(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132928
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】難燃性塗料及び難燃性基材
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20170515BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20170515BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/18
C09D7/12
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-540927(P2015-540927)
(86)(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-535021(P2015-535021A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】US2013069221
(87)【国際公開番号】WO2014074866
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】101141667
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】102140543
(32)【優先日】2013年11月7日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515008601
【氏名又は名称】イノマ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】リウ・チェンダー
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ユーチ
(72)【発明者】
【氏名】スー・チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ブールエン
(72)【発明者】
【氏名】カオ・チェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ・シンハオ
(72)【発明者】
【氏名】セン・シャンマオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・シューラン
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−327372(JP,A)
【文献】
特開2004−137506(JP,A)
【文献】
特開2004−035761(JP,A)
【文献】
特開平04−029393(JP,A)
【文献】
特開2000−297247(JP,A)
【文献】
特開2012−072246(JP,A)
【文献】
特開2007−191711(JP,A)
【文献】
特表2011−512449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/18
C09D 7/12
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水性ポリウレタン樹脂と、
(b)複数のイソシアナト基を有し、親水化改質を経たヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーであるイソシアネート類化合物と、
(c)表面改質を経ることで複数のアミノ基を有する少なくとも1種の金属水酸化物と、
を含む難燃性塗料であって、
前記イソシアネート類化合物の前記複数のイソシアナト基は、前記水性ポリウレタン樹脂及び前記金属水酸化物と結合を生じることを特徴とする難燃性塗料。
【請求項2】
前記水性ポリウレタン樹脂と前記イソシアネート類化合物と前記金属水酸化物の固形重量比は、50:0.1〜1:20〜80であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項3】
リン系難燃剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項4】
膨張黒鉛を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項5】
前記水性ポリウレタン樹脂は、複数のスルホン酸基或いはカルボキシル基の親水基を有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項6】
前記金属水酸化物は、水酸化アルミニウム或いは水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項7】
