特許第6133003号(P6133003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133003
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】冷媒処理装置及び冷凍空調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   F25B43/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-516532(P2017-516532)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2016082133
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225306(P2015-225306)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514130149
【氏名又は名称】寿産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】岩附 直
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099972(WO,A1)
【文献】 特開2014−161812(JP,A)
【文献】 特開2004−097995(JP,A)
【文献】 特開2001−121036(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/011263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部と、前記胴部の両端部を閉塞する上側端壁部及び下側端壁部とを有する本体と、
前記本体内に冷媒を導入し又は前記本体内から冷媒を導出する管部及び細管とを備え、
前記管部は、前記下側端壁部を貫通するように前記下側端壁部に設けられると共に前記胴部の中心軸に沿って延びており、
前記細管は、前記上側端壁部を貫通するように前記上側端壁部に設けられており、
前記胴部の内周面には、前記中心軸に対して螺旋状に延びる第1の螺旋溝が形成されており、
前記管部の外周面には、前記中心軸に対して螺旋状に延びる第2の螺旋溝と、中心軸方向に延びる線状溝とが形成されている、冷媒処理装置。
【請求項2】
前記線状溝の深さは前記第2の螺旋溝の深さより小さい、請求項1に記載の冷媒処理装置。
【請求項3】
前記細管のうち本体内に位置する内側端部は曲げられており、
前記内側端部の開口は前記胴部の内周面を向いている、請求項1又は2に記載の冷媒処理装置。
【請求項4】
前記第1の螺旋溝は前記胴部の全長にわたって延びており、
前記上側端壁部側における前記第1の螺旋溝のピッチは前記下側端壁部側における第1の螺旋溝のピッチよりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷媒処理装置。
【請求項5】
前記胴部の内周面に沿って取り付けられたコイルばねをさらに備え、
前記第1の螺旋溝は前記コイルばねの隣り合う金属線の間隙によって構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷媒処理装置。
【請求項6】
前記細管の中心軸は、前記胴部の中心軸に対して偏って形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷媒処理装置。
【請求項7】
前記第2の螺旋溝は前記管部の外周面に形成された雄ネジである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷媒処理装置。
【請求項8】
前記管部内には、前記管部の流路面積よりも小さい流路面積を有する絞り部材が設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷媒処理装置。
【請求項9】
室内熱交換装置と、
前記室内熱交換装置と配管で接続されると共に導入された冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と配管で接続された室外熱交換装置と、
前記室外熱交換装置と配管で接続された請求項1〜8のいずれか一項に記載の冷媒処理装置と、
前記冷媒処理装置及び前記室内熱交換装置とそれぞれ配管で接続されると共に導入された冷媒を膨張する膨張器とを備える、冷凍空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒処理装置及び冷凍空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、圧縮機と、室外熱交換器(凝縮器ともいう)と、キャピラリーチューブと、室内熱交換器(蒸発器ともいう)とを備える冷凍空調システムを開示している。圧縮機、室外熱交換器、キャピラリーチューブ及び室内熱交換器は、冷媒が流通する配管でそれぞれ接続されている。そのため、冷凍空調システムは閉じた系として構成され、冷媒は気体と液体との間で相転移を繰り返しながら当該系内を循環する。
【0003】
冷凍空調システムが冷凍・冷房装置として運転される場合、室内熱交換器は蒸発器として機能し、室外熱交換器は凝縮器として機能する。この場合の冷媒の変化の様子を説明する。まず、圧縮機が動作すると、低温低圧の飽和蒸気の状態にある冷媒が、圧縮機によって圧縮されて高温高圧の過熱蒸気に変化する。続いて、過熱蒸気の状態にある冷媒が、凝縮器において系外と熱交換を行って常温高圧の液体となる。
【0004】
