(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133036
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】熱処理なしに腐食環境での使用のためのジャケット付き電磁気機械ステーター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20170515BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20170515BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20170515BHJP
H02K 7/09 20060101ALI20170515BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
H02K1/12 A
F16C32/04 Z
H02K1/02 Z
H02K7/09
H02K15/14 A
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-232855(P2012-232855)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2013-90572(P2013-90572A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】1159484
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503180188
【氏名又は名称】エスケーエフ・マグネティック・メカトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】リュック・ボードゥロック
【審査官】
柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−002506(JP,A)
【文献】
実開平05−091161(JP,U)
【文献】
特開2007−232215(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0038157(US,A1)
【文献】
特表2010−514392(JP,A)
【文献】
特表2007−508492(JP,A)
【文献】
特開平02−261042(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0218008(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0200443(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0295395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/12
F16C 32/04
H02K 1/02
H02K 7/09
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H2SまたはウェットCO2を包含している腐食環境中で動作し、エアギャップによってローターから分離された複数の磁極片(38)を有している加圧回転機械のためのジャケット付き電磁機械ステーターであり、前記ステーターを前記腐食環境から保護するハーメチックシールエンクロージャーが、前記磁極片に合って配置された前記腐食環境に接触しない磁性体象眼(36B)を有している非磁性シリンダー(36A)によって構成されたジャケットを有しており、前記ハーメチックシールエンクロージャーは、どんな熱処理にもさらされなかった溶接部によって互いに固定される非磁性体(32,34,36A,44)で作られたパーツによってもっぱら外面的に構成されていることを特徴とする前記ステーター。
【請求項2】
前記非磁性シリンダーはまた、前記磁極片の間に非磁性象眼(36C)を有していることを特徴とする請求項1に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項3】
前記非磁性象眼は、非導電性材料で作られていることを特徴とする請求項2に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項4】
前記ハーメチックシールエンクロージャーを形成するために、前記ステーターはまた、前記ジャケットに溶接された非磁性体の側壁(32,34)と、前記側壁に溶接された非磁性体で前記ハーメチックシールエンクロージャーの放射状の熱膨張を阻止することが可能であるステーター支持体(30)中の締まりばめのヨーク(44)を有していることを特徴とする請求項1に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項5】
