特許第6132949号(P6132949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6132949
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】歯付ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/08 20060101AFI20170515BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20170515BHJP
   B29C 47/02 20060101ALI20170515BHJP
   B65G 15/42 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B29D29/08
   F16G1/28 E
   B29C47/02
   B65G15/42 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-68370(P2016-68370)
(22)【出願日】2016年3月30日
【審査請求日】2017年1月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】中野 嘉久
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−070589(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/129624(WO,A1)
【文献】 特表2015−505758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D29/00−29/08
B29C47/00−47/96
B65G15/30−15/58
F16G1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体コードが幅方向に等間隔に埋設された歯付ベルトの製造方法であって、
複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有するシート状の芯体層用部品、並びにシート状の基部、及びこの基部の一方の面に配設され、搬送方向に等間隔で設けられた複数の歯部を有する歯部層用部品を準備する工程と、
複数の上記芯体層用部品を上記歯部層用部品の歯部が設けられた面とは反対の面側に熱溶着する工程と
を備える歯付ベルトの製造方法。
【請求項2】
上記準備工程において、シート状の背面層用部品をさらに準備し、
上記熱溶着工程において、上記背面層用部品を上記芯体層用部品の歯部層用部品が配置される面とは反対の面側にさらに熱溶着する請求項1に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項3】
上記準備工程が、熱可塑性樹脂組成物の押出しにより芯体層用部品を形成する工程を備える請求項1又は請求項2に記載の歯付ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトの製造方法、芯体層用部品、及び芯体層用部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯付ベルトは、工作機械や成形機等の大型加工機の駆動用ベルト、自動車の伝動用ベルト、OA機器等の精密伝動用ベルトなどとして、様々な分野で使用されている。このような歯付ベルトとして、ベルトの強度、耐久性、駆動の正確性等を向上させるために、複数の芯体コードが略等間隔に埋設されたものが使用されている。
【0003】
この芯体コードの本数は、歯付ベルトの幅にも依存するが、通常、数十本である。これらの芯体コードは、搬送面から露出したり、搬送面にうねりが生じたりすることを回避するため、コード間のテンションが略等しくなるように、かつ歯付ベルトの搬送面からの距離が略等しくなるように埋設される必要がある。この要求に対し、例えば芯体コードの数に対応した芯体コード繰出し装置を用いて芯体コードのテンションを制御しつつ、各芯体コードを加熱しながら所定の深さまで埋設する歯付ベルトの製造方法が開示されている(特開2015−505758号公報参照)。
【0004】
上記従来の歯付ベルトの製造方法では、個々の芯体コードのテンション及び加熱温度を制御することで、芯体コードのテンションや埋設される深さを調整するので、それぞれの芯体コードに対して繰出し装置及び加熱装置が必要となる。このため、上記従来の歯付ベルトの製造方法では、製造装置のコストが増大し易い。
【0005】
