(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排水処理装置において、液体の移送と移送量の確認とを行う場合には、そのための構成が排水処理装置内において占めるスペースが大きい場合が多かった。例えば、継手部材を用いてパイプの途中に計量樋を設ける場合には、継手部材と計量樋とのためのスペースが大きいので、狭い場所で移送量を確認することが困難であった。
【0005】
本発明の主な利点は、液体の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態]
排水処理装置であって、
第1処理槽と、
水を好気処理する第2処理槽と、
前記第1処理槽の水を吸入する吸入口を有し、前記吸入口から吸入した水を前記第2処理槽に移送するポンプと、
消毒槽と、
前記第2処理槽で処理された後の水を前記消毒槽へ移送する移送流路と、
前記第1処理槽と前記第2処理槽との間を仕切る仕切板と、
前記仕切板に設けられ、前記ポンプによる移送方向とは反対の前記第2処理槽から前記第1処理槽へ、前記ポンプによって前記水を好気処理する前記第2処理槽に移送された水の一部を戻す戻し堰と、
を備え、
前記戻し堰は、堰の高さを調整可能な可動堰であり、
前記移送流路とは異なる前記戻し堰の高さを調整することによって、
前記高さが調整された前記戻し堰とは異なる前記移送流路を流れる水の水位が調整されて、前記移送流路を流れる水の単位時間当たりの量である移送量が調整され、
前記移送流路は、前記移送量を確認するための基準であって、前記移送量が多いほど高くなる前記移送流路における水位の高さの基準を示す基準部を有する、
排水処理装置。
【0007】
[適用例1]
排水処理装置において液体の移送に利用される移送パイプであって、
液体が流れる流路を形成するパイプ部と、
前記パイプ部に固定されたフランジと、
前記パイプ部の外周面に形成されたネジ部であって、前記フランジと、前記ネジ部にねじ込まれたナットとによって前記移送パイプとは異なる他の部材を挟み込むことによって前記移送パイプと前記他の部材とを互いに固定するためのネジ部と、
前記液体の液面に対して前記液体の液位の高さの基準を示す基準部と、
を備える移送パイプ。
【0008】
この構成によれば、フランジと、ネジ部にねじ込まれたナットとの間に他の部材を挟み込むことによって、移送パイプと他の部材とを容易に互いに固定することができる。この結果、移送パイプの固定に要するスペースを低減することができる。さらに、この移送パイプを通じて、液体の移送を容易に行うことができる。ここで、この移送パイプは、液体の液面に対して液体の液位の基準を示す基準部を備えている。その結果、別途、計量樋といった計量装置を設けることなく、液面と基準部とを比較することによって、液体の移送量を容易に確認することができる。これらの結果、液体の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の移送パイプであって、さらに、
前記パイプ部に形成された堰であって、前記堰の一方側から他方側へ前記液体が流れる開いた部分である流出部を有する堰を有する、
移送パイプ。
【0010】
この構成によれば、適切な移送量が少ない場合であっても(例えば、1L/min程度)、移送量の変化に対する水面の高さの変化を大きくすることができるので、ユーザは、移送量が適切であるか否かの確認を容易に行うことができる。
【0011】
[適用例3]
適用例2に記載の移送パイプであって、
前記堰は、前記流路と交差する板状部である、
移送パイプ。
【0012】
この構成によれば、移送パイプにおける堰の設置に要するスペースが過大となることを避けることができるので、液体の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の移送パイプであって、
前記基準部は、前記液体の液位の高さの基準を示す立体部分を含む、
移送パイプ。
【0014】
この構成によれば、基準部に対する微生物膜等の付着によって基準が分からなくなる可能性を大幅に低減できる。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の移送パイプであって、
前記基準部は、前記パイプ部の端部に設けられており、
前記パイプ部の前記端部の前記基準部よりも上側の部分の少なくとも一部は、前記基準部の上方を覆わないように、前記基準部よりも手前で終わっている、
移送パイプ。
【0016】
この構成によれば、移送パイプの端部に設けられた基準部を、移送パイプの上方から観察することができるので、液体の移送量の確認が可能な状態を維持しつつ、移送パイプを横から観察することが困難であるような狭い場所に移送パイプを配置することができる。この結果、液体の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の移送パイプであって、
前記基準部は、第1の基準部と、前記第1の基準部よりも低い位置に形成された第2の基準部とを、含む、
移送パイプ。
【0018】
この構成によれば、第1基準部から第2基準部までの液位の範囲を適正範囲として利用することができるので、液位が適正であるか否かの判断を容易に行うことができる。そして、そのような判断を可能とする構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0019】
[適用例7]
適用例2に従属する場合の適用例6に記載の移送パイプであって、
前記堰は、前記流路の下方の一部分を堰き止めるとともに、上端面を含む第1段部と、前記上端面よりも低い位置にある上面を有する第2段部と、を含み、
前記第1基準部は、前記第1段部の前記上端面を含み、
前記第2基準部は、前記第2段部の前記上面を含む、
移送パイプ。
【0020】
この構成によれば、堰が、流路の下方の一部分を堰き止めるとともに、第1段部と第2段部と有することによって、第1基準部と第2基準部とが形成される。従って、第1と第2の基準部を形成する堰の大きさが過剰に大きくなることを回避できるので、液体の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0021】
