【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、本発明者らは、本発明の前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、投入口フラップの自由端部を閉止位置に固定することができ、かつ、投入口の開放時においては、収容された郵便物の盗難防止可能な断面が逆L字型のスライドプレート部材からなる投入口フラップ開閉制御手段を備えた郵便受け箱を提供することにより前記課題を解決できることに着目し、かかる知見に基づいて本発明に想到するに至った。
【0023】
すなわち、本発明によれば、投入口下縁部に固着した支持部材と、スライドプレート部材とからなる投入口フラップ開閉制御手段であって、上下方向に摺動可能であり、かつ、投入口フラップを開閉するために任意の位置に保持可能なスライド溝を穿設したスライドプレート部材であり、該スライドプレート部材の縦断面が逆L字型であり、さらに、逆L字型の内角度が特定された投入口フラップ開閉制御手段を備えた郵便受け箱を提供するものである。
【0024】
なお、本明細書において「閉止位置」とは、投入口フラップの自由端部が投入口縁部に接触する位置である。
【0025】
かくして、本発明によれば、
1.郵便受け箱本体と、
該郵便受け箱本体の前面部に形成された投入口と、
該投入口の上縁部に、基端部が内開き回動自在に枢設された投入口フラップと、
取出口とを設けた郵便受け箱であって、
前記投入口下縁部に固着された支持部材と、該支持部材により、上下可動自在に支持され、かつ任意の高さ位置に固定保持が可能であり、断面が逆L字型のスライドプレート部材とからなる前記投入口フラップの自由端部の開閉制御可能な投入口フラップ開閉手段を備えてなることを特徴とする郵便受け箱が提供される。
【0026】
さらに、本発明の好ましい実施形態として、次の2〜6に掲げるものを包含する。
【0027】
2.前記逆L字型スライドプレート部材が、横方向の庇部と縦方向のプレート部とからなり、該庇部と該プレート部との間の内角度が、前記投入口フラップの自由端部が開閉の際に接触しないように設定された角度である前記1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0028】
3.前記逆L字型スライドプレート部材が、庇部とプレート部との一体化成形体である前記1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0029】
4.前記支持部材による前記スライドプレート部材の支持機構が、前記支持部材と、前記支持部材の棒状体部が挿入される逆T字型スライド溝またはL字型スライド溝が穿設された逆L字型スライドプレート部材からなり、前記支持部材の棒状体部が前記スライド溝内を摺動可能であり、かつ任意の高さ位置に固定保持が可能である摺動構造からなるものである前記1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0030】
5.前記逆L字型スライドプレート部材の庇部とプレート部との内角度が90度以上である前記1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0031】
6.前記支持部材が、前記投入口下縁部に固着されたボルトおよびナットである前記1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0032】
7.前記投入口フラップの開度調整手段が、その自由端部の背面側に固着された長さ寸法調整可能な脚部材である請求項1に記載の郵便受け箱が提供される。
【0033】
本発明に係る郵便受け箱は、投入口に開閉自在に枢設されたフラップを必要な場合に、投入口の閉鎖のため閉止位置に固定し、また、投入口の開放時において、郵便受け箱内に郵便物の盗難防止手段を備えた構造のものであり、かかる多機能を有するものであれば、他の構成要素については、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明に係る郵便受け箱は、前記の通り、不在時のチラシ等投入拒否機能及び投入口の開放時において郵便物等の盗難防止機能を含む多機能型郵便受け箱を包含するものであり、従来、開示されていない新規なものである。
【0035】
かかる本発明に係る郵便受け箱の特徴は、少なくとも次の二点にある。
【0036】
すなわち、その第一点は、郵便受け箱の従来の常識を打ち破る任意に投入口を閉鎖することが可能な投入口フラップ開閉制御手段を内設した点にある。
