(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態における電圧可変利得増幅回路100のブロック図である。電圧可変利得増幅回路100は、第1の差動増幅器1、第2の差動増幅器2、利得制御電圧電流変換回路3、及び基準電流発生回路4を含んで構成されている。
図2は、第1の差動増幅器1の回路図である。第2の差動増幅器2は、第1の差動増幅器1の差動出力を受けて動作し、第2の差動増幅器2と同じ回路構成を有している。電圧可変利得増幅回路100は、半導体集積回路チップとして製造することができる。
【0011】
<本発明の基本原理>
電圧可変利得増幅回路100は、利得制御電圧に対して利得がリニア(線形)に、かつ連続的に変化するように構成される。先ず、
図1、
図2に基づき、この電圧可変利得増幅回路100の基本原理を説明する。
【0012】
1段目の第1の差動増幅器1の利得G1は、差動入力トランジスタ11,12のトランスコンダクタンスgm(gm1=gm2)と、第1及び第2の出力抵抗素子22、23の抵抗値RO(=RO1=RO2)により、G1=gm×ROにより決定される。2段目の第2の差動増幅器2の利得G2も、G2=gm×ROにより決定される。
【0013】
電圧可変利得増幅回路100において、第1の差動増幅器1と第2の差動増幅器2を直列接続しているので、2段目の第2の差動増幅器2から得られる全体の利得Gは、
G=G1×G2=(gm・RO)
2となる。後述するように、gm=√Id1であるから、全体の利得Gは、Id1に比例することになる。(G∝Id)ここで、Id1は、第1の差動増幅器1の第1の差動入力トランジスタ11のドレイン電流である。第2の差動入力トランジスタ12のドレイン電流Id2は、Id1に等しい。(Id1=Id2)
利得制御電圧電流変換回路3は、基本的には利得制御電圧VCを利得制御電圧VCに対してリニアに変化する利得制御電流ICに変換する。したがって、第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12のドレイン電流Id1、Id2が利得制御電流ICに対してリニアに変化するように構成すれば、利得Gは、
図6に示すように、利得制御電圧VCに対してリニアに変化することになる。
【0014】
<第1の差動増幅器1の構成>
第1の差動増幅器1の構成を
図2に基づいて説明する。第2の差動増幅器2は、前述のように、第1の差動増幅器1と同じ構成を有している。
【0015】
第1の差動増幅器1は、Pチャネル型MOSトランジスタからなる第1の差動入力トランジスタ11、Pチャネル型MOSトランジスタからなる第2の差動入力トランジスタ12、Pチャネル型MOSトランジスタからなる定電流源トランジスタ13、14、15、Nチャネル型MOSトランジスタ16、17から成る第1のカレントミラー回路、Nチャネル型MOSトランジスタ18、19からなる第2のカレントミラー回路、位相補償用コンデンサと零点消去用抵抗からなる第1の位相補償回路20及び第2の位相補償回路21、第1の出力抵抗素子22、第2の出力抵抗素子23、第1のコンデンサC1、第2のコンデンサC2と、を含んで構成される。
【0016】
実際には、第1の差動増幅器1には、後述する
図4の電流バイパス回路50が設けられるが、ここでは、電流バイパス回路50を除いた構成を説明する。
【0017】
定電流源トランジスタ13、14、15のソースには、電源電圧VDDが印加される。定電流源トランジスタ13のドレインには第1及び第2の差動入力トランジスタ11,12の共通ソースが接続される。定電流源トランジスタ13のゲートには基準電流発生回路4からのバイアス電圧が印加され、一定のドレイン電流2×Id1が基準電流として流れるように構成されている。第1及び第2の差動入力トランジスタ11,12には、それぞれドレイン電流Id1、Id2が流れるが、Id1=Id2となるように、第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12は、同じサイズ及び電気的特性を有しているものとする。
