(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132933
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システムの管理
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20170515BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20170515BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20170515BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20170515BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20170515BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20170515BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 180
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J7/35 K
G06Q50/06
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-550816(P2015-550816)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公表番号】特表2016-508018(P2016-508018A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013078082
(87)【国際公開番号】WO2014106105
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年7月10日
(31)【優先権主張番号】61/746,831
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515176438
【氏名又は名称】ユニコス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Younicos, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ホアシン・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】オードリー・フォガティ
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/065498(WO,A1)
【文献】
特開2003−259552(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0273129(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/050014(WO,A1)
【文献】
特表2010−512727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42
G06F19/00
G06Q10/00−10/10、
30/00−30/08、
50/00−50/20、
50/26−99/00
H02J3/00−7/12、
7/34−7/36、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵システムの制御システムによって実行される方法であって、
1つまたは複数のコマンドを配電網のエネルギー管理システムから受信することと、
前記1つまたは複数のコマンドに応答して、前記1つまたは複数のコマンドに従って、前記エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーを前記エネルギー貯蔵システムから前記配電網に放電するために、コマンドコンプライアンスルーチンを実行することと、
前記エネルギー貯蔵システムからの1つまたは複数のシステム状態値と、前記配電網のための1つまたは複数の市場状態値とを受信することと、それに応じて、
前記1つまたは複数のシステム状態値と第1の目標値との間の差を、前記1つまたは複数の市場状態値と第2の目標値との間の差と比較することにより、前記エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーを前記エネルギー貯蔵システムから前記配電網に放電するために、管理ルーチンを実行することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記エネルギー貯蔵システムが、前記配電網に双方向電力変換システムによって連結された、少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のシステム状態値を受信することが、前記エネルギー貯蔵デバイスの充電状態を受信することを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の目標値はある目標充電状態であり、前記管理ルーチンを実行することが、前記充電状態が前記目標充電状態より上の時に前記エネルギー貯蔵デバイスを放電することを好み、前記充電状態が前記目標充電状態以下である時に前記エネルギー貯蔵デバイスを充電することを好む、目標充電状態ルーチンを実行することを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵システムが、電力を前記配電網に供給するように構成された間欠的な電源に連結されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記管理ルーチンを実行することが、1つまたは複数の電力システム値を前記間欠的な電源から受信することと、前記1つまたは複数の電力システム値に基づいて、前記エネルギー貯蔵デバイスを充電または放電することを決定することとを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電力システム値が、前記間欠的な電源によって前記配電網に供給されている電力量を特定する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギー貯蔵システムが、電力を前記配電網に供給するように構成された間欠的な電源に連結され、前記管理ルーチンを実行することが、前記間欠的な電源が第1の閾値変化速度よりも早く減少している電力を供給している時に前記エネルギー貯蔵デバイスを放電し、前記間欠的な電源が第2の閾値変化速度よりも早く増加している電力を供給している時に前記エネルギー貯蔵デバイスを充電する、ランプレート軽減ルーチンを実行することを備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の市場状態値が前記配電網のエネルギー価格を特定する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の市場状態値を受信することが、前記1つまたは複数の市場状態値を前記エネルギー管理システムから受信することを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の目標値はあるエネルギー価格であり、前記管理ルーチンが、前記エネルギー価格が閾値価格よりも安い時に前記エネルギー貯蔵システムを充電することを好む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記管理ルーチンが、エネルギー価格が別の閾値価格よりも高い時に前記エネルギー貯蔵システムを放電することを好む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記管理ルーチンを実行することが、
前記エネルギー貯蔵システムを放電することを決定し、それに応じて、放電するために、要求を前記エネルギー管理システムに送信することと、
放電が許可されたことを特定する前記要求への応答を、前記エネルギー管理システムから受信することと、
前記エネルギー貯蔵システムを、前記要求への前記応答によって許可された通り放電することと、
を備える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するためのシステムであって、
エネルギーを前記配電網に供給するためのエネルギー貯蔵システムと、
前記配電網の前記エネルギー管理システムに連結され、前記エネルギー貯蔵システムを制御するための制御システムと、
を備える、システム。
【請求項15】
前記エネルギー貯蔵システムが、前記配電網に双方向電力変換システムによって連結された、少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年12月28日に出願された米国特許仮出願第61/746,831号の利益を主張する。先行出願の開示は、本出願の一部とみなされ、参照により本出願の開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、エレクトロニクスに関し、より具体的には、エネルギー市場においてエネルギー貯蔵システムを管理することに関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵システムは、様々な目的のうちの1つまたは複数のために、配電網に連結され得る。たとえば、エネルギー貯蔵システムは、ランプアップ中に余剰電力を吸収するために、および/またはランプダウン中に電力出力を補うために、間欠的な電源(たとえば、風力発電地帯)と共に使用することができる。
【0004】
一般に、エネルギー貯蔵システムは、固定の貯蔵容量を有する、1つまたは複数のエネルギー貯蔵デバイスを使用して実装される。固定の貯蔵容量を有するということは、通常、ランプレートの限界を超えてしまう(つまり、ランプレート違反)リスクを軽減するデバイスの能力を制限する。たとえば、50%の充電状態を有するシステムは、等しい最悪充電率と、等しいランプレートの限界とを仮定すると、有限の、ほぼ等しい長さの時間のいずれの方向においてもランプレート違反を避けることができる場合がある。
【0005】
運用では、そのようなシステムは目標充電状態(SOC)を実装することができ、目標充電状態の辺りで貯蔵デバイスが管理される。デバイスのSOCがこの目標を下回った場合、またはこの目標を超えた場合、エネルギー貯蔵デバイスは、次の事象に備えて、SOCが目標SOCに戻るように制御される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
システムは、エネルギーを配電網に供給するように構成されたエネルギー貯蔵システムと、配電網のエネルギー管理システムに連結され、エネルギー貯蔵システムを制御するように構成された制御システムとを含む。制御システムは、1つまたは複数のコマンドをエネルギー管理システムから受信し、それに応じて、1つまたは複数のコマンドに従って、エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーをエネルギー貯蔵システムから配電網へ放電するために、コマンドコンプライアンスルーチンを実行する。制御システムは、また、エネルギー貯蔵システムからの1つまたは複数のシステム状態値と、配電網のための1つまたは複数の市場状態値とを受信し、システム状態値と市場状態値とに基づいて、エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーをエネルギー貯蔵システムから配電網へ放電するために、管理ルーチンを実行する。
