(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
[電力管理システムの全体構成例]
図1は、本発明の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示している。本実施形態における電力管理システムは、例えば、所定の地域範囲における複数の需要家に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などといわれるものに対応する。
【0019】
本実施形態の電力管理システムは、
図1において電力管理地域1として示す一定範囲の地域における複数の需要家施設10ごとに備えられる電気設備を対象として電力管理を行う。
需要家施設10は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。また、電力管理地域1が、例えば1つまたは複数の集合住宅に対応し、需要家施設10のそれぞれが集合住宅における各戸であるような態様でもよい。
【0020】
同図に示す電力管理地域1における複数の需要家施設10においては、再生可能エネルギーを利用した発電装置である太陽電池を備える需要家施設10が含まれる。また、電力管理地域1における複数の需要家施設10においては、電気設備の1つとして蓄電池を備える需要家施設10が含まれる。
このような需要家施設10のうちには、太陽電池と蓄電池の両者を備える需要家施設10が有ってもよいし、太陽電池と蓄電池のいずれか一方を備える需要家施設10が有ってもよい。
【0021】
電力管理地域1における各需要家施設10には、共通の系統電源3と接続されることで、商用電源2が分岐して供給される。各需要家施設10は、系統電源3から供給される電力を負荷に供給することができる。これにより、負荷としての各種の電気設備(機器)が稼働される。
また、太陽電池を備える需要家施設10は、太陽電池の発電電力を系統電源3に出力させることができる。
また、蓄電池を備える需要家施設10においては、系統電源3から電力供給を受けて蓄電池に蓄電(充電)させることができる。また、蓄電池と太陽電池を備える需要家施設10においては、太陽電池の発電電力を蓄電池に充電させることができる。
【0022】
また、需要家施設の位置は、電力管理システムが管理する構成となっていれば、同様に管理されている他の需要家施設と同一地域に限定されなくともよい。すなわち、電力管理システムは、自身の管理下の需要家施設として登録され、ネットワーク300を利用して管理する情報の送受信が行うことができれば、異なる地域(例えば、北海道、本州、九州、四国などの各地域)において登録された複数の需要家施設の集合体でもよい。この場合、共通の系統電源3は、需要家施設10の各々に接続される地域における電源線の集合体となる。
【0023】
また、本実施形態の電力管理システムにおいては、電力管理装置200(需要電力予測装置の一例)が備えられる。電力管理装置200は、電力管理地域1に属する各需要家施設10における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、
図1における電力管理装置200は、ネットワーク300を介して需要家施設10の各々と相互通信可能なように接続される。これにより、電力管理装置200は、各需要家施設10における電気設備を制御することができる。
【0024】
[需要家施設における電気設備例]
次に、
図2を参照して、1つの需要家施設10が備える電気設備の一例について説明する。
同図に示す需要家施設10は、電気設備として、太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104、電力経路切替部105、負荷106及び施設別制御部107を備えている。
【0025】
太陽電池101は、再生可能エネルギーを利用する発電装置の1つであり、光起電力効果により光エネルギーを電力に変換する。太陽電池101は、例えば需要家施設10の屋根などのように太陽光を効率的に受けられる場所に設置されることで、太陽光を電力に変換する。
パワーコンディショナ102は、太陽電池101に対応して備えられ、太陽電池101から出力される直流の電力を交流に変換する。
【0026】
蓄電池103は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する。この蓄電池103には、例えばリチウムイオン電池などを採用することができる。
【0027】