【0018】
第1のカレントミラー回路は、第1の差動入力トランジスタ11のドレインに接続され、第2のカレントミラー回路は、第2の差動入力トランジスタ12のドレインに接続される。
【0019】
定電流源トランジスタ14、15のゲートには、共通のバイアス電圧が印加される。第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12の各ゲートには、それぞれ差動入力電圧VIN、VIPが印加される。定電流源トランジスタ14とNチャネル型MOSトランジスタ16の第1の接続ノードに接続された第1の出力端子24と、定電流源トランジスタ15とNチャネル型MOSトランジスタ19の第2の接続のノードに接続された第2の出力端子25から、それぞれ差動出力電圧VOP,VONが出力される。
【0020】
第1の出力端子24と第2の出力端子25の間には、第1の出力抵抗素子22と第2の出力抵抗素子23が直列に接続されている。第1の出力抵抗素子22の抵抗値RO1と第2の出力抵抗素子23の抵抗RO2は、等しい抵抗値ROに設定されている。(RO1=RO2=RO)
第1のコンデンサC1は、第1の出力抵抗素子22に並列に接続され、第2のコンデンサC2は、第2の出力抵抗素子23に並列に接続される。また、第1の出力抵抗素子RO1と第2の出力抵抗素子RO2の接続ノードは、一定のコモン電圧VCOM(中心電圧)に調整される。
【0021】
以下で、電圧可変利得増幅回路100の利得G1を求める。いま、VINがΔVINだけ変動し、それに応じて第1の差動入力トランジスタ11のドレイン電流Id1がΔId1だけ変動したとする。すると、ΔId1は、数式1で表わすことができる。
【0023】
gm1は、第1の差動入力トランジスタ11のトランスコンダクタンスであり、第2の差動入力トランジスタ12のトランスコンダクタンスgm2と等しい値gmであるとする。(gm1=gm2=gm)
Nチャネル型MOSトランジスタ16には、定電流源トランジスタ14からの定電流が流れるので、ドレイン電流Id1の変動分ΔId1は、第2の出力抵抗素子22に流れ込むことになる。そのため、差動出力電圧VONは、ΔVONだけ変動する。したがって、ΔVONは、数式2で表わすことができる。
【0025】
同様に、VIPがΔVIPだけ変動し、それに応じて第2の差動入力トランジスタ12のドレイン電流Id2がΔId2だけ変動したとする。すると、ΔId2は、数式3で表わすことができる。
【0027】
また、ΔId2による差動出力電圧VONの変動分ΔVONは、数式4で表わすことができる。
【0029】
したがって、利得G1は、数式5で表わすことができる。
【0031】
また、第1の差動入力トランジスタ11の飽和領域における電流式から、Id1は、数式6で表わされる。
【0033】
μpは移動度、Coxは単位面積当たりのゲート容量、S1はゲートサイズ比、Vgs1はゲートソース間電圧、Vtp1はしきい値電圧である。ゲートサイズ比とは、
第1の差動入力トランジスタ11のチャネル幅をW、チャネル長をLとすると、W/Lの比のことである。以下においても同様である。
【0034】
すると、gm1は数式7で表わされる。
【0036】
したがって、利得G1は、数式8で表わすことができる。利得G1は、√Id1に比例することになる。
【0038】
よって、電圧可変利得増幅回路100の全体の利得Gは、数式9で表わされる。
【0042】
前述のように、利得制御電圧電流変換回路3は、利得制御電圧VCを利得制御電圧VCに対してリニアに変化する利得制御電流ICに変換する。また、電流バイパス回路50は、第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12のドレイン電流Id1、Id2が利得制御電流ICに対してリニアに変化するように構成される。
【0043】
以下に、利得制御電圧電流変換回路3、電流バイパス回路50の具体的な構成を説明する。
【0044】
<利得制御電圧電流変換回路3の構成>