続いて、常温高圧の液体の状態にある冷媒が、キャピラリーチューブにより膨張して低温低圧の湿り蒸気となる。続いて、低温低圧の湿り蒸気の状態にある冷媒が、蒸発器(室内熱交換器)において系外と熱交換を行って系外の熱を吸収し、完全に蒸発して、飽和蒸気に変化する。冷媒がこのように変化しながら冷凍空調システム内を循環することで、室内熱交換器(蒸発器)が設置されている室内の気温が低下すると共に、圧縮機で高温高圧になった熱が屋外に放出されるため、室外熱交換器(凝縮器)が設置されている屋外の気温が上昇する。
【0005】
特許文献1は、冷媒中に存在する真空気泡を冷媒から除去することが可能な気泡除去装置等を開示している。
【0006】
特許文献2は、冷媒又は化合物内に存在する不純物を冷媒組成として再結合させる装置等を開示している。しかしながら、特許文献2に記載された装置は、熱交換器又は冷凍空調システムの一部として用いられる装置ではない(段落0077参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/099972号
【特許文献2】特開2014−161812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷凍空調システムにおいて、冷媒は、高温と低温との間で温度変化しつつ系内を短時間で繰り返し循環している。そのため、冷凍空調システムが長時間運転されると、冷媒を構成する化合物(例えば、炭素、水素、フッ素、塩素)のラジカル物質及びフリーラジカル分子(以下、これらをまとめて単に「ラジカル」という。)が冷媒中に発生し、イオン結合によりフッ化水素、塩化水素等の水素化合物が生成されうる。冷媒中に塩化水素が生成されると、圧縮機、屋外熱交換器、屋内熱交換器又は冷媒循環系内に錆が生じ、膨張弁又はキャピラリーチューブが錆で詰まりうる。この場合、冷媒の流路面積が膨張効率低下し、冷凍空調システムの運転効率が低下しうる。また、フリーラジカル分子として炭素が単独遊離し、冷凍空調システムの運転効率が低下しうる。
【0009】
そこで、本開示は、冷媒中における水素化合物の発生を防止すると共に冷媒中のラジカルを冷媒構成化合物へと再生することが可能な冷媒処理装置及び冷凍空調システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一つの観点に係る冷媒処理装置は、筒状の胴部と、胴部の両端部を閉塞する上側端壁部及び下側端壁部とを有する本体と、本体内に冷媒を導入し又は本体内から冷媒を導出する管部及び細管とを備える。管部は、下側端壁部を貫通するように下側端壁部に設けられると共に胴部の中心軸に沿って延びている。細管は、上側端壁部を貫通するように上側端壁部に設けられている。胴部の内周面には、中心軸に対して螺旋状に延びる第1の螺旋溝が形成されている。管部の外周面には、中心軸に対して螺旋状に延びる第2の螺旋溝と、中心軸方向に延びる線状溝とが形成されている。
【0011】
本開示の一つの観点に係る冷媒処理装置では、中心軸に対して螺旋状に延びる第1の螺旋溝が胴部の内周面に形成されている。ラジカルを含む冷媒は、細管から導入されると、第1の螺旋溝に沿って超高速で流れ、本体内において渦流が生ずる。この冷媒の超高速渦流に随伴して流れるラジカルは、外方に向かい、胴部の内周面に押し寄せられる。胴部の内周面には第1の螺旋溝が設けられているので、ラジカルは第1の螺旋溝と接触しながら当該溝に沿って流れていく。この過程で、ラジカルの冷媒からの分離とラジカルの冷媒組成物への液化とが促進され、個々のラジカルが液状の冷媒に混ざりやすくなる。また、本開示の一つの観点に係る冷媒処理装置では、中心軸に対して螺旋状に延びる第2の螺旋溝が管部の外周面に形成されている。そのため、冷媒が第2の螺旋溝に接しつつ流れるので、超高速渦流がさらにより形成されやすくなる。そのため、第1の螺旋溝で分離しきれなかったラジカルがあった場合でも、ラジカルを含む冷媒が管部の外周面を流れることでラジカルが外方に向かい、胴部の内周面に押し寄せられる。従って、ラジカルが再び第1の螺旋溝で分離されるので、ラジカルが冷媒からより確実に除去される。さらに、本開示の一つの観点に係る冷媒処理装置では、中心軸方向に延びる線状溝が管部の外周面に形成されている。そのため、ラジカルの冷媒への液化がいっそう促進されると共に、第2の螺旋溝を簡便に且つ低コストで構成できる。以上の結果、冷媒中に存在するラジカルを冷媒構成組成物へと再生することが可能となる。
【0012】
線状溝の深さは前記第2の螺旋溝の深さより小さくてもよい。
【0013】
細管のうち本体内に位置する内側端部は曲げられており、内側端部の開口は胴部の内周面を向いていてもよい。
【0014】
第1の螺旋溝は胴部の全長にわたって延びており、上側端壁部側における第1の螺旋溝のピッチは下側端壁部側における第1螺旋溝のピッチよりも小さくてもよい。この場合、ラジカルが第1の螺旋溝に長く接触することとなる。そのため、ラジカルの冷媒からの分離とラジカルの冷媒組成物への液化とがより促進され、ラジカルが液状の冷媒にさらに混ざりやすくなる。従って、冷媒中に存在するラジカルが冷媒構成組成物へと再生されやすくなる。
【0015】
本開示の一つの観点に係る冷媒処理装置は、胴部の内周面に沿って取り付けられたコイルばねをさらに備え、第1の螺旋溝はコイルばねの隣り合う金属線の間隙によって構成されてもよい。この場合、コイルばねを用いることにより、第1の螺旋溝を簡便に且つ低コストで構成できる。
【0016】
管部内には、管部の流路面積よりも小さい流路面積を有する絞り部材が設けられていてもよい。この場合、絞り部材の上流側に対して絞り部材の下流側の圧力が低くなる。そのため、ラジカルの集合体に作用する冷媒からの力が相対的に低くなるので、ラジカルの液化が進みやすくなる。その結果、冷媒中に存在するラジカルの冷媒構成組成物への液化をいっそう促進できる。