前記金属水酸化物の平均粒子径は、1〜15マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項8】
金属粉或いは金網を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性塗料。
【請求項9】
薄物材料と、
前記薄物材料上に塗布された請求項1に記載の難燃性塗料と、
を含むことを特徴とする難燃性基材。
【請求項10】
前記薄物材料は、布地、紙類或いはプラスチック製薄板から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の難燃性基材。
【請求項11】
前記布地は、綿布又はポリエチレンテレフタラート布であることを特徴とする請求項10に記載の難燃性基材。
【請求項12】
前記プラスチック製薄板は、ポリプロピレン薄板であることを特徴とする請求項10に記載の難燃性基材。
【請求項13】
難燃性基材の製造方法であって、
(a)水性ポリウレタン樹脂を含有する水溶液を用意する工程と、
(b)前記水溶液に表面改質を経ることで複数のアミノ基を有する水酸化アルミニウムを添加して、均一に分散するまで攪拌して混合水溶液を生成する工程と、
(c)複数のイソシアナト基を有し、親水化改質を経たヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーの水溶液を調整し、マイクロエマルション状とする工程と、
(d)前記工程(c)で得られるマイクロエマルション状の水溶液を、前記混合水溶液に添加し、均一になるまで攪拌して液体塗料を調整する工程と、
(e)前記液体塗料を、布地上に塗布する工程と、
(f)工程(e)の後、塗布された前記液体塗料を、160℃で乾燥させることにより、前記イソシアネート類化合物の前記複数のイソシアナト基に、前記水性ポリウレタン樹脂及び前記金属水酸化物と結合を生じさせる工程とを備える難燃性基材の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の難燃性基材の製造方法であって、
前記混合水溶液にリン系難燃剤を添加し、均一に分散するまで攪拌する工程を備える難燃性基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性塗料及び難燃性基材に関し、特に、ハロゲン成分を含まない塗布型難燃性塗料及び難燃性基材に関する。
【背景技術】
【0002】
消防安全検査の法規に適合するため、工業用或いはインテリアに使用される織物も難燃処理を施さなければならない。現在の織物の難燃技術で使用される難燃性塗料の多くは、ハロゲン化合物を主成分とし、また更に一部のアンチモン系難燃剤が組み合わされている。該ハロゲン成分は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で、優れた難燃効果を持ち、表面化粧シート貼り、壁紙等の室内装飾の用途に幅広く使用されている。しかしながら、PVC等のハロゲン成分を含有する難燃性塗料は、火災区域内で熱を受けた時、容易に分解してダイオキシン等の有毒ガスを生成する。同時に、この種の難燃性塗料にもハロゲン成分及び大量の可塑剤が添加されているため、EU等の地域の環境保全法規に適合できず、関連製品をヨーロッパ等の地域に輸出販売することができない。
【0003】
よって、従来技術の問題点を解決するため、難燃性塗料及び難燃性基材を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、水性ポリウレタン樹脂、複数のイソシアナト基を有するイソシアネート類化合物及び金属水酸化物からなるハロゲン成分を含まない塗布型難燃性塗料であって、優秀な難燃性を持つだけでなく、且つ無毒性塗料の環境保全法規にも適合できる難燃性塗料及び難燃性基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成させるため、本発明に係る難燃性塗料は、
(a)水性ポリウレタン樹脂と、
(b)複数のイソシアナト基を有するイソシアネート類化合物と、
(c)少なくとも1種の金属水酸化物と、
を含む。
該イソシアネート類化合物の該複数のイソシアナト基は、それぞれ該水性ポリウレタン樹脂及び該金属水酸化物と結合を生じる。
【0006】
本発明の一実施例において、該水性ポリウレタン樹脂と該イソシアネート類化合物と該金属水酸化物の固形重量比は、50:0.1〜1:20〜80である。
【0007】
本発明の一実施例において、リン系難燃剤を更に含む。
【0008】
本発明の一実施例において、膨張黒鉛を更に含む。
【0009】
本発明の一実施例において、該水性ポリウレタン樹脂は、複数のスルホン酸基或いはカルボキシル基の親水基を有する。
【0010】
本発明の一実施例において、該イソシアネート類化合物は、親水化改質を経たヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーである。
