(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、定常運転時にクリアランスを常に適正に維持するため、電磁石に常時通電する必要があり、電力消費量が大きくなってしまう。また、起動時にクリアランスが狭まってしまった場合には、十分なクリアランスを確保できないおそれがある。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電力消費を抑えつつ、十分なクリアランスを確保することができるクリアランス調整装置、タービン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明に係るクリアランス調整装置は、タービン装置の動翼の先端にクリアランスを介して配置された分割環を径方向に移動させることで、前記クリアランスを調整するクリアランス調整装置であって、電流が供給されてオン状態となることで、前記分割環を初期位置から、前記初期位置よりも径方向外周側に位置する離間位置に移動させる電磁石と、前記電磁石への電流の供給を調整制御する制御部と、を備え
、前記電磁石は、前記分割環の径方向外周側に前記分割環と一体に設けられた遮熱環を径方向外周側に移動させることで、前記分割環を初期位置から前記離間位置に移動させ、前記電磁石は、前記タービン装置の車室に形成された固定壁に固定された第一の電磁石と、前記第一の電磁石に対して径方向外周側に対向配置される第二の電磁石と、を有し、前記第二の電磁石は、前記分割環または前記遮熱環の径方向外周側に配置された受圧部材に固定され、前記第一の電磁石と前記第二の電磁石との間に生じる斥力により、前記受圧部材を径方向外周側に変位させることによって、前記分割環を初期位置から前記離間位置に移動させる。
【0010】
このような構成によれば、制御部により電磁石に電流を供給し、電磁石をオン状態とすると、分割環が、初期位置から径方向外周側の離間位置に移動する。これにより、タービン装置の起動時等において、タービン装置の車室内の温度上昇にともなって動翼が膨張して外周側に拡径したときに、分割環とのクリアランスを確保することができる。
そして、電磁石への電流の供給は、分割環を離間位置に移動させるときのみである。したがって、タービン装置が定常運転状態等にあり、分割環を径方向外周側の離間位置に退避させる必要がないときには、電磁石に電流を供給する必要がない。
【0011】
これにより、電磁石は、分割環および遮熱環の外周側に配置することができる。したがって、電磁石にタービン装置内の燃焼ガスの熱影響が及ぶのを抑えることができる。
このような構成によれば、電磁石を構成する第一の電磁石と第二の電磁石に電流を供給すると、第一の電磁石と前記第二の電磁石との間で、互いに反発する斥力を生じる。第一の電磁石は固定壁に固定されているため、前記の斥力により、第二の電磁石が径方向外周側に移動する。すると、第二の電磁石が移動しようとする力が受圧部材に伝達され、受圧部材が径方向外周側に移動する。受圧部材は、分割環または遮熱環に固定されているため、受圧部材の移動にともなって、分割環または遮熱環が径方向外周側に移動する。このようにして、分割環を初期位置から離間位置に移動させることができる。
【0012】
また、この発明に係るクリアランス調整装置において、前記分割環の周方向において互いに隣接する複数の前記分割環を一つの前記遮熱環で支持し、前記遮熱環を前記電磁石により移動させるようにしてもよい。
これにより、一つの電磁石で複数の分割環を同時に移動させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0015】
さらに、前記受圧部材は、筒状なして前記固定壁を貫通して前記車室の径方向に沿って移動自在とされ、前記固定壁を介して径方向内周側の端部が前記分割環または前記遮熱環に固定された筒状部と、前記筒状部の径方向外周側の端部を閉塞し、前記第二の電磁石が固定される受圧部と、を備えるようにしてもよい。
これにより、第一の電磁石と前記第二の電磁石との間で生じた斥力により、第二の電磁石が径方向外周側に移動すると、受圧部材において受圧部が径方向外周側に押圧される。これによって、分割体または遮熱体に固定された筒状部が径方向外周側に移動し、分割環を初期位置から前記離間位置に移動させることができる。
ここで、受圧部材は、筒状部と受圧部とによって、第一の電磁石及び第二の電磁石を囲うことになる。これにより、第一の電磁石や第二の電磁石に金属粉等が付着するのを防ぐことができる。
【0016】
また、前記筒状部内に、圧縮流体を送り込む流体供給手段を備えるようにしてもよい。
