(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133044
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/10 20060101AFI20170515BHJP
F26B 17/20 20060101ALI20170515BHJP
C02F 11/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
F26B17/10 Z
F26B17/20 B
C02F11/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-258950(P2012-258950)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105921(P2014-105921A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】塔本 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 幸助
【審査官】
長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−192063(JP,A)
【文献】
特開2010−210162(JP,A)
【文献】
特公昭47−051304(JP,B1)
【文献】
特公昭43−006291(JP,B1)
【文献】
特開2004−347215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/10
F26B 17/20
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を気流搬送する気流搬送路と、
熱交換器と、
供給口から供給される被乾燥物を水分調整しながら撹拌軸により撹拌搬送する撹拌搬送経路を備える撹拌機と、
上記撹拌機で撹拌搬送された上記被乾燥物を上記気流搬送路により気流搬送し、上記熱交換器により乾燥させる気流式乾燥機とを備えた乾燥装置であって、
上記撹拌軸は、水平に延び、
上記撹拌搬送経路の下流側に形成された流入空間に接続され、該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物を上記撹拌機の排出口から上記気流搬送路に送り込む気流搬送用ダクトを備えており、
上記撹拌搬送経路の下流に被乾燥物を堰き止める堰板を備え、
上記流入空間は、上記堰板のさらに下流側に形成され、該堰板を超えて該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物が上記気流搬送路に送り込まれる
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載された乾燥装置において、
上記気流搬送用ダクトは、上記撹拌機における上記流入空間側方の側面に接続され、
上記排出口は、上記流入空間上方に形成されており、
上記被乾燥物は、上記気流搬送用ダクトから上記流入空間に流入した搬送気流により上記排出口へ搬送されるように構成されている
とを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
請求項1に記載された乾燥装置において、
上記排出口は、上記撹拌機における上記流入空間下方に形成され、
上記気流搬送用ダクトは、上記排出口に接続されて該排出口から落下してきた上記被乾燥物を気流搬送するように構成されている
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
被乾燥物を気流搬送する気流搬送路と、
熱交換器と、
供給口から供給される被乾燥物を水分調整しながら撹拌軸により撹拌搬送する撹拌搬送経路を備える撹拌機と、
上記撹拌機で撹拌搬送された上記被乾燥物を上記気流搬送路により気流搬送し、上記熱交換器により乾燥させる気流式乾燥機とを備えた乾燥装置であって、
上記撹拌軸は、水平に延び、
上記撹拌機の排出口の下流側に形成された流入空間に接続され、該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物を上記気流搬送路に送り込む気流搬送用ダクトを備えている
