特許第6133068号(P6133068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133068
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20170515BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-15291(P2013-15291)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-145961(P2014-145961A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201248
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】石坂 亮
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−075107(JP,A)
【文献】 特開2014−115456(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0160580(US,A1)
【文献】 米国特許第08599495(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の像を固体撮像素子上に結像させるための7枚で構成される固定焦点の撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、
光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズと、
正の屈折力を有する、少なくとも1面が非球面の第4レンズと、
光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第5レンズと、
正の屈折力を有する、両面が非球面の第6レンズと、
光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第7レンズを、
それぞれ接合せずに配置して構成されることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1レンズは、光軸近傍でメニスカス形状であり、レンズ周辺部において、両面ともに物体側に湾曲する非球面形状が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(1)50<νd1<60
(2)50<νd2<60
(3)20<νd3<30
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッべ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッべ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッべ数
【請求項4】
以下の条件式(4)、(5)を満足することを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
(4) 50<νd4<60
(5) 20<νd5<30
ただし、
νd4:第4レンズのd線に対するアッべ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッべ数
【請求項5】
前記第4レンズは、光軸近傍で両凸形状であり、像面側の面は周辺部で凹面に変化する非球面形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第6レンズは、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、物体側の面および像面側の非球面は変極点を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第7レンズの像面側の面は変極点を有する非球面形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
以下の条件式(6)、(7)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(6) 0.55<f12/f<0.88
(7) −1.2<f3/f<−0.7
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関し、特に、高機能化が進むスマートフォンや携帯電話機およびPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末機器等、更には、ゲーム機やPCなどの情報端末機器等に搭載される撮像装置に内蔵する撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表されるタブレット型多機能端末等の市場は益々拡大しており、搭載されるカメラは、例えば8メガピクセルを超える高画素に対応した、高性能、高品質なものであることが一般化しつつある。このような高画素化への流れは、今後も加速すると予測され、撮像装置に内蔵する撮像レンズも、更なる高画素化に対応した高性能でありながら、薄型化された製品のデザインに対応した小型なサイズであることも要求されている。更に、撮像素子の小型化と高画素化に伴って画素サイズは益々小さなものになるため、明るいレンズ系であることも強く望まれるようになっている。
【0003】
このような高性能化、小型化への流れに対応する撮像レンズとして、従来多く提案されてきた4枚構成に加えて、5枚構成、6枚構成も提案されるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、物体側から順に、物体側の面が凸形状の正の第1レンズと像面側に凹面を向けた負のメニスカス形状の第2レンズと像面側に凸面を向けた正のメニスカス形状の第3レンズと両面が非球面形状で光軸近傍において像面側の面が凹形状の負の第4レンズと両面が非球面形状の正または負の第5レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から物体側に凸状の第1レンズを含む第1レンズ群、結像面側に凹状の第2レンズを含む第2レンズ群、物体側に凹状のメニスカス形状の第3レンズを含む第3レンズ群、物体側に凹状のメニスカス形状の第4レンズを含む第4レンズ群、及び物体側に変曲点を有する非球面が配されたメニスカス形状の第5レンズを含む第5レンズ群を備えた撮像レンズ系、及び当該レンズ系の物体側に、僅かに凸状のレンズ面を有し像面側に僅かに凹状のレンズ面を有する正のパワーのレンズを配置した6枚から構成される撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−264180号公報
