特許第6132997号(P6132997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6132997可聴帯域信号生成装置およびオージオメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6132997
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】可聴帯域信号生成装置およびオージオメータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170515BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20170515BHJP
   A61B 5/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H02M3/155 Z
   G05F1/56 310Z
   A61B5/12
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-14902(P2017-14902)
(22)【出願日】2017年1月30日
【審査請求日】2017年2月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正巳
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼中 諒一
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−226079(JP,A)
【文献】 特開2000−139023(JP,A)
【文献】 特開2004−147391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 − 3/44
G05F 1/56
A61B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可聴帯域の音を生成するための可聴帯域信号を生成する可聴帯域信号生成部と、
前記可聴帯域信号生成部に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する電源回路とを備え、
前記電源回路は、
スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子を有するスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限する電流制限回路と、
前記電流制限回路により制限された前記出力電流により電荷を蓄えるキャパシタと、
前記キャパシタの両端電圧を入力電圧とし前記所定の出力電圧を生成するリニアレギュレータとを備えること、
を特徴とする可聴帯域信号生成装置。
【請求項2】
前記電源回路は、前記可聴帯域信号生成部に定電圧かつ正電圧の出力電圧で正電圧側電源電力を供給するとともに、定電圧かつ負電圧の出力電圧で負電圧側電源電力を供給し、
前記スイッチングレギュレータは、グランドレベルに対して正電圧の出力電圧を生成する正電圧スイッチングレギュレータであり、
前記電流制限回路は、前記正電圧スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限し、
前記リニアレギュレータは、前記キャパシタの両端電圧を入力電圧とし、当該電源回路の正電圧の所定の出力電圧を生成し、
前記電源回路は、さらに、
スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子を有し前記グランドレベルに対して負電圧の出力電圧を生成する負電圧スイッチングレギュレータと、
前記負電圧スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限する負電圧側電流制限回路と、
前記負電圧側電流制限回路により制限された前記出力電流が流入する負電圧側キャパシタと、
前記負電圧側キャパシタの両端電圧を入力電圧とし当該電源回路の負電圧の所定の出力電圧を生成する負電圧側リニアレギュレータとを備えること、
を特徴とする請求項1記載の可聴帯域信号生成装置。
【請求項3】
聴力検査音を生成するための可聴帯域信号を生成する可聴帯域信号生成部と、
前記可聴帯域信号生成部に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する電源回路とを備え、
前記電源回路は、
スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子を有するスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限する電流制限回路と、
前記電流制限回路により制限された前記出力電流により電荷を蓄えるキャパシタと、
前記キャパシタの両端電圧を入力電圧とし前記所定の出力電圧を生成するリニアレギュレータとを備えること、
を特徴とするオージオメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可聴帯域信号生成装置およびオージオメータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オージオメータ、オーディオプレーヤなどの可聴帯域信号生成装置は、聴取者に対して音を発するための可聴帯域信号を生成している。
