微粒子を添加しない組成物を示すものであり、よって比較例1と同様に溶媒留去の工程は省略している。また、シラン化合物の添加量がゼロである例は、比較例2のように未修飾のコロイダルシリカをそのまま添加した組成物を示す。
【0184】
また、表中「重合系」の欄が空欄の例は、重合開始剤を添加するより前の時点で組成物がゲル化し、その後の操作(重合開始剤の添加・硬化・物性評価)が不可能であったことを示す。
【0185】
〈硬化膜の製造〉
硬化性組成物(熱硬化系;ゲル化していないもの)(X−1)〜(X−7)、(X−10)〜(X−12)、(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)、(Y−7)、(Y−14)、(Y−16)、(Y−17)、(Y−19)、(Y−20)を、それぞれ別々のガラス基板上に、硬化膜の厚さが約500〜550μmまたは約200μmになるように塗布して塗膜を形成し、130℃で30分間加熱処理して塗膜を硬化させた。
【0186】
硬化性組成物(光硬化系;ゲル化していないもの)(X−8)、(X−9)、(X−13)〜(X−16)、(Y−8)、(Y−12)、(Y−13)、(Y−23)、(Y−26)、(Y−30)〜(Y−32)を、それぞれ別々のガラス基板上に、硬化膜の厚さが約500〜550μmまたは約200μmになるように塗布して塗膜を形成し、超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置を用いて5J/cm
2の強度で塗膜を露光することにより、塗膜を硬化させた。
【0187】
〈性能評価方法〉
(1)粘度
各硬化性組成物の粘度は、B型粘度計DV−III ULTRA(BROOKFIELD社製)を用いて、25℃で測定した。粘度が適度に低いほど、ハンドリング性が良好な硬化性組成物である。
【0188】
(2)収縮率
上記硬化性組成物(ゲル化していないもの)のうち、光重合開始剤を加えた硬化性組成物の収縮率は、それぞれ別々のシリコン基板上に当該硬化性組成物をスピンコートし(硬化膜の厚さが約500μmとなる条件)、上記〈硬化膜の製造〉と同様の露光条件にて窒素雰囲気中で硬化させた。硬化前後の膜厚を膜厚計(フィルムメトリクス(株)製、F20−NIR)で測定し、下記式により収縮率を求めた。収縮率が低いほど、成形性に優れた硬化性組成物である。
【0189】
【数1】
上記硬化性組成物(ゲル化していないもの)のうち、熱重合開始剤を加えた硬化性組成物の収縮率は、硬化性組成物の硬化前の比重を密度比重計(DA−650;京都電子工業(株)製)で測定し、〈硬化膜の製造〉の欄で記載した条件で硬化した後の比重を自動比重計(DMA−220H;新光電子(株)製)により測定し、下記式により求めた。
【0190】
【数2】
(3)線膨張係数
上記〈硬化膜の製造〉で得られた厚さ約200μmの硬化膜の線膨張係数を、熱機械分析装置(TMA/SS6100、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて、窒素雰囲気下で、20mNの加重をかけて、30℃から300℃まで、またはガラス転移点まで5℃/分で昇温して測定した。35℃から250℃までの範囲または30℃からガラス転移点以下の温度までの範囲での平均線膨張係数を算出した。平均線膨張係数が小さいほど、耐熱性に優れた硬化膜である。
【0191】
(4)光線透過率
上記〈硬化膜の製造〉で得られた厚さ約500〜550μmの硬化膜の波長400nmでの光線透過率(T%)を、分光光度計(日本分光(株)製、UV3600)を用いて測定した。光線透過率が大きいほど、透明性に優れた硬化膜である。
【0192】
以上の評価結果を表1〜8に示す。
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
【表5】
【0198】
【表6】
【0199】
【表7】
【0200】
【表8】
表中、シリカ微粒子およびシラン化合物(A1),(A2)および(メタ)アクリレート(B1),(B2)の組成の数値の単位は質量部である。ただし、シラン化合物(A1)および(A2)の量は、表面修飾前のシリカ微粒子100部に対する、その表面修飾に用いたシラン化合物の量である。また、シリカ微粒子量(表面修飾されたシリカ微粒子(A)においては表面修飾前のシリカ微粒子換算の質量、未修飾のシリカ微粒子においてはそのままの質量)と(メタ)アクリレート(B1)および(メタ)アクリレート(B2)の量との合計が100部となるように設定される。
【0201】
表中、シリカ微粒子の粒径が10nmとあるのは、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ微粒子含量30質量%、平均粒子径10〜20nm、商品名:スノーテックIPA−ST;日産化学工業(株)製)であり、粒径が200nmとあるのは、メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ微粒子含量40質量%、平均粒子径200nm、商品名:スノーテックMEK−ST−2040;日産化学工業(株)製)であり、粒径が500nmとあるのは、イソプロピルアルコール分散型球状シリカ(シリカ微粒子含量60質量%、平均粒子径500nm、商品名:アドマファインSC−2050;(株)アドマテックス製)である。
【0202】
表中のシラン化合物の記号の意味は以下のとおりである。
・MOS:8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン
・PhS:フェニルトリメトキシシラン
・MPS:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・VTS:ビニルトリメトキシシラン
表中の(メタ)アクリレート化合物(B)の記号の意味は以下のとおりである。
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
(3官能モノマー:日本化薬(株)製)
・APG700:ポリプロピレングリコール(#700)ジアクリレート(2官能モノマー;商品名:NKエステル APG−700;新中村化学工業(株)製)
・ADMA:アダマンチルメタクリレート
(単官能モノマー;大阪有機化学工業(株)製)
