(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記複数の蓄熱槽それぞれの温度と、前記吸収式冷凍機から戻る熱媒の温度とに基づいて、前記複数の蓄熱槽のなかで前記第1蓄熱槽が最も高温となるように前記吸収式冷凍機からの熱媒の戻りを制御することを特徴とする請求項4に記載された吸収式冷凍システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1を模式的に示す構成図である。本実施形態に係る吸収式冷凍システム1は、太陽熱を利用して吸収式冷凍機21の希溶液を加熱するものであり、第1システム10と、第2システム20と、第3システム30と、システムコントローラ40とを備えている。
【0015】
第1システム10は、太陽熱を蓄熱するシステムであり、太陽熱集熱器11と、複数の蓄熱槽12と、集熱流路13と、集熱ポンプ14とを備えている。
【0016】
太陽熱集熱器11は、太陽光を受光することで熱媒を加熱するものであって、例えば屋根の上などの太陽光を受光し易い位置に設置される。熱媒には、水、不凍液(例えばプロピレングリコール水溶液)などが用いられる。
【0017】
複数の蓄熱槽12は、それぞれ独立して構成されており、本実施形態では、3つの蓄熱槽12で構成されている。以下、図中に示す3つの蓄熱槽12を、左側から順番に第1蓄熱槽12A、第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cとし、特定の蓄熱槽12を指す場合にはこれらの呼び方を用いる。
【0018】
個々の蓄熱槽12は、太陽熱集熱器11によって集熱した熱を蓄熱するものであり、例えば太陽熱集熱器11にて加熱された熱媒を内部に貯留するタンクである。
【0019】
集熱流路13は、太陽熱集熱器11から3つの蓄熱槽12を経て再度太陽熱集熱器11に熱媒を循環させる配管であり、3つの蓄熱槽12は、太陽熱集熱器11に対して並列配置されている。この集熱流路13のうち、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11に向かう流路を第1集熱流路13aと称し、太陽熱集熱器11から蓄熱槽12に向かう流路を第2集熱流路13bと称する。
【0020】
第1集熱流路13aは、3つの蓄熱槽12からそれぞれ流出した熱媒を1つに合流させた上で太陽熱集熱器11に供給する。第1集熱流路13aにおいて、第1蓄熱槽12Aから熱媒が流出する流路には第1熱媒出口バルブ15Aが、第2蓄熱槽12Bから熱媒が流出する流路には第2熱媒出口バルブ15Bが、第3蓄熱槽12Cから熱媒が流出する流路には第3熱媒出口バルブ15Cがそれぞれ設けられている。
【0021】
また、第2集熱流路13bは、太陽熱集熱器11から流出した熱媒を3つに分岐させた上でそれぞれの蓄熱槽12に供給する。第2集熱流路13bにおいて、第1蓄熱槽12Aに熱媒が流入する流路には第1熱媒入口バルブ16Aが、第2蓄熱槽12Bに熱媒が流入する流路には第2熱媒入口バルブ16Bが、第3蓄熱槽12Cに熱媒が流入する流路には第3熱媒入口バルブ16Cがそれぞれ設けられている。
【0022】
さらに、第1蓄熱槽12Aと第2蓄熱槽12Bとは流路によって連通されており、当該流路には第1連通バルブ18Aが設けられている。また、第2蓄熱槽12Bと第3蓄熱槽12Cとは流路によって連通されており、当該流路には第2連通バルブ18Bが設けられている。
【0023】
集熱ポンプ14は、第1集熱流路13aに設けられており、熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0024】
本実施形態では、集熱方式は直接集熱式であり、集熱流路13にて太陽熱集熱器11と蓄熱槽12との間を循環する熱媒と、後述する熱媒流路22にて蓄熱槽12と吸収式冷凍機21との間を循環する熱媒とを共用している。しかしながら、集熱方式を間接集熱式とし、集熱流路13にて太陽熱集熱器11と蓄熱槽12との間を循環する熱媒と、熱媒流路22にて蓄熱槽12と吸収式冷凍機21との間を循環する熱媒とを分離して使用するものでもよい。この場合、蓄熱槽12は熱交換器を備えるものとし、集熱流路13を介して循環する熱媒を熱交換器に流して蓄熱槽12を加熱することができる。また、間接集熱式の構成では、上述の第1から第3熱媒出口バルブ15A,15B,15Cは省略することができる(
図9参照)。
【0025】
第2システム20は、後述する室内機31にて使用される冷水を得るためのものであり、複数の吸収式冷凍機21と、熱媒流路22と、熱媒ポンプ23とを備えている。なお、本実施形態では、室内機31にて冷水を使用するものであるが、冷水に限らず、その他の冷媒を使用してもよい。
【0026】
複数の吸収式冷凍機21は、それぞれ独立して構成されており、本実施形態では、蓄熱槽12の数と対応した3つの吸収式冷凍機21で構成されている。以下、図中に示す3つの吸収式冷凍機21を、左側から順番に第1吸収式冷凍機21A、第2吸収式冷凍機21B、第3吸収式冷凍機21Cとし、特定の吸収式冷凍機21を指す場合にはこれらの呼び方を用いる。
【0027】
図2は、吸収式冷凍機21の一例を示す概略構成図である。個々の吸収式冷凍機21は、再生器における希溶液を加熱し、当該再生器101、凝縮器102、蒸発器103及び吸収器104の循環サイクルによって冷水を得るものである。個々の吸収式冷凍機21は、再生器101、凝縮器102、蒸発器103及び吸収器104で構成されている。また、個々の吸収式冷凍機21には、冷却塔25と、冷却水流路26とが組み合わされている。なお、
図1では、冷却塔25及び冷却水流路26の記載は省略されている。
【0028】
再生器101は、冷媒(例えば水)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された希溶液(吸収液の濃度が低い溶液)を加熱するものである。以下、冷媒が蒸気化したものを「冷媒蒸気」といい、冷媒が液化したものを「液冷媒」という。この再生器101には熱媒流路22が配置されており、熱媒流路22上に希溶液が散布され加熱される。再生器101は、加熱により希溶液から蒸気を放出させることにより、冷媒蒸気と濃溶液(吸収液の濃度が高い溶液)とを生成する。
【0029】
