(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1):得られる塗膜の色相がL*C*h表色系色度図の色相角度hの値で23°±3°の範囲内である、有機赤顔料を含有する第1着色塗料を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):該第1着色塗膜上に、得られる塗膜の色相がL*C*h表色系色度図の色相角度hの値で35°±5°の範囲内である、有機赤顔料を含有する第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、及び、
工程(3):該第2着色塗膜上に、クリヤ塗料を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程を含む複層塗膜形成方法であって、
第1着色塗膜と、上記工程(1)〜(3)により得られる該複層塗膜との色差ΔEが、20〜30の範囲内であり、かつ該複層塗膜の彩度C*が34以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
有機赤顔料として、第1着色塗料はキナクリドン顔料を含有するものであり、第2着色塗料はペリレン顔料を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
工程(1)
本発明の方法によれば、まず、工程(1)として、第1着色塗料が塗装され、第1着色塗膜が形成される。第1着色塗料は、隠蔽力を付与し、形成される複層塗膜の色相、特にシェード部における色相を決定する塗料であって、有機赤顔料を必須成分として含有するものである。
【0012】
また、第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜の色相は、L*C*h表色系色度図の色相角度hの値で、23°±3°の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
「L*C*h表色系」は、1976年に国際照明委員会で規定され且つJIS Z 8729においても採用されているL*a*b*表色系を極座標表示したものであって、L*は明度を表し、C*は原点からの距離としての彩度を表し、そしてhはL*a*b*表色系におけるa*赤方向の軸を0°として、ここから反時計方向の色相に対して移動した色相角度を表す。
【0014】
第1着色塗膜の色相角度hと彩度C*は、第1着色塗料を、予めダークグレー色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に乾燥塗膜15μmとなるように塗装し、140℃で30分間加熱乾燥して形成した塗板を多角度分光光度計(MA−68、商品名、X−Lite社製)にて測色して、L*C*h表色系における色相角度hと彩度C*を測定することにより得られる値である。受光角度は、シェードに相当する75°とした。
【0015】
第1着色塗料で使用される有機赤顔料としては、所望の色味に応じて、塗料用又はインク用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組合せて使用することができる。
【0016】
有機赤顔料の具体例としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料等を挙げることができる。
【0017】
第1着色塗料の有機赤顔料としては、得られる複層塗膜の彩度及び耐候性の観点から、キナクリドン顔料を含有することが好ましい。
【0018】
第1着色塗料中の有機赤顔料の含有量は、得られる複層塗膜の彩度の点から、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、1〜20質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは5〜15質量%の範囲内である。
【0019】
第1着色塗料は、また必要に応じて、有機赤顔料以外の着色顔料を含有することもできる。有機赤顔料以外の着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0020】
具体例としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料;チタンイエロー等の複合酸化金属顔料;カーボンブラック;ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料等を挙げることができる。
【0021】
有機赤顔料以外の着色顔料の配合量は、特に制限されるものではないが、赤系の高彩度の複層塗膜を得るための観点から、一般に、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、さらに特に好ましくは2質量%以下の範囲内とすることができる。
【0022】
上記のうち、特に、複層塗膜の耐候性向上の観点から、酸化鉄を含有することが好ましい。酸化鉄の含有量としては、耐候性と彩度の両立の観点から、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下、さらに特に好ましくは0.1〜1.0質量%の範囲内とすることができる。
【0023】
本発明の方法において、第1着色塗料及び後述する第2着色塗料ならびにクリヤ塗料に配合せしめる着色顔料としては、分散性、耐候性等を向上させることを目的として、無機及び/又は有機の表面処理を行ったものを使用することができる。
【0024】
第1着色塗料には、彩度を低下させることなく、隠蔽力を向上させることを目的として、さらに光輝性顔料(特に金属フレーク顔料)を含有させることができる。光輝性顔料は、塗料用として公知のものを1種もしくはそれ以上を組合せて使用することができる。
【0025】