【0011】
本発明の一実施例において、該金属水酸化物は、水酸化アルミニウム或いは水酸化マグネシウムである。
【0012】
本発明の一実施例において、該金属水酸化物の平均粒子径は、1〜15マイクロメートル(um)である。
【0013】
本発明の一実施例において、該金属水酸化物の微粒子は、表面改質を経ることで複数のアミノ基(−NH2)を有する。
【0014】
本発明の一実施例において、金属粉或いは金網を更に含む。
【0015】
また、本発明は、薄物材料と該薄物材料上に塗布された上記難燃性塗料とを含む難燃性基材を提供する。
【0016】
本発明の一実施例において、該薄物材料は、布地、紙類或いはプラスチック製薄板から選ばれる。
【0017】
本発明の一実施例において、該布地は、綿布又はポリエチレンテレフタラート(PET)布である。
【0018】
本発明の一実施例において、該プラスチック製薄板は、ポリプロピレン(PP)薄板である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の上記及び他の目的、特徴、利点を十分理解してもらうため、本発明の好ましい実施例を挙げて詳細に説明する。
【0020】
本発明の好ましい一実施例によれば、本発明は水性ポリウレタン(polyurethane)樹脂と、複数のイソシアナト基(−NCO)を有するイソシアネート類(isocyanate)化合物と、金属水酸化物とを含む難燃性塗料を提供する。前記イソシアネート類化合物の複数のイソシアナト基は、それぞれ該水性ポリウレタン樹脂と該金属水酸化物との結合を生じることで、有機―無機ハイブリッド重合薄膜を形成する。
【0021】
本実施例において、該水性ポリウレタン樹脂と該イソシアネート類化合物と該金属水酸化物の固形重量比は50:0.1〜1:20〜80とすることができ、必要がある時、例えばポリリン酸アンモニウムのようなリン系難燃剤も更に含むことができる。この場合、該水性ポリウレタン樹脂と該イソシアネート類化合物と該金属水酸化物と該リン系難燃剤の固形重量比は50:0.1〜1:20〜80:5〜40とすることができる。このほかに、難燃性塗料を飾り板に適合させるため、膨張黒鉛も更に含むことができ、該膨張黒鉛の固形重量比は製品の需要に応じて調整して良い、本発明では制限しない。
【0022】
本実施例において、該水性ポリウレタン樹脂を陰イオン型、陽イオン型及び非イオン型水性ポリウレタンに分けることができる。陰イオン型はまたスルホン酸型及びカルボン酸型に分けることができ、つまり該水性ポリウレタン樹脂は複数のスルホン酸基(−S03H)或いはカルボキシル基(−COOH)の親水基を有することができる。
【0023】
更に、該イソシアネート類化合物は、予め親水化改質処理を経たクロスリンカー(crosslinker、別名:架橋剤)であって、且つ各々複数のイソシアナト基(−NCO)を有する。該イソシアネート類化合物は、例えば親水化改質を経たヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate)のオリゴマー(oligomer)とし、該イソシアネート類化合物がイソシアナト基で該水性ポリウレタン樹脂上に結合できる。
【0024】
その他、該金属水酸化物は、予め表面改質処理を行い、且つ所定の平均粒子径を有する水酸化アルミニウム(Al(OH)3、aluminum trihydroxide、ATH)又は水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)の微粒子をいう。該所定の平均粒子径は、1〜15マイクロメートル(μm)に制御することが好ましい。該金属水酸化物の微粒子は表面改質を経た後、各々複数のアミノ基(−NH2)を有し、該アミノ基が該微粒子の表面上のみに位置し、各該微粒子は該アミノ基を通じて該イソシアネート類化合物のうちの少なくとも1個の該イソシアナト基上に結合する。その後該難燃性塗料が火災区域内で熱を受けた時、該金属水酸化物微粒子が熱を受けて水蒸気を放出すると共に金属酸化物に転換して、熱エネルギーを遮断できる。
【0025】
本願実施例において、上記難燃性塗料は、予め薄物材料上に塗って難燃性基材とでき、該薄物材料は布地、紙類或いはプラスチック製薄板から選ばれる。本実施例において、上記難燃性塗料は、予め布地上に塗ることで、難燃性基材となり、該布地は例えば綿布又はポリエチレンテレフタラート(PET)布が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0026】
本発明の一実施例において、上記難燃性塗料及び難燃性基材は、下記液体組成物が混合、塗布及び乾燥を通じて製造できる。該液体組成物は、水性ポリウレタン分子と親水化改質の架橋分子と、表面改質の水酸化アルミニウム微粒子と純水とを含む。該水性ポリウレタン分子は、水で有機溶剤を代替して分散介質とするポリウレタン(polyurethane)系である。該水性ポリウレタン分子は、複数の親水基を各々有し、該親水基がスルホン酸基(−SO3H)或いはカルボキシル基(−COOH)から選ぶことができ、且つ該水性ポリウレタン分子は予め合成しておく。