インバータ104は、複数の蓄電池103ごとに対応して備えられるもので、蓄電池103に充電するための電力の交流直流変換または蓄電池103から放電により出力される電力の直流交流変換を行う。つまり、インバータ104は、蓄電池103が入出力する電力の双方向変換を行う。
具体的に、蓄電池103に対する充電時には、商用電源2またはパワーコンディショナ102から電力経路切替部105を介して充電のための交流の電力がインバータ104に供給される。インバータ104は、このように供給される交流の電力を直流に変換し、蓄電池103に供給する。
また、蓄電池103の放電時には、蓄電池103から直流の電力が出力される。インバータ104は、このように蓄電池103から出力される直流の電力を交流に変換して電力経路切替部105に供給する。
【0028】
電力経路切替部105は、施設別制御部107の制御に応じて電力経路の切り替えを行う。この際、施設別制御部107は、電力管理装置200の指示に応じて、電力経路切替部105を制御することができる。
上記の制御に応じて、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、商用電源2を負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0029】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、太陽電池101により発生された電力をパワーコンディショナ102から負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0030】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、商用電源2と太陽電池101の一方または両方から供給される電力をインバータ104経由で蓄電池103に充電するように電力経路を形成することができる。
【0031】
また、電力経路切替部105は、同じ需要家施設10において、蓄電池103から放電により出力させた電力を、インバータ104経由で負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0032】
さらに、電力経路切替部105は、太陽電池101により発生された電力を、例えば商用電源2の電力系統を経由して、他の需要家施設10における蓄電池に対して供給するように電力経路を形成することができる。
また、電力経路切替部105は、蓄電池103の放電により出力される電力を、他の需要家施設10における負荷106に供給するように電力経路を形成することができる。
【0033】
負荷106は、需要家施設10において自己が動作するために電力を消費する機器や設備などを一括して示したものである。
【0034】
施設別制御部107は、需要家施設10における電気設備(太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、インバータ104、電力経路切替部105、負荷106のすべてまたは一部)を制御する。
【0035】
先に
図1に示した電力管理装置200は、電力管理地域1に属する需要家施設10全体における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、電力管理装置200は、需要家施設10における施設別制御部107の各々と、ネットワーク300経由で相互通信可能なように接続される。これにより、施設別制御部107は、電力管理装置200の制御に応じて自己の管理下にある電気設備を制御することができる。
【0036】
なお、例えば施設別制御部107を省略して、電力管理装置200が各需要家施設10における蓄電池103などの電気設備を直接制御するようにしてもよい。しかし、本実施形態のように、電力管理装置200と施設別制御部107を備えた構成とすることで、電力管理地域1全体と、需要家施設10とで制御を階層化することにより、電力管理装置200の制御の複雑化を回避することができる。
【0037】
また、前述のように、電力管理地域1内の需要家施設10のうちの一部において、例えば太陽電池101や、蓄電池103及びインバータ104を備えないものがあってもよい。
【0038】
そのうえで、本実施形態の電力管理装置200は、所定の予測アルゴリズムにより、電力管理地域1における各需要家施設10の需要電力を総合して得られる総需要電力を予測する。なお、以降において、予測された総需要電力については予測総需要電力(予測需要電力の一例)と呼ぶ。