【0003】
オージオメータは、例えば純音閾値検査で、人間の聴力を検査する医用検査機器である。純音閾値検査では、被験者に気導受話器や骨導受話器あるいはスピーカを介して純音を聞かせ、被験者の最小可聴値を被験者の応答に基づいて測定する。オージオメータによる検査では正確な測定のために周辺環境の静音性が要求される。
【0004】
オーディオプレーヤは、楽曲などの音源のオーディオ信号を増幅し、増幅したオーディオ信号をスピーカなどへ出力している。オーディオプレーヤで楽曲などを再生する場合、聴取者が楽曲などを楽しむために、周辺環境音が小さいことが望ましい。
【0005】
他方、電子機器の定電圧電源回路としてはリニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータ(例えば特許文献1参照)が使用され、一般的に、このような可聴帯域信号生成装置の電源回路にはリニアレギュレータが使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−172389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
国際的に電圧や周波数の異なる商用電源への対応、小型軽量化、高効率化などの観点から、このような可聴帯域信号生成装置の電源回路にも、スイッチングレギュレータを利用したいという要望がある。しかしながら、一般的に、スイッチングレギュレータでは、動作時に異音が発生することがあり、そのような異音は、オージオメータでの検査、オーディオプレーヤでの楽曲聴取などの妨げとなる可能性がある。
【0008】
図3は、従来の可聴帯域信号生成装置の一例を示すブロック図である。
【0009】
図3に示す可聴帯域信号生成装置は、可聴帯域信号生成部101および電源回路102を備える。可聴帯域信号生成部101は、可聴帯域信号を生成し出力する回路などである。電源回路102は、正電圧スイッチングレギュレータ111および負電圧スイッチングレギュレータ112を備え、可聴帯域信号生成部101へ、一定の出力電圧+Vout,−Voutで電源電力を供給する。
【0010】
正電圧スイッチングレギュレータ111は、トランジスタなどのスイッチング素子Q111,Q112のスイッチング電流ILを、インダクタL111を介して出力し、出力端に対して並列にキャパシタC111を配置し、さらに、制御回路121で、出力電圧+Voutが所定値となるようにスイッチング素子Q111,Q112を制御している。
【0011】
負電圧スイッチングレギュレータ112は、トランジスタなどのスイッチング素子Q121,Q122のスイッチング電流ILを、インダクタL121を介して流入させ、出力端に対して並列にキャパシタC121を配置し、さらに、制御回路131で、出力電圧−Voutが所定値となるようにスイッチング素子Q121,Q122を制御している。
【0012】
図4は、図3における正電圧スイッチングレギュレータ111の平均スイッチング電流ILavの一例を示す図である。なお、平均スイッチング電流ILavは、スイッチング電流ILにおけるスイッチング周波数付近のリップル成分を除去したものである。
【0013】
図3に示す可聴帯域信号生成装置において、可聴帯域信号生成部101が比較的大音量のための可聴帯域信号を生成し出力する場合、可聴帯域信号の振幅が大きくなり、可聴帯域信号の1周期の中で、電源回路102から可聴帯域信号生成部101へ供給すべき瞬間的な電力(つまり瞬間的な出力電流)も大きく変化する。そのため、そのような場合に出力段のインダクタL111,L121に導通するスイッチング電流IL(ひいては図4に示す平均スイッチング電流ILav)も変動する。
【0014】
具体的には、可聴帯域信号生成部101は、スピーカや受話器をドライブするための電力増幅器を有しており、電力増幅器には、電源効率および高忠実度の要求から、B級プッシュプル、BTL(Bridge Tied Load)など、スピーカや受話器に流す負荷電流に応じて電源電流が大きく変化する回路を採用している。そのような電力増幅器へ供給される電源電流は、可聴帯域の出力音に比例して変化する。上述のように、スイッチングレギュレータでこの電源電流を供給する場合、電源電流の変化に対応して、図4に示すように平均スイッチング電流ILavが変化する。
【0015】
上述の電源電流のような可聴帯域の負荷電流に応じて、インダクタL111,L121の平均スイッチング電流ILavが変動すると、インダクタL111,L121内の磁束変化を発生させ、インダクタL111,L121を構成するコイルやコアを振動させるため、異音(うなり音)が発生する。
【0016】
このような異音は、オージオメータでの検査、オーディオプレーヤでの楽曲聴取などの妨げとなる可能性がある。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、電源回路においてスイッチングレギュレータを使用しつつインダクタンス素子における異音の発生を抑制する可聴帯域信号生成装置およびオージオメータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る可聴帯域信号生成装置は、可聴帯域の音を出力するための可聴帯域信号を生成する可聴帯域信号生成部と、可聴帯域信号生成部に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する電源回路とを備える。電源回路は、スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子を有するスイッチングレギュレータと、スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限する電流制限回路と、電流制限回路により制限された出力電流により電荷を蓄えるキャパシタと、キャパシタの両端電圧を入力電圧とし上述の所定の出力電圧を生成するリニアレギュレータとを備える。