利得制御電圧電流変換回路3は、基本的には、抵抗素子34を用いて電圧電流変換を行う回路であって、利得制御電圧VCを利得制御電圧VCに対してリニアに変化する第1の利得制御電流IC1、第2の利得制御電流IC2に変換する。IC1、IC2はカレントミラー回路により、それぞれ第1の差動増幅器1、第2の差動増幅器2に供給される。
【0045】
図3(a)は、利得制御電圧電流変換回路3の回路図である。図示のように、利得制御電圧電流変換回路3は、利得電圧制御回路31、オペアンプ32、Pチャネル型MOSトランジスタからなる制御トランジスタ33、電圧電流変換用の抵抗素子34、バッファアンプ35、発振防止用の位相補償回路36、Pチャネル型MOSトランジスタからなる第1及び第2のミラートランジスタ37、38を含んで構成される。
【0046】
利得電圧制御回路31は、利得制御電圧VCを直流レベルの基準電圧VREFに対して反転して反転利得制御電圧VC2を作成する回路である。利得電圧制御回路31は、例えば、
図3(b)に示すように、反転入力端子(−)に入力抵抗素子311を介して利得制御電圧VCが印加され、非反転入力端子(+)に基準電圧VREFが印加されたオペアンプ310と、オペアンプ310の反転入力端子(−)と出力端子の間に接続された帰還抵抗素子312により構成される。入力抵抗素子311と帰還抵抗素子312の抵抗値をRxとする。
【0047】
利得電圧制御回路31から出力される反転利得制御電圧VC2は、オペアンプ32の反転入力端子(−)に印加される。制御トランジスタ33のゲートには、オペアンプ32の出力電圧が印加され、そのソースに電源電圧VDDが印加される。
【0048】
制御トランジスタ33のドレインには、抵抗値RC2を有する抵抗素子34の一方の端子が接続される。制御トランジスタ33と抵抗素子34の接続ノードは、オペアンプ32の非反転入力端子(+)に接続される。抵抗素子34の他方の端子には、バッファアンプ35を介して最小基準電圧VREF_MINが印加される。オペアンプ32は、抵抗素子34の一方の端子電圧がVC2になるように、制御トランジスタ33に制御電流IC0を流す。
【0049】
以下、この利得制御電圧電流変換回路3の動作を説明する。まず、ΔVC、ΔVC2を数式11、12のように定義する。
【0052】
ΔVCは、基準電圧VREFを基準とした利得制御電圧であり、ΔVC2は、基準電圧VREFを基準とした反転利得制御電圧である。
【0053】
反転利得制御電圧VC2は、利得制御電圧VCをVREFに対して反転したものなので、ΔVC2は、数式13のように、ΔVCの極性を反転したものである。
【0055】
また、ΔVC0を数式14のように定義する。
【0057】
−ΔVC0〜ΔVC0の範囲は利得制御電圧ΔVCが変化する範囲である。また、制御トランジスタ33に制御電流IC0が流れ、第1及び第2のミラートランジスタ37、38にはそれぞれ第1及び第2の利得制御電流IC1、IC2が流れる。IC0、IC1、IC2は、各トランジスタサイズを等しくすることにより、同じ値に設定されることが好ましい。(IC0=IC1=IC2)
制御電流IC0は、数式15で表わされる。
【0059】
数式12〜14を用いて、数式15のIC0を変形すると、数式16が導かれる。
【0061】
数式16の−1/RC2・ΔVCは、ΔVCについてリニアであり、ΔVC0/RC2は固定値である。つまり、IC0は、ΔVCに対してリニアに変化する。
図5に、IC0とΔVCの関係を示す。
【0062】
この場合、ΔVC0/RC2を数17のように設定している。
【0064】
Id1は、上述のように、第1の差動入力トランジスタ11のドレイン電流である。
(Id1=Id2)したがって、利得制御電流IC1は、数式18で表わされる。
【0066】
<電流バイパス回路50の構成>
電流バイパス回路50は、第1及び第2の差動増幅器1、2における第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12のドレイン電流Id1、Id2(Id1=Id2)が、利得制御電流IC1に対してリニアに変化するように構成される。
図4(a)は、電流バイパス回路50の回路図である。