具体的には、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の材質からなる鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料;表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料;アルミニウム固溶盤状酸化鉄顔料;ガラスフレーク顔料、表面を金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料;表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させるか又は表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料;表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料;表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレーク又はアルミナフレーク顔料;盤状酸化鉄顔料;ホログラム顔料;合成マイカ顔料;らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料;オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
これらのうち、鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料及び金属酸化物で被覆した着色マイカ顔料が好ましく、特に、鱗片状金属顔料であるアルミフレーク顔料が好適であるが、これらに限定されるものではなく、塗膜の隠蔽性、彩度、所望とする光輝感に応じて光輝性顔料を適宜使用することができる。
【0027】
上記光輝性顔料の配合量は、一般的には、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%の範囲内とすることができる。
【0028】
光輝性顔料のうち、特に、隠蔽性及び得られる複層塗膜の耐候性を効果的に向上させる観点から、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、特に酸化鉄被覆アルミ顔料を好適に使用することができる。
【0029】
表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料の配合量は、一般的には、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲内とすることができる。
【0030】
上記酸化鉄被覆アルミ顔料は、着色剤として該酸化鉄被覆アルミ顔料のみを含む塗膜の色相が、L*C*h表色系色度図において、色相角度hが、0°〜50°の範囲内、特に、20°〜40°の範囲内となるものを好適に使用することができる。
【0031】
色相角度hは、多角度分光光度計であるX−Lite社製のMA−68(商品名)、色彩色差計であるコニカミノルタ社製のCRシリーズ(商品名)、スガ試験機社製のSNカラーコンピューター(商品名)等を使用して測定することができる。
【0032】
該酸化鉄被覆アルミ顔料は、特に限定されるものではないが、例えば特開平6−145555号等にその製造法及び特徴が記載されているような化学蒸着法によって酸化鉄がアルミニウム基材に被覆された耐候性に優れた着色アルミフレーク顔料等を挙げることができる。
【0033】
第1着色塗料に使用される顔料の合計含有量は、第1着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、隠蔽性及び得られる複層塗膜の彩度及び耐候性の観点から、1〜50質量%の範囲内、特に3〜40質量%の範囲内、さらに特に5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
第1着色塗料には、通常、ビヒクルとして樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、熱硬化性樹脂組成物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロックされたものも含む)などの架橋剤を含んでなる熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒中に溶解又は分散させて使用することができる。該樹脂組成物中における基体樹脂と架橋剤の割合には特に制限はないが、一般に、架橋剤は、基体樹脂固形分総量に対して、10〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の範囲内で使用することができる。
【0035】
第1着色塗料には、さらに必要に応じて、水もしくは有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料用添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。
【0036】
第1着色塗料は、以上に述べた各成分を混合分散せしめることによって調製することができる。
【0037】
第1着色塗料、後述する第2着色塗料及びクリヤ塗料に配合される着色顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、着色顔料を塗料中の樹脂成分の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分及び/又は他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0038】
第1着色塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて1〜40μmの範囲内とすることができ、塗膜の平滑性等の観点から特に5〜30μmの範囲内が好適である。
【0039】
第1着色塗料は、通常、固形分濃度が15〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、そして20℃におけるB型粘度計による測定で、ローターNo.3又は4を使用して2000〜6000mPa・sとなるように調整しておくことが好ましい。
【0040】
第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜それ自体は、焼付け乾燥型の場合、通常、約50℃〜約180℃の温度で硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
【0041】
本発明の方法においては、第1着色塗料を塗装して得られた第1着色塗膜を硬化させた後に、第2着色塗料を塗装することができ、或いは第1着色塗膜を硬化させることなく未硬化の状態の第1着色塗膜上に第2着色塗料を塗装することもできる。
【0042】
工程(2)
