(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、8本のマイクロホンのうち、第4乃至第8のマイクロホンは、第1及び第3のマイクロホンの間に配置され、第2のマイクロホンのみが第1及び第3のマイクロホン間から離れて位置している。これにより、各マイクロホンユニットの集音の中心がばらついてしまい、結果的にマイクロホンアレイの前に立って話す話者の音の集音に偏りが生じる。より具体的には、第1のマイクロホンユニットの集音中心は中央に第3のマイクロホンの配置位置であり、第2のマイクロホンユニットの集音中心は第4のマイクロホンの配置位置であり、第3のマイクロホンユニットの集音中心は第5のマイクロホンの配置位置であり、第4のマイクロホンユニットの集音中心は第6のマイクロホンの配置位置であり、第5のマイクロホンユニットの集音中心は第7のマイクロホンの配置位置であり、そして第6のマイクロホンユニットの集音中心は第8のマイクロホンの配置位置である。そうすると、各マイクロホンユニットの集音中心は、マイクロホンアレイ全体の長さ方向に対して分散したものとなる。さらに、各マイクロホンユニットの集音中心は、マイクロホンアレイの長さ方向の中心位置(第3のマイクロホンの配置位置)から左側に偏った位置に点在することになる。各マイクロホンユニットは集音中心付近で最も効率よく集音できる特性を有していることから、例えば話者が第3乃至第4のマイクロホン間で話しているときには、話者の前に多くのマイクロホンユニットの集音中心が存在するので、集音が良好に行われるが、話者が第2及び第3のマイクロホン間で話している場合、良好に集音できない。遅延回路で各マイクロホンの音声信号に遅延を与えることにより指向方向を制御することはできるが、話者が第2及び第3のマイクロホン間で話をしている場合にのみ大きな遅延を与える必要があり、マイクロホンアレイ全体として集音特性に影響が出る。
【0006】
本発明は、マイクロホンアレイ装置において、各マイクロホンの集音中心が、マイクロホンアレイの長さ方向に対してなるべく分散しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマイクロホン装置は、マイクロホンアレイを有している。マイクロホンアレイは、n(nは3以上の正の整数)組のマイクロホンユニットからなる。各マイクロホンユニットのうち、1組目のマイクロホンユニットは、3本のマイクロユニットを等間隔に一列に配置してなる。m(1<m<nの正の整数)組目のマイクロホンユニットは、m−1番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンを含み、m−1番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てて、m−1番目のマイクロホンユニットの一方の端のマイクロホンから、一方の端のマイクロホンを挟んで他方の端のマイクロホンとは反対側に位置するマイクロホンを含んでいる。m+1番目のマイクロホンユニットは、m番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンを含み、m番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てて、m番目のマイクロホンユニットの他方の端のマイクロホンから、他方の端のマイクロホンを挟んで一方の端のマイクロホンとは反対側に位置するマイクロホンを含んでいる。前記各マイクロホンユニットのマイクロホンが収集して発生した音声信号を合成して合成手段が合成信号を出力させる。各マイクロホンユニットでは、そのマイクロホンユニットの両端のマイクロホンからの音声信号に所定の係数を乗算手段によって乗算し、中央のマイクロホンユニットの音声信号には、上記所定の係数よりも大きな係数、例えば所定の係数の2倍の係数を乗算手段で乗算し、これら乗算された音声信号を合成手段で合成することが望ましい。これら合成手段から出力された合成信号は、再合成手段で再合成する。なお、各マイクロホンの音声信号は、遅延手段で遅延した後に、各乗算手段に供給することも可能である。この場合、遅延手段の遅延量は、各マイクロホンが集音しようとする音源と前記各マイクロホンとの各距離差に基づいて各マイクロホンの音声信号に発生する遅延を一致させるように調整される。
【0008】
このように構成されたマイクロホン装置では、各マイクロホンユニットにおいて中央に位置するマイクロホンは、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの両側に交互に位置する。その結果、各マイクロホンは、特定の2つのマイクロホン間に集中して配置されることが無く、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの両側に配置され、結果的に各マイクロホンユニットの集音中心は1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの配置位置付近に集約される。。
【0009】