ことを特徴とする乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌機から気流搬送で熱交換器へ被乾燥材料を導入する乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の湿潤材料を乾燥させる乾燥装置として、供給機から被乾燥物が供給される撹拌機と、撹拌機から気流搬送された被乾燥物を乾燥させる気流式乾燥機と、気流式乾燥機から排出される乾燥物と気流とを分離する固気分離手段とを備え、この固気分離手段によって分離された乾燥物の一部を水分調整用の乾燥物として供給機に循環させる一方、残りを処理済み乾燥物として系外へ排出することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−210162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような乾燥装置の被乾燥物には様々なものがあるが、付着力の強い材料の場合は固有の問題が発生することが判明した。つまり、撹拌機で上方に跳ね上げられた被乾燥物が撹拌機内面に付着する。そして、一度付着しても、大抵の場合は時間とともに落下するが、中には付着したまま完全に乾燥してしまうものがある。このような乾燥した被乾燥物は比較的大きい塊の状態で剥がれ落ち、そのまま搬送されてしまうため、下流の熱交換器で目詰りを起こす等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乾燥装置において、簡単な方法で撹拌機内での被乾燥物の乾燥を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、撹拌機内で撹拌搬送経路と気流搬送路とを交差させないようにした。
【0007】
具体的に、第1の発明は、被乾燥物を気流搬送する気流搬送路と、
熱交換器と、
供給口から供給される被乾燥物を水分調整しながら
撹拌軸により撹拌搬送する撹拌搬送経路を備える撹拌機と、
上記撹拌機で撹拌搬送された上記被乾燥物を上記気流搬送路により気流搬送し、上記熱交換器により乾燥させる気流式乾燥機とを備えた乾燥装置を対象とする。
【0008】
そして、上記乾燥装置は、
上記撹拌軸は、水平に延び、
上記撹拌搬送経路の下流側に形成された流入空間に接続され、該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物を
上記撹拌機の排出口から上記気流搬送路に送り込む気流搬送用ダクトを備えている。
【0009】
上記の構成によると、流入空間に流れ込んだ被乾燥物が気流搬送用ダクトによって送り込まれる搬送気流により気流搬送路に送り込まれる。このとき、搬送用気流は流入空間から気流搬送路へと流れるので、搬送用気流が撹拌中の被乾燥物に接触せず、被乾燥物が必要以上に乾燥して撹拌機内面に付着するのが防止される。
【0010】
第1の発明では、さらに、
上記撹拌搬送
経路の下流に被乾燥物を堰き止める堰板を備え、
上記流入空間は、上記堰板のさらに下流側に形成され、該堰板を超えて該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物が上記気流搬送路に送り込まれる。
【0011】
上記の構成によると、撹拌機内の撹拌搬送経路と、気流搬送用ダクトと連通する流入空間とを堰板で区切っているので、搬送用気流が撹拌中の被乾燥物に接触せず、被乾燥物が必要以上に乾燥して撹拌機内面に付着するのが確実に防止される。
【0012】
第
2の発明は、上記第
1の発明に加え、
上記気流搬送用ダクトは、上記撹拌機における上記流入空間側方の側面に接続され、
上記排出口は、上記流入空間上方に形成されており、
上記被乾燥物は、上記気流搬送用ダクトから上記流入空間に流入した搬送気流により上記排出口へ搬送されるように構成されている。
【0013】
上記の構成によると、流入空間に流入した搬送気流は、堰板を超えることなく排出口へ流れるので、被乾燥物を押し上げて排出口へ送り込む。
【0014】
第
3の発明は、上記第
1の発明に加え、
上記排出口は、上記撹拌機における上記流入空間下方に形成され、
上記気流搬送用ダクトは、上記排出口に接続されて該排出口から落下してきた上記被乾燥物を気流搬送するように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、堰板を超えた被乾燥物が流入空間を落下して排出口を通って気流搬送用ダクト側へ流れ込み、気流搬送される。このため、気流搬送用ダクトから撹拌搬送経路へ搬送用気流が入り込まない。
【0016】
第4の発明は、上記第1の発明と同様の乾燥装置を対象とし、
上記乾燥装置は、
上記撹拌軸は、水平に延び、
上記撹拌機の排出口の下流側に形成された流入空間に接続され、該流入空間に流れ込んだ上記被乾燥物
を上記気流搬送路に送り込む気流搬送用ダクトを備えている。
【0017】