このように、筒状部内に圧縮流体を送り込み、筒状部内の圧力が筒状部の外側よりも高まると、差圧により、筒状部が径方向外周側に移動する。このようにして、圧縮流体によっても、分割環を初期位置から離間位置に移動させることができる。このような流体供給手段は、電磁石が正常に作動しなかった場合等に、分割環を移動させることができる。
【0017】
また、この発明に係るクリアランス調整装置において、前記受圧部材を径方向内周側に変位させる方向の付勢力を生じさせる弾性部材を備えるようにしてもよい。
これにより、電磁石への電力の供給が遮断されたときに、弾性部材の付勢力によって受圧部材を径方向内周側に変位させ、分割環を初期位置に復帰させることができる。
【0018】
また、この発明に係るクリアランス調整装置において、前記制御部は、前記タービン装置の起動時に、前記電磁石に電流を供給してオン状態とし、前記分割環を前記初期位置から離間位置に移動させ、前記タービン装置の定常運転時には、前記電磁石への電流供給を停止してオフ状態とするようにしてもよい。
このようにして、起動時のみ電磁石に電流を供給し、定常運転時においては電磁石への電力供給を停止することによって、電力消費を抑えることができる。
【0019】
この発明に係るタービン装置は、上記したようなクリアランス調整装置を備えている。
このような構成とすることで、タービン装置の起動時等において、タービン装置の車室内の温度上昇にともない、動翼が膨張して外周側に拡径したときに、分割環とのクリアランスを調整して確保することができる。
また、電磁石への電流の供給は、分割環を離間位置に移動させるときのみであり、それ以外のときには、電磁石に電流を供給する必要がない。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るクリアランス調整装置、タービン装置によれば、電力消費を抑えつつ、十分なクリアランスを確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態に係るクリアランス調整装置、タービン装置を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、ガスタービンの概略を示す全体構成図である。
図2は、ガスタービン1のタービン部4に設けられたクリアランス調整機構80の構成を示す断面図である。
図3は、磁気アクチュエータの配置を示す図であって、翼環と同心状に設けられた車室の中心軸に直交する断面図である。
図1に示すように、ガスタービン(タービン装置)1は、燃焼用空気を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2から送られてきた圧縮空気に燃料FLを噴射して燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器3と、この燃焼器3の燃焼ガスの流れ方向の下流側に設けられ、燃焼器3を出た燃焼ガスにより駆動されるタービン部4と、発電機6と、圧縮機2とタービン部4と発電機6を一体に連結する回転軸5と、を備えている。
【0023】
図2に示すように、ガスタービン1のタービン部4は、タービン部4のケーシングである不図示の車室内に、静翼環7と、動翼環8とが、回転軸5(
図1参照)の中心軸の軸方向に沿って交互に配列されている。
【0024】
静翼環7は、車室に固定された円環状の環状体7aと、環状体7aの内周側に周方向に間隔をあけて設けられた複数の静翼7bと、を備えている。
【0025】
動翼環8は、車室の中心軸周りに回動自在に設けられた回転軸5(
図1参照)の外周部に設けられている。動翼環8は、回転軸5と一体に設けられた不図示の動翼ディスクと、動翼ディスクの外周部に周方向に間隔をあけて複数が設けられた動翼8bと、を備えている。
【0026】
このようなタービン部4においては、燃焼器3で発生させた燃焼ガスFGを静翼環7及び動翼環8からなる翼列に供給する。すると、動翼環8が回転軸5とともに中心軸回りに回転する。この回転軸5の回転により、発電機6が駆動され、回転エネルギーが電力に変換される。
【0027】
タービン部4には、動翼環8の外周側に、分割環20が設けられている。分割環20は、回転軸5の周方向に配置された複数の分割体21により形成され、全体として回転軸5を中心とした環状体を形成している。
【0028】
図2、
図3に示すように、分割体21は、動翼環8に対向する本体22と、本体22の背面22aに設けられたフック23と、を一体に備えている。本体22は、動翼環8に対向するチップ面22bが、断面円弧状の湾曲面をなしている。
【0029】