本発明の方法によれば、次に、工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、第2着色塗料が塗装され、第2着色塗膜が形成される。第2着色塗料は、形成される複層塗膜の彩度を高めて、深み感を向上させる塗料であって、有機赤顔料を必須成分として含有するものである。
【0043】
また、第2着色塗料を塗装して得られる第2着色塗膜の色相は、L*C*h表色系色度図の色相角度hの値で、35°±5°の範囲内であることを特徴とする。
【0044】
第2着色塗膜の色相角度hと彩度C*は、第2着色塗料を、下地として明度L*が85以上の白色板の上に、乾燥塗膜15μmとなるように塗装し、140℃で30分間加熱乾燥して形成した塗板を多角度分光光度計(MA−68、商品名、X−Lite社製)にて測色して、L*C*h表色系における色相角度hと彩度C*を測定することにより得られる値である。受光角度は、フェースに相当する45°とした。
【0045】
第2着色塗料で使用される有機赤顔料としては、所望の色味に応じて、塗料用又はインク用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
有機赤顔料の具体例としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料等を挙げることができる。
【0047】
第2着色塗料の有機赤顔料としては、得られる複層塗膜の耐候性の観点から、ペリレン顔料を含有することが好ましい。
【0048】
また、第2着色塗料の有機赤顔料としては、得られる複層塗膜の耐候性向上の観点から、ペリレン系顔料を主に用いることが好ましい。
【0049】
また、第2着色塗料の有機赤顔料としては、得られる複層塗膜の耐候性向上の観点から、キナクリドン顔料の使用量を極力低減させることが好ましく、さらに、究極的にはキナクリドン顔料の使用量を実質的に0とする(使用しないこと)が好ましい。
【0050】
第2着色塗料中の有機赤顔料の含有量は、得られる複層塗膜の彩度及び耐候性の点から、第2着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、0.1〜15質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲内、よりさらに好ましくは1〜5質量%の範囲内である。
【0051】
第2着色塗料は、また必要に応じて、有機赤顔料以外の着色顔料を含有することもできる。有機赤顔料以外の着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0052】
具体例としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料;チタンイエロー等の複合酸化金属顔料;カーボンブラック;ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料等を挙げることができる。
【0053】
有機赤顔料以外の着色顔料の配合量は、特に制限されるものではないが、赤系の高彩度の複層塗膜を得るための観点から、一般に、第2着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の範囲内とすることができる。
【0054】
上記のうち、特に、複層塗膜の耐候性向上の観点から、酸化鉄を含有することが好ましい。酸化鉄の含有量としては、複層塗膜の耐候性及び彩度の両立の観点から、第2着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、7.5質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下、さらに特に好ましくは0.1〜1質量%の範囲内とすることができる。
【0055】
第2着色塗料には、必要に応じて第1着色塗料で例示した光輝性顔料を使用することもできる。
【0056】
第2着色塗料に使用される顔料の合計含有量は、第2着色塗料中の樹脂固形分総量に対して、得られる複層塗膜の彩度及び深み感の観点から、0.1〜20質量%の範囲内、特に、0.5〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0057】
第2着色塗料には、通常、ビヒクルとして樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、熱硬化性樹脂組成物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロックされたものも含む)などの架橋剤を含んでなる熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒中に溶解又は分散させて使用することができる。該樹脂組成物中における基体樹脂と架橋剤の割合には特に制限はないが、一般に、架橋剤は、基体樹脂固形分総量に対して、10〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の範囲内で使用することができる。
【0058】
第2着色塗料には、さらに必要に応じて、水もしくは有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料用添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。
【0059】
第2着色塗料は、以上に述べた各成分を混合分散せしめることによって調製することができる。
【0060】
第2着色塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて0.5〜30μmの範囲内とすることができ、塗膜の平滑性等の観点から特に2〜25μmの範囲内が好適である。
【0061】
第2着色塗料は、通常、固形分濃度が15〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、そして20℃におけるB型粘度計による測定で、ローターNo.3又は4を使用して2000〜6000mPa・sとなるように調整しておくことが好ましい。
【0062】
第2着色塗料から形成される第2着色塗膜は、その塗装膜厚において、波長400〜700nmの範囲の光線透過率が20〜90%、好ましくは25〜60%の範囲内にあることが好ましい。
【0063】