また、上記従来の歯付ベルトの製造方法では、多数の芯体コード1本1本のテンションや埋設深さを調整する。従って、上記従来の歯付ベルトの製造方法では、制御対象数が多くその制御が複雑化するため、個々の芯体コードに生じるテンションや埋設深さにばらつきが生じ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−505758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる歯付ベルトの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる芯体層用部品を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる芯体層用部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、芯体コードが幅方向に略等間隔に埋設された歯付ベルトの製造方法であって、複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有するシート状の芯体層用部品、並びにシート状の基部、及びこの基部の一方の面に配設され、搬送方向に略等間隔で設けられた複数の歯部を有する歯部層用部品を準備する工程と、1又は複数の上記芯体層用部品を上記歯部層用部品の歯部が設けられた面とは反対の面側に熱溶着する工程とを備える。
【0009】
当該歯付ベルトの製造方法は、複数の芯体コード及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有する芯体層用部品を用いる。つまり、1つの芯体層用部品が複数の芯体コードを有する。このため、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体層用部品を配置するための繰出し装置を芯体コードの数よりも減らすことができる。また、上記芯体層用部品は、芯体コードを熱可塑性樹脂で被覆することで製造できるので、比較的容易かつ安価に準備することができる。従って、当該歯付ベルトの製造方法は、製造装置のコストの増大を抑止できる。また、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体層用部品の複数の芯体コードが予め熱可塑性樹脂で固定されている。このため、当該歯付ベルトの製造方法は、1つの芯体層用部品が有する複数の芯体コードのテンションや埋設深さをまとめて調整できる。これにより当該歯付ベルトの製造方法は、制御対象数が芯体コードの数より少なくすることができる。従って、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体コード単位で制御する場合に比べて、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを抑制できる。
【0010】
上記準備工程において、シート状の背面層用部品をさらに準備し、上記熱溶着工程において、上記背面層用部品を上記芯体層用部品の歯部層用部品が配置される面とは反対の面側にさらに熱溶着するとよい。このように背面層用部品及び芯体層用部品を熱溶着することで、製造される歯付ベルトの搬送面の平滑化が図られる。
【0011】
上記準備工程が、熱可塑性樹脂組成物の押出しにより芯体層用部品を形成する工程を備えるとよい。このように上記準備工程が上記形成工程を備えることで、熱可塑性樹脂組成物から連続して歯付ベルトを製造できるので、芯体層用部品の管理等にかかる製造コストを削減できる。また、押出成形により芯体層用部品を準備するので、歯付ベルトの搬送面からの距離が略等しくなるように複数の芯体コードが配設された芯体層用部品を比較的容易に得ることができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、芯体コードが幅方向に略等間隔に埋設された歯付ベルトの芯体層として用いられる部品であって、複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有する。
【0013】
当該芯体層用部品は、芯体コードが予め熱可塑性樹脂で固定されているので、歯付ベルトの製造時に当該芯体層用部品が有する複数の芯体コードのテンションや埋設深さをまとめて調整できる。このため、当該芯体層用部品を用いて歯付ベルトを製造することで繰出し装置を芯体コードの数よりも減らすことができると共に、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる。また、当該芯体層用部品は、芯体コードを熱可塑性樹脂で固定した部品とすることで、歯部層部分との熱溶着により歯付ベルトを製造できる。このため、芯体コードを直接埋設して歯付ベルトを形成する場合に比べて製造時間を短縮できる。
【0014】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、芯体コードが幅方向に略等間隔に埋設された歯付ベルトの芯体層として用いられ、かつ複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有する芯体層用部品の製造方法であって、熱可塑性樹脂組成物を押出す工程を備える。
【0015】
当該芯体層用部品の製造方法では、押出成形により歯付ベルトの芯体層用部品を製造するので、表面からの距離が略等しくなるように複数の芯体コードが配設された芯体層用部品を比較的容易に得ることができる。
【0016】