更に、n+1番目のマイクロホンユニットを構成するために、前記各マイクロホンのうちn番目のマイクロホンユニットのマイクロホン以外のマイクロホンであって、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンのいずれかまでの距離が、n番目のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離よりも長いマイクロホンをn+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホン
としている。この場合、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンのうち前記n+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンへの距離がn番目のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離よりも長いマイクロホンを、n+1番目のマイクロホンユニットの端のマイクロホンとする。n+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンを挟んで、n+1番目のマイクロホンユニットの端のマイクロホンと反対側に、n+1番目のマイクロホンユニットの中央及び端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てた位置にn+1番目のマイクロホンユニットの別の端のマイクロホンを配置する。n+1番目のマイクロホンユニットのマイクロホンが収集して発生した音声信号を、新たな合成手段で合成し、前記再合成手段に供給する。
【0010】
このように構成すると、n番目のマイクロホンユニットのマイクロホン以外のマイクロホンであって、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンのいずれかまでの距離がn番目のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離よりも長いマイクロホンが、n+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである。従って、このマイクロホンが、最も外側に位置するn+1組目のマイクロホンユニットの集音中心となる。また、他の組のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンも、n+1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの付近にある。これにより、各組のマイクロホンユニットの集音中心がn+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの位置付近にまとまって集約される。さらに、n+1番目のマイクロホンユニットを構成するために新たに追加されたn+1番目のマイクロホンユニットの別の端のマイクロホンとn+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンとの距離は、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホン間の距離よりも短い。従って、マイクロホンアレイの長さを短くすることができ、マイクロホン装置を小型化することができる。
【0011】
上記の態様のマイクロホン装置において、前記各マイクロホンは、ケースの内部にマイクロホンエレメントを有するものとすることができる。この場合、このエレメントがマイクロホン設置部上にほぼ接するように、前記ケースがマイクロホン設置部に埋め込まれている。例えばマイクロホンは、単一指向性のマイクロホンとすることができる。その場合、各マイクロホンは、その指向性を同一の方向に向けている。
【0012】
このように構成すると、例えば話者からの音声が各マイクロホンに斜め上方から入力されるが、マイクロホン設置板上で反射した不要な音声がマイクロホンエレメントに入射しにくくなり、音質低下を招きにくくなる。
【0013】
上記の態様において、前記各合成手段及び再合成手段が設けられた基板を、前記マイクロホンアレイに対して傾斜させることもできる。或いは、前記マイクロホンアレイを筐体内に配置させることもできる。この場合、前記マイクロホンアレイの両端の両外側に前記筐体の壁が位置し、これら壁が前記マイクロホンアレイに対して傾斜している。この場合も、各マイクロホンは、単一指向性のマイクロホンとすることができる。その場合、各マイクロホンは、指向性の方向を同一方向に向けている。
【0014】
これらのように構成すると、基板や筐体の壁で反射した反射音がマイクロホンに、マイクロホンの背面側から入射しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の1態様のマイクロホン装置2は、
図2に示すように演台4の天板6における話者が立つ側の長手縁側に取り付けられている。マイクロホン装置2は、筐体8を有している。筐体8は、上部が開口した細長い箱状のもので、その一方の長手縁を天板6の長手縁に沿わせて配置されている。筐体8の上部開口にはカバー10が取り付けられている。