図2に示すように、車室内で車室中心軸と同心状に設けられた翼環9の内周面に、遮熱環30が設けられている。分割環20を構成する各分割体21は、翼環9に遮熱環30を介して翼環9に保持されている。遮熱環30は、その内周面に、各分割体21のフック23が係合する係合溝31を備えている。
遮熱環30は、回転軸5の周方向に環状に配置された複数の遮熱環分割体32により形成され、全体として回転軸5を中心とした環状体を形成している。ここで遮熱環分割体32は、分割環20の分割体21のそれぞれに対応して同数が設けられている。
【0030】
各遮熱環分割体32は、翼環9の固定壁92に形成された保持溝91に保持されている。保持溝91は、遮熱環分割体32を、翼環9の径方向に移動可能に保持している。
【0031】
分割環20の各分割体21は、クリアランス調整機構(クリアランス調整装置)80を備えている。クリアランス調整機構80は、分割体21の位置を遮熱環分割体32と一体に車室径方向に進退させることで、動翼環8の各動翼8bの先端と分割体21の本体22のチップ面22bとの径方向のクリアランスCを調整する。
【0032】
クリアランス調整機構80は、受圧部材85と、磁気アクチュエータ(電磁石)81と、バネ(弾性部材)86と、制御部82と、を備えている。
【0033】
受圧部材85は、円筒状または角筒状をなした筒状部85aと、筒状部85aの径方向外周側の一端を閉塞する受圧部85bと、を備えている。この受圧部材85は、筒状部85aが固定壁92に形成された貫通孔92hに挿通され、車室径方向に沿って移動自在とされている。受圧部85bは、固定壁92において、車室径方向外周側を向く側に配置されている。また、受圧部材85の筒状部85aの径方向内周側の端部である基端部85cは、遮熱環分割体32の径方向外周側に一体に固定されている。
【0034】
磁気アクチュエータ81は、第一の電磁石83Aと、第二の電磁石83Bと、を備えている。第一の電磁石83Aは、ガスタービン1の翼環9に形成された固定壁92において、車室径方向外周側を向く面92aに固定されている。第二の電磁石83Bは、第一の電磁石83Aに対して径方向外周側に対向配置され、受圧部材85の受圧部85bにステー87を介して固定されている。
これら第一の電磁石83Aおよび第二の電磁石83Bは、受圧部材85の筒状部85aの内部に配置されている。
【0035】
第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとは、電流が供給されると、互いに反発しあう斥力を生じるようになっている。第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bへの電流の供給は制御部82により調整制御される。
【0036】
また、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間には、バネ86が設けられている。このバネ86は、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとを互いに接近させる引張方向の付勢力を発揮する。
【0037】
クリアランス調整機構80は、さらに、筒状部85aの内部に、外部から圧縮空気を供給する圧縮空気供給管(流体供給手段)88を備えている。圧縮空気供給管88は、圧縮空気供給源との間に不図示の開閉弁を備えている。この開閉弁の開閉動作は、制御部82により制御される。
開閉弁を開き、圧縮空気供給管88から筒状部85aの内部に圧縮空気(圧縮流体)を送り込み、受圧部85bと固定壁92の面92aとで囲まれた筒状部85a内の空間の圧力が筒状部85a外よりも高まると、筒状部85a内外の差圧により、筒状部85aが径方向外周側に移動する。このようにして、圧縮空気供給管88は、圧縮空気を送り込むことで、分割環20の分割体21を初期位置から離間位置に移動させる方向の力を発揮させることができる。
【0038】
制御部82により、磁気アクチュエータ81を構成する第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bに電流を供給すると、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間で、互いに反発する斥力を生じる。第一の電磁石83Aは固定壁92に固定されているため、前記の斥力により、第二の電磁石83Bが径方向外周側に移動する。すると、第二の電磁石83Bが移動しようとする力が受圧部材85の受圧部85bに伝達され、受圧部材85が径方向外周側に移動する。受圧部材85の筒状部85aは、基端部85cで遮熱環分割体32と固定されているため、受圧部材85の移動にともなって、遮熱環分割体32が径方向外周側に移動する。このようにして、分割環20の分割体21を、動翼8bの先端に近接した初期位置から、初期位置よりも径方向外周側に離間した離間位置に移動させることができる。これにより、クリアランスCが拡がる。