前記ハーメチックシールエンクロージャーを形成するために、前記ステーターはさらに、前記ジャケットに溶接され、前記ステーター支持体(30)にファスナー手段(46)によって溶接されずに固定された非磁性体の側壁(32,34)を有しており、前記側壁と前記ステーター支持体の間のハーメチックシールは、一つ以上のOリングタイプ金属またはポリマーガスケット(48)によって得られることを特徴とする請求項1に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項6】
前記磁性体の象眼は、それ自体が磁気シリンダーを形成していることを特徴とする請求項1に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項7】
前記磁性体の象眼は、互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項6に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項8】
前記磁気シリンダーは、前記非磁性シリンダー上の締まりばめであることを特徴とする請求項6に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項9】
前記磁性体の象眼は、前記非磁性シリンダーに溶接されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかひとつに記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項10】
前記磁性体の象眼は、前記非磁性シリンダーに粘着的に接合されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかひとつに記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
【請求項11】
ジャケット付き能動型磁気ベアリングにおける請求項1〜10のいずれかひとつに記載のジャケット付き電磁機械ステーターの使用。
【請求項12】
ターボエキスパンダーにおける請求項11に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。
【請求項13】
コンプレッサーにおける請求項11に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。
【請求項14】
電気モーターにおける請求項11に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H
2SまたはウェットCO
2を包含しているプロセスガスに接触して置かれる回転機械のためのジャケット付き電磁機械ステーターに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械中の磁気ベアリングの応用は、シールすることなく、問題の機械のプロセスガスの中で直接にそれらを動作させることによって得られる巨大な利点のため、ここ数年で相当に発展した。したがって、また非限定的な方法で、磁気ベアリングはターボエキスパンダー、冷凍コンプレッサー、コンプレッサーを駆動するための電気モーター、その他に見つけられる。
【0003】
通常の応用では、磁気回路はすべてにシリコン鉄に基づいている。したがって、そのような回路の積層磁性体を形成している強磁性シートは、それらのサプライヤーによってよく規定され保証された磁気特性、特に限定されたヒステリシスサイクルと高い透磁率および飽和磁気誘導を示すという利点を有している。
【0004】
しかしながら、より多くの特定の応用のため、酸性、腐食性または伝達粒子である媒体中において、攻撃的な環境からステーターの磁気回路を分離し、したがってシリコン鉄に基づいた従来材料がそれらの回路に使用されることを可能にするジャケットを取り付けることなく、ワインディングで使用される強磁性ラミネーションとプロセスガスの間の直接の接触は不可能であることが分かる。
【0005】
さらに、そのようなジャケットは、ローターと接触することによってステーターが破損されることをすぐにもたらす、温度の関数として変形しないように、ワインディングを支持している強磁性ラミネーションと同一の熱膨脹係数を有している必要がある。
【0006】
したがって、ジャケット付き磁気ベアリングは一般に、環境による腐食性攻撃から保護するために使用される環境に対してハーメチックシールされたエンクロージャーの中に挿入された巻回強磁性体ラミネーションのアッセンブリーで作られる。エンクロージャーのコンポーネントのおのおのは、またそれらの間の連結は、その環境によって引き起こされ得る腐食に耐えることが可能でなければならない。さらに、いわゆる「オイルおよびガス」環境では、より特殊な応用が、標準ANSI/NACE MR0175/ISO15156「石油および天然ガス産業−オイルおよびガス生産におけるH
2S包含環境中での使用のための材料」(the standard ANSI/NACE MR0175 / ISO 15156 "Petroleum and natural gas industries - Materials for use in H2S-containing environments in oil and gas production")の下でなされ、硬度拘束は、選択され得る材料に対する制限を置く。