【特許文献2】特開2011−085733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の撮像レンズは、5枚構成において、レンズ材料およびレンズの面形状を最適化することで、軸上色収差および倍率色収差の補正効果を得、高画素化に対応した高性能の撮像レンズ系を実現している。しかし、光学全長は8mm前後で長く、薄型化が進む装置への適用には課題が残る。また、F値は2.8程度であり、近年要求されている、明るいレンズ系に十分に対応することはできない。
【0008】
また、上記特許文献2には、高解像力を備えた5枚および6枚構成の撮像レンズが開示されており、光学全長は5枚構成の撮像レンズで6mm程度、6枚構成の撮像レンズで6.6mm程度と、比較的薄型化への対応が実現されている。しかし、F値は2.8程度であり、この文献においても、近年要求されている高解像度と明るいレンズ系を同時に満足することは困難である。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低F値であっても、諸収差が良好に補正された高性能なレンズ系の実現と、構成枚数を増やしても、従来より薄型化が可能な撮像レンズを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、被写体の像を固体撮像素子上に結像させるための7枚で構成される固定焦点の撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する、少なくとも1面が非球面の第4レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第5レンズと、正の屈折力を有する、両面が非球面の第6レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第7レンズを、それぞれ接合せずに配置して構成する。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、従来多く提案されてきた撮像レンズに対して、構成するレンズの枚数が多い。構成枚数を増やせば、高性能化に有利になることはもちろんだが、薄型化や低コスト化の観点からは不利な構成と言える。しかし、本発明は益々高画素化が進む撮像素子に十分適用可能な、低F値でありながら高性能の撮像レンズを、従来よりも薄型なものとして実現するという課題に応えるものである。
【0012】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズの正の屈折力に対して第2レンズの正の屈折力を強く設定することで、球面収差、非点収差、軸上色収差を補正するとともに、特に第2レンズに比較的強い正の屈折力を持たせることで光学全長を短縮している。また、第1レンズおよび2レンズの両面に適切な非球面を形成すれば諸収差を更に良好に補正することが可能となる。
【0013】
第3レンズは、比較的強い負の屈折力を持たせることで、第1レンズおよび第2レンズで残存した軸上色収差を良好に補正する。
【0014】
第4レンズは主に収差補正機能の役割が大きく、少なくとも1面に形成した非球面によって、球面収差、非点収差およびコマ収差を補正するとともに、非点隔差の縮小に大きく寄与する。なお、収差補正用のレンズであるため、屈折力は弱く設定することが望ましい。より具体的には撮像レンズ全系の焦点距離に対して1.5倍から2倍程度の焦点距離の範囲にすることが望ましい。また、両面を非球面に形成すれば、より良好に収差を補正することができる。
【0015】
第5レンズは、レンズ系の中で最も弱い正または負の屈折力を有する物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズであり、軸上色収差の更なる補正と、倍率色収差の良好な補正を担うとともに、低像高から像高8割付近の像面における歪曲収差を補正する。
【0016】
第6レンズおよび第7レンズは、それぞれ両面に適切な非球面形状を形成することで、第5レンズから出射した光線を、低像高から最大像高にかけて適切な角度に制御して像面へ結像させると同時に、レンズ周辺部における球面収差や、非点収差、非点隔差、歪曲収差の最終的な補正を担っている。
【0017】
一般に、F値を小さくすればするほど、入射瞳径およびレンズの有効径が大きくなり、レンズ系に入射する光束の径は大きくなる。それは、レンズ周辺部で発生する球面収差、および軸外光線の諸収差の発生量の増大につながる。従って、F値を小さくすればするほど、諸収差を抑えるための補正手段が増えることになる。本発明では、7枚で構成するレンズに、それぞれ最適な屈折力を設定し、且つ適切なレンズ面に適切な非球面を形成して収差補正効果を高めることで、従来の5枚や6枚構成では実現が困難であった、例えばF1.6程度の小さなF値に対応し、且つ良好に収差が補正されたレンズ系を実現している。
【0018】
また、本発明では、接合レンズを用いずに全てのレンズを間隔を設けて配置することで、非球面数を増やせるよう配慮し、高性能化を目指している。また、プラスチック材料を多用することで低コスト化を図っている。
【0019】
また、本発明の第1レンズは、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、レンズ周辺部において両面ともに物体側に湾曲する非球面形状に形成することが望ましい。最も物体側に位置する第1レンズをこのような非球面形状に形成することで、強い屈折力を有する両凸形状の第2レンズで発生する周辺部の球面収差の量を第1レンズの非球面形状によって緩和させることが可能となり、また中間付近の像高から最大像高の範囲における像面湾曲の補正を容易にする。
【0020】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することが望ましい。
(1)50<νd1<60
(2)50<νd2<60
(3)20<νd3<30