【0039】
制御部82により、磁気アクチュエータ81を構成する第一の電磁石83A、第二の電磁石83Bへの電流供給を遮断すると、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間の斥力が消失する。すると、バネ86の引張力によって、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとが接近し、受圧部材85が車室径方向内周側に移動する。このようにして、分割環20の分割体21を、離間位置から初期位置に復帰させ、クリアランスCを小さくすることができる。
【0040】
制御部82は、ガスタービン1の起動時に、磁気アクチュエータ81に電流を供給してオン状態とし、分割環20の分割体21を初期位置から離間位置に移動させる。これにより、ガスタービン1の車室の温度上昇にともない、動翼8bが膨張して外周側に拡径したときに、分割環20の分割体21とのクリアランスCを調整して確保することができる。
また、制御部82は、起動時に、分割環20の分割体21と動翼8bとが最も接近するタイミングを過ぎた後には、磁気アクチュエータ81への電流供給を停止してオフ状態とする。これにより、ガスタービン1の定常運転時には、磁気アクチュエータ81への電流供給を停止したオフ状態が維持される。
【0041】
図4は、上記したような制御部82におけるクリアランス調整機構80の制御方法の流れを示す図である。
この
図4に示すように、ガスタービン1が起動されると、制御部82は、起動信号を取り込み、制御を開始する(ステップS101)。
制御部82は、制御開始後、ガスタービン1の回転数、負荷、動翼環8をはじめとする各部の温度等の情報を取り込み、ガスタービン1の動翼環8が回転しているか否かを判定する(ステップS102)。
【0042】
動翼環8の回転が確認されたら、磁気アクチュエータ81に電流を供給し、オン状態とする(ステップS103)。
磁気アクチュエータ81は、電流の供給により、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間で、互いに反発する斥力を生じる。これにより、受圧部材85が径方向外周側に移動し、分割環20の分割体21が、初期位置から離間した離間位置に移動し、クリアランスCが拡大される。
【0043】
制御部82は、続いて、磁気アクチュエータ81が正常に作動しているか否かを確認する(ステップS104)。
【0044】
磁気アクチュエータ81が正常に作動していれば、続いて、ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達したか否かを確認する(ステップS105)。ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達するまでは、ステップS104、S105を繰り返す。
ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達したら、動翼環8の温度が、予め定めた定常温度、すなわち、ガスタービン1が定常負荷状態にあるときの翼環温度に到達したか否かを確認する(ステップS106)。
【0045】
そして、動翼環8の温度が定常温度に到達したら、ガスタービン1の起動が完了し、定常運転に移行したものとし、磁気アクチュエータ81への電流供給を遮断する(ステップS107)。すると、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間の斥力が消失する。第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bは、バネ86の引張力によって互いに接近し、受圧部材85が車室径方向内周側に移動する。これにより、分割体21が離間位置から初期位置に復帰する。
この後は、ガスタービン1の起動時の制御を終了し、定常運転状態での制御に移行する。
【0046】
なお、上記のステップS104において、磁気アクチュエータ81が正常に作動していないと判定された場合には、不図示の開閉弁を開き、圧縮空気供給管88により、外部の圧縮空気供給源から圧縮空気を供給(挿入)する(ステップS111)。圧縮空気供給管88から筒状部85aの内部に圧縮空気を送り込み、筒状部85a内の圧力が筒状部85a外よりも高まると、筒状部85a内外の差圧により、筒状部85aが径方向外周側に移動する。このようにして、分割環20の分割体21を初期位置から離間位置に移動させる。