【0007】
慣習的に、一般にジャケットに使用される磁性体は、析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼である。残念ながら、前述の標準の推薦に応じるために、そのような材料を溶接することは、熱処理(一般に約620℃でおこなわれる高温アニール)を必要とし、このことは、素晴らしいジャケットまたは巻回強磁性体ラミネーション自体と両立せず、それらは、慣習的に250℃よりも高い温度に耐えることができない。そのような熱処理なしでは、溶接部はそれらの耐食適合性を失い、それにより、ベアリングの製作を非常に複雑にするとともに、それを使用するコストを非常に著しく増大させる。
【0008】
そのような適合性を取り戻すために、米国特許第7847454号は、最終機械加工の前に熱処理にさらされた二つの材料で作られたベアリングジャケットを使用することを提案しており、それは、中央部だけが析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼で作られており、ジャケットの残りの部分が非磁性体で作られており、非磁性体の間の溶接部など、最終組立作業中に、まだ作られるべく残っている溶接部だけがすべて、標準NACE MR0175/ISO 15156と適合性がある溶接部である。同様に、支持体の他の部分に非磁性体の多数の挿入物を追加することが必要であり、それらの部品は磁性体部に溶接され、溶接部は熱処理にさらされ、それから最終組立に先立って最終形状を与えるために再度機械加工される。
【0009】
図3は、前述の特許に説明されるような、ハーメチックシールジャケットの中に配置された能動型磁気ベアリングステーターの例を示している。エンクロージャーは筒状支持体10によって共通に構成されており、その支持体は、縦の軸12を有し、それに締まりばめされた1セットの巻回強磁性体ラミネーション14を備えている。その支持体は各側面に壁16,18を備えており、またエンクロージャーは、プロセスガスに接触するその内径上に円筒状ジャケット20を追加することによって仕上げられている。エンクロージャーは、ポッティング樹脂22で完全に充てんされており、それにより、(数百バールまでの)加圧環境に置くれ得るようにその機械的強度を強化している。ベアリングステーターの巻線(電磁石コイル)は、図示されたように、このように作られるハーメチックエンクロージャーの外側に配置され得る電子制御回路24に(図示しない)従来のハーメチックシールソケットを介して接続されている。
【0010】
ジャケット20は、一般に17−4PHタイプの析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼の磁性体で作られた円筒状中央部20Aによって構成され、一般にインコネルの非磁性体で作られた両端に適合された伸張部20Bを有している。壁16,18も二つの部分で作られており、挿入物16A,18Aが、あらかじめベアリング支持体10に溶接され、熱処理され、最終ディメンションに再度機械加工され、チークプレート16B,18Bが、これらの挿入物と、ジャケット20、より正確にはその伸張部20Bとの間の連結を形成している。これらの挿入物およびチークプレートは、一般にインコネル同様の非磁性体で作られている。強磁性体ラミネーションが高い気温まで(一般に200℃まで)支持体内の締まりばめのまま残ることを保証することが必要であるとき、ベアリングの支持体10は、シリコン鉄に基づいた巻回アッセンブリー14とほとんど同一の熱膨脹係数を得るために、慣習的に17−4PHで作られる。
【0011】
このステーターは次のようにして組み立てられる。まずジャケット20を形成するために伸張部20Bが中央部20Aに溶接され、つぎにアッセンブリーがおよそ620℃で熱処理され、最後に高温での処理によって作り出された変形を緩和するために機械加工によって再加工される。同様に、側面挿入物16A,18Aがベアリング支持体10に溶接され、つぎにアッセンブリーがまた約620℃の熱処理にさらされる。当然、熱処理は、機械加工によって続いて再加工される幾何学的変形を生み出す影響を有している。それからベアリング14の強磁性体ラミネーションが支持体10の内側に締まりばめとして挿入され得、その後、チークプレート16B,18Bが挿入物16A,18Aに溶接され、またジャケット20がチークプレートに溶接され、これらのいずれも、その後の熱処理を必要としない。
【0012】
したがって、ジャケットまた支持体を非磁性挿入物で提供することによって、いったん、これらの挿入物がジャケットと支持体の両方に溶接されたならば、また、いったん、アッセンブリーが高温アニールにさらされたならば、どんな特別の熱処理に頼ることなく、また、ラミネーションおよび巻回の材料と適合性がある温度での作動をとることなく、強磁性体ラミネーションをエンクロージャーの内側に置き、それから非磁性挿入物を一緒に溶接することが可能である。
