(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レーザ光による金属の積層造形においては、窒素ガスで充満された造形室となるチャンバ内に配置され且つ上下方向に移動可能な造形テーブル上に材料供給装置によって非常に薄い材料粉体層を形成するようにして材料粉体を供給し、この材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して照射位置の材料粉体を焼結させて焼結層を積層することを繰り返すことで、複数の焼結層からなる所望の造形物を形成する。また、チャンバ内に切削手段を備える積層造形においては、造形途中や造形後の造形物に切削加工を行うこともある。
【0003】
繰り返し造形テーブル上に供給される未焼結の材料粉体は、積層造形が進むにつれて降下する造形テーブルとその周囲に設けられた粉体保持壁で囲まれた空間に保持されるが、特許文献1(特許第5830148号公報)のように、所望の造形物を形成したあとに造形テーブルを造形物とともに粉体保持壁に形成されてバケットに連通する粉体排出部の位置まで降下させることで、粉体保持壁の中に残る余剰分として、スパッタや切削屑などの不純物と一緒に適時に粉体保持壁の外のバケットに排出される。また、繰り返し造形テーブル上に供給される未焼結の材料粉体は、ブレードで表面をならすように材料粉体層を形成した際にブレードでかき出される材料粉体層の容積を超えた余剰分、スパッタおよび切削屑などが一緒にバケットに排出されるようになっている。排出された余剰分の材料粉体は、特に限られた量の材料粉体で積層造形が行われる際に、例えば、所定の時間毎に作業者によってふるいにかけられる等して不純物が除去されたあと、作業者によって再び材料供給装置に戻されていた。そのため、積層造形作業の長時間の無人化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、特許文献2(特許第4561187号公報)の三次元形状造形物の製造における粉末材料再生装置では、材料タンクから昇降テーブルの上に供給された粉末材料の表面をブレードでならす際に前工程で焼結層を切削したときに出る切削屑を含む粉末材料の余剰分を回収タンクに回収し、振動駆動されるふるいを用いて切削屑を取り除いたあとの粉末材料の材料成分を検査し、検査結果を基に不足材料成分を補充し混合された粉末材料を一時貯蔵タンクで貯蔵し、そのあと適宜のタイミングで材料タンクに戻すようにして昇降テーブルの上に新たに供給される材料粉末の一部として再利用することを開示している。
【0005】
また、特許文献3(特開2002−292751号公報)の三次元造形装置では、粉体供給部から造形ステージの上に供給された粉体材料をブレードおよび伸展ローラにより1層分の薄い層に形成する際に粉体が不足しないように若干多めに材料粉体を供給し、余った粉体材料をブレードと伸展ローラにより払い出して粉体回収口から落下させて粉体回収槽に蓄積し、サイクロン分離機において周囲の気体とともに吸引した粉体材料をサイクロン分離機の下部に沈降集塵させる働きを利用した粉体搬送部によって、粉体回収槽の中の粉体材料を材料供給部のホッパまで搬送して造形ステージの上に新たに供給される粉体材料の一部として再利用することを開示している。また、サイクロン分離機を利用した粉体搬送部では、予め設定された量の粉体材料が蓄積されるとシャッタ機構を開くようにするとともにシャッタ機構を閉じた状態で十分な密閉構造を持たせることで粉体の吸気効率を上げることを開示している。また、特許文献3の三次元造形装置では、粉体搬送用チューブと手操作粉体回収用チューブの管路を切り替える管路切り替え機構を備えて、材料供給部のホッパと粉体回収槽と接続する経路と、材料供給部のホッパとオペレータが手動で造形を作成するためのワーク領域から材料粉体を吸引可能にするチューブとを接続する経路と、を有することを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。なお、
図2では、不活性ガス給排系統の記載を省略する。
【0016】
図1に示すように、本発明が適用される一実施形態の積層造形装置1は、所要の造形領域Rを覆い且つ所定濃度の不活性ガスで充満されるチャンバ2と、チャンバ2内で移動しながら造形領域R上に材料粉体を供給して材料粉体層8を形成するリコータヘッド11を含む材料供給装置3と、材料粉体層8の所定箇所にレーザ光Lを照射して照射位置の材料粉体を焼結して焼結層を形成させるレーザ光照射部13とを備える。また、チャンバ2内には、造形物の造形途中に、焼結層が積層されて得られた焼結体の表面や不要部分に対して機械加工を施すための切削装置50が備えられても良い。
