特許第6132794号(P6132794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132794
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   A01C11/02 342J
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-55170(P2014-55170)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-173662(P2015-173662A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田部 智也
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−197812(JP,A)
【文献】 特開2005−192503(JP,A)
【文献】 特開2004−275092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持アームと、
前記支持アームの下側に位置するフロートと、
前記支持アームと前記フロートとを揺動自在に連結する連結軸と、
前記連結軸に巻き付けられ、前記フロートを後ろ下がりに付勢可能なねじりバネと、が備えられ、
前記ねじりバネに、前記連結軸に支持されるコイル部と、前記コイル部から前方へ延出されて前記支持アームに対して着脱可能な前方部と、前記コイル部から後方へ延出されて前記フロートの上面に当接される後方部と、が備えられ、
前記前方部が前記支持アームに取り付けられると共に前記後方部が前記フロートの上面に当接されて前記フロートを後ろ下がりに付勢する取り付け状態と、前記前方部が前記支持アームから取り外されて前記フロートの上面に当接されると共に前記後方部が前記フロートの上面に当接される取り外し状態とに、前記ねじりバネが状態変更可能に構成され、
前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記前方部と前記フロートとの間に、前記前方部を持ち上げる為の空間が形成されている水田作業機。
【請求項2】
前記前方部に、下向きに屈曲される屈曲部が備えられ、
前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記屈曲部により前記空間が形成されている請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記支持アームに、横向きの横孔が備えられ、
前記前方部の前端に、前記ねじりバネの前記取り付け状態において、前記横孔に掛止されるフック部が備えられ、
前記屈曲部が、前記フック部の基端となっている請求項2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記フック部に、前記横孔から遠ざかる方向に前記基端から横向きに延出される第一延出部と、前記第一延出部から折り返される折り返し部と、前記横孔に近づく方向に前記折り返し部から横向きに延出される第二延出部と、が備えられ、
前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記第二延出部が前記フロートの上面に当接するように構成されている請求項3に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記フロートの上面から前記コイル部の軸心までの距離よりも前記フロートの上面から前記屈曲部までの距離が大きくなるように構成されている請求項2〜4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持アームと、支持アームの下側に位置するフロートと、が備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1に、従来の水田作業機のフロート構造が記載されている。特許文献1に記載の技術では、支持アーム(特許文献1では「支持アーム(12)」)とフロート(特許文献1では「接地フロート(11)」)とを揺動自在に連結する連結軸(特許文献1では「支軸(13)」)と、が備えられている。特許文献1では特に図示されていないが、この連結軸には、フロートを後ろ下がりに付勢可能なねじりバネが備えられている。そのねじりバネには、連結軸に支持されるコイル部と、コイル部から前方へ延出されて支持アームに対して着脱可能な前方部と、コイル部から後方へ延出されてフロートの上面に当接される後方部と、が備えられている。
【0003】
フロート構造において、そのようなねじりバネが備えられることにより、フロートの前部側に比べて軽い後部側が下向きに付勢されて、フロートの前後バランスが改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−224212号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、ねじりバネの前方部を支持アームから取り外すと、ねじりバネの前方部は、ねじりバネの付勢力によって、フロートの上面に、殆ど隙間のない状態で当接して押し付けられる状態となる。このため、支持アームに対してねじりバネの前方部を再取り付けする作業を行う場合等に、ねじりバネの前方部を持ち上げる操作に手間がかかり、フロートのメンテナンスを行い難くなっていた。
【0006】