【0019】
本発明に係るオージオメータは、聴力検査音を出力するための可聴帯域信号を生成する可聴帯域信号生成部と、可聴帯域信号生成部に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する電源回路とを備える。電源回路は、スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子を有するスイッチングレギュレータと、スイッチングレギュレータの出力電流を所定値以下に制限する電流制限回路と、電流制限回路により制限された出力電流により電荷を蓄えるキャパシタと、キャパシタの両端電圧を入力電圧とし上述の所定の出力電圧を生成するリニアレギュレータとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源回路においてスイッチングレギュレータを使用しつつインダクタンス素子における異音の発生を抑制する可聴帯域信号生成装置およびオージオメータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る可聴帯域信号生成装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1における正電圧スイッチングレギュレータ11の平均スイッチング電流ILavの一例を示す図である。
図3図3は、従来の可聴帯域信号生成装置の一例を示すブロック図である。
図4図4は、図3における正電圧スイッチングレギュレータ111の平均スイッチング電流ILavの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る可聴帯域信号生成装置の構成を示すブロック図である。例えば、図1に示す可聴帯域信号生成装置は、オージオメータ、オーディオ機器(例えばオーディオプレーヤまたはオーディオアンプ)などである。
【0024】
図1に示す可聴帯域信号生成装置は、可聴帯域信号生成部1および電源回路2を備える。
【0025】
可聴帯域信号生成部1は、可聴帯域の音を出力するための可聴帯域信号を生成し出力する。例えば、図1に示す可聴帯域信号生成装置がオージオメータである場合、可聴帯域信号生成部1は、聴力検査音を出力するための可聴帯域信号を生成し出力する。例えば、図1に示す可聴帯域信号生成装置がオーディオ機器である場合、可聴帯域信号生成部1は、楽曲などのオーディオ信号を生成し出力する。
【0026】
この実施の形態では、可聴帯域信号生成部1は、プッシュプル(例えばB級プッシュプル)などのように正電圧側および負電圧側のそれぞれに対応した回路1p,1nを有する電力増幅段を備え、可聴帯域信号生成部1からスピーカなどに出力される可聴帯域信号のレベルが正である期間では、電源回路2の正電圧側電源電力(つまり、出力電圧+Voutの電源電力)で可聴帯域信号を生成し、可聴帯域信号のレベルが負である期間では、電源回路2の負電圧側電源電力(つまり、出力電圧−Voutの電源電力)で可聴帯域信号を生成する。
【0027】
電源回路2は、可聴帯域信号生成部1に定電圧の出力電圧で電源電力を供給する。電源回路2は、正電圧側において、正電圧スイッチングレギュレータ11、電流制限回路12、キャパシタCp、およびリニアレギュレータ13を備え、負電圧側において、負電圧スイッチングレギュレータ14、電流制限回路15、キャパシタCn、およびリニアレギュレータ16を備える。
【0028】
正電圧スイッチングレギュレータ11および負電圧スイッチングレギュレータ14は、それぞれ、スイッチング素子(Q11,Q12),(Q41,Q42)によるスイッチング電流ILを導通するインダクタンス素子L11,L41を有している。
【0029】
なお、正電圧スイッチングレギュレータ11および負電圧スイッチングレギュレータ14に電力を入力する電源+Vinは、商用電源に接続されたAC/DCコンバータなどの出力であり、例えば24ボルトの直流電源などである。
【0030】
正電圧スイッチングレギュレータ11は、グランドレベルGNDに対して定電圧かつ正電圧の出力電圧+Vsrを生成する。具体的には、正電圧スイッチングレギュレータ11は、トランジスタなどのスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング電流ILを、インダクタンス素子L11を介して出力し、出力端に対して並列にキャパシタC11を配置し、さらに、制御回路21で、出力電圧+Vsrが所定値となるようにスイッチング素子Q11,Q12を制御している。
【0031】
また、負電圧スイッチングレギュレータ14は、グランドレベルGNDに対して定電圧かつ負電圧の出力電圧−Vsrを生成する。具体的には、負電圧スイッチングレギュレータ14は、トランジスタなどのスイッチング素子Q41,Q42のスイッチング電流ILを、インダクタンス素子L41を介して流入させ、出力端に対して並列にキャパシタC41を配置し、さらに、制御回路41で、出力電圧−Vsrが所定値となるようにスイッチング素子Q41,Q42を制御している。