【0017】
材料供給装置3は、例えば、チャンバ2内の造形領域Rを有するベース台4に配置されかつ水平1軸方向(矢印B方向)に移動可能に構成されたリコータヘッド11と、リコーダヘッド11に材料粉体をチャンバ2の外部から補充するための材料補充部55とを含む構成であっても良い。造形領域Rには、造形テーブル駆動機構31によって駆動されて上下方向(
図1の矢印A方向)に移動可能な造形テーブル5が設けられる。積層造形装置1の使用時には、造形テーブル5上にその表面に比して面積の小さい造形プレート7が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。また、所定の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。
【0018】
造形テーブル5の周りには、粉体保持壁26が設けられる。粉体保持壁26と造形テーブル5によって囲まれる粉体保持空間32には、未焼結の材料粉体が保持される。
図2に示すように、粉体保持壁26の下側には、粉体保持空間32内の材料粉体を排出可能な下部の粉体排出部27aが設けられ、積層造形の完了後に、造形テーブル5を降下させることによって、余剰の未焼結の材料粉体とスパッタや切削屑などの不純物(以下、単に不純物と称する)とが一緒に下部の粉体排出部27aから排出され、排出された材料粉体は、下部のシューターガイド28aによってシューター29に案内され、シューター29を通じて材料回収用バケット30に収容される。
【0019】
また、チャンバ2内の造形領域Rを有するベース台4には、粉体保持壁26の外側に形成されかつ材料回収用バケット30に連通する少なくとも1つの上部の粉体排出部27bを有する。移動するリコータヘッド11によって押し出される余剰の未焼結の材料粉体や不純物は、粉体保持壁26を乗り越えて粉体保持壁26の外側にある粉体排出部27bから排出されて、シューターガイド28bによってシューター29に案内され、材料回収用バケット30に収容される。なお、上部の粉体排出部27bは、不図示のシャッタによって適時に開閉されるように構成されていても良い。シューター29と材料回収用バケット30の間には、適時に材料回収用バケット30の供給口30aを開閉可能なシャッタ30bを備えてあっても良い。
【0020】
材料供給装置3に備えるリコータヘッド11は、材料収容部と、材料収容部の上面に設けられた上面開口部と、材料収容部の底面に設けられかつ材料収容部内の材料粉体を排出する材料排出口とを備える。材料排出口11cは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向に延びるスリット状の細長い形状を有する。リコータヘッド11の両側面には、材料排出口11cから排出された材料粉体を平坦化して材料粉体層8を形成するブレード11fb,11rbが設けられる。材料粉体は、例えば、金属粉(例:鉄粉)であり、例えば平均粒径20μmの球形である。また、リコータヘッド11の両側面には、不活性ガスの供給および排出を行うために、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向に沿ってそれぞれ第1供給口33aおよび第2排出口34bが設けられている。本明細書において、「不活性ガス」とは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが例示される。
【0021】
材料供給装置3に備える材料補充部55は、リコータヘッド11の材料収容部11aに材料粉体を供給する中間ダクト69と、中間ダクト69に材料粉体を供給するメインダクト82を備える。メインダクト82には、材料回収用バケット30の中に収容される余剰の未焼結の材料粉体が後述するように再び供給されるとともに、必要に応じて材料タンク76から新しい材料粉体を供給するようにしても良い。メインダクト82は、メインダクト下部73と、メインダクト下部73よりも上側に設けられたメインダクト上部72を備え、メインダクト上部72に供給された材料粉体がメインダクト下部73を通じて中間ダクト69に供給されるように構成されている。メインダクト82の出口は、メインダクトシャッタ68によって開閉される。中間ダクト69の出口は、中間ダクトシャッタ70によって開閉される。メインダクト82とチャンバ2の間には、蛇腹74を有する。また中間ダクト69とチャンバ2の間にも蛇腹75を有する。
【0022】