【0013】
残念ながら、初期熱処理作業と必要な再加工は長くて複雑であり、したがって特に高価である。それらはまた、特に二つの材料のベアリングジャケットにおいて、主な製造の例外の源であり、その非常に小さい厚さのために挿入物と接続することが特に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7847454号
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、溶接部を追加熱処理および多数の再加工する作業にさらすどんな必要も回避している間、H
2SおよびウェットCO
2を包含している加圧環境中で動作するのに特に適したジャケット付き電磁機械ステーターを提案することによって、前述の欠点を改善することである。本発明の別の目的はまた、ベアリング支持部を(インコネルなどの)高価な材料から非常に小さく厚さで、したがって最小のコストで作ることが可能であるに違いない強磁性ラミネーションと同一の熱膨脹係数を持つベアリング支持部を有している必要性を避けることである。
【0016】
これらの目的は、H
2SまたはウェットCO
2を包含している腐食環境中で動作し、エアギャップによってローターから分離された複数の磁極片を有している加圧回転機械のためのジャケット付き電磁機械ステーターであり、前記ステーターを前記腐食環境から保護するハーメチックシールエンクロージャーが、前記磁極片と共にレジスターに配置された前記腐食環境に接触しない磁性体象眼を有している非磁性シリンダーによって構成されたジャケットを有しており、前記ハーメチックシールエンクロージャーは、どんな熱処理にもさらされなかった溶接部によって互いに固定される非磁性体で作られたパーツによってもっぱら外面的に構成されていることを特徴とする前記ステーターによって達成される。
【0017】
溶接のあらゆる熱処理を除去することによって、結果の再作業が除去され、また、ステーターを製造するコストが相応して低減されつつ、欠陥作業の危険も制限する。
【0018】
好ましくは、前記非磁性象眼は、電気的非導電性材料で有利に作られている。
【0019】
前記磁性体象眼はまた、それ自体が磁気シリンダーを形成してもよく、また、それらは、好ましくは互いに電気的に絶縁されていてもよい。
【0020】
意図する実施形態に応じて、前記磁性体象眼は、前記非磁性シリンダーに溶接または粘着的に接合されてもよく、また、前記磁気シリンダーは、前記非磁性シリンダー上の締まりばめであってもよい。
【0021】
意図する実施形態に応じて、前記ハーメチックエンクロージャーを形成するために、前記ステーターはまた、前記ジャケットに溶接された非磁性体の側壁と、前記側壁に溶接された非磁性体で、前記ハーメチックエンクロージャーの放射状の熱膨張を阻止することが可能である磁性体のステーター支持体中の締まりばめのヨークを有していてもよく、または、本当に、前記ジャケットに溶接され、磁性体のステーター支持体にファスナー手段によって溶接されずに固定された非磁性体の側壁を有していてもよく、前記側壁と前記ステーター支持体の間のハーメチックシールは、Oリングタイプの一つ以上の金属またはポリマーガスケットによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の特性および利点は、非制限的な指示を通して、また添付図面を参照してなされる続く説明からより明白に現われる。
【
図1】
図1は、腐食環境中で動作するための本発明の能動型磁気ベアリングステーターの第一実施形態の図表図である。
【
図1A】
図1Aは、
図1のベアリングステーターの保護ジャケット中に溶接された磁気象眼の実施形態の詳細を示している。
【
図1B】
図1Bは、
図1のベアリングステーターの保護ジャケットの構造を示す断片的断面図である。
【
図2】
図2は、腐食環境中で動作するための本発明の能動型磁気ベアリングステーターの第二実施形態の図表図である。
【
図3】
図3は、腐食環境中で動作するための先行技術の能動型磁気ベアリングステーターの実施形態の図表図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、電磁機械のためのジャケット付きステーターの第一実施形態、より正確には標準NACE MR0175/ISO 15156にしたがう大気中で動作するための本発明のジャケット付き能動型磁気ベアリングステーターを示している。ジャケット付き能動型磁気ベアリングの通常のコンポーネント、すなわち、制御回路40に接続された磁気回路38の保護のための側壁32,34と保護ジャケット36を備えたベアリング支持部30が自然に見つけられる。図示されたベアリングはラジアルベアリングであるが、本発明は同様の方法でアキシアルまたはラジアルおよびアキシアルの両方であるベアリングに適合することは明白であると認めるべきである。
【0024】
しかしながら、従来技術のベアリングステーター構造体と異なり、磁気エアギャップに合った円筒状ジャケット36は、インコネルなどの非磁性体によるステーターの外部表面上に独占的に構成され、したがって、いかなる磁気部もH