凝縮器102は、再生器101から供給された冷媒蒸気を液化させるものである。この凝縮器102内には、冷却塔25で冷却された冷却水が流通する伝熱管102aが設けられている。この伝熱管102aには、冷却水が伝熱管102aと冷却塔25との間を循環できるように冷却水流路26が連結されている。蒸発した冷媒蒸気は伝熱管102a内の冷却水によって液化する。凝縮器102にて液化した液冷媒は蒸発器103に供給される。
【0030】
蒸発器103は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器103内には、室内機31に接続される冷水流路32が設けられている。この冷水流路32には、室内機31によって暖められた冷水が流れている。また、蒸発器103内は、真空状態となっている。このため、冷媒である水の蒸発温度は約5℃となる。よって、冷水流路32上に散布された液冷媒は冷水流路32の温度によって蒸発することとなる。一方、冷水流路32内の冷水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、冷水流路32内を流れる冷水は冷却され、この冷却された冷水が室内機31に供給される。
【0031】
吸収器104は、蒸発器103において蒸発した冷媒を吸収するものである。再生器101から濃溶液が供給され、蒸発した冷媒は濃溶液によって吸収され、希溶液が生成される。この吸収器104内には、冷却塔25で冷却された冷却水が流通する伝熱管104aが設けられている。この伝熱管104aには、冷却水が伝熱管104aと冷却塔25との間を循環できるように冷却水流路26が連結されている。濃溶液の冷媒の吸収により生じる吸収熱は、伝熱管104aを流通する冷却水により除去される。冷媒の吸収により濃度が低下した希溶液は、ポンプ104bによって再生器101に供給される。なお、伝熱管104aは、冷却塔25の冷却水を凝縮器102とで共用するために、凝縮器102の伝熱管102aと接続されている。
【0032】
冷却塔25は、冷却水を吸収式冷凍機21に供給するとともに、吸収式冷凍機21によって暖められた冷却水を冷却するものである。冷却塔25は、例えば底部に冷却水を収容する槽を有している。この槽にはフロートの上下によって給水が行われ、当該槽は一定の量の冷却水を貯留する。また、冷却塔25は、その上部に、ファンと当該ファンの下方に配置される熱交換部とを有している。吸収式冷凍機21から戻ってきた冷却水は熱交換部に散布され、熱交換部を通過することで冷却される。当該熱交換部により冷却された冷却水は槽に貯留される。
【0033】
冷却水流路26は、冷却塔25から吸収式冷凍機21の吸収器104及び凝縮器102を経て再度冷却塔25に冷却水を循環させる配管である。このうち、冷却塔25から吸収式冷凍機21に向かう流路を第1冷却水流路26aと称し、吸収式冷凍機21から冷却塔25に向かう流路を第2冷却水流路26bと称する。
【0034】
第1冷却水流路26aは、冷却塔25の底部(槽の底部分)に連結されており、この第1冷却水流路26aには冷却水ポンプ27が設けられている。冷却水ポンプ27は、冷却水を循環させる動力源となるものである。第2冷却水流路26bは、冷却塔25の上部(ファンと熱交換部との間)に連結されている。
【0035】
さらに、吸収式冷凍機21は、制御部105を備えている。この制御部105はCPU(Central Processing Unit)を備え、吸収式冷凍機21の全体を制御するものである。
【0036】
吸収式冷凍機21を運転する場合、制御部105は、吸収式冷凍機21の冷水出口配管に設けられた冷水出口温度センサから得られる冷水出口温度に基づいて吸収式冷凍機21の制御を行う。具体的には、制御部105には、通常冷房運転時における温調停止温度と温調開始温度とが記憶されている(通常、温調停止温度<温調開始温度)。制御部105は、冷水出口温度が温調停止温度以下になると、その運転を一時停止させ(温調停止)、冷水出口温度が温調開始温度以上となると、温調停止を解除してその運転を再開する。なお、一時停止中において後述する冷水ポンプ33は動作しており、冷水は循環させられている。
【0037】
再び
図1を参照するに、熱媒流路22は、蓄熱槽12から吸収式冷凍機21の再生器101を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から吸収式冷凍機21の再生器101に向かう流路を第1熱媒流路22aと称し、吸収式冷凍機21の再生器101から蓄熱槽12に向かう流路を第2熱媒流路22bと称する。
【0038】
第1熱媒流路22aは、第1蓄熱槽12Aから流出した熱媒を3つに分岐した上でそれぞれの吸収式冷凍機21に供給する。
【0039】
第2熱媒流路22bは、3つの吸収式冷凍機21からそれぞれ流出した熱媒を1つに合流させた後、合流した熱媒を3つに分岐させた上でそれぞれの蓄熱槽12に供給する。第2熱媒流路22bにおいて、第1蓄熱槽12Aに熱媒が流入する流路には第4熱媒入口バルブ17Aが、第2蓄熱槽12Bに熱媒が流入する流路には第5熱媒入口バルブ17Bが、第3蓄熱槽12Cに熱媒が流入する流路には第6熱媒入口バルブ17Cがそれぞれ設けられている。
【0040】
熱媒ポンプ23は、熱媒流路22のうち第1熱媒流路22aに設けられており、熱媒を循環させる動力源となるものである。本実施形態では、3つの吸収式冷凍機21に対応して熱媒ポンプ23がそれぞれ設けられている。
【0041】
第3システム30は、吸収式冷凍機21にて得られた冷水を室内機31に供給するものであり、一つ以上(例えば5つ)の室内機31と、冷水流路32と、冷水ポンプ33とで構成されている。
【0042】
個々の室内機31は、室内に設けられている。個々の室内機31は、空調機であり、吸収式冷凍機21から供給される冷水と室内から取り込んだ空気との間で熱交換を行う。この熱交換により、空気から冷水に熱が奪われて空気が冷却される。個々の室内機31は、冷却した空気を室内に送風する。
【0043】
冷水流路32は、室内機31から吸収式冷凍機21の蒸発器103を経て再度室内機31に冷水を循環させる配管であり、個々の室内機31は、並列的に接続されている。
このうち、吸収式冷凍機21の蒸発器103から室内機31に向かう流路を第1冷水流路32aと称し、室内機31から吸収式冷凍機21の蒸発器103に向かう流路を第2冷水流路32bと称する。
【0044】