例えば、リコータヘッド11には材料収容部11a内の材料粉体の量を検知するセンサが設けられており、材料収容部11aへの材料粉体の補充が必要と判断されたときは、リコータヘッド11が中間ダクト69の直下に移動されて、材料補充部55から材料粉体が補充される。具体的には、まず、中間ダクト69の出口がリコータヘッド11の材料収容部11aの上端よりも高い位置にあり、かつ中間ダクト69の出口が中間ダクトシャッタ70で閉じられている状態で、材料収容部11aが中間ダクト出口69aの直下になるようにリコータヘッド11が移動する。次に、中間ダクトの出口の位置が材料収容部11aの上端よりも低い位置になるように中間ダクト69を移動させ、その状態で中間ダクトシャッタ70を開くことによって、中間ダクト69の出口から材料粉体を排出させる。材料粉体は自重によって排出されるが、材料収容部11a内の材料粉体が中間ダクト69の出口の位置に到達した時点で材料粉体の排出が止まる。そのあと、中間ダクトシャッタ70を閉じた状態で中間ダクト69の出口の位置が材料収容部11aの上端よりも高い位置になるように中間ダクト69を移動させて、リコータヘッド11を造形領域Rに移動させる。なお、メインダクトシャッタ68は、適時に中間ダクト69に材料粉体を供給する際に開かれる。
【0023】
チャンバ2の上方にはレーザ光照射部13が設けられ、レーザ光照射部13から出力されたレーザ光Lは、チャンバ2に設けられたウィンドウ2aを透過して造形領域Rに形成された材料粉体層8に照射される。レーザ光照射部13は、造形領域Rにおいてレーザ光Lを二次元走査可能に構成されていればよく、例えば、レーザ光Lを生成する不図示のレーザ光源と、レーザ光Lを造形領域Rにおいて二次元走査可能とする不図示の一対のガルバノスキャナとで構成される。レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO2レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザなどである。ウィンドウ2aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバーレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ2aは石英ガラスで構成可能である。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態の積層造形装置は、チャンバ2内に切削装置50を備えても良い。切削装置50は、加工ヘッド57と、加工ヘッド57を制御可能に所望の位置に移動させる不図示の加工ヘッド駆動機構を含む。加工ヘッド57は、スピンドルヘッド60と撮像部59を含む。スピンドルヘッド60は、不図示のエンドミル等の回転切削工具を取り付けて回転させることができるように構成されており、材料粉体を焼結して得られた焼結層の表面や不要部分に対して切削加工を行うことができる。また回転切削工具は複数種類の回転切削工具であることが好ましく、使用する回転切削工具は不図示の自動工具交換装置によって、造形中にも交換可能である。撮像部59は、例えば、可視光領域をダイナミックレンジとするCCDカメラであって、レーザ光照射位置の補正処理、主軸位置の補正処理およびレーザ光照射位置と主軸位置を略整合させる補正処理などにおいて使用される。
【0025】
次に、不活性ガス給排系統について説明する。不活性ガス給排系統は、ヒューム拡散装置17と、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19と、ダクトボックス21、23とを含む。不活性ガス給排系統では、チャンバ2が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒュームによって汚染された不活性ガスをチャンバ2の外に排出する。
【0026】
不活性ガス給排系統は、チャンバ2に設けられる複数の不活性ガスの供給口及び排出口と、不活性ガスの各供給口及び各排出口と不活性ガス供給装置15及びヒュームコレクタ19とを接続する配管を含む。本実施形態の不活性ガスの供給口は、第1供給口33aと、第2供給口33bと、副供給口33eと、ヒューム拡散装置供給口33dと、駆動室供給口(不図示)とからなる。本発明の一実施形態の不活性ガスの排出口は、第1排出口34aと、第2排出口34bと、副排出口34cとからなる。
【0027】
第1排出口34aは、チャンバ2の側板に第1供給口33aに対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。また、第1排出口34aに接続するように不活性ガスの吸引装置35が設けられる。不活性ガスの吸引装置35は、レーザ光Lの照射経路からヒュームを効率よく排除することを助ける。また、不活性ガスの吸引装置35によって、第1排出口34aにおいて、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形室2d内にヒュームが拡散しにくくなる。
