特許第6132823号(P6132823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132823
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】錠および錠用の2値キー
(51)【国際特許分類】
   E05B 29/00 20060101AFI20170515BHJP
   E05B 29/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   E05B29/00 A
   E05B29/02
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-192102(P2014-192102)
(22)【出願日】2014年9月22日
(62)【分割の表示】特願2011-546233(P2011-546233)の分割
【原出願日】2010年1月19日
(65)【公開番号】特開2015-38304(P2015-38304A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】0900050-6
(32)【優先日】2009年1月19日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515089149
【氏名又は名称】ユニロック パテント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】アドルフソン, ベルント
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 実公平02−001792(JP,Y2)
【文献】 実開平04−063787(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第2288427(GB,A)
【文献】 米国特許第1565557(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に沿って複数の突起が配置されているキー(15)であって、
該複数の突起(12)が、すべて共通の平面内に配置され、すべて同じ高さを有しており、全体として当該キーの外形を定めているキー(15)であって、
前記キー本体が、前記キー(15)本体に沿って配置された複数のキーエレメント(119)で構成され、前記キーエレメントには前記突起が配置され、当該キーを前記キーエレメント(119)から構築することができ、
前記キーエレメント(119)は、軸(120)の中央の溝に配置され、
前記キー(15)は、複数の突起を前記キー本体に沿って2つの反対向きの方向に備え、
前記キーエレメント(119)を、縦および横に回転させることによって、2つまたは4つの組み合わせを得ることができ、同一のキーエレメント(119)は、垂直軸を中心に回転させるとその外形が反転し、そして
前記キーエレメント(119)は、水平軸を中心に反転させることもでき、それにより当該キーエレメント(119)に新たな上側の外形および下側の外形を与えられるキー(15)。
【請求項2】
各々の突起について前記キー本体上の該当の位置が存在し、各々の突起の位置が他の突起の位置とは異なる請求項1に記載のキー(15)。
【請求項3】
前記キーエレメント(119)の各々が、最大で4つの突起を有する請求項1または2に記載のキー(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠の機構ならびにキーに関する。
【背景技術】
【0002】
錠が、例えば米国特許第3,789,638号および米国特許第5,826,451号から知られている。それらは、キーによって動かすことができる複数の回転子エレメントを備えており、それら回転子エレメントが、それら回転子エレメントの設定に応じて、開錠を阻止し、あるいは可能にする。
【0003】
機械式の錠は、通常は、鍵屋または専門家でなければ変更することができない固定の設計または構成を含む技術にもとづいている。この構成または設計は、恒久的であり、あるいは工場で製作され、製造者およびユーザにとって、いくつかの問題を引き起こす。
【0004】
これらの従来技術の錠に関するさらなる欠点は、キーを紛失した場合や、既存の錠に追加して同じキーによる別の錠の設置が望まれる場合に、錠を或る程度変更または修正できるという事実にもかかわらず、専門家(鍵屋)を呼ばなければならない点にある。これは、呼ばれた専門家が、既存の錠または新たな錠を特定のキーに適合するように変更するにせよ、あるいは1つ以上の新たな錠を設置するにせよ、実用的でなく、比較的高いコストを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、その好都合な設計ゆえに、これまでに公知の錠よりも容易に変更または調整を行うことができる錠を提供することにある。さらなる目的は、従来技術に比べて改良されたキーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的は、請求項1に記載の錠の機構および請求項20に記載のキーによって達成することができる。請求項1に記載の機構の種々の実施形態が、従属請求項2〜18に記載される。請求項1〜18に記載の機構を備える錠が、従属請求項19に記載される。請求項20に記載のキーの種々の実施形態が、従属請求項21〜24に記載される。請求項19に記載の錠と請求項20〜24のいずれか一項に記載のキーとを含む錠−キーの組み合わせが、従属請求項25に記載される。
【0007】
本発明は、個別の錠および大規模な錠システムに含まれる錠の両方として使用され、すべての取り扱いを第三者の助けを借りることなく顧客が行うことができ、安価であり、環境的に容認でき、資源を節約する錠を設計できるようにする。本発明は、キーのコードを知る顧客が、鍵屋または製造者の助けを借りることなく、自身のキーを容易かつ迅速に製造することができる設定変更可能な錠を提供する。さらには、専門家でない者が遠隔制御の設備および単純なソフトウェアを使用して錠システムを取り扱うことも可能にする。
【0008】
本発明のさらなる利点を後述する。
【0009】
伝統的な錠は、当然ながら、互いに異なっていなければならないため、合理的なやり方で大量に生産することが不可能である。本発明は、すべての錠を同じ基本部品を使用して製造できるよう、統一的な錠を提供する。
【0010】
伝統的な錠を合理的に組み立てることは不可能である。製造の問題に加えて、伝統的な設計の錠には、組み立ての問題およびそれに関係するコストもつきまとう。本発明は、すべての錠を同じ基本部品を使用して製造できるようにすることで、この問題への解決策を提示する。これは、合理的な組み立てが可能であり、組み立ての作業そのものさえ顧客が実行できることを意味する。
【0011】
伝統的な錠は、キーを紛失した場合に交換を余儀なくされる。伝統的な錠の正当なユーザが錠のすべてのキーを紛失した場合や、伝統的な種類のキーが盗難に遭い、あるいは許可なく複製された可能性が疑われる場合には、通常は錠を交換しなければならない。伝統的な錠システムの共通キーの紛失時には、共通キーに一致するすべての錠を交換しなければならない。共通キーがシステムのマスターキーでもある場合には、すべての錠を交換しなければならない。いくつかのピンタンブラー錠は、キーの紛失時に閉鎖が可能であるが、この作業を行うために正当なユーザが専門家を呼ばなければならないという問題が依然として残る。これには時間がかかり、専門家のノウハウが必要であり、費用がかかる。本発明は、設定変更可能な錠を提供することによって、この問題を解決することができ、あるいは少なくとも軽減することができる。錠システムの一部ではない個別の錠の場合には、例えば単に回転子を錠から取り外し、回転子に配置されておりキーによって駆動される施錠エレメントの配置を、開錠に別のキーコードが必要であるように変更することによって、錠の設定を変更することができる。キーシステムのキーの紛失の場合には、システムのすべての錠を、キーシステムの他のすべてのキーのコードを変える必要なく、紛失したキーが適合しないように阻止することができる。
【0012】
伝統的な錠システムは、錠の製造者から発注され、錠の製造者によって製造され、錠の製造者によって配送されなければならない。伝統的な技術にもとづく錠システムは、注文生産でなければならない。錠およびキーの発注時には、通常は、システムの錠およびキーの数ならびにそれぞれの錠にどの鍵が適合するのかを定義する専用の行列が使用される。この行列を、錠の製造者への送信に先立って、小売業者の店舗または鍵屋において作成することができる。あるいは、錠システムを製造者から直接発注することも可能である。そのような手順には時間がかかり、管理の仕事が必要であると同時に、錠およびキーが特注でなければならない。伝統的な技術にもとづく錠システムのための錠およびキーシステムのコードを設計および定義するためには、かなりの専門的技術が必要である。これは、錠システムの一部である錠が、小売業者の店舗で棚から購入する個別の錠よりもはるかに高価であることを意味する。入手に数週間、場合によっては数ヵ月を要する。本発明は、ユーザが所望の錠システムのための所望の数の錠を棚から直接購入して、外部の助けを借りることなく錠システムを構築できるようにすることで、この問題を解決可能にし、あるいは少なくとも軽減可能にする。単純なコードの用語が、ユーザによる錠システムのコードおよびキーシステムのコードの決定を容易にする。結果として、錠システムが大幅に安価になり、より迅速に構築可能になる。