【発明の効果】
【0007】
制御システムの特定の実装形態は、以下の長所のうちの1つまたは複数を提供することができる。エネルギー貯蔵システムは、エネルギー市場に同時に参加し、エネルギー貯蔵システムの充電状態を独立に管理することができる。エネルギー貯蔵システムは、エネルギーが安い時に充電し、エネルギーが高い時に放電することができ、利益を増やす。エネルギー貯蔵システムは、その充電状態が目標充電状態より下の時に充電し、その充電状態が閾値より上の時に放電することができ、エネルギー管理システムからのコマンドに従うことができる可能性を高める。
【0008】
1つまたは複数の実装形態の詳細を、添付図面と以下の説明とに明記する。他の特徴、態様、および長所は、明細書と図面と特許請求の範囲とから明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】配電網と、配電網を管理するエネルギー管理システムと、エネルギー貯蔵システムと、任意の発電機、たとえば、風力発電地帯または太陽光発電機とを含む、例示的配電システムのブロック図である。
【
図2】配電ネットワークに連結された、例示的エネルギー貯蔵システムのブロック図である。
【
図3】例示的システム管理ルーチンのブロック図である。
【
図4】エネルギー貯蔵システムの制御システムによって実行される方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、配電網102と、配電網を管理するエネルギー管理システム104と、エネルギー貯蔵システム106と、任意の発電機110、たとえば、風力発電地帯または太陽光発電機とを含む、例示的配電システム100のブロック図である。配電システムは、エネルギー貯蔵システムと発電機と配電網との間の接続を管理するための他の構成要素、たとえば、1つまたは複数の変圧器と故障保護装置などとを含むサブステーションを含むことができる。
【0011】
エネルギー管理システムは、配電網の電力を管理するように構成された、1つまたは複数のコンピュータから成るシステムである。エネルギー管理システムは、配電網のユーザがその電力要件を確実に満たすことができるように、異なる時間に電力を供給するために、様々なサービスを提供することができる。たとえば、エネルギー管理システムは、様々な発電機のスケジュールを決めることができる。エネルギー管理システムの一例は、テキサス電気信頼性評議会(ERCOT)のエネルギー管理システム(EMS)である。
【0012】
エネルギー管理システムは、データ通信ネットワークを介して、発電機を制御するように構成された発電機制御システム112と通信する。発電機制御システムは、システム管理ルーチン120を実行して発電機を制御する。システム管理ルーチンは、たとえば、間欠的な発電機の出力を監視し、発電構成を制御(たとえば、風力タービンの翼のヨーまたはピッチまたはその両方を変更)することができる。
【0013】
発電機制御システムは、また、クオリファイドスケジューリングエンティティ(QSE)ルーチン118を実行する。QSEルーチンは、エネルギー管理システムと通信して、発電機から配電網への電力出力のスケジュールを決める。いくつかの実装形態では、QSEルーチンは、発電機からのエネルギーを販売するための提案をエネルギー管理システムに提出し、いくつかの実装形態では、QSEは、エネルギーを購入するための入札を提出する。たとえば、QSEは、前日市場またはリアルタイム市場またはその両方に参加することができる。QSEは、また、エネルギー貯蔵システム106を制御するように構成された、1つまたは複数のコンピュータから成る貯蔵制御システム108と通信することができる。
【0014】
貯蔵制御システムは、エネルギー貯蔵システムを制御して、発電機または配電網またはその両方を補助するための1つまたは複数のサービスを提供する。たとえば、貯蔵制御システムは、発電機からの電力が閾値変化速度よりも大きい変化速度で増加または減少することを防ぐために、ランプレート軽減サービスを提供することができる。サービスの他の例は、配電網電圧調整と配電網周波数調整と電力平滑化とを含む。
図2を参照して、以下に、エネルギー貯蔵システムをより詳細に説明する。
【0015】
貯蔵制御システムは、コマンドコンプライアンスルーチン114を実行して、エネルギー管理システムからのコマンドに従う。エネルギー管理システムは、コマンドを、発電機制御システムを介して、または直接、または他の適切なデータ経路を介して、貯蔵制御システムに送信することができる。
【0016】
たとえば、エネルギー管理システムは、発電機制御システムのQSEルーチンを用いてエネルギー貯蔵システムが放電する時間のスケジュールを決めることによって、放電するためのコマンドを送信することができる。別の例として、エネルギー管理システムは、QSEルーチンを用いてエネルギー貯蔵システムが発電機にランプレート軽減サービスを提供する時間のスケジュールを決めることよって、充電または放電するためのコマンドを送信することができる。コマンドコンプライアンスルーチンは、運用では、通常、従わない何らかの理由、たとえば、エネルギー貯蔵システムが使い果たされている場合、がない限り、エネルギー貯蔵システムをコマンドに従わせる。
【0017】