冷水ポンプ33は、冷水流路32のうち第2冷水流路32bに設けられており、冷水を循環させる動力源となるものである。
【0045】
システムコントローラ40は、吸収式冷凍システム1全体の制御を司るものである。システムコントローラ40には、制御入力として、各種センサ等からの信号が入力されている。システムコントローラ40は、制御入力に基づいて各種の演算を行い、この演算結果に従った制御出力を吸収式冷凍システム1の各部に出力する。システムコントローラ40としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0046】
蓄熱槽温度センサ41A,41B,41Cは、各蓄熱槽12A,12B,12Cの温度を検出するセンサであり、その温度に応じた信号をシステムコントローラ40に出力する。熱媒出口温度センサ42は、吸収式冷凍機21から流出した熱媒の温度(熱媒出口温度)を検出するセンサであり、熱媒出口温度に応じた信号をシステムコントローラ40に出力する。
【0047】
冷水出口温度センサ43は、3つの吸収式冷凍機21から室内機31に供給される冷水の温度(冷水出口温度)を検出するセンサであり、冷水出口温度に応じた信号をシステムコントローラ40に出力する。冷水入口温度センサ44は、室内機31から3つの吸収式冷凍機21に戻る冷水の温度(冷水入口温度)を検出するセンサであり、冷水入口温度に応じた信号をシステムコントローラ40に出力する。冷水流量センサ45は、吸収式冷凍機21から室内機31に供給される冷水の流量(冷水流量)を検出するセンサであり、冷水流量に応じた信号をシステムコントローラ40に出力する。
【0048】
本実施形態の特徴の一つとして、システムコントローラ40は、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御する。また、システムコントローラ40は、吸収式冷凍機21にて熱利用された熱媒が戻る蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御する。
【0049】
以下、吸収式冷凍システム1の制御方法について説明する。まずは、太陽熱集熱器11からの熱媒を適切な蓄熱槽12へと戻すための制御方法について説明する。本実施形態では、システムコントローラ40は、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cそれぞれの温度TA,TB,TCに基づいて、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで第1蓄熱槽12Aが最も高温となるように太陽熱集熱器11からの熱媒の供給を制御する。この場合、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aに対して優先的に太陽熱集熱器11からの熱媒供給を行い、第1蓄熱槽12Aが一定の温度条件を満たした後に、残余の蓄熱槽12B,12Cのうち第1蓄熱槽12Aに近いものから順番に太陽熱集熱器11からの熱媒供給を行う。ここで、
図3及び
図4は、吸収式冷凍システム1の制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定の周期で呼び出されシステムコントローラ40により実行される。
【0050】
まず、ステップ10(S10)において、システムコントローラ40は、熱媒ポンプ23が稼働しているか否かを判断する。吸収式冷凍機21が起動する前には熱媒ポンプ23が稼働していないため、ステップ10において否定判定され、ステップ11(S11)以降の処理に進む。一方、吸収式冷凍機21が起動した後は熱媒ポンプ23も稼働しているため、ステップ10において肯定判定され、ステップ17(S17)以降の処理に進む。
【0051】
ステップ11において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの温度TAが当該第1蓄熱槽12Aに要求する温度(要求温度)THA以下か否かを判断する。第1蓄熱槽12Aの温度TAが要求温度THA以下の場合には、ステップ11において肯定判定され、ステップ14(S14)に進む。一方、第1蓄熱槽12Aの温度TAが要求温度THAよりも大きい場合には、ステップ11において否定判定され、ステップ12(S12)に進む。
【0052】
ステップ12において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの温度TBが第1蓄熱槽12Aの要求温度THA以下か否かを判断する。第2蓄熱槽12Bの温度TBが第1蓄熱槽12Aの要求温度THA以下の場合には、ステップ12において肯定判定され、ステップ15(S15)に進む。一方、第2蓄熱槽12Bの温度TBが第1蓄熱槽12Aの要求温度THAよりも大きい場合には、ステップ12において否定判定され、ステップ13(S13)に進む。
【0053】
ステップ13において、システムコントローラ40は、第3蓄熱槽12Cの温度TCが第1蓄熱槽12Aの要求温度THA以下か否かを判断する。第3蓄熱槽12Cの温度TCが第1蓄熱槽12Aの要求温度THA以下の場合には、ステップ13において肯定判定され、ステップ16(S16)に進む。一方、第3蓄熱槽12Cの温度TCが第1蓄熱槽12Aの要求温度THAよりも大きい場合には、ステップ13において否定判定され、ステップ14に進む。
【0054】
ステップ14において、システムコントローラ40は、各吸収式冷凍機21へと熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを開ける。また、システムコントローラ40は、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを閉めるとともに、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを閉める。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第1蓄熱槽12Aのみに熱媒が供給され、第2蓄熱槽12B及び第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0055】