【0017】
本開示の他の観点に係る冷凍空調システムは、室内熱交換装置と、室内熱交換装置と配管で接続されると共に導入された冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機と配管で接続された室外熱交換装置と、室外熱交換器と配管で接続された上記の冷媒処理装置と、冷媒処理装置及び室内熱交換器とそれぞれ配管で接続されると共に導入された冷媒を膨張する膨張器とを備える。本開示の他の観点に係る冷凍空調システムでは、上記の冷媒処理装置と同様に、冷媒中に存在するラジカルを冷媒構成組成物へと再生することが可能となる。そのため、水素化合物の生成が抑制されて、圧縮機、屋外熱交換器、屋内熱交換器又は冷媒循環系内において錆が発生し難くなる。従って、冷凍空調システムの運転効率の向上が図られ、消費電力の低減及び二酸化炭素の排出量低減を促進することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る冷媒処理装置及び冷凍空調システムによれば、冷媒中における水素化合物の発生を防止すると共に冷媒中のラジカルを冷媒構成化合物へと再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る冷凍空調システムを冷凍冷房装置として用いた場合の図である。
図2図2は、本実施形態に係る冷凍空調システムを暖房装置として用いた場合の図である。
図3図3は、本実施形態に係る冷媒処理装置を、本体の中心軸を通る面で切断した断面図である。
図4図4は、図3のIV−IV線断面図である。
図5図5は、図4の一点鎖線で囲まれるV部を拡大して示す図である。
図6図6は、他の実施形態に係る冷媒処理装置を、本体の中心軸を通る面で切断した断面図である。
図7図7は、他の実施形態に係る冷媒処理装置に設けられた絞り部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示に係る冷凍空調システム1の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
冷凍空調システム1は、家庭用又は業務用の空調装置、冷蔵装置又は冷凍装置として用いられる。空調装置としては、例えば、ルームエアコンやカーエアコンなどが挙げられる。冷凍空調システム1は、図1に示されるように、室内熱交換装置10と、三方弁12と、四方弁14と、圧縮機16と、室外熱交換装置18と、冷媒処理装置100と、膨張弁19(膨張器)と、キャピラリーチューブ20(膨張器)と、二方弁22とを備える。
【0022】
室内熱交換装置10と、三方弁12と、四方弁14と、圧縮機16と、室外熱交換装置18と、冷媒処理装置100と、膨張弁19と、キャピラリーチューブ20と、二方弁22とは、この順に配管で接続されており、これらの内部を冷媒が循環する。そのため、冷凍空調システム1は、冷媒が循環する閉じた系として構成されている。
【0023】
冷媒の種類としては、例えば、CFC、HCFC又はHCFや、その他の混合冷媒などが挙げられる。CFCとしては、例えば、R−11、R−12、R−13、R−114、R−115、R−502などが挙げられる。HCFCとしては、例えば、R−22、R−123、R−123a、R−124、R−141b、R−142b、R−225aa、R−225ba、R−225bb、R−225ca、R−225cb、R−225cc、R−401A、R−401B、R−401C、R−408A、R−409A、R−409Bなどが挙げられる。HCFとしては、例えば、R−23、R−32、R−125、R−134a、R−152a、R−227ea、R−236fa、R−245cb、R−R−245ca、R−245fa、R−404A、R−407A、R−407B、R−407C、R−407D、R−407E、R−410A、R−410B、R−413a、R−507Aなどが挙げられる。その他の混合冷媒としては、例えば、R−14、R−116、R−218、R−245cb、R−245mc、R−290、R−402A、R−402B、R−403A、R−403B、R−405A、R−406、R−411A、R−411B、R−412A、R−508A、R−508B、R−509A、R−600、R−600a、R−702、R−704、R−717、R−718、R−720、R−728、R−740、R−732、R−744、R−744A、R−764、R−1114、R−1270、R−C318などが挙げられる。
【0024】
室内熱交換装置10は、冷房、暖房又は冷凍が行われる室内に配置されている。室内熱交換装置10は、図示しない熱交換器を有し、当該熱交換器内を流れる冷媒と当該室内(冷凍空調システム1の系外)との間で熱交換を行い、室内の温度を調整する。
【0025】
四方弁14は、冷媒の流れの正逆を切り替えて、冷凍空調システム1の運転状態を冷房又は暖房に変更する。圧縮機16は、冷媒を圧縮して高温高圧状態に変化させる。
【0026】
室外熱交換装置18は、室内熱交換装置10が配置されている室内とは異なる空間(例えば屋外)に配置されている。室外熱交換装置18は、熱交換器24を有する。熱交換器24は、熱交換器24内を流れる冷媒と当該空間(冷凍空調システム1の系外)との間で熱交換を行う。
【0027】
冷媒処理装置100は、図3に示されるように、本体110と、細管112と、管部114とを有する。本体110は、胴部110aと、胴部110aの両端部を閉塞する上側端壁部110b及び下側端壁部110cとを含む。
【0028】