【0013】
従来技術においては、ユーザが既存の伝統的な錠システムを自身で変更することが不可能である。本発明は、ユーザが特殊な工具または専門家の知識を必要とせずに自身で必要な変更を行うことができるようにすることで、この問題を解決可能にし、あるいは少なくとも軽減可能にする。安価であり、実用的であり、時間が節約される。
【0014】
個別の伝統的な錠を異なるキーに適合するようにユーザが変更することはできない。確かに、数回の設定変更が可能な錠は存在するが、それ以上は不可能である。さらに、これらの錠は、統一された錠ではなく、すなわち統一された錠によって解決される諸問題を解決しない。本発明は、単純な手作業での設定変更を可能にすることで、この問題を解決可能にし、あるいは少なくとも軽減可能にする。
【0015】
従来技術においては、ユーザが個別の錠をいくつかの異なるキーに適合するように設定することが不可能である。これが、本発明の一態様においては、錠に中立の施錠エレメントを使用することによって可能である。
【0016】
従来技術においては、キーを合理的なやり方で製造することが不可能である。なぜならば、錠が異なれば、キーもまた異ならなければならないからである。本発明の一態様によれば、最初はコードを有している必要がなく、ユーザによってコードが与えられるまでコードを有さないままである統一されたキーが提供される。これは、キーを同一であるように製造でき、すなわち合理的なやり方で製造できることを意味する。
【0017】
従来技術においては、許可を有するユーザがキーを持たない部屋へとアクセスするために、新規なキーを発注しなければならない。本発明の一態様によれば、この問題を、キーコードを知っていれば新たなキーを未だコードが与えられていないキーから製作することができるという事実によって、解決することができる。
【0018】
従来技術においては、ユーザが新たなキーまたは追加のキーを求める場合に、このキーをすぐに製造することが不可能である。最初に、ユーザは、キーの製造者を見つけなければならず、あるいは錠の製造者からキーを取り寄せなければならない。さらには、元のキーのうちの1つが必要とされる。本発明は、場合によっては例えばコンビニエンスストアでも入手することができる未コードのキーを使用可能にする。さらに、本発明は、同じ種類の錠を有する誰かからキーを借用し、このキーで扉を開くことができるようにユーザ自身のコードに従って組み換えることを可能にする。あるいは、未コードのキーを、適切な場所に確保しておいてもよい。
【0019】
従来技術においては、錠およびキーが異なる場合に、正しいキーを正しい錠に組み合わせるために、従来技術による何らかの形式の管理手段が必要である。このためのコストが、製造コストに追加される。本発明は、顧客が任意の随意による組み合わせへと組み立てることができる未コードの統一されたキーを使用することで、この問題を解決できるようにする。
【0020】
従来技術においては、錠のないキーは無価値であり、再使用することができない。本発明は、顧客が任意の随意による組み合わせへと組み立てることができる未コードの統一されたキーを提供する。
【0021】
従来技術においては、キーのない錠は無価値である。全体または一部の取り外しまたは再利用が、不可能である。本発明は、既存のキーまたは新たなキーに適合させるための錠の設定変更を可能にする。
【0022】
上述の問題のすべては、伝統的な南京錠にも関係しうる。
【0023】
通常であれば中へのアクセスが許されていない人員が、生命および財産を救うためにすぐに進入する必要がある救援作業の場合において、伝統的な技術の限界が大きな問題を構成する。本発明は、錠のコードを知っていれば、キーを組み立て、あるいは救助隊に固定の接続または携帯電話機などの無線接続による遠隔制御を使用して錠の機械コードを救助隊、救急隊、または警察によって使用されるコードへと変更するための手段を提供し、あるいは錠をリセットすることによって、例えば火災の場合に速やかに部屋へと進入することを可能にする。
【0024】
伝統的に、錠の操作、錠の開放、ならびにキーおよびサービスの供給に必要な知識および資材を有しているのは、製造者または鍵屋である。さらに、製造者は、顧客がこの製造者に錠システムを発注した場合は、顧客の錠およびキーコードの写しを有している。これは、プライバシーの懸念を生じさせる可能性があるが、この問題が、本発明によって効果的に取り除かれる。
【0025】
製造プロセスに関する環境コスト、鍵屋の移動に関するコスト、および交換後の錠の廃棄に関するコストが、現代の錠および錠システムに関しては、かなり大きい。本発明は、多数をまとめて小売業者へと出荷することができ、鍵屋の移動に関するコストを除くことができ、交換されて捨てられる錠を摩耗した錠または破損した錠だけに限定できるため、これらのコストの大幅な削減をもたらす。
【0026】
本発明を、添付の概略図を参照しつつ、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態を示している。
図2】本発明の第1の実施形態を示している。
図3】本発明の第1の実施形態を示している。
図4】本発明の第2の実施形態を示している。
図5】本発明の第2の実施形態を示している。
図6】本発明の第2の実施形態を示している。
図7】本発明の第2の実施形態を示している。
図8】本発明の第2の実施形態を示している。
図9】本発明の第3の実施形態を示している。
図10】本発明の第3の実施形態を示している。
図11】本発明の第3の実施形態を示している。
図12】本発明の第3の実施形態を示している。
図13】本発明の第3の実施形態を示している。
図14】本発明の第3の実施形態を示している。
図15】本発明の一態様による回転子およびキーの実施形態を示している。
図16】本発明の一態様による回転子およびキーの実施形態を示している。
図17】本発明の一態様による錠およびキーの実施形態を示している。
図18】本発明の一態様による錠およびキーの実施形態を示している。
図19】本発明の一態様による錠およびキーの実施形態を示している。
図20】本発明の一態様による錠およびキーの実施形態を示している。
図21】本発明の一態様による錠の実施形態を示している。
図22】本発明の一態様による回転子および固定子の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例1
本発明の第1の典型的な実施形態による錠を、以下で図1〜3を参照して説明する。
【0029】
図1が、内側で回転子2を回転させることができる固定子1を示しており、固定子1が、固定子1を通って固定子1の全長にわたって延びている上側の溝6および下側の溝7を備えている。回転子2は、エレメントまたはピン3、4、および5が重力の作用およびキーによる駆動のもとで半径方向に運動することができる複数の貫通穴を有している。ピン3および4は、同一の設計であるが、回転子2に配置されたときのピン上の突起の向きに応じて、異なる機能を有することができる。この突起を、ピンの尖端部を形成していると称することができる。図1が、尖端部を下方に向けているピン3と、尖端部を上方に向けているピン4とを示している。ピン5は、この尖端部を欠いており、したがって図3に関してさらに詳しく後述される中立の機能を有している。回転プレート8が、90度だけ回転させられたときに、回転プレート8の最大幅の部分が上側の溝6および下側の溝7のそれぞれにおいて自由に移動できることで、回転子2を固定子1から取り出すことができるように設計されている。これにより、ピン3、4、および5を、新たなコードに従って並べ直し、次いで回転子2を固定子1へと再び挿入することができる。この図による設計は、最初に回転プレート8を取り外すことによって、回転子2が回転させられているか否かにかかわらず、回転プレート8が取り外されたときに回転子2を固定子1から取り外すことを可能にする。
【0030】
この機能が当然ながら失われるが、より合理的な製造および組み立てを可能にする別の設計は、回転プレートおよび回転子を一部品にて形成することによって回転プレートを回転子に一体化させることを含んでいる。この場合、回転プレートおよび回転プレートを回転子に取り付けるための手段のどちらも、製造または取り付けする必要がない。
【0031】
図2が、種々のキーエレメント8’で構成される組み立て式のキー15の例を示しており、キーエレメント8’が、側方9から見たときに、キー軸10への取り付けを可能にする貫通穴を有している。キー15の外形に対する垂直方向の寸法の数は、2つに抑えられており、すなわちキー15の全体形状、すなわちキー15の個性を、外形の各々の高さに2進数を割り当てることによって、2進法のコードへと直接変換することが可能である。これは、最終的なキーの全体的な外形へと組み立てることができるキーの外形の構成を容易にする。このやり方で、ユーザが、自身の固有のキーの組み合わせを選択することができる。図2に示されているキー15は、組み立て式であるが、固定式のキーを安価なやり方で製造することも可能である。