ステップ15において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの隣に位置する第2蓄熱槽12Bに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを閉めるとともに、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを閉める。また、システムコントローラ40は、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを開ける。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第2蓄熱槽12Bのみに熱媒が供給され、第1蓄熱槽12A及び第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0056】
ステップ16において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの隣に位置する第3蓄熱槽12Cに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを閉めるとともに、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを閉める。また、システムコントローラ40は、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを開ける。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第3蓄熱槽12Cのみに熱媒が供給され、第1蓄熱槽12A及び第2蓄熱槽12Bへの熱媒の供給は遮断される。
【0057】
ステップ17において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの温度TAが第2蓄熱槽12Bの温度TB以下か否かを判断する。第1蓄熱槽12Aの温度TAが第2蓄熱槽12Bの温度TB以下の場合には、ステップ17において肯定判定され、ステップ26(S26)に進む。一方、第1蓄熱槽12Aの温度TAが第2蓄熱槽12Bの温度TBよりも大きい場合には、ステップ17において否定判定され、ステップ18(S18)に進む。
【0058】
ステップ18において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの温度TBが第3蓄熱槽12Cの温度TC以下か否かを判断する。第2蓄熱槽12Bの温度TBが第3蓄熱槽12Cの温度TC以下の場合には、ステップ18において肯定判定され、ステップ27(S27)に進む。一方、第2蓄熱槽12Bの温度TBが第3蓄熱槽12Cの温度TCよりも大きい場合には、ステップ18において否定判定され、ステップ19(S19)に進む。
【0059】
ステップ19において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの温度TAについて温度判定を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの温度TAと、第1蓄熱槽12Aの要求温度THAと、第1蓄熱槽12Aの要求最低温度TLAとを比較する。ここで、第1蓄熱槽12Aの要求最低温度TLAは、第1蓄熱槽12Aの温度が要求温度THAより低下しても、その温度よりも高ければ蓄熱を要しないと判断する温度である(THA>TLA)。
【0060】
まず、第1蓄熱槽12Aの温度TAがその要求最低温度TLA以下である場合には(TA≦TLA)、ステップ26に進む。一方、第1蓄熱槽12Aの温度TAがその要求最低温度TLAよりも大きいが、要求温度THAよりも小さい場合には(TLA<TA<THA)、ステップ20(S20)に進む。また、第1蓄熱槽12Aの温度TAがその要求温度THA以上である場合には(THA≦TA)、ステップ21(S21)に進む。
【0061】
ステップ20において、システムコントローラ40は、各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じているか否かを判断する。各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じている場合には、ステップ20で肯定判定され、ステップ26に進む。一方、熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び熱媒出口バルブ15A,15B,15Cのいずれかが閉じていない場合には、ステップ20で否定判定され、ステップ25(S25)に進む。
【0062】
ステップ21において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの温度TBについて温度判定を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの温度TBと、第2蓄熱槽12Bの要求温度THBと、第2蓄熱槽12Bの要求最低温度TLBとを比較する。ここで、第2蓄熱槽12Bの要求温度THBは、第2蓄熱槽12Bに要求する温度である。第2蓄熱槽12Bの要求最低温度TLBは、第2蓄熱槽12Bの温度が要求温度THBより低下しても、その温度よりも高ければ蓄熱を要しないと判断する温度である(THB>TLB)。例えば、第2蓄熱槽12Bの要求温度THB及び要求最低温度TLBは、第1蓄熱槽12Aの要求温度THA及び要求最低温度TLAと同一のものを用いることができる。
【0063】
まず、第2蓄熱槽12Bの温度TBがその要求最低温度TLB以下である場合には(TB≦TLB)、ステップ27に進む。一方、第2蓄熱槽12Bの温度TBがその要求最低温度TLBよりも大きいが、要求温度THBよりも小さい場合には(TLB<TB<THB)、ステップ22(S22)に進む。また、第2蓄熱槽12Bの温度TBがその要求温度THB以上である場合には(THB≦TB)、ステップ23(S23)に進む。
【0064】
ステップ22において、システムコントローラ40は、各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じているか否かを判断する。各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じている場合には、ステップ22で肯定判定され、ステップ27に進む。一方、熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び熱媒出口バルブ15A,15B,15Cのいずれかが閉じていない場合には、ステップ22で否定判定され、ステップ25に進む。