【0028】
第2供給口33bは、ベース台4の端上に所定の照射領域を間に置いて第1排出口34aに対面するように設けられる。第2供給口33bは、リコータヘッド11が所定の照射領域を通過して第1供給口33aが所定の照射領域を間に置かずに第1排出口34aに直面する位置にあるとき、第1供給口33aから第2供給口33bに選択的に切り換えられて開放される。そのため、第2供給口33bは、第1供給口33aから供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスを第1排出口34aに向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行なえる点で有利である。
【0029】
第2排出口34bは、リコータヘッド11の第1供給口33aが設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。第1供給口33aから不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、第2供給口33bから不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0030】
また、本実施形態の不活性ガス給排系統は、第1排出口34aに対面するようにチャンバ2の側板に設けられヒュームコレクタ19から送給されるヒュームが除去された清浄な不活性ガスを造形室2dに供給する副供給口33eと、チャンバ2の上面に設けられヒューム拡散装置17へ不活性ガスを供給するヒューム拡散装置供給口33dと、チャンバ2の後チャンバに設けられる不図示の加工ヘッド駆動機構などを納めた不図示の駆動室へ不活性ガスを供給する不図示の駆動室供給口と、第1排出口34aの上側に設けられチャンバ2の上側に残留するヒュームを多く含む不活性ガスを排出する副排出口34eとを備える。ことができる。
【0031】
チャンバ2の上面には、ウィンドウ2aを覆うようにヒューム拡散部17が設けられる。ヒューム拡散部17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じてに充満される。そして、清浄空間17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じてヒューム拡散部17の下方に向かって噴出される。この噴出された清浄な不活性ガスは、レーザ光Lの照射経路に沿って流れ出てレーザ光Lの照射経路からヒュームを排除し、ウィンドウ2aがヒュームによって汚れることを防止する。
【0032】
チャンバ2への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。本実施形態の不活性ガス供給装置15は、第1供給口33a及び第2供給口33bを通じて不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給装置15aと、ヒューム拡散装置供給口33d及び不図示の駆動室供給口を通じて不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給装置15bとからなる。第1不活性ガス供給装置15aとしては、不活性ガスの濃度を管理可能なものが好ましい。第2不活性ガス供給装置15bは、第1不活性ガス供給装置15aと同様の構成の装置であってもよいが、造形領域Rから比較的離れた位置にある供給口と接続され比較的不活性ガス濃度管理の重要性が低いので、不活性ガスの濃度を管理する機能を有していなくてもよい。ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス21、23を有する。チャンバ2から排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒュームが除去された清浄な不活性ガスがダクトボックス23を通じてチャンバ2の副供給口33eへ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0033】
不活性ガス供給系統として、
図1に示すように、第1不活性ガス供給装置15aと、第1供給口33a及び第2供給口33bとがそれぞれ接続され、第2不活性ガス供給装置15bと、ヒューム拡散装置供給口33d及び不図示の駆動室供給口とがそれぞれ接続される。また、ヒュームコレクタ19と副供給口33eとがダクトボックス23を通じて接続される。第1不活性ガス供給装置15a及び第2不活性ガス供給装置15bは、制御装置を通して制御バルブが所定量開放されることによって、所定の圧力と流量の清浄な不活性ガスをチャンバ2へそれぞれ供給する。チャンバ2内に供給された不活性ガスは、造形室2dと不図示の駆動室との間の連通部を通じて造形室2d内に供給される。