[適用例8]
排水処理装置であって、
第1壁を含む壁によって囲まれた第1処理槽と、第2壁を含む壁によって囲まれた第2処理槽とを含む複数の処理槽と、
前記第1処理槽で処理された水を前記第1処理槽から前記第2処理槽へ移送させる、適用例1ないし適用例7のいずれかに記載の移送パイプと、
前記移送パイプの前記ネジ部にねじ込まれたナットと、
を備え、
前記移送パイプと、前記第1壁と、前記第2壁とは、前記第1壁と前記第2壁とを含む複数の部材を前記ナットと前記移送パイプの前記フランジとによって挟み込むことによって、互いに固定されている、
排水処理装置。
【0022】
この構成によれば、第1処理槽で処理された水を、移送パイプによって、第1処理槽から第2処理槽へ適切に移送することができ、さらに、水の移送量を容易に確認することができる。さらに、ナットと移送パイプのフランジとによって、移送パイプと第1壁と第2壁とが互いに固定されるので、移送パイプを、第1処理槽と第2処理槽とに対して適切に固定することができる。これらにより、第1処理槽から第2処理槽へ水の移送と、移送量の確認と、を行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0023】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、移送パイプ、移送パイプを備える排水処理装置、移送パイプを利用した移送量の調整方法、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、この発明の実施の形態を、第1実施例と変形例とに基づいて説明する。
【0026】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての排水処理装置800の処理フローを示す説明図である。本実施例の排水処理装置800は、一般家庭等からの排水の浄化処理を行う装置である(このような装置は「浄化槽」とも呼ばれる)。排水処理装置800は、複数のステップを経て浄化処理を行うために、複数の水処理槽を有している。
図1の実施例では、排水処理装置800は、上流(
図1の左側)から順番に、流入口802、沈殿分離槽810、嫌気濾床槽820、好気濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850、流出口804を、有している。沈殿分離槽810は、沈殿分離部815と、汚泥貯留部816とを含んでいる。好気濾床槽830は、接触曝気部831と、生物濾過部832とを含んでいる。排水は、流入口802から排水処理装置800に流入する。排水処理装置800に流入した排水は、沈殿分離槽810、嫌気濾床槽820、好気濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850で順次処理された後に、流出口804を通じて、排水処理装置800の外部に放流される。以下、各水処理槽を流れる水を「被処理水」あるいは、単に「水」と呼ぶ。
【0027】
図2は、排水処理装置800の内部構成を模式的に表す説明図である。
図2は、排水処理装置800を横から見た概略構成を示している。
図3は、排水処理装置800を鉛直方向の上方から下方に向かって見た概略構成を示しており、
図2中のA−A断面を上方からから下方に向かって見た概略図である。
図4は、
図2中のB−B断面を、
図2の右側から水平に見た概略図である。これらの図中において、Z方向は、鉛直方向の下方から上方へ向かう方向を示し、X方向は、排水処理装置800の長手方向(水平な方向)を示し、Y方向は、X方向とZ方向とのそれぞれと直交する方向(水平な方向)を示している。
【0028】
沈殿分離槽810は、排水中の夾雑物を分離する水処理槽である。排水(汚水とも呼ばれる)は、流入口802から沈殿分離槽810に流入する。沈殿分離槽810は、バッフル812a、812b等の固液分離手段を有しており、排水中の夾雑物(固形物)を被処理水から分離する。
図2に示すように、バッフル812aの外側の一部の領域には、濾材813が充填されている。この領域は、汚泥貯留部816に対応する。沈殿分離槽810の残りの領域(特に、バッフル812aの内部の領域)は、沈殿分離部815に相当する。図示を省略するが、バッフル812aの内部には、エアリフトポンプが設けられている。このエアリフトポンプは、図示しないブロワ(送風機)からの空気によって駆動され、常時、沈殿分離部815から汚泥貯留部816へ水を移送している。これにより、沈殿分離部815で分離された固形物は、汚泥貯留部816に移送される。また、図示を省略するが、汚泥貯留部816の濾材813の下部には、散気装置が設けられている。この散気装置は、上述したブロワ(図示せず)に接続され、ブロワからの空気を、常時、汚泥貯留部816の濾材813に供給する。濾材813には、好気性微生物が付着し、汚泥を好気的に消化する。
【0029】
沈殿分離槽810の下流側(+X側)には、仕切板819が設けられている。夾雑物が分離(除去)されたあとの水は、仕切板819の上部の空いた部分を通じて、嫌気濾床槽820に移流する。
【0030】
嫌気濾床槽820は、嫌気性微生物による嫌気処理を行う水処理槽である。嫌気濾床槽820は、嫌気性微生物が付着するための濾材822を有している。嫌気処理によって、被処理水中の有機物が分解される。また、濾材822は、被処理水中の浮遊物を捕捉し得る。
図3に示すように、嫌気濾床槽820の下流側(+X側)には、仕切板829が設けられている。仕切板829には、下流側バッフル826が固定されている。処理された水は、濾材822の下部から下流側バッフル826と仕切板829とで囲まれた領域に移流する。
【0031】