【0065】
ステップ23において、システムコントローラ40は、第3蓄熱槽12Cの温度TCについて温度判定を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第3蓄熱槽12Cの温度TCと、第3蓄熱槽12Cの要求温度THCと、第3蓄熱槽12Cの要求最低温度TLCとを比較する。ここで、第3蓄熱槽12Cの要求温度THCは、第3蓄熱槽12Cに要求する温度である。第3蓄熱槽12Cの要求最低温度TLCは、第3蓄熱槽12Cの温度が要求温度THCより低下しても、その温度よりも高ければ蓄熱を要しないと判断する温度である(THC>TLC)。例えば、第3蓄熱槽12Cの要求温度THC及び要求最低温度TLCは、第1蓄熱槽12Aの要求温度THA及び要求最低温度TLAと同一のものを用いることができる。
【0066】
まず、第3蓄熱槽12Cの温度TCがその要求最低温度TLC以下である場合には(TC≦TLC)、ステップ28(S28)に進む。一方、第3蓄熱槽12Cの温度TCがその要求最低温度TLCよりも大きいが、要求温度THCよりも小さい場合には(TLC<TC<THC)、ステップ24(S24)に進む。また、第3蓄熱槽12Cの温度TCがその要求温度THC以上である場合には(THC≦TC)、ステップ26に進む。
【0067】
ステップ24において、システムコントローラ40は、各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じているか否かを判断する。各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cが閉じている場合には、ステップ24で肯定判定され、ステップ28に進む。一方、熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び熱媒出口バルブ15A,15B,15Cのいずれかが閉じていない場合には、ステップ24で否定判定され、ステップ25に進む。
【0068】
ステップ25において、システムコントローラ40は、各熱媒入口バルブ16A,16B,16C及び各熱媒出口バルブ15A,15B,15Cについて現在のバルブ状態を維持する。
【0069】
ステップ26において、システムコントローラ40は、各吸収式冷凍機21へと熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを開ける。また、システムコントローラ40は、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを閉めるとともに、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを閉める。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第1蓄熱槽12Aのみに熱媒が供給され、第2蓄熱槽12B及び第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0070】
ステップ27において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aの隣に位置する第2蓄熱槽12Bに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを閉めるとともに、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを閉める。また、システムコントローラ40は、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを開ける。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第2蓄熱槽12Bのみに熱媒が供給され、第1蓄熱槽12A及び第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0071】
ステップ28において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bの隣に位置する第3蓄熱槽12Cに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第1熱媒出口バルブ15Aを閉めるとともに、第2熱媒入口バルブ16B及び第2熱媒出口バルブ15Bを閉める。また、システムコントローラ40は、第3熱媒入口バルブ16C及び第3熱媒出口バルブ15Cを開ける。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第3蓄熱槽12Cのみに熱媒が供給され、第1蓄熱槽12A及び第2蓄熱槽12Bへの熱媒の供給は遮断される。
【0072】
つぎに、吸収式冷凍機21からの熱媒を適切な蓄熱槽12へと戻すための制御方法について説明する。具体的には、システムコントローラ40は、吸収式冷凍機21にて熱利用された熱媒が戻る蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御する。特に、システムコントローラ40は、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cそれぞれの温度TA,TB,TCと、吸収式冷凍機21から戻る熱媒の温度T1とに基づいて、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで第1蓄熱槽12Aが最も高温となるように吸収式冷凍機21からの熱媒の戻りを制御する。ここで、
図5は、吸収式冷凍システム1の制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定の周期で呼び出されシステムコントローラ40により実行される。
【0073】