【0027】
次に、該親水化改質の架橋分子は、例えば複数のイソシアナト基(−NCO)を各々有するイソシアネート類化合物とし、例えば親水化改質を経たヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーである。各架橋分子が該水性ポリウレタン分子と反応した後、少なくとも1個の該イソシアナト基で該水性ポリウレタン分子上に結合できる。本実施例において、該架橋分子
は、下記の化学式で表せる。
【化1】
【0028】
Rは、H又はC1−C12の直鎖或いは分枝鎖のアルキル基若しくはアルケニル基から選ばれる。上記架橋分子は、親水性の改質処理を経た後イソシアナト基を有するため、予め水の中で反応液として調製する時、複数の該架橋分子の主分子鎖部分は同じ親油性に属するため、集積してマイクロエマルション状となるが、該マイクロエマルション表面の架橋分子はイソシアナト基が水と反応してポリ尿素(urea)層を生成して親水性膜層となる。よって、該架橋分子は一時的に親水性膜層を有するマイクロエマルション状態で水中に均一散布することで、内部未反応のイソシアナト基を保護し、その消費速度を遅らせる。
【0029】
また、本実施例の表面改質水酸化アルミニウム微粒子の所定の平均粒子径は、1〜15マイクロメートルである。該水酸化アルミニウム微粒子は表面改質を経た後、複数のアミノ基(−NH2)を各々有し、該アミノ基が該水酸化アルミニウム微粒子の表面上のみに位置する。各該水酸化アルミニウム微粒子は、該アミノ基を通じて該架橋分子のうちの少なくとも1個の該イソシアナト基上に結合することに用いられる。その後該難燃性塗料が火災区域内で熱を受けた時、該水酸化アルミニウム微粒子が熱を受けて水蒸気を放出すると共に金属酸化物に転換して、熱エネルギーを遮断できる。
【0030】
以下、複数の実施例で本発明は、如何にして上記配合を利用して難燃性塗料を調製するかという方法を説明すると共にその難燃特性の向上の有無を比較する。
【0031】
(実施例1)
まず、予め水性ポリウレタン分子を含有する水溶液を調製しておき、次の反応を行う際、該水性ポリウレタン分子の水溶液内に脱イオン水を添加して希釈し、その後更に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子(粒子径が1μm及び8μm)を添加し、均一に分散するまで攪拌して希釈混合水溶液となる。
【0032】
次に、予め親水化改質の架橋分子の水溶液を調製し、該架橋分子表面のイソシアナト基(−NCO)に先に水と反応してマイクロエマルション状及びその親水性膜層を形成させる。その後、更にこのマイクロエマルション状架橋分子の水溶液を上記希釈混合水溶液内に添加し、均一になるまで攪拌して、液体塗料の調製を終えると、この時の液体塗料はまだ水分を含有し、その組成物の重量比は下記表1に示す通りである。
【表1】
【0033】
上記表1の液体塗料において、水性ポリウレタン分子と架橋分子と水酸化アルミニウム微粒子とリン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)の固形重量比は、50:0.5:40:10である。上記表において、約45〜50gの水の重さが前記予め調製した水性ポリウレタン分子の水溶液の水の重さからくる。
【0034】
最後に、更に均一に攪拌した液体塗料をウェットブレード塗布方式で布地上に塗布する。該布地は、綿布或いはポリエチレンテレフタラート(PET)布から選ぶことができる。次に、160℃で該液体塗料を乾燥させ、その水分が蒸発することで難燃性塗料層となる。乾燥中、親水化改質の架橋分子のマイクロエマルション表面の親水性膜層(ポリ尿素層)は、膜層乾燥の体積収縮によって破裂し、内部未反応のイソシアナト基(−NCO)が放出され、高温下で該水性ポリウレタン分子(R−NH−COOR’)と架橋反応を行い、同時に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子(ATH−NH2)がグラフト反応を行って有機―無機ハイブリッド(hybrid)で膜厚約0.3ミリメートルの難燃性塗料層を形成する。該難燃性塗料層は、該布地の単一表面或いは両表面に塗布することで、共同で難燃性基材を構成できる。
【0035】
次に、該難燃性基材を30〜45度に傾けて接炎して薄物材料の難燃試験を行い、該難燃性塗料層表面の炭化範囲を計測した結果、該難燃性基材は2分間加熱のCNS−7614防炎二級規格に確かに合格できることを示し、詳細は下記表2に示す通りである。
【表2】
【0036】
残炎時間(秒)、残塵時間(秒)及び炭化長(cm)の経方向と緯方向の試験結果の単位値は、各5、60及び10以下とする必要がある。経方向と緯方向を通じて各々3回の試験結果は、各々0、0及び9で、5、60及び10の規格内にあり、言い換えると、本試験結果が確実に2分間加熱のCNS−7614防炎二級規格に合格できることを示している。