貯蔵制御システムは、また、システム管理ルーチン116を実行する。システム管理ルーチンは、エネルギー貯蔵システムからのシステム状態値と配電網のための市場状態値とを受信し、充電するかどうか、または放電するかどうか、または何もしないかを決定する。このようにして、システム管理ルーチンは、エネルギー管理システムからのコマンドに従う必要がない間、エネルギー貯蔵システムを独立に管理することができる。
【0018】
たとえば、システム管理ルーチンは、エネルギー貯蔵システムに、目標充電状態に維持することと、エネルギーコストが比較的安い時に充電することと、エネルギーコストが比較的高い時に放電することとを行わせることができる。
図3を参照して、以下に、システム管理ルーチンをさらに説明する。
【0019】
制御システムを実装するために使用されるデバイスのうちのいくつかまたは全部のアーキテクチャを、簡単な展開とトラブルシューティングとのために構成することができる。たとえば、制御システムは、それぞれが主目的を有する、異なるレイヤを含むことができる。貯蔵制御システムは、システムリスクを軽減し、システムダウンタイムを短縮することができる。貯蔵制御システムは、たとえば、運用履歴を様々な性能要因を改善するために使用することができるため、時間において拡張することができる。
【0020】
図2は、配電ネットワーク250に連結された例示的エネルギー貯蔵システム200のブロック図である。エネルギー貯蔵システムは、エネルギー貯蔵アレイ211と、221と、231とを含む。エネルギー貯蔵アレイはそれぞれ、それぞれの電力変換システム212と、222と、232とに連結され、電力変換システムはそれぞれ、それぞれの変圧器215と、225と、235とに連結されている。電力変換システムは、たとえば、双方向インバータであることができる。いくつかの実装形態では、エネルギー貯蔵アレイは、直列、並列、または直並列構成に連結されたバッテリを含む。他の実装形態では、エネルギー貯蔵アレイは、たとえば、コンデンサ、フライホイール、超電導磁気、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0021】
変圧器は、間欠的な電源260と配電網270、たとえば、
図1の配電網102とに連結されたサブステーション254に連結されている。間欠的な電源は、たとえば、風力発電地帯または太陽光発電機であることができる。運用では、エネルギー貯蔵システムは、1つまたは複数のサポートサービスを間欠的な電源に、あるいは1つまたは複数の付随サービスを配電網に、またはその両方を提供する。
【0022】
エネルギー貯蔵システムは、インバータの各々に通信インターフェースを通して動作可能につながれている制御システム240を含む。制御システムは、たとえば、目標有効電力設定および目標無効電力設定と、配電ネットワーク状態情報と、起動/スタンバイ制御コマンドとを含む制御信号および/またはデータを、通信インターフェースを介して提供する。配電ネットワーク状態情報は、たとえば、配電網に連結された1つまたは複数のセンサから導き出された、たとえば、電圧と、電流と、有効電力と、無効電力と、周波数との情報を含む。この情報に基づいて、制御システムは、電力管理システムが配電ネットワークに対して1つの大容量システムとして見えるように、各電力変換システムの動作を制御することができる。
【0023】
制御システムは、目標有効電力設定(「Pコマンド」)と目標無効電力設定(「Qコマンド」)とをインバータの各々に、システム性能要件に基づいて発行する。たとえば、周波数調整モードでは、制御システムは、配電ネットワークの周波数の低下の検出に応答して、エネルギー貯蔵アレイから配電ネットワークに伝送される有効電力の量を増加するために、Pコマンドを発行することができる。
【0024】
さらに、電圧調整モードでは、制御システムは、電圧低下の検出に応答して、エネルギー貯蔵アレイと配電ネットワークとの間で伝送される無効電力の量を増加するために、Qコマンドを発行することができる。また、VAR調整モードでは、制御システムは、限界外状態に応答して、エネルギー貯蔵アレイと配電ネットワークとの間で伝送される無効電力の量を調整するために、Qコマンドを発行することができる。
【0025】
制御システムは、間欠的な電源と配電網との間の相互接続点(POI)265において伝達される電力を管理するために、必要に応じてPコマンドとQコマンドとを発行することができる。たとえば、制御システムは、間欠的な電源によって出力される電力の突然の増加中に、正のランプレート限界に違反することを避けるために、間欠的な電源によって生成される電力を吸収するためのPコマンドを発行することができる。同様に、制御システムは、間欠的な電源によって出力される電力の突然の低下で負のランプレート限界に違反することを避けるために、電力を配電ネットワーク150に提供するためのPコマンドを発行することができる。
【0026】
図3は、例示的システム管理ルーチン302、たとえば、
図1の貯蔵制御システム108のためのシステム管理ルーチン116のブロック図である。システム管理ルーチンは、システム状態値と市場状態値とを受信し、エネルギー貯蔵システムを充電または放電するかどうかを決定する、市場決定エンジン(MDE)304を含む。市場決定エンジンは、他の任意のモジュール、たとえば、目標充電状態モジュール306とランプレート軽減モジュール308と交流することができる。
【0027】
MDEは、市場状態値を、エネルギー管理システム、クオリファイドスケジューリングエンティティ、または他の情報源から受信することができる。通常、市場状態値は、1つまたは複数のエネルギー市場でのエネルギー価格を含む。いくつかの実装形態では、市場状態値は、価格傾向または他の金融情報を特定することができる。一般に、MDEは、エネルギー価格が高い時に放電することを好み、エネルギー価格が安い時に充電することを好む。
【0028】