図3及び
図4に示すように、筐体8は、マイクロホン設置部、例えば長方形状の底壁12を有している。
【0017】
この底壁12のうち天板6と反対側の話者側にある他方の長手縁に沿って、複数、例えば8本の第1乃至第8のマイクロホン(MIC)14−1乃至14−8が
図1に示すように配置されて、マイクロホンアレイが構成されている。これら第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8は、例えば単一指向性のマイクロホンである。第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8は、それらの指向性の方向が底壁12の長手縁に直交し、かつ話者の方向を向くように、配置されている。これら第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8は、
図3に示すように例えば円筒状のケース16を有し、このケース16の一方の端が話者側を向くように配置され、この端には音声導入用の開口18が形成されている。このケース16の内部にマイクロホンエレメント20が話者側を向いて配置されている。マイクロホンエレメント20は、その中心が開口18の中心と一致するようにケース16内に配置されている。また、ケース16の他方の端には、
図3及び
図5に示すように、複数、例えば4つの貫通孔22が形成されている。
【0018】
第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8は、
図3及び
図4に示すように、開口18が底壁12の上面に接するようにケース16が底壁12に埋め込まれている。話者の頭部は、通常には、天板6よりも上方に位置するので、話者からの音声は、マイクロホン14−1乃至14−8に対して斜め上方から到来する。もし、開口18が底壁12の上面よりも上方に位置するようにケース16を底壁12に取り付けていた場合、話者の音声が直接に開口18からマイクロホンエレメント20に到達すると共に、底壁12の上面で反射した音声も開口18からマイクロホンエレメント20に到達する。この場合、直接に到来した音声が、反射して到来した音声に干渉されて、音質の低下を招く虞がある。これを防止するために、上述したように開口18を底壁12の上面に接しさせている。これによって、
図3に矢印aで示すように底壁12で反射した音声は開口18からケース12内に入りにくくなる。
【0019】
図1に示すように、第1のマイクロホン14−1は、底壁12の長さ方向のほぼ中央に配置されている。第2のマイクロホン14−2は、第1のマイクロホン14−1から予め定めた距離dだけ離れた位置に配置されている。第3のマイクロホン14−3は、第2のマイクロホン14−2を挟んで第1のマイクロホン14−1と反対側に、上記距離dだけ離れて位置している。これら第1乃至第3のマイクロホン14−1乃至14−3によって第2のマイクロホン14−2が中央に位置し、その両側に第1及び第3のマイクロホン14−及び第3のマイクロホン14−3が位置する1組目のマイクロホンユニットが構成されている。
【0020】
第1のマイクロホン14−1と第3のマイクロホン14−3とは、
図1から明らかなように、距離2dだけ隔てて位置している。この距離2dだけ第3のマイクロホン14−3から離れて、しかも第1のマイクロホン14−1を挟んで第1のマイクロホン14−1と反対側に第4のマイクロホン14−4が配置されている。この第1、第3及び第4のマイクロホン14−1、14−3及び14−4によって、第3のマイクロホン14−3が中央に位置し、その両側に第1及び第4のマイクロホン14−1及び14−4が位置する2組目のマイクロホンユニットが構成されている。
【0021】
第4のマイクロホン14−4と第1のマイクロホン14−1とは、
図1から明らかな用に距離4dだけ離れて位置している。この距離4dだけ第1のマイクロホン14−1から離れて、しかも第1のマイクロホン14−1を挟んで第4のマイクロホンと反対側に第5のマイクロホン14−5が位置している。この第1、第4及び第5のマイクロホン14−1、14−4及び14−5によって、第1のマイクロホン14−1が中央に位置し、その両側に第4及び第5のマイクロホン14−4及び14−5が位置する3組目のマイクロホンユニットが構成されている。
【0022】
第5のマイクロホン14−5と第4のマイクロホン14−4とは、
図1から明らかなように距離8dだけ隔てて位置している。この距離8dだけ第4のマイクロホン14−4から離れて、しかも第4のマイクロホン14−4を挟んで第5のマイクロホン14−5と反対側に第6のマイクロホン14−6が配置されている。これら第4、第5及び第6のマイクロホン14−4、14−5及び14−6によって、第4のマイクロホン14−4が中央に位置し、その両側に第5及び第6のマイクロホン14−5及び14−6が位置する4組目のマイクロホンユニットが構成されている。
【0023】