【0034】
また、本発明の一実施形態の積層造形装置においては、造形室2dに連通する開口に設けられる作業扉が開かれた場合は、不図示の作業扉の開閉を検出する扉検知器によって制御装置は作業扉が開いていることを検出し、第1不活性ガス供給装置15aを停止するが、第2不活性ガス供給装置15bは、不活性ガスを供給し続けるようにされている。作業扉が開いているときは、造形室2dに不活性ガスを供給しても大気中に拡散してしまうので、作業扉が開いているときに造形室2dへの不活性ガスの供給を停止することによって、不活性ガスの無駄な供給を抑制することができる。
【0035】
ヒューム排出系統として、
図1に示すように、第1排出口34a、第2排出口34b及び副排出口34eとヒュームコレクタ19とがダクトボックス21を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ19においてヒュームが取り除かれた後の清浄な不活性ガスは、チャンバ2へと返送され再利用される。
【0036】
上記のような積層造形装置1では、まず、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する。この状態で材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を
図1の矢印B方向に造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、造形プレート7上に1層目の材料粉体層8を形成する。次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、1層目の焼結層81fを得る。次に、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の1層分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、焼結層81f上に2層目の材料粉体層8を形成する。次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、2層目の焼結層82fを得る。以上の工程を繰り返すことによって、3層目の焼結層83f、それ以降の所望の複数層の焼結層が形成される。隣接する焼結層は、互いに強く固着される。また、チャンバ2内に切削装置50を備える積層造形装置では、造形物の造形途中に、例えば、所定の複数の焼結層を形成する毎に、焼結層が積層されて得られた焼結体の表面や不要部分に対して機械加工を施すようにしても良い。
【0037】
必要数の焼結層を形成することによって積層造形が完了する。焼結層を形成する度に造形テーブル5を少しずつ下げるので、積層造形の完了時点において、造形テーブル5の位置は開始時点よりも下がった位置になり、粉体保持壁26と造形テーブル5によって囲まれる粉体保持空間32内には、積層造形による造形物、余剰の未焼結の材料粉体、および、不純物が一緒に収容されている。不純物は、材料粉体をレーザ光で焼結した際に僅かに飛散するスパッタや焼結体の表面や不要部分を切削加工した際に切り出される切削屑などである。
【0038】
それで、前述のように、積層造形の完了後に、
図2に示すように造形テーブル5を降下させることによって、余剰の未焼結の材料粉体と不純物とが一緒に下部の粉体排出部27aから排出され、排出された材料粉体などは、シューターガイド28aによってシューター29に案内され、シューター29を通じて材料回収用バケット30に収容される。
【0039】
また、前述のように、造形物の造形途中に、移動するリコータヘッド11ブレード11fb,11rbによって粉体保持壁26の外に押し出される余剰の未焼結の材料粉体と不純物は、粉体保持壁26を乗り越えて粉体保持壁26の外側にある上部の粉体排出部27bから落下し、シューターガイド28bによってシューター29に案内され、シューター29を通じて材料回収用バケット30に収容される。
【0040】
ここからは、本発明の特有の構成が説明される。
