(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービン装置の車室内で、動翼の先端にクリアランスを介して配置された分割環を径方向に移動させることで、前記クリアランスを調整するクリアランス調整装置であって、
供給される流体による温度変化によって伸縮する伸縮部材と、
前記伸縮部材の伸縮量を増幅させるとともに、前記伸縮部材の伸縮による変位を前記径方向の変位に変換して前記分割環に伝達することで、前記分割環を前記径方向に移動させるリンク機構と、
を備え、
前記伸縮部材は、前記車室の軸方向に伸縮するよう設けられ、
前記リンク機構は、中間部が前記車室に回動自在に連結され、前記中間部から前記径方向に延びる第一アーム部と、前記中間部から前記径方向に直交する前記軸方向に延び、前記分割環側に連結された第二アーム部と、を有したリンク部材を備え、
前記伸縮部材は、一端部が前記車室に回動自在に連結され、他端部が前記第一アーム部に回動自在に連結され、
前記リンク部材は、長手方向の長さが前記第一アーム部よりも前記第二アーム部が長く形成されているクリアランス調整装置。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンにおける運転効率を向上させるため、車室内に回転自在に設けられた動翼の外周端部と、その外周側に対向する分割環との間のクリアランスを適正に保つ必要がある。
【0003】
ガスタービンが停止している場合と、定常運転している場合とでは、動翼、チップ、車室等、ガスタービンを構成する各部の温度が異なる。また、ガスタービンを構成する各部は、特に起動時に温度が上昇していく過程では、それぞれの部材の熱膨張係数、体積等に応じて、温度上昇度合いが異なる。このため、ガスタービンの運転状況に応じて、クリアランスが変動する。
【0004】
そこで、ガスタービンに備えられた燃焼器を冷却するための蒸気を用いたクリアランスのコントロールが行われていた。具体的には、起動時には、動翼の外周側の翼環を予め蒸気によって加熱することによって、動翼の外周側の分割環を間接的に予熱して膨張させ、その内径を拡大させておく。すると、ガスタービンが起動し、動翼を備えた動翼環の温度が燃焼ガスによって上昇し、その外径が拡大したときに、動翼と分割環との間のクリアランスが過少となるのを防ぐ。また、定常運転状態では、燃焼ガスよりも相対的に温度が低い蒸気によって翼環を冷却することによって、分割環を間接的に冷却し、その内径を縮小させる。これによって、クリアランスを小さくし、ガスタービンの運転効率の向上を図っている。
【0005】
ところで、近年、急速起動に対するニーズの対応などから蒸気を用いないガスタービンが要求されている。
そこで、特許文献1には、分割環の外周側に、径方向に熱膨張変形する細長い部材を備え、この細長い部材を電熱器で加熱することによってその膨張を制御し、分割環と動翼とのクリアランスを調整する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガスタービンにおいては、常にさらなる性能向上が要求されている。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、クリアランスを効率良く調整し、タービン性能を向上させることができるクリアランス調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明に係るクリアランス調整装置は、タービン装置の車室内で、動翼の先端にクリアランスを介して配置された分割環を径方向に移動させることで、前記クリアランスを調整するクリアランス調整装置であって、供給される流体による温度変化によって伸縮する伸縮部材と、前記伸縮部材の伸縮量を増幅させるとともに、前記伸縮部材の伸縮による変位を前記径方向の変位に変換して前記分割環に伝達することで、前記分割環を前記径方向に移動させるリンク機構と、を備え
、前記伸縮部材は、前記車室の軸方向に伸縮するよう設けられ、前記リンク機構は、中間部が前記車室に回動自在に連結され、前記中間部から前記径方向に延びる第一アーム部と、前記中間部から前記径方向に直交する前記軸方向に延び、前記分割環側に連結された第二アーム部と、を有したリンク部材を備え、前記伸縮部材は、一端部が前記車室に回動自在に連結され、他端部が前記第一アーム部に回動自在に連結され、前記リンク部材は、長手方向の長さが前記第一アーム部よりも前記第二アーム部が長く形成されている。
【0009】