第5のマイクロホン14−5と第6のマイクロホン16との間の距離は、
図1から明らかなように距離16dだけ隔てて位置している。この距離16dだけ離れて第5のマイクロホン14−5から離れて、第5のマイクロホン14−5を挟んで第6のマイクロホン14−6と反対側に第7のマイクロホン14−7が配置されている。これら第5、第6及び第7のマイクロホン14−5、14−6及び14−7によって、第5のマイクロホン14−5が中央に位置し、その両側に第6及び第7のマイクロホン14−6及び14−7が位置する5組目のマイクロホンユニットが構成されている。
【0024】
これら1組目乃至5組目までのマイクロホンユニットでは、
図1から明らかなように1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第2のマイクロホン14−2の一方の側、
図1では右側に、第2組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第3のマイクロホン14−3が位置し、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第2のマイクロホン14−2の他方の側、
図1では左側に、3組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第1のマイクロホン14−1が位置している。4組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第4のマイクロホン14−4は、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第2のマイクロホン14−2の右側で、しかも2組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第3のマイクロホン14−3よりも外側に位置している。また、5組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第5のマイクロホン14−5は、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第2のマイクロホン14−2の左側に位置し、しかも3組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンである第1のマイクロホン14−1よりも左側に位置している。このように2組目以降のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンは、1組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンの両側に、交互に位置している。
【0025】
例えば日本国特許公開公報2013−93807号公報や日本特許第3732041号に開示されているマイクロホンの配置方法を使用して7本のマイクロホンを配置した場合、
図1における第3のマイクロホン14−3に相当するマイクロホンと、第7のマイクロホン14−7に相当するマイクロホンの間に、残りの5本のマイクロホンが配置され、第3のマイクロホン14−3に相当するマイクロホンの
図1における右側には全くマイクロホンが配置されない。
図1のマイクロホンアレイでは、第3のマイクロホン14−3の
図1における右側にも第4のマイクロホン14−4及び第6のマイクロホン14−6が配置されている。
【0026】
2組目乃至5組目のマイクロホンユニットの各マイクロホンの配置を一般化して言えば、合計でn組(この実施形態では5組)のマイクロホンユニットにおいて、m(1<m<n)組目のマイクロホンユニットは、m−1番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンを含み、m−1番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てて、m−1番目のマイクロホンユニットの一方の端のマイクロホンから、一方の端のマイクロホンを挟んで他方の端のマイクロホンとは反対側に位置するマイクロホンを含んでいる。m+1番目のマイクロホンユニットは、m番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンを含み、m番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てて、m番目のマイクロホンユニットの他方の端のマイクロホンから、他方の端のマイクロホンを挟んで一方の端のマイクロホンとは反対側に位置するマイクロホンを含んでいる。なお、全てのマイクロホンユニットの数は5に限らず、3以上であれば任意の正の整数とすることができ、その場合、mは(1<m<nの正の整数)となる。また、
図1では、上記一方の側は第2のマイクロホン14−2の右側で、上記他方の側は第2のマイクロホン14−2の左側であるが、逆に上記一方の側を第2のマイクロホン14−2の左側とし、他方の側を第2のマイクロホン14−2の右側とすることもできる。
【0027】