下流側バッフル826と仕切板829とで囲まれた領域には、移送エアリフトポンプ827が設けられている。移送エアリフトポンプ827は、下流側バッフル826の内部から、仕切板829の上部を貫通して、好気濾床槽830の接触曝気部831の上部へ至るように構成されている。移送エアリフトポンプ827の吸入口827i(
図2、
図3)は、下流側バッフル826内に配置され、移送エアリフトポンプ827の吐出口827o(
図3)は、接触曝気部831の上部に配置されている。移送エアリフトポンプ827は、下流側バッフル826内の水を、接触曝気部831の上部に移送する。ただし、移送エアリフトポンプ827は、下流側バッフル826内の水を、生物濾過部832の上部に移送してもよい。一般には、移送エアリフトポンプ827は、嫌気濾床槽820での処理後の水を、好気濾床槽830の上部に移送してよい。ここで、移送エアリフトポンプ827の吐出口827oは、好気濾床槽830の水面よりも高い位置にあってよい。移送エアリフトポンプ827は、上述したブロワ(図示せず)からの空気によって、駆動される。
【0032】
図5は、好気濾床槽830を斜め上方から見た斜視図である(図中では、槽本体801の図示が省略されている)。好気濾床槽830は、好気性微生物による好気処理を行う水処理槽である。
図3、
図5に示すように、仕切板829の下流側(+X側)と槽本体801との間の空間は、2枚の中仕切板838、839によって、+Y側から−Y側に向かって並ぶ3つの空間に仕切られている(
図3〜
図5)。3つの空間は、それぞれ、接触曝気部831、生物濾過部832、処理水槽840に対応する。接触曝気部831と生物濾過部832との全体は、好気濾床槽830に対応する。
【0033】
図4に示すように、接触曝気部831は、好気性微生物が付着するための接触材834を有している。また、接触曝気部831は、接触材834よりも下に配置された散気装置835を有している。散気装置835には、上述したブロワ(図示せず)が接続される。散気装置835は、ブロワによって供給された空気を、接触曝気部831内に供給する。好気性微生物は、空気に含まれる酸素を利用して、被処理水中の有機物を分解する。
【0034】
接触曝気部831で処理された水は、第1中仕切板838の上部の空いた部分を通じて、生物濾過部832に移流する(
図3〜
図5の矢印CA)。
図4に示すように、生物濾過部832は、固形物(浮遊物質(SS)等)を補足するための濾過材836を有している。生物濾過部832の上部に流入した水は、濾過材836を通り抜けて生物濾過部832の下部に移動する。接触曝気部831と生物濾過部832とは、第1中仕切板838の下部で連通しており、濾過材836を通り抜けた水は、接触曝気部831の下部に移流する。このように、接触曝気部831と生物濾過部832との間で水が循環することによって、接触曝気部831と生物濾過部832とによる処理が繰り返される。また、生物濾過部832で処理された水は、第2中仕切板839の下部の空いた部分を通じて、処理水槽840に移流する。
【0035】
なお、本実施例では、濾過材836として、比重が1よりも大きい粒状の担体を採用している。生物濾過部832の下部と上部とには、生物濾過部832からの担体の流出を防ぐために、ネットが配置されている。また、排水処理装置800は、定期的に濾過材836の逆洗を行うための、濾過材836よりも下に配置された散気装置837(
図4)と、生物濾過部832から沈殿分離槽810に水を移送する逆洗エアリフトポンプ(図示せず)とを有している。逆洗時には、散気装置からの空気によって担体が撹拌される。そして、担体によって捕捉されていた固形物は、逆洗エアリフトポンプによって、沈殿分離槽810に移送される。
【0036】
処理水槽840は、好気濾床槽830から移流した水を一時的に滞留して、水中の固形物(例えば、汚泥や浮遊物質等)を沈降・分離する水処理槽である。処理水槽840において分離された固形物は、処理水槽840の底部に集められる。
【0037】
図2に示すように、処理水槽840には、循環エアリフトポンプ849が設けられている。循環エアリフトポンプ849は、処理水槽840の底部から水を吸入して、吸入した水を、沈殿分離槽810に移送する。処理水槽840の底部に集められた固形物は、循環エアリフトポンプ849によって、沈殿分離槽810に移送される。なお、循環エアリフトポンプ849は、上述した図示しないブロワからの空気によって、駆動される。ブロワからの循環エアリフトポンプ849への空気の分配量は、図示しないバルブによって調整される。
【0038】
図3、
図4に示すように、第2中仕切板839の上部には、移流バッフル848が固定されている。そして、第2中仕切板839の、移流バッフル848で囲まれた部分に、移送パイプ900が固定されている。後述するように、移送パイプ900は、第2中仕切板839と、消毒槽850の壁とを貫通した状態で固定されている。処理水槽840で固形物が分離されたあとの水は、移送パイプ900を通じて、消毒槽850に移流する。
【0039】
消毒槽850は、被処理水を消毒する水処理槽である。
図4、
図5に示すように、消毒槽850は、生物濾過部832の上部に配置されている。消毒槽850は、有底の箱形状を有する槽本体851と、槽本体851の内部に配置された薬筒固定バッフル852とを有している。
【0040】
図4に示すように、薬筒固定バッフル852は、水平に延びる流路と、その流路の一端から下方に向かって延びる流路とを形成する。水平に延びる流路の途中には、消毒剤(例えば、固形塩素剤)が充填された薬剤筒854を、倒れないように保持する保持部853が形成されている。薬筒固定バッフル852は、消毒槽850に流入した水を、薬剤筒854に導いて消毒剤に接触させる。そして、薬筒固定バッフル852は、消毒剤との接触によって消毒された水を、消毒槽850(槽本体851)の下部に導く。消毒された水は、流出口804を通じて、排水処理装置800の外部へ放流される。
【0041】
本実施例の排水処理装置800は、処理水の水質を安定化させるために、流量調整機能を有している。具体的には、移送エアリフトポンプ827(