まず、ステップ30(S30)において、システムコントローラ40は、熱媒出口温度T1が第3蓄熱槽12Cの温度TC以下か否かを判断する。熱媒出口温度T1が第3蓄熱槽12Cの温度TC以下の場合には、ステップ30において肯定判定され、ステップ35(S35)に進む。一方、熱媒出口温度T1が第3蓄熱槽12Cの温度TCよりも大きい場合には、ステップ30において否定判定され、ステップ31(S31)に進む。
【0074】
ステップ31において、システムコントローラ40は、熱媒出口温度T1が第2蓄熱槽12Bの温度TB以下か否かを判断する。熱媒出口温度T1が第2蓄熱槽12Bの温度TB以下の場合には、ステップ31において肯定判定され、ステップ34(S34)に進む。一方、熱媒出口温度T1が第2蓄熱槽12Bの温度TBよりも大きい場合には、ステップ31において否定判定され、ステップ33(S33)に進む。
【0075】
ステップ33において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aに熱媒を戻すべく、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第4熱媒入口バルブ17Aを開け、第5熱媒入口バルブ17B、第6熱媒入口バルブ17C、第1連通バルブ18A及び第2連通バルブ18Bを閉じる。このバルブ制御により、第1蓄熱槽12Aにのみ熱媒が戻される。
【0076】
ステップ34において、システムコントローラ40は、第2蓄熱槽12Bに熱媒を戻すべく、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第5熱媒入口バルブ17B及び第1連通バルブ18Aを開け、第4熱媒入口バルブ17A、第6熱媒入口バルブ17C及び第2連通バルブ18Bを閉じる。このバルブ制御により、第2蓄熱槽12Aに熱媒が戻される。また、第1連通バルブ18Aを開けることで、第2蓄熱槽にあった熱媒を第1蓄熱槽12Aに送ることができる。
【0077】
ステップ35において、システムコントローラ40は、第3蓄熱槽12Cに熱媒を戻すべく、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第6熱媒入口バルブ17C、第1連通バルブ18A及び第2連通バルブ18Bを開け、第5熱媒入口バルブ17B及び第4熱媒入口バルブ17Aを閉じる。このバルブ制御により、第3蓄熱槽12Cに熱媒が戻される。また、第1連通バルブ18A及び第2連通バルブ18Bを開けることで、第3蓄熱槽12Cにあった熱媒を第2蓄熱槽12Bに、第2蓄熱槽12Bにあった熱媒を第1蓄熱槽12Aに順番に送ることができる。
【0078】
図3及び
図4に示す一連の処理により、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12が3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで適宜切り換えられることとなる。
【0079】
図6は、熱媒ポンプ23が稼働していない状況での各蓄熱槽12A,12B,12Cの温度TA,TB,TCの推移を示す説明図である。熱媒ポンプ23が稼働していない場合、ステップ11からステップ16の処理を経ることで、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aを早急に蓄熱し、その後、第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cを順番に蓄熱することができる。また、各々の蓄熱槽12A,12B,12Cを独立して蓄熱することで、各々の蓄熱槽12A,12B,12Cから流出した熱媒が混ざり合い、太陽熱集熱器11に流入する熱媒の温度が低下することを抑制することができる。このため、太陽熱集熱器11で集熱された熱媒の温度が第1蓄熱槽12Aの温度よりも低くなり、第1蓄熱槽12Aの温度が上昇しないという事態を抑制することができる。その結果、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aが最も早く高温となるように蓄熱し、つぎに、第1蓄熱槽12Aに近い順で第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cを順番に蓄熱することができる。
【0080】
図7及び
図8は、熱媒ポンプ23が稼働している状況での各蓄熱槽12A,12B,12Cの温度TA,TB,TC及び熱媒出口温度T1の推移を示す説明図である。ここで、
図7は、各要求温度THA,THB,THC及び各要求最低温度TLA,TLB,TLCがそれぞれ同一に設定された状況での温度推移を示し、
図8は、各要求温度THA,THB,THC及び各要求最低温度TLA,TLB,TLCがTHA>THB>THC及びTLA>TLB>TLCなる関係に設定された状況での温度推移を示す。
【0081】
吸収式冷凍機21が稼働している場合、吸収式冷凍機21から戻ってくる熱媒は、供給時の温度よりも低下して第1蓄熱槽12Aに戻ってくるため、第1蓄熱槽12Aの温度が低下する。また、熱媒が戻る経路によっては、TA≧TB≧TCとの関係が成立しない場合がある。そこで、ステップ17からステップ28の処理に示すように、まずはTA≧TB≧TCの条件を満たすように、各々の蓄熱槽12の温度を比較する。そして、蓄熱する蓄熱槽12を決定し、第1蓄熱槽12Aを他の蓄熱槽12B,12Cよりも高温にしている。そして、第1蓄熱槽12Aが一定の温度条件を満足すると、第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cについても同様に蓄熱される。
【0082】
また、要求最低温度値TLA,TLB,TLCを設けることで、第1蓄熱槽12Aの温度TAが要求温度THAより低下しても、要求最低温度TLAよりも大きければ、要求最低温度に達していない蓄熱槽12B,12Cに蓄熱を行うことができる。そして、この加熱中に、吸収式冷凍機21からの熱媒の戻りによって、第1蓄熱槽12Aの温度TAが要求最低温度TLAまで低下、又は第1蓄熱槽12Aの温度TAが第2蓄熱槽12Bの温度TB以下に低下した場合、蓄熱先が第2蓄熱槽12Bから第1蓄熱槽12Aに切替えられ、要求温度THAまで達するまで第1蓄熱槽12Aについて蓄熱が行われる。また、第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cについても同様に制御される。
【0083】