この実施形態では、6組目のマイクロホンユニットも設けられている。2乃至5組目のマイクロホンユニットと同様に6組目のマイクロホンユニットを構成するなら、第7のマイクロホン14−7と第6のマイクロホン14−6との距離32dだけ、第6のマイクロホン14−6から離れて、しかも第6のマイクロホン14−6を挟んで第7のマイクロホン14−7と反対側に第8のマイクロホン14−8を配置することになる。こうすると6組目のマイクロホンユニットは第7のマイクロホン14−7、第6のマイクロホン14−6、及び第8のマイクロホン14−8から構成されることになる。しかし、このように配置すると、1組目乃至6組目のマイクロホンユニットの集音中心がマイクロホンアレイの長さ方向の中心から一方(
図1では左側)に偏ったものとなってしまう。すなわち、このような配置では、最も外側に位置する6組目のマイクロホンユニットを構成するマイクロホンのうち中央に位置する第6のマイクロホン14−6の位置が、マイクロホンアレイの長さ方向の中心位置となる。そうすると、マイクロホンアレイの長さ方向の中心位置から一方(
図1では左側)に1組乃至5組のマイクロホンユニットの集音中心が偏ってしまう。
【0028】
そこで、今までに形成した第1乃至第5のマイクロホンユニットのうち直近のマイクロホンユニットである第5のマイクロホンユニットを除いた第1乃至第4のマイクロホンユニットに使用したマイクロホンである第5のマイクロホン14−5、第1のマイクロホン14−1、第2のマイクロホン14−2、第3のマイクロホン14−3、第4のマイクロホン14−4であって、第7のマイクロホン14−7とマイクロホンユニットを構成していないマイクロホン、即ち第1のマイクロホン14−1、第2のマイクロホン14−2、第3のマイクロホン14−3または第4のマイクロホン14−4のうちいずれかであって、第5のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンである第6及び第7のマイクロホン14−6、14−7までの距離が、第5のマイクロホンユニットの第5、第6及び第7のマイクロホン114−5、14−6及び14−7間の距離16dよりも長いマイクロホン、例えば第3のマイクロホン14−3を、6組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンとして、第3のマイクロホン14−3と第7のマイクロホン14−7との間の距離22dだけ、第3のマイクロホン14から隔てて、しかも第3のマイクロホン14−3を挟んで、第7のマイクロホン14−7と反対側に第8のマイクロホン14−8を配置してある。
【0029】
このように配置すると、第7のマイクロホン14−7と第8のマイクロホン14−8との距離は44dとなり、上記の距離64dよりも短くなり、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8からなるマイクロホンアレイを小型化することができるとともに、各マイクロホンユニットの集音位置をマイクロホンアレイの長さ方向の中心付近に集約することができる。すなわち、このような配置によって、最も外側に位置する6組目のマイクロホンユニットの集音中心が第3のマイクロホン14−3の位置となり、これによりマイクロホンアレイ全体の中心位置が第3のマイクロホン14−3の位置となる。この結果、
図1に太字で示すように、1組目のマイクロホンユニットの集音中心(第2のマイクロホン14−2の位置)、2組目のマイクロホンユニットの集音中心(第3のマイクロホン14−3の位置)、3組目のマイクロホンユニットの集音中心(第1のマイクロホン14−1の位置)、4組目のマイクロホンユニットの集音中心(第4のマイクロホン14−4の位置)、5組目のマイクロホンユニットの集音中心(第5のマイクロホン14−5の位置)、及び6組目のマイクロホンユニットの集音中心(第3のマイクロホン14−3の位置)が全て、マイクロホンアレイの全体の中心位置(第3のマイクロホン14−3の位置)付近にまとまって集約される。
【0030】
なお、この実施形態よりもマイクロホンアレイをさらに小型化したい場合には、第1または第2のマイクロホン14−1または14−2を6組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンとすればよい。また、この実施形態のマイクロホンアレイよりも大きくしてもよい場合には、第4のマイクロホン14−4を6組目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンとすればよい。
【0031】