【0037】
郵便受け箱は、本来郵便物等の配達物を受け取るための用具であり、投入口は、常に開放状態に維持できるものでなければ、その機能を発揮させることができないと考えられてきた。従って、かかる観点から、投入口に閉鎖手段を備えるような発想は、従来は存在せず、また、かかる投入口の閉鎖手段を備えた郵便受け箱は存在していない。かかる状況下において、本発明者らが、初めて提案するものであり、発想の転換による新規な郵便受け箱を提供するものである。
【0038】
第二点は、投入口フラップの開放時において投入口より収容されている郵便物の盗難防止機能を発揮可能な点にある。
【0039】
従来、チラシ等の投入拒否のための手段としては、投入口フラップを取りはずすなどして、投入口にはめ込む遮蔽板等が提案されていた。かかる提案によれば投入口は、完全な開放状態であるか、または、完全な閉鎖状態の二者択一的な機能を有するにすぎなかったが、本発明によれば、配達物の盗難防止機能を有する投入口フラップ開閉手段を採用したことにより、配達物の投入は可能であるが、投入口から配達物の持ち出しなど盗難を防止できるように構成したものである。かかる投入口フラップ開閉手段については、そもそも投入口の閉鎖機能の存在が新規であることと相俟って、当然に新規であり、かつ、構成も簡素であり、顕著な効果を奏する。
【0040】
郵便受け箱本体
本発明に係る郵便受け箱の郵便受け箱本体は、箱体構造のものであり、箱体の前面部の上部に投入口が設けられ、投入口から投入された郵便物等の配達物を収容するための収容室および収容室に収容された配達物を取り出す取出口を前面部下部または背面部あるいは側面部等に設けたものである。
【0041】
郵便受け箱としては、取出口として投入口の下部に位置する前面部に開閉扉を設けた前入れ前出し”タイプと、背面部に開閉扉を設けた“前入れ後出し”タイプのものが基本構造である。
【0042】
前入れ前出しタイプの郵便受け箱は、背面部は閉鎖されてあり、投入口の下部に位置する前面部に開閉扉が設けられてある。
【0043】
一方、前入れ後出しタイプの郵便受け箱は、投入口下部に位置する前面部は閉鎖されてあり、背面部に開閉扉が設けられたものである。
【0044】
郵便受け箱の内部構造には限定がないが、配達物の取出しが容易なように取出し口に向って傾斜を設けたものが好ましい。
【0045】
また、投入口フラップ開閉手段を操作する際に、前入れ前出しタイプの郵便受け箱の場合には、前面部の開閉扉を開いて指で支持部材の固定手段を回転させて、スライドプレート部材の位置を調整すればよい。また、前入れ後出しタイプの郵便受け箱については、後面部の開閉扉を開いて、背面部から手を入れて投入口フラップ開閉手段のスライドプレート部材の位置調整すればよい。
【0046】
郵便受け箱本体の材質には、限定がないがステンレスが好ましく、また、開閉扉についてもステンレスまたはアルミダイカスト等が好ましい。
【0047】
本発明によれば、底の浅い、所謂、高さが低く、投入口が比較的大きい箱体であって、通常の場合、手の差し入れが容易で指が底面にとどく程度の大きさの箱体からなる郵便受け箱において、手の差し入れを阻止できる点により顕著な盗難防止効果を奏する。特に、箱体の高さが150mm以下の底の浅い郵便受け箱において後述のように顕著な効果を発揮することができる。
【0048】
投入口フラップ
本発明に係る郵便受け箱の構成要素としての投入口フラップは、郵便物等の投入口を閉鎖または所定の間隙を形成させるために設けた開閉蓋板であり、通常、その上縁が投入口の上縁部に取り付けられた枢支軸に枢設され回動自在に固定された基端部であり、基端部に対し、その下部の先端部が自由端部である。フラップは、通常、その自重により、自由端部が閉止位置の投入口下縁に接触し、投入口はフラップを押せば、郵便物等を投入可能な状態にある。
【0049】
従って、郵便物等を郵便受け箱に投入する場合は、フラップを押し開いて郵便物等が郵便受け箱内部へ投入された後、フラップは自重により、元の閉止位置に復帰する。
【0050】
また、投入口フラップは、前記の水平の枢支軸に枢設された形態のほかに、投入口のいずれか一方の側部に位置する内壁面投入口に設けた垂直軸に回動自在に枢設した横開きの形態のものであっても、その自由端部が本発明に係る投入口フラップ開閉手段の一つの要素として組み込まれてあれば、閉止位置に固定可能である。
【0051】