図2、
図3)は、継続的に、嫌気濾床槽820から好気濾床槽830に水を移送する。一方、
図2、
図3、
図5に示すように、仕切板829の上部(すなわち、好気濾床槽830の上部)には、戻し堰828が設けられている。好気濾床槽830に移送された水量のうちの、循環エアリフトポンプ849による循環水量と、移送パイプ900を通じて消毒槽850に移流する水量(排水処理装置800から放流される水量と同じ)とを除いた余剰分の水は、戻し堰828を通じて、嫌気濾床槽820に戻る。これらにより、嫌気濾床槽820から好気濾床槽830へは、おおよそ一定量ずつ、水が継続的に移送される。
【0042】
本実施例では、ブロワ(図示せず)からの、循環エアリフトポンプ849へ至る空気配管には、空気流量を調整するバルブ(図示せず)が設けられ、上述した散気装置と他のエアリフトポンプとに至る空気配管(例えば、移送エアリフトポンプ827へ至る空気配管と、散気装置835へ至る空気配管)のそれぞれにオリフィス(図示せず)が設けられている。これにより、上述した各散気装置と各エアリフトポンプ(例えば、循環エアリフトポンプ849と移送エアリフトポンプ827と散気装置835)とのそれぞれへの空気の分配量のバランスが、適正なバランスから大きくずれる可能性が低減される。循環水量(単位時間当たりの水量)が適切な量になるようにユーザがバルブ(図示せず)を調整すれば、結果的に、移送パイプ900による移送量(放流水量)も、適正量に設定され得る。
【0043】
排水処理装置800への流入水量(単位時間当たりの水量)の変動が好気濾床槽830に影響を与えることは、沈殿分離槽810および嫌気濾床槽820の水位が変動することによって、抑制されている。移送エアリフトポンプ827の吸入口827iは、
図2に示す低水位LWLの高さに配置されている。従って、沈殿分離槽810および嫌気濾床槽820の水位は、この低水位LWLまで下がり得る。さらに、この排水処理装置800は、低水位LWLよりも高い高水位HWLまで水位が上昇してもオーバーフローが生じないように、構成されている。低水位LWLと高水位HWLとの間で水位が変動した場合であっても、循環エアリフトポンプ849による循環水量と、移送パイプ900を通じて消毒槽850に移流する水量と、嫌気濾床槽820から好気濾床槽830に移送される水量(戻し堰828から戻される分を除いた実質の水量)と、のそれぞれ(単位時間当たりの水量)は、大きく変動せずに、おおよそ一定の量に維持される。この結果、好気濾床槽830は、安定な処理を継続することができる。
【0044】
なお、戻し堰828は、堰の高さを変更可能な可動堰である。循環水量を適切に調整した状態で移送パイプ900を流れる水量(移送量)が適切ではない場合には、ユーザは、戻し堰828の高さを調整することによって、移送量を調整することができる。具体的には、戻し堰828の高さを調整することによって、処理水槽840の水位、すなわち、移送パイプ900を流れる水の水位を調整することができる。そして、水位が高いほど、移送パイプ900を流れる水の単位時間当たりの量(すなわち、放流水量)が多くなる。本実施例では、ユーザが移送量を容易に確認できるようにするために、移送パイプ900は、適切な水位を確認するための立体部分(立体的な構成)を有している。
【0045】
図6(A)は、移送パイプ900の斜視図であり、
図6(B)は、移送パイプ900にねじ込まれるナット990の斜視図である。また、
図7(A)、7(B)、7(C)、7(D)は、それぞれ、移送パイプ900平面図、背面図、断面図、正面図を示している。各図に示された方向(X、Y、Z方向)は、移送パイプ900が排水処理装置800に固定された状態での方向を、示している。後述する他の図においても、図示された方向は、移送パイプ900が排水処理装置800に固定された状態での方向を、示している。
【0046】
移送パイプ900は、流路911を形成する中空円筒状のパイプ部910と、パイプ部910の外周面に形成されたネジ部912と、パイプ部910の外周面に固定されたフランジ914と、パイプ部910の一方の端である第1端910e1に固定された堰930と、を有している。ネジ部912は、パイプ部910の外周面を旋回するように形成された雄ネジである。
図7(A)に示すように、ネジ部912は、パイプ部910の一端から他端に至る領域の間の一部の領域PAに形成されている。フランジ914は、パイプ部910の外周面の、ネジ部912の形成されていない部分に固定されている。本実施例では、フランジ914は、ネジ部912よりも、第1端910e1に近い。
【0047】
図6(B)に示すように、ナット990は、リング状の部材992で構成されており、その部材992の内周面には、ネジ部994が形成されている。ネジ部994は、リング状の部材992の内周面を旋回するように形成された雌ネジである。このナット990は、パイプ部910のネジ部912にねじ込まれる。これにより、フランジ914とナット990との間に、種々の部材を挟み込むことができる。
【0048】
図8は、移送パイプ900の組み付けを表す分解斜視図である。
図9は、組み付けられた移送パイプ900の近傍を示す断面図である。本実施例では、移送パイプ900は、消毒槽850の薬筒固定バッフル852と、消毒槽850の槽本体851と、第2中仕切板839とを、この順番に貫通した状態で、固定される。具体的には、消毒槽850の槽本体851の穴851hと薬筒固定バッフル852の穴852hとが重なるように、槽本体851の内に薬筒固定バッフル852が配置される。さらに、それらの穴と、第2中仕切板839の穴839hとが重なるように、消毒槽850が第2中仕切板839のそばに配置される。移送パイプ900が3つの穴852h、851h、839hを貫通した状態で、ナット990が移送パイプ900に締め付けられる。ナット990の締め付けによって、薬筒固定バッフル852と槽本体851と第2中仕切板839とは、重なった状態で、フランジ914とナット990との間に挟み込まれる。そして、移送パイプ900と、薬筒固定バッフル852と、消毒槽850の槽本体851と、第2中仕切板839とが、互いに固定される。なお、穴852h、穴851h、穴839hのそれぞれの上方には、穴852i、穴851i、凹部839iが設けられている。これらは、処理水槽840の水位が過度に上昇した場合に処理水槽840から消毒槽850へ水が流れるオーバーフロー開口を形成する。