本明細書において、波長400〜700nmの範囲の光線透過率は、波長400〜700nmの範囲の各波長における光線透過率の平均値を意味する。
【0064】
第2着色塗料を塗装して得られる第2着色塗膜それ自体は、焼付け乾燥型の場合、通常、約50℃〜約180℃の温度で硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
【0065】
本発明の方法においては、第2着色塗料を塗装して得られた第2着色塗膜を硬化させた後に、クリヤ塗料を塗装することができ、或いは第2着色塗膜を硬化させることなく未硬化の状態の第2着色塗膜上にクリヤ塗料を塗装することもできる。
【0066】
工程(3)
本発明の方法によれば、上記の如くして第2着色塗料を塗装して得られた第2着色塗膜上に、クリヤ塗料を塗装して、クリヤ塗膜を形成する。
【0067】
本発明の方法において使用するクリヤ塗料としては、それ自体既知のクリヤ塗料を制限なく使用することができる。具体的には例えば基体樹脂及び架橋剤からなる樹脂成分を必須成分とし、さらに必要に応じて、塗料用添加剤、水もしくは有機溶剤等の溶媒などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状もしくは粉体状のクリヤ塗料を挙げることができる。
【0068】
基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等の樹脂が挙げられる。架橋剤としては、該基体樹脂の官能基と反応しうる官能基を有する化合物又は樹脂、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシリル基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。
【0069】
該樹脂成分中における基体樹脂と架橋剤の割合には特に制限はないが、一般に、架橋剤は、基体樹脂固形分総量に対して、10〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の範囲内で使用することができる。
【0070】
クリヤ塗料には、必要に応じて、水、有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を適宜配合することができる。
【0071】
クリヤ塗料には、また、塗膜の透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜使用することができる。着色顔料としては、インク用又は塗料用としてそれ自体既知の顔料を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。その配合量は、使用される着色顔料の種類等により異なるが、クリヤ塗料中の樹脂成分の固形分総量に対して、通常、30質量%以下、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲内とすることができる。
【0072】
クリヤ塗料は、前述の各成分を混合分散せしめることによって調製することができる。
【0073】
クリヤ塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15〜50μm、特に25〜40μmの範囲内とするのが好ましい。
【0074】
クリヤ塗料が液状である場合、通常、固形分濃度が30〜60質量%、好ましくは40〜50質量%、そして20℃における粘度がフォードカップNo.4で測定して18〜25秒となるように調整しておくことが好ましい。クリヤ塗料を塗装して得られるクリヤ塗膜それ自体は約70℃〜約150℃の温度で加熱して硬化させることができる。
【0075】
基材
本発明の方法を適用することができる基材には特に制限はなく、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属からなる部材;これら金属の合金からなる部材;これらの金属によるメッキ又は蒸着が施された部材;ガラス、プラスチック、各種素材の発泡体等からなる部材等を挙げることができ、特に、自動車車体を構成する鋼材が適している。これらの部材には、必要に応じて適宜、脱脂処理、表面処理等の処理を施すことができる。
【0076】
また、上記部材に下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を形成した後、基材として用いることもでき、一般にそのようにすることが好ましい。
【0077】
下塗り塗膜は、部材表面を隠蔽したり、部材に防食性及び防錆性等を付与するために部材表面に適用されるものであり、下塗り塗料を塗装し硬化させることによって形成することができる。この下塗り塗料は、特に限定されるものではなく、それ自体既知のもの、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を用いることができる。
【0078】
また、中塗り塗膜は、部材表面及び下塗り塗膜のような下地を隠蔽したり、下地と上塗り塗膜との間の付着性向上、塗膜への耐チッピング性の付与等のために下地に適用されるものであり、部材表面及び下塗り塗膜のような下地表面に、中塗り塗料を塗装し硬化させることによって形成することができる。この中塗り塗料は、特に限定されるものではなく、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料等を含有してなる有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好適に使用することができる。
【0079】
本発明の方法において、基材として、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成された部材を用いる場合には、予め下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を加熱し硬化させた後に、工程(1)の、第1着色塗料を塗装することができるが、場合によっては、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、第1着色塗料を塗装することもできる。
【0080】
複層塗膜の形成
本発明の方法に従えば、下記工程(1)〜(3)