上記の構成によると、流入空間に流れ込んだ被乾燥物が気流搬送用ダクトによって送り込まれる搬送気流により気流搬送路に送り込まれる。このとき、搬送用気流は流入空間から気流搬送路へと流れるので、搬送用気流が撹拌中の被乾燥物に接触せず、被乾燥物が必要以上に乾燥して撹拌機内面に付着するのが防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥装置において、
水平に延びる撹拌軸を有する撹拌機内部の撹拌搬送経路の下流側に流入空間を形成し、この流入空間に気流搬送用ダクトを接続したことにより、簡単な方法で撹拌機内での被乾燥物の乾燥を防ぎ、被乾燥物が撹拌機内に付着するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本実施形態における乾燥装置を示す概略構成図である。
【
図3】その他の実施形態における乾燥装置を示す
図1相当図である。
【
図4】さらに別の実施形態における乾燥装置を示す
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図2は、本実施形態における乾燥装置1を示す概略構成図である。
図1は、乾燥装置1における撹拌機12を拡大して示す断面図である。
【0022】
乾燥装置1は、汚泥等の湿潤材料である被乾燥物Aを乾燥させる装置であって、
図2に示すように、供給機11と、撹拌機12と、第1及び第2気流搬送路13,14と、気流式乾燥機15と、固気分離手段である循環サイクロン17及び排出サイクロン18と、循環ファン19とを備えている。
【0023】
供給機11は、投入された被乾燥物Aをスクリュー搬送して撹拌機12に供給するように構成されている。
【0024】
撹拌機12は、供給機11の下方に配置され、供給機11から供給された被乾燥物Aを撹拌するための撹拌軸21を有している。撹拌機12の両端上面には、供給口12aと排出口12bとがそれぞれ形成されている。供給口12aには、供給機11から延びる材料供給用ダクト11aと、循環サイクロン17からの水分調整用乾燥物B1を供給する乾燥物搬送用ダクト23とが接続されている。そうして、撹拌機12は、供給口12aに供給された被乾燥物Aを、同じく供給口12aに供給された水分調整用乾燥物B1と共に撹拌羽根21aで撹拌及び混合し、その水分を調整しながら搬送するようになっている。なお、詳細は図示しないが、撹拌機12は、撹拌軸21を支持するためのベアリングと、撹拌軸21を回転させるためのモータとを備えている。
【0025】
そして、撹拌機12内部の下流側には、撹拌軸21の一端を支持すると共に、被乾燥物Aを堰き止める堰板40が設けられている。堰板40で仕切られた下流側(言い換えれば、排出口12bの真下付近)は、搬送用気流Cが流入する空洞の流入空間41となっている。なお、流入空間41側には、撹拌軸21が延びていてもよく、また、流入空間41内にも撹拌羽根21aがあってもよい。
【0026】
気流搬送用ダクト22は、撹拌機12の側面(具体的には
図2の背面)から流入空間41に接続されている。また、撹拌機12における搬送方向下流側には、上下方向に延びるダクトにより構成された第1気流搬送路13の下端が接続されている。
【0027】
被乾燥物Aは、堰板40に達する頃にはすでに適当な水分量に調整されており、最後は撹拌羽根21aにかきあげられて堰板40を超えて流入空間41に到達し、その後は、気流搬送用ダクト22から流入する搬送用気流Cによって上昇し、排出口12bから排出され、この撹拌機12により水分が調整された被乾燥物Aが、搬送用気流Cと共に第1気流搬送路13に供給されるようになっている。第1気流搬送路13では、被乾燥物Aが搬送用気流Cと共に気流搬送される。
【0028】
第1気流搬送路13の下流側である上端は、上下方向に延びる気流式乾燥機15の下端に接続されている。気流式乾燥機15は、所定の間隔で複数の放熱板が形成された熱交換器16を有している。本実施形態における熱交換器16は、放熱板がプレート状であるプレート式の熱交換器16となっている。そして、上昇する被乾燥物Aを複数のプレートの間に流通させることにより、被乾燥物Aを熱交換器16により乾燥させるようになっている。その結果、乾燥した被乾燥物Aは乾燥物B1,B2となる。
【0029】
気流式乾燥機15の上端には、ダクトからなる第2気流搬送路14の一端が接続されている。第2気流搬送路14の他端側は分岐しており、循環サイクロン17及び排出サイクロン18にそれぞれ接続されている。そうして、気流式乾燥機15により乾燥された乾燥物B1,B2の一部である水分調整用乾燥物B1が搬送用気流Cと共に循環サイクロン17に導入される一方、上記乾燥物B1,B2のうち水分調整用乾燥物B1以外の部分である処理済み乾燥物B2が搬送用気流Cと共に排出サイクロン18に導入されるようになっている。
【0030】