【0049】
図8、
図9に示すように、本実施例では、フランジ914が消毒槽850に配置され、ナット990が処理水槽840側に配置される。パイプ部910の両端のうちの、堰930が形成された第1端910e1は、消毒槽850(薬筒固定バッフル852)側に配置され、他方の第2端910e2は、処理水槽840側に配置される。処理水槽840の上部の水は、第2端910e2から移送パイプ900に流入し、そして、第1端910e1から消毒槽850(薬筒固定バッフル852)に落下する。
【0050】
図6(A)、
図7、
図9に示すように、第1端910e1には堰930が形成されている。堰930は、パイプ部910(流路911)と交差する板状部であり、流路911の下方の一部分を堰き止めている。また、堰930は、堰930の上端面936(第1面936とも呼ぶ)から流路911の底部(パイプ部910の内壁)に至る切欠933を有している。
図7(D)に示すように、切欠933の形状は、鉛直方向(Z方向)に延びる略長方形である。パイプ部910に流入した水は、この切欠933から流出する。
【0051】
また、
図6(A)、7(C)、7(D)に示すように、堰930は、上端面936(以下、「第1面936」とも呼ぶ)を有する第1段部931と、上端面936よりも低い位置にある上面937(以下、「第2面937」とも呼ぶ)を有する第2段部934とを有している。第2段部934は、第1段部931よりも下流側に形成されている。堰930は、低い位置での厚さ(流路911の延びる方向(ここでは、Y方向)の厚さ)が高い位置での厚さよりも厚い段差形状を有している。堰930の上流側の面は、平面であり、堰930の下流側の面は、第2面937よりも低い部分が堰930の外側(移送パイプ900から離れる側)に突出する段差形状を形成している。切欠933は、第1面936から始まり、第2面937よりも低い位置まで到達している。以下、第1面936と第2面937との全体を、基準部938とも呼ぶ。
【0052】
図5には、堰930を通って、移送パイプ900から消毒槽850に水が移流する様子が、拡大して示されている。図示するように、切欠933を流れる水の近傍に、第1面936と第2面937とが配置されている。その結果、ユーザは、切欠933を流れる水の水面を、それらの面936、937と容易に比較することができる。また、本実施例では、切欠933を流れる水の単位時間当たりの移送量が適正範囲にある場合に、切欠933を流れる水の水位が第1面936から第2面937までの範囲内となるように、それらの面936、937の高さが予め設定されている。従って、ユーザは、水位がそれらの面936、937の間にあれば、移送量が適正であると確認できる。水面が第2面937よりも低い場合、あるいは、水面が第1面936よりも高い場合には、ユーザは、戻し堰828を調整することによって、移送量を調整すればよい。この際、ユーザは、水面がそれらの面936、937の間に収まるように、戻し堰828を調整すればよい。
【0053】
また、本実施例では、第2面937は、堰930の下流側に配置されているので、実際の水位が第2面937よりも高い場合であっても、水位が第1面936よりも低ければ、第2面937は水没しない。その結果、ユーザは、実際の水位が第2面937よりも高い場合であっても、水位の適正な範囲と、実際の水位とを、容易に比較することができる。
【0054】
以上のように、本実施例では、移送パイプ900(
図6)がネジ部912とフランジ914とを有しているので、フランジ914とナット990との間に他の部材(ここでは、薬筒固定バッフル852(
図9)と、槽本体851と、第2中仕切板839)を挟みこむことによって、移送パイプ900と他の部材とを容易に互いに固定することができる。この結果、移送パイプ900の固定に要するスペースを低減できる。さらに、この移送パイプ900を通じて液体の移送を容易に行うこともできる。さらに、移送パイプ900は、流路911を流れる水の水位の高さの基準を示す基準部938(第1面936および第2面937)を有している。その結果、計量樋といった計量装置を設けることなく、ユーザは、移送パイプ900を流れる水の単位時間当たりの量を容易に確認することができる。これらの結果、水の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。そして、
図5に示すように、狭い場所に移送パイプ900を設けることができる。
【0055】
また、
図6に示すように、本実施例では、移送パイプ900は、パイプ部910に形成された堰930を有している。そして、この堰930は、堰930の一方側から他方側へ水が流れる開いた部分である切欠933を有している。従って、適切な移送量が少ない場合であっても(例えば、1L/min程度)、移送量の変化に対する水面の高さの変化を大きくすることができるので、ユーザは、移送量が適切であるか否かの確認を容易に行うことができる。
【0056】
また、
図6に示すように、本実施例では、基準部938は、水位の基準を示す立体部分(第1面936と第2面937)である。この結果、基準部938に対する微生物膜等の付着によって基準が分からなくなる可能性を大幅に低減できる。
【0057】
また、