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、例えば含有量が50質量%以上、好ましくは90%以上の成分をいう。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の歯付ベルトの製造方法は、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる。また、本発明の芯体層用部品を用いることで、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制できる歯付ベルトを製造できると共に、その製造時間を短縮できる。また、本発明の芯体層用部品の製造方法は、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる歯付ベルトの芯体層用部品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る歯付ベルトの製造方法のフローを示す流れ図である。
図2図1の歯付ベルトの製造方法に用いられる芯体層用部品を示す模式的斜視図である。
図3図1の歯付ベルトの製造方法に用いられる歯部層用部品を示す模式的斜視図である。
図4図1の歯付ベルトの製造方法に用いられる背面層用部品を示す模式的斜視図である。
図5図1の歯付ベルトの製造方法に用いられる歯付ベルトの製造装置を示す模式的側面図である。
図6図1の歯付ベルトの製造方法により得られる歯付ベルトを示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0020】
図1の歯付ベルトの製造方法は、芯体コードが幅方向に略等間隔に埋設された歯付ベルトの製造方法であり、準備工程(S1)と、熱溶着工程(S2)とを備える。
【0021】
当該歯付ベルトの製造方法では、図2に示す芯体層用部品1、図3に示す歯部層用部品2、及び図4に示す背面層用部品3を用いる。以下に、これらの部品について説明する。
【0022】
(芯体層用部品)
当該芯体層用部品1は、シート状である。また、上記芯体層用部品1は、歯付ベルトの芯体層として用いられる部品であり、複数の芯体コード1a及びこの芯体コード1aを被覆する被覆部1bを有する。
【0023】
当該芯体層用部品1の平均幅の下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、当該芯体層用部品1の平均幅の上限としては、100mmが好ましく、50mmがより好ましい。当該芯体層用部品1が上記下限未満であると、後述する芯体層用部品繰出し装置の配設数が多くなり、製造装置のコストの増大抑止効果が不十分となるおそれがある。また、当該芯体層用部品1の製造が困難となるおそれがある。逆に、当該芯体層用部品1が上記上限を超えると、芯体層用部品1の並列数により決まる歯付ベルトの平均幅を選択する自由度が低下するおそれがある。
【0024】
当該芯体層用部品1の平均厚さの下限としては、0.3mmが好ましい。一方、当該芯体層用部品1の平均厚さの上限としては、3mmが好ましい。当該芯体層用部品1の平均厚さが上記下限未満であると、当該芯体層用部品1の強度が不足するため、複数の芯体コード1aが十分に固定されず、複数の芯体コード1a間のテンションや埋設深さの制御が困難となるおそれがある。逆に、当該芯体層用部品1の平均厚さが上記上限を超えると、製造される歯付ベルトの厚さが大きくなり過ぎ、歯付ベルトの可撓性が不十分となるおそれがある。
【0025】
なお、当該芯体層用部品1は、歯付ベルトとして製造された後に切断され、例えば所望の長さの無端ベルトとして構成される。このため、当該芯体層用部品1の長さは、芯体層繰出し装置に組み込める限り特に限定されず、例えば0.1m以上10m以下とできる。
【0026】
上記芯体コード1aは、略円形断面を有する線状体である。上記芯体コード1aの主成分としては、特に限定されないが、例えばスチール、アラミド、カーボン、ガラス、ポリエステル等を挙げることができる。
【0027】
上記芯体コード1aの断面直径は、特に限定されないが、一般的には0.2mm以上2.5mm以下である。また、上記芯体コード1aの長さは、芯体層用部品1の長さに等しい。
【0028】
上記芯体コード1aの本数は、当該芯体層用部品1の平均幅とコード間のピッチとから適宜決定されるが、上記芯体コード1aの本数の下限としては、4本が好ましい。一方、上記芯体コード1aの本数の上限としては、60本が好ましい。上記芯体コード1aの本数が上記下限未満であると、必要とする当該芯体層用部品1の個数が増加するため、芯体層用部品繰出し装置の配設数が多くなり、製造装置のコストの増大抑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記芯体コード1aの本数が上記上限を超えると、芯体コード1aのピッチが狭くなり歯付ベルトの可撓性が不十分となるおそれや、芯体コード1aのピッチを確保するため当該芯体層用部品1の平均幅が大きくなり歯付ベルトの平均幅を選択する自由度が低下するおそれがある。
【0029】
上記芯体コード1a間のピッチは、略等しい。上記芯体コード1a間のピッチの下限としては、0.3mmが好ましい。一方、上記芯体コード1a間のピッチの上限としては、5mmが好ましい。上記芯体コード1a間のピッチが上記下限未満であると、歯付ベルトの可撓性が不十分となるおそれがある。逆に、上記芯体コード1a間のピッチが上記上限を超えると、芯体コードによるベルトの強度、耐久性、駆動の正確性等の向上効果が不足するおそれがある。