このような構成のクリアランス調整装置によれば、伸縮部材が設けられている部位に供給される流体の温度変化に応じ、伸縮部材が伸縮する。流体の温度が上昇すれば、伸縮部材は伸長し、流体の温度が低下すれば、伸縮部材は短縮する。この伸縮部材の伸縮による変位は、リンク機構により分割環に伝達され、分割環が径方向に移動される。このように分割環を径方向に移動させることで、動翼の先端とのクリアランスを調整することができる。
ここで、伸縮部材の伸縮が、リンク機構により増幅される。したがって、流体の温度変化に対する分割環の移動量を大きくすることができる。
【0010】
車室内の温度変化に応じ、車室は、動翼と静翼の1段分における軸方向の伸縮量に比較し、径方向に大きく拡縮するこのため、伸縮部材が車室の径方向に伸縮する構成である場合、伸縮部材の径方向への伸縮が、車室の径方向への拡縮に相殺されてしまう。
これに対し、この発明に係るクリアランス調整装置では、伸縮部材は車室の軸方向に伸縮するので、伸縮部材の伸縮を効率良くリンク機構を介して分割環に伝達することができる。
【0011】
このような構成において、リンク機構は、直交する第一アーム部と第二アーム部とを有することで、径方向に移動する分割環と直交する方向を伸縮部材の伸縮する方向とすることができる。
【0012】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記伸縮部材は、静翼を冷却する車室空気の流路内に設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、伸縮部材を伸縮させるための熱源が別途不要となる。
【0013】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記伸縮部材は、前記伸縮部材の伸縮方向に長いプレート状または棒状をなしているようにしてもよい。
このように構成することで、伸縮部材は、体積を小さくして温度変化を迅速に生じさせることができる。
【0014】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記伸縮部材は、前記車室よりも線膨張係数の高い材料により形成されているようにしてもよい。
このように構成することで、車室内の温度変化による車室の伸縮よりも、伸縮部材の伸縮を効率良く、かつ確実に生じさせることができる。
【0015】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記伸縮部材と前記車室内の空気とを隔離する隔離部が設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、車室内の空気の温度変化によって車室よりも先に伸縮部材に熱が伝わり変形してしまうことを抑制できる。
【0016】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記車室内から取り出した空気または外部空気を、前記伸縮部材が設けられた空間に供給する空気供給路と、前記空気供給路による空気供給量を調整する空気量調整手段と、をさらに備えるようにしてもよい。
このように構成することで、車室内の温度変化とは別に、適宜の所望のタイミングで伸縮部材を伸縮させて分割環の位置を調整することができる。
【0017】
この発明に係るクリアランス調整装置において、前記車室内から取り出した空気または外部空気の温度を調整して前記伸縮部材が設けられた空間に供給する温度調整空気供給路をさらに備えるようにしてもよい。
このように構成することで、温度調整空気供給路で空気の温度を調整して伸縮部材に供給することで、伸縮部材の伸縮量を自在に調整することができる。
【0018】
この発明に係るタービン装置は、上記したようなクリアランス調整装置を備えている。
このような構成とすることで、タービン装置は、クリアランス調整装置によって分割環を径方向に移動させることで、動翼の先端とのクリアランスを調整することができる。そして、伸縮部材の伸縮が、リンク機構により増幅されため、流体の温度変化に対する分割環の移動量を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係るクリアランス調整装置、タービン装置によれば、クリアランスを効率良く調整し、タービン性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施形態に係るクリアランス調整装置、タービン装置を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、ガスタービンの概略を示す全体構成図である。
図2は、ガスタービン1のタービン部4に関する内部構造を示す断面図である。