6組目のマイクロホンユニットの構成を一般化して言えば、n+1番目のマイクロホンユニットを構成するために、前記各マイクロホンのうちn番目のマイクロホンユニットのマイクロホン以外のマイクロホンであって、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンのいずれかまでの距離が、n番目のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離よりも長いマイクロホンをn+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンとし、n番目のマイクロホンユニットの両端のマイクロホンのうち前記n+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンへの距離がn番目のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離よりも長いマイクロホンを、n+1番目のマイクロホンユニットの端のマイクロホンとし、n+1番目のマイクロホンユニットの中央のマイクロホンを挟んで、n+1番目のマイクロホンユニットの端のマイクロホンと反対側に、n+1番目のマイクロホンユニットの中央及び端のマイクロホン間の距離にほぼ等しい距離だけ隔てた位置にn+1番目のマイクロホンユニットの別の端のマイクロホンが配置されている。
【0032】
第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8は、話者の音声に対応する音声信号を発生するが、これら音声信号は、
図6に示すように、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8に対応して設けた可変遅延手段、例えば可変遅延回路24−1乃至24−8を介して指向性調整手段、例えばビームフォーミング部26に供給される。可変遅延回路24−1乃至24−8の機能については、後述する。以下のビームフォーミング26についての説明では、可変遅延回路24−1乃至24−8については無視する。
【0033】
ビームフォーミング部26では、マイクロホンユニットごとに、そのマイクロホンユニットを構成するマイクロホンからの音声信号の処理が行われている。即ち、マイクロホンユニットを構成する3本のマイクロホンのうち両側に位置する2本のマイクロホンからの音声信号は、所定の係数、例えば0.5が乗算手段、例えば増幅器によって乗算、例えば増幅される。中央に位置するマイクロホンからの音声信号には、前記所定の係数よりも大きい係数、例えば2倍である1が乗算手段、例えば増幅器によって乗算、例えば増幅される。これら乗算、例えば増幅された各音声信号は、合成手段、例えば加算器によって合成、例えば加算される。これによって、例えば日本国特許第3732041号公報に開示されているようにマイクロホンユニットを構成しているマイクロホン間の距離によって決まる周波数において指向性が鋭くなる。
【0034】
例えば1組目のマイクロホンアレイでは、両側にあるマイクロホン14−1及び14−3からの音声信号は、利得が0.5に調整された増幅器28−1及び28−2によってそれぞれ増幅される。1組目のマイクロホンアレイの中央にあるマイクロホン14−2の音声信号は、利得が1に調整された増幅器28−3によって増幅される。これら増幅器28−1乃至28−3の出力信号は、加算器30−1によって加算される。これによって、加算器30−1の出力信号は、第1のマイクロホンユニットのマイクロホン間の距離dによって決まる周波数f1において鋭い指向性を示す。
【0035】
同様に2組目のマイクロホンユニットでも、両側のマイクロホン14−1及び14−4からの音声信号が、増幅器28−1及び増幅器28−2と同一の増幅器28−21及び28−22によって増幅され、中央のマイクロホン14−4からの音声信号が、増幅器28−23と同一構成の増幅器28−5によって増幅されて、加算器30−2によって加算される。これによって加算器30−2の出力信号は、第2のマイクロホン間の距離2dによって決まる周波数f2(f1>f2)において鋭い指向性を示す。以下、同様に第3乃至第6のマイクロホンユニットの音声信号は、増幅器28−31、28−32、28−33、28−41、28−42、28−43、28−51、28−52、28−53、28−61、28−62及び28−63並びに加算器30−3乃至30−6によって処理される。3組目乃至6組目のマイクロホンユニットに対応する加算器30−3乃至30−6の出力信号は、距離3d、4d、8d、16d及び22dによって決まる周波数f3乃至f6(f3>f4>f5>f6)においてそれぞれ鋭い指向性を示す。
【0036】
また、6組目のマイクロホンユニットの両側のマイクロホン14−7及び14−8の音声信号は、所定の係数、例えば1が乗算手段、例えば増幅器28−71及び28−72によって乗算、例えば増幅され、これら増幅器28−71及び27−72の出力信号は合成手段、例えば加算器30−7によって合成、例えば加算される。これによって、上記例えば日本国特許第3732041号公報に開示されているように、加算器30−7の出力信号は、第7及び第8のマイクロホン14−7及び14−8間の距離44dによって決まる周波数f7(f6>f7)において鋭い指向性を示す。
【0037】
加算器30−1の出力信号は抽出手段、例えばハイパスフィルタ(HPF)30−1に供給される。ハイパスフィルタ30−1は、上記周波数f1よりも低く定めた周波数を遮断周波数とし、この遮断周波数よりも高い周波数成分を、加算器30−1の出力信号から抽出する。加算器30−2の出力信号は抽出手段、例えばバンドパスフィルタ(BPF)30−2に供給される。バンドパスフィルタ30−2は、周波数f2よりも高い周波数、例えばハイパスフィルタ30−1の遮断周波数を上限周波数とし、周波数f2と周波数f3との間の所定周波数を下限周波数とする帯域成分を、加算器30−2の出力信号から抽出する。