上記実情に鑑み、フロートのメンテナンスを容易に行うことができる水田作業機の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水田作業機は、支持アームと、前記支持アームの下側に位置するフロートと、前記支持アームと前記フロートとを揺動自在に連結する連結軸と、前記連結軸に巻き付けられ、前記フロートを後ろ下がりに付勢可能なねじりバネと、が備えられ、前記ねじりバネに、前記連結軸に支持されるコイル部と、前記コイル部から前方へ延出されて前記支持アームに対して着脱可能な前方部と、前記コイル部から後方へ延出されて前記フロートの上面に当接される後方部と、が備えられ、前記前方部が前記支持アームに取り付けられると共に前記後方部が前記フロートの上面に当接されて前記フロートを後ろ下がりに付勢する取り付け状態と、前記前方部が前記支持アームから取り外されて前記フロートの上面に当接されると共に前記後方部が前記フロートの上面に当接される取り外し状態とに、前記ねじりバネが状態変更可能に構成され、前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記前方部と前記フロートとの間に、前記前方部を持ち上げる為の空間が形成されているものである。
【0008】
本発明によると、ねじりバネの取り外し状態において、ねじりバネの前方部とフロートとの間に、前方部を持ち上げる為の空間が形成されるようになっている。したがって、ねじりバネの前方部とフロートとの間の空間に、手の指や工具等を容易に差し入れることが可能となり、ねじりバネの前方部を持ち上げる操作を簡単に行うことができる。このため、例えば、支持アームに対してねじりバネの前方部を再取り付けする作業等が行い易くなる。したがって、本発明によると、フロートのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記前方部に、上向きに突出する屈曲部が備えられ、前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記屈曲部により前記空間が形成されていると好適である。
【0010】
本構成によれば、ねじりバネを上向きに突出するように屈曲させる容易な加工で、ねじりバネの前方部を持ち上げる為の空間が好適に確保され、フロートのメンテナンス性を向上できる。
【0011】
本発明において、前記支持アームに、横向きの横孔が備えられ、前記前方部の前端に、前記ねじりバネの前記取り付け状態において、前記横孔に掛止されるフック部が備えられ、前記屈曲部が、前記フック部の基端となっていると好適である。
【0012】
本構成によれば、支持アームに備えられる横向きの横孔に、ねじりバネの前方部の前端のフック部が掛止されることにより、ねじりバネが取り付け状態となる。ねじりバネの前方部の前端のフック部には、曲げの基端が存在するが、ねじりバネの前方部を持ち上げる為の空間を形成する屈曲部が、そのフック部の基端を兼ねている。よって、曲げ回数を過度に増やすことなく、取り扱いの容易なねじりバネを比較的安価に製作できる。
【0013】
本発明において、前記フック部に、前記横孔から遠ざかる方向に前記基端から横向きに延出される第一延出部と、前記第一延出部から折り返される折り返し部と、前記横孔に近づく方向に前記折り返し部から横向きに延出される第二延出部と、が備えられ、前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記第二延出部が前記フロートの上面に当接するように構成されていると好適である。
【0014】
本構成によれば、ねじりバネの取り外し状態において、ねじりバネのうち支持アームの横孔に近づく方向に横向きに延出される第二延出部が、フロートの上面に当接される。よって、ねじりバネの取り外し状態において、ねじりバネがフロートの上面に対して点接触しにくく、フロートの上面に傷等が生じにくくなる。
【0015】
本発明において、前記ねじりバネの前記取り外し状態において、前記フロートの上面から前記コイル部の軸心までの距離よりも前記フロートの上面から前記屈曲部までの距離が大きくなるように構成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、ねじりバネの前方部を持ち上げる為の空間が大きく確保され、ねじりバネの前方部とフロートとの間の空間に、余裕を持って手の指や工具等を差し入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】乗用型田植機の平面図である。
図2】乗用型田植機の側面図である。
図3】フロート構造の周辺の平面図である。
図4】フロート構造の周辺の側面視の縦断面図である。
図5】取り外し状態のねじりバネを示す側面図である。
図6】整地部材の周辺の側面視の縦断面図である。
図7】垂れ下がり防止機構の周辺の正面視の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図2に示されるように、「水田作業機」の一例である乗用型田植機Wは、例えば8条植式に構成されている。乗用型田植機Wには、左右一対の前輪11及び後輪12によって自走式に構成される走行機体13が備えられている。走行機体13の前部には、エンジン14が備えられている。走行機体13の中央部には、作業者が搭乗する運転座席15等が配置された操縦部16が備えられている。走行機体13の後部には、8条植仕様の苗植付装置17が、リンク機構18を介して昇降自在に連結されている。
【0019】
