【実施例】
【0063】
以下、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
(a)ベータアミロイド凝集体の調製
ベータアミロイドタンパク質(商品名:ヒト 1−42、ペプチド研究所製)をジメチルスルホキシドで5mmol/Lとなるように溶解し、さらに10mmol/Lの塩酸を用いて、ベータアミロイドタンパク質の濃度が100μmol/Lとなるように希釈した。得られたベータアミロイドタンパク質の調製液は、インキュベータを用いて37℃でインキュベートした。上記インキュベートを行うことによって、ベータアミロイド凝集体を含む試料(以下、ベータアミロイド凝集体サンプルという場合がある)を調製した。ベータアミロイド凝集体の量を調整するため、インキュベートの時間が0分、20分、40分、60分、80分又は100分である上記試料をそれぞれ準備した。すなわちインキュベートの時間が0分である試料には凝集体が存在せず、インキュベートの時間が増えるに従って凝集体の量が増加し、インキュベートの時間が100分である試料が最も凝集体の量が多い試料となる。
【0065】
(b)ベータアミロイド凝集体の染色
ベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、5μmol/LのチオフラビンT溶液(溶媒:50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。
【0066】
(c)染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光減衰曲線の測定
(a)及び(b)の操作で得られた、インキュベートの時間(以下、凝集時間という場合がある)が0分〜100分であるベータアミロイド凝集体サンプルから調製された染色試料を、それぞれ1cm角の石英セルに1000μL分注した。その後、蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、商品名Quantaurus−Tau)を用いて、励起波長405nm、観測波長500nmで、蛍光減衰曲線の測定を行った。測定された蛍光減衰曲線を
図2に示す。
図2において、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ、凝集時間が0分、20分、40分、60分、80分及び100分であるベータアミロイド凝集体サンプルを用いたときの蛍光減衰曲線を示す。
【0067】
(d)蛍光減衰曲線の解析によるベータアミロイド凝集体の定量
得られたそれぞれの減衰曲線F(t)は、非特許文献2に従い以下の手順で、固有の蛍光寿命値と重み因子とを持つ複数の蛍光成分に分離した。
【0068】
まず、数式(I)で表される関数G(t)を、数式(II)にしたがってコンボリューション積分し、関数I(t)を得た。数式(II)において、E(t)は蛍光寿命測定装置の装置応答関数、Cはバックグラウンドである。次に、上記I(t)と、測定された蛍光減衰曲線F(t)とを比較し、両関数が最も良く一致するように、数式(III)におけるχ
2を最小にする変数の組み合わせを探索した。上記探索を行うことによって、数式(I)におけるτ
1〜τ
n、A
1〜A
nの最良の組み合わせを得た。数式(III)において、n
1は解析の開始時間、n
2は解析の終了時間を示す。
【0069】
この解析の結果によって得られたτ
1〜τ
nが各蛍光成分の寿命、A
1〜A
nが各蛍光成分の重み因子、すなわち蛍光成分の量である。
【0070】
【数2】
【0071】
nの値は、すなわち減衰曲線の解析に必要な指数関数の数を示す成分数と呼ばれる数値である。各成分は違う物理的機構及び/又は蛍光種を起源とする。本実施例において、これらの成分は、蛍光寿命測定装置の特性、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光、チオフラビンTの自家蛍光、及びそれ以外の蛍光成分を起源としており、成分数nは試料の状態によって適意に決定する必要がある。
【0072】
チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体、及びチオフラビンTの自家蛍光の蛍光寿命値が既知である場合、これらの蛍光寿命値を定数として数式(I)に適用する。計測装置が理想的な場合、蛍光減衰曲線は上記2成分で解析できるはずであるが、計測装置の特性に由来する見かけの成分、及びチオフラビンT以外の蛍光成分があるため、実際にはこれらの成分を含めた3成分以上の成分数で解析を行った。
【0073】
チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値τ
4を1.8ns、チオフラビンTの自家蛍光の蛍光寿命値τ
3を6.6nsとしたときの、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の重み因子A
4(第一の重み因子)の変化を
図3に示す。
【0074】
重み因子A
4は、すなわちチオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の量を示すものである。
図3は、凝集の進行に従って重み因子A
4が増えていることを示しており、本手法によってベータアミロイド凝集体の量を定量できることを示すものである。
【0075】
凝集時間が0分であるときにおける重み因子A
4を1とした場合の、重み因子A
4の凝集時間に対する変化を
図4に示す。同じ試料において、凝集時間が0分であるときの全蛍光量を1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、ベータアミロイド凝集体の増加による計測値(重み因子A
4)の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。すなわち、本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。さらに