【0047】
圧縮空気供給管88から圧縮空気を供給し始めたら、制御部82は、ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達したか否かを確認する(ステップS112)。ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達するまでは、ステップS111、S112を繰り返し、圧縮空気の供給を継続する。
そして、ガスタービン1の負荷が定常負荷に到達したら、動翼環8の温度が、予め定めた定常温度、すなわち、ガスタービン1が定常負荷状態にあるときの翼環温度に到達したか否かを確認する(ステップS113)。
【0048】
そして、動翼環8の温度が定常温度に到達したら、ガスタービン1の起動が完了し、定常運転に移行したものとし、圧縮空気供給管88からの圧縮空気の供給を遮断する(ステップS114)。すると、受圧部材85内の圧力が下がり、受圧部材85が車室径方向内周側に移動する。これにより、分割体21が離間位置から初期位置に復帰し、クリアランスCが狭まる。
この後は、ガスタービン1の起動時の制御を終了し、定常運転状態での制御に移行する。
【0049】
上述したクリアランス調整機構80及びこれを備えるガスタービン1によれば、制御部82により磁気アクチュエータ81に電流を供給し、磁気アクチュエータ81をオン状態とすると、分割環20の分割体21が、初期位置から径方向外周側の離間位置に移動する。これにより、ガスタービン1の起動時等において、ガスタービン1の車室内の温度上昇にともない、動翼8bが膨張して外周側に拡径したときに、クリアランスCが狭くなりすぎてしまうことを抑えて分割環20の分割体21とのクリアランスCを調整して確保することができる。
また、磁気アクチュエータ81への電流の供給は、分割環20の分割体21を離間位置に移動させるときのみである。したがって、ガスタービン1が定常運転状態等にあり、分割環20の分割体21を径方向外周側の離間位置に退避させる必要がないときには、磁気アクチュエータ81に電流を供給する必要がない。
その結果、上記クリアランス調整機構80及びこれを備えるガスタービン1によれば、電力消費を抑えつつ、十分なクリアランスCを確保することが可能となる。
【0050】
また、クリアランス調整機構80において、磁気アクチュエータ81は、分割環20の分割体21の径方向外周側に設けられた遮熱環分割体32を径方向外周側に移動させることで、分割環20の分割体21を初期位置から離間位置に移動させる。
これにより、磁気アクチュエータ81は、分割環20の分割体21および遮熱環分割体32の外周側に配置することができる。したがって、磁気アクチュエータ81にガスタービン1内の燃焼ガスの熱影響が及ぶのを抑えることができる。
【0051】
また、受圧部材85は、筒状部85aと受圧部85bとによって、第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bを囲うことになる。これにより、第一の電磁石83Aや第二の電磁石83Bに金属粉等が付着するのを防ぐ防塵効果が得られる。
【0052】
さらに、磁気アクチュエータ81が正常に作動しない場合には、圧縮空気供給管88により、受圧部材85内に圧縮空気を送り込むようにした。これにより生じる受圧部材85内外の差圧により、受圧部材85を径方向外周側に移動させ、分割環20の分割体21を初期位置から離間位置に移動させることができる。このように、圧縮空気供給管88による圧縮空気の供給は、磁気アクチュエータ81が正常に作動しなかった場合等におけるバックアップ手段とすることができる。
【0053】
さらに、クリアランス調整機構80において、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの間にバネ86が設けられている。
これにより、磁気アクチュエータ81への電力の供給が遮断されたときに、バネ86の付勢力によって受圧部材85を径方向内周側に変位させ、分割環20の分割体21を初期位置に復帰させることができる。
【0054】
(変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0055】
(第一変形例)
上記実施形態では、クリアランス調整機構80において、分割環20の分割体21のそれぞれを、遮熱環分割体32を介して磁気アクチュエータ81により移動させるようにしたが、これに限らない。
例えば、
図5に示すように、分割環20の分割体21の周方向において互いに隣接する複数の分割環20の分割体21を一つの遮熱環分割体32で支持し、遮熱環分割体32を磁気アクチュエータ81により移動させるようにしてもよい。
