(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132905
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ゼアキサンチンの製造方法及び細菌の培養方法
(51)【国際特許分類】
C12P 23/00 20060101AFI20170515BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20170515BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20170515BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
C12P23/00ZNA
C12N1/00 B
C12N1/20 A
C12N1/00 F
!C12N15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-508658(P2015-508658)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2014058749
(87)【国際公開番号】WO2014157457
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-73833(P2013-73833)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】矢田 哲久
(72)【発明者】
【氏名】東 光利
(72)【発明者】
【氏名】高橋 季之
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/122616(WO,A1)
【文献】
特開2007−244222(JP,A)
【文献】
NAGAI, H.,327880 Development of Production Method for Zeaxanthin By Fermentation Using Paracoccus Carotinifaci,2013 AIChE Annual Meeting, Webprogram, [online],2013年11月 5日,[retrieved on 2014.06.16], Retrieved from the Internet,URL,https://aiche.confex.com/aiche/2013/webprogram/Paper327880.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 23/00
C12N 1/00
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を用いたゼアキサンチンの製造方法であって、
(i) キレート剤を含有する培地中にて、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の平均圧力条件下にて該微生物を培養し、ゼアキサンチンを生成する工程、及び
(ii) 培養物より、生成されたゼアキサンチンを回収する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
工程(ii)が、培養物より培地成分及び水分を除去して乾燥させることによりゼアキサンチンを含む組成物を得る工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、ゼアキサンチンを含む組成物よりゼアキサンチンを精製する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
キレート剤がクエン酸又はその塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
培地がクエン酸又はその塩を0.5 g/L以上かつ10 g/L以下の濃度で含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下の平均圧力条件下にて前記微生物を培養する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
キレート剤を含有する培地中にて、パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を培養することを含む、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の圧力条件下における該微生物のゼアキサンチン生産能を向上させる方法。
【請求項9】
キレート剤がクエン酸又はその塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
圧力条件が0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
キレート剤を含有する培地中にて、パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を培養することを含む、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の圧力条件下における該微生物を培養する方法。
【請求項13】
キレート剤がクエン酸又はその塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