【0032】
この場合において、外形の小さな高さ11に、2進数の0が割り当てられ、外形の大きな高さ12に、2進数の1が割り当てられている。したがって、この実施形態によれば、キー15が、2進数の1に対応するそれぞれの位置に、外形の大きな高さ12に一致する高さの突起を有している。図1に示したような20ピンの錠のためのキーは、各々のピンについて外形の高さを1つ有し、すなわち外形の高さを20個、水平方向に有しているキーによって表わされる。したがって、そのような錠において可能な組み合わせの数は、最大20桁までのすべての2進数と同等であり、すなわち2^20=1048576である。各々のキーエレメント8’上の外形の高さの水平方向の数が、製造可能な異なるキーエレメントの数を決定する。外形の高さの水平方向における数が、各々のキーエレメントにつき1つに抑えられる場合には、2つの異なる種類のエレメント(すなわち、1および0)だけを製造すればよく、キーを20個の異なるエレメントで構成することができる。
【0033】
他方で、今回の例のように、外形の4つの高さが水平方向に使用される場合には、2^4=16であるため、16個の異なるエレメント8’が必要とされ、このことは、10進数への変換が可能である2進法での各々のエレメント8’のコーディングに加えて、エレメントについて16進数での表記も使用することができ、別のキーコード、すなわち2進法、10進法、または16進法を使用するためのより良好な機会が、ユーザに提供されることも意味する。一般に、16進法によるコードは、16進の記数法が文字も含むため、より記憶が容易である。したがって、16進の記数法はちょうど16個の基底を有するため、各々のエレメントに、16進数による表記を与えることができる。これらの16個のキーエレメント8が、それらの16進法でのコーディングとともに、図2の列13および14に示されている。列13のエレメントだけを製造すればよい。なぜならば、列13のエレメントを水平に回転させることで、列14のエレメントも形成できるからである。キー15は、図のように表記された場合に2進数16および10進数17へと変換することができるコードを直接形成する5つのそのようなエレメントで組み立てられる(WindowsのCalculatorなどの標準的なソフトウェアアプリケーションで、この変換を充分に実行することができる)。
【0034】
図2によれば、キー15に、より狭い下向きのレールまたはラグ12’を設けることができ、回転子2に、図2Aに従って、対応する溝12’’を設けることができる。ラグ12’およびキー穴をさらに備える溝12’’のおかげで、キー15が、錠に挿入されたときに、望ましくない様相で上方位置に固着する可能性があるピンを、下方へと押すことができる。固着する錠のピンがキー15の挿入時に上方位置に再び引っ掛かることがないよう、キー15において、そのようなレールまたはラグを、錠の持ち上げられないピンに対応する各々の位置に設けることも可能である。
【0035】
図3が、種々のピン3、4、5の機能を示している。図3Aが、尖端部を下方に向けて有しているピンが、尖端部が重力ゆえに固定子の下側の溝7に挿入されるという事実によって、どのように回転子の回転を阻止するのかを示している。図3A1が、ピンが、ピンの場所に対応する位置においてキーの外形の高さが大きい(すなわち、2進法の1である)ことで持ち上げられ、溝7から出ることで、回転子を、図3A2に示されるように回転させることができる旨を示している。このように、尖端部が下方へと向けられているピンを、2進法の1を示すと称することができる。
【0036】
一方で、ピンが、図3Bに示されるように尖端部を上方に向けて配置されている場合には、このピンは、キーによって駆動されたときに阻止機能を有する。これは、駆動されておらず、すなわち持ち上げられていないときに、回転子の回転を阻止しないことも意味する。したがって、尖端部が上方へと向けられたピンを、回転子を回転させて錠を開くために、キー上の該当の位置に2進法の0が必要であるがゆえに、2進法の0を示すと称することができる。逆に、キーが該当する位置に2進法の1を有するならば、ピンが持ち上げられ、尖端部が上方へと向けられているがゆえに、図3B2に示されるように上側の溝6へと挿入され、回転子の回転が阻止される。このように、ピン3、4は、他者とは無関係に、駆動によって阻止となる状態と同じ駆動によって解放となる状態との間で変更可能に配置される。
【0037】
図3Cに示されるように、中立ピン(すなわち、尖端部を持たないピン)が錠に配置される場合、図3C1および3C2に示されるように、ピンが持ち上げられるか否かは問題にならない。換言すると、そのようなピンは中立機能を有し、したがってこのピンに関しては、キーがキー上の該当の位置に2進法の1または0のどちらを有するかは、問題にならない。このことは、X個の中立ピンが回転子に配置される場合、同じ錠に2^X個の異なるキーが適合できることを意味する。
【0038】
したがって、伝統的な技術と対照的に、錠が、施錠エレメントが或る距離だけ動かされなければならず、あるいは或る角度だけ回転させられなければならないという事実(どちらの場合も、アナログの機械的解決策と称することができる)にもとづかず、錠の施錠エレメントがキーによって動かされる否かであるという考え方(デジタルの機械的解決策と称することができる)にもとづく。このように、上述の実施例1は、開錠のためのデジタル的な機械的基準を有する機械式の手作業による変更が可能な単一の錠と、開錠のためのデジタル的な機械的基準を有するキーとを提供する。錠の機械的な錠コードを、ユーザが特殊な工具を使用することなく変更することができる。錠が中立エレメントを少なくとも1つ有する場合、その錠には、機械的なコードが異なる少なくとも2つのキーが適合する。
【0039】
このことは、10進法ならびに2進法および16進法の記号を、キーおよび錠の機械的構成の両方の物理的形状へと変換できる一方で、システムの錠コード、錠システムのコード、およびキーシステムのコードを、一般的なアルゴリズムによって数学的に定めることができ、単純なソフトウェアを展開できることを意味している。
【0040】
図2に関して上述したように、キー15は、錠の持ち上げられないピンに対応する各位置に、下向きの突起または下向きのラグ12’を有することができる。そのような両側の外形を有するキー115が、図2Bに示されている。やはり上述したように、これは、固着する錠のピンがキー115の挿入時に上方位置に再び引っ掛かることを防止することができる。この種の両側のキーの外形のさらなる利点は、実施例1による錠を、常に垂直向きとは限らず、あるいはピンを下方へと動かすために重力に依存する錠において、使用可能にする点にある。これは、例えば、南京錠の場合に有用となりうる。
【0041】
図2Bに示されるとおり、キー115は、両側が外形付けられた複数のキーエレメント119を備える。キーエレメント119が、軸120の中央の溝に配置される。溝は、軸120の一端から軸120の他端に向かって延びている。軸120およびキーエレメント119の断面が、図2Bの下部に示されている。
【0042】
キー115は、図2Bにおいては回転プレート121の形態であるハンドルをさらに備える。回転プレート121は、軸120の溝に配置される。回転プレート121を、キーエレメント119が取り付けられた後で、軸120へと配置することができる。次いで、回転プレート121およびキーエレメント119を、固定ワッシャまたはナット122によって固定することができる。ナット122をねじ込むことができるよう、軸120の後部に、例えばねじ山を設けることができる。このように、キー115は組み立て式であるが、キーを組み立て式でないようなやり方で設計することも可能である。例えば、キー115を、成型または切削作業において一部品にて形成することができる。
【0043】
一変種によれば、軸120を、回転プレート121を軸120の両端に取り付けることができるように設計することができる。この変種は、キーエレメント119を軸120から取り外すことなく、回転プレート121を軸120の反対側の端部へと移動させ、キーの外形を反転させることを可能にする。例えば、2進法のコード「1111111100000000」に相当するキーの外形を反転させると、2進法のコード「0000000011111111」に相当するキーの外形がもたらされる。16進法のコードで表現すると、キーの外形が、FF00から00FFへと変更される。10進法で表現すると、キーの外形が、65280から255へと変更される。
【0044】
このように、この変種によるキーの外形は、一方ではキー115の上下を反対にし、他方では回転プレート121を軸120の他端へと移動させることによって、4回変更することが可能である。
【0045】