また、予測総需要電力を予測するアルゴリズムについては特に限定されないが、電力管理装置200は、例えば過去における一定期間の総需要電力または各需要家施設10における需要電力の実績値に基づく予測アルゴリズムにより予測総需要電力を予測することができる。
最も単純な例としては、過去における一定期間の総需要電力の移動平均として予測需要電力を求めることができる。また、電力管理装置200は、例えばARモデル(自己回帰モデル)などを用いた予測アルゴリズムにより予測総需要電力を予測することができる。
そして、電力管理装置200は、予測総需要電力に基づいて、電力管理地域1における各需要家施設10の蓄電池103の充電と放電に関する制御(充放電制御)を行う。
【0039】
ここで、予測総需要電力が総需要電力の実績値に対して誤差を有する状態で蓄電池103の充放電制御を行った場合には、需要電力に対する余剰電力または不足電力についても誤差が生じている。このように余剰電力または不足電力の誤差が大きい状態のもとで蓄電池103に対する充放電制御が行われると、許容範囲を越えて系統電源3から電力供給を受けてしまったり、蓄電池103による放電電流で需要電力の不足分を補えなくなったりする可能性がある。あるいは、十分な余剰電力があるにもかかわらず、蓄電池103に十分に余剰電力を蓄積できないようなことが生じる可能性がある。これにより、例えば電気料金が増加したり、電力管理地域1における電気設備の正常な動作が妨げられたりする可能性がある。
そこで、本実施形態の電力管理装置200は、予測総需要電力について適宜補正を行いながら蓄電池103の充放電制御を行うように構成される。
【0040】
[電力管理装置の構成例]
次に、
図3を参照して、電力管理装置200の構成例について説明する。電力管理装置200は、ネットワークインターフェース部201、誤差測定部202、誤差加算部203、需要電力予測部204及び電力制御部205を備える。
【0041】
ネットワークインターフェース部201は、ネットワーク300経由で各需要家施設10の施設別制御部107と通信を実行する。
【0042】
誤差測定部202は、予測総需要電力の誤差を測定する。予測総需要電力は、後述の需要電力予測部204によって予測される。また、誤差は、予測総需要電力と現在における総需要電力の実値との差分に基づいて得られる。現在における総需要電力の実値は、誤差測定部202が、各需要家施設10における施設別制御部107と通信を行って得られた各需要家施設10における需要電力を総合することによって得ることができる。
誤差加算部203は、所定数の区分期間が連続する補正単位期間において、区分期間に応じて測定された誤差を加算した加算誤差を求める。本実施形態において、誤差加算部203は、加算誤差を、区分期間ごとに測定された誤差を積算した積算誤差として求める。
【0043】
需要電力予測部204は、区分期間ごとに予測総需要電力を予測する。また、需要電力予測部204は、補正単位期間における最後の所定回の各区分期間において予測した予測総需要電力のそれぞれについて、前回の区分期間までに対応して求められた積算誤差(加算誤差)に基づいて補正を行う。
電力制御部205は、予測総需要電力に基づいて需要家施設10が備える蓄電池103の充電または放電を制御する。
【0044】
[電力管理装置の動作概要例]
次に、
図4を参照して、本実施形態の電力管理装置200による予測総需要電力の予測と、予測総需要電力の補正に関する動作概要例について説明する。
同図においては、先ず、1日(24時間)が30分ごとの第1補正単位期間〜第48補正単位期間による48個の補正単位期間に分割される。1つの補正単位期間は、予測総需要電力と総需要電力の実績値との誤差を抑制するための補正が行われるタイミングごとに応じた期間である。即ち、本実施形態においては、予測総需要電力について30分に1回の頻度で補正が行われる。
【0045】
また、同図に示すように、1つの補正単位期間は、各1分の第1区分期間〜第30区分期間による30個の区分期間に区分される。つまり、1つの補正単位期間は、30個の区分期間の連続により形成される。
【0046】
同図に示すように、第1区分期間としての1分間において、電力管理装置200の需要電力予測部204は、先ず、第1区分期間対応の予測総需要電力を予測する。電力制御部205は、次に、第1区分期間対応の予測総需要電力に基づいて充放電制御を実行する。
【0047】