胴部110aは、円筒状の筒体110dと、円筒形コイルばね110eとを含む。筒体110dの長さ及び内径は、馬力(冷凍空調システム1の容量)に応じて種々の大きさに設定してもよい。例えば、冷凍空調システム1が業務用エアコンである場合には、筒体110dの長さは8cm〜27cm程度であってもよく、筒体110dの内径は6.5cm〜25cm程度であってもよい。冷凍空調システム1が家庭用エアコンの場合には、筒体110dの長さは4cm〜6.5cm程度であってもよく、筒体110dの内径は3.4cm〜6.5cm程度であってもよい。円筒形コイルばね110eは、筒体110dの内壁面に取り付けられている。そのため、胴部110aの内周面は、胴部110aの中心軸(以下、「中心軸」という)に対して螺旋状に延びる螺旋溝116(第1の螺旋溝)を有する。すなわち、本実施形態において、螺旋溝116は、円筒形コイルばね110eの隣り合う金属線の間隙によって構成されている。
【0029】
当該金属線の断面は、図3に示されるように、円形状を呈している。当該金属線の径は、2mm〜8mm程度であってもよいし、4mm程度であってもよい。冷凍空調システム1が家庭用エアコンの場合には、当該金属線の径は2mm程度であってもよい。胴部110aの内周面(螺旋溝116)は、管部114の外周面とは離間している。そのため、胴部110aの内面と管部114の外周面との間において、冷媒が流れる流路を構成している。胴部110aの内面は、螺旋溝116の存在により凹凸が当該流路に沿って(上側端壁部110b及び下側端壁部110cの対向方向に)並んだ凹凸面を呈している。
【0030】
本実施形態において、円筒形コイルばね110eの全長は、筒体110dの全長と略等しい。そのため、螺旋溝116は、胴部110aの全体にわたって存在している。図3に示されるように、本実施形態において、細管112側における螺旋溝116のピッチは、細管112から離れる側(管部114側)における螺旋溝116のピッチよりも狭い。螺旋溝116(円筒形コイルばね110e)の中心軸方向の全長をLとし、螺旋溝116のうちピッチが狭い細管112側の部分の中心軸方向の長さをL1としたときに、L1/L≧1/3を満たしてもよいし、1/3≦L1/L≦2/3を満たしてもよいし、1/3≦L1/L≦1.5/3を満たしてもよい。
【0031】
上側端壁部110b及び下側端壁部110cは、円板状を呈する浅型キャップにより構成されている。上側端壁部110bの外周縁側には、開口H1を備える細管112が設けられている。換言すれば、細管112の中心軸は、胴部110aの中心軸に対して偏って形成されている。細管112のうち本体110内の端部(内側端部)は曲げられている。当該端部は胴部110aの内周面を向いている。細管112は、本体110の内部と連通するよう上側端壁部110bに取り付けられている。下側端壁部110cの中心近傍には、開口H2を備える管部114が設けられている。管部114は、一端が本体110内(胴部110a内)に位置するように、下側端壁部110cに挿通された状態で下側端壁部110cに取り付けられている。そのため、細管112の開口H1と管部114の開口H2は、中心軸方向から見たときに対向していない。
【0032】
図3に示されるように、管部114の本体110内(胴部110a内)に位置する内管部114aの外周面には、雄ねじが形成されている。すなわち、雄ねじは、管部114の内管部114aの外周面において、中心軸に対して螺旋状に延びる雄ねじによる螺旋溝118(第2の螺旋溝)を構成している。管部114の内管部114aの螺旋溝118の巻き方向は、円筒形コイルばね110eの巻き方向と同じである。
【0033】
図4及び図5に示されるように、管部114の内管部114aの外周面には、螺旋溝118に交差するように、軸線方向に延びる線状溝119が形成されている。線状溝119は、雄ねじによる螺旋溝118の深さより小さい深さを有する。すなわち、線状溝119の底面は、雄ネジの溝の底面より外側にある。従って、線状溝119の底面には、雄ねじによる螺旋溝118の一部が形成されている。
【0034】
図1に戻って、キャピラリーチューブ20は、冷媒に断熱膨張を生じさせて冷媒の一部を液体から気体へと変化させるためのものであり、膨張弁と同等に機能する。そのため、キャピラリーチューブ20の断面積(流路面積)は、他の配管の断面積(流路面積)よりも小さい。
【0035】
続いて、図1及び図3を参照して、以上のような冷凍空調システム1を冷房装置として運転する場合について説明する。図1及び図3では、冷凍空調システム1を冷房装置として運転した場合における冷媒の流れを、白抜き矢印で示している。このとき、室内熱交換装置10が有する熱交換器は蒸発器として機能し、室外熱交換装置18が有する熱交換器24は凝縮器として機能する。
【0036】
圧縮機16が動作すると、低温低圧の飽和蒸気の状態にある冷媒が、圧縮機16によって圧縮されて高温高圧の過熱蒸気に変化する。続いて、過熱蒸気の状態にある冷媒が、室外熱交換装置18が有する熱交換器24において系外と熱交換を行って常温高圧の液体となる。この際、冷媒の全てが完全に液体にならず、液体となった冷媒中にラジカルが存在する場合がある。ラジカルを含む液状の冷媒は、ラジカルと共に室外熱交換装置18が有する熱交換器24から、細管112(開口H1)を通じて冷媒処理装置100内に流入する。
【0037】
冷媒が冷媒処理装置100内に流入すると、冷媒は螺旋溝116に衝突しつつ超高速で流れる。そのため、本体110内において冷媒の超高速渦流が形成される。従って、冷媒の超高速渦流に随伴して流れるラジカルは、外方に向かい、胴部110aの内周面に押し寄せられる。胴部110aの内周面には螺旋溝116が設けられているので、ラジカルは螺旋溝116と接触しながら螺旋溝116に沿って流れていく。この過程で、ラジカルの冷媒からの分離とラジカルの冷媒組成物への液化とが促進される。
【0038】