システム状態値は、エネルギー貯蔵システムから受信または測定することができる。通常、システム状態値は、1つまたは複数のエネルギー貯蔵デバイスの充電状態を含む。いくつかの実装形態では、システム状態値は、発電機からの情報または環境情報、たとえば、風力予測を含む。一般に、MDEは、充電状態が目標充電状態よりも上の時に放電することを好み、充電状態が目標充電状態よりも下の時に充電することを好む。
【0029】
いくつかの場合では、MDEは、ある情報が放電を示し、ある情報が充電を示している時に矛盾を解決する。たとえば、充電状態が目標充電状態よりも下であるが、エネルギー価格が目標エネルギー価格よりも高い場合、MDEは、現在の充電レベルを維持すること、または遅くした変化速度で充電または放電することのいずれかを決定することができる。たとえば、MDEは、充電状態と目標充電状態との差を、エネルギー価格と目標エネルギー価格との差と比較することができ、任意で倍率器または他のプロセスによって修正する。一方の差が他方よりも大きい場合、MDEは、大きい方の差に基づいて行動を起こすことを決定することができる。
【0030】
図4は、エネルギー貯蔵システムの制御システムによって実行される方法400のフロー図である。たとえば、制御システムは、コマンドコンプライアンスルーチン114とシステム管理ルーチン116とを実行する、
図1の貯蔵制御システム108であることができる。
【0031】
制御システムは、1つまたは複数のコマンドを配電網のエネルギー管理システムから受信する(402)。それに応じて、制御システムは、1つまたは複数のコマンドに従って、エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーをエネルギー貯蔵システムから配電網に放電するために、コマンドコンプライアンスルーチンを実行する(404)。
【0032】
制御システムは、エネルギー貯蔵システムからの1つまたは複数のシステム状態値と、配電網のための1つまたは複数の市場状態値とを受信する(406)。市場状態値は、配電網のエネルギー価格を特定することができる。たとえば、制御システムは、市場状態値を、クオリファイドスケジューリングエンティティ(QSE)から、または配電網のエネルギー管理システムから、または異なる情報源から受信することができる。いくつかの実装形態では、管理ルーチンは、エネルギー価格が閾値価格よりも安い時にエネルギー貯蔵システムを充電することを好み、エネルギー価格が別の閾値価格よりも高い時にエネルギー貯蔵システムを放電することを好む。
【0033】
いくつかの実装形態では、エネルギー貯蔵システムは、双方向電力変換システムによって配電網に連結された、少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを含む。1つまたは複数のシステム状態値を受信することは、エネルギー貯蔵デバイスの充電状態を受信することを含む。
【0034】
制御システムは、システム状態値と市場状態値とに基づいて、エネルギー貯蔵システムを充電するために、またはエネルギーをエネルギー貯蔵システムから配電網に放電するために、管理ルーチンを実行する(408)。いくつかの実装形態では、管理ルーチンを実行することは、充電状態が目標充電状態よりも上の時にエネルギー貯蔵デバイスを放電することを好み、充電状態が目標充電状態以下の時にエネルギー貯蔵デバイスを充電することを好む、目標充電状態ルーチンを実行することを含む。
【0035】
いくつかの実装形態では、管理ルーチンを実行することは、1つまたは複数の電力システム値を、電力を配電網に供給するように構成されている間欠的な電源から受信することを含む。電力システム値は、たとえば、間欠的な電源によって配電網に供給されている電力量を特定する。制御システムは、1つまたは複数の電力システム値に基づいて、エネルギー貯蔵デバイスを充電または放電することを決定することができる。制御システムは、間欠的な電源が、第1の閾値変化速度よりも早く減少している電力を供給している時にエネルギー貯蔵デバイスを放電し、間欠的な電源が、第2の閾値変化速度よりも早く増加している電力を供給している時にエネルギー貯蔵デバイスを充電する、ランプレート軽減ルーチンを実行することができる。
【0036】
いくつかの実装形態では、エネルギー管理システムは、エネルギー貯蔵デバイスを充電するためのコマンドではなく、エネルギー貯蔵デバイスを放電するためのコマンドを制御システムに送信するように構成されている。制御システムは、エネルギー貯蔵デバイスの充電状態が低い時、またはエネルギー価格が安い時、またはその両方の時に、エネルギー貯蔵デバイスを充電することを決定する。ひいては、制御システムは、エネルギー貯蔵デバイスの充電状態が高い時、またはエネルギー価格が高い時、またはその両方の時に、エネルギー貯蔵デバイスを放電することを決定することができる。それらの実装形態では、制御システムは、エネルギー貯蔵デバイスを放電するための許可を必要とし得る。
【0037】
制御システムは、エネルギー貯蔵デバイスを放電することを決定したことに応答して、放電するために、要求をエネルギー管理システムに送信する。次いで、制御システムは、エネルギー管理システムから応答を受信し、応答が放電を許可した場合、制御システムは、要求への応答によって許可された通り、エネルギー貯蔵システムを放電する。
【0038】