また、誤差測定部202は、第1区分期間対応の予測総需要電力と、同じ第1区分期間において得られた総需要電力の実績値(第1区分期間対応の実績値)との誤差(第1区分期間対応の誤差)を測定する。
誤差加算部203は、第1区分期間対応の誤差を、第1区分期間対応の積算誤差とする。
【0048】
次に、第1区分期間に続く第2区分期間としての1分間において、需要電力予測部204は、第2区分期間対応の予測総需要電力を予測する。電力制御部205は、第2区分期間対応の予測総需要電力に基づいて充放電制御を実行する。
また、誤差測定部202は、第2区分期間対応の予測総需要電力と、第2区分期間対応の実績値との誤差(第2区分期間対応の誤差)を測定する。
誤差加算部203は、第1区分期間対応の積算誤差に第2区分期間対応の誤差を積算することで、第2区分期間対応の積算誤差を求める。
以降、同様にして、第3区分期間〜第29区分期間のそれぞれにおいて、予測総需要電力の予測、蓄電池103に対する充放電制御、誤差の測定、積算誤差の算出が行われる。
【0049】
そして、1つの補正単位期間における最後の第30区分期間において、需要電力予測部204は、第30区分期間対応の予測総需要電力を予測する。そのうえで、需要電力予測部204は、さらに第29区分期間対応の積算誤差を利用して、第30区分期間対応の予測総需要電力の誤差を補正する。
そして、電力制御部205は、補正された第30区分期間対応の予測総需要電力に基づいて充放電制御を実行する。
【0050】
また、電力管理装置200は、以降の第2補正単位期間から第48補正単位期間においても、上記の第1区分期間から第30区分期間ごとの処理を行う。
【0051】
このように、本実施形態においては、例えば1分ごとに予測総需要電力の予測と、予測総需要電力に基づく充放電制御とが繰り返される過程において、30分ごとに1回の予測総需要電力の補正が行われる。予測総需要電力の補正は、1分ごとに求められる誤差を29分間にわたって積算していく。そして、29分間の積算によって得られた積算誤差を補正量として、次の1分間において予測される予測総需要電力を補正するという手順で行われる。
【0052】
補正単位期間の長さについては特に30分に限定されるものではないが、本実施形態においては、例えば以下のような理由で補正単位期間を30分としている。
本実施形態における電力管理地域1は、電力会社とデマンド契約と呼ばれる受給契約を結んでいる。デマンド契約においては、例えば一年間において発生した総需要電力のうちの最大値(デマンド)を契約電力として設定する。電気料金における基本料金は契約電力に対応して設定される。
【0053】
電力管理地域1における需要電力が契約電力を超過してしまうと、電力管理地域1の需要家には電力会社に対して違約金の支払い義務が生じるとともに、翌月からの契約電力は超過した電力に応じて増加するように再設定され、基本料金も高くなる。一旦、基本料金が設定されると、例えば1年間のように一定期間は契約電力を下げることができなくなる。
ただし、契約電力の決定要素であるデマンドは、計量器によって計量される30分単位における需要電力の平均値により表される。つまり、契約電力は、過去の1年間において30分単位で計測された需要電力の平均値のうちの最大値に応じて決定される。換言すれば、例えば或る30分間において一時的に需要電力が契約電力を超過したとしても、同じ30分間の需要電力の平均値が契約電力以下であれば契約電力が高くなるように再設定されることはない。
上記の観点からすれば、電力管理装置200が予測総需要電力に基づいて蓄電池103の充放電制御を行うにあたり、30分より短い期間ごとに予測需要電力を補正して、一時的な需要電力の契約電力の超過まで阻止することは過剰な制御であるといえる。この場合には、必要以上に重い処理を電力管理装置200が行っていることになる。
そこで、本実施形態においては、デマンド契約におけるデマンドが30分間における電力の平均値であることに応じて、予測需要電力の補正を行うタイミングを30分単位としている。
【0054】
また、
図4の説明では、1つの補正単位期間における区分期間の時間長を1分としているが、これに限定されるものではなく、適宜変更されてよい。
【0055】
図5は、或る1つの需要家施設10についての1日(24時間)における消費電力の時間経過に応じた変動例を示している。ここでの消費電力は、需要家施設10における需要電力である。なお、ここでは説明を簡単にする便宜から、1つの需要家施設10についての需要電力を示しているが、総需要電力についても、1日において或る変動パターンにより変動するという点で同じである。
【0056】