【0032】
この実施の形態では、正電圧スイッチングレギュレータ11および負電圧スイッチングレギュレータ14は、非絶縁型のスイッチングレギュレータであり、このインダクタンス素子は、コイルおよびコアを有するインダクタである。なお、正電圧スイッチングレギュレータ11および負電圧スイッチングレギュレータ14は、別のタイプでもよく、絶縁型のスイッチングレギュレータでもよい。その場合、このインダクタンス素子は、トランスでもよい。また、図1に示す正電圧スイッチングレギュレータ11および負電圧スイッチングレギュレータ14は、降圧型のスイッチングレギュレータであるが、昇圧型のスイッチングレギュレータでもよい。
【0033】
電流制限回路12は、正電圧スイッチングレギュレータ11の出力電流を所定値以下に制限する。また、電流制限回路15は、負電圧スイッチングレギュレータ14の出力電流を所定値以下に制限する。
【0034】
具体的には、電流制限回路12は、キャパシタCpの両端電圧が所定値になるまで、正電圧スイッチングレギュレータ11の一定の出力電流でキャパシタCpを充電する。図1に示す電流制限回路12では、定電流回路I21と抵抗R21とで基準電圧(一定)が生成され、抵抗R22の両端電圧が基準電圧となるように、オペアンプOP21がトランジスタQ21を制御している。したがって、抵抗R22の導通電流が一定に制御される。これにより、正電圧スイッチングレギュレータ11の出力電流も一定に制御される。ただし、キャパシタCpの両端電圧が上昇し、抵抗R22の両端電圧が減少すると、抵抗R22を流れる電流、すなわち、電流制限回路12の入力電流(つまり、正電圧スイッチングレギュレータ11の出力電流)は減少する。
【0035】
また、電流制限回路15は、キャパシタCnの両端電圧が所定値になるまで、負電圧スイッチングレギュレータ14の一定の出力電流でキャパシタCnを充電する。図1に示す電流制限回路15では、定電流回路I51と抵抗R51とで基準電圧(一定)が生成され、抵抗R52の両端電圧が基準電圧となるように、オペアンプOP51がトランジスタQ51を制御している。したがって、抵抗R52の導通電流が一定に制御される。これにより、負電圧スイッチングレギュレータ14の出力電流も一定に制御される。ただし、キャパシタCnの両端電圧が上昇し、抵抗R52の両端電圧が減少すると、抵抗R52を流れる電流、すなわち、電流制限回路15の入力電流(つまり、負電圧スイッチングレギュレータ14の出力電流)は減少する。
【0036】
なお、図1に示す電流制限回路12,15は、一例であって、他の回路構成であってもよい。
【0037】
例えば、電流制限回路12,15により一定に制御される出力電流値は、可聴帯域信号の上限レベルおよび下限周波数(例えば100ヘルツ)に応じて設定される。つまり、下限周波数で上限レベルの可聴帯域信号の場合、その出力電流値は、その信号の1周期においてキャパシタCp,Cnから流出する電荷を、1周期で少なくともキャパシタCp,Cnへ流入可能な値とされる。上述のように、正電圧と負電圧とで互いに独立して電力が可聴帯域信号生成部1へ供給される場合、出力電流値は、その信号の半周期においてキャパシタCp,Cnから流出する電荷を、1周期で少なくともキャパシタCp,Cnへ流入可能な値とされる。
【0038】
キャパシタCpは、比較的大きい静電容量のキャパシタである。キャパシタCpには、電流制限回路12により制限された正電圧スイッチングレギュレータ11の出力電流が流入する。キャパシタCnは、比較的大容量のキャパシタである。ここでは、キャパシタCnは、キャパシタCpと同一の静電容量を有する。キャパシタCnには、電流制限回路15により制限された負電圧スイッチングレギュレータ14の出力電流が流入する。
【0039】
例えば、キャパシタCp,Cnの静電容量は、可聴帯域信号の上限レベルおよび下限周波数(例えば100ヘルツ)に応じて設定される。つまり、下限周波数で上限レベルの可聴帯域信号の場合、その信号の半周期でキャパシタCp,Cnから流出する電荷を少なくとも蓄積可能な静電容量とされる。
【0040】
リニアレギュレータ13は、降圧レギュレータであり、キャパシタCpの両端電圧を入力電圧とし、当該電圧回路2の正電圧側の出力電圧+Voutを生成する。リニアレギュレータ16は、負電圧の降圧レギュレータであり、キャパシタCnの両端電圧を入力電圧とし、当該電圧回路2の負電圧側の出力電圧−Voutを生成する。
【0041】
図1に示すリニアレギュレータ13では、定電流回路I31と抵抗R31とで基準電圧(一定)が生成され、リニアレギュレータ13の出力電圧が基準電圧となるように、オペアンプOP31がトランジスタQ31を制御している。したがって、リニアレギュレータ13の出力電圧が一定に制御される。これにより、電源回路2の正電圧側の出力電圧+Voutも一定に制御される。
【0042】
図1に示すリニアレギュレータ16では、定電流回路I61と抵抗R61とで基準電圧(一定)が生成され、リニアレギュレータ16の出力電圧が基準電圧となるように、オペアンプOP61がトランジスタQ61を制御している。したがって、リニアレギュレータ16の出力電圧が一定に制御される。これにより、電源回路2の負電圧側の出力電圧−Voutも一定に制御される。
【0043】
なお、図1に示すリニアレギュレータ13,16は、一例であって、他の回路構成であってもよい。
【0044】
次に、上記可聴帯域信号生成装置の動作について説明する。