図4によれば、計測値の増分は、本手法の方が従来の方法よりも大きく、ベータアミロイド凝集体をより高感度に検出できることを示している。なお上述の減衰曲線の解析方法については、非特許文献2による一般的な解析方法を適用したものであり、本実施例によって、より高度な解析方法の適用を妨げるのではない。
【0076】
実施例2
本実施例は、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値が未知であった場合のベータアミロイド凝集体の定量手法について記載するものである。なお本実施例は、蛍光寿命値が未知である場合の解析方法の一例であり、より高度な解析方法の適用を妨げるものではない
【0077】
ベータアミロイド凝集体の調製、ベータアミロイド凝集体の染色、及び染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光減衰曲線の測定は、実施例1に準じて行った。
【0078】
本実施例においては、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値が未知であることから、解析における成分数n、及びチオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体からの蛍光の寿命を以下に示す手順を用いて決定した。
【0079】
蛍光物質によって染色された凝集体の蛍光寿命値が未知である場合の解析の手順(1)
手順1:凝集時間が0分である染色試料の蛍光減衰曲線について必要かつ十分な成分数nで解析する。
手順2:解析の結果得られた蛍光寿命値τ
1〜τ
nを定数とする。
手順3:凝集時間が0分を超えている染色試料の蛍光減衰曲線について、成分数n+1で解析する。
手順4:解析の結果、得られた蛍光寿命値τ
n+1、及び重み因子A
n+1を蛍光物質によって染色された凝集体の蛍光寿命値と量とする。
【0080】
以下、手順(1)に従い、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値の決定と定量方法とを具体的に説明する。
【0081】
まず、ベータアミロイドタンパク質のモノマー(以下、ベータアミロイドモノマーという場合がある)である凝集時間が0分である試料の蛍光減衰曲線について、上述した数式(I)〜(III)を用いて解析を行った。解析を行うにあたり成分数nは任意であるが、I(t)とF(t)とが最も良く一致するのに必要な最低限の数とした。
【0082】
このベータアミロイドモノマー試料においては、ベータアミロイド凝集体に由来する蛍光成分は存在しないはずなので、ここで決定されたn個の成分は、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光以外からの蛍光成分、すなわち上述した蛍光寿命測定装置の特性由来する見かけの蛍光成分、チオフラビンTの自家蛍光に由来する蛍光成分、及び不純物等、それ以外のものに由来する蛍光成分の3成分である。
【0083】
次に、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体が存在すると思われる、凝集時間が20分以上である試料から得られた蛍光減衰曲線について、ベータアミロイド凝集体に由来する蛍光成分として新たに成分を追加、すなわち4成分で解析を行った。この解析において、ベータアミロイド凝集体以外の蛍光成分は、ベータアミロイドモノマー試料で得られた3個の蛍光寿命値(τ
1〜τ
3)として全て既知であるため、これら既知の蛍光寿命値を定数として解析した。この解析の結果、得られた蛍光寿命値τ
4が、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値であり、その重み因子A
4がベータアミロイド凝集体の量となる。
【0084】
上記解析手法において、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体で得られた蛍光減衰曲線のそれぞれについて、上記解析を個別に行ってもよい。別の解析手法として以下の手順(2)で行ってもよい。
【0085】
蛍光物質によって染色された凝集体の蛍光寿命値が未知である場合の解析の手順(2)
手順1:凝集時間が0分である染色試料の蛍光減衰曲線について必要かつ十分な成分数nで解析する。
手順2:解析の結果得られた蛍光寿命値τ
1〜τ
nを定数とする。
手順3:十分に凝集が進行した染色試料の蛍光減衰曲線について、成分数n+1で解析する。
手順4:解析の結果、得られた寿命値τ
n+1を凝集体の蛍光寿命値として、同様に定数とする。
手順5:十分に凝集が進行した染色試料以外の染色試料について、τ
1〜τ
n+1を定数として解析する。
手順6:解析の結果、得られた重み因子A
n+1を蛍光物質によって染色された凝集体の量とする。
【0086】
まず、上記手順(2)に従い、ベータアミロイド凝集体が最も多いと思われる、凝集時間が100分である試料について最初に解析を行い、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体からの蛍光寿命値τ
n+1を求める。凝集時間が異なる他の試料を用いた減衰曲線については、この値(τ
n+1)をチオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の既知の蛍光寿命として解析すれば、正確かつ迅速に解析を行うことができる。以下、具体的に説明する。
【0087】
本実施例において、まずベータアミロイドモノマーに相当する凝集時間が0分である試料は、n=3、すなわち3成分で解析された。
【0088】
次にτ
1〜τ
3の値を固定して、凝集時間が100分である試料の蛍光減衰曲線を、4成分、すなわちτ
4及びA
1〜A
4を変数として解析し、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値τ
4とこの試料における凝集体の量A