図6は、
図5に示した1日の需要電力の変化に対応する、1つの需要家施設10についての需要電力の予測値(予測需要電力)と需要電力の実測値との誤差を示している。例えば、或る時点での需要電力の実測値が1kwで、予測需要電力が400wである場合、需要電力は−600w(=400w−1000w)となり、実際には予測に対して600wの需要電力が不足する。このように600wの需要電力が不足する状態が1分間(60秒)継続した場合の誤差は、−10wh=(−600w×(1/60))のように電力量として求められる。同図は、このような1分ごとの誤差を示している。
また、
図7は、
図6に示される誤差をヒストグラムにより表したものである。
【0057】
次に、
図8は、
図6に示した1分ごとの誤差を30分ごとに積算して得られる値(誤差積算)を示している。例えば、同図と
図6とを比較して分かるように、同図の積算誤差は、
図6に示した正負の値が混在する誤差を積算した値であるため、
図6の場合よりも予測値に対する偏差が小さくなっている。
【0058】
そして、
図9は、
図4の処理に従って、
図6に示した1分ごとの誤差について、30分の補正単位期間における第1区分期間〜第29区分期間に対応する29分間にわたって積算した値を示している。
【0059】
次に、
図10は、
図4の処理に従って、
図9に示すようにして得られた29分間ごとの誤差の積算値を利用して第30区分期間において予測需要電力を補正した場合において、補正単位期間としての30分間ごとに誤差を積算した値を示している。
ここで、同図と先に示した
図8とを比較して分かるように、同図では、同じ時刻において得られる誤差の積算値が
図8よりも小さくなっている。つまり、補正単位期間ごとにおける1回の予測需要電力の補正によって、例えば1日という複数の補正単位期間が連続する期間の全体にわたって、需要電力の予測結果の誤差が抑制されるように改善されている。
【0060】
また、
図11は、
図8に示される積算誤差についてのヒストグラムである。また、
図12は、
図10に示される積算誤差についてのヒストグラムである。
図11と
図12を比較して分かるように、
図12のほうが積算誤差のばらつきが均等化されている。つまり、
図11と
図12との比較によっても、補正単位期間ごとにおける1回の予測需要電力の補正によって、需要電力の予測結果の誤差が抑制されるように改善されていることが示される。
【0061】
上記
図5〜
図12による説明では、1つの需要家施設10を対象として30分ごとに1回の予測需要電力の補正を行う場合を例に挙げている。しかし、
図5〜
図12による説明は、
図1の電力管理地域1における複数の需要家施設10に対応して予測される予測総需要電力について補正を行う場合にも同様に成り立つ。
【0062】
そして、本実施形態における電力制御部205は、需要電力予測部204により1分ごとに予測され、かつ、30分に1回ごとのタイミングで補正が行われる予測総需要電力に基づいて、電力管理地域1における蓄電池103の充放電制御を行う。
電力制御部205による充放電制御のアルゴリズムについては特に限定されない。
電力制御部205は、電力管理地域1における各蓄電池103の充電率(SOC:State Of Charge)と、電力管理地域1における各太陽電池101の発電電力とを逐次監視する。
そして、電力管理地域1における各太陽電池101の発電電力により予測総需要電力を賄える場合、電力制御部205は、各太陽電池101の発電電力が各需要家施設10の負荷106に供給されるように制御を行う。このとき、余剰の発電電力が発生した場合、電力制御部205は、電力管理地域1における蓄電池103のうちから、余剰の発電電力を充電させるべき蓄電池103を選択し、選択された蓄電池103に余剰の発電電力が充電されるように制御する。
【0063】
また、電力制御部205は、電力管理地域1における各太陽電池101の発電電力と蓄電池103の総蓄電電力量によって予測総需要電力を賄うことができない場合には、以下のように電力制御を行うことができる。つまり、各太陽電池101の発電電力と各蓄電池103からの放電電力に加え、商用電源2から供給される電力を各需要家施設10の負荷106に供給するように制御することができる。
【0064】
また、電力制御部205は上記のような電力制御を行うにあたり、例えば1日において時間帯ごとに電気料金が異なるように設定されている場合には、電気料金を考慮した電力制御を行うこともできる。例えば、電気料金の安価な深夜の時間帯において、商用電源2から供給される電力を、SOCの少ない蓄電池103に充電させたり、負荷106に含まれる温水器などに供給してお湯が沸くように制御することも可能である。