胴部110aの内面における螺旋溝116に沿って流れた冷媒は、下側端壁部110cに当たってその流れの向きを反転され、管部114の外周面に沿いつつ上側端壁部110bに向かって流れる。つまり、冷媒は螺旋溝118に接しつつ流れるので、螺旋溝118によっても冷媒の超高速渦流が形成される。そのため、螺旋溝116で分解しきれなかったラジカルがあった場合でも、再びラジカルを含む冷媒が管部114の外周面まで流れると、ラジカルが外方(螺旋溝116側)に向けて移動しやすくなる。その結果、ラジカルが再び螺旋溝116で冷媒から分離されるので、ラジカルが冷媒からより確実に除去され、ラジカルの冷媒組成物への液化がさらに促進される。こうして、冷媒の機能が回復される。
【0039】
管部114の本体110内における端部まで冷媒が流れると、冷媒は、上側端壁部110bに当たってその流れの向きを反転され、管部114の当該端部の開口から管部114内の流路114bに流れる。そのため、ラジカルが分離再生され且つ常温高圧の液体の状態にある冷媒が、管部114の開口H2から流出する(図3の白抜き矢印参照)。
【0040】
続いて、常温高圧の液体の状態にある冷媒が、膨張弁19、キャピラリーチューブ20により膨張して低温低圧の湿り蒸気となる。続いて、低温低圧の湿り蒸気の状態にある冷媒が、室内熱交換装置10が有する熱交換器において系外と熱交換を行って系外の熱を吸収し、完全に蒸発して、飽和蒸気に変化する。
【0041】
こうして、冷媒は、圧縮機16、四方弁14、室外熱交換装置18(熱交換器24)、冷媒処理装置100、膨張弁19、キャピラリーチューブ20、二方弁22、室内熱交換装置10、三方弁12、四方弁14の順に流れて、冷凍空調システム1内を循環する。冷媒が冷凍空調システム1内をこのように変化しながら循環することで、蒸発器(室内熱交換装置10)が設置されている室内の気温が低下すると共に、凝縮器(室外熱交換装置18)が設置されている屋外の気温が上昇する。
【0042】
続いて、図2及び図3を参照して、冷凍空調システム1を暖房装置として運転する場合について説明する。図2及び図3では、冷凍空調システム1を冷房装置として運転した場合における冷媒の流れを、黒色矢印で示している。このとき、室内熱交換装置10が有する熱交換器は凝縮器として機能し、室外熱交換装置18が有する熱交換器24は蒸発器として機能する。
【0043】
圧縮機16が動作すると、低温低圧の乾き蒸気の状態にある冷媒が、圧縮機16によって圧縮されて高温高圧の過熱蒸気に変化する。続いて、過熱蒸気の状態にある冷媒が、四方弁14及び三方弁12の順に流れて室内熱交換装置10に流入し、室内熱交換装置10が有する熱交換器において系外と熱交換を行って常温高圧の液体となる。
【0044】
続いて、常温高圧の液体の状態にある冷媒が、膨張弁19及びキャピラリーチューブ20により膨張して低温低圧の湿り蒸気となる。続いて、低温低圧の湿り蒸気の状態にある冷媒は、冷媒処理装置100に流入して機能が回復される。その後、室外熱交換装置18によって系外と熱交換して加熱され、常低温気体に変化する。
【0045】
こうして、冷媒は、圧縮機16、四方弁14、三方弁12、室内熱交換装置10、二方弁22、膨張弁19、キャピラリーチューブ20、冷媒処理装置100、室外熱交換装置18(熱交換器24)、四方弁14の順に流れて、冷凍空調システム1内を循環する。冷媒が冷凍空調システム1内をこのように変化しながら循環することで、蒸発器(室内熱交換装置10)が設置されている室内の気温が上昇すると共に、凝縮器(室外熱交換装置18)が設置されている屋外の気温が低下する。
【0046】
以上のような本実施形態では、胴部110aの内面が、中心軸に対して螺旋状に延びる螺旋溝116を有する。ラジカルを含む気液状の冷媒が螺旋溝116に衝突しつつ流れる過程で、ラジカルの分離が促進され、再度、個々のラジカルが冷媒組成物の液状の冷媒となる。そのため、冷媒中に存在するラジカルの冷媒からの分離とラジカルの冷媒組成物への液化とが促進される。従って、冷媒中に存在するラジカルを冷媒構成組成物へと再生することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、螺旋溝116が、胴部110aの全長にわたって存在している。そのため、ラジカルが螺旋溝116に長く接触することとなる。従って、ラジカルの冷媒からの分離と冷媒への再生がより促進される。
【0048】
本実施形態では、螺旋溝116が円筒形コイルばね110eの隣り合う金属線の間隙によって構成されている。そのため、円筒形コイルばね110eを用いることにより、螺旋溝116を簡便に且つ低コストで構成できる。
【0049】
本実施形態では、細管112の開口H1と管部114の開口H2とは、中心軸方向から見たときに対向していない。そのため、冷媒が細管112の開口H1から管部114の開口H2に直接流れにくくなる。この構造によれば、冷媒と共存して流れる冷凍機油が管部114において冷凍機油溜りとならないように、冷媒と冷凍機油との分離が防止される。従って、冷媒と冷凍機油(潤滑油)とが最良の混合率で管部114の開口H2に流れる。また、細管112から本体110内に流入した冷媒は螺旋溝116(円筒形コイルばね110e)に超高速で衝突するので、気液分離の効率が高まる。
【0050】
本実施形態では、管部114の内管部114aの外周面が、中心軸に対して螺旋状に延びる螺旋溝118及び線状溝119を有している。そのため、冷媒が螺旋溝118及び線状溝119に接しつつ流れるので、超高速渦流がさらに形成されやすくなる。従って、ラジカルが外方に向けて移動しやすくなり、ラジカルの分離がさらに促進される。
【0051】
本実施形態では、螺旋溝118が雄ねじによって構成されている。そのため、螺旋溝118を簡便に且つ低コストで構成できる。
【0052】
本実施形態では、中心軸方向に延びる線状溝119が管部114の外周面に形成されている。そのため、ラジカルの冷媒組成物への液化がいっそう促進されると共に、螺旋溝118を簡便に且つ低コストで構成できる。