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッべ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッべ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッべ数
【0021】
条件式(1)は第1レンズのアッベ数の値を、条件式(2)は第2レンズのアッベ数の値を、条件式(3)は第3レンズのアッベ数の値を、それぞれ適切な範囲に規定するものである。正の屈折力の第1レンズおよび第2レンズを、条件式(1)および条件式(2)の範囲内に規定し、低分散の材料にすることで色収差の発生を抑え、第3レンズを条件式(3)の範囲内に規定することで、第3レンズの負の屈折力を必要以上に強めることなく、第1レンズおよび第2レンズで残存した軸上収差を補正する。条件式(1)、条件式(2)の下限値を下回る場合、軸上色収差の補正が不十分になりやすく、上限値を上回る場合は低コストの材料の選択が困難になる。また、条件式(3)の下限値を下回る場合、低コストの材料の選択が困難になり、上限値を上回る場合は軸上色収差の補正が不十分になる。
【0022】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(4)、(5)を満足することが望ましい。
(4) 50<νd4<60
(5) 20<νd5<30
ただし、
νd4:第4レンズのd線に対するアッべ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッべ数
【0023】
条件式(4)は第4レンズのアッベ数の値を、条件式(5)は第5レンズのアッベ数の値を、それぞれ適切な範囲に規定するものである。第4レンズを条件式(4)の範囲内に規定し、低分散の材料にすることで倍率色収差の発生を抑え、第5レンズを条件式(5)の範囲内に規定することで効果的に倍率色収差を補正する。条件式(4)の下限値を下回る場合および条件式(5)の上限値を上回る場合、倍率色収差の補正が不十分になり、条件式(4)の上限値を上回る場合および条件式(5)の下限値を下回る場合、低コストの材料の選択が困難になる。
【0024】
また、本発明の第4レンズは、光軸近傍で両凸形状であり、像面側の面は周辺部で凹面に変化する非球面形状であることが望ましい。このような非球面形状は、第4レンズの周辺部における正の屈折力を適度に弱めることができ、軸外から入射する光線の角度を適切に制御することを可能にする。また、このような非球面形状は諸収差の補正とともに、像面の中心部と周辺部との明るさの比、すなわち周辺光量比の低下を防止するために有効である。
【0025】
また、本発明の第6レンズは光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、物体側および像面側の非球面には光軸上以外の位置に変極点を有することが望ましい。光軸上以外の位置、すなわちレンズの周辺部に変極点を有することは、周辺部のレンズ形状が両面ともに物体側に湾曲する形状になることを意味する。この様な非球面形状に形成することで、レンズ中心部から周辺部にわたって屈折力を連続的に変化させ、特にレンズ周辺部における球面収差の補正効果と像面湾曲の補正効果を得ている。
【0026】
また、本発明の第7レンズの像面側の非球面は、光軸上以外の位置に変極点を有することが望ましい。変極点を設けることで像面側の周辺部の形状は凸面になるため、第7レンズの負の屈折力を周辺で弱める、または負の屈折力を周辺で正の屈折力に変化させることが出来る。このような非球面を形成することで、各像高における撮像素子への主光線の入射角度を制御することが容易となる。なお、第7レンズの物体側の面も周辺部で正の屈折力を有する非球面形状とすれば同様の効果が得られる。
【0027】
なお、本発明でいう変極点とは、接平面が光軸に垂直に交わる非球面上の点を意味するものとする。
【0028】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)、(7)を満足することが望ましい。
(6) 0.55<f12/f<0.88
(7) −1.2<f3/f<−0.7
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【0029】
条件式(6)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第1レンズと第2レンズの合成焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の下限値を下回る場合は、第1レンズと第2レンズの正の合成屈折力が強くなりすぎて、球面収差、コマ収差、非点収差の補正が困難になり、上限値を上回る場合は、第1レンズと第2レンズの正の合成屈折力が弱くなりすぎて、光学全長を短縮することが困難になる。
【0030】
条件式(7)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第3レンズの焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の下限値を下回る場合は、第3レンズの負の屈折力が弱くなりすぎて、軸上色収差の補正が困難になり、上限値を上回る場合は、第3レンズの負の屈折力が強くなりすぎて、光学全長を短縮することが困難になる。
【0031】
条件式(6)は以下に示す条件式(6a)がより好ましい範囲である。
(6a)0.60<f12/f<0.80
【0032】
条件式(7)は以下に示す条件式(7a)がより好ましい範囲である。
(7a)−1.05<f3/f<−0.70
【発明の効果】
【0033】