【0065】
[処理手順例]
続いて、
図13のフローチャートを参照して、本実施形態における電力管理装置200が
図4に示した処理を実行するための手順例について説明する。同図は、1回の補正単位期間に対応して電力管理装置200が実行する処理を示している。電力管理装置200は、同図に示す処理を補正単位期間ごとに繰り返し実行する。
【0066】
電力管理装置200において、需要電力予測部204は、1つの補正単位期間が開始されるのに応じて、区分期間に付された番号に対応する変数nについて初期値として「1」を代入し、積算誤差EPWについて初期値として「0」を代入する(ステップS101)。
次に、需要電力予測部204は、第n区分期間対応の予測総需要電力を予測する(ステップS102)。
次に、電力制御部205は、ステップS102により予測された第n区分期間対応の予測総需要電力に基づいて電力制御を実行する(ステップS103)。
【0067】
また、誤差測定部202は、第n区分期間対応の誤差PWnを測定する(ステップS104)。誤差測定部202は、例えばステップS102にて予測された第n区分期間対応の予測総需要電力と現在の総需要電力の実値との差分を求めることにより誤差PWnを測定することができる。
次に、誤差加算部203は、ステップS103により測定された第n区分期間対応の誤差PWnを用いて、第n区分期間対応の積算誤差EPWを算出する(ステップS105)。具体的に誤差加算部203は、第(n−1)区分期間に対応して求められた積算誤差EPWに、誤差PWnを加算することで、第n区分期間対応の積算誤差EPWを算出する。
【0068】
次に、需要電力予測部204は、変数nをインクリメントしたうえで(ステップS106)、変数nが30より大きいか否かについて判定する(ステップS107)。
変数nが30以下である場合(ステップS107−NO)、現補正単位期間において未処理の区分期間が残っている。そこで、この場合の需要電力予測部204は、ステップS102に処理を戻す。これにより、次の区分期間対応したステップS102以降の処理が行われる。
【0069】
一方、変数nが30より大きいことが判定された場合(ステップS107−YES)、次の区分期間は第30区分期間であることになる。そこで、この場合の需要電力予測部204は、第30区分期間において、第30区分期間対応の予測総需要電力を予測する(ステップS108)。
次に、需要電力予測部204は、現段階において得られている積算誤差EPWを利用して、ステップS108により予測された第30区分期間対応の予測総需要電力を補正する(ステップS109)。
そして、電力制御部205は、ステップS109により補正された第30区分期間対応の予測総需要電力に基づいて電力制御を行う(ステップS110)。
【0070】
これまでに説明したように、本実施形態では、電力管理地域1全体における予測需要電力の総量(予測総需要電力)についての補正が行われている。一方、充放電に関しては、電力管理地域1管理地域内の各需要家施設10に設置された蓄電池103によって個別に行われる。
そこで、本実施形態の電力管理装置200は、電力管理地域1における複数の蓄電池103のいずれに充電、放電を実行させるべきかについて決定し、決定した蓄電池103にて充電または放電が行われるように電力制御を行う。
充電、放電を行わせるべき蓄電池103を決定する手法については特に限定されない。一例として、電力管理装置200は、蓄電池103に対して予め付与された順番に従って充電、放電を実行させるべき蓄電池103を決定することができる。あるいは、電力管理装置200は、蓄電池103のSOC(即ち、蓄電池103の蓄電残量)に基づいてSOCの多い順に従って放電すべき蓄電池103を決定し、SOCの少ない順に従って充電が行われるべき蓄電池103を決定してもよい。そのうえで、できるだけ均等にすべての蓄電池103が充電、放電に使用されるように蓄電池103を選択することが好ましい。
なお、蓄電池103を対象とする電力制御は、電力管理装置200における電力制御部205が出力する電力制御信号に基づいて、各需要家施設10における施設別制御部107が行う。
【0071】
<第2実施形態>
[電力管理装置の動作概要例]
続いて、第2実施形態について説明する。