【0053】
ところで、冷凍空調システム1の運転を停止すると、本体110の底部である下側端壁部110cの近傍には少量の液状の冷媒が溜まることがある。この状態で冷凍空調システム1の運転を再開すると、下側端壁部110cに溜まった液状の冷媒を上方に押し上げるのにエネルギーを要する。しかしながら、本実施形態では、管部114の内管部114aの外周面に、軸線方向に延びる線状溝119が形成されている。そのため、液状の冷媒が線状溝119に沿って上方に流れやすくなる。従って、液状の冷媒を上方に押し上げるのに要するエネルギーを低減することができ、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0054】
ところで、線状溝119の深さが螺旋溝118の深さと同一であると、螺旋溝118にはラジカルを含む冷媒が流れているので、液状の冷媒が線状溝119に沿って上方に移動する際に、液状の冷媒がラジカルを含む冷媒と共に流れて攪拌されてしまう。この場合、液状の冷媒は攪拌する必要がないにもかかわらず、液状の冷媒において不要なエネルギーが消費されてしまう。しかしながら、本実施形態では、線状溝119の深さが螺旋溝118の深さよりも小さい(浅い)。そのため、螺旋溝118内を流れるラジカルを含む冷媒は、線状溝119内を流れる液状の冷媒に作用し難くなる。従って、液状の冷媒を上方に押し上げるのに要するエネルギーをより低減することができ、さらなる省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0055】
本実施形態に係る冷凍空調システム1は、既存の冷凍空調システムに冷媒処理装置100を付加することで構成することができる。そのため、冷媒処理装置100を付加するだけで、冷凍空調システム1全体の運転効率を高めることができ、省エネルギーに大きく貢献できる。また、冷媒処理装置100を付加するにあたり、空調能力が低下した機種においても、既存の冷凍空調システム内の冷媒を入れ替える必要がない。
【0056】
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、本実施形態では円筒形コイルばね110eにより螺旋溝116を構成していたが、筒体110dの内壁面に螺旋溝を直接形成してもよい。溝の断面形状として、U字形状、三角形状、四角形状、その他の異形状など、各種の形状を採用できる。
【0057】
本実施形態では、螺旋溝116は筒体110dの全長と略等しい長さであったが、胴部110aの内面は、冷媒が流入及び流出する細管112の開口H1側に少なくとも螺旋溝116を有していればよい。
【0058】
本実施形態では、筒体110dは円筒状を呈していたが、筒体110dの形状として、六角形状又は四角形状といった多角形状や、楕円形状など、各種の形状を採用できる。
【0059】
本実施形態における円筒形コイルばね110eの金属線の断面形状として、円形状や、矩形状など、各種の形状を採用できる。
【0060】
本実施形態では、管部114の螺旋溝118が雄ねじによって構成されていたが、管部114の外周面に金属線を螺旋状に巻き付けて、隣り合う金属線の間隙によって螺旋溝118を構成してもよい。管部114に螺旋溝118がなくてもよい。
【0061】
螺旋溝116,118のピッチは、中心軸方向に沿って一定でもよいし、変化してもよい。
【0062】
図6に示されるように、管部114内には絞り部材120が設けられていてもよい。図6に示される例では、平板状を呈する14個の絞り部材120が管部114内に設けられている。管部114内における絞り部材120の数は、5個〜15個程度であってもよいし、少なくとも一つであってもよい。
【0063】
絞り部材120は、管部114の流路面積よりも小さい流路面積を提供することができればよい。絞り部材120によって提供される流路面積は、絞り部材120の存在により上流側において圧力が高まって、絞り部材120の上流側に位置する圧縮機16に負荷をかけない程度か、当該負荷がごく僅かとなるように設定されているとよい。絞り部材120によって提供される流路面積は、例えば、管部114によって提供される流路面積の2/3〜3/4程度に設定することができる。絞り部材120の形状は、平板状に限られず、種々の形状を採用することができる。絞り部材120が平板状である場合には、図7に示されるように、絞り部材120は、厚さ方向に貫通する少なくとも一つの貫通孔120a(図7では9個の貫通孔120a)を有していてもよい。
【0064】
絞り部材120の存在により、絞り部材120の上流側に対して絞り部材120の下流側の圧力が低くなる。そのため、ラジカルの集合体に作用する冷媒からの力が相対的に低くなる。そのため、ラジカルの冷媒からの分離とラジカルの冷媒組成物への液化とをより一層促進できる。
【実施例1】
【0065】
以下、実施例1−1,1−2及び比較例1−1,1−2に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1−1)
まず、本実施形態に係る冷凍空調システム1を用意した。室内熱交換装置10として、ダイキン工業株式会社製FZ285Xを用いた。室外熱交換装置18として、ダイキン工業株式会社製RAZ285XEを用いた。冷媒として、R−22を用いた。
【0067】
続いて、図1に示されるように、冷凍空調システム1を冷房装置として、以下の条件で60分間運転したところ、室内温度及び室内熱交換装置の出口温度は運転開始から18分で24℃となり、室内相対湿度は運転開始から30分で55%RHとなった。
室内温度: 26.5℃
室内相対湿度: 67%RH
外気温度: 28.5℃
室内熱交換装置の出口温度: 24℃