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態の積層造形装置1は、積層造形装置1の材料回収用バケット30の中の不純物を含んだ材料粉体を搬送する材料回収用搬送装置41と、材料回収用搬送装置41によって搬送されてくる不純物を含んだ材料粉体の中から不純物を除去する不純物除去装置43と、不純物除去装置43によって不純物が取り除かれた材料粉体を収容する材料供給用バケット46と、材料供給用バケット46の中の材料粉体を乾燥させる材料乾燥装置47と、材料乾燥装置47によって乾燥させた材料粉体を積層造形装置1の材料供給装置3に搬送する材料供給用搬送装置48と、を含む。
【0041】
材料回収用搬送装置41と材料供給用搬送装置48は、気体と一緒に固体も吸引可能な吸引力を有する吸引装置44と、気体と固体が吸引装置44の中に吸引される前に気体と固体を分離して固体を吸引装置44の中に吸引させないようにするサイクロン方式のフィルタ40a,40bとを含む。
【0042】
吸引装置44は、切換弁45を介して材料回収用搬送装置41と材料供給用搬送装置48に切り換え可能に配管などで接続することで1台を共同で使用するようにしても良い。また、吸引装置44は、材料回収用搬送装置と材料供給用搬送装置にそれぞれ1台ずつ別々に有しても良い。吸引装置44は、例えば、クリーナー等が採用されても良い。
【0043】
サイクロン方式のフィルタ40a,40bは、例えば、直立する円筒状部分の下側に直径が漸減する逆円錐状部分を有する形状であって、円筒状部分の上側を閉じる蓋の中央部に形成される排気口41a,48aと吸引装置44を配管などで接続し、円筒状部分の側面に形成される吸引口41b,41bと材料回収用バケット30または材料供給用バケット46の排出口の30c,46cとを配管などで接続し、分離した固体を外部に落下させるために逆円錐状部分の下側に形成される排出口41c,48cと不純物除去装置43または材料供給装置3の供給口43a,72aを接続してある。また、サイクロン方式のフィルタ40a,40bは、排出口41c,48cを開閉するシャッタ41d,48dを設けて、吸引口41b,41bからの吸引効率をより高めるために基本的に吸引時にはシャッタ41d,48dで排出口41c,48cが閉じられるとともに適時にシャッタ41d,48dを開いて溜った固体を排出口41c,48cから外部に落下させるように構成されても良い。排出口41c,48cをシャッタ41d,48dで開閉する場合には、サイクロン式のフィルタ40a,40bの下部でかつ排出口41c,48cの上部における位置にシャッタ41d,48dが開くまで分離した固体を一時的にある程度溜めておくことができるタンク部41e,48eを必要に応じて備えても良い。
【0044】
そうしたサイクロン方式のフィルタ40a,40bは、吸引装置44によって材料粉体および不純物などの固体を気体と一緒に吸引する際に、同フィルタ40a,40bの中で発生する渦巻き状の気流によって気体より比重が重い固体を遠心力で気流の外に移動させて、固体が同フィルタ40a,40bの内壁に接触しながら同フィルタ40a,40bの中を回転するとともに内壁との摩擦により失速して自重で落下して同フィルタ40a,40b下部の排出口41c,48cから同フィルタ40a,40bの外に排出され、気体だけが同フィルタ40a,40b上部の排気口41a,48aから吸引装置44の中に吸い込まれる。
【0045】
材料回収用搬送装置41は、サイクロン方式のフィルタ40aを有し、同フィルタ40aの排気口41aが切換弁45を介して吸引装置44に配管などで接続されて、同フィルタ40aの吸引口41bが積層造形装置1の材料回収用バケット30の排出口30cに配管などで接続されて、同フィルタ40aの排出口41cが不純物除去装置43の供給口43aに接続されて、材料回収用バケット30の中に溜められた不純物を含む未焼結の材料粉体を不純物除去装置43に搬送する。搬送中は、サイクロン方式のフィルタ40aの排出口41cをシャッタ41dで閉じて吸引力の低下を防止するように構成してあっても良い。シャッタ41dの上部には、シャッタ41dが開くまで不純物を含む未焼結の材料粉体を一時的に溜めておくタンク部41eを必要に応じて有しても良い。また、材料回収用バケット30の供給口30aをシャッタ30bで閉じてチャンバ2内の不活性ガスを吸引しないようにしても良い。また、材料回収用バケット30は、搬送中の吸引力で材料回収用バケット30の外から中に気体を取り入れる通気口を有しても良い。また、材料回収用搬送装置41は、サイクロン方式のフィルタ40aの吸引口41bを切換弁42を介して材料回収用バケット30の排出口30cと手動清掃用ノズル90に切り換え可能に配管などで接続するようにしても良い。手動清掃用ノズル90は、例えば、切換弁42を切り換えることで可とう性のあるホースなどの一端にサイクロン方式のフィルタ40aの吸引口41bが接続されて、他端に手動清掃用ノズルが取り付けられていて、作業者が手動でチャンバ2内の所望の場所などに手動清掃用ノズル90を移動させて、当該場所の未焼結の材料粉体や不純物を吸引して清掃するための手段の1つである。