4とを求めた。
【0089】
最後に凝集時間が異なる他の凝集体試料について、τ
1〜τ
4を定数としA
1〜A
4のみを変数として解析することによって、それぞれの凝集体の量を示すA
4を決定した。
【0090】
本実施例の方法によって決定された、チオフラビンTによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値τ
4は1.6nsとなった。凝集体の量を示す重み因子A
4の凝集時間に対する経時変化は、
図3と同じであり、本手法によってもベータアミロイド凝集体の定量が可能であることが示された。
【0091】
本実施例によれば、チオフラビンT等の蛍光物質によって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値が未知であっても、ベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値を決定することができると共に、ベータアミロイド凝集体の定量が可能である。
【0092】
実施例3
本実施例は蛍光物質として、チオフラビンTの類縁化合物であるチオフラビンSを適用した例である。ベータアミロイド凝集体は、実施例1に記載の方法で調製した。
【0093】
このベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、5μmol/LのチオフラビンS溶液(溶媒:50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。上記染色試料は、実施例1に記載の方法によって蛍光寿命値の計測を行った。得られた蛍光減衰曲線を
図5に示す。
図5において、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ、凝集時間が0分、20分、40分、60分、80分及び100分であるベータアミロイド凝集体サンプルを用いたときの蛍光減衰曲線を示す。
【0094】
この減衰曲線を用いて、実施例2に記載の方法で解析を行った結果、チオフラビンSによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値は4.5nsとなった。凝集時間が0分である凝集体の重み因子を1とした場合の、凝集体の重み因子の凝集時間に対する変化を
図6に示す。同じ試料における全蛍光量について、凝集時間が0分であるときを1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、凝集体の増加による計測値の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。さらに
図6によれば、値の増分は本手法の方が従来の方法に比べてより大きく、凝集体をより高感度に検出できることが示された。
【0095】
本実施例によれば、チオフラビンSのような自家蛍光が比較的強い蛍光物質であっても、凝集体の定量が可能となる。また本手法が、チオフラビン系色素一般に適用できることも本実施例によって示された。
【0096】
実施例4
本実施例は蛍光物質として、アミロイドを認識するための蛍光試薬として用いられる、1−フルオロ−2,5−ビス(3−カルボキシ−4−ヒドロキシスチリル)ベンゼン(FSB)を適用した例である。FSBは、アミロイド染色色素として古くから用いられているコンゴーレッドの類縁化合物であり、コンゴーレッドより強い蛍光強度を持つアミロイド認識蛍光試薬として知られている。ベータアミロイド凝集体は、実施例1に記載の方法で調製した。
【0097】
このベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、1%(w/v)FSB溶液(溶媒:DMSO)の4000倍希釈液(希釈液:50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。上記染色試料は、実施例1に記載の方法によって蛍光寿命の計測を行った。得られた蛍光減衰曲線を
図7に示す。
図7において、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ、凝集時間が0分、20分、40分、60分、80分及び100分であるベータアミロイド凝集体サンプルを用いたときの蛍光減衰曲線を示す。
【0098】
この減衰曲線を用いて、実施例2に記載の方法で解析を行った結果、FSBによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値は2.33nsとなった。凝集時間が0分である凝集体の重み因子を1とした場合の、凝集体の重み因子の凝集時間に対する変化を
図8に示す。同じ試料における全蛍光量について、凝集時間が0分であるときを1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、凝集体の増加による計測値の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。さらに
図8によれば、値の増分は本手法の方が従来の方法に比べてより大きく、凝集体をより高感度に検出できることが示された。
【0099】
本実施例によれば、FSBのようなチオフラビンTとは別の骨格を持つアミロイド認識蛍光試薬であっても、凝集体の定量が可能となる。さらに本手法が、一般的なアミロイド認識蛍光試薬に適用できることも本実施例より示された。
【0100】
実施例5
本実施例は蛍光物質として、粘性蛍光プローブとして有名な8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸(ANS)を適用した例である。ANSはアミロイド染色にはあまり用いられないが、溶媒の粘性等によって分子の運動が抑制されると蛍光強度が増強するという、チオフラビンTと同じ発蛍光機構を持つ化合物である。ベータアミロイド凝集体は、実施例1に記載の方法で調製した。
【0101】
このベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、5μmol/LのANS溶液(溶媒:50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。上記染色試料は、実施例1に記載の方法で蛍光寿命計測を行った。ただし、本実施例においては観測波長を435nmに設定して測定を行った。得られた蛍光減衰曲線を
図9に示す。
図9において、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ、凝集時間が0分、20分、40分、60分、80分及び100分であるベータアミロイド凝集体サンプルを用いたときの蛍光減衰曲線を示す。
【0102】
この減衰曲線を用いて、実施例2に記載の方法で解析を行った結果、ANSによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値は0.88nsとなった。凝集時間が0分である凝集体の重み因子を1とした場合の、凝集体の重み因子の凝集時間に対する変化を
図10に示す。同じ試料における全蛍光量について、凝集時間が0分であるときを1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、凝集体の増加による計測値の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。
【0103】
ANSは粘性によって蛍光スペクトルが大きくシフトすることが知られており、シフト前とシフト後の蛍光強度比を求めることで、蛍光量より鋭敏に蛍光変化を計測することができる。この蛍光比による凝集体の計測の結果も
図10中に点線で示した。
図10によれば、値の増分は、従来から用いられている蛍光量又は蛍光比による計測よりも本手法の方がより大きく、凝集体をより高感度に検出できることが示された。
【0104】
なおANSにおいては、他の蛍光色素と異なり、凝集時間が40分以上である試料中の凝集体の量が単調に増加していない。これはANSとベータアミロイド凝集体とが他の蛍光物質とは異なる結合様式を持っているために起こる現象であり、本手法に由来するものではない。本実施例によれば、ANSのようなチオフラビンTと同じ発蛍光機構を持つ化合物であっても、凝集体の定量が可能となる。
【0105】
実施例6
本実施例は蛍光物質として、チオフラビンTの骨格を参考に設計されたPET用ベータアミロイド標識試薬である6−(2−フルオロエトキシ)−2−(4−メチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール(BF−168)を適用した例である。ベータアミロイド凝集体は、実施例1に記載の方法で調製した。
【0106】
このベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、5μmol/LのBF−168溶液(溶媒:0.05[vol]%のDMSOを含む、50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。
【0107】
染色試料は、実施例1に記載の方法で蛍光寿命計測を行った。ただし、本実施例においては観測波長を480nmに設定して測定を行った。得られた蛍光減衰曲線を用いて、実施例2に記載の方法で解析を行った結果、BF−168によって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値は4.5nsとなった。凝集時間が0分である凝集体の重み因子を1とした場合の、凝集体の重み因子の凝集時間に対する変化を
図11に示す。同じ試料における全蛍光量について、凝集時間が0分であるときを1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、凝集体の増加による計測値の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。さらに
図11によれば、値の増分は本手法の方が従来の方法に比べてより大きく、凝集体をより高感度に検出できることを示している。
【0108】
本実施例によれば、BF−168のような、PET計測用として設計された標識試薬であっても、凝集体の定量が可能となる。本手法が、PET用ベータアミロイド標識試薬一般に適用できることも本実施例よって示された。
【0109】
実施例7
本実施例は蛍光物質として、スチルベン系の骨格を持つベータアミロイド標識試薬であるレスベラトロールを適用した例である。ベータアミロイド凝集体は、実施例1に記載の方法で調製した。
【0110】
このベータアミロイド凝集体サンプル10μLに、5μmol/Lのレスベラトロール溶液(溶媒:50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液、pH9.0)990μLを混合して染色試料とした。上記染色試料は、実施例1に記載の方法で蛍光寿命の計測を行った。得られた減衰曲線を用いて、実施例2に記載の方法で解析を行った結果、レスベラトロールによって染色されたベータアミロイド凝集体の蛍光寿命値は4.5nsとなった。凝集時間が0分である凝集体の重み因子を1とした場合の、凝集体の重み因子の凝集時間に対する変化を
図12に示す。同じ試料における全蛍光量について、凝集時間が0分であるときを1とした場合の相対比率も同時に示した。本手法の結果に関して、凝集体の増加による計測値の増加は、蛍光強度の増加と一致した傾向を示した。本手法による計測値が蛍光量を評価する方法と本質的に同じ情報を与えることが示された。さらに
図12によれば、値の増分は本手法の方がより大きく、凝集体をより高感度に検出できることを示している。
【0111】
本実施例によれば、レスベラトロールのような、スチルベン系の骨格を持つベータアミロイド標識試薬であっても、凝集体の定量が可能となる。さらに本手法が、スチルベン系ベータアミロイド標識試薬一般に適用できることも本実施例によって示された。