図3は、分割体21に対するリンク機構82の連結構造を示す斜視図である。
図1に示すように、ガスタービン(タービン装置)1は、燃焼用空気を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2から送られてきた圧縮空気に燃料FLを噴射して燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器3と、この燃焼器3の燃焼ガスの流れ方向の下流側に設けられ、燃焼器3を出た燃焼ガスにより駆動されるタービン部4と、発電機6と、圧縮機2とタービン部4と発電機6を一体に連結する回転軸5と、を備えている。
【0022】
図2に示すように、ガスタービン1のタービン部4は、タービン部4のケーシングである不図示の車室内に、静翼環7と、動翼環8とが、回転軸5(
図1参照)の中心軸の軸方向に沿って交互に配列されている。
【0023】
静翼環7は、車室に固定された円環状の環状体7aと、環状体7aの内周側に周方向に間隔をあけて設けられた複数の静翼7bと、を備えている。
【0024】
動翼環8は、車室の中心軸周りに回動自在に設けられた回転軸5(
図1参照)の外周部に設けられている。動翼環8は、回転軸5と一体に設けられた不図示の動翼ディスクと、動翼ディスクの外周部に周方向に間隔をあけて複数が設けられた動翼8bと、を備えている。
【0025】
このようなタービン部4においては、燃焼器3で発生させた燃焼ガスFGを静翼環7及び動翼環8からなる翼列に供給する。すると、動翼環8が回転軸5とともに中心軸回りに回転する。この回転軸5の回転により、発電機6が駆動され、回転エネルギーが電力に変換される。
【0026】
タービン部4には、動翼環8の外周側に、分割環20が設けられている。分割環20は、回転軸5の周方向に配置された複数の分割体21により形成され、全体として回転軸5を中心とした環状体を形成している。
【0027】
図2、
図3に示すように、分割体21は、動翼環8に対向する本体22と、本体22の背面22aに設けられたフック23と、を一体に備えている。本体22は、動翼環8に対向するチップ面22bが、断面円弧状の湾曲面をなしている。フック23は、本体22の背面22aから立ち上がる一対のリブ23aと、それぞれのリブ23aの先端部から側方に突出する突出部23bと、を一体に備えている。
【0028】
図2に示すように、車室内で車室中心軸と同心状に設けられた翼環9の内周面に、遮熱環30が設けられている。分割環20を構成する各分割体21は、翼環9に遮熱環30を介して翼環9に保持されている。遮熱環30は、その内周面に、各分割体21のフック23が係合する係合溝31を備えている。
係合溝31は、フック23の厚さT1に対し、車室径方向に大きな開口寸法T2を有している。これにより、分割体21は、遮熱環30に対し、車室径方向に移動自在となっている。
【0029】
このような分割環20の各分割体21は、クリアランス調整機構(クリアランス調整装置)80に接続されている。クリアランス調整機構80は、分割体21の位置を車室径方向に進退させることで、動翼環8の各動翼8bの先端と分割体21の本体22のチップ面22bとの径方向のクリアランスCを調整する。
【0030】
クリアランス調整機構80は、伸縮部材81と、リンク機構82と、を備える。
伸縮部材81は、長方形状の板材または棒状材からなる。伸縮部材81は、供給される流体である空気による温度変化によって伸縮する。伸縮部材81は、その一端部81aが翼環9に形成された支持ブラケット83に、ピンP1を介して回動自在に連結されている。これにより、伸縮部材81は、翼環9の中心軸と平行で径方向を含む面内で回動自在とされている。伸縮部材81は、他端部81bが後述するリンク機構82のリンク部材85の第一アーム部85aにピンP2を介して回動自在に連結されている。
伸縮部材81は、静翼7bを冷却するために静翼環7の外周側を流れる空気である車室空気の流路10内に設けられている。
【0031】
リンク機構82は、リンク部材85と、ジョイント部材86と、を備えている。
リンク部材85は、互いに直交する第一アーム部85aと第二アーム部85bとを備えた略L字状をなした板材からなる。リンク部材85は、第一アーム部85aと第二アーム部85bとの中間部85cが翼環9に設けられた支持ブラケット87にピンP3を介して回動自在に連結されている。第一アーム部85aは、中間部85cから車室径方向外周側(第一の方向)に延び、第二アーム部85bは、中間部85cから車室軸方向(第一の方向に直交する第二の方向)に延びるよう形成されている。上記の伸縮部材81の他端部81bは、第一アーム部85aの端部に、ピンP2を介して回動自在に連結されている。