圧力条件が0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力条件下におけるゼアキサンチン生産微生物の効率的な培養方法及びそれを用いたゼアキサンチンの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼアキサンチンはトウモロコシなど種々の植物に含まれ天然の黄色色素として飼料に添加され、ニワトリなどの家禽類の卵黄、肉、表皮の色調を改善する用途および食品の着色料としての用途が知られる。また強力な抗酸化作用を有し(非特許文献1)、抗腫瘍効果が報告されている(非特許文献2)。ゼアキサンチンはルテインとともに網膜及び水晶体に存在し眼の健康維持に関与していることが知られている(非特許文献3)。これらの生理的効果からゼアキサンチンは健康食品素材、化粧品素材及び医薬品素材として有用である。
【0003】
従来、ゼアキサンチンの製造法としてはオキソイソホロンの不斉還元により得た光学活性なヒドロキシケトンを原料として用いる化学合成法(非特許文献4)、トウモロコシの種子やマリーゴールドなどの植物原料から抽出する方法(非特許文献5、特許文献1)、さらに、スピルリナ藻類(特許文献2)、ナンノクロリス属微細藻類(特許文献3)、フレキシバクター属細菌(特許文献4)、アルテロモナス属細菌(特許文献5)、フラボバクテリウム属細菌(非特許文献6)、細菌アグロバクテリウム・オウランティアクム(非特許文献7)、パラコッカス属細菌(特許文献6−9)等の微生物による生産方法が知られていた。
【0004】
しかしながら、化学合成法においては有機溶剤を使用するため安全性及び近年の天然物指向の面で問題がある。また、植物に含まれるゼアキサンチン含量は非常に低く、また、従来の微生物によるゼアキサンチン生産量は十分に高いものではなかったことから、植物及び微生物を用いた方法では効率的にゼアキサンチンを得ることができず実用的でなかった。
【0005】
これらの課題を解決するために、本発明者らはこれまでにゼアキサンチン生産能の高いパラコッカス属微生物(以下、「ゼアキサンチン生産微生物」と記載する。)を開発し、当該微生物を利用することによって効率的にゼアキサンチンを製造することが可能であることを報告している(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-092205号公報
【特許文献2】特開平10-155430号公報
【特許文献3】特開平7-59558号公報
【特許文献4】特開平5-328978号公報
【特許文献5】特開平5-49497号公報
【特許文献6】特開平7-79796号公報
【特許文献7】特開平8-9964号公報
【特許文献8】米国特許第5,607,839号公報
【特許文献9】米国特許第5,858,761号公報
【特許文献10】特開2005-87097号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fisheries Science, 62 (1), 134-137, 1996
【非特許文献2】Biol. Pharm. Bull., 18 (2), 227-233, 1995
【非特許文献3】FOOD Style 21, 3 (3), 50-53, 1999
【非特許文献4】Pure Appl. Chem., 63 (1), 45, 1991
【非特許文献5】生体色素,朝倉書店,1974年出版
【非特許文献6】Carotenoids, in Microbial Technology, 2nd edn, Vol.1, 529-544,New York:Academic Press
【非特許文献7】FEMS Microbiology Letters, 128, 139-144, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、商業規模のゼアキサンチン製造を目的として、大型の培養槽(例えば、高さ10m)にて上記ゼアキサンチン生産微生物の培養を行う際、もしくは、酸素供給能力の不足する培養槽において酸素供給量を高めるために、張り込む液量を少なくして(例えば、高さ5m)更に空気相を加圧する場合などに、培養槽の下部に位置する微生物は液深分の水圧、あるいは水圧と気相の圧力を併せた圧力を受けており、これによって当該微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能が顕著に低下することを見出した。
【0009】
従って本発明は、商業規模の大型の培養槽における培養においてゼアキサンチン生産微生物が受け得る圧力条件下においても、当該微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を顕著に低下させることなく、ゼアキサンチン生産能及び増殖能を維持することを可能とする、ゼアキサンチン生産微生物の培養方法、及び該培養方法を用いたゼアキサンチンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉄元素をキレート化し、培地中に可溶化させる作用を有するキレート剤、例えばクエン酸又はその塩、を含む培地を用いて、ゼアキサンチン生産微生物を培養することによって、所定の圧力条件下においても、当該微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を顕著に低下させることなく、ゼアキサンチン生産能及び増殖能を維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
[1] パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を用いたゼアキサンチンの製造方法であって、
(i) キレート剤を含有する培地中にて、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の平均圧力条件下にて該微生物を培養する工程、及び