【0046】
不純物除去装置43は、例えば、ふるい装置でもよい。ふるい装置は、未焼結の材料粉体の粒径よりも大きな寸法になるスパッタや切削屑などの不純物を通さない網目寸法に形成される網43dの上に材料回収用搬送装置41によって搬送されてくる不純物を含む未焼結の材料粉体が供給口43aから供給されて、振動する網43dの網目を通過する未焼結の材料粉体と網目を通過できずに網43dの上に残る不純物とに分別して、例えば、未焼結の材料粉体を排出口43cから材料供給用バケット46に収容し、不純物を不純物回収バケット43bに収容するようになっている。なお、材料供給用バケット46の供給口46aにシャッタ46bを有して、例えば、ふるいをかけた未焼結の材料粉体を材料供給用バケット46に収容するときにのみシャッタ46bを開くなど、適時にシャッタ46を開閉できるようにしてあっても良い。また、材料供給用バケット46は、搬送中の吸引力で材料供給用バケット46の外から中に気体を取り入れる通気口を有しても良い。
【0047】
材料乾燥装置47は、例えば、材料供給用バケット46に収容されている未焼結の材料粉体を材料供給用バケット46の中で乾燥させるようにしても良い。この場合には、材料供給用バケット46から材料乾燥装置47に材料粉体を搬送するための別途の搬送装置を省くことができる。材料乾燥装置47は、例えば、材料供給用バケット46の中の未焼結の材料粉体を熱源で直接加熱する、または、材料供給用バケット46の中の雰囲気を熱源で高温状態にして材料供給用バケット46の中の未焼結の材料粉体を間接的に加熱するなど、その他にも発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種の乾燥手段を適用可能である。材料乾燥装置47は、例えば
図1に示すように、熱源となる棒状のヒータ、例えば、電気式の棒状のカートリッジヒータを材料供給用バケット46内部の中心に縦に配置するように構成しても良いし、その他、材料供給用バケット46の中の所望の場所に所望の形状で所望の加熱方式のヒータを所望の向きに所望の数を配置しても良い。なお、材料乾燥装置47は、材料供給用バケット46を不純物除去装置43と共用せずに別途に材料乾燥用バケットを有しても良い。この場合には、材料供給用バケット46の中の未焼結の材料粉体を不図示の材料乾燥用バケットに搬送するための搬送装置を別途にもう1台有することになる。また、材料乾燥装置47は、積層造形装置1の材料回収用バケット30の中の未焼結の材料粉体を十分な乾燥状態で材料供給装置3に再び供給することができれば、不純物除去装置43で不純物が除去される前に不純物を含む未焼結の材料粉体を乾燥させるようにしても良いなど、余剰の未焼結の材料粉体が材料回収用バケット30に排出されてから材料供給装置3に再び供給されるまでの間の適当な位置に備えても良い。しかしながら、未焼結の材料粉体を熱源を用いて乾燥させるような場合の材料乾燥装置47は、乾燥用の熱源が積層造形装置1の一部を熱膨張させるなどの熱の影響で、積層造形装置1による高精度の加工の妨げにならないように、積層造形装置1の外部に配置されることが好ましい。
【0048】
材料供給用搬送装置48は、サイクロン方式のフィルタ40bを有し、同フィルタ40bの排気口48aが切換弁45を介して吸引装置44に配管などで接続されて、同フィルタ40bの吸引口48bが材料供給用バケット46の排出口46cに配管などで接続され、同フィルタ40bの排出口48cが積層造形装置1の材料供給装置3におけるメインダクト上部72の供給口72aに接続されて、材料供給用バケット46の中に収容されている乾燥した未焼結の材料粉体を積層造形装置1の材料供給装置3に適時に搬送する。
図1および
図2に示すように、材料供給用搬送装置48に有するサイクロン方式のフィルタ40bは、材料供給装置3のメインダクト82の上に設置されている。搬送中は、サイクロン方式のフィルタ40bの排出口48cをシャッタ48dで閉じて吸引力の低下を防止するように構成してあっても良い。シャッタ48dの上部には、シャッタ48dが開くまで乾燥した未焼結の材料粉体を一時的に溜めておくタンク部48eを必要に応じて有しても良い。また、搬送中は、シャッタ48dの代わりにメインダクトシャッタ68を閉じて吸引力の低下を防止するとともにタンク部48eを省略してメインダクト上部72に未焼結の材料粉体を溜めるようにしても良い。
【0049】