図2Bによるキーの設計は、キーの外形を、わずかに6種類の異なるキーエレメント119を使用して組み立てることを可能にする。これを、図2Cを参照してさらに詳しく後述する。
【0046】
生じうる16個の4ビットの2進数のすべてを形成するために必要な6個の異なるキーエレメント123が、図2Cの上部に示されている。各々の円に囲まれたキーエレメント123は、同一であるが、それぞれを縦および横に回転させることによって、2つまたは4つの組み合わせを得ることができる。これが、図2Cの真ん中の拡大図によってさらに詳しく示されている。この拡大図は、キーエレメントのうちの1つを、4つの異なる向きにて示している。各々のエレメントに、16進法の表示124を設けることができる。これは、ユーザがキーの組み立ておよびコードの設定をより容易に行えるようにすることができる。表示124は、エレメントの上側の2進法による外形125を示している。この場合には、0010である(1が、高さの高い外形を表わし、0が、高さの低い外形を表わす)。この同じエレメントが、(逆側が示されるように)垂直軸を中心にして回転させられると、外形が、16進法のコード4(参照番号127)に相当する0100(参照番号126)へと反転する。これら2つの向きから出発して、エレメントを水平軸を中心にして反転させ、エレメントに新たな上側の外形1101および下側の外形1011をそれぞれ与えることもできる。
【0047】
図2Cの下部が、1つのキー115を、同じキー115において2つの組み合わせ(すなわち、外形)を得るために、キーエレメント119と同様のやり方で反転させることができる旨を示している。キー115のそれぞれの向きを表わす2進法のコードが、キーの外形の上方に表示され、対応する16進法のコードおよび10進法のコードが、この外形の下方にそれぞれ表示されている。キーを垂直軸を中心にして対称な断面を備えるように設計できるという事実ゆえ、両方のキーの外形を、一致する対称なキー穴を有する回転子において使用することができる。
【0048】
次に、キーのさらなる変種を、図2Dを参照して後述する。図2Dの上部が、キーおよび該当の軸131ならびに軸131の外形に一致する外形を有するキー穴を備える回転子132の断面を示している。キーが、図2Cのキー115と同様の両側の外形を有している。キーは、上側において、16進法のコードD28Aに相当する外形130を有している。したがって、キーは、16進法のコード4D75に相当する外形130を下側に有している。図から明らかであるとおり、キーの軸131の外形も、キー穴の外形も、垂直軸を中心として対称ではない。このことは、キーが長手軸を中心にして180°回転させられた場合に、回転子132のキー穴にはまらないことを意味する。結果として、キーの2つの外形が同じキー穴の外形を有する2つの異なる回転子に使用されることが防止される。これは、錠システムにおいて利用することができる一意の錠コードの数が増えるため、いくつかの場合に望ましいかもしれない。
【0049】
例:16個のピンが錠コードD28Aを形成するように回転子132に配置された場合、キーがロータ132に適合する。錠コードD28Aを有する回転子132が長手軸を中心にして180°回転させられた場合、この錠の錠コードは、4D75になる。キーは依然として回転子に適合する。しかしながら、2つの鏡像対称な回転子133および134のピンが、同じ錠コード4D75を形成するように配置された場合、キーは、図2Dの下部から明らかなとおり、回転子133にのみ適合する。
【0050】
実施例2
本発明の第2の典型的な実施形態による錠を、図4〜11を参照して、以下で説明する。この実施形態は、第1の実施形態に関連して説明したものと同じ種類のキーが使用されるが、デジタル/アナログ信号をデジタル/アナログのケーブル線または無線チャネルを介して送信できる装置によって種々の錠の設定を行うことができる2進法によってコードされた遠隔制御の錠システムに関する。この実施例の錠には、この目的のために、キーによって動かされたときに阻止、解放、または中立の各機能のうちのいずれか1つを有するように個別に垂直方向に制御されるロックピンを備えている電磁石によって制御される2つの部品が設けられている。
【0051】
図4が、錠の主要部を示している。図4Aが、回転子19に配置される複数のエレメントまたはピン18を側面から示している。図4Bが、ピン18および回転子19の断面を、正面図にて示している。図4Cが、固定子を縦断面にて示しており、図4Dが、固定子を標準的な錠ケースへの取り付けのための穴と回転子19および上下の電磁石のための充分な空間とを有する側から示している。上下の電磁石が、図4Fにおいて側面から示されている。上側の電磁石が、図4Eに正面図にて示されており、下側の電磁石が、図4Gに正面図にて示されており、個々の電磁石装置21によって制御される上側ピン20および個々の電磁石装置23によって制御される下側ピン22も示されている。
【0052】
図5Aが、ピンを備えた回転子19を上方から見て示している。図5Bが、回転子19を、電磁石の上側ピン20および下側ピン22の両方ならびに回転子のピン18を挿入することができる共通の回転子溝24とともに、側方から示している。ピン18は、回転子19に配置されたとき、実施例1とちょうど同じように重力によって下方へと引かれ、何らかの種類の固定子に配置されない限り、回転子19から脱落しようとする。回転子19が固定子に配置される場合、すべてのピン18が、図5Bに示されている位置に位置し、ピン18の下端が、溝の下部25に位置する。そのような回転子19に図5Cによるキーが挿入されると、先の実施例に従い、キー15上に2進法の1(すなわち、高い高さの外形26)を示すピンが、回転子18において持ち上げられ、これらのピン18の上部18が溝の上部27へと移動する一方で、キー上に2進法の0(すなわち、低い高さの外形28)を示すピン18は、溝の下部25にとどまる。結果としてのピン18の位置が、図5Dに示されており、上側の溝に位置するすべてのピンを、2進法の1を示すと称することができる一方で、下側の溝に位置するピンを、2進法の0を示すと称することができる。
【0053】
図6が、回転子19ならびに上下のピンが組み合わせられた電磁石の取り付けが、どのように実行されるのかを示している。図7Aは、縦断面の側面図であり、図7Bは、固定子および回転子19を通って得た断面の正面図である。ここでは、回転子19のすべてのピン18が、共通の回転子溝の下部に位置しており、電磁石によって制御されるピンはいずれも、共通の回転子溝のいずれにも位置していない。
【0054】
図8Aが、電気機械的に制御される下側のピン22が共通の回転子溝24へと上方に動かされた場合に、どのようにして回転子のピンに解放の機能(2進法の1)が与えられるのかを示している。この場合、図8A1および8A2による錠の解放を可能にするために、回転子のピン18をキーによって持ち上げなければならない。図8Bは、電気機械的に制御される上側のピン20が共通の回転子溝24へと下方に動かされた場合に、キーによって動かされたときにどのように回転子のピン18に阻止の機能(2進法の0)が与えられるのかを示している。図8B1が、そのようなピンがキーによって動かされていない場合に、回転子19を回転させることができる旨を示している一方で、図82Bは、共通の回転子溝24の上部において電磁石によって制御されるピン20と物理的に接触することによって、回転子の回転が防止される旨を示している。
【0055】
図8C、8C1、および8C2が、電磁石によって制御されるピンがいずれも共通の回転子溝24へは動かされていないという事実ゆえに、キーによって駆動されるときに、どのように回転子のピン18に中立の機能、すなわち阻止でも解放でもない機能が与えられるのかを示している。キーによって動かされるか否かにかかわらず、回転子のピンとの物理的な接触が生じえない。
【0056】
図9Aが、16進法による表示が設けられたキーエレメントで形成されたキーおよび対応する2進法によるキーのコードを示している。図9Bが、すべてのピンが中立「N」であり、すなわち錠が特定のキーの組み合わせに一致するようには設定されていない場合の電気機械的に制御されるピン20、22の設定を示している。図9Cが、錠が図9Aによるキーに合わせて設定されたときの上側ピン20および下側ピン22の位置を示している。
【0057】
図10Aが、ただ1つのキーの外形だけに一致するように設定された場合の電気機械的に制御されるピン20、22の設定を示している。この場合、いずれの位置も中立ではなく、すなわち上側ピン20および下側ピン22のいずれかが、回転子のすべての共通の回転子溝24へと動かされている。これは、一意のキーだけがこの錠に適合するように、回転子19の各々のピン18が阻止または解放のいずれかの機能(2進法の1または0)を有することを意味する。
【0058】
図10Bは、錠の4つの前方位置が、上側ピン20および下側ピン22のいずれも該当の回転子溝24へと動かされないことで、どのように中立「N」になるのかを示している。そのようであることで、開錠に関して、これらの位置のキーの外形は無関係になり、図10Bの右側の列に提示されたキーの組み合わせに対応する外形を持つキーがすべて、この錠に適合する。