(ii) 培養物より、生成されたゼアキサンチンを回収する工程、
を含む、上記方法。
【0013】
[2] 工程(ii)が、培養物より培地成分及び水分を除去して乾燥させることによりゼアキサンチンを含む組成物を得る工程を含む、[1]の方法。
【0014】
[3] さらに、ゼアキサンチンを含む組成物よりゼアキサンチンを精製する工程を含む、[2]の方法。
【0015】
[4] キレート剤がクエン酸又はその塩である、[1]〜[3]のいずれかの方法。
【0016】
[5] 培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、[4]の方法。
【0017】
[6] 培地がクエン酸又はその塩を0.5 g/L以上かつ10 g/L以下の濃度で含有する、[5]の方法。
【0018】
[7] 0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下の平均圧力条件下にて前記微生物を培養する、[1]〜[6]のいずれかの方法。
【0019】
[8] キレート剤を含有する培地中にて、パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を培養することを含む、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の圧力条件下における該微生物のゼアキサンチン生産能を向上させる方法。
【0020】
[9] キレート剤がクエン酸又はその塩である、[8]の方法。
【0021】
[10] 培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、[9]の方法。
【0022】
[11] 圧力条件が0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下である、[8]〜[10]のいずれかの方法。
【0023】
[12] キレート剤を含有する培地中にて、パラコッカス(Paracoccus)属に属するゼアキサンチン生産微生物を培養することを含む、0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の圧力条件下における該微生物を培養する方法。
【0024】
[13] キレート剤がクエン酸又はその塩である、[12]の方法。
【0025】
[14] 培地がクエン酸又はその塩を14 g/L未満の濃度で含有する、[13]の方法。
【0026】
[15] 圧力条件が0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下である、[12]〜[14]のいずれかの方法。
【0027】
[16] [2]の方法により製造された、ゼアキサンチンを含む組成物。
【0028】
[17] [3]の方法により製造された、ゼアキサンチン。
【0029】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2013-073833号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、商業規模の大型の培養槽における培養においてゼアキサンチン生産微生物が受け得る圧力条件下においても、当該微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を顕著に低下させることなく、ゼアキサンチン生産能及び増殖能を維持することを可能とする、ゼアキサンチン生産微生物の培養方法、及び該培養方法を用いたゼアキサンチンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1はパラコッカス属微生物のカロテノイド類の生合成経路を示す模式図である。
【
図2】
図2はゼアキサンチン生産微生物を異なる圧力条件下にて培養して得られた培養液中のゼアキサンチン濃度(実線)及び微生物濃度(点線)の測定結果を示す。培養液中のゼアキサンチン濃度は、0.003 MPaの圧力条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。
【
図3】
図3はゼアキサンチン生産微生物を0.05 MPaの圧力条件下、クエン酸ナトリウムの添加量の異なる培地中で培養して得られた培養液中のゼアキサンチン濃度(実線)及び微生物濃度(点線)の測定結果を示す。培養液中のゼアキサンチン濃度は、クエン酸ナトリウムの添加量0 g/Lの条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。
【
図4】
図4はゼアキサンチン生産微生物を異なる圧力条件下にて、クエン酸ナトリウムを2.8 g/L添加した培地中で培養して得られた培養液中のゼアキサンチン濃度(実線)及び微生物濃度(点線)の測定結果を示す。培養液中のゼアキサンチン濃度は、クエン酸ナトリウム無添加の培地中、0.003 MPaの圧力条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。
【
図5】
図5はクエン酸ナトリウム添加量の異なる培地の上清中における各種イオン濃度の測定結果を示す。(丸)リン酸イオン;(三角)カリウムイオン;(ばつ)マグネシウムイオン;(ひし形)カルシウムイオン;(四角)鉄イオン。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.ゼアキサンチン生産微生物
本発明におけるゼアキサンチン生産微生物は、パラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物であり、生産される総カロテノイド量に対するゼアキサンチンの比率が高い微生物である。
【0033】