また、本発明の一実施形態の積層造形装置1は、各種装置の動作を制御する不図示の制御装置を含んで、未焼結の材料粉体を用いて積層造形を行う際に、所定濃度の不活性ガスで充満されるチャンバ2の中で上下方向に移動する造形テーブル5の上に未焼結の材料粉体を供給し、造形テーブル5を取り囲んで未焼結の材料粉体を保持する粉体保持壁26の外に排出される余剰の未焼結の材料粉体と不純物を一緒に回収し、不純物を含む未焼結の材料粉体から不純物を取り除き、不純物が取り除かれた未焼結の材料粉体を造形テーブル5の上に再び供給するように制御されるとともに、回収された不純物を含む未焼結の材料粉体を造形テーブル5の上に再び供給するまでの間に未焼結の材料粉体を乾燥させるように制御されると良い。
【0050】
例えば、本発明の一実施形態の積層造形装置1は、未焼結の材料粉体を用いて積層造形を行う際に、所定濃度の不活性ガスで充満されるチャンバ2の中で上下方向に移動する造形テーブル5の上に未焼結の材料粉体を供給し、造形テーブル5を取り囲んで未焼結の材料粉体を保持する粉体保持壁26の外に排出される余剰の未焼結の材料粉体と不純物を一緒に材料回収用バケット30に回収し、材料回収用バケット30の中に回収された未焼結の材料粉体を積層造形装置1の材料供給装置3に再び供給して再利用するために、材料回収用バケット30の中の不純物を含む未焼結の材料粉体を材料回収用搬送装置41で不純物除去装置43に搬送し、不純物除去装置43で不純物が取り除かれた未焼結の材料粉体を材料供給用バケット46に回収し、材料供給用バケット46の中の不純物が除去された未焼結の材料粉体を材料乾燥装置47で乾燥し、材料供給用バケット46の中の不純物が除去されかつ乾燥した未焼結の材料粉体を材料供給用搬送装置48で積層造形装置1の材料供給装置3に搬送することを必要に応じて繰り返し行われる。なお、各装置は、必要に応じて同時に動作が可能であれば、同時に動作させても良い。
【0051】
また、本発明の別の実施形態では、1つ材料回収用搬送装置41、1つの不純物除去装置43、1つの材料供給用バケット46、1つの材料乾燥装置47および1つの材料供給用搬送装置48を備えて、それら装置を含まない複数の積層造形装置に対して、例えば、各積層造形装置の各材料回収用バケットに切換弁で切り換え可能に1つの材料回収用搬送装置41を接続し、各積層造形装置の各材料供給装置3に切換弁で切り換え可能に1つの材料供給用搬送装置48を接続して、各積層造形装置の状態に応じて、所望の積層造形装置の材料回収用バケット30から不純物を含む未焼結の材料粉体を所望のタイミングで回収し、所望のタイミングで不純物を含む未焼結の材料粉体から不純物を取り除き、所望の積層造形装置の材料供給装置3に供給する前に不純物が取り除かれた未焼結の材料粉体を乾燥させて、所望のタイミングで不純物が取り除かれかつ乾燥させた未焼結の材料粉体を所望の積層造形装置に供給することを可能にして、複数台の積層造形装置を長時間自動運転させることを可能にし、長時間の無人化が可能になる。
【0052】
また、本発明では、材料回収用バケットの中の余剰の未焼結の材料粉体を適当な時期に不純物を取り除きかつ乾燥させて積層造形装置1の材料供給装置3に再び自動で供給するので、積層造形するために余分に必要な未焼結の材料粉体の量がより少ない量で済む。また、本発明では、複数の積層造形装置のうちの所望の積層造詣装置の材料回収用バケット30の中の余剰の未焼結の材料粉体を適当な時期に不純物を取り除きかつ乾燥させて、複数の積層造形装置のうちの所望の積層造形装置の材料供給装置3に自動で供給することも可能なので、複数の積層造形装置で積層造形を併行して行う際にも余分に必要な未焼結の材料粉体の量がより少ない量で済む。
【0053】
以上説明した発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらをこの発明の範囲から排除するものではない。特に具体的な装置については、本発明の趣旨に添った基本的な機能を有するものは、本発明に含まれる。
【解決手段】所定濃度の不活性ガスで充満されるチャンバ(2)と、チャンバ内に配置されかつ上下方向に移動可能な造形テーブル(5)と、造形テーブル上に材料粉体を供給する材料供給装置(3)と、造形テーブルを取り囲みかつ造形テーブル上に材料供給装置から供給される材料粉体を保持する粉体保持壁(26)と、粉体保持壁の外に排出される余剰の材料粉体と不純物を一緒に収容する材料回収用バケット(30)と、材料回収用バケットの中の不純物を含む材料粉体から不純物を除去する不純物除去装置(43)と、を含んで不純物除去装置で不純物が取り除かれた材料粉体を材料供給装置に戻して再利用する積層造形装置であって、材料回収用バケットから材料供給装置に戻される材料粉体を乾燥させる材料乾燥装置(47)を含む。