【0059】
図11が、どのようにして実施例2による錠を、例えば携帯電話機30および/またはパーソナルコンピュータ31によって、デジタル/アナログチャネル29を介して制御できるのかを概略的に示している。携帯電話機30および/またはパーソナルコンピュータ31が、例えば錠コードをチャネル29を介して錠に組み合わせられた受信器へと送信することができる。受信器が、錠コードを制御ユニットに転送でき、制御ユニットが、送信された錠コードに従って上下のピンを設定することができる。携帯電話機30および/またはパーソナルコンピュータ31が、キーの手作業での作成に必要なデータ32を計算および決定するための単純なソフトウェアを備えることができる。さらに、携帯電話機30および/またはパーソナルコンピュータ31は、新規な錠システムを製作する必要がある場合、既存のシステムを拡張または変更すべき場合、ならびに大規模または小規模のキーシステムにおいて個々の錠コード34を設定する目的のために、とりわけキー33の数およびキーのコード34に関する情報を提供することもできる。さらに、携帯電話機30および/またはパーソナルコンピュータ31を、新規な鍵システムを設計するときにキーの数およびキーのコードを決定するために使用することもできる。
【0060】
実施例3
本発明の第3の典型的な実施形態による錠を、図12〜14を参照して、以下で説明する。この実施例は、本発明による2進法でコードされた機械式の錠システムの原理を、キーによって駆動されて錠を開閉する装置に対して(第1および第2の実施例のピン3、4、5、18とちょうど同じように)阻止、解放、または中立の機能を有することができるようにそれぞれが設計されたディスク40の形態のエレメントを使用する(上記の種々の機能、すなわち錠の設定は、上述の第1の実施例のようにピンの向きを変えることによってではなく、ディスク40の所定の回転によって達成される)ことによって、どのようにディスクタンブラー錠に適用できるのかを説明する。したがって、そのような錠のためのキー55は、第1および第2の実施形態において使用される持ち上げまたは非持ち上げの外形の高さの代わりに、回転するエレメント50または非回転のエレメント51で形成される。
【0061】
図12が、何らかの種類の固定子に配置された回転子41に実施例1のピンのように連続的に配置された複数のディスク40を示している。
【0062】
回転子41は、展開位置と引っ込み位置との間を移動できるアーム42を備えている。展開位置において、アーム24の一部が回転子41の外周面から突き出す。引っ込み位置において、アーム42は、外周面から突き出す部分を有さない。
【0063】
アーム42が展開位置にあるとき、回転子41の回転が阻止され、したがって錠はロック状態である。アーム42が引っ込み位置にあるとき、回転子41は回転可能である。引っ込み位置は、アーム42のための空間が回転子41に生じるように錠のディスク40がキーによって回転させられたときに実現される。この実施例においては、各々のディスク40を、キー55が回転させられたときに(1)上述のような空間が生じ、(2)上述のような空間の発生が防止され、あるいは(3)前者も後者も生じないように、3つの異なる回転位置にあらかじめ設定することができる。錠にとって正しいキーが使用され、この正しいキーが回転させられたときに、ディスク40がアーム42のための空間を生じさせ、あるいはそのような空間を維持することを、理解できるであろう。
【0064】
あらかじめ設定される回転は、各々のディスクに組み合わせられた装置44によって達成され、装置44は、3つの切り欠き46を備えており、装置44をロックすべく下部アーム47を3つの切り欠き46に移動させることができる。各々のディスクを、開錠時にキー55によって時計方向に回転させることができ、各々のディスクに組み合わせられたばね48によって反対方向に回転させることができる。
【0065】
キー55は、図12に側面図および正面図にて示されている回転エレメント50および非回転エレメント51で構成され、正面図が、回転エレメント50がキー穴と同じ形状を有しており、したがってキー穴の縁に係合してキー55の回転時にディスク40を回転させる一方で、非回転エレメント51が円形の形状であって、キー穴よりもわずかに小さい直径を有しており、キー55の回転時にディスク40を回転させることができないことを、明確に示している。
【0066】
この実施例において、キー55は、エレメント50、51をキー軸52へと滑らせることによって製作され、キー軸52の断面が、ここでは四角形であるキーエレメント50、51の中央の穴に一致している。エレメント50、51は、ロック機構54によって軸52へと固定され、ロック機構54を、最も単純な形態においては、先端にねじ山が設けられた軸52へとねじ込むことができる。これにより、キー55を、先の実施例と同様に、各々が2進法による符号エレメント50、51を表わしている個々のエレメント50、51から製作することができる。この例では、回転エレメント50が、2進数の1を表わし、非回転エレメント51が、2進数の0を表わす。キー55の組み立ておよびキーコードの管理の際の実際の取り扱いを容易にするために、キーを、この場合にも先の実施例と同様に、4つの2進数で構成されるエレメントで形成することができ、エレメントに図12による16進法での表示(エレメント53が「A」と表示されている)を与えることができる。2進法および10進法でのコード56を有する最終的なキー55の例が、図12の下部に示されている。
【0067】
このように、キー55は組み立て式であるが、キーを固定のキー外形を有するように設計することも可能である。そのようなキーを、例えば旋削または切削作業で一部品にて形成することが可能である。
【0068】
図13および14が、この実施例において、どのようにして錠の設定が、後に開錠に使用されるものと同じキーを使用して行われる(すなわち、実施例1と対照的に、錠コードの変更のために回転子を取り出す必要がない)のかを示している。図13が、錠の設定の際のディスク40の種々の位置を示しており、図14が、実際に開錠が行われるときのディスクの位置を示している。
【0069】
図13Aが、錠が特定のキーに合わせて構成されていないときのディスクの位置を示している。図13Bが、どのようにして下側アームが下方へと動かされ、装置44が解放されて回転可能になるのかを示している。仕上がったキーが錠に挿入され、反時計方向に回される。結果として、キー上の2進法の1(すなわち、回転エレメント)に対応するディスクが、図13Cに従って回転させられ、同時にアームが上方へと動かされ、回転子の回転が防止される。キー上の2進法の0(すなわち、非回転エレメント)に対応するディスクは、キーによって回転させられることがなく、初期の位置Aにとどまる。これは、すべてのディスクが2進法の1または0を示し、すなわち実施例1および2と同様に解放または阻止の機能のどちらかを示すことを意味する。錠をいくつかの異なるキーによって開錠でき、すなわち錠システムの一部とすることができるようなやり方で設定できるためには、1枚以上のディスクが中立(すなわち、キーによって駆動されるときに解放も、阻止も行わない)のままでなければならない。これが、実施例1においては、少なくとも1つの中立ピンによって達成され、実施例2においては、上側および下側のピンのいずれも回転子溝に挿入されないという事実によって達成される。今回の実施例では、中立の機能が、ディスクがこの目的のために設計されたキーによって図13Eによる位置へと回転させられることによって達成される。この位置から回転させられるディスクは、アームの解放も阻止も行わず、すなわち中立の機能を有する。これは、いくつかの互いに異なるキーに適合するように設定された錠が、図13Fによる3つの異なる位置のすべてへと前もって設定されたディスクを有することを意味する。
【0070】
図14Aが、2進法の1に対応するディスク、すなわち解放機能を有するディスクの機能を示している。このディスクの特徴は、開錠を可能にするためにキーによって駆動されなければならず、すなわち開錠を可能にするために回転させられなければならない点にある。図14A1が、回転子の回転を防止するアームが、ディスクが回転させられるときにどのようにばね(図示されていない)によって下方に動かされ、回転子の回転を可能にするのかを示している。すなわち、図14A1は、実際には、どのようにディスクがキーによって回転させられ、アームのための空間が生じて、アームが引っ込み位置をとることができるのかを示している。これは、図14A2から明らかなように、キーの回転を続けることで、回転子を回転させることができ、このさらなる回転の際に、ディスクの回転子に対する位置は不変であることを意味する。
【0071】
錠の設定(上記を参照)の際にキーによって回転させられることがなかったディスクが、図14Bに示されており、キー上の2進法の0に相当する。開錠のための条件は、図14B1に示されるとおり、これらのディスクが開錠時にキーによって駆動されず、すなわち回転させられないことである。したがって、開錠のための条件は、キーが回転させられるときに、これらのディスクの回転子に対する位置が変化しないことである。万が一にディスクが図14B2に示されているように回転させられると、アームの回転子への下方移動が妨げられ、この回転子の回転が阻止される。