図7(C)に示すように、基準部938(第1面936、第2面937)は、パイプ部910の端部(第1端910e1)に設けられている。そして、その端部910e1の基準部938よりも上側の部分PUは、基準部938(第1面936、第2面937)の上方を覆わないように、基準部938よりも手前で終わっている。すなわち、基準部938は、パイプ部910の端部910e1の基準部938よりも上側の部分PUと比べて、水平方向に沿ってパイプ部910から離れる方向に突出した位置に形成されている(本実施例では、基準部938は、パイプ部910の延びる方向(ここでは、Y方向)に向かって突出した位置に形成されている)。その結果、ユーザは、移送パイプ900を上方から観察することによって、基準部938を容易に観察することができる。例えば、排水処理装置800が地中深くに埋設されており、マンホール開口から移送パイプ900までの距離が遠い場合であっても、ユーザは、容易に、基準部938と水面とを確認することができる(
図5)。このように、移送パイプ900を、横から観察することが困難であるような狭い場所に配置することができるので、水の移送と移送量の確認とを行うための構成の配置に要するスペースを低減できる。
【0058】
また、
図6、
図7(C)に示すように、堰930は、流路911と交差する板状部であるので、堰930の設置に要するスペースが過大となることを避けることができる。
【0059】
また、
図6(A)、
図7(C)に示すように、基準部938は、第1面936と、第1面936よりも低い位置に形成された第2面937とを含んでいる。この結果、第1面936から第2面937までの範囲を適正範囲として利用することができるので、ユーザは、水位が適正範囲内にあることを確認することによって、移送量が適正範囲内にあることを、容易に判断することができる。
【0060】
また、
図6(A)、
図7(C)に示すように、堰930は、流路911の下方の一部分を堰き止める。すなわち、堰930の上端面936は、流路911の上端916よりも低い位置にある。この結果、堰930の上端面936を、水位の基準として利用することができる。さらに、堰930は、上端面936を有する第1段部931と、上端面936よりも低い位置にある上面937を有する第2段部934とを有している。この結果、第2段部934の上面937を、水位の基準として利用することができる。このように、堰930を階段状に形成するだけで、第1面936と第2面937とを形成することができる。従って、基準部938(高さの異なる2つの面936、937)を有する堰930の大きさが過剰に大きくなることを回避できる。
【0061】
また、
図8、
図9に示すように、移送パイプ900と、処理水槽840の壁である第2中仕切板839と、消毒槽850の壁である槽本体851とは、第2中仕切板839と槽本体851とをフランジ914とナット990とによって挟み込むことによって、互いに固定されている。その結果、移送パイプ900によって、処理水槽840から消毒槽850に水を容易に移送することができ、水の移送量を容易に確認することができる。また、移送パイプ900と消毒槽850と処理水槽840とを、より具体的には、移送パイプ900と、第2中仕切板839と、消毒槽850の槽本体851および薬筒固定バッフル852とを、適切に互いに固定することができる。
【0062】
B.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
変形例1:
上記各実施例において、水位の高さの基準を示す立体部分(基準部)としては、ユーザが観察によって水位の高さの基準を特定することが可能な任意の立体形状を採用可能である。例えば、立体部分は、水位の高さの基準を示す面および辺の少なくとも一方を含む立体的な形状であってよい。このように、水位の高さの基準を示す立体形状を採用すれば、水位の基準を示す着色ラインを採用する場合と比べて、微生物膜等の付着によって基準が分からなくなる可能性を大幅に低減できる。ただし、基準部は、立体部分でなくてもよい。例えば、基準部は、面上(平面でも曲面でもよい)に描かれた印であってもよい。
【0064】
図10は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900A)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、第2段部934の代わりに基準板934Aが設けられている点だけである。他の構成は、
図6の移送パイプ900の構成と同じである。基準板934Aは、
図6の第2段部934と同じ第2面937を有している。基準板934Aより上の部分の堰930Aの厚さは、基準板934Aより下の部分の堰930Aの厚さと、同じである。
【0065】
図11は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900B)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、第2段部934の代わりに傾斜面934Bが設けられている点だけである。他の構成は、
図6の移送パイプ900の構成と同じである。傾斜面934Bは、低い位置ほど堰930Bの厚さが厚くなるように、堰930Bの上端面936から斜め下方向に傾斜している。この傾斜面934Bの下端は、パイプ部910の端面919と交差する辺937Bを形成する。この辺937Bは、
図6の第2面937と同じ高さに形成されている。ユーザは、水位が辺937Bと上端面936との間にあれば、移送量が適切であると判断できる。すなわち、ユーザは、水位が傾斜面934Bと交差していることを確認すればよい。なお、この実施例では、上端面936と辺937Bとの全体が、基準部938Bに対応する。
【0066】
図12は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900C)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、第2段部934が省略され、その代わりに、第2壁934Cが設けられている点だけである。この実施例では、堰930Cの厚さは、高さに拘わらずに、一定である。そして、堰930Cの下流側に、第2壁934Cが配置されている。この第2壁934Cの形状は、三角柱を横に寝かせた形状と同じであり、高い位置ほど厚さが薄い。この第2壁934Cの最も高い部分は、辺937Cを形成している。この辺937Cは、