図4(b)は、電流バイパス回路50と利得制御電圧電流変換回路3との接続関係を示す回路図である。
【0067】
電流バイパス回路50は、Nチャネル型MOSトランジスタからなる一対の第1のバイパストランジスタ51、52と、Pチャネル型MOSトランジスタからなる一対の第2のバイパストランジスタ53、54を含んで構成される。第1のバイパストランジスタ51は、第1の差動入力トランジスタ11と定電流源トランジスタ13との接続ノードにドレインが接続され、ソースが接地されている。もう1つの第1のバイパストランジスタ52は、第2の差動入力トランジスタ12と定電流源トランジスタ13との接続ノードにドレインが接続され、ソースが接地されている。
【0068】
また、第2のバイパストランジスタ53のドレインは、第1の差動入力トランジスタ11と第1のカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ17のドレインとの接続ノードに接続されている。第2のバイパストランジスタ53のソースには電源電圧VDDが印加される。もう1つの第2のバイパストランジスタ54のドレインは、第2の差動入力トランジスタ12と第2のカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ19のドレインとの接続ノードに接続されている。第2のバイパストランジスタ54のソースには電源電圧VDDが印加される。
【0069】
そして、一対の第2のバイパストランジスタ53、54の共通接続されたゲートには、利得制御電圧電流変換回路3のオペアンプ32の出力が印加される。
【0070】
また、第1のミラートランジスタ37にはNチャネル型MOSトランジスタ55が直列に接続されている。Nチャネル型MOSトランジスタ55のゲートとドレインは接続され、そのソースは接地される。Nチャネル型MOSトランジスタ55のゲート
は、一対の第1のバイパストランジスタ51、52の共通接続されたゲートに接続される。Nチャネル型MOSトランジスタ55と第1のバイパストランジスタ51とは
カレントミラー回路を形成し、Nチャネル型MOSトランジスタ55と第1のバイパストランジスタ52は、もう1つのカレントミラー回路を形成する。
【0071】
これにより、一対の第1のバイパストランジスタ51,52、及び一対の第2のバイパストランジスタ53、54には、それぞれ利得制御電圧電流変換回路3からの
利得制御電流IC1が流れるようになっている。
【0072】
もし第1のバイパストランジスタ51が無ければ、第1の差動入力トランジスタ11には、定電流源トランジスタ13のドレイン電流2×Id1の半分のドレイン電流Id1が流れるが、第1のバイパストランジスタ51を設けることにより、利得制御電流IC1が第1の差動入力トランジスタ11をバイパスして接地に流れるバイパス路が形成される。これにより、第1の差動入力トランジスタ11に流れるドレイン電流Id1’は、数式19のように、元のドレイン電流Id1から利得制御電流IC1を差し引いた電流となる。
【0074】
第1のバイパストランジスタ52も、第2の差動入力トランジスタ12に関して同じ機能を発揮する。第2のバイパストランジスタ53は、第1のバイパストランジスタ52により、バイパスされた利得制御電流IC1を第1の差動入力トランジスタのドレインに接続されたNチャネル型MOSトランジスタ17のドレイン電流経路に合流させる。これにより、Nチャネル型MOSトランジスタ17には、一定のドレイン電流Id1が流れるようにしている。第2のバイパストランジスタ54も同じ機能を発揮する。
【0075】
そこで、数式9を用いて、全体の利得Gを求めると数式20が得られる。
【0077】
また、GのΔVCに関する偏微分は、数式21で導かれる。
【0079】
したがって、電圧可変利得増幅回路100の全体の利得Gは、利得制御電圧VCの基準電圧VREFからの差分ΔVCに対してリニアに変化することが分かる。つまり、ΔVCが増加すると、利得Gはリニアに増加する。なお、当然であるが、利得Gは、利得制御電圧VCに対してリニアに変化する。(ΔVC=VC−VREF)