本発明により、小さなF値に対応しながらも、諸収差が良好に補正された、小型な撮像レンズを得ることが出来る。また、レンズの材料にプラスチック材料を多用することによって、大量生産に向いた、低コスト化が可能な撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例1に係る撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】実施例1に係る撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】実施例2に係る撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】実施例2に係る撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】実施例3に係る撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】実施例3に係る撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】実施例4に係る撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】実施例4に係る撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】実施例5に係る撮像レンズの概略構成を示す図である。
図10】実施例5に係る撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3図5図7図9はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から5に係る撮像レンズの概略構成図を示している。全ての実施例の概略構成は同様のため、実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズについて詳細に説明する。
【0036】
図1に示すように、実施例1の撮像レンズは物体側から像面側に向かって順に、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズL1と、光軸Xの近傍で物体側と像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2と、光軸Xの近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズL3と、少なくとも1面が非球面の第4レンズL4と、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第5レンズL5と、両面が非球面の第6レンズL6と、光軸Xの近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第7レンズL7から構成されている。開口絞りSTは第2レンズL2の物体側の面頂位置から当該面の周縁部の間に配置されている。また、第7レンズL7と像面IMとの間には赤外線カットフィルタ等のフィルタIRが配置されている。また、本実施形態では、全てのレンズをプラスチック材料で構成しており、第1レンズL1、第2レンズL2、第4レンズL4、第6レンズL6、第7レンズL7にはそれぞれシクロオレフィン系の低分散の材料を、第3レンズL3および第5レンズL5にはポリカーボネート系の高分散の材料を採用している。
【0037】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズL1の正の屈折力に対して第2レンズL2の正の屈折力を強く設定することで、球面収差、非点収差、軸上色収差を補正するとともに、第2レンズL2に撮像レンズの中で最も強い正の屈折力を持たせることで光学全長を短縮している。第1レンズL1および第2レンズL2の両面には諸収差を良好に補正するための非球面を形成している。また、第1レンズL1は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、レンズ周辺部は両面ともに物体側に湾曲する非球面形状になっている。強い屈折力を有する両凸形状の第2レンズL2で発生する周辺部の球面収差の量を第1レンズL1の非球面形状によって緩和させている。また、中間付近の像高から最大像高の範囲における像面湾曲の補正効果を得ている。
【0038】
第3レンズL3は、第1レンズL1および第2レンズL2で残存した軸上色収差を良好に補正する。また、第3レンズL3は像面側に凹面を向けたメニスカス形状であり、両面には非球面が形成されている。ここで、物体側の面の非球面形状はレンズ周辺部で凹面に変化するように形成しており、像面IMの周辺部へ到達する光量の低下を抑制している。
【0039】
第4レンズL4は少なくとも1面に形成した非球面によって、球面収差、非点収差およびコマ収差を補正するとともに、非点隔差を縮小するために重要な役割を果たしている。なお、本実施形態では良好に諸収差を補正するため、両面に非球面を形成している。また、第4レンズL4は、光軸Xの近傍で両凸形状であり、像面側の面は周辺部で凹面に変化する非球面形状になっている。すなわち、像面側の非球面形状によって、周辺部における正の屈折力を弱めるように調整することで、軸外から入射する光線の角度を適切に制御している。また、このような非球面形状は諸収差の補正とともに、像面IMの中心部と周辺部との明るさの比、すなわち周辺光量比の低下を防止している。
【0040】
第5レンズL5は、撮像レンズの中で最も弱い、正または負の屈折力を有する物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズであり、軸上色収差の更なる補正と、倍率色収差の良好な補正を担うとともに、低像高から像高8割付近の像面IMにおける歪曲収差を補正している。
【0041】
第6レンズL6は、両面に非球面が形成されており、主にレンズ周辺部における球面収差の補正と、非点収差のうち特にサジタル像面の湾曲を補正する。また、第5レンズL5から出射した光線を低像高から最大像高にかけて適切な角度に制御している。また、第6レンズL6は光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、物体側および像面側の非球面にはそれぞれ、光軸上以外の位置に1つの変極点を有している。すなわち、周辺部のレンズ形状が両面ともに物体側に湾曲する形状になっている。従って、レンズ中心部から周辺部にわたって屈折力を連続的に変化させることで、特にレンズ周辺部における球面収差の補正と像面湾曲の補正を可能にしている。
【0042】