これにより、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aが最も早く高温となるように蓄熱され、つぎに、第1蓄熱槽12Aに近い順で第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cを順番に蓄熱することができる。
【0084】
また、
図5に示す一連の処理により、吸収式冷凍機21からの熱媒が戻される蓄熱槽12A,12B,12Cが適宜切り換えられることとなる。吸収式冷凍機21が運転している場合、吸収式冷凍機21から戻ってくる熱媒は、供給時の温度よりも低下して蓄熱槽12に戻るため、蓄熱槽12の温度が低下する。本実施形態では、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aを最も高温な蓄熱槽としたいので、その温度TAの低下をできるだけ抑制することができる。
【0085】
このように本実施形態において、吸収式冷凍システム1は、熱媒を加熱する太陽熱集熱器11と、太陽熱集熱器11から熱媒がそれぞれ供給されて蓄熱を行い、吸収式冷凍機21の再生器101を加熱するための熱媒を供給する3つの蓄熱槽12A,12B,12Cと、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御するシステムコントローラ40とを有している。
【0086】
この構成によれば、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cに分割して熱媒を保有することができるので、個々の蓄熱槽12A,12B,12Cが負担する熱媒の容量を小さくすることができる。これにより、個々の蓄熱槽12A,12B,12Cの温度を素早く上昇させることができる。また、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12を可変的に制御することで、全ての蓄熱槽12A,12B,12Cに同時に蓄熱するのではなく、必要な蓄熱槽12A,12B,12Cに対して集中的に蓄熱を行うことができる。例えば、太陽熱集熱器11の熱を1つの蓄熱槽12に集中して入れ、必要な温度の熱媒を素早く蓄えることができる。これにより、吸収式冷凍機21を起動するために必要な温度にまで熱媒を早期に昇温させることができ、吸収式冷凍機21の起動時間の短縮を図ることができる。よって、吸収式冷凍機21の稼働率の向上を図ることができる。
【0087】
また、本実施形態では、太陽熱集熱器11を利用しているが、上述の構成によれば、日射量が少ない環境であっても蓄熱槽12の温度を上げやすくすることできる。また、太陽熱集熱器11だけでは熱量が不足する場合には、補助ボイラーを追加したりする必要がある。しかしながら、本実施形態では蓄熱槽12の温度を上げやすい構成であるため、補助ボイラーの設置を不要としたり、また、補助ボイラーを設置する場合であっても、当該補助ボイラーによって追い焚きする頻度を抑制したりすることができる。その結果、無駄な追い焚きを減らすことができ、燃料消費の抑制を図ることができる。
【0088】
また、本実施形態において、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのうち第1蓄熱槽12Aが吸収式冷凍機21に接続されて、残余の蓄熱槽12B,12Cが第1蓄熱槽12Aに直列的に接続されている。システムコントローラ40は、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cそれぞれの温度に基づいて、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで第1蓄熱槽12Aが最も高温となるように太陽熱集熱器11からの熱媒の供給を制御している。
【0089】
この構成によれば、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aが最も早く高温となるように熱媒を供給することができる。これにより、吸収式冷凍機21を起動するために必要な温度にまで熱媒を早期に昇温させるができ、吸収式冷凍機21の起動時間の短縮を図ることができる。よって、吸収式冷凍機21の稼働率の向上を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態において、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12Aに対して優先的に太陽熱集熱器11からの熱媒供給を行い、第1蓄熱槽12Aが一定の温度条件(要求温度THA)を満たした後に、残余の蓄熱槽12B,12Cのうち第1蓄熱槽12Aに近いものから順番に太陽熱集熱器11からの熱媒供給を行っている。
【0091】
この構成によれば、吸収式冷凍機21へ熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aが最も早く高温となるように熱媒を供給することができる。また、第1蓄熱槽12Aの蓄熱が十分になされると、その後は、第2蓄熱槽12B、第3蓄熱槽12Cに対して順次蓄熱を行うことができる。これにより、システム全体の蓄熱を適切に行うことができる。
【0092】
また、本実施形態において、システムコントローラ40は、吸収式冷凍機21にて熱利用された熱媒が戻る蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御している。
【0093】
吸収式冷凍機21にて熱利用された熱媒は温度が低下した状態で蓄熱槽12へと戻ることとなる。このように熱媒が戻る蓄熱槽12を可変的に制御することで、第1蓄熱槽12Aの温度が低下するといった事態を抑制することができる。これにより、吸収式冷凍機21の稼働率及び出力の向上を図ることができる。
【0094】
また、本実施形態において、システムコントローラ40は、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cそれぞれの温度TA,TB,TCと、吸収式冷凍機21から戻る熱媒の温度T1とに基づいて、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで第1蓄熱槽12Aが最も高温となるように吸収式冷凍機21からの熱媒の戻りを制御している。
【0095】