このようなリンク部材85は、中間部85cを中心として、翼環9の中心軸と平行で径方向を含む面内に沿って揺動自在とされている。
【0032】
遮熱環30には、車室軸方向に平行な孔33が形成されている。リンク部材85の第二アーム部85bは、遮熱環30の孔33内に挿入配置されている。ここで、孔33は、リンク部材85が中間部85cを中心として揺動したときの第二アーム部85bの変位を許容できるよう、第二アーム部85bに対し、車室径方向内周側および外周側に大きく形成されている。
【0033】
ジョイント部材86は、一端部がリンク部材85の第二アーム部85bの先端部にピンP4を介して連結されている。ジョイント部材86の他端部は、
図3に示すようにして、分割体21に連結されている。ジョイント部材86は、遮熱環30の径方向に延びる孔34に挿通されている。
図3に示すように、分割体21の本体22の背面22aには、互いに平行に形成されたフック23,23の間を繋ぐ一対のリブ25,25が一体に形成されている。ジョイント部材86の他端部は、リブ25,25間に挿入され、ピンP5により分割体21に対して回動自在に連結されている。
【0034】
また、
図2に示すように、伸縮部材81の外周側には、外周側への熱の伝搬を抑える熱緩衝部材90が設けられている。この熱緩衝部材90は、プレート状で、伸縮部材81と間隔をあけて設置されている。
【0035】
上記クリアランス調整機構80においては、伸縮部材81が設けられている流路10に供給される車室空気の温度変化に応じ、伸縮部材81が車室軸方向に伸縮する。
車室空気の温度が上昇すると、伸縮部材81は車室軸方向に伸長する。すると、伸縮部材81の一端部81aが翼環9に連結されているため、伸縮部材81の伸長に伴って、他端部81bが一端部81aから離間する方向(厳密には、ピンP3を中心とした旋回方向)に変位する。これにより、伸縮部材81の他端部81bに連結されたリンク部材85の第一アーム部85aが変位し、リンク部材85は、中間部85cのピンP3を中心として、第二アーム部85bが車室径方向内周側に向けて揺動する。その結果、第二アーム部85bに連結されたジョイント部材86を介し、分割体21が動翼8bの先端に近づくように車室径方向内周側に変位する。
また、車室空気の温度が低下すると、伸縮部材81は車室軸方向に短縮する。すると、伸縮部材81の他端部81bが一端部81aに接近する方向に変位する。これにより、リンク部材85の第一アーム部85aが変位し、リンク部材85は、中間部85cのピンP3を中心として、第二アーム部85bが車室径方向外周側に向けて揺動する。その結果、第二アーム部85bに連結されたジョイント部材86を介し、分割体21が動翼8bの先端から離れるように車室径方向外周側に変位する。
【0036】
ここで、伸縮部材81は、翼環9よりも線膨張係数の高い材料により形成するのが好ましい。例えば、翼環9をSUS410材で形成し、伸縮部材81をSUS304材で形成するのが好ましい。
このようにすると、温度変化の過程で、温度変化にともなう車室の動翼8bと静翼7bの1段分における軸方向の伸縮量よりも、伸縮部材81の伸縮量が大きくなる。
【0037】
上述したクリアランス調整機構80、ガスタービン1によれば、車室空気の温度変化によって伸縮する伸縮部材81により、リンク機構82を介して分割体21を移動させることで、動翼8bの先端とのクリアランスCを調整することができる。
ここで、伸縮部材81の伸縮が、リンク機構82により増幅される。したがって、車室空気の温度変化に対する分割体21の移動量を大きくすることができる。
その結果、クリアランスCを効率良く調整し、タービン性能を向上させることができる。
【0038】
また、クリアランス調整機構80は、伸縮部材81が車室軸方向に伸縮する。伸縮部材81が車室径方向に伸縮する構成である場合には、伸縮部材81の径方向への伸縮が車室径方向への拡縮に相殺されてしまう。これに対し、上述したクリアランス調整機構80では、伸縮部材81は車室軸方向に伸縮するので、伸縮部材81の伸縮を効率良くリンク機構82を介して分割体21に伝達することができる。
【0039】
さらに、伸縮部材81は、静翼7bを冷却する車室空気の流路10内に設けられている。これにより、伸縮部材81を伸縮させるための熱源を別途設ける必要がなく、低コストでクリアランス調整機構80を備えることができる。
【0040】
加えて、伸縮部材81は、その伸縮方向である車室軸方向に長いプレート状または棒状をなしている。このように構成することで、伸縮部材81は、表面積が大きいうえに体積が小さいため、温度変化に伴う伸縮変位をレスポンス良く生じさせることができる。これによっても、クリアランスCを効率良く調整することができる。