図6の第2面937と同じ高さに形成されている。ユーザは、水位が辺937Cと上端面936との間にあれば、移送量が適切であると判断できる。なお、この実施例では、上端面936と辺937Cとの全体が、基準部938Cに対応する。
【0067】
図13は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900D)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、堰930の代わりに、堰930Dと、V字流路939Dと、2本の線936D、937Dと、が設けられている点だけである。堰930Dは、
図6の堰930と同様に、パイプ部910の第1端910e1に設けられている。ただし、切欠933Dは、V字状である。このV字状の切欠933Dの内面を下流側(+Y側)に延長するように、V字状のV字流路939Dが形成されている。このV字流路939Dの内面には、水平な2本の線936D、937Dが記されている。第1線936Dは、
図6の第1面936と同じ高さに記されている。第2線937Dは、
図6の第2面937と同じ高さに記されている。ユーザは、上方から、水位と、これらの線936D、937Dとを観察することができる。また、ユーザは、V字流路939Dを流れる水の水位が、第1線936Dと第2線937Dとの間にあれば、移送量が適切であると判断できる。なお、この実施例では、第1線936Dと第2線937Dとの全体が、基準部938Dに対応する。このように、基準部は、立体部分ではなく、面上に描かれた印であってもよい。また、パイプ部910とV字流路939Dとの全体が、パイプ部に対応する。
【0068】
図14は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900E)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、堰930が省略されて、パイプ部910の第1端910e1が、上端から斜め下方向に向かって斜めに切り落とされた形状を有しており、パイプ部910の内面に2本の線936E、937Eが記されている点だけである。具体的には、第1端910e1において、低い位置ほど、+Y方向の突出の度合いが大きい。また、流路911の第1端910e1の内面には、水平な2本の線936E、937Eが記されている。第1線936Eは、
図6の第1面936と同じ高さに記されている。第2線937Eは、
図6の第2面937と同じ高さに記されている。ユーザは、上方から、水位と、これらの線936E、937Eとを観察することができる。また、ユーザは、流路911の第1端910e1から流出する水の水位が、第1線936Eと第2線937Eとの間にあれば、移送量が適切であると判断できる。なお、この実施例では、第1線936Eと第2線937Eとの全体が、基準部938Eに対応する。このように、基準部は、立体部分ではなく、面上に描かれた印であってもよい。また、この実施例のように堰を省略してもよい。
【0069】
図15は、移送パイプの別の実施例(移送パイプ900F)を示す斜視図である。
図6に示す移送パイプ900との差異は、第2段部934が省略され、その代わりに、線937Fが設けられている点だけである。この実施例では、堰930Fの厚さは、高さに拘わらずに、一定である。そして、堰930Fの下流側(+Y側)の面に、水平な線937Fが記されている。この線937Fは、
図6の第2面937と同じ高さに記されている。ユーザは、上方から−Y側を向いた斜め下方向に向かって観察することによって、水位と上端面936と線937Fとを観察することができる。また、ユーザは、水位が、線937Fと上端面936との間にあれば、移送量が適切であると判断できる。なお、この実施例では、上端面936と線937Fとの全体が、基準部938Fに対応する。このように、基準部は、立体部分(例えば、上端面936)と、立体部分ではない部分(例えば、線937F等の面上に描かれた印)との両方を含んでもよい。
【0070】
基準部の構成としては、上述した各実施例の構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、一部、あるいは、全部の基準部が、堰よりも上流側に配置されていてもよい。また、第1の基準部と第2の基準部との一方、あるいは、両方が、堰から離れた位置に形成されていてもよい。なお、基準部は、水位の基準を示す立体部分を含むことが好ましい。また、基準部は、そのような立体部分のみで構成されていてもよい。
【0071】
なお、
図6に示すように堰930に第1段部931と第2段部934とを設ける構成を採用すれば、樹脂を用いた移送パイプ900の成形に利用される成形型の形状が複雑化することを避けることができる。さらに、移送パイプ900を一体成形によって製造することもできる。このように、製造を容易に行うという観点からは、堰に第1段部と第2段部とを設ける構成が好ましい。
【0072】
いずれの場合も、第1基準部と第2基準部とは、上方から見た場合に、少なくとも一部が互いに重ならないように配置されていることが好ましい。そして、基準部は、パイプ部や堰の流出部を流れる水の水面と接し得る位置に形成されていることが好ましい。こうすれば、ユーザは、水面と基準部と間の高さの差を容易に確認することができる。また、基準部の総数は、2に限らず、3以上であってもよい。また、基準部が1つであってもよい。この場合には、ユーザは、実際の水位が、1つの基準部によって示される基準水位に近い場合に、移送量が適切であると判断すればよい。また、基準部は、水位の種々の基準を示すものであってよい。例えば、基準部は、適切な水位の上限あるいは下限を示すものであってよく、また、最も好ましい水位を示すものであってもよい。いずれの場合も、堰の流出部は、各基準部を包含する高さ範囲に亘って開いていることが好ましい。こうすれば、流出部を流れる水の水位と、基準部とを比較することによって、容易に移送量を確認することができる。