【0030】
上記複数の芯体コード1aのうち、当該芯体層用部品1の幅方向で最も外側に配設される芯体コード1aと、その芯体コード1aと平行で、かつ近接する当該芯体層用部品1の端面との平均距離は、上記芯体コード1a間のピッチの略半分であるとよい。このように上記平均距離を上記ピッチの略半分とすることで、複数の当該芯体層用部品1を長さ方向に平行で、かつ接するように配置した際に、隣り合う当該芯体層用部品1間で近接する芯体コード1a間のピッチが当該芯体層用部品1内の芯体コード1aのピッチと略一致させることができる。このため、当該芯体層用部品1を複数配置した際、歯付ベルト全体で芯体コード1aのピッチ制御が容易に行える。
【0031】
上記被覆部1bの主成分は、熱可塑性樹脂である。上記熱可塑性樹脂としては、熱可塑性のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。中でも耐摩耗性に優れるポリウレタンが好ましい。
【0032】
また、上記被覆部1bには架橋剤、可塑剤、硬化剤等の添加剤を目的に応じて適宜含有させてもよい。
【0033】
当該芯体層用部品1は、例えば被覆部1bを形成するための熱可塑性樹脂組成物を用いた押出成形をする工程を備える製造方法により製造することができる。このように押出成形により芯体層用部品1を製造することで、表面からの距離が略等しくなるように複数の芯体コード1aが配設された芯体層用部品1を比較的容易に得ることができる。
【0034】
具体的には、当該芯体層用部品1は、複数の芯体コード1aを押出機のシリンダ先端に取り付けたクロスヘッドに挿通しながら、その両側を溶融した熱可塑性樹脂組成物で被覆するように押出成形することで製造できる。
【0035】
また、溶融押出した熱可塑性樹脂組成物と複数の芯体コード1aとを一対のロールで挟み込み加圧することで上記複数の芯体コード1aを熱可塑性樹脂組成物内に埋め込んで、当該芯体層用部品1を製造してもよい。
【0036】
上記押出成形において熱可塑性樹脂組成物を溶融させるための加熱温度は、樹脂の種類や硬化剤の利用の有無等に依存するが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融せず、押出成形が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、押出成形体が不要に熱くなるため、冷却時間が不要に長くなり、当該芯体層用部品1の製造効率が低下するおそれがある。
【0037】
(歯部層用部品)
歯部層用部品2は、シート状の基部2aと、この基部2aの一方の面に配設され、搬送方向に略等間隔で設けられた複数の歯部2bとを有する
【0038】
上記基部2aの平均幅は、この歯部層用部品2の表面に配置される芯体層用部品1の並列数により適宜決定されるが、例えば25mm以上400mm以下とできる。
【0039】
上記基部2aの平均厚さは、製造される歯付ベルトに要求される強度等により適宜決定されるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。
【0040】
上記基部2aの長さは、特に限定されないが、歯付ベルトの製造効率の観点から、芯体層用部品1の長さと略等しくするとよい。
【0041】
上記歯部2bは、断面が略台形、三角形、半円形、山形、波形、正規分布曲線状等の凸条部である。また、上記歯部2bは、その稜線(軸方向)が基部2aの幅方向と略一致するように配設されている。
【0042】
上記歯部2bの平均高さ及び歯部2b間のピッチは、用途に応じて適宜決定される。上記歯部2bの平均高さは、例えば1.0mm以上10mm以下とできる。また、歯部2b間のピッチは、例えば2mm以上25mm以下とできる。
【0043】
上記歯部層用部品2の主成分としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の樹脂を挙げることができる。また、これらの樹脂としては、熱可塑性のものが好ましい。上記樹脂を熱可塑性とすることで、歯部層用部品2と芯体層用部品1との熱溶着による接着力が向上する。中でも耐摩耗性が長期間に渡って安定して発揮される熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
【0044】
上記歯部層用部品2は、例えば押出成形工程と、歯部形成工程とを備える製造方法により製造できる。
【0045】
上記押出成形工程では、歯部層用部品2を形成するための樹脂組成物を公知の溶融押出成形機を用いて押出成形する。これにより押出成形品が得られる。この押出成形品はシート状である。
【0046】
上記歯部形成工程では、上記押出成形工程後の押出成形体に歯部2bを形成する。具体的には、例えば歯部に対応した凹部を外周面に有する円筒状の金型ロールを準備し、上記押出成形品の一方の面を加熱しながら上記金型ロールに巻き付けることで、歯部を形成する。上記加熱温度としては、押出成形体が溶融して一方の面に歯部を形成できる温度に応じて適宜決定されるが、例えば150℃以上250℃以下とできる。
【0047】
(背面層用部品)
背面層用部品3は、歯部や芯体コードを有さない平坦なシート状の部品である。