ゼアキサンチン生産微生物は公知の手法(例えば、特開2005-87097号公報参照)に基づいて得ることができる。すなわち、パラコッカス(Paracoccus)属に属するアスタキサンチン生産微生物(以下、「アスタキサンチン生産微生物」と記載する。)を変異処理して突然変異を誘発し、生産されるゼアキサンチンの総カロテノイド生産量に対する比率(質量%)が親株であるアスタキサンチン生産微生物のそれよりも高い変異株を選抜・取得することにより得ることができる。
【0034】
アスタキサンチン生産微生物としては、16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が配列番号1に記載の塩基配列と実質的に相同であるアスタキサンチン生産細菌が挙げられる。このようなアスタキサンチン生産微生物として、例えばE-396株(FERM BP-4283)及びA-581-1株(FERM BP-4671)、ならびに、これら変異株及びこれらの近縁種が挙げられる。なお、E-396株(FERM BP-4283)及びA-581-1株(FERM BP-4671)は、工業技術院生命工学工業技術研究所(独立行政法人産業技術研究所 特許生物寄託センター)(現在の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター)に平成5年(1993年)4月27日及び平成6年(1994年)5月20日にそれぞれ寄託されている。
【0035】
アスタキサンチン生産微生物に対する変異処理は、例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホネート(EMS)等の変異剤による化学的方法、紫外線照射、X線照射等の物理的方法、遺伝子組換え、トランスポゾン等による生物学的方法などを用いることができる。この変異処理は1回でもよいし、また、例えばこの突然変異処理によりアスタキサンチン生産微生物の変異体を得て、これをさらに突然変異処理するというように2回以上の変異処理を行ってもよい。
【0036】
変異処理されたアスタキサンチン生産微生物の突然変異体の中から、生産されるゼアキサンチンの総カロテノイド生産量に対する比率(質量%)が親株のそれよりも高くなっている変異株を選抜してゼアキサンチン生産微生物を得ることができる。固体培地上にコロニーを形成させた場合、ゼアキサンチン生産微生物のコロニーは黄色〜橙色を呈し、アスタキサンチン生産微生物の赤色〜赤橙色のコロニーと比較して容易に区別することが可能であり、効率的にゼアキサンチン生産微生物(変異株)を選抜することができる。このようにして選抜された変異株コロニーを慣用の方法により培養し、培養終了後に各変異株の培溶液中に含まれるカロテノイド化合物を、例えば、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー等を利用して分析する。これにより、ゼアキサンチンの総カロテノイド量に対する比率の高い変異株を選抜・取得することができる。ここで言う総カロテノイド量とは、アスタキサンチン、カンタキサンチン、アドニキサンチン、β−カロテン、エキネノン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、アステロイデノン、アドニルビンなどのカロテノイド化合物の総量をいう。また、アスタキサンチン生産微生物におけるアスタキサンチンの生合成はβ−カロテンを上流とし、ケト化酵素および水酸化酵素によりそれぞれ両端の6員環が修飾されて行われるとされる(
図1参照)。ここでケト化酵素が完全に欠損するか、又は不完全に欠損すれば、
図1中「ケト化」にて表示される矢印の反応は生じないか、又は低下し、それによって「ケト化」による生成物であるところの、エキネノン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、アステロイデノン、アドニルビン、アドニキサンチン及びアスタキサンチンは生産されないか、又は生産量が低下する。したがって、変異株の中からゼアキサンチン生産微生物を選抜するためのもう一つの有効な手段としては、エキネノン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、アステロイデノン、アドニルビン、アドニキサンチンおよびアスタキサンチンの総カロテノイド量に対するそれぞれの比率が低いことを基準に選抜する方法を用いることができる。前述化合物それぞれの総カロテノイドに対する比率がいずれも、10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満であることを基準に選抜することができる。
【0037】
2.培地
本発明にて用いられる培地は、キレート剤を含有する。「キレート剤」としては、鉄元素をキレート化し、培地中に可溶化させる作用を有する物質であれば特に限定されない。このようなキレート剤としては公知のものを利用することができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、フィチン酸、ポリアミノリン酸、乳酸、アルキルジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)及びそれらの塩が挙げられる。塩としては水溶性塩が挙げられ、例えばナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。キレート剤として好ましくはクエン酸又はクエン酸塩である。このようなキレート剤を培地に含めることによって、ゼアキサンチン生産微生物によるゼアキサンチン生産及び当該微生物の増殖を阻害する圧力条件下においても、ゼアキサンチン生産微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を向上させることができる。