本明細書で説明した、主題の実施形態および機能的動作は、本明細書で開示した構造物とそれらの構造的同等物とを含む、デジタル電子回路で、明白に具体化されたコンピュータソフトウェアまたはファームウェアで、コンピュータハードウェアで、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせで実装することができる。本明細書で説明した主題の実施形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、つまり、データ処理装置によって実行されるための、またはデータ処理装置の動作を制御するための、有形の非一時的なプログラム運搬手段上に符号化されたコンピュータプログラム命令のうちの1つまたは複数のモジュールとして実装することができる。代替的にまたは加えて、プログラム命令は、人工的に生成された伝搬信号、たとえば、データ処理装置による実行のために、適切な受信装置に送信するための情報を符号化するために生成された、自動的に生成された、電気信号、光信号、または電磁信号に符号化することができる。コンピュータ記憶媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリデバイス、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせであることができる。
【0039】
コンピュータプログラムの実行に適切なコンピュータは、例として、汎用または特殊用途マイクロプロセッサまたはその両方、または他の種類の中央処理装置を含む。一般に、中央処理装置は、命令とデータとを、リードオンリメモリまたはランダムアクセスメモリまたはその両方から受信する。コンピュータの必須要素は、命令を実行または遂行するための中央処理装置、および命令とデータとを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータは、また、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、たとえば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含み、またはそれらからデータを受信し、またはそれらにデータを伝達し、またはその両方を行うように動作可能に連結される。しかしながら、コンピュータはそのようなデバイスを必ずしも有さない。さらに、コンピュータは、別のデバイス、たとえば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯音楽または映像プレーヤ、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受信機、または携帯記憶デバイス、たとえば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブなどに組み込むことができる。
【0040】
コンピュータプログラム命令とデータとを記憶するために適切なコンピュータ可読媒体は、全ての形式の非揮発性のメモリと媒体とメモリデバイスとを含み、例として、半導体メモリデバイス、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスと、磁気ディスク、たとえば、内部ハードディスクまたは取り外し可能ディスクと、光磁気ディスクと、CD−ROMディスクおよびDVD−ROMディスクとを含む。プロセッサおよびメモリは、特殊用途論理回路によって補い、またはその中に組み込むことができる。
【0041】
本明細書で説明したプロセスおよび論理フローは、入力データに対して動作し、出力を生成することによって機能を実行するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する、1つまたは複数のプログラム可能コンピュータによって実行することができる。プロセスおよび論理フローは、また、特殊用途論理回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)によって実行することができ、装置もまた、特殊用途論理回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)として実装することができる。
【0042】
本明細書は多くの特定の実装形態の詳細を含んでいるが、これらは、発明の範囲または特許請求の範囲に対する制約として解釈されるべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。本明細書で別々の実施形態の文脈の中で説明した特定の特徴は、また、1つの実施形態において組み合わせて実装することもできる。反対に、1つの実施形態の文脈の中で説明した様々な特徴は、また、複数の実施形態において別々に、または適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで動作しているとして上記で説明され、そのように最初に特許請求されさえもし得るが、特許請求される組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を指すことができる。
【0043】
同様に、動作は、図面において特定の順番で示されたが、これは、所望の結果を達成するために、そのような動作を示された特定の順番で、または起こった順番で実行すること、または示された動作を全て実行することを要求するものとして理解されるべきでない。特定の状況では、マルチタスクおよび並列処理が有利であり得る。さらに、上記で説明した実施形態における様々なシステムモジュールと構成要素との分離は、全ての実施形態でそのような分離を要求するものとして理解されるべきでなく、説明したプログラム構成要素およびシステムは、一般に、1つのソフトウェア製品に統合し、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化することができるということが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
100 配電システム
200 エネルギー貯蔵システム