・IRR214K:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(2官能モノマー;商品名:IRR214−K;ダイセル・サイテック(株)製))
《表1〜2について》
硬化性組成物(X−1)〜(X−7)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れ、硬化収縮が小さい。さらに、硬化性組成物(X−1)〜(X−7)を熱重合して得られる硬化物は、平均線膨張係数が小さく、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−1)から得られる硬化物は、硬化性組成物(X−1)〜(X−7)から得られる硬化物よりも概して平均線膨張係数が高く、収縮率も高い。シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−2)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、シリカ微粒子の分散安定性が向上する。
【0203】
シリカ微粒子をPhSのみで表面修飾して得られた硬化性組成物(Y−3)は、MOSのみを用いた硬化性組成物(X−1)よりも粘度が著しく高い。また、硬化性組成物(Y−3)から得られる硬化物の透過率も、硬化性組成物(X−1)から得られる硬化物の透過率よりも低い。また、シリカ微粒子をMPSのみで表面修飾して得られた硬化性組成物(Y−4)は、MOSのみを用いた硬化性組成物(X−1)に比べ、粘度が高く、線膨張係数および収縮率の値も劣っているものであった。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。また、硬化物の耐熱性が向上する。
【0204】
シリカ微粒子をMOSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(X−2)と、シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−5)とを比較すると、硬化性組成物(Y−5)はゲル化した。また、シリカ微粒子を増やした硬化性組成物(Y−6)についてもゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0205】
また、シリカ微粒子を減らした硬化性組成物(X−7)と硬化性組成物(Y−7)とを比較すると、硬化性組成物(X−7)の硬化物のほうが硬化性組成物(Y−7)の硬化物よりも収縮率が低い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、成形性が高い硬化性組成物が得られる。
【0206】
《表3について》
硬化性組成物(X−8)、(X−9)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れ、硬化収縮が小さい。さらに、硬化性組成物(X−8)、(X−9)を光重合して得られる硬化物は、平均線膨張係数が小さく、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−8)から得られる硬化物は、硬化性組成物(X−8)、(X−9)から得られる硬化物よりも平均線膨張係数が高く、収縮率も高い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、硬化物の耐熱性が向上する。
【0207】
シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−9)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、シリカ微粒子の分散安定性が向上する。
【0208】
シリカ微粒子をMPSのみまたはVTSのみで表面修飾して得られた硬化性組成物(Y−10)および(Y−11)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0209】
シリカ微粒子をMOSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(X−9)と、シリカ微粒子をVTSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−12)とを比較すると、硬化性組成物(X−9)から得られる硬化物の透過率は、硬化性組成物(Y−12)の透過率よりも高い。シリカ微粒子をMOSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(X−9)と、シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−13)とを比較すると、硬化性組成物(X−9)の硬化物の平均線膨張係数は、硬化性組成物(Y−13)の硬化物の平均線膨張係数よりも低い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、硬化物の耐熱性および透明性が向上する。
【0210】
《表4について》
硬化性組成物(X−10)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れ、硬化収縮が小さい。さらに、硬化性組成物(X−10)を熱重合して得られる硬化物は、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−14)は、硬化性組成物(X−10)の硬化物よりも収縮率が高い。したがって、前記シラン化合物(A1)で表面修飾したシリカ微粒子を配合することにより、収縮率が低く成形性に優れる硬化性組成物が得られる。
【0211】
また、シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−15)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0212】