これらキレート剤の培地に加える添加量は、用いるキレート剤の種類や鉄元素をキレート化する能力によって変更されるが、ゼアキサンチン生産微生物によるゼアキサンチン生産及び当該微生物の増殖を阻害する圧力条件下においても、ゼアキサンチン生産微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を向上させる範囲にて適宜調節することができる。用いるキレート剤がクエン酸又はその塩であれば、培地1L当たり14 g未満、好ましくは10.0g以下、より好ましくは8.4 g以下である。クエン酸又はその塩の添加量の下限は特に限定されないが、少なすぎれば十分なキレート効果が得られないことから、培地1L当たり0.5 g以上、好ましくは1.0 g以上、より好ましくは1.5 g以上、さらに好ましくは2.8 g以上である。したがって、クエン酸又はその塩の添加量として、培地1L当たり好ましくは0.5 g以上かつ10.0g以下、より好ましくは2.8 g以上かつ8.4 g以下、の範囲から選択される量を用いることができる。
【0038】
培地はさらに、ゼアキサンチン生産微生物が生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩および必要であれば特殊な要求物質(例えば、ビタミン、アミノ酸、核酸等)を含む。炭素源としてはグルコース、シュークロース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、マルトース等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール等のアルコール類等が挙げられる。添加割合は炭素源の種類により異なるが、通常培地1L当たり1 g〜100 g、好ましくは2 g〜50 gである。窒素源としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素等の1種または2種以上が用いられる。添加割合は窒素源の種類により異なるが、通常培地1 Lに対し0.1 g〜20 g、好ましくは1 g〜10 gである。無機塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の1種または2種以上が用いられる。添加割合は無機塩の種類により異なるが、通常、培地1 Lに対し0.1 mg〜10 gである。特殊な要求物質としてはビタミン類、核酸類、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、乾燥酵母、大豆粕、大豆油、オリーブ油、トウモロコシ油、アマニ油等の1種または2種以上が用いられる。添加割合は特殊な要求物質の種類により異なるが、通常、培地1 Lに対し0.01 mg〜100 gである。培地のpHは2〜12、好ましくは6〜9に調整する。
【0039】
3.培養方法
本発明はゼアキサンチン生産微生物の培養において、当該ゼアキサンチン生産微生物に対して0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下、または0.008 MPa以上かつ0.08 MPa未満、好ましくは0.02 MPa以上かつ0.08 MPa以下、または0.02 MPa以上かつ0.08 MPa未満、さらに好ましくは0.05 MPaの圧力が付加される状況を有する培養方法に適用することができる。ただし、大型の培養槽を用いた場合、液相部分の圧力(水圧)は深度によって異なり、培地上部の圧力条件と培地下部の圧力条件に差が生じる。したがって、大型の培養槽を用いた場合の上記圧力値は培養系(液相部分)にかかる平均圧力値とすることができる。例えば、大型培養槽(高さ10 M)を用いた一般的な培養方法について例示すると、当該培養槽に対して深さ6 Mまで培地を満たし、気相に0.02 MPaの圧力を付加した場合、当該培養系にかかる平均圧力値は、0.02 MPa(気相部)+0.03 MPa(培地水深中央値3 Mの水圧)として求めることができる。
【0040】
ゼアキサンチン生産微生物に対して0.008 MPa以上かつ0.08 MPa以下の圧力が付加される条件下において、当該微生物を通常の培地を用いて培養すると当該微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能は顕著に低下する。一方、上記培地を使用して培養を行うことにより、ゼアキサンチン生産微生物のゼアキサンチン生産能は、上記圧力条件下においても顕著に低下することがなく、その生産能を維持することができる。また、上記培地を使用してゼアキサンチン生産微生物の培養を行うことにより、ゼアキサンチン生産微生物の増殖を促すことができ、上記圧力条件下においても当該微生物の増殖能が顕著に低下することはない。すなわち、上記培地を使用してゼアキサンチン生産微生物の培養を行うことにより、上記圧力条件下においてもゼアキサンチンを高効率に生産・製造することができる。
【0041】
培養は10〜70℃、好ましくは20〜35℃の温度にて、通常1日〜20日間、好ましくは2〜9日間振とう培養あるいは通気撹拌培養により行うことができる。
【0042】
4.ゼアキサンチンの回収
本発明にて生産されたゼアキサンチンは、公知の手法に基づいて回収することができる。すなわち、培養終了後、培養液からろ過法、遠心分離法などにより培地成分や水分を除去することによって、ゼアキサンチンを含む培養沈殿物を得ることができる。必要であればさらに、当該培養沈殿物を噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により乾燥し、ゼアキサンチンを含む沈殿乾燥物を得ることができる。
【0043】