図1図3図4図6図7に示されるように、苗植付装置17には、リンク機構18に連結支持される植付フレーム19が備えられている。図3に示されるように、植付フレーム19には、機体左右横向きの角型の鋼管材でなるメインフレーム19aが備えられている。図2に示されるように、苗植付装置17には、植付フレーム19に、苗のせ台20、8つの苗植付機構21、5つのフロート構造等が支持されて備えられている。
【0020】
図1図2に示されるように、苗のせ台20には、8条分のマット状苗が載置される。苗のせ台20は、摺動板22に下端側を案内されて、左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在となっている。摺動板22の横外側には、メインフレーム19aの機体横外端部に支持される保護部材23が備えられている。苗のせ台20には、苗のせ台20が往復横送り運動のストロークエンドに達する毎に、苗のせ台20に載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置24が備えられている。
【0021】
苗植付機構21は、苗のせ台20に載置されたマット状苗を圃場に植え付けるように構成されている。メインフレーム19aから機体後方向きに、4つの植付駆動ケース25が延出して備えられている。苗植付機構21は、各植付駆動ケース25の左右両側にそれぞれ一対で備えられており、各苗植付機構21は、植付駆動ケース25に対して回転駆動自在に備えられている。
【0022】
〔フロート構造〕
図2に示されるように、5つのフロート構造としては、2条整地用のT型のフロート27が備えられる3つのフロート構造Aと、1条整地用のU型のフロート28が備えられる2つのフロート構造Bと、が備えられている。フロート構造Aの間に、フロート構造Bがそれぞれ配置されている。ここでは、一例として、図3に示されるようなT型のフロート27が備えられるフロート構造Aについて、詳細に説明する。
【0023】
図3図4図6に示されるように、フロート構造Aには、調節レバー30と、フロート支軸31と、支持アーム32と、フロート27と、ブラケット33と、連結軸34と、ねじりバネ35と、が備えられている。
【0024】
調節レバー30は、苗の植え付け深さを調節する部材である。図4に示されるように、調節レバー30は、メインフレーム19aに固定されるレバーガイド36のガイド溝36aに挿通されている。
【0025】
図3に示されるように、フロート支軸31は、機体横方向に沿って延出されるパイプ状の部材である。図3図4図6に示されるように、フロート支軸31は、調節レバー30がフロート支軸31の第一横軸心X1周りに、レバーガイド36のガイド溝36aに沿わせて揺動操作されることにより、回動調節される。図4から理解されるように、フロート支軸31が回動調節されることにより、支持アーム32が上下に揺動操作され、図2に示される3つのフロート27及び2つのフロート28が、植付フレーム19に対して昇降調節される。
【0026】
図3に示されるように、支持アーム32は、左右一対で備えられている。図3図4に示されるように、各支持アーム32の一端部は、フロート支軸31に固定されている。左右のうち一方の支持アーム32には、複数の横向きの横孔32aが貫設されて備えられている。
【0027】
図4図5に示されるように、フロート27は、支持アーム32の下側に位置している。フロート27は、平面視でT型の形状を呈している。
【0028】
図3図4から理解されるように、ブラケット33は、上向きに開放されたU字型の形状を呈している。ブラケット33は、フロート27の上面27aに固定されている。ブラケット33の左右端部には、各支持アーム32の他端部が、横向きの連結軸34を介して、連結軸34の軸心周りに回動自在に連結されている。
【0029】
図3に示されるように、連結軸34は、横向きとされ、支持アーム32とフロート27とを揺動自在に連結している。
【0030】
図3図5に示されるように、ねじりバネ35は、連結軸34に巻き付けられている。ねじりバネ35は、フロート27を後ろ下がりに付勢可能となっている。ねじりバネ35には、連結軸34に巻き付けられて支持されているコイル部40と、コイル部40の下端部から前方へ延出される前方部41と、コイル部40の下端部から後方へ延出される後方部42と、が備えられている。
【0031】
図4図5に示されるように、前方部41は、支持アーム32に対して着脱可能となっている。前方部41には、上向きに突出する屈曲部41aが備えられている。屈曲部41aは、前方部41の後半部位に対して、前方部41の直線状に延出される前半部位を、フロート27の上面27a側へ向けて下向きに屈曲させる部位となっている。つまり、前方部41は、側面視で、L字状に屈曲されている。後方部42は、コイル部40から後方へ延出されてフロート27の上面27aに当接されるようになっている。この際、後方部42の後端部は、横向きに曲げられており、フロート27の上面27aに点接触しにくくなっている。
【0032】
図3図4に示されるように、前方部41の前半部位、つまり、前方部41の前端には、ねじりバネ35の取り付け状態において、横孔32aに掛止されるフック部41bが備えられている。屈曲部41aは、フック部41bの曲げの基端となっている。フック部41bには、第一延出部41baと、折り返し部41bbと、第二延出部41bcと、が備えられている。第一延出部41baは、横孔32aから遠ざかる方向に基端から横向きに延出される部位である。折り返し部41bbは、第一延出部41baから折り返される部位である。
【0033】