【0048】
上記背面層用部品3の平均幅は、芯体層用部品1の並列数により適宜決定されるが、例えば25mm以上400mm以下とできる。
【0049】
上記背面層用部品3の平均厚さは、歯付ベルトの搬送面に要求される強度等により適宜決定されるが、例えば0.2mm以上6mm以下とできる。
【0050】
上記背面層用部品3の長さは、特に限定されないが、歯付ベルトの製造効率の観点から、芯体層用部品1の長さと略等しくするとよい。
【0051】
上記背面層用部品3の主成分は、上記歯部層用部品2の主成分と同様のものとすることができる。
【0052】
上記背面層用部品3は、例えば押出成形工程を備える製造方法により製造できる。具体的には、背面層用部品3を形成するための樹脂組成物を公知の溶融押出成形機を用いて押出成形することで、上記背面層用部品3を製造する。
【0053】
<歯付ベルトの製造装置>
当該歯付ベルトの製造方法では、例えば図5に示す歯付ベルトの製造装置を用いることができる。上記歯付ベルトの製造装置は、芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5、背面層用部品繰出し装置6、ヒーター7、金型ロール8、ニップロール9、及び送出しロール10を主に備える。
【0054】
上記芯体層用部品繰出し装置4は、芯体層用部品1を繰出す装置である。上記芯体層用部品繰出し装置4としては、公知の繰出し装置を用いることができ、例えばロール状に巻き取られた芯体層用部品1を巻き取り方向とは逆方向に回転させることで送り出すように構成される。また、上記芯体層用部品繰出し装置4は、その回転トルクの調整等により、芯体層用部品1のテンションを調整し、製造される歯付ベルトにおける芯体コードのテンションを調整することができる。
【0055】
上記芯体層用部品繰出し装置4の配設数は、芯体層用部品1を並列する数により決まるが、1本の歯付ベルトの製造に対して1以上であり、例えば図5の歯付ベルトの製造装置では4である。これら4つの芯体層用部品繰出し装置4は、後述する金型ロール8へ芯体層用部品1を並列して供給できるように、かつ金型ロール8に比較的近接するように配設される。なお、芯体層用部品1の並列数及び平均幅により、歯付ベルトの幅が決まる。
【0056】
上記歯部層用部品繰出し装置5は、歯部層用部品2を繰出す装置である。上記歯部層用部品繰出し装置5は、上記芯体層用部品繰出し装置4と同様に構成できる。上記歯部層用部品繰出し装置5の配設数は、1本の歯付ベルトの製造に対して1である。また、上記歯部層用部品繰出し装置5は、芯体層用部品1と金型ロール8との間へ歯部層用部品2を供給できるように、かつ金型ロール8に比較的近接するように配設される。
【0057】
上記背面層用部品繰出し装置6は、背面層用部品3を繰出す装置である。上記背面層用部品繰出し装置6は、上記芯体層用部品繰出し装置4と同様に構成できる。上記背面層用部品繰出し装置6の配設数は、1本の歯付ベルトの製造に対して1である。また、上記背面層用部品繰出し装置6は、芯体層用部品1の金型ロール8とは反対側の面へ背面層用部品3を供給できるように、かつ金型ロール8に比較的近接するように配設される。
【0058】
ヒーター7は、上記芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5及び背面層用部品繰出し装置6により繰り出された上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を加熱し、少なくとも芯体層用部品1の表面を溶融させるヒーターである。上記ヒーター7としては、例えば公知の抵抗加熱ヒーターを用いることができる。上記ヒーター7の配設位置は、上記芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5及び背面層用部品繰出し装置6と、後述する金型ロール8及びニップロール9との間であれば、特に限定されないが、金型ロール8及びニップロール9の近傍が好ましい。上記ヒーター7を金型ロール8及びニップロール9の近傍に配設することで、上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を加熱後速やかに金型ロール8及びニップロール9により加圧できる。また、上記ヒーター7の配設位置としては、上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3の表面を加熱できる限り特に限定されないが、複数の上記芯体層用部品1の両面が加熱される位置が好ましい。図5の歯付ベルトの製造装置では、複数の上記芯体層用部品1の両面を加熱する2つのヒーター7が配設されている。1のヒーター7が、芯体層用部品1と歯部層用部品2とが融着するそれぞれの面を加熱し、他のヒーター7が芯体層用部品1と背面層用部品3とが融着するそれぞれの面を加熱するよう構成されている。このように構成することで、それぞれの部品の温度を少ないヒーター数で制御することができる。
【0059】