【0072】
他方で、図14Cによる中立位置へと設定されたディスクは、図14C1に示されるように駆動されないままであることができ、あるいは錠の開錠に影響を与えられることなく図14C2に示されるように回転することができる。
【0073】
本発明のさらなる態様を、以下で説明する。
【0074】
第1のさらなる態様によれば、貫通のキー穴を備える錠のための回転子が提供される。ここで、貫通は、キー穴が回転子を軸方向に貫いて、回転子の全長にわたって延びていることを意味する。貫通のキー穴は、いくつかの回転子から長い回転子を組み立てることを可能にする。また、貫通のキー穴は、ただ1つの回転子において異なる長さのキーの使用を可能にする。回転子よりも長いキーを、回転子の後端から突き出すようなやり方で、回転子を貫いて挿入することができる。さらに、貫通のキー穴は、さまざまな回転子の長さの錠を同じ錠システムにおいて使用できるようにする。そのような錠システムは、例えば、一般的に使用される玄関および事務所扉のための伝統的な長さの錠を備えることができる。短いドア錠が、例えば錠ケースまたは錠ハウジングを備えることができ、そのような錠ケースおよび錠ハウジングが、キーをこのケースまたはハウジングを貫いて延ばすことができるような奥行きを有することができる。さらに、錠システムは、例えばキャビネットおよび机の引き出しに合わせたより短い錠を備えることができる。この種の錠は、多くの場合、錠ケースを有さない。
【0075】
好都合には、貫通のキー穴を有する回転子を、実施例1に関して上述した種類の錠の技術に組み合わせることができる。しかしながら、貫通のキー穴を有する回転子を、本発明の独特の態様と考えることも可能であり、従来からのピンタンブラー錠など、伝統的な形式の錠において使用することが可能である。
【0076】
次に、本発明のこの第1のさらなる態様の一実施例を、貫通のキー穴を有する回転子100を示している図15を参照して説明する。図15aが、回転子100の側面図であり、図15bが、回転子100の正面図であり、図15cが、回転子100の後端の図であり、図15dが、図15cの方向Dから見た回転子100の一部分の図である。回転子100は、実施例1の回転子2と同様に、固定子と協働するように構成された一式のピンを備えており、各々のピンが、他のピンとは無関係に、キーによる駆動によって阻止となる状態と、キーによる同じ駆動によって解放となる状態との間で変更可能に配置される。
【0077】
回転子100の端部が、回転子100の外周面を超えて放射状に延びて外形101を形成している4つの半径方向の突起を備えている。さらに、回転子100は、ラッチなどの錠ケースの他の部品と協働するように構成された外形102を備えている。外形101および102を有する回転子100を、鋳造または金属射出成型によって一部品にて形成することができる。回転子100の前部に、回転子100の外周面を超えて半径方向に広がる周状のフランジまたはリムが設けられている。回転子100を、外形101に一致する内側の外形を有する軸方向の貫通穴を有する固定子において使用することができる。好ましくは、固定子の長さが、回転子の外周面の長さに等しく、すなわち前部のフランジと後部の半径方向の突起との間の距離に等しい。回転子100を、突起を固定子の溝において滑らし、次いで回転子の外形101が固定子の内側の外形に重ならず、かつピンが固定子の溝と相互作用できるように回転させるようなやり方で固定子に挿入することによって、固定子に固定することができる。したがって、この種の固定子は、軸方向に延びる4つの半径方向の固定子溝を内側に備える。しかしながら、回転子100の後端に位置する突起の数は、4つよりも多くても、少なくてもよい。回転子が、例えば突起を2つだけ有してもよい。そのような回転子を、実施例1の固定子と同様の固定子に挿入して取り付けることができる。
【0078】
このように、回転子100および固定子の溝の設計が、固定装置を取り付ける目的のために回転子から材料を取り除くことなく、回転子を固定子に一体的に取り付けることを可能にする。結果として、貫通のキー穴によって材料の量が少なくなるという事実にもかかわらず、高強度の回転子100をもたらすことができる。加えて、回転子100を一部品にて製造することによって、製造および取り付けのプロセスがより効果的にされる。強度の要件が厳しくない場合には、回転子100をいくつかの部品から製造することも可能である。
【0079】
図16が、キーのコード化された外形の全長106にわたる錠105、およびキーのコード化された外形の全長の一部分108にのみわたるより短い錠107の両方に適合するキー104の実施例を示している。すなわち、キーの一部分109が、錠107の回転子から突き出す。錠105、107の回転子は、キーのコード化された外形の第1の部分108に対応するコードを有する。これらの回転子は、どちらの場合もキー104を回転子へと最後まで挿入できるため、よりユーザに優しい。
【0080】
このように、貫通のキー穴を有する回転子は、回転子よりも長い長さのキーの使用を可能にする。さらに、貫通のキー穴を有する回転子を、後述される他の用途においても使用することができる。
【0081】
伝統的に、錠はドアの両側に取り付けられる。なぜならば、ドアを両側から施錠できるようになるだけでなく、ドアパネルおよび錠ケースへの錠の設置が、ドアの両側の錠がドアおよび錠ケースを貫いて延びる貫通ボルトによって一体に接合されるという事実によって、より丈夫になるからである。この二重の取り付けによって可能にされる頑丈な設置を、所望であれば、例えば物置または資料室など、閉じた空間へのアクセスを提供するが、内側からの施錠が不要であるドアにおいても、盲目の円柱(すなわち、錠の機能を持たない円柱)の形態の二重の取り付けをドアの内側に設けることによって実現することができる。伝統的な錠の技術は、通常は、錠をドアの前面に取り付けることを必要とする。そのような取り付けの欠点は、ドアの前面の錠が、いたずらおよび改ざんの容易な目標となる点にある。
【0082】
図15の回転子100に相当する設計を有する回転子は、錠を保護された様相でドアの内側に取り付けることを可能にする。これが、錠111が内側に配置されたドア112を示す図17において説明される。盲目の円柱110が、ドア112の前側に取り付けられている。回転子が貫通のキー穴を有するという事実ゆえ、キー113を、盲目のシリンダ110を介して錠ケース114を通し、背後から内側の回転子へと挿入することができる。これは、盲目の円柱110を、泥棒によるいたずらに耐えるように可能な限り最良なやり方で設計できることを意味する。円柱110を、例えばドアから飛び出さないように充分に短いが、ドアの外表面115と同一面に位置し、あるいはドアの外表面115の内側に位置するように、製作することができる。さらに、円柱110を設計するとき、他の製造方法または材料も考えることができる。同時に、錠111のいたずらおよび改ざんも、錠111そのものにアクセスするために盲目の円柱110だけでなくドア112および錠ケース114も攻略しなければならないため、より困難になる。さらなる利点は、錠111を、外からのいたずらの結果として錠ケースから壊して外される恐れなく、かなり長くできる点にある。さらに、ドアの内側に設けられる錠が、エレメントに対して保護されるため、寿命を大きく延ばすことができる。
【0083】
図18は、図17に示した形態の保護された様相で取り付けられた錠において使用されるように設計されたキーの実施形態を示している。キーの外形付けられた前部135が、例えば図2Bに関して説明したものと同様の2進法による外形を有している。この前部135が、図18に示されるとおりに外部から盲目の円柱を通り、錠ケースを介して錠へと挿入され、後端から回転子へと挿入される。キーの中央部137は、キーのコード化された前部135が回転子において軸方向の正しい位置に位置するように保証するために、回転子に当接してストッパを形成するように設計されている。キーの内側部分136は、この部分がキーの回転時に盲目の円柱において回転できるように設計されている。キーの内側部分136は、例えば円形の外形を有することができる。図2Bに関して説明したキーと同様に、このキーを、キーの変更が可能であるように種々のエレメントから組み立てることが可能であり、あるいは固定の外形を有するように設計することができる。
【0084】
錠のさらなる実施形態が、図19に示されており、図17の外側の盲目の円柱が、固定子−回転子の組み合わせ116で置き換えられている。したがって、錠が、外側および内側の回転子を備えている。外側の回転子および内側の回転子の両方が、すでに述べたような貫通のキー穴を有する形式の回転子である。外側から錠に挿入されるキーが、外側の回転子の前端に挿入され、内側の回転子の後端から内側の回転子へと延びている。
【0085】