2SまたはウェットCO
2を包含し得るプロセスガスに接触する外側に見えない。プロセスガスに接触するステーターの他の部分もすべて、インコネルタイプの非磁性体または(たとえば316L、304Lまたは904Lタイプの)非磁性ステンレス鋼によって構成されており、ベアリング支持部30は自然に、17−4PHタイプの磁性ステンレス鋼または磁極片38を形成している強磁性ラミネーションに近い熱膨脹係数を有している材料で慣習的に作られ続ける。
【0025】
これらの材料をしたがって溶接することは、標準NACE MR0175/ISO 15156の推薦よりも大きい硬度の区域を作り出さず、その結果、H
2S、またはウェットCO
2と触れることに対する適合性が完全に残る。
【0026】
特に、ジャケット36は、一般に17−4PH磁性ステンレス鋼または同じ熱膨脹係数を有している任意の他の磁性鋼の磁性材料の第二のシリンダー36Bがその中に象眼されたインコネルタイプの非磁性体の第一のシリンダー36Aによって構成される。この象眼作業は、H
2SまたはウェットCO
2を包含し得るプロセスガスと接触しない第一のシリンダーの表面におこなわれる。さらに、この象眼は、磁気エアギャップをより小さくする結果を有している。仮にジャケットが0.5ミリメートル(mm)の一般的な厚さを有しているとし、また、磁気挿入物が0.4mmの一般的な厚さを有しているとした場合、機械的エアギャップは一般に0.8mmであるので、磁気エアギャップは、その中に象眼されたそのような磁気シリンダーを有していない非磁性ジャケットでは1.3mmであるのに対して、わずか0.9mmである。
【0027】
第二のシリンダーが第一に象眼されることを可能にするために、第二のシリンダーは有利に、複数の任意の隣接部分から構成される。
【0028】
さらに、
図1Bの詳細図に見れるように、ベアリングの磁極の間に配置された部分36Cは好ましくは磁性体でない(また、ジャケットの中を流れる渦電流を低減することによって通過帯域および損失の両方を改善するために、電気的に伝導性か、有利に非導電性である材料で作られる)のに対して、磁極に合った部分36Bは磁性体である。これは、先行技術に存在するような磁極における磁気抵抗短絡を回避しながら通過帯域とベアリングの耐荷力を増大させる役目をする。第二のシリンダーのこれらのさまざまな部分は、必要に応じて(たとえば接着剤やワニスによって)互いに電気的に絶縁されてよく、また、溶接によって、または接着剤によって第一のシリンダーに固定される。第二のシリンダー36B,36Cが単一の部品として作られる場合、それは有利に第一のシリンダー36Aとの締まりばめであり、アッセンブリーのこの形態は、第一のシリンダー36Aに溶接されるか粘着的に接合される非磁性体のクロージャーブッシング36Dの存在によって可能になっている(
図1を参照)。
【0029】
図1Aの拡大図に示されるように、溶接部42によって連結をする場合、硬化の主体であるそのような二つの材料の溶接部は、H
2SまたはウェットCO
2を包含しているプロセスガスに決して触れないので、もはや熱処理の必要がないことを認めるべきである。仮に周囲ガスに触れる内径を調節することが必要になる場合、プロセスガスに触れ得るのはインコネルとインコネルの溶接部だけであり、熱処理に頼る必要はやはりない。
【0030】
図1に見られるように、ベアリングの磁気回路38を密閉して閉塞するエンクロージャーの外側部分が非磁性体部分だけで作られ、したがって、やはり標準NACE MR0175/ISO 15156にしたがったまま、熱処理を必要とすることなく、また再作業を必要とすることなく、一緒に溶接されることが可能である利点が存在することを保証するために、側壁32および34は、支持体30に直接溶接されずに、(組み立ての前または後に適所に置かれる)支持体との締まりばめである非磁性体の外側壁またはヨーク44に溶接される。したがって、ヨークは、二つの材料、支持体と強磁性体ラミネーションの間の締まりばめであり、それらは、互いに非常に近い熱膨脹係数を有しており、したがって、温度の変動による熱膨張と独立して磁気ラミネーションの締まりばめを保存する(したがって、締まりばめによってもはや保持されない磁気コアの危険がない)。
【0031】
ヨーク44はただ、溶接部を圧迫し弱めるかもしれない径方向および長手方向膨張の両方による影響をまったく受けないために、(好ましくはコストの理由から巻かれて軸方向に溶接されたインコネルシートで作られた)インコネルシリンダーとして構成され得る。
【0032】
磁気エアギャップに合ったジャケット36は、インコネルなどの非磁性体だけをあらわにする。それは、いかなる熱処理を必要としない(電子ビーム(EB)、レーザー、タングステン不活性ガス(TIG)、その他)溶接によってエンクロージャーの壁32および34に溶接される。エンクロージャーの壁32および34は、316L非磁性ステンレス鋼または同様物、でなければ同様にインコネルのいずれかで作られ得、それらは同様に熱処理なしで同じ方法でヨーク44に溶接され得る。