金型ロール8は、製造される歯付ベルトの歯部と嵌合可能な凹部を有するロールである。また、ニップロール9は、上記芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5及び背面層用部品繰出し装置6により繰り出され、かつヒーター7により加熱された上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を上記金型ロール8との間に挟み込むことができる。また、金型ロール8及びニップロール9は、加圧により上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を溶着し、歯付ベルト11を形成できるように構成されている。
【0060】
加圧後の歯付ベルト11は、金型ロール8により送られる。金型ロール8により送られている間に歯付ベルト11は冷却され、その形状が安定する。歯付ベルト11の冷却方法は特に限定されないが、室温により自然冷却、送風による空冷、金型ロール8自体を水等により冷却して冷やす水冷等の方法を挙げることができる。
【0061】
上記送出しロール10は、上記金型ロール8により送られてきた歯付ベルト11を金型ロール8から回収し、例えば歯付ベルト11の巻取り装置へと送るためのロールである。送出しロール10の位置は、ニップロール9を経て形成された歯付ベルト11の形状が安定する程度に冷却された後であれば特に限定されない。例えば図5の歯付ベルトの製造装置では、送出しロール10は、金型ロール8の中心に対しニップロール9と対称の位置に配設されている。
【0062】
以下に、上記歯付ベルトの製造装置を用いて、当該歯付ベルトの製造方法について説明する。
【0063】
<準備工程>
準備工程S1では、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を準備する。具体的には、予め製造された芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5、及び背面層用部品繰出し装置6にセットする。あるいは、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を製造しながらそれぞれの繰出し装置へ供給してもよい。このように各部品を製造しながら供給することで、熱可塑性樹脂組成物から連続して歯付ベルトを製造できるので、各部品の管理等にかかる製造コストを削減できる。
【0064】
<熱溶着工程>
熱溶着工程S2では、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を熱溶着する。
【0065】
まず、ヒーター7により芯体層用部品繰出し装置4、歯部層用部品繰出し装置5及び背面層用部品操出し装置6から繰り出された芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を加熱し、少なくとも芯体層用部品1の表面を溶融させる。
【0066】
上記ヒーター7の加熱温度は、少なくとも芯体層用部品1の熱可塑性樹脂が溶融する温度である。具体的には、上記ヒーター7の加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、上記熱可塑性樹脂が十分に溶融せず、芯体層用部品1と歯部層用部品2や背面層用部品3との溶着が不十分となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3が不要に熱くなるため、変形するおそれがある。
【0067】
上記加熱後、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を重ね合わせる。具体的には、上記歯部層用部品2を歯部2bを有する面が金型ロール8の表面側となるように、かつ歯部2bが金型ロール8の凹部と嵌合するように金型ロール8とニップロール9との間に挟み込む。また、上記複数の芯体層用部品1を、歯部層用部品2の歯部2bを有する面とは反対の面側に長手方向に沿って並列するように歯部層用部品2とニップロール9との間に挟み込む。さらに、背面層用部品3を、上記歯部層用部品2の歯部2bを有する面とは反対の面側に重なるように芯体層用部品1とニップロール9との間に挟み込む。このように金型ロール8とニップロール9との間に芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を挟み込むことで、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を重ね合わせることができる。
【0068】
次に、上記芯体層用部品1、歯部層用部品2及び背面層用部品3を金型ロール8とニップロール9とにより加圧することで、熱溶着する。上記加圧としては、芯体層用部品1及び歯部層用部品2が熱溶着できる限り特に限定されないが、例えばベルト単位幅当たりで5N/mm以上50N/mm以下とできる。
【0069】
熱溶着後、冷却し形状を安定化させ、必要に応じて端部を裁断し形状を整えることで、図6に示すような歯付ベルト11が得られる。上記歯付ベルト11は、複数の芯体層用部品1により形成される芯体層11a、歯部層用部品2により形成される歯部層11b、及び背面層用部品3により形成される背面層11cを備える。つまり、上記歯付ベルト11は、複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆層を有する芯体層11aと、上記芯体層11aの一方の面側に配設され、搬送方向に略等間隔で設けられた複数の歯部を有する歯部層11bと、上記芯体層11aの反対の面側に配設されるシート状の背面層11bとを備える。