図14を参照して、本実施形態の電力管理装置200による予測総需要電力の予測と、予測総需要電力の補正に関する動作概要例について説明する。なお、1日(24時間)について、各30分による48個の補正単位期間が連続して形成される点については、第1実施形態と同様である。
【0072】
同図では、1つの補正単位期間における第1区分期間〜第30区分期間のうち、第1区分期間から第28区分期間までにおいて、予測総需要電力の予測、電力管理地域1における電力制御、予測総需要電力の誤差測定及び誤差の積算が行われる。
そして、第1区分期間〜第30区分期間のうち、最後の2つの第29区分期間と第30区分期間のそれぞれにおいて、予測総需要電力の補正が行われる。
【0073】
ここで、予測総需要電力の補正を行う1番目の区分期間となる第29区分期間においては、先ず、需要電力予測部204が第29区分期間対応の予測総需要電力を予測する。次に、需要電力予測部204は、第28区分期間にて求められた積算誤差を利用して、第29区分期間対応の予測総需要電力を補正する。
次に、電力制御部205は、上記のように補正された第29区分期間対応の予測総需要電力に基づく電力制御を行う。
続けて、第29区分期間においては、誤差測定部202が、補正された第29区分期間対応の予測総需要電力についての誤差を測定する。そして、誤差加算部203は、上記のように求められた誤差を、第28区間に対応の積算誤差に加算することで、第29区分期間対応の積算誤差を求める。
【0074】
第29区分期間が終了して第30区分期間に至ると、電力制御部205における需要電力予測部204は、先ず、第30区分期間対応の予測総需要電力を予測する。次に、需要電力予測部204は、第29区分期間にて求められた積算誤差を利用して、第30区分期間対応の予測総需要電力についての誤差を測定する。そして、電力制御部205は、補正された第30区分期間対応の予測総需要電力に基づいて電力制御を行う。
【0075】
誤差が相当に大きい場合、予測総需要電力について補正を行ったとしても、補正後の予測総需要電力に基づく電力制御のための制御値が上限または下限に対応する限度値を越えてしまうような場合がある。このような場合において、本実施形態のように、複数の区分期間により複数回の補正が行われるようにすれば、誤差が大きい場合であっても、最終的に制御値が限度範囲に収まるようになる可能性が高まる。これにより、より信頼性の高い電力制御が期待できる。
【0076】
[処理手順例]
続いて、
図15のフローチャートを参照して、本実施形態における電力管理装置200が
図14に示した処理を実行するための手順例について説明する。同図は、1回の補正単位期間対応して電力管理装置200が実行する処理を示している。電力管理装置200は、同図に示す処理を補正単位期間ごとに繰り返し実行する。
また、同図において、
図13と同様の処理となるステップについては同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
同図に示す処理においては、
図13のステップS101〜S110の処理に対して、ステップS111〜S113が追加される。ステップS111〜S113は、以下のような処理となる。
【0078】
ステップS106により変数nがインクリメントされると、需要電力予測部204は、変数nが29であるか否かについて判定する(ステップS111)。
変数nが29である場合と判定した場合(ステップS111−YES)、需要電力予測部204は、第29区分期間対応の予測総需要電力を予測する(ステップS112)。
次に、需要電力予測部204は、最後のステップS105によって求められた第28区分期間対応の積算誤差EPWを利用して、第29区分期間対応の予測総需要電力を補正する(ステップS113)。
ステップS113による処理を終了すると、需要電力予測部204は、ステップS103に処理を戻すことで、ステップS112により補正された第29区分期間対応の予測総需要電力に基づく電力制御を行う。続けて、誤差測定部202は、第29区分期間対応の誤差PWn(n=29)を測定し(ステップS112)、変数n(n=29)についてインクリメントを行う(ステップS113)。
【0079】
上記のように、変数n(n=29)についてインクリメントが行われることで、変数nは30となる。この場合、変数nについて29ではないことがステップS111にて判定される。このように、変数nについて29ではないことが判定された場合、需要電力予測部204は、さらにステップS107により、変数nが30であるか否かについて判定する。