そのような錠において使用されるように構成されたキーが、図20に示されている。キーは、外側の回転子に適合する後部の外形138と、内側の回転子に適合する前部の外形139とを有している。キーのそれぞれの外形が回転子において正しい軸方向の位置に位置するように保証するために、スペーサディスク142を、エレメントの間に配置することができる。このスペーサは、キーが錠に挿入されたときに錠ケースに位置するため、外形を備える必要がない。したがって、スペーサの長さを、錠ケースおよびドアの種々の厚さに合わせることができる。さらに、このスペーサは、内側の回転子の後端に当接するストッパとして機能することができる。さらに、スペーサを、2つの部分からなる錠のためのキーを形成するために、各々が別々の錠に適合する2つのキー部材を一体に接合するために使用することができる。2つの別々の二重の外形のキー部材を16通りのやり方で一体に接合することができる。すでに述べたキーと同様に、このキーを、キーの変更が可能であるように種々のエレメントから組み立てることが可能であり、あるいは固定の外形を有するように設計することができる。
【0086】
このように、図19の錠および図20のキーは、泥棒が内部へのアクセスを得るために両方の回転子を攻略しなければならないため、高度のセキュリティを提供しつつ、多数の組み合わせを可能にする。そのような設備において、組み合わせの数は、2つの錠における組み合わせの数の積に等しい。標準的な長さの回転子を使用することによって、二重取り付けの錠において、40億を超える組み合わせを利用することができる。
【0087】
各々の回転子に、別々の錠の組み合わせを備えることも可能であり、このことは、錠を両側から開くことができるが、ドアをどちらの側から施錠または開錠すべきかに応じて、各々のドアに2つの異なるキーが必要とされることを意味する。
【0088】
泥棒が、図17による錠が取り付けられた通路とは異なる通路を介して部屋に押し入った場合、ドアを内側から開けることができないことが望ましい。内側から、泥棒が固定子を錠ケースに取り付けているボルトにアクセスし、錠を破ることができる。
【0089】
図21は、内側からの錠の攻略をさらに難しくする保護された様相で取り付けられた錠の一変種を示している。この変種によれば、錠が、内側固定子部分148と外側固定子部分150とを有する固定子を備えている。回転子147が、内側固定子部分148および外側固定子部分150を貫いて延びている。回転子147および2つの固定子部分148、150が、図15、17、および19に関して説明した実施形態に従って設計されている。したがって、回転子147が、内側および外側固定子部分148、150を一緒に施錠する。内側固定子部分148は、ボルト149によって錠ケースに取り付けられている。外側固定子部分150は、ボルト151によって内側固定子部分148へと取り付けられている。外側固定子部分150が、ボルト149へのアクセスを防止する。回転子150が内側固定子部分143および外側固定子部分150を一緒に施錠するという事実ゆえ、ボルト151は、錠の強度を低下させることなくボルト149よりも細くてもよい。このように、外側固定子部分150を、内側固定子部分143を覆う蓋として機能すると称することができる。これは、ボルト149にアクセスするために、固定子部分148、150を分離させることができるように、最初に回転子147を取り除かなければならないことを意味する。この作業には、一致するキーが必要である。したがって、この設計を、錠にカバー板を備える必要なく、内側に取り付けられた錠の内側からの攻略をより困難にするために使用することができる。これは、そのようなカバー板が、その薄さゆえに多くの困難を伴うことなく攻略されうるがゆえに、好都合である。
【0090】
この2つの部分からなる固定子は、回転子を固定子に挿入でき、かつ固定子から取り出すことができるという事実によって可能にされる。固定子を、3つ以上の部分から構成することも可能である。したがって、複数の固定子部分を一体に接合することによって、長い固定子をもたらすことができる。このように、回転子の設計が、組み立て式の固定子の提供を可能にする。
【0091】
図15に関して説明したとおり、回転子100は、4つの溝を備える固定子において使用されるように構成されている。この形式の固定子は、回転子100と同じ設計の回転子を4つの異なる向きに固定することを可能にする。これは、特にキャビネットの扉、机の引き出し、および収納箱など、錠ケースのための充分な空間が存在しないドアおよびハッチのための錠における使用において、好都合である。これを、さらに詳しく後述する。
【0092】
机の引き出しおよびキャビネットの扉などに使用されるように意図された伝統的な種類のピンタンブラー錠においては、回転子の後端に、通常は、回転子の回転とともに回転して引き出しまたは扉の施錠を可能にする金属薄板などが設けられる。さらに、そのような錠の固定子は、通常は、ばねおよび上部ピンの両方を備えており、2つの異なる位置においてキーの取り出しを可能にする少なくとも2つの別々のピン溝を有さなければならない(1つのピン溝が、金属薄板がキャビネットを施錠する位置に位置しているときに錠からのキーの取り出しを可能にし、1つのピン溝が、金属薄板が開錠位置にあるときに錠からのキーの取り出しを可能にする)。例えばキャビネットの扉に使用されるそのような伝統的な錠においては、2つの別個の鏡像反転の形態の錠を、右手の錠および左手の扉のそれぞれのために設計しなければならない。基本的には、右手の錠を、例えば施錠位置において右にではなくて下方に向くように金属薄板の出発角度を変更することによって、左手の扉において使用することができる。しかしながら、これは、キャビネットの底部に金属薄板を背後で回転させることができる空間が存在することを必要とするが、常にそのようであるとは限らない。キャビネットの扉、机の引き出し、およびチェストの蓋は、多くの場合、施錠を生じさせるために金属薄板のさまざまな向きまたは位置を必要とする。公知の技術がわずかに2つの異なる位置に限られているという事実に照らし、これらの種々の用途に適合するように、さまざまな錠を製造しなければならない。
【0093】
図22が、回転子を備える錠202を示している。回転子は、図15の回転子100と同じ種類であり、したがって貫通のキー穴を備えている。金属薄板201が、回転子に回転不可能に取り付けられている。使用時、金属薄板がラッチとして機能して、例えば机の引き出し、キャビネットの扉、またはチェストを施錠することができる。
【0094】
図22Aが、左から右へと、側面から見た錠および後方から見た同じ錠を示しており、ならびに金属薄板201が図22Aに従って上方を向いているときに回転子エレメントの突き出し部が位置する溝203が示されている。この錠を、例えば机の引き出しの錠として使用することができる。金属薄板が上方を向いており、かつ回転子にキーが挿入されておらず、あるいは誤ったキーが挿入されているとき、回転子エレメントの少なくとも1つの突起が溝203または反対側の溝に位置して回転子の回転を防止し、すなわち机の引き出しが施錠されている。
【0095】
図22Bが、同じ錠がどのようにして左手のキャビネット扉において使用されるのかを、同じやり方で示している。金属薄板が(前方から見て)右方を向いており、かつ回転子にキーが挿入されておらず、あるいは誤ったキーが挿入されているとき、回転子エレメントの少なくとも1つの突起が溝204および/または反対側の溝に位置して回転子の回転を防止し、すなわちキャビネット扉が施錠されている。同じことが、同じ回転子が図22Cに示されるように右手のキャビネット扉において使用され、金属薄板が施錠位置において左方を向く場合にも当てはまる。
【0096】
最後に、図22Dが、同じ錠をどのようにしてチェストの蓋、キャビネットの巻き込み扉、またはルーバー扉に取り付けることができるのかを示している。この目的のために、図22Dに示されるように、わずかに異なる設計の金属薄板を回転子に備えることができる。薄板が図22Dによる向きにあり、かつ錠にキーが挿入されておらず、あるいは誤ったキーが挿入されているとき、回転子エレメントの少なくとも1つの突起が溝206または反対側の溝に位置し、すなわち蓋が施錠されている。
【0097】
このように、4つの溝を有する固定子、およびこれに組み合わせられた回転子を、固定子および回転子にいかなる変更も加えずに、キャビネットの右手および左手の扉、机の引き出し、およびチェストの蓋のための錠において使用することができる。これにより、ただ1つの錠を、多数の異なる用途に使用することができる。
【0098】
図22Dにおいては、4つの溝を有する固定子が、貫通のキー穴を有する回転子との組み合わせにおいて例示されている。しかしながら、4つの溝を有する固定子を、実施例1による回転子2など、貫通のキー穴を有さない回転子とともに使用することも可能である。
【0099】
本発明の第2のさらなる態様によれば、固定子およびこの固定子に回転可能に配置される回転子を有しており、回転子が、固定子との協働の目的のために、開錠を可能にするためのキーによって駆動されるように構成されたいくつかのエレメントを備えている機械式または電気機械式の錠であって、回転子の前記エレメントのすべてが、駆動時に所定の距離だけ動かされるように設計されており、この距離が、各エレメントについて同一であり、各エレメントは、非駆動または正しくない駆動の結果としての阻止位置、正しい駆動の結果としての解放位置、または駆動が行われたか否かに関係しない中立の非阻止位置のいずれかを固定子に対してとるように構成されていることを特徴とする錠が提供される。