シリカ微粒子をMOSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(X−10)と、シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−16)とを比較すると、硬化性組成物(X−10)のほうが粘度が低く、収縮率も低い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られ、収縮率が低減し、成形性が高くなる。
【0213】
《表5について》
硬化性組成物(X−11)を熱重合して得られる硬化物は、平均線膨張係数が低く、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−17)は、硬化性組成物(X−11)よりも収縮率が高い。さらに硬化物の平均線膨張係数が高い。したがって、前記シラン化合物(A1)で表面修飾したシリカ微粒子を配合することにより、収縮率が低く成形性に優れる硬化性組成物が得られる。
【0214】
また、シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−18)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0215】
シリカ微粒子をMOSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(X−11)と、シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−19)とを比較すると、硬化性組成物(X−11)の硬化物のほうが硬化性組成物(Y−19)の硬化物よりも平均線膨張係数が低い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、耐熱性が向上する。
【0216】
《表6について》
硬化性組成物(X−12)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れる。また、硬化性組成物(X−12)を熱重合して得られる硬化物は、平均線膨張係数が低く、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−20)は、硬化性組成物(X−11)よりも収縮率が高い。さらに硬化物の平均線膨張係数が高い。したがって、前記シラン化合物(A1)で表面修飾したシリカ微粒子を配合することにより、収縮率が低く成形性に優れる硬化性組成物が得られ、さらに硬化物の耐熱性が向上する。
【0217】
また、シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−21)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0218】
シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−22)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0219】
《表7について》
硬化性組成物(X−13)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れ、硬化収縮が小さい。また、硬化性組成物(X−13)を光重合して得られる硬化物は、光線透過率が高い。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−23)の硬化物は脆く割れやすいため、平均線膨張係数を測定するのに適していなかった。したがって、前記シラン化合物(A1)で表面修飾したシリカ微粒子を配合することにより、成形性に優れる硬化性組成物が得られる。
【0220】
また、シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−24)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0221】
シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−25)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0222】
《表8について》
硬化性組成物(X−14)〜(X−16)は、適度な粘度を有しており、ハンドリング性に優れ、硬化収縮が小さい。一方、シリカ微粒子を含有していない硬化性組成物(Y−26)は、硬化性組成物(X−14)よりも収縮率が高い。また、硬化性組成物(Y−26)の硬化物は、硬化性組成物(X−14)の硬化物よりも平均線膨張係数が高い。したがって、前記シラン化合物(A1)で表面修飾したシリカ微粒子を配合することにより、成形性に優れる硬化性組成物が得られ、硬化物の耐熱性も向上する。
【0223】
また、シリカ微粒子を表面修飾しない硬化性組成物(Y−27)〜(Y−29)はゲル化した。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られる。
【0224】
シリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−30)の粘度は、硬化性組成物(X−14)よりも著しく高い。平均粒子径約200nmのシリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−31)の硬化物は、硬化性組成物(X−15)の硬化物よりも平均線膨張係数が高い。また、平均粒子径約500nmのシリカ微粒子をMPSとPhSで表面修飾した硬化性組成物(Y−32)は、硬化性組成物(X−16)よりも収縮率が高い。したがって、前記シラン化合物(A1)でシリカ微粒子を表面修飾することにより、分散安定性が向上し、粘度を低減でき、ハンドリング性に優れた硬化性組成物が得られ、収縮率が低減して成形性が向上し、硬化物の耐熱性が向上する。
【0225】
また、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は、透明性、耐熱性、低線膨張性に優れる。この硬化物は、透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池用基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等の光学材料・電子材料に好適に用いることができる。