この構成によれば、吸収式冷凍機21から戻る熱媒により第1蓄熱槽12Aの温度が低下するといった事態を抑制することができる。
【0096】
(第2の実施形態)
図9は、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1を模式的に示す構成図である。以下、第2の実施形態に係る吸収式冷凍システム1について説明する。この第2の実施形態に係る吸収式冷凍システム1が、第1の実施形態のそれと相違する点は、集熱方式を間接集熱式としたことである。第1の実施形態と重複する説明は省略することとし、相違点を中心に説明を行う。
【0097】
以下、太陽熱集熱器11からの熱媒を適切な蓄熱槽12へと戻すための制御方法について説明する。この制御方法は、基本的には、第1の実施形態に示す処理と同様であるが、ステップ14乃至ステップ16、及びステップステップ26乃至ステップ28における各処理が相違する。また、間接集熱式の吸収式冷凍システム1では、各蓄熱槽12A,12B,12Cは熱交換器19A,19B,19Cを備え、集熱流路13を介して循環する熱媒を熱交換器19A,19B,19Cに流して蓄熱槽12A,12B,12Cを加熱する。また、第1の実施形態に示す熱媒出口バルブ15A,15B,15Cは省略されている。
【0098】
ステップ14及びステップ26では、システムコントローラ40は、各吸収式冷凍機21へと熱媒を供給する第1蓄熱槽12Aに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16Aを開け、第2熱媒入口バルブ16B及び第3熱媒入口バルブ16Cを閉める。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第1蓄熱槽12Aのみに熱媒が供給され、第2蓄熱槽12B及び第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0099】
ステップ15及びステップ27では、システムコントローラ40は、第1蓄熱槽12A及びその隣に位置する第2蓄熱槽12Bに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A及び第2熱媒入口バルブ16Bを開き、第3熱媒入口バルブ16Cを閉める。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から第1蓄熱槽12A及び第2蓄熱槽12Bに熱媒が供給され、第3蓄熱槽12Cへの熱媒の供給は遮断される。
【0100】
ステップ16及びステップ28では、システムコントローラ40は、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cに蓄熱を行うこととし、以下の制御を行う。具体的には、システムコントローラ40は、第1熱媒入口バルブ16A、第2熱媒入口バルブ16B及び第3熱媒入口バルブ16Cを開ける。このバルブ制御により、太陽熱集熱器11から、第1蓄熱槽12A、第2蓄熱槽12B及び第3蓄熱槽12Cへと熱媒がそれぞれ供給される。
【0101】
このように本実施形態において、吸収式冷凍システム1は、熱媒を加熱する太陽熱集熱器11と、太陽熱集熱器11から熱媒がそれぞれ供給されて蓄熱を行い、吸収式冷凍機21の再生器101を加熱するための熱媒を供給する3つの蓄熱槽12A,12B,12Cと、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12を3つの蓄熱槽12A,12B,12Cのなかで可変的に制御するシステムコントローラ40とを有している。
【0102】
この構成によれば、3つの蓄熱槽12A,12B,12Cに分割して熱媒を保有することができるので、個々の蓄熱槽12A,12B,12Cが負担する熱媒の容量を小さくすることができる。これにより、個々の蓄熱槽12A,12B,12Cの温度を素早く上昇させることができる。また、太陽熱集熱器11から熱媒が供給される蓄熱槽12を可変的に制御することで、全ての蓄熱槽12A,12B,12Cに同時に蓄熱するのではなく、必要な蓄熱槽12A,12B,12Cに対して集中的に蓄熱を行うことができる。すなわち、太陽熱集熱器11の熱を1つの蓄熱槽12に集中して入れ、必要な温度の熱媒を素早く蓄えることができる。これにより、吸収式冷凍機21を起動するために必要な温度にまで熱媒を早期に昇温させるができ、吸収式冷凍機21の起動時間の短縮を図ることができる。よって、吸収式冷凍機21の稼働率の向上を図ることができる。
【0103】
また、集熱方式を間接集熱式とする本実施形態では、各々の蓄熱槽12A,12B,12Cを独立して加熱する必要がない。これにより、各蓄熱槽12A,12B,12Cにおける蓄熱を効率的に行うことができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態にかかる吸収式冷凍システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0105】
なお、本実施形態において吸収式冷凍機は、太陽熱で加熱した熱媒(温水)を利用する温水焚の方式を利用するものであるが、これに限るものではない。例えば、吸収式冷凍機は、エンジンなどの排ガスの熱を集熱して利用する排ガス焚の方式や、ボイラーなどの蒸気の熱を集熱して利用する蒸気焚の方式であってもよい。
【0106】
また、上述した実施形態では、3台の蓄熱槽を例示したが、2台や4台といった複数台の蓄熱槽を備える吸収式冷凍システムに本発明は適用可能である。また、本実施形態では、3つの吸収式冷凍機を例示したが、吸収式冷凍機は少なくとも一つ設けられていればよい。
【0107】
さらに、上述した実施形態では、冷水を利用する機器として、5つの室内機を例示したが、これに限定されず、1台乃至4台又は6台以上の室内機であってもよい。また、室内機以外にも冷水を使用する外部機器であればよい。外部機器としては、例えば工業用冷却装置等が挙げられる。
【0108】
また、上述した実施形態では、冷却塔と吸収式冷凍機とを一対一で設けているが、複数の吸収式冷凍機に対して一台の冷却塔を設けるものでもよい。また、冷却塔(冷却機)は、地中熱や地下水を利用して冷却水を冷却するものでもよい。このようなシステムでは、冷却水を低い温度に保てる為、吸収式冷凍機の冷凍能力を高めることも可能になる。