次いで、上記培養沈殿物又は沈殿乾燥物より、水溶性有機溶媒を用いてゼアキサンチンを抽出する。水溶性有機溶媒は特に限定されないが、例えばテトラヒドロフラン、ピリジン、ジオキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチルメチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもあるいはこれらと水とを混合して用いてもよい。得られた水溶性有機溶媒抽出液を減圧濃縮などにより溶媒を除去することにより、ゼアキサンチンを含む抽出物を得ることができる。得られた抽出物は必要により脱臭処理に供してもよいし、植物油に懸濁してもよい。
【0044】
さらに、上記水溶性有機溶媒抽出液に非極性有機溶媒及び水を加え、液液抽出を行うことにより、ゼアキサンチンをさらに精製することができる。非極性溶媒としては例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、ナフサ、ケロシン等を用いることができる。液液抽出後に得られた非極性溶媒相は分離回収したのち、濃縮又は加水又は非極性溶媒の追加又は冷却を行うことにより高純度のゼアキサンチンを析出させることができる。濃縮、加水、非極性溶媒の追加及び冷却の工程はそれぞれ単独に実施してもよいが、必要に応じいくつかを組み合わせて実施することも可能である。得られた析出物はろ過により容易に回収されるので、必要に応じ溶媒等で洗浄を行い、乾燥して高純度のゼアキサンチン抽出精製物を得ることができる。
【0045】
以上の方法で得られるゼアキサンチンを含む培養沈殿物、沈殿乾燥物、抽出物、抽出精製物等の中から、飼料配合剤、食品素材、化粧品素材及び医薬品素材としてそれぞれ必要な製品形態を選択し利用することができる。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[シード用フラスコ培地]
シード用フラスコ培地は以下の組成を有するものを使用した。
【0048】
シュークロース30g/L;コーンスティープリカー30g/L;リン酸二水素カリウム1.5g/L;リン酸水素二カリウム無水和物3g/L;塩化カルシウム2水和物5.0g/L;硫酸マグネシウム7水和物12g/L;硫酸鉄7水和物0.3g/L、pH7.2、100mlを、500ml容量の綿栓付き三角フラスコに入れ、121℃で20分間オートクレーブ殺菌し、以下の実施例に用いた。
【0049】
[基本培地]
基本培地は以下の組成を有するものを使用した。
【0050】
グルコース30g/L;コーンスティープリカー30g/L;硫酸アンモニウム5g/L;リン酸二水素カリウム2.25g/L;リン酸水素二ナトリウム12水和物5.7g/L;塩化カルシウム2水和物1g/L;硫酸マグネシウム7水和物5g/L;硫酸鉄7水和物5g/L;L-グルタミン酸ナトリウム1水和物6g/L;アルコール系消泡剤0.5g/L。
【0051】
当該基本培地2.0Lを5L容量の発酵槽に入れ、必要に応じて所定量のクエン酸ナトリウムを添加して、121℃で30分間オートクレーブ殺菌し、以下の実施例に用いた。
【0052】
[ゼアキサンチン生産微生物]
ゼアキサンチン生産微生物は、パラコッカス(Paracoccus)属に属するアスタキサンチン生産微生物より上記手法により得られた変異株を使用した。
【0053】
[培養方法]
微生物を、上記シード用フラスコ培地に一白金耳植菌し、28℃で2日間、100rpmで回転振とう培養を行った後、その培養液80mLを基本培地を入れた発酵槽に植菌した。
【0054】
所定の圧力条件下、及び所定のクエン酸ナトリウム添加条件下において、28℃、通気量1vvmの好気培養を140時間行った。培養中のpHが7.2を維持するように15%アンモニア水で連続的にpHを制御した。グルコースは枯渇しないように培養1日目、2日目、3日目及び4日目にそれぞれ50gずつ添加した。また、最低攪拌回転数を500rpmとし、培養中期における培養液中の溶存酸素濃度を2.4 ppmに維持した。気泡センサーで発泡を感知することによりアルコール系消泡剤を自動添加、もしくは必要に応じて消泡剤を連続添加して発泡を抑えた。
【0055】
[圧力条件の制御]
圧力の制御は手動で背圧弁を調整して制御した。
【0056】
なお、以下の実施例中に記載される圧力条件の値は、培養系(液相部分)にかかる平均圧力値を示す。
【0057】
[ゼアキサンチン濃度の測定]
ゼアキサンチンの定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて以下のとおり行った。
【0058】
分析カラムはInertsil SIL-100A, 5μm(φ4.6×250mm)(GLサイエンス製)を2本連結して使用した。溶出は、移動相であるn-ヘキサン/テトラヒドロフラン/メタノール混合液(40:20:1)を室温付近一定の温度にて毎分1.0mL流通させることで行った。測定においては、サンプルをテトラヒドロフランで溶解し、移動相にて100倍希釈した液20μLを注入量とし、カラム溶離液の検出は波長470nmで行った。また、定量のための標準品としては、EXTRASYNTHESE社製ゼアキサンチン(Cat.No.0307 S)を用いた。標準液のゼアキサンチン濃度の設定は、標準液の453nmの吸光度(A)及び上記条件でHPLC分析を行ったときのゼアキサンチンピークの面積百分率%(B)を測定した後に、以下の式を用いて行った。
【0059】
ゼアキサンチンの濃度(mg/L)=A÷2327×B×100
[菌体濃度の測定]
波長610 nmにて、培養終了後の培養液の吸光度(OD
610)を、分光光度計を用いて計測しこの値を培養液の菌体濃度とした。
【0060】
(実施例1)ゼアキサンチン生産微生物に対する圧力の影響