なお、本実施形態の利得制御電圧電流変換回路3では、利得電圧制御回路31を含んでいるが、この回路は、利得制御電圧VCの極性を基準電圧VREFに対して反転しているだけなので、利得Gのリニア特性には関係は無く、省略することもできる。この場合、ΔVCが増加すると、利得Gはリニアに減少することになる。
【0080】
<利得制御電圧電流変換回路の他の構成例>
電圧可変利得増幅回路100の利得Gは、電源電圧依存性を持たないことが望まれる。基準電流発生回路4として電源電圧依存性を持たない回路(例えば、後述するgm一定型基準電流発生回路)を用いることで、利得Gの電源電圧依存性を改善することができる。
【0081】
しかしながら、上述の利得制御電圧電流変換回路3は、電源電圧依存性を持った回路である。通常、基準電圧VREF、最小基準電圧VREF_MINは、電源電圧VDDを用いて作成される。(例えば、VREF=0.5VDD、VREF_MIN=0.4VDD)VC=VC2=VREFという中心設定の場合を考えると、数式15より、IC1=(VREF−VREF_MIN)/RC2=0.1VDD/RC2となり、
利得制御電流IC1は電源電圧依存性を持つことになる。その結果、利得制御電流IC1によって制御される利得Gも電源電圧依存性を持つことになる。
【0082】
したがって、利得Gの電源電圧依存性を抑制するためには、利得制御電圧電流変換回路3は、電源電圧依存性を持たない回路で構成することが必要である。
図7は、そのような利得制御電圧電流変換回路3Aの回路図である。
【0083】
利得制御電圧電流変換回路3Aは、
図3(a)の利得制御電圧電流変換回路3に、利得制御電流IC1の電源電圧依存性を抑制するための制御回路を設けたものである。
この制御回路は、抵抗素子65(第2の抵抗素子)、第1の電流発生回路、第2の電流発生回路を含んで構成される。抵抗素子65は抵抗値RC22を有し、抵抗素子34(第1の抵抗素子)に直列に接続されている。抵抗素子65は、バッファアンプ35と抵抗素子34の間に挿入される。この場合、抵抗素子34の抵抗値をRC21とする。また、制御トランジスタ33を介して抵抗素子34に流れる電流をI2とする。
【0084】
第1の電流発生回路は、2つの抵抗素子34、65の接続ノードと接地に間に接続されたNチャネル型MOSトランジスタ66と、Nチャネル型MOSトランジスタ66に電源電圧依存性を有しない電流Isが流れるように、Nチャネル型MOSトランジスタ66を制御する基準電圧発生回路4を含んで構成される。基準電圧発生回路4は、後述するgm一定型基準電流発生回路で構成することができる。
【0085】
なお、基準電圧発生回路4は、Nチャネル型MOSトランジスタ67にも電源電圧依存性を有しない電流IRAが流れるように、Nチャネル型MOSトランジスタ67を制御する。電流IRAは、不図示のカレントミラー回路を介して、第1及び第2の差動増幅器1,2の定電流トランジスタ13に一定のドレイン電流2×Id1を基準電流として供給する。
【0086】
第2の電流発生回路は、オペアンプ61、Pチャネル型MOSトランジスタからなる制御トランジスタ62,63、抵抗値RC1を有する抵抗素子64を含んで構成される。制御トランジスタ62と抵抗素子64は、電源電圧VDDとバッファアンプ35の出力端子の間に直列に接続される。制御トランジスタ63は、電源電圧VDDと抵抗素子34,65の接続のノードの間に接続される。制御トランジスタ62、63のゲートにはオペアンプ61の出力が印加される。
【0087】
また、オペアンプ61に反転入力端子(−)には、基準電圧VREFが印加され、非反転入力端子(+)には、制御トランジスタ62と抵抗素子64の接続ノードの電圧が印加される。制御トランジスタ62と抵抗素子64の接続ノードの電圧は、基準電圧VREFになるので、抵抗素子64に流れる電流をI1とすると、I1は、数式22で表わすことができる。
【0089】
制御トランジスタ62、63のトランジスタサイズを同じにすると、制御トランジスタ63にも電流I1が流れる。電流I1は、制御トランジスタ63から抵抗素子34,65の接続ノードに流れ込む。抵抗素子34、65の接続ノードの電圧をVxとする。