さらに、本発明に係る郵便受け箱の投入口フラップについて、本発明者らが、先に特願2013−186676号により提案したように、開度の制御手段を備えたものを提供することができる。投入口フラップの開度の制御手段としては、前記提案のほかに投入口フラップの自由端部の内側先端部に取りはずし自在に固着させた長さ寸法の調整可能な脚部材を用いることができる。脚部材としては、具体的には長さ寸法の調整可能な突起形状物、投入口フラップ自由端部に形成させた螺孔に螺入した螺子等を任意に選択することができる。該脚部材の寸法を長くすると、投入口フラップの自由端部の郵便受け箱本体の上部内壁への接触を抑制し、投入口フラップの開度を小さくすることができる。投入口フラップの開度を任意に小さくすることにより、後述するように、本発明に係る逆L字型スライドプレート部材の庇部の傾斜効果との相乗効果を奏することができる。
【0052】
投入口フラップ開閉制御手段
本発明に係る郵便受け箱の投入口フラップ開閉制御手段は、収容された配達物の盗難防止機能を有するものである。
【0053】
本発明に係る郵便受け箱の投入口フラップ開閉制御手段は、長期不在時等においてチラシ等の投入を拒否する必要のある場合、投入口を閉鎖し、その期間経過後は郵便物等の配達を受け入れるのに投入口の閉鎖を解除すると共に、投入口からの内部の郵便物の盗難等を防止することが可能であり、さらにその他の目的の達成に有効な多機能を有するものである。
【0054】
本発明に係る郵便受け箱の構成要素としての投入口フラップ開閉制御手段は、基端部が内開き回動自在に枢設された投入口フラップの自由端部を投入口縁部と当接する閉止位置に固定すると共に、投入口フラップの開放時においては、郵便物盗難防止機能を有するものであり、投入口フラップの開閉機能と盗難防止機能の二種を併有したものである。
【0055】
かかる投入口フラップ開閉制御手段は、投入口下縁部に固着された支持部材と、該支持部材により上下可動自在に支持され、かつ任意の高さ位置に固定保持が可能であり、断面が逆L字型のスライドプレート部材とから構成されたものである。
【0056】
かかる支持部材は、一方が投入口下縁部の内側に固着された棒状体部であり、他端が断面逆L字型のスライドプレート部材のプレート部に穿設されたスライド溝に挿入され、逆L字型スライドプレート部材の上下位置を固定保持する。
【0057】
支持部材としては、具体的には、ナットと螺合可能なボルト、先端部に螺旋溝を形成した棒状体または螺子等を挙げることができる。投入口の下縁部内側への固着は、投入口下縁部に螺孔を形成し、前記ボルト等を螺合させることにより固着すればよいが、該螺孔に螺子を螺入させる構造でもよい。固着構造については、逆L字型スライドプレート部材の上下可動自在可能な構造を有する支持部材であれば、特に限定されるものではないが、特に投入口下縁部に穿設した螺孔にボルト基端部を螺合し、そのボルトを逆L字型スライドプレート部材の逆T字型スライド溝またはL字型スライド溝に挿入した後、ボルトの先端部をナットと螺合することにより逆L字型スライド部材と連絡することができる。固着構造としては、前記の通りの各種のものがあるが、ボルトまたは先端部が螺旋構造の棒状体をナットで螺合する構造または図面で示すように螺子を要素とする固着構造が好ましい。本発明に係る郵便受け箱の投入口フラップ開閉制御手段の構成要素の第二は、断面が逆L字型スライドプレート部材(以下、単に「逆L字型スライドプレート部材」ということがある。)である。
【0058】
逆L字型スライドプレート部材は、後述の図面でも示すように横方向の庇部と縦方向のプレート部から構成される。
【0059】
かかる庇部とプレート部とは、互いに同一の材質または異なる材質からなるものでよく、各々独立の部材の長手方向の面を連結させて構成した構造体または同一材質からなる庇部とプレート部の一体化形成体を挙げることができるが、同一材質からなる庇部とプレート部の一体化形成体が逆L字型スライドプレート部材として、製作上および使用上において簡便であり、これを採用することが特に好ましい。
【0060】
かかる逆L字型スライドプレート部材において、庇部とプレート部材との接続面における内角度(α)(本発明に係る明細書等においては、
図6で示すαを「内角度」という。)は90度以上であり、かつ、郵便物等の投入のために投入口フラップを開く際に、自由端部に接触しないように最大限に大きい角度に設定したものが盗難防止の観点から好適である。 一方、郵便物の差し入れを支障なく行うことが必要である点から、特に限定するものではないが、具体的には、箱体の高さが150mm以下であり、投入口の広さ(上下幅)が30mm以上であり、投入口の下縁部の高さ位置が100mm以下において、逆L字型スライドプレート部材の内角度(α)は、90〜120度の範囲で選択することができる。