ねじりバネ35は、図3図4に示されるような取り付け状態と、図5に示されるような取り外し状態とに、状態変更可能に構成されている。ねじりバネ35を取り付け状態にすると、前方部41が、支持アーム32に取り付けられると共に後方部42が、フロート27の上面27aに当接されてフロート27が後ろ下がりに付勢される。この際、フック部41bの第二延出部41bcを、支持アーム32の複数の横孔32aのうち、いずれの横孔32aに掛止するかによって、ねじりバネ35の付勢力を調整できるようになっている。
【0034】
一方、図5に示されるように、ねじりバネ35を取り外し状態にすると、前方部41が支持アーム32から取り外されてフロート27の上面27aに当接されると共に後方部42がフロート27の上面27aに当接される。この際、前方部41は、屈曲部41aの周辺部分が、フロート27の上面27aから上下方向に離間した状態となる。つまり、ねじりバネ35を取り外し状態にすると、ねじりバネ35の屈曲部41aによって、ねじりバネ35の前方部41とフロート27の上面27aとの間に、前方部41を持ち上げる為の空間Sが形成される。
【0035】
ねじりバネ35の取り外し状態においては、第二延出部41bcがフロート27の上面27aに当接するように構成されている。ねじりバネ35の取り外し状態において、フロート27の上面27aからコイル部40の第二横軸心X2(「軸心」に相当)までの距離t1よりもフロート27の上面27aから屈曲部41aまでの距離t2が大きくなるように構成されている。また、フロート27の上面27aから前方部41の基端であるコイル部40の下端までの距離よりもフロート27の上面27aから屈曲部41aまでの距離t2が大きくなるように構成されている。
【0036】
このため、ねじりバネ35を支持アーム32から取り外した取り外し状態において、屈曲部41aの下方の空間Sに、手の指や工具等を差し入れて、ねじりバネ35をフロート27の上面27aに対して容易に、持ち上げることができる。このため、フロート27に関するメンテナンスを行い易いものにできる。
【0037】
〔保護部材〕
図3に示されるように、保護部材23は、メインフレーム19aの機体外端部に固定される取付部材50に対して回動可能に支持されている。取付部材50は、平面断面視で、コ字状とされている。取付部材50には、一対の貫通孔50a及び一対の第一挿通孔50bが備えられている。保護部材23には、第一前後部51と、延出部52と、第二前後部53と、取付片54と、位置決めピン55と、が備えられている。第一前後部51は、取付部材50の貫通孔50aに貫通支持されている。第一前後部51の一端部には、プレート56が固定されており、第一前後部51の外周における取付部材50とプレート56との間には、ばね部材57が配置されている。取付片54は、延出部52の延出方向に沿った平板状とされ、第一前後部51に溶接等により固定されている。取付片54には、第二挿通孔54aが備えられている。
【0038】
位置決めピン55は、取付部材50の第一挿通孔50b及び取付片54の第二挿通孔54aに挿通されてから、先端を折り曲げることにより固定部55aが形成される。固定部55aは、延出部52に溶接等により固定されると共に、位置決めピン55の中途部55bが、取付片54に溶接等により固定される。これにより、位置決めピン55が、第一前後部51と延出部52とに亘って固定される。
【0039】
保護部材23は、前後軸心Y周り回動することにより、第二前後部53を摺動板22の横外側に位置させて、第二前後部53で摺動板22を保護する保護状態(図1図3参照)と、第二前後部53を接地させて、苗植付装置17のスタンドとして機能するスタンド状態(不図示)とに、変更自在に構成されている。
【0040】
このように、図3に示されるように、位置決めピン55を曲げて固定部55aを形成し、その固定部55aを延出部52に固定するようにしているので、例えば、孔を開けた延出部に、直線状に位置決めピンを挿通する場合よりも、保護部材23を簡易な構成で補強できる。
【0041】
〔垂れ下がり防止機構〕
図1図4図7に示されるように、フロート27には、フロート27の垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構60が備えられている。垂れ下がり防止機構60には、支持部材61と、U字状部材62と、連係ロッド63と、が備えられている。
【0042】
図4図7に示されるように、支持部材61は、板状の部材であり、メインフレーム19aの前側部分に複数のボルト64等で固定されている。U字状部材62は、正面視で、U字状で上向きの開口を有する部材であり、支持部材61の前面に、溶接等により固定されている。U字状部材62には、縦向き孔62aと、横向き孔62bと、が備えられている。連係ロッド63には、正面視でL字状の取付部63aと、取付部63aの下端から下向きに延出されるスライド部63bと、スライド部63bの下端側に位置する横向きの当接部63cと、が備えられている。取付部63aは、U字状部材62の縦向き孔62a及び横向き孔62bに挿通されている。U字状部材62から横向きに突出した部位のピン孔には、スナップピン62cが挿通されている。スライド部63bは、フロート27の前端部のフランジに備えられる係合孔27bに挿通され、フロート27に対して相対動自在となっている。当接部63cは、フロート27の下面に当接し、係合孔27bから抜けないようになっている。
【0043】