【0073】
変形例2:
上記各実施例において、移送パイプの構成としては、
図6や
図10〜
図15に示した構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、堰が、移送パイプの上流側の端部に形成されていてもよい。また、フランジ914がネジ部912よりも上流側に配置されていてもよい。また、堰に設けられた流出部は、
図6に示すような切欠933に限らず、堰に設けられた穴であってもよい。いずれの場合も、移送パイプによって形成される流路の一部を堰によって堰き止めて、流出部を通じて水を堰の一方側(上流側)から他方側(下流側)へ移送することが好ましい。こうすれば、適切な移送量が少ない場合であっても(例えば、1L/min程度)、移送量の変化に対する水面の高さの変化を大きくすることができるので、ユーザは、移送量が適切であるか否かの確認を容易に行うことができる。ただし、堰を省略してもよい。また、移送パイプの流路の断面形状は、円に限らず、任意の形状(例えば、矩形)であってよい。また、堰は、板状部に限らず、他の任意の形状の部材であってよい。
【0074】
また、移送パイプの両端のうちの少なくとも一方の端が、他のパイプを受け入れる継手部材(例えば、ソケット)の端と同様の端形状を有していても良い。
図7(C)の移送パイプ900では、第2端910e2が、継手部材と同様の端形状を有している。ただし、端の形状が、そのような形状でなくてもよい。
【0075】
変形例3:
上記各実施例において、パイプの端部の基準部よりも上側の部分(例えば、
図7(C)の部分PU)の一部が、基準部(例えば、
図7(C)の基準部938)の上方まで突出して、基準部を覆っていてもよい。この場合も、ユーザは、移送パイプの端部の突出していない部分を利用して、上方(あるいは、斜め上方)から基準部と水面とを観察すればよい。また、基準部が、移送パイプの端部よりも内側に形成されていてもよい。この場合は、斜め上方から移送パイプの内側を覗くことによって、基準部と水面とを観察できるように、基準部を構成すればよい。
【0076】
変形例4:
上記各実施例において、移送パイプの上下方向を正しい方向に合わせるために、治具を嵌める嵌合部を移送パイプに設けてもよい。例えば、
図7(A)、7(C)に示す移送パイプ900には、パイプ部910の第2端910e2に凹部917、918が形成されている。
図8に示すように移送パイプ900を組み付ける際には、鉛直方向に延びる棒状の治具を、凹部917、918に嵌合させることによって、移送パイプ900の上下方向を正しい方向に合わせることができる。なお、このような嵌合部の形状は、凹部に限らず、凸部や穴等の他の任意の形状であってよい。また、このような嵌合部を省略してもよい。
【0077】
変形例5:
上記各実施例の移送パイプ900、900A、900B、900Cは、
図1〜
図4に示す排水処理装置800に限らず、他の任意の排水処理装置に適用可能である。例えば、好気処理槽は、接触曝気部を有する処理槽に限らず、他の任意の好気処理槽(例えば、微生物が付着した担体が流動する担体流動槽や、膜を利用する膜処理槽)であってよい。また、好気処理槽よりも前段の処理槽は、嫌気濾床槽や沈殿分離槽に限らず、他の任意の処理槽(例えば、夾雑物除去槽)であってよい。また、処理フローは、
図1に示すフローに限らず、他の任意のフローであってよい。例えば、流量調整機能を有さない処理フローを採用してもよい。また、原水が流入する第1処理槽(例えば、夾雑物除去槽)から、原水の一部を第2処理槽(例えば、担体流動槽)に移送し、第2処理槽で処理された水を再び第1処理槽に戻す工程を含む処理フローを採用してもよい。
【0078】
いずれの場合も、消毒槽への水の移送流路に移送パイプを採用してよい。消毒槽への移送量を確認できれば、放流水量が適切であるか否かを確認できるので、排水処理装置の状態を容易に確認することができる。排水処理装置800が流量調整機能を有しており、流量調整機能によって、おおよそ一定量ずつ、水が継続的に消毒槽へ移送される場合には、消毒槽への移送量を確認することが、処理水の水質の安定化の観点から、特に好ましい。なお、流量調整機能を実現する構成としては、
図2〜
図4に示す構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。また、消毒槽は、他の処理槽と比べて容量が小さく、さらに、薬剤筒等の種々の部材が配置されるので、消毒槽内には、継手部材と計量樋との組み合わせ等の大きな部材を配置することが困難である場合が多い。そこで、上述の各実施例のような移送パイプを採用すれば、排水処理装置を大きくせずに、消毒槽への移送量を確認することができる。
【0079】
また、移送パイプは、消毒槽への移送流路に限らず、単位時間当たりの移送量の確認を要する任意の箇所に配置されてよい。例えば、上述の第2処理槽から第1処理槽への移送流路として、移送パイプを採用してもよい。また、移送パイプによって移送される液体は、排水処理装置に設けられた処理槽を流れる水に限らず、任意の液体であってよい。例えば、排水処理装置の処理槽に、水処理のための液体を添加する場合に(例えば、メタノール等の栄養源や、凝集剤を添加する場合に)、その液体の移送流路として移送パイプを利用してもよい。また、移送パイプのフランジと、ナットとによって挟まれる部材の総数は、3に限らず、任意の複数であってよい。こうすれば、移送パイプと複数の部材との互いの固定を容易に行うことができる。ただし、フランジとナットとによって挟まれる部材の総数が1であってもよい。いずれの場合も、移送パイプを、1あるいは複数の壁を貫通させて、それらの壁をフランジとナットとによって挟み込めば、移送パイプとそれらの壁とを互いに固定することが容易である。また、フランジとナットとによって挟まれる部材は、処理槽の壁に限らず、排水処理装置で利用される任意の部材であってよい(例えば、移送パイプ900の固定用のプレートであってもよい。