【0041】
また、伸縮部材81は、車室や翼環9よりも線膨張係数の高い材料により形成されている。これにより、車室内の温度変化による翼環9の伸縮よりも、伸縮部材81の伸縮変位をレスポンス良く生じさせることができる。具体的には、温度変化時に、伸縮部材81およびリンク部材85が翼環9に連結されたピンP1,P3間の寸法の変化よりも伸縮部材81を相対的に大きく変化させることができるため、翼環9の変形に伸縮部材81の変形が相殺されることなく、伸縮部材81の伸縮変位を効率良くリンク部材85に伝達できる。これによっても、クリアランスCを効率良く調整することができる。
【0042】
さらに、リンク機構82は、伸縮部材81に連結された第一アーム部85aと、分割体21側に連結された第二アーム部85bと、を有したL字状のリンク部材85を備えている。したがって、リンク機構が、車室の軸方向と径方向との直交する二方向に延びる第一アーム部と第二アーム部とを有することで、径方向に移動する分割環と車室の軸方向に伸縮する伸縮部材81によって容易に移動させることができる。また、このようなリンク機構82は簡易な構成であり、低コストである。
また、このようなリンク部材85は、第一アーム部85aと第二アーム部85bとの長さの比であるレバー比を適宜設定することで、伸縮部材81の伸縮量に対する分割体21の変位量を大きくする等の調整を容易に行うことができる。
【0043】
また、上記クリアランス調整機構80は、伸縮部材81と翼環9との間に、熱緩衝部材90を備えている。これにより、流路10から車室の径方向外周側に向かう車室空気が遮蔽されることで、その外周部分に伝搬される熱を抑え、翼環9としての伸びを抑えて翼環9に設けられた支持ブラケット83,87の変位を抑えることができる。これにより、伸縮部材81の伸縮変位をレスポンス良く生じさせることができる。これによっても、クリアランスCを効率良く調整することができる。
【0044】
また、上記クリアランス調整機構80は、分割環20を構成する複数の分割体21のそれぞれに設けられている。
これにより、車室内の周方向で温度分布が異なる場合にも、それぞれの分割体21の部位における温度変化に応じて、クリアランスCを調整することができる。
【0045】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかるクリアランス調整機構およびタービン装置の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と、空気供給部100Aを備えている構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分には同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図4は、上記クリアランス調整機構の第二実施形態における構成を示す断面図である。
図4に示すように、この実施形態におけるガスタービン1は、車室内の空気の少なくとも一部を取り出し、伸縮部材81に供給する空気供給部100Aを備えている。
【0046】
空気供給部100Aは、車室の適宜箇所から車室内の車室空気の少なくとも一部を抽気し、伸縮部材81が設けられた流路10に送り込む空気供給路101と、空気供給路101における車室空気の流量を調整する流量調整弁(空気量調整手段)102と、流量調整弁102の作動を制御する制御部103と、を備えている。
【0047】
また、伸縮部材81と、車室内で車室空気が流れる流路10との間には、隔離部である隔壁104が設けられている。隔壁104は、流路10内の車室空気と伸縮部材81とを隔離している。
【0048】
空気供給部100Aにおいては、伸縮部材81に供給する車室空気の空気供給量である流量を調整することで、クリアランス調整機構80における伸縮部材81の伸縮量、伸縮タイミングを制御する。
例えば、定常運転状態になったときに、制御部103により流量調整弁102を開き、伸縮部材81に温められた車室空気を供給する。すると、伸縮部材81が伸長し、リンク機構82を介して分割体21を内周側に変位させ、クリアランスCを小さくし、運転効率を高めることができる。
【0049】