ゼアキサンチン生産微生物を0.003MPa、0.025MPa、0.05 MPa、0.075MPa、又は0.1 MPaの圧力条件下、クエン酸ナトリウム未添加の基本培地を用いて上記培養方法にて培養を行った。
【0061】
培養終了後、培養液を回収し培養液中のゼアキサンチン濃度及び微生物濃度を測定した。
【0062】
結果を
図2に示す。培養液中のゼアキサンチン濃度は、0.003 MPaの圧力条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。培養中、圧力を付加することによって培養液のゼアキサンチン濃度は低下し、0.05 MPaの圧力を付加した場合に最も低い値を示した。培養液の微生物濃度も同様の傾向を示した。
【0063】
(実施例2)圧力条件下におけるゼアキサンチン生産微生物に対するクエン酸塩の効果
ゼアキサンチン生産微生物を0.05 MPaの圧力条件下、クエン酸ナトリウムを0 g/L、2.8 g/L、8.4 g/L、14g/L、又は21g/Lの濃度となるように添加して調製した基本培地を用いて、上記培養方法にて培養を行った。
【0064】
培養終了後、培養液を回収し培養液中のゼアキサンチン濃度及び微生物濃度を測定した。
【0065】
結果を
図3に示す。培養液中のゼアキサンチン濃度は、クエン酸ナトリウムの添加量0 g/Lの条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。0.05 MPaの圧力条件下の培養においても、培地にクエン酸ナトリウムを添加することによって、培養液のゼアキサンチン濃度が向上することが示された。培養液の微生物濃度も同様の傾向を示した。特に、培地中2.8 g/L〜8.4 g/Lの濃度となるようにクエン酸ナトリウムを添加することによって、ゼアキサンチン濃度及び微生物濃度が共に高い値を示した。
【0066】
(実施例3)クエン酸塩存在下におけるゼアキサンチン生産微生物に対する圧力の影響
ゼアキサンチン生産微生物を0.003 MPa、0.02 MPa、0.04 MPa、0.06 MPa、0.08 MPa、又は0.1 MPaの圧力条件下、クエン酸ナトリウムを2.8 g/Lの濃度となるように添加して調製した基本培地を用いて、上記培養方法にて培養を行った。
【0067】
培養終了後、培養液を回収し培養液中のゼアキサンチン濃度及び微生物濃度を測定した。
【0068】
結果を
図4及び表1に示す。
【表1】
【0069】
培養液中のゼアキサンチン濃度は、上記実施例1のクエン酸ナトリウム無添加の培地中、0.003 MPaの圧力条件下にて得られた培養液中のゼアキサンチン濃度を100%とする相対値にて示す。培地にクエン酸ナトリウムを添加することによって、0.05 MPaの圧力条件下に限らず、商業規模で必要とされる0.02 MPa〜0.08 MPaの圧力条件下においても、培養液のゼアキサンチン濃度は大きく低下することはなかった。ただし、実施例1及び
図2の結果と比較して明らかなとおり、圧力条件が0.008 MPaよりも小さい場合、及び0.08 MPaよりも大きい場合においてはクエン酸ナトリウムを培地に添加することによって、培養液のゼアキサンチン濃度が減少することが示された。一方、培養液中の微生物濃度は、培地にクエン酸ナトリウムを添加することによって、0.05 MPaの圧力条件下に限らず、他の圧力条件下においても大きな低下はみられなかった。また、培地にクエン酸ナトリウムを添加することによって、圧力条件に関わらず、培養液中の微生物濃度を向上できることが示された(
図2参照)。
【0070】
(実施例4)クエン酸塩添加による培養上清中のイオン濃度変化
クエン酸ナトリウムを0 g/L、2.8 g/L、8.4 g/L、又は14 g/Lの濃度となるようにそれぞれ添加して調製した基本培地を遠心分離して上清を回収した。次いで、得られた各上清中のカルシウムイオン、鉄イオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びリン酸イオンの濃度をそれぞれ測定した。各陽イオン濃度はICP発光分析法により測定し、リン酸イオンについてはモリブデンブルー吸光度法で測定した。
【0071】
結果を
図5に示す。培養上清中のリン酸イオン、カルシウムイオン及び鉄イオンの量がそれぞれ、クエン酸ナトリウムの添加量依存的に増大することが示された。特に鉄イオンは、クエン酸ナトリウム未添加の培地上清においては検出限界以下であったものが、クエン酸ナトリウムを14 g/Lの濃度となるように添加した培地上清においては約80 ppmにまで増大した。
【0072】
図1に示すパラコッカス属微生物のカロテノイド生合成経路において、ゼアキサンチンの合成に関与する水酸化反応には鉄イオンが必要であることが明らかとなっている(Fraser, P.D.ら、 In Vitro Characterization of Astaxanthin Biosynthetic Enzymes, J. Biol. Chem., 1997, 272, 6128-6135)。上記実施例にて示されるクエン酸ナトリウム添加による、ゼアキサンチン生産量増大の一つの要因として、添加されたクエン酸ナトリウムのキレート作用により鉄元素が培地中に鉄イオンとして溶出され、これをゼアキサンチン生産微生物が利用できるようになったためと示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、商業規模の大型の培養槽における培養においても、ゼアキサンチン生産微生物のゼアキサンチン生産能及び増殖能を高く維持することが可能であり、商業規模の大型のゼアキサンチン製造を効率的に行うことができる。
【0074】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]