排出サイクロン18は、処理済み乾燥物B2と搬送用気流Cとを分離するように構成されている。分離された処理済み乾燥物B2は製品として搬出される一方、分離された搬送用気流Cは循環ファン19へ吸い込まれる。
【0031】
循環サイクロン17は、撹拌機12よりも上方に配置されており、水分調整用乾燥物B1と搬送用気流Cとを分離するように構成されている。そして、分離した水分調整用乾燥物B1を乾燥物搬送用ダクト23を介して下方の撹拌機12に供給する一方、分離された搬送用気流Cを循環ファン19へ吸い込ませるようになっている。
【0032】
循環ファン19は、循環サイクロン17及び排出サイクロン18から排出された搬送用気流Cを吸引して、その一部をバグフィルタ25へ供給する一方、残りの搬送用気流Cを撹拌機12の流入空間41へ気流搬送用ダクト22を介して供給するように構成されている。
【0033】
バグフィルタ25に供給された搬送用気流Cは、凝縮器26及びファン27を通じて脱臭炉28へ供給されるようになっている。脱臭炉28で脱臭されたガスは気流式乾燥機15へ供給される。また、気流式乾燥機15内の搬送用気流Cの一部は排気される。
【0034】
−実施形態の効果−
従来は、気流搬送用ダクト22は供給口12a付近に接続され、気流は撹拌機12上部の空間を通って撹拌機12排出口12bから送出されるように構成されていた。しかし、本実施形態のようにすれば、搬送用気流は、撹拌機12において、一度流入空間41に流れ込み、その後排出口12bへ向かって堰板40を超えた被乾燥物Aと共に流出するため、気流が撹拌中の被乾燥物Aにほとんど触れることがなく、予期せず被乾燥物Aを乾燥させることがない。
【0035】
さらに、気流搬送用ダクト22を流入空間側方となる背面に接続すればよいので、撹拌軸21の長手方向に設ける場合に比べ、長手方向の長さが長くならず、配管が容易でスペースを削減できる。
【0036】
したがって、本実施形態では、撹拌機12内の撹拌搬送経路と、第1気流搬送路13と連通する流入空間41とを堰板40で区切っているので、搬送用気流が撹拌中の被乾燥物Aに接触せず、被乾燥物Aが必要以上に乾燥して撹拌機12の内面に付着するのが防止される。
【0037】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、気流搬送用ダクト22は、撹拌機12の背面に接続したが、これに限定されず、流入空間41に接続されていればよい。例えば、排出口12b付近の上面や撹拌機12の長手方向末端でもよい。この場合は、気流が撹拌機12を逆流する可能性もあるため、バッフル板等で気流を排出口12bへ誘導するとよい。
【0038】
また、
図3に示すように、排出口112bを流入空間141の下方に設け、この排出口112bに撹拌後の被乾燥物Aを落下させるようにしてもよい。この場合、気流搬送用ダクト22は撹拌機12の下部に配置し、排出口112bと合流して被乾燥物Aを第1気流搬送路13に搬送するようにすればよい。流入空間141には、搬送気流が入り込まないので、上記実施形態よりもさらに気流搬送用ダクト22から撹拌搬送経路へ搬送用気流が入り込むのを防止することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、堰板40は撹拌機12の内部に配置したが、
図4にさらに別の実施形態における撹拌機212を示すように、堰板40に代えて下流側の撹拌機ケーシングに被乾燥物の排出口212bを設け、排出口212bと連通する流入空間241を撹拌機212の外部に設けてもよい。なお、同図では、流入空間241が気流搬送用ダクト22内に形成されているが、排出口212bと気流搬送用ダクト22との間に流入空間241を設けてもよい。
【0040】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、各実施形態に記載された技術的特徴は、互いに組合せ可能であり、組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、撹拌機から気流搬送で熱交換器へ材料を導入する乾燥装置について有用である。
【符号の説明】
【0042】
A 被乾燥物
B1 水分調整用乾燥物
B2 処理済み乾燥物
C 高温ガス
1 乾燥装置
11 供給機
12 撹拌機
12a 供給口
12b 排出口
13 第1気流搬送路
14 第2気流搬送路
15 気流式乾燥機
16 熱交換器
17 循環サイクロン
18 排出サイクロン
19 循環ファン
21 撹拌軸
21a 撹拌羽根
22 気流搬送用ダクト
23 乾燥物搬送用ダクト
25 バグフィルタ
26 凝縮器
27 ファン
28 脱臭炉
40 堰板
41 流入空間
112b 排出口
141 流入空間
212 撹拌機
212b 排出口
241 流入空間