【0090】
この制御回路は、電源電圧VDDが変動した場合に、電源電圧VDDの変動によるI1の電流変動分(ΔI1)が抵抗素子65に流れることにより、電圧Vxが変化し、抵抗素子34に流れる電流I2の電源電圧依存性を抑制する。例えば、電源電圧VDDが上昇すると、電圧Vxはそれに応じて上昇する。電流I2は、前述のように、第1及び第2のミラートランジスタ37、38に流れるIC1、IC2と等しく設定することができる。
【0091】
以下、この利得制御電圧電流変換回路3Aの動作を、数式を用いて説明する。この場合、VREF=0.5VDD、VREF_MIN=0.4VDDとする。また、VC=VC2=VREF とする。
【0092】
すると、電流I1は、数式22に基づき、数式23で表わされる。
【0094】
また、電流保存則から数式24が成り立つ。
【0098】
数25からVxを求めると、数式26が得られる。
【0100】
数24に数式23及び数式25代入すると、
【0102】
数式27からI2を求めると、数式28が得られる。
【0104】
数式28によれば、電流I2の電源電圧VDDに対する依存性が抑制されることが分かる。 さらに、RC1=RC22と設定することにより、(1/RC22−1/RC1)=0となるので、電流I2は電源電圧VDDに依存しなくなる。前述のようにIC1=IC2=I2 と設定することができる。
【0105】
図8は、改善前の利得制御電圧電流変換回路3において、電源電圧VDDが3.3Vと5Vの時の、利得Gの特性を示す図である。
図9は、改善された利得制御電圧電流変換回路3Aにおいて、電源電圧VDDが3.3Vと5Vの時の、利得Gの特性を示す図である。改善された利得制御電圧電流変換回路3Aにおいては、利得Gの電源電圧依存性が大幅に改善されていることが分かる。
【0106】
<基準電圧発生回路4の構成>
以下、gm一定型の基準電流発生回路4の構成を説明する。この基準電圧発生回路4は、前述のように、第1及び第2の差動増幅器1、2の定電流トランジスタ13に電源電圧VDDに依存しないドレイン電流2×Id1を基準電流として供給する。また、利得制御電圧電流変換回路3Aの電源電圧依存性を抑制するために用いられる。
【0107】
さらに、gm一定型の基準電流発生回路4は、電圧可変利得増幅回路100の利得Gの半導体製造プロセスによるばらつき、並びに温度依存性を抑制するために用いられる。
【0108】
図10は、gm一定型の基準電流発生回路4の回路図である。gm一定型の基準電流発生回路4は、抵抗値RBを有する抵抗70、Pチャネル型MOSトランジスタ71、72、73、74と、バイアス回路75と、Nチャネル型MOSトランジスタ76、77、78、79を含んで構成される。
【0109】
Pチャネル型MOSトランジスタ71、72は、ミラートランジスタであり、第1のカレントミラー回路を形成している。Pチャネル型MOSトランジスタ71のソースと電源電圧の間に抵抗素子70が接続されている。Pチャネル型MOSトランジスタ72のソースには電源電圧VDDが印加される。
【0110】
Nチャネル型MOSトランジスタ76、77は、ミラートランジスタであり、第2のカレントミラー回路を形成している。Nチャネル型MOSトランジスタ76、77のソースは接地される。第2のカレントミラー回路は、第1のカレントミラー回路に直列に接続されている。
【0111】
Pチャネル型MOSトランジスタ73、74は、Pチャネル型MOSトランジスタ71、72にそれぞれカスコード接続されている。Nチャネル型MOSトランジスタ78、79は、Nチャネル型MOSトランジスタ76、77にそれぞれカスコード接続されている。
図11に示すように、カスコード接続を採用しない場合は、Pチャネル型MOSトランジスタ73、74と、Nチャネル型MOSトランジスタ78、79とは省略される。
【0112】