【0037】
(実施例2)
本実施例の難燃性塗料の調製方法は、実施例1と類似し、まず、予め水性ポリウレタン分子を含有する水溶液を調製しておき、次の反応を行う際、次の反応を行う際、該水性ポリウレタン分子の水溶液内に脱イオン水を添加して希釈し、その後更に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子(粒子径が8μm)及び更にリン系難燃剤(例えばポリリン酸アンモニウム)を添加し、均一に分散するまで攪拌して希釈混合水溶液となる。
【0038】
次に、予め親水化改質の架橋分子の水溶液を調製し、マイクロエマルション状架橋分子の水溶液を得ると共に上記希釈混合水溶液内に添加し、均一になるまで攪拌して、液体塗料の調製を終えると、この時の液体塗料はまだ水分を含有し、その組成物の重量比は下記表3に示す通りである。
【表3】
【0039】
上記表3の液体塗料において、水性ポリウレタン分子と架橋分子と水酸化アルミニウム微粒子とリン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)の固形重量比は、50:0.5:25:30である。上記表において、約45〜50gの水の重さが前記予め調製した水性ポリウレタン分子の水溶液の水の重さからくる。
【0040】
最後に、同様に均一に攪拌した液体塗料をウェットブレード塗布方式で布地上に塗布し、また160℃で該液体塗料を乾燥させ、その水分が蒸発することで難燃性塗料層となり、その膜厚は約0.5mmである。該難燃性塗料層は、該布地の単一表面或いは両表面に塗布することで、共同で難燃性基材を構成できる。
【0041】
次に、本実施例の難燃性基材を同様に30〜45度に傾けて接炎して薄物材料の難燃試験を行い、該難燃性塗料層表面の炭化面積を計測した結果、CNS−10285A1難燃規格に確かに合格できることを示し、詳細は下記表4に示す通りである。
【表4】
【0042】
上記表から分かるように、加熱或いは着炎反応を経た後、経方向と緯方向の試験を組み合せ、その残炎時間(秒)、残塵時間(秒)、炭化面積(cm2)及び炭化長(cm)の単位値は、各々3、5、30及び20以下となり、言い換えると、本試験結果はCNS−10285A1難燃規格に合格できることを示している。
【0043】
(実施例3、比較例)
本実施例の難燃性塗料の調製方法は、実施例1と類似し、まず、予め水性ポリウレタン分子を含有する水溶液を調製しておき、次の反応を行う際、該水性ポリウレタン分子の水溶液内に脱イオン水を添加して希釈する。ただし、該希釈水溶液内に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子或いはリン系難燃剤を添加しない。
【0044】
次に、予め親水化改質の架橋分子の水溶液を調製し、マイクロエマルション状架橋分子の水溶液を得ると共に上記希釈混合水溶液内に添加し、均一になるまで攪拌して、液体塗料の調製を終えると、この時の液体塗料はまだ水分を含有し、その組成物の重量比は下記表5に示す通りである。
【表5】
【0045】
上記表5の液体塗料において、水性ポリウレタン分子と架橋分子の固形重量比は、50:0.5である。上記表において、約45〜50gの水の重さが前記予め調製した水性ポリウレタン分子の水溶液の水の重さからくる。
【0046】
最後に、同様に均一に攪拌した液体塗料をウェットブレード塗布方式で布地上に塗布し、また160℃で該液体塗料を乾燥させ、その水分が蒸発することで難燃性塗料層となり、その膜厚は約30マイクロメートルである。該難燃性塗料層は、該布地の単一表面或いは両表面に塗布することで、共同で難燃性基材を構成できる。
【0047】
次に、本実施例(比較例)の難燃性基材を同様に30〜45度に傾けて接炎して薄物材料の難燃試験を行ったところ、結局該難燃性基材が完全に焼損したため、CNS−7614難燃規格に合格できないことを確認した。
【0048】
(実施例4)
本実施例の難燃性塗料の調製方法は、実施例1と類似し、まず、予め水性ポリウレタン分子を含有する水溶液を調製しておき、次の反応を行う際、該水性ポリウレタン分子の水溶液内に脱イオン水を添加して希釈し、その後更に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子(粒子径が8μm)及び更にリン系難燃剤(例えばポリリン酸アンモニウム)を添加し、均一に分散するまで攪拌して希釈混合水溶液とする。
【0049】
次に、予め親水化改質の架橋分子の水溶液を調製し、マイクロエマルション状架橋分子の水溶液を得ると共に上記希釈混合水溶液内に添加し、均一になるまで攪拌して、液体塗料の調製を終えると、この時の液体塗料はまだ水分を含有し、その組成物の重量比は下記表6に示す通りである。
【表6】
【0050】