【0061】
逆L字型スライドプレート部材の内角度(α)が90度以下であれば、郵便受け箱の内部に手を入れることが容易となり、一方、120度以上となれば、郵便物の投入が困難となるという問題が生ずるおそれがある。
【0062】
また、逆L字型スライドプレート部材の庇部の長さ(逆L字型スライドプレート部材の横方向)は、郵便受け箱の箱体の大きさと高さ(すなわち、深さ)、投入口の広さ(上下幅)および高さ位置等により決定される。特に底の浅い郵便受け箱に対しては、庇部の長さを大きくする必要がある。通常30mm以上のものが好ましい。
【0063】
庇部が短い場合、手を容易に差し込むことができ、一方、庇部が長い場合、例えば、60mmを超えると郵便物の投入が困難となるという難点が生ずる。
【0064】
また、縦方向のプレート部の長さは、上下可動により投入口フラップの開閉制御が可能な範囲内に決定される。
【0065】
かかる逆L字型スライドプレート部材のプレート部には、前記の上下可動が可能な幅の範囲内に支持部材との連接のための逆T字型スライド溝、またはL字型スライド溝を穿設してある。
【0066】
かくして、逆L字型スライドプレート部材の支持機構は、具体的には、逆L字型スライドプレート部材に穿設された逆T字型スライド溝に、投入口下縁部に固着された支持部材の棒状体部が挿入されることにより逆L字型スライドプレート部材が支持されると共に摺動による上下可動が可能となり、かつ、逆L字型スライドプレート部材の屈曲部が、任意の高さ位置、すなわち、投入口フラップの閉止位置高さに固定可能となる。さらに、具体的には支持部材の棒状体部が逆L字型スライドプレート部材の逆T字型スライド溝に挿入され、棒状体部が逆T字型スライド溝に沿って摺動することにより、逆L字型スライドプレート部材が上下方向に可動可能となり、かつ、支持部材の棒状体部が逆T字型スライド溝の横方向の溝に移動し、固定することにより、逆L字型スライドプレート部材は上方向へ移動し、投入口フラップの自由端部と接触することにより、投入口フラップが閉止状態になる。
【0067】
本発明に係る郵便受け箱において示されている逆L字型スライドプレート部材の可動形態は、逆T字型スライド溝を利用した上下方向と横方向の二形態であるが、スライド溝の形態を逆T字型以外の形態に変更しても投入口フラップの開閉制御が可能であれば、特に限定することなく採用することができる。例えば、スライド溝がL字形状であっても逆L字型スライドプレート部材の上下方向への可動と横方向での固定保持が可能である。
【0068】
また、逆T字型スライド溝またはL字型スライド溝において、さらに複数の横方向のスライド溝を付加して穿設してもよい。
【0069】
本発明に係る郵便受け箱を構成する投入口フラップ開閉制御手段の具体的な実施形態は、
図3に投入口フラップが閉止状態となる場合の投入口フラップ開閉制御手段の斜視図を示し、
図4にその分解斜視図を、
図7に投入口フラップが開放状態である場合の投入口フラップ開閉制御手段の各要素の位置関係を示す。また、
図8には投入口フラップが逆L字型スライドプレート部材の上方向への移動により、投入口フラップは閉止状態にある。
【0070】
本発明に係る郵便受け箱は、前記の通り、投入口下縁部に固着された支持部材と、該支持部材により、上下可動自在に支持され、かつ任意の高さ位置に固定保持が可能であり、断面が逆L字型のスライドプレート部材とからなる前記投入口フラップの自由端部の開閉制御が可能な投入口フラップ開閉制御手段を備えてなる郵便受け箱であって、郵便受け箱の使用に際しては、投入口を開閉する場合においては、次の手順を踏めばよく、ワンタッチで操作することができる。
【0071】
1.郵便受け箱のタイプにより異なるが、前扉あるいは背面側または側面部のいずれかの開閉扉を開ける。
2.前扉背面部に設置されている投入口フラップ開閉制御手段の逆L字型スライドプレート部材を上下方向へ摺動させ、該逆L字型スライドプレート部材のスライド溝に挿入されている支持部材の位置が、該スライド溝の所定の位置になるように固定する。所定の位置は、投入口フラップの開閉位置としてあらかじめ特定されたものである。本発明の実施形態においては、投入口フラップの閉止の場合、支持部材の位置は、逆T字型スライド溝の基端部432であり、一方、投入口フラップの開放の場合、先端部431である。
3.開閉扉を閉じる。