これにより、一つの磁気アクチュエータ81で複数の分割環20の分割体21を移動させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0056】
(第二変形例)
上記実施形態では、磁気アクチュエータ81が正常に作動しなかった場合に、圧縮空気供給管88により筒状部85aの内部に圧縮空気を送り込むようにしたが、これに限らない。
例えば、圧縮空気を冷却媒体として利用するために、磁気アクチュエータ81を構成する第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bの温度状況に応じて、温度が上がり過ぎた場合に圧縮空気供給管88により筒状部85aの内部に圧縮空気を送り込むことによって、第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bを冷却する冷却媒体として利用することができる。
【0057】
図6は、このように第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bの冷却のために筒状部85aの内部に圧縮空気を送り込む場合の、制御部82における制御の流れの一例を示すものである。
この
図6において、制御部82におけるクリアランス調整機構80の制御の全体的な流れは、
図4に示したのと同様である。
筒状部85aの内部に圧縮空気を送り込むことによって、第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bを冷却するには、上記ステップS102においてロータの回転が確認されたら、磁気アクチュエータ81に電流を供給し、オン状態とするとともに、圧縮空気供給管88による筒状部85aへの圧縮空気(冷却空気)の導入を開始する(ステップS103’)。
これにより、筒状部85aの内部に送り込まれた圧縮空気により、第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bを冷却することができる。
【0058】
そして、ステップS104、S105、S106を経て、ガスタービン1の起動が完了し、定常運転に移行したら、磁気アクチュエータ81への電流供給を遮断するとともに、圧縮空気供給管88による受圧部材85への圧縮空気の導入を停止する(ステップS107’)。
【0059】
(第三変形例)
また、磁気アクチュエータ81を、第一の電磁石83A及び第二の電磁石83Bからなるようにしたが、これに限らない。分割体21を移動させるために、より大きな力を発揮するには、例えば、
図7に示すような構成としても良い。
図7は、磁気アクチュエータ81の変形例を示すものである。
この
図7に示すように、磁気アクチュエータ81は、電磁石として、翼環9に形成されたステー部95に固定したコア101にコイル102を設ける。そして、このコア101の下方に、金属板からなる可動板103を、車室径方向に移動自在に設ける。
さらに、このようなコイル102を備えたコア101と、可動板103とを、複数組備える。
図7の例では、コア101と、可動板103とを、車室径方向に積層して設けている。複数の可動板103のうち、固定壁92に近い側の可動板103を、連結部材89を介して遮熱環分割体32に一体に連結する。
そして、複数の可動板103を、連結プレート104によって一体に連結する。
【0060】
このようにすると、複数個のコイル102で発生する磁力により、可動板103を車室径方向外方に引き寄せることができ、分割体21を、より強い力で径方向外周側に移動させて、クリアランスCを確実に調整することができる。
【0061】
さらに、磁気アクチュエータ81を、一つの遮熱環分割体32に対して複数設けるようにしても良い。このような手法でも、磁気アクチュエータ81において、分割体21を移動させるために、より大きな力を発揮することができる。また、このように磁気アクチュエータ81を、一つの遮熱環分割体32に対して複数設けて圧縮流体を用いる場合には、周方向に隣接する磁気アクチュエータ毎に、密閉構造となるよう筒状部85a内をシール等によって区画しておくことが好ましい。
【0062】
(その他の変形例)
上記実施形態では、磁気アクチュエータ81は、第一の電磁石83Aと、第二の電磁石83Bと、を備え、第一の電磁石83Aと第二の電磁石83Bとの斥力により、クリアランス調整を行うようにしたが、これに限らない。第一の電磁石83Aおよび第二の電磁石83Bの一方を磁性体に代え、他方を電磁石としても良い。この場合、電磁石で発生する磁力により磁性体を吸引することで、上記実施形態と同様にしてクリアランス調整を行うことができる。