上記表6の液体塗料において、水性ポリウレタン分子と架橋分子と水酸化アルミニウム微粒子とリン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)の固形重量比は、50:1:60:15である。上記表において、約20〜30gの水の重さが前記予め調製した水性ポリウレタン分子の水溶液の水の重さからくる。
【0051】
最後に、同様に均一に攪拌した液体塗料をウェットブレード塗布方式で紙材上に塗布し、また160℃で該液体塗料を乾燥させ、その水分が蒸発することで難燃性塗料層となり、その平均膜厚は約0.54mmである。該難燃性塗料層は、該紙材の単一表面或いは両表面に塗布することで、共同で難燃性基材を構成できる。
【0052】
次に、該難燃性基材を30〜45度に傾けて接炎して薄物材料の難燃試験を行い、該難燃塗料層表面の炭化長を計測した結果、確実に1分間加熱のCNS−7614防炎三級規格に合格できることを示し、詳細は下記表7に示す通りである。
【表7】
【0053】
炭化長(cm)の試験結果の単位値は、各15cm以下とする必要がある。上記表内の結果は、明らかに当該規格内にあり、言い換えると、本試験結果が確実に1分間加熱のCNS−7614防炎三級規格に合格できることを示している。
【0054】
(実施例5)
本実施例の難燃性塗料の調製方法は、実施例1と類似し、まず、予め水性ポリウレタン分子を含有する水溶液を調製しておき、次の反応を行う際、該水性ポリウレタン分子の水溶液内に脱イオン水を添加して希釈し、その後更に表面改質の水酸化アルミニウム微粒子(粒子径が8μm)及び更にリン系難燃剤(例えばポリリン酸アンモニウム)を添加し、均一に分散するまで攪拌して希釈混合水溶液とする。
【0055】
次に、予め親水化改質の架橋分子の水溶液を調製し、マイクロエマルション状架橋分子の水溶液を得ると共に上記希釈混合水溶液内に添加し、均一になるまで攪拌して、液体塗料の調製を終えると、この時の液体塗料はまだ水分を含有し、その組成物の重量比は下記表8に示す通りである。
【表8】
【0056】
上記表8の液体塗料において、水性ポリウレタン分子と架橋分子と水酸化アルミニウム微粒子とリン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)の固形重量比は、50:1:60:15である。上記表において、約20〜30gの水の重さが前記予め調製した水性ポリウレタン分子の水溶液の水の重さからくる。
【0057】
最後に、同様に均一に攪拌した液体塗料をウェットブレード塗布方式でポリプロピレン(PP)薄板上に塗布し、また160℃で該液体塗料を乾燥させ、その水分が蒸発することで難燃性塗料層となり、その平均膜厚は約54mmである。該難燃性塗料層は、該ポリプロピレン薄板の単一表面或いは両表面に塗布することで、共同で難燃性基材を構成できる。
【0058】
次に、該難燃性基材を30〜45度に傾けて接炎して薄物材料の難燃試験を行い、該難燃性塗料層表面の炭化長を計測した結果、確実に30秒加熱のCNS−7614防炎二級規格に合格できることを示し、詳細は下記表9に示す通りである。
【表9】
【0059】
炭化長(cm)の試験結果の単位値は、各10cm以下とする必要がある。上記表内の結果は、明らかに当該規格内にあり、言い換えると、本試験結果が確実に30秒加熱のCNS−7614防炎二級規格に合格できることを示している。
【0060】
以上に述べた通り、実施例3の難燃性基材が完全に焼損して難燃規格に合格できないことに比べて、本発明の実施例1〜2及び4〜5においては水性ポリウレタン樹脂と複数のイソシアナト基を有するイソシアネート類化合物と金属水酸化物からなるハロゲン成分を含まない塗布型難燃性塗料となり、該布地、紙材及びPP薄板上に塗布して乾燥して該難燃性塗料層を形成でき、確実に難燃特性の提供及び無毒性塗料環境保全法規に適合するという二重のアピールとなる。実施例1において、更に用量が比較的少ないリン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)を添加でき、こうすると実施例2の難燃利点を有するだけではなく、且つリン系難燃剤の難燃作用も別途提供でき、同時にも相対的にリン系難燃剤で起こりえる耐候性が悪く、並びに吸湿しやすい等といった欠点を減らすことができる。
【0061】
本発明の難燃性塗料に少なくとも1種の金属粉又は金網を更に添加しても良い。こうすると放熱性を増加し、熱エネルギーが難燃性基材の一箇所に集中することを避ける効果を有し、更に熱量の集中による難燃性基材の焼損状況を避けることができる。
【0062】
以上のように本発明を好ましい実施例によって開示したが、本発明の精神と範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の改良変更ができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。