【0045】
図1に示す電源回路2では、正電圧スイッチングレギュレータ11が、一定の出力電圧+Vsrを生成し、電流制限回路12は、キャパシタCpの両端電圧が所定値になるまで、一定の電流でキャパシタCpを充電する。
【0046】
キャパシタCpの両端電圧は、キャパシタCpに蓄積されている電荷に応じた値となり、キャパシタCpへ流入する電流やキャパシタCpから流出する電流に応じて変動する。
【0047】
リニアレギュレータ13は、キャパシタCpの両端電圧を入力電圧として、一定の出力電圧+Voutを生成し、負荷に応じた電流を出力する。つまり、リニアレギュレータ13は、可聴帯域信号生成部1により生成される可聴帯域信号(オージオメータの検査音信号、オーディオ機器のオーディオ信号など)に応じた電流を出力する。その際、リニアレギュレータ13は、キャパシタCpから電流を流出させて可聴帯域信号生成部1へ電流を供給する。
【0048】
このようにリニアレギュレータ13の出力電流が変動しても、キャパシタCpの両端電圧が変動するだけで、電流制限回路12によって、正電圧スイッチングレギュレータ11の平均スイッチング電流ILavは、キャパシタCpの両端電圧が所定値になるまで変動しない。図2は、図1における正電圧スイッチングレギュレータ11の平均スイッチング電流ILavの一例を示す図である。図2に示すように、図4の場合に比べ、平均スイッチング電流ILavの変動が小さくなる。このように平均スイッチング電流ILavの変動が小さくなるため、インダクタンス素子L11で発生する異音が抑制される。
【0049】
また、図1に示す電源回路2では、負電圧スイッチングレギュレータ14が、一定の出力電圧−Vsrを生成し、電流制限回路15は、キャパシタCnの両端電圧が所定値になるまで、一定の電流でキャパシタCnに充電する。
【0050】
キャパシタCnの両端電圧は、キャパシタCnに蓄積されている電荷に応じた値となり、キャパシタCnへ流入する電流やキャパシタCnから流出する電流に応じて変動する。
【0051】
リニアレギュレータ16は、キャパシタCnの両端電圧を入力電圧として、一定の出力電圧−Voutを生成し、負荷に応じた電流を出力する。つまり、リニアレギュレータ16は、可聴帯域信号生成部1により生成される可聴帯域信号(オージオメータの検査音信号、オーディオ機器のオーディオ信号など)に応じた電流を出力する。その際、リニアレギュレータ16は、キャパシタCnから電流を流出させて可聴帯域信号生成部1へ電流を供給する。
【0052】
このようにリニアレギュレータ16の出力電流が変動しても、キャパシタCnの両端電圧が変動するだけで、電流制限回路15によって、負電圧スイッチングレギュレータ14の平均スイッチング電流は、一定値以下に保たれる。このように平均スイッチング電流の変動が小さくなるため、インダクタンス素子L41で発生する異音が抑制される。
【0053】
以上のように、上記実施の形態によれば、電源回路2は、可聴帯域信号生成部1に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する。電源回路2において、スイッチングレギュレータ11,14は、スイッチング素子によるスイッチング電流ILを導通するインダクタンス素子をそれぞれ有する。電流制限回路12,15は、スイッチングレギュレータ11,14の出力電流を所定値以下にそれぞれ制限する。キャパシタCp,Cnは、電流制限回路12,15により制限された出力電流により電荷を蓄える。リニアレギュレータ13,16は、キャパシタCp,Cnの両端電圧を入力電圧とし、当該電源回路2の出力電圧をそれぞれ生成する。
【0054】
これにより、スイッチングレギュレータ11,14内のインダクタンス素子の平均スイッチング電流の変動が抑制され、電源回路2においてスイッチングレギュレータ11,14を使用しつつインダクタンス素子における異音の発生が抑制される。
【0055】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、オージオメータ、オーディオ機器などに適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 可聴帯域信号生成部
2 電源回路
11 正電圧スイッチングレギュレータ(スイッチングレギュレータの一例)
12 電流制限回路
13 リニアレギュレータ
14 負電圧スイッチングレギュレータ(負電圧スイッチングレギュレータの一例)
15 電流制限回路(負電圧側電流制限回路の一例)
16 リニアレギュレータ(負電圧側リニアレギュレータの一例)
【要約】
【課題】 電源回路においてスイッチングレギュレータを使用しつつインダクタンス素子における異音の発生を抑制する。
【解決手段】 電源回路2は、可聴帯域信号生成部1に定電圧の所定の出力電圧で電源電力を供給する。電源回路2において、スイッチングレギュレータ11,14は、スイッチング素子によるスイッチング電流を流すインダクタンス素子をそれぞれ有する。電流制限回路12,15は、スイッチングレギュレータ11,14の出力電流を所定値以下にそれぞれ制限する。キャパシタCp,Cnは、電流制限回路12,15により制限された出力電流により電荷を蓄える。リニアレギュレータ13,16は、キャパシタCp,Cnの両端電圧を入力電圧とし、当該電源回路2の所定の出力電圧をそれぞれ生成する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4