【0038】
以下、同様に加算器30−3乃至30−6の出力信号は、抽出手段、例えばバンドパスフィルタ30−3乃至30−6にそれぞれ供給されている。バンドパスフィルタ30−3は、周波数f3よりも高い周波数、例えばバンドパスフィルタ30−2の下限周波数を上限周波数とし、周波数f3と周波数f4との間の所定の周波数を下限周波数とする通過帯域を有している。バンドパスフィルタ30−4は、周波数f4よりも高い周波数、例えばバンドパスフィルタ30−3の下限周波数を上限周波数とし、周波数f4と周波数f5との間の所定の周波数を下限周波数とする通過帯域を有している。バンドパスフィルタ30−5は、周波数f5よりも高い周波数、例えばバンドパスフィルタ30−4の下限周波数を上限周波数とし、周波数f5と周波数f6との間の所定の周波数を下限周波数とする通過帯域を有している。バンドパスフィルタ32−6は、周波数f6よりも高い周波数、例えばバンドパスフィルタ30−5の下限周波数を上限周波数とし、周波数f6よりも低い周波数を下限周波数とする通過帯域を有している。
【0039】
また、加算器30−7の出力信号は、抽出手段、例えばローパスフィルタ32−7に供給されている。ローパスフィルタ32−7は、周波数f7よりも高い周波数、例えばバンドパスフィルタ32−6の下限周波数を遮断周波数とする通過帯域を有している。
【0040】
これらハイパスフィルタ32−1、バンドパスフィルタ32−2乃至32−6及びローパスフィルタ32−7を通過した加算器30−1乃至30−7の出力信号は、再合成手段、例えば加算器34によって、再合成、例えば加算される。加算器34の出力信号の周波数特性を
図8に示す。
図8から明らかなように加算器34の出力信号は広い周波数帯域を有している。しかも、上述したように周波数f1乃至f7において鋭い指向性を有している。
【0041】
図6に示すように、加算器34の出力信号、即ちビームフォーミング部26の出力信号は、増幅手段、例えば電力増幅器36によって電力増幅されて、拡声手段、例えばスピーカ38に供給される。その結果、話者の音声が聴衆に向かって拡声される。
【0042】
上述したビームフォーミング部26の説明では、可変遅延回路24−1乃至24−8について無視した。即ち、話者から第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8までの各距離差を無視できるほどに、話者が第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8からかなり離れて、話者がスピーチをしている場合を前提としている。しかし、実際には
図2に示すように、このマイクロホン装置2は演台4の天板6に設置され、話者は演台4の近傍でスピーチするのが一般的である。従って、話者と第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8との間には、それぞれ距離差が発生し、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8に同じ音声が到達するのに時間差が生じる。そのため、ビームフォーミング部26から出力される再合成信号の音質が本来の音質と異なったものとなることがある。
【0043】
この点を改善するために、この実施形態では、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の音声信号を可変遅延回路24−1乃至24−8にそれぞれ供給し、最も遅れて音声信号が到達しているマイクロホンと同じ遅延を、他のマイクロホンからの音声信号に与えて、ビームフォーミング部26に供給している。即ち、ビームフォーミング部26には、第1乃至第8のマイクロホンの音声信号は、全て同相とされて供給されている。これによって、フェーズドアレイアンテナの原理によって、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の合成指向性を考えた場合、その合成指向性の方向が話者の方向を向く。
【0044】
各可変遅延回路24−1乃至24−8それぞれでの遅延量を決定し、決定された遅延量を各可変遅延回路24−1乃至24−8に設定するために、まず話者の位置を推定し、その推定位置から第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8までの距離を決定する必要がある。また、話者はスピーチをしている間に移動することもあるし、スピーチ中に顔を演台が置かれている舞台の中央から舞台の上手または下手側に振ることもある。このような場合には、話者と第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8までの各距離は変化する。このように距離が変化した場合、その新たな距離に応じて各可変遅延回路24−1乃至24−8の遅延量を変化させる必要がある。