この場合、変数nは30であることから、ステップS107において肯定の判定結果が得られる。そこで、この場合の需要電力予測部204は、ステップS108にて第30区分期間対応の予測総需要電力を予測する。
次に、需要電力予測部204は、ステップS109において、最後のステップS105により算出された積算誤差EPWを利用して、ステップS108により測定された第30区分期間対応の予測総需要電力を補正する。
そして、電力制御部205は、ステップS110により、ステップS109により補正された予測総需要電力に基づいて、電力管理地域1における電力制御を実行する。
【0080】
<変形例>
続いて、本実施形態における変形例について説明する。
図16は、変形例に対応する電力管理システムの全体構成例を示している。なお、同図において、
図1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
同図に示す電力管理システムにおいては、共通蓄電装置20が備えられる。共通蓄電装置20は、電力管理システムにおける需要家施設10に対して共通に備えられる蓄電装置であって、需要家施設10と共通の系統電源3に接続される。
【0082】
本実施形態の電力管理装置200における電力制御部205は、以下のように共通蓄電装置20を利用して電力制御を行うことができる。
例えば、電力管理地域1における各太陽電池101の発電電力により予測総需要電力を賄える場合において、余剰の発電電力を蓄電池103に充電してもなお余剰の発電電力が残る場合がある。このような場合、電力制御部205は、残った余剰の発電電力を共通蓄電装置20に充電させるように制御する。これにより、変形例においては、残った余剰の発電電力を損失させることなく電力管理地域1において使用可能な電力として蓄積することができる。
また、電力管理地域1における各太陽電池101の発電電力と蓄電池103の総蓄電電力量によって予測総需要電力を賄うことができない場合においては、電力制御部205は、以下のように共通蓄電装置20を利用して電力制御を行うことができる。つまり、電力制御部205は、各太陽電池101の発電電力と各蓄電池103からの放電電力に加え、共通蓄電装置20から放電させた電力により、予測総需要電力を賄うように電力制御を行うことができる。
【0083】
また、共通蓄電装置20は第1実施形態においては、第30区分期間において補正した予測総需要電力に基づく電力制御として、共通蓄電装置20の充電または放電を制御してもよい。
このような電力制御であれば、補正した予測総需要電力に基づく電力制御のための制御値が電力管理地域1における蓄電池103で対応できる範囲を超えてしまった場合であっても、1つの補正単位期間において1回の補正で適切な制御を実現可能になる。
即ち、変形例のもとでは、蓄電池103については補正に関係なく各需要家施設10における予測需要電力に応じた動作を実行させる。一方、共通蓄電装置20については、補正した予測総需要電力に基づく電力制御のための制御値に応じた電力制御を受け持たせるようにすることが可能である。この場合、共通蓄電装置20については、超過分の制御値に応じた電力制御による充電、放電が可能なように容量を設定すればよい。
【0084】
なお、これまでの説明においては、誤差加算部203は、補正単位期間において予測総需要電力の補正が行われるより前において、単位区間ごとに測定された予測総需要電力の誤差を積算することで、積算誤差としての加算誤差を求めていた。
しかしながら、誤差加算部203は、例えば単位区間ごとに測定された予測総需要電力の誤差を積算せずに保持しておき、予測総需要電力の補正を行う際に、これまで保持していた誤差を合算して加算誤差を求めるようにしてもよい。
【0085】
なお、これまでの説明においては、現時刻において総需要電力の予測を行うべき期間を直近の1分間としている。しかし、総需要電力の予測を行うべき期間は、現時刻からの経過時間や時間長について特に限定されるものではない。一例として、総需要電力の予測を行うべき期間について、10分後における2分間とすることも可能である。
なお、本実施形態の構成は、1つの需要家施設を対象として電力制御を行う、HEMS(Home Energy Management System)においても適用が可能である。
【0086】
なお、上述の電力管理装置200としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の電力管理装置200としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。