カスコード接続されたNチャネル型MOSトランジスタ80、81は基準電流発生回路4の出力トランジスタを構成している。バイアス回路75は、Pチャネル型MOSトランジスタ73、74のゲートに共通の第1のバイアス電圧を印加する。また、バイアス回路75は、Nチャネル型MOSトランジスタ76、77、80のゲートに共通の第2のバイアス電圧を印加する。
【0113】
Nチャネル型MOSトランジスタ76、81は第3のカレントミラー回路を形成する。
図11に示すように、カスコード接続を採用しない場合、Nチャネル型MOSトランジスタ80は省略される。
【0114】
Pチャネル型MOSトランジスタ82と、Nチャネル型MOSトランジスタ80、81は電源電圧VDDと接地の間に直列に接続される。第1及び第2の差動増幅器1、2の定電流トランジスタ13とPチャネル型MOSトランジスタ82とは第4のカレントミラー回路を形成する。
【0115】
Pチャネル型MOSトランジスタ71のゲートソース間電圧をVgs3、Pチャネル型MOSトランジスタ72のゲートソース間電圧をVgs4、抵抗70及びチャネル型MOSトランジスタ71に流れる電流をI
RO(基準電流)とすると、数式29が成り立つ。
【0117】
ここで、飽和領域の電流式(数式6)より、数式30が成り立つ。ただし、Pチャネル型MOSトランジスタ71のゲートサイズ比をS3とし、Pチャネル型MOSトランジスタ72のゲートサイズ比をS4とすると、S3=K・S4の関係に設定されているとする。また、μpはPチャネル型MOSトランジスタ71、72の移動度、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
【0119】
Vt3,Vt4はそれぞれPチャネル型MOSトランジスタ71、72のしきい値電圧である。基板バイアス効果を無視し、Vt3=Vt4とすると、数式30は数式31のように整理することができる。
【0121】
したがって、数式31から電流I
ROは、数式32で表わすことができる。
【0123】
すなわち、基準電流I
ROは、抵抗値RBの2乗の逆数に比例する。また、I
ROは、電源電圧VDDの影響は受けないが、Pチャネル型MOSトランジスタ71の特性(μp・Cox)の影響を受ける。また、抵抗値RBの温度依存性の影響も受ける。
【0124】
また、第4のカレントミラー回路により、PチャネルMOSトランジスタ82には、
基準電流I
ROが流れる。(ミラー比αを1とした場合)これにより、第1及び第2の差動増幅器1、2の定電流トランジスタ13に電流I
RO(=2×Id1)が流れる。(ミラー比を1とした場合)ここで、電流I
ROを2×Id1と置くと、
図2の第1及び第2の差動入力トランジスタ11、12にはそれぞれId1(=1/2・I
R)が流れることになる。
【0125】
次に、gm一定型の基準電流発生回路4によって得られる基準電流I
ROに基づき、第1の差動増幅器1の利得G1を求める。利得G1は、数式8で表わされる。数式8において、Id1=1/2・I
ROである。すると、利得G1は、数式33で表わされる。
【0127】
数式33に数式32のI
ROを代入すると、数式34が得られる。
【0129】
したがって、電圧可変利得増幅回路100の全体の利得Gは、数式9より、数式35で表わされる。
【0131】
数式35のγは数式36で表わされる。
【0133】
ここで、γは、第1の差動入力トランジスタ11とPチャネル型MOSトランジスタ72のサイズ比で決定される値であり、(RO/RB)
2は、抵抗値の比で決定される値である。したがって、gm一定型の基準電流発生回路4を採用することにより、電圧可変利得増幅回路100の全体の利得Gは、電源電圧依存性、半導体製造プロセスによるばらつき、並びに温度依存性をそれぞれ抑制することができる。
【0134】
このように、gm一定型の基準電流発生回路4は、電圧可変利得増幅回路100に用いて好適であるが、
図12に示すような2段構成の増幅回路100A、
図13に示すような1段構成の増幅回路100Bにも用いることもできる。すなわち、数式34から分かるように、第1の差動増幅器1の利得G1についても、半導体製造プロセスによるばらつき、並びに温度依存性をそれぞれ抑制することができる。