このような垂れ下がり防止機構60が備えられているので、図4図7から理解されるように、フロート27が一定範囲で上下揺動自在になりながら、連係ロッド63の当接部63cによって、フロート27が、垂れ下がり規制位置よりも前下がりになることがない。しかも、メインフレーム19aに連係ロッド63が位置決めされているので、メインフレーム19aに対する当接部63cの位置が一定に保たれる。これにより、フロート27の垂れ下がり規制位置が変化しないものとなる。このような垂れ下がり防止機構60であると、部品点数の少ない簡素な構成で、フロート27の垂れ下がりを好適に防止できる。
【0044】
〔整地部材〕
図1図4図6に示されるように、フロート支軸31には、整地部材70が備えられている。整地部材70は、各フロート構造の間にそれぞれ配置されている。図4に示されるように、整地部材70には、被支持部70aと、整地部70bと、が備えられている。被支持部70aは、フロート支軸31に取り付けられる部位であり、フロート支軸31の周囲に取り付けられるバンド体70cによって、フロート支軸31に対して一体回動するように取り付けられている。整地部70bは、レーキ状の形状を呈しており、圃面に接触して、整地を行う部位である。整地部70bは、被支持部70aの前端から後ろ下がりに延出されている。
【0045】
このように、メインフレーム19aよりも後方に位置しているフロート支軸31に整地部材70が備えられているので、図1から理解されるように、メインフレーム19aよりも前方に位置する後輪12に対して、整地部材70が干渉しにくいものとなる。また、整地部70bがフロート支軸31と一体回動するので、整地部70bに夾雑物が留まりにくい。また、整地部70bがフロート支軸31と一体回動するので、苗の植え深さを変更した際に、フロート支軸31の回動に伴って、整地部70bが回動し、変更後の苗の植え深さに整地高さが自動的に追従される。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ねじりバネ35の取り外し状態において、フロート27からコイル部40の第二横軸心X2までの距離t1よりもフロート27から屈曲部41aまでの距離t2が大きくなるように構成されているものが一例に示されているが、これに限られない。例えば、ねじりバネの取り外し状態において、フロート27からコイル部の第二横軸心までの距離が、フロート27から屈曲部までの距離よりも小さいものであってもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、ねじりバネ35の取り外し状態において、第二延出部41bcがフロート27の上面27aに当接するように構成されているものが一例に示されているが、これに限られない。例えば、ねじりバネ35の取り外し状態において、第二延出部41bcと異なる部位が、フロート27の上面27aに当接するように構成されていてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、ねじりバネ35において、屈曲部41aが、フック部41bの曲げの基端となっているものが一例に示されているが、これに限られない。屈曲部の部位置と、フック部の曲げの基端となる部位とが異なるねじりバネであってもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、ねじりバネ35の取り付け状態において、支持アーム32に貫設される横孔32aに、ねじりバネ35のフック部41bが掛止されているが、これに限られない。例えば、支持アーム32に固定されるリング部材等にねじりバネ35のフック部41bが掛止されていてもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、ねじりバネ35の前方部41が、側面視で、L字状に屈曲されている例が示されているが、これに限られない。例えば、ねじりバネの前方部が、側面視で、上向き湾曲状や、四角状等の他の形状であってもよい。
【0051】
(6)上記実施形態では、ねじりバネ35の前方部41に屈曲部41aが備えられているものが一例に示されているが、これに限られない。例えば、前方部が直線状となった他のねじりバネであってもよい。この場合、ねじりバネのコイル部の第二横軸心とフロート27の上面27aとの距離は十分に大きく確保される。ねじりバネの取り外し状態において、ねじりバネの前方部とフロート27の上面27aとの間には、前方部を持ち上げる為の空間が形成される。
【0052】
(7)上記実施形態では、「フロート」の一例として、T型のフロート27が一例に示されているが、これに限られない。例えば、上記フロート構造BにおけるU型のフロート28や、L型のフロート等の他のフロートであってもよい。
【0053】
(8)上記実施形態では、8条植式の乗用型田植機が一例として示されているが、これに限られない。1条植式〜7条植式、または、9条植式以上の乗用型田植機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、上記乗用型田植機の他、乗用型直播機等の他の水田作業機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
27 :フロート
27a :上面
32 :支持アーム
32a :横孔
34 :連結軸
35 :ねじりバネ
40 :コイル部
41 :前方部
41a :屈曲部
41b :フック部
41ba :第一延出部
41bb :折り返し部
41bc :第二延出部
42 :後方部
t1、t2:距離
S :空間
W :乗用型田植機(水田作業機)
X2 :第二横軸心(軸心)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7