【0070】
上記歯付ベルト11の平均厚さは、芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3の平均厚さの和と略等しく、例えば1mm以上20mm以下とできる。ここで、歯付ベルトの平均厚さとは、歯部層の歯部の底面から背面層の上面までの厚さの平均を意味する。
【0071】
上記歯付ベルト11の平均幅は、芯体層用部品1の並列数により決まり、例えば25mm以上400mm以下である。
【0072】
<利点>
当該歯付ベルトの製造方法は、複数の芯体コード1a及びこの芯体コード1aを被覆する被覆部1bを有する芯体層用部品1を用いる。つまり、1つの芯体層用部品1が複数の芯体コード1aを有する。このため、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体層用部品1を配置するための繰出し装置を芯体コード1aの数よりも減らすことができる。また、上記芯体層用部品1は、芯体コード1aを熱可塑性樹脂で被覆することで製造できるので、比較的容易かつ安価に準備することができる。従って、当該歯付ベルトの製造方法は、製造装置のコストの増大を抑止できる。また、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体層用部品1の複数の芯体コード1aが予め熱可塑性樹脂で固定されている。このため、当該歯付ベルトの製造方法は、1つの芯体層用部品1が有する複数の芯体コード1aのテンションや埋設深さをまとめて調整できる。これにより当該歯付ベルトの製造方法は、制御対象数が芯体コード1aの数より少なくすることができる。従って、当該歯付ベルトの製造方法は、芯体コード単位で制御する場合に比べて、芯体コード1aのテンションや埋設深さのばらつきを抑制できる。
【0073】
また、当該歯付ベルトの製造方法は、背面層用部品3及び芯体層用部品1を熱溶着するので、製造される歯付ベルト11の搬送面の平滑化が図られる。また、当該歯付ベルトの製造方法は、予め製造された芯体層用部品1、歯部層用部品2、及び背面層用部品3を用いることで、製造時間を短縮できる。
【0074】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0075】
上記実施形態では、背面層用部品を芯体層用部品の表面に配置して熱溶着する場合を説明したが、背面層用部品の配置及び熱溶着は必須の構成要件でない。背面層用部品の配置及び熱溶着を行わない場合、図5の製造装置において、背面層用部品繰出し装置を省略できる。これにより、さらに製造コストを低減できる。なお、背面層用部品の配置及び熱溶着を省略した場合の歯付ベルトの搬送面は、芯体層用部品の一方の面となる。
【0076】
また、上記実施形態では、複数の芯体層用部品を用いる場合を説明したが、芯体層用部品は1つであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の歯付ベルトの製造方法は、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる。また、本発明の芯体層用部品を用いることで、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制できる歯付ベルトを製造できると共に、その製造時間を短縮できる。また、本発明の芯体層用部品の製造方法は、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる歯付ベルトの芯体層用部品を製造できる。
【符号の説明】
【0078】
1 芯体層用部品
1a 芯体コード
1b 被覆部
2 歯部層用部品
2a 基部
2b 歯部
3 背面層用部品
4 芯体層用部品繰出し装置
5 歯部層用部品繰出し装置
6 背面層用部品繰出し装置
7 ヒーター
8 金型ロール
9 ニップロール
10 送出しロール
11 歯付ベルト
11a 芯体層
11b 歯部層
11c 背面層
【要約】
【課題】本発明は、製造装置のコストの増大を抑止しつつ、芯体コードのテンションや埋設深さのばらつきを比較的容易に抑制することができる歯付ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の歯付ベルトの製造方法は、芯体コードが幅方向に略等間隔に埋設された歯付ベルトの製造方法であって、複数の芯体コード、及びこの芯体コードを被覆し、熱可塑性樹脂を主成分とする被覆部を有するシート状の芯体層用部品、並びにシート状の基部、及びこの基部の一方の面に配設され、搬送方向に略等間隔で設けられた複数の歯部を有する歯部層用部品を準備する工程と、1又は複数の上記芯体層用部品を上記歯部層用部品の歯部が設けられた面とは反対の面側に熱溶着する工程とを備える。上記準備工程において、シート状の背面層用部品をさらに準備し、上記熱溶着工程において、上記背面層用部品を上記芯体層用部品にさらに熱溶着するとよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6