【0100】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、回転子のエレメントが2種類である。第1の種類のエレメントは、中央のキー穴と、平坦な第1の短辺と、施錠ラグを突き出させている第2の短辺とを備えるピンの形状を有しており、施錠ラグが、ピンの取り付けの位置に応じて、非駆動時に固定子の下部の溝に施錠の様相で係合し、正しく駆動されたときにこの下部の溝から持ち上げられるように構成され、あるいは非駆動時に固定子の上部の溝の外へと解放するように移動し、正しくない駆動の際に施錠の様相でこの上部の溝に係合するように構成されている。第2の種類のエレメントは、中央のキー穴と、施錠ラグを持たない平坦な2つの短辺とを備えるピンの形状を有しており、したがってこのピンは、常に中立の非阻止の位置をとる。
【0101】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、回転子のエレメントが、キー穴と2つの短辺とを備えるピンの形状を有しており、短辺の各々が、施錠ラグを突き出させており、各々のピンが、自身の施錠ラグによって、各々のピンについて下側および上側にペアにて配置された恒久的に設定可能な阻止エレメントに係合するように構成されている。下側の阻止エレメントが展開位置をとり、上側の阻止エレメントが引っ込み位置をとっている場合、ピンは、駆動されていないとき、下側の阻止エレメントに施錠の様相で係合し、正しく駆動されたときに、開錠の様相で持ち上げられて下側の阻止エレメントから離れる。上側の阻止エレメントが展開位置をとり、下側の阻止エレメントが引っ込み位置をとっている場合、ピンは、誤って駆動されたときに、上側の阻止エレメントに施錠の様相で係合し、駆動されていないときに、上側の阻止エレメントとの係合から離れる。下側および上側の両方の阻止エレメントが引っ込み位置をとっている場合、ピンは、駆動されても、駆動されなくても、阻止エレメントに係合することがなく、すなわち中立の非阻止位置をとっている。この第2のさらなる態様の実施形態によれば、前記阻止エレメントを、電磁石によって動かすことができる。
【0102】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、回転子のエレメントが、中央のキー穴を貫いて延びる中心軸を中心にして回転子に形成された穴において回転できるディスクの形状を有している。各々のディスクが、穴の半径に一致する半径を有している第1のディスク部分と、この第1のディスク部分に隣接する半径方向の切り欠きと、この切り欠きに続き、前記第1のディスク部分におおむね一致する角度範囲に広がり、前記第1のディスク部分よりも小さい半径を有している第2のディスク部分と、この第2のディスク部分に隣接し、この第2のディスク部分におおむね一致する角度範囲に広がり、この第2のディスク部分から出発して穴の半径に一致する半径まで徐々に大きくなる半径を有している第3のディスク部分と、この第3のディスク部分に隣接する別の半径方向の切り欠きと、この切り欠きに続き、前記第1のディスク部分まで広がっているより小さい半径の第4のディスク部分とを有しており、第4のディスク部分が、他の3つのディスク部分の合計よりも大きい角度領域に広がっている。アームが回転子に配置され、第1および第3のディスク部分の半径方向に高い部分との協働において、固定子の溝に施錠の様相で係合するように構成され、第2のディスク部分の半径方向に低い部分との協働において、アームが前記溝との係合から離れるように構成されている。ディスクの角度位置を、ディスクが前記第2のディスク部分の広がりの角度に一致する角度だけ回転させられたときに、特定のディスクを施錠の目的でアームに当接させることができ、あるいは開錠の目的でアームから離すことができ、特定のディスクを開錠の目的でアームから離すことができ、あるいは施錠の目的でアームに当接させることができ、特定のディスクに中立位置、すなわちアームから離れた開錠位置を常にとらせることができるように、相互に調節することができる。
【0103】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、上述の実施形態のいずれかによる錠のためのキーであって、キーの外形を少なくとも2つの異なる寸法を使用して組み立てることができ、第1の寸法は、施錠/開錠を可能にするために動かさなければならない錠のエレメントおよび中立エレメントを駆動するように構成され、第2の寸法およびその他の寸法が、錠のいかなるエレメントも駆動しないように構成されており、駆動および非駆動の寸法の互いの並びが、2進法によるコードへと直接変換することが可能なキーの外形を形成し、あるいは逆に、2進法によるコードを相当するキーの外形へと変換できることを特徴とするキーが提供される。
【0104】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、キーが、回転子の各々のエレメントについて、開錠を可能にするために動かされなければならないエレメントを駆動するように構成されたキー部材、または開錠を可能にするために動かされてはならないエレメントを駆動しないように構成されたキー部材を備え、随意により中立エレメントを駆動し、あるいは駆動しないように構成されたキー部材を備えている。
【0105】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、キーが、種々の遊離のキー部材を非回転の様相でキー本体に取り付けることによって調整可能である。
【0106】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、遊離のキー部材が、回転子に連続的に配置された複数のエレメントと協働するように意図されたグループへと分割される。
【0107】
この第2のさらなる態様の実施形態によれば、グループが、16進法によってコードされる。
【0108】
本発明の種々の態様を、以下の定義に照らしてより容易に理解することができる。
機械式の錠:機械式のキーによってのみ開くことができる錠。
機械式のキー:錠を開くために物理的な形状を利用するキー。
機械式のキーのコード:錠を開くために必要なキーの物理的形状の表現。
個別の錠:錠システムの一部ではない錠。
システム錠:錠システムの一部である錠。
錠システム:異なる機械式の錠コードを持つ少なくとも2つの錠を含む錠と、少なくとも1つの共通のキーとのグループ。
機械式の阻止システム:機械式の錠および機械式のキーを含むシステム。
固別のキーを持つ機械式の錠:1つの機械式のキーのコードにのみ一致する機械式の錠。
機械式の錠のコード:固別のキーを持つ機械式の錠、機械的構成、すなわち機械的な駆動によってのみ満たすことができる開錠のための基準を定めるように配置されるキーによって駆動される錠のエレメントの配置の様相の表現。換言すると、機械式の錠のコードが、錠を開くためにどの機械式のキーのコードが必要であるかを決定する。
単一コードのキー:固別のキーを持つ機械式の錠のみを開くことができるキー。
システムのコードを持つ機械式の錠:コードの異なる少なくとも2つの機械式のコードを持つキーが適合できる機械式の錠。
機械式のシステム錠のコード:システムのコードを持つ錠の機械的な設定、すなわち機械的な駆動によってのみ満たすことができる開錠のための種々の基準を定めるように配置されるキーによって駆動される錠のエレメントの配置の様相の指定。機械式のシステム錠のコードは、種々のキーのうちのどれがシステムのコードを持つ個別の機械式の錠を開くことができるのかを定める。
機械式のシステムキー:異なる機械式の錠コードを有する錠を開くことができるキー。
マスターキー:錠システムのすべての錠を開くことができる機械式のシステムキー。
機械式の可変錠:製造時に錠コードが設定されるがゆえに製造されたとき互いに相違する錠。この錠コードをユーザが変更することはできない。
機械式の統一錠:最初の機械式の錠コードが実際の製造時には設定されず、後にユーザによって設定されるがゆえに、製造されたときに互いに相違しない錠。
機械式の手動で設定変更可能な錠:機械式の錠のコードまたは錠のコードを特殊な工具を必要とせずに専門家でない者が変更できる機械式の錠。
機械式の遠隔操作で設定変更可能な錠:機械式の錠のコードまたはコードを例えば何らかの種類の遠隔制御によって、手作業で錠を操作することなく変更できる機械式の錠。
機械式の錠のシステムコード:錠システムに含まれる錠のためのすべての機械式の錠のコードの集まり。
機械式のキーのシステムコード:錠システムのすべてのキーコードの表現。
コード用語:機械式の錠およびキーのコードを表現する言語。
図1
図2
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22