したがって、上述した第二実施形態のクリアランス調整機構80によれば、隔壁104によって流路10内の車室空気と伸縮部材81とを隔離することで、車室空気の温度変化によって車室よりも先に伸縮部材81に熱が伝わって変形してしまうことを抑制することできる。したがって、タービン部4を起動させることで上昇する車室空気によって車室よりも先に伸縮部材81が温められて伸び始めてしまい、車室が熱によって変形してしないうちに、分割体21を車室の内周面側に移動させてしまってクリアランスCを縮めすぎてしまうことを抑制できる。さらに、伸縮部材81に供給する車室空気の流量を調整する空気供給部100Aを備えることで、車室内の温度変化とは連動せず、適宜の所望のタイミングで伸縮部材81を伸縮させて分割体21の位置を調整することが可能となる。
【0050】
なお、上記第二実施形態では、空気供給部100Aにおいて車室空気の一部を取り出すようにしたが、これに限らない。空気供給部100Aにより外部空気を送り込んでも良い。
この場合、ガスタービン1が定常状態になる前に、冷却空気を取り入れて伸縮部材81を収縮させることによって、分割体21を外周側に変位させ、クリアランスCが過少となるのを抑えることもできる。
【0051】
(第三実施形態)
次に、この発明にかかるクリアランス調整機構およびタービン装置の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一、第二実施形態と、空気供給部100Bを備える構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分には同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、クリアランス調整機構の第三実施形態における構成を示す断面図である。
図5に示すように、この実施形態におけるガスタービン1は、車室内の空気の少なくとも一部を取り出し、伸縮部材81に供給する空気供給部100Bを備えている。
【0052】
空気供給部100Bは、車室の適宜箇所から車室内の車室空気の少なくとも一部を抽気し、伸縮部材81が設けられた流路10に送り込む空気供給路201と、抽気した車室空気を冷却してその温度を調整する冷却器(空気温度調整手段)202aを備えた温度調整空気供給路202と、空気供給路201と温度調整空気供給路202とを切り換える切換弁203と、切換弁203の作動を制御する制御部204と、を備えている。
【0053】
空気供給部100Bにおいては、伸縮部材81に供給する車室空気の温度を調整することで、クリアランス調整機構80における伸縮部材81の伸縮量、伸縮タイミングを制御する。
例えば、起動時には、切換弁203により、車室から抽気した車室空気を温度調整空気供給路202に通して冷却器202aにより冷却し、伸縮部材81が設けられている空間210に供給する。すると、伸縮部材81が冷却され、起動時の車室内における温度上昇による伸縮部材81の伸長を抑えることができる。これにより、分割体21が内周側に変位するのを抑え、動翼8bとのクリアランスCが過少となるのを確実に防ぐ。
また、定常運転時には、切換弁203により、温められた車室空気を車室から抽気して空気供給路201を通して、伸縮部材81に供給する。すると、伸縮部材81が加熱されて伸長し、リンク機構82を介して分割体21を内周側に変位させる。これにより、クリアランスCを小さくし、運転効率を高めることができる。
【0054】
したがって、上述した第三実施形態のクリアランス調整機構80によれば、伸縮部材81に供給する車室空気の温度を調整する空気供給部100Bを備えることで、車室内の温度変化とは別に、適宜の所望のタイミングで伸縮部材81を伸縮させて分割体21の位置を調整することが可能となる。これにより、クリアランス調整機構80を備えたガスタービン1では、クリアランスCを効率良く調整し、タービン性能を向上させることができる。
【0055】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、分割環20において周方向に複数設けられた分割体21のそれぞれにクリアランス調整機構80を備えるようにしたが、分割体21の部位に応じて、リンク部材85のレバー比を異ならせても良い。
また、伸縮部材81やリンク部材85の形状、材質等については、クリアランス調整機構80における効果が同様に得られるのであれば、いかなるものとしても良い。
【0056】
さらに、ジョイント部材86は、分割体21に対して回動自在に連結するようにしたが、ジョイント部材86を分割体21に一体的に設けても良い。
【0057】
また、伸縮部材81やリンク部材85において、ピンP1,P3が挿通されるピン孔は、車室の径方向に長い長孔としても良い。これにより、車室の径方向の変位をピン孔で吸収し、伸縮部材81やリンク部材85が車室の径方向の変位の影響を受けるのを抑えることができる。