工程(1):得られる塗膜の色相がL*C*h表色系色度図の色相角度hの値で23°±3°である、有機赤顔料を含有する第1着色塗料を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):該第1着色塗膜上に、得られる塗膜の色相がL*C*h表色系色度図の色相角度hの値で35°±5°である、有機赤顔料を含有する第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、及び、
工程(3):該第2着色塗膜上に、クリヤ塗料を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、に従い、複層塗膜を形成させ、
第1着色塗膜と、上記工程(1)〜(3)により得られる該複層塗膜との色差ΔEを、20〜30の範囲内とすることにより、赤系で彩度が高く深み感に優れ、かつ耐候性にも優れた複層塗膜を形成せしめることができる。
【0081】
さらに、上記第1着色塗膜及び第2着色塗膜の色相角度hの範囲をそれぞれ、23°±3°の範囲内、35°±5°の範囲内として、それぞれ相対的に、第1着色塗膜が第2着色塗膜に対して青味の色相範囲、第2着色塗膜が第1着色塗膜に対して黄味の色相範囲に設定され、このような色相範囲の、第1着色塗膜と(透け色である)第2着色塗膜とが積層されていることにより、赤系で彩度が高く深み感に優れ、かつ耐候性にも優れた複層塗膜を得ることに有利な(好適な)効果がもたらされるものである。
【0082】
かくして形成される複層塗膜は、第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜と該複層塗膜との間の、L*a*b*表色系における色値の差(ΔE)が20〜30の範囲内、特に20〜27の範囲内、さらに特に、20〜25の範囲内となる色差を有することが好ましい。
【0083】
また、形成される複層塗膜は、第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜と該複層塗膜との間の、L*C*h表色系における色相角度hの差(Δh)が5〜20、特に2〜15、さらに特に3〜10の範囲内であるような色相差を有することが好ましい。
【0084】
ここで、「色値E」、「彩度C*」及び「色相角度h」は、第1着色塗料を予めダークグレー色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に塗装し、硬化させることにより得られる第1着色塗膜又は工程(1)〜(3)の第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を、それぞれ予めダークグレー色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に塗装し、硬化させることにより得られる複層塗膜を、多角度分光光度計(MA−68、商品名、X−Lite社製)にて測色することにより決定することができる。
【0085】
また、第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜の色相角度h(1BC)と、工程(1)〜(3)により第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を、塗装し、硬化させることにより得られる複層塗膜の色相角度h(複層)の差Δh(h(複層)−h(1BC))が、+1〜30、好ましくは+2〜25、さらに好ましくは+4〜20の範囲内であるような色相差を有することが好ましい。
【0086】
色相角度hは、多角度分光光度計であるX−Lite社製のMA−68(商品名)を使用して測定することができる。
【0087】
上記の第1着色塗膜と、工程(1)〜(3)により形成される複層塗膜との間の色差(ΔE)及び色相角度の差(Δh)の調整、ならびに前述の第1着色塗膜と第2着色塗膜の色相角度hの調整は、複層塗膜の形成に使用される第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料の各塗料に含有させる顔料の種類及び使用量を調節することにより(小規模の実験を行うことにより)容易に行うことができる。
【0088】
かくして、本発明の複層塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の外板に複層塗膜を形成するのに好適に使用することができる。
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【実施例】
【0090】
実施例1〜5及び比較例1〜5
[i]基材の作製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。
【0091】
得られた上記鋼板の電着塗面に、中塗塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗塗膜を形成せしめることにより得られたダークグレー色(N−2)の中塗り塗板を基材とした。
【0092】
[ii]塗料の製造
基体樹脂の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0093】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂エマルション(a)を得た。得られたアクリル樹脂エマルションは、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0094】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0095】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0096】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(b)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0097】
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(c)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0098】
第1着色塗料及び第2着色塗料の製造
製造例4〜7及び8〜14