【0045】
そのため、この実施形態では、遅延量設定手段、例えば話者位置推定部40が設けられている。この話者位置推定部40には、例えば第3、第7及び第8のマイクロホン14−3、14−7及び14−8の音声信号が供給されている。話者位置推定部40は、日本国特許公開公報2013−93807号公報に開示されている音源位置推定部と同一であるので、その構成及び動作の詳細な説明は省略する。
【0046】
これら可変遅延回路24−1乃至24−8、話者位置推定部40及びビームフォーミング部26は、例えば
図3及び
図4に示すように例えば長方形状の基板42上に構成されている。この基板42は、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の背後に位置するように底壁12上に配置されている。特に、基板42は、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8と反対方向に斜め上方を向いて傾斜して底壁12上に配置されている。即ち、
図3に示すように基板42の一方の長辺が底壁12上に位置し、他方の長辺は、第1乃至第8のマイクロホンとは反対側に位置する筐体8の背面壁44の上部に接触して位置し、底壁12に対して鋭角をなしている。
【0047】
このように基板42を配置しているのは、次の理由による。基板42の主表面が底壁12上に接触するように、即ち水平に配置したなら、上述したように、話者の頭は天板6の上方にあるので、話者の音声が斜め上方から第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8に向かうが、このとき、水平に配置された基板上で音声が反射し、反射した音声が第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8に向かうことがある。上述したようにマイクロホン14−1乃至14−8のケース16の端面に形成した貫通孔22が形成されているので、反射した音声が、これら貫通孔22からケース16内に入り、ケース16内のマイクロホンエレメント20によって集音される可能性がある。この場合、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の単一指向性が損なわれる。
【0048】
そこで、この実施形態では、基板42を
図3に示すように背面壁44側を向くように傾斜させてある。その結果、傾斜した基板42で反射された音声は、
図3に矢印bで示すように第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8側には向かわない。従って、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の単一指向性を維持することができる。
【0049】
また、同様な理由によって、
図5に示すように、筐体8の両側壁46の内面、即ち第1乃至第8のマイクロホン14−1及び14−8側にある面も、底壁12から筐体8の外方に斜め上方を向くように底壁12に対して鋭角をなすように傾斜させてある。これによって、側壁46の内面46aに向かって斜め上方から到来し、内面46aで反射された音声は矢印cで示すように、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8側に向かい難くできる。
【0050】
上記の実施形態では、底壁12上に直接に第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8を配置したが、底壁12の上面に別個に配置したマイクロホン設置部に第1乃至第8のマイクロホンを設置することもできる。上記の実施形態では、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8の合計8本のマイクロホンを使用したが、マイクロホンの本数は増減可能で、3以上のマイクロホンユニットを構成することができる本数以上、例えば5本以上であれば任意の本数のマイクロホンを使用することができる。上記の実施形態では、第8のマイクロホン14−1を設けたが、例えばマイクロホンアレイをさらに小型化したいような場合には、第8のマイクロホン14−8を省略することもできる。
【0051】
上記の実施形態では、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8のアナログの音声信号を、そのまま可変遅延回路24−1乃至24−8に供給するように構成したので、可変遅延回路24−1乃至24−8、ビームフォーミング部26及び話者位置推定部40はアナログ処理回路によって構成したが、第1乃至第8のマイクロホン14−1乃至14−8のアナログ音声信号をデジタル化することも可能である。その場合、可変遅延回路24−1乃至24−8及びビームフォーミング部26及び話者位置推定部40は、デジタル回路によって構成される。また、各可変遅延回路24−1乃至24−8は、場合によっては除去することもできる。その場合、話者位置推定部40も除去される。