【0033】
このように作られたアッセンブリーはそれから、溶接することなく、17−4PHまたは強磁性体ラミネーションに近い熱膨脹係数を有している材料の支持体30に締まりばめをされる。したがって、
図3に示される先行技術と比較して、溶接部の数が低減され、したがって漏れの危険が低減され、また、製造に要する時間とベアリングのコストが低減され、一方、その信頼性は相当に向上する。
【0034】
図2は、別の実施形態を示しており、側壁32および34は、もはやヨーク44に溶接されておらず、ファスナー手段46たとえばねじによって支持体30に固定されており、エンクロージャーは、支持体の適当な循環的な溝の中に装着された金属またはポリマーOリングガスケット48によってハーメチックにシールされている。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] H2SまたはウェットCO2を包含している腐食環境中で動作し、エアギャップによってローターから分離された複数の磁極片(38)を有している加圧回転機械のためのジャケット付き電磁機械ステーターであり、前記ステーターを前記腐食環境から保護するハーメチックシールエンクロージャーが、前記磁極片に合って配置された前記腐食環境に接触しない磁性体象眼(36B)を有している非磁性シリンダー(36A)によって構成されたジャケットを有しており、前記ハーメチックシールエンクロージャーは、どんな熱処理にもさらされなかった溶接部によって互いに固定される非磁性体(32,34,36A,44)で作られたパーツによってもっぱら外面的に構成されていることを特徴とする前記ステーター。
[2] 前記非磁性シリンダーはまた、前記磁極片の間に非磁性象眼(36C)を有していることを特徴とする[1]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[3] 前記非磁性象眼は、非導電性材料で作られていることを特徴とする[2]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[4] 前記ハーメチックシールエンクロージャーを形成するために、前記ステーターはまた、前記ジャケットに溶接された非磁性体の側壁(32,34)と、前記側壁に溶接された非磁性体で前記ハーメチックシールエンクロージャーの放射状の熱膨張を阻止することが可能であるステーター支持体(30)中の締まりばめのヨーク(44)を有していることを特徴とする[1]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[5] 前記ハーメチックシールエンクロージャーを形成するために、前記ステーターはさらに、前記ジャケットに溶接され、前記ステーター支持体(30)にファスナー手段(46)によって溶接されずに固定された非磁性体の側壁(32,34)を有しており、前記側壁と前記ステーター支持体の間のハーメチックシールは、一つ以上のOリングタイプ金属またはポリマーガスケット(48)によって得られることを特徴とする[1]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[6] 前記磁性体の象眼は、それ自体が磁気シリンダーを形成していることを特徴とする[1]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[7] 前記磁性体の象眼は、互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする[6]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[8] 前記磁気シリンダーは、前記非磁性シリンダー上の締まりばめであることを特徴とする[6]に記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[9] 前記磁性体の象眼は、前記非磁性シリンダーに溶接されていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかひとつに記載のジャケット付き電磁機械ステーター。
[10] 非前記磁性体の象眼は、前記非磁性シリンダーに粘着的に接合されていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかひとつに記載の電磁機械のジャケット付きシリンダー。
[11] 加圧回転機械のためのジャケット付き能動型磁気ベアリングまたは被覆電気モーターにおける[1]〜[10]のいずれかひとつに記載のジャケット付き電磁機械ステーターの使用。
[12] ターボエキスパンダーにおける[11]に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。
[13] コンプレッサーにおける[11]に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。
[14] 電気モーターにおける[11]に記載のジャケット付き能動型磁気ベアリングの使用。