製造例1で得たアクリル樹脂エマルション(a)50部(固形分15部)、製造例2で得たアクリル樹脂溶液(b)45.5部(固形分25部)、製造例3で得たポリエステル樹脂溶液(c)42.8部(固形分30部)、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分80%)37.5部(固形分30部)に対し、それぞれ、第1着色塗料については、有機赤顔料を含有する着色顔料及び光輝性顔料を、第2着色塗料用については有機赤顔料を含有する着色顔料を、下記表1に示す量で配合して攪拌混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒となるように調製して、各第1着色塗料No.1〜4及び各第2着色塗料No.1〜7を得た。
【0099】
なお、表1中の顔料の詳細は以下のとおりである。
【0100】
着色顔料
RUBINE TR(注1):ジケトピロロピロール系赤顔料、商品名 DPP RUBINE TR、BASF製
RT355D(注2):キナクリドンレッド顔料、商品名 MAGENTA B RT−355−D、BASF製
KNO(注3):酸化鉄顔料、商品名 トダカラー KN−O、戸田工業社製
R6438(注4):ペリレンレッド顔料、商品名 MAROON 179 229−6438、サンケミカル社製
R5000(注5):カーボンブラック顔料、商品名 RAVEN 5000 ULTRA III BEADS、COLUMBIAN CARBON CO.社製
TOR(注6):酸化鉄顔料、商品名 SICOTRANS RED L2817、BASF社製
G314(注7):フタロシアニンブルー顔料、商品名 塩素化銅シアニンブルーG−314、山陽色素社製。
【0101】
鱗片状光輝性顔料
L2800(注8):酸化鉄被覆アルミフレーク顔料、商品名 PALIOCROM ORANGE L2800、BASF社製
MH8801(注9):アルミフレーク顔料、商品名 アルミP MH−8801 旭化成メタルズ社製
MH8805(注10):アルミフレーク顔料、商品名 アルミP MH−8805 旭化成メタルズ社製。
【0102】
色相角度hの値
第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜、第2着色塗料を塗装して得られる第2着色塗膜、及び、工程(1)〜(3)の第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装して得られる複層塗膜のそれぞれの、L*C*h表色系における色相角度hを多角度分光光度計(MA−68、商品名、X−Lite社製)にて測色した。
【0103】
彩度C*の値
第1着色塗料を塗装して得られる第1着色塗膜、及び、工程(1)〜(3)の第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装して得られる複層塗膜のそれぞれの、L*C*h表色系における彩度C*を多角度分光光度計(MA−68、商品名、X−Lite社製)にて測色した。
【0104】
上記色相角度h、彩度C*、及び算出されるΔhの値、ならびに第1着色塗膜と、工程(1)〜(3)の第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装して得られる複層塗膜との、L*a*b*表色系における色差(ΔE)の値、併せてさらに第2着色塗膜の光線透過率の値をそれぞれ表1中に示した。
【0105】
[iii]試験板の作製
以下の手順にて、上記[ii]で製造した第1着色塗料及び第2着色塗料ならびにクリヤ塗料を順次塗装して試験板を作成した。
【0106】
実施例1〜6及び比較例1〜5
(第1着色塗料の塗装)
上記[i]で作製した中塗り塗板上に、上記[ii]で製造した第1着色塗料No.1〜4のいずれかをミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として約10μmの膜厚となるように塗装した。
【0107】
(第2着色塗料の塗装)
第1着色塗料を塗装した後に、室温にて2分間放置し、ついで、その未硬化の第1着色塗膜上に、上記[ii]で製造した第2着色塗料No.1〜7のいずれかをミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として約7μmの膜厚となるように塗装した。
【0108】
(クリヤ塗料の塗装)
第2着色塗料を塗装した後に、室温にて5分間放置し、80℃で3分間プレヒートを行った。ついで、その未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(ルーガベーククリヤ、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を、ミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として約35μmとなるように塗装した。
【0109】
なお、実施例6においては、クリヤ塗料として、上記クリヤ塗料に、樹脂固形分総量に対して、R6438(注4)を0.7%、及びTOR(注6)を0.1%含有するよう調整されたカラークリヤ塗料を使用した。
【0110】
室温にて15分間放置した後、熱風循環式乾燥炉内にて140℃で30分間加熱し、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜からなる複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を作製した。
【0111】
評価試験
上記実施例及び比較例で得られた各試験板について、さらに耐候性を評価した。試験条件は以下のとおりである。
【0112】
耐候性の評価
促進耐候性試験には、JIS B 7754に規定されたスーパーキセノンウェザオメーター(商品名、スガ試験機社製)を使用し、1時間42分間のキセノンアークランプの照射と18分間の降雨条件における同ランプの照射による2時間を1サイクルとして、500サイクルの繰り返し試験の終了後に、実験室内に保管しておいた控え塗板と比較して評価を行なった。評価基準は以下のとおりである。結果を併せて表1に示す。
【0113】
(変色)
A:塗膜に変色が認められない
B:塗膜に変色が認められる。
【0114】
(退色)
A:塗膜に退色が認められない
B:塗膜に退色が認められる。
【0115】
表1に示されている実施例、比較例から、実施例の複層塗膜は、彩度及び耐候性ともに優れているが、比較例の複層塗膜は、彩度或いは耐候性のいずれかが劣っていることが明らかである。
【0116】
【表1】