【0068】
運転後、圧縮機16の入口側(室内熱交換装置側)の圧力及び圧縮機16の出口側(室外熱交換装置側)の圧力をそれぞれ測定したところ、以下のとおりであった。また、圧縮機16における1時間あたりの消費電力量を測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測したところ、以下のとおりであった。
圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力: 0.28MPa
圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力: 1.43MPa
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 885Wh/h
【0069】
また、運転後、室外熱交換装置18の出口における冷媒を耐熱ガラス液面計に通して、LED(発光ダイオード)により冷媒を照明し、冷媒中の気泡を配管に設置されている液管サイドグラスで目視確認したところ、気泡は確認されなかった。
【0070】
(比較例1−1)
冷媒処理装置100を備えない以外は実施例1−1と同様の冷凍空調システムを用意し、冷凍空調システムを冷房装置として、実施例1−1と同じ条件で60分間運転したところ、室内温度及び室内熱交換装置の出口温度は運転開始から22分で24℃となった。
【0071】
運転後、圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力、圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力、及び圧縮機における1時間あたりの消費電力量をそれぞれ計測したところ、以下のとおりであった。
圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力: 0.37MPa
圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力: 1.81MPa
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 1320Wh/h
【0072】
また、運転後、室外熱交換装置の出口における冷媒を耐熱ガラス液面計に通して、LED(発光ダイオード)により冷媒を照明し、冷媒中の気泡を目視で確認したところ、25%程度の気相が確認された。
【0073】
(実施例1−2)
本実施形態に係る冷凍空調システム1を用意した。室内熱交換装置10として、ダイキン工業株式会社製FZ285Xを用いた。室外熱交換装置18として、ダイキン工業株式会社製RAZ285XEを用いた。冷媒として、R−22を用いた。
【0074】
続いて、図1に示されるように、冷凍空調システム1を冷房装置として運転した。具体的には、30分間運転して10分停止した後、運転を再開した。運転を再開してから7分間での圧縮機16における1時間あたりの消費電力量を、測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測した。その結果は、以下のとおりであった。
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 900Wh/h
また、運転を再開してから7分経過した後では、圧縮機16における1時間あたりの消費電力量は885Wh/h程度で推移した。
【0075】
(比較例1−2)
管部114に線状溝119が形成されていない以外は実施例1−2と同様の冷凍空調システムを用意し、冷凍空調システムを冷房装置として、実施例1−2と同じ条件で運転した。具体的には、30分間運転して10分停止した後、運転を再開した。運転を再開してから7分間での圧縮機における1時間あたりの消費電力量を、測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測した。その結果は、以下のとおりであった。
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 969Wh/h
【0076】
(結果)
以上のように、実施例1−1においては、比較例1−1と比較して、低圧運転が維持され、冷媒が液化しやすくなり、室内の冷房能力が向上したことが確認された。また、実施例1−1においては、比較例1−1と比較して、圧縮機における1時間あたりの消費電力量が32.9%程度低くなり、省エネルギーに大きく貢献することが確認された。さらに、実施例1−2においては、比較例1−2と比較して、線状溝119の存在により、圧縮機における1時間あたりの消費電力量が69Wh/h(6.25%)低くなり、省エネルギーによりいっそう貢献することが確認された。
【実施例2】
【0077】
以下、実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
(実施例2−1)
まず、本実施形態に係る冷凍空調システム1を用意した。室内熱交換装置10としてダイキン工業株式会社製FZ285Xを用いた。室外熱交換装置18として、ダイキン工業株式会社製RAZ285XEを用いた。冷媒として、R−22を用いた。
【0079】
続いて、図2に示されるように、冷凍空調システム1を暖房装置として、JIS C 9612に定められている以下の条件で60分間運転した。
室内温度: 20℃
室内相対湿度: 53%RH
外気温度: 7℃
【0080】
運転後、圧縮機16の入口側(室内熱交換装置側)の圧力及び圧縮機16の出口側(室外熱交換装置側)の圧力をそれぞれ測定したところ、以下のとおりであった。また、圧縮機16における1時間あたりの消費電力量を測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測したところ、以下のとおりであった。
圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力: 0.29MPa
圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力: 1.44MPa
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 960Wh/h
【0081】
また、運転後、室外熱交換装置18の出口における冷媒を耐熱ガラス液面計に通して、LED(発光ダイオード)により冷媒を照明し、冷媒中の気泡を配管に設置されている液管サイドグラスで目視確認したところ、気泡は確認されなかった。
【0082】
(比較例2−1)
冷媒処理装置100を備えない以外は実施例2−1と同様の冷凍空調システムを用意し、冷凍空調システムを暖房装置として、実施例2−1と同じ条件で60分間運転した。
【0083】
運転後、圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力、圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力、及び圧縮機の消費電力をそれぞれ計測したところ、以下のとおりであった。
圧縮機の入口側(室内熱交換装置側)の圧力: 0.45MPa
圧縮機の出口側(室外熱交換装置側)の圧力: 1.70MPa
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 1590Wh/h
【0084】
また、運転後、室外熱交換装置の出口における冷媒を耐熱ガラス液面計に通して、LED(発光ダイオード)により冷媒を照明し、冷媒中の気泡を目視で確認したところ、15%程度の気相が確認された。
【0085】
(実施例2−2)
本実施形態に係る冷凍空調システム1を用意した。室内熱交換装置10として、ダイキン工業株式会社製FZ285Xを用いた。室外熱交換装置18として、ダイキン工業株式会社製RAZ285XEを用いた。冷媒として、R−22を用いた。
【0086】
続いて、図2に示されるように、冷凍空調システム1を暖房装置として、JIS C 9612に定められている以下の条件で運転した。
室内温度: 20℃
室内相対湿度: 53%RH
外気温度: 7℃
具体的には、30分間運転して10分停止した後、運転を再開した。運転を再開してから7分間での圧縮機16における1時間あたりの消費電力量を、測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測した。その結果は、以下のとおりであった。
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 1008Wh/h
また、運転を再開してから7分経過した後では、圧縮機16における1時間あたりの消費電力量は960Wh/h程度で推移した。
【0087】
(比較例2−2)
管部114に線状溝119が形成されていない以外は実施例2−2と同様の冷凍空調システムを用意し、冷凍空調システムを暖房装置として、実施例2−2と同じ条件で運転した。具体的には、30分間運転して10分停止した後、運転を再開した。運転を再開してから7分間での圧縮機における1時間あたりの消費電力量を、測定器(イーデンキ社製ワットチェッカー(電力計)DW−777)で計測した。その結果は、以下のとおりであった。
圧縮機における1時間あたりの消費電力量: 1048Wh/h
【0088】
(結果)
以上のように、実施例2−1においては、比較例2−1と比較して、低圧運転が維持され、冷媒が液化しやすくなり、室内の暖房能力が向上したことが確認された。また、実施例2−1においては、比較例2−1と比較して、圧縮機における1時間あたりの消費電力量が39.6%程度低くなり、省エネルギーに大きく貢献することが確認された。さらに、実施例2−2においては、比較例2−2と比較して、線状溝119の存在により、圧縮機における1時間あたりの消費電力量が40Wh/h(4.77%)低くなり、省エネルギーによりいっそう貢献することが確認された。
【符号の説明】
【0089】
1…冷凍空調システム、10…室内熱交換装置、12…三方弁、14…四方弁、16…圧縮機、18…室外熱交換装置、19…膨張弁、20…キャピラリーチューブ、22…二方弁、24…熱交換器、100…冷媒処理装置、110…本体、110a…胴部、110b…上側端壁部、110c…下側端壁部、110d…筒体、110e…円筒形コイルばね、112…細管、114…管部、114a…内管部、114b…流路、116…螺旋溝(第1の螺旋溝)、118…螺旋溝(第2の螺旋溝)、119…線状溝、120…絞り部材、120a…貫通孔、H1,H2…開口。
【要約】
冷媒中における水素化合物の発生を防止すると共に冷媒中のラジカルを冷媒構成化合物へと再生する。
冷媒処理装置100は、筒状の胴部110aと該胴部110aの両端部を閉塞する上側端壁部110b及び下側端壁部110cとを有する本体110と、本体110内に冷媒を導入し又は本体内から冷媒を導出する管部114及び細管112とを備える。管部114は、下側端壁部110cを貫通するように下側端壁部110cに設けられると共に胴部110aの中心軸に沿って延びている。細管112は、上側端壁部110bを貫通するように上側端壁部110bに設けられている。胴部110aの内周面には、中心軸に対して螺旋状に延びる螺旋溝116が形成されている。管部114の外周面には、中心軸に対して螺旋状に延びる螺旋溝118と、中心軸方向に延びる線状溝119とが形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7