第7レンズL7は、光軸Xの近傍で像面側に凹面を向けた両面が非球面の負の屈折力のレンズであり、バックフォーカスの確保と非点収差の補正および撮像素子への主光線入射角度の制御を容易にしている。第7レンズL7は、光軸Xの近傍で両凹形状であり、像面側の面の非球面には、光軸上以外の位置に1つの変極点を有している。すなわち、第7レンズL7の像面側の面は、光軸Xの近傍で凹面であり、周辺に向かうに従って凸面へと変化する非球面に形成している。従って、第7レンズL7の屈折力は、周辺に向かうほど負の屈折力が弱まる、または周辺部では正の屈折力へと変化する。このような非球面を形成することで、各像高における撮像素子への主光線入射角度を制御している。なお、本実施形態では、第7レンズL7の物体側の面の非球面にも、周辺部で正の屈折力へと変化する非球面を形成している。すなわち第7レンズL7の周辺部で必要となる正の屈折力を両面に配分することで、急激な形状変化を伴う非球面形状になることを防止している。急激な形状変化を伴う非球面形状にした場合、反射防止膜を均一な厚さでコーティングすることが困難になりやすい。特に像面IMに最も近い位置に配置される第7レンズL7の像面側の面の周辺部を、急激に物体側に湾曲させた形状にすると、当該湾曲部への反射防止膜の厚みが薄くなり、湾曲部の内面で反射する不要な光線が発生しやすくなる。この不要な光線が、第7レンズL7の物体側の内面で再度反射すると像面IMに入り込み、ゴースト現象を発生させる要因につながる。
【0043】
本発明の撮像レンズは以下の条件式(1)から(7)を満足する。
(1) 50<νd1<60
(2) 50<νd2<60
(3) 20<νd3<30
(4) 50<νd4<60
(5) 20<νd5<30
(6) 0.55<f12/f<0.88
(7) −1.2<f3/f<−0.7
ただし、
νd1:第1レンズL1のd線に対するアッべ数
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッべ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッべ数
νd4:第4レンズL4のd線に対するアッべ数
νd5:第5レンズL5のd線に対するアッべ数
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
【0044】
条件式(1)から(5)はそれぞれ、第1レンズL1から第5レンズL5のアッベ数を適切な範囲内に規定することで、軸上色収差、及び倍率色収差を良好に補正することを可能にしている。また、条件式の範囲内に規定することで、入手の容易なプラスチック材料を選択でき、低コスト化が図れる。
【0045】
また、撮像レンズ全系に占める第1レンズL1と第2レンズL2との合成焦点距離、および第3レンズL3の焦点距離を条件式(6)および(7)の範囲に規定することで光学全長を短縮しつつ、諸収差の補正が図れる。
【0046】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき次式により表わされる。
【0047】
【数1】
【0048】
次に本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLはフィルタIR類を取り外した際の光学全長をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸X上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【実施例1】
【0049】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(7)の全てを満たしている。
【0052】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、g線(436nm)、F線(486nm)、e線(546nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している(実施例2から実施例5に対応する図4図6図8図10においても同じ)。図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例2】
【0053】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(7)の全てを満たしている。
【0056】
図4は実施例2の撮像レンズの収差図を示したものである。図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例3】
【0057】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例3の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(7)の全てを満たしている。
【0060】
図6は実施例3の撮像レンズの収差図を示したものである。図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例4】
【0061】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例4の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(7)の全てを満たしている。
【0064】
図8は実施例4の撮像レンズの収差図を示したものである。図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例5】
【0065】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
実施例5の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(7)の全てを満たしている。
【0068】
図10は実施例5の撮像レンズの収差図を示したものである。図10に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0069】
上述したように、実施例1から実施例5に係る撮像レンズは、F値が1.6程度の明るさを達成すると共に性能の向上が図られている。また、それぞれのレンズを接合せずに配置した7枚構成でありながら、光学全長は5.5mm程度以下に抑えられ、且つ撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも短く、光学全長の短縮が図られていることが分かる。
【0070】
表6に実施例1から実施例5の実施形態に係る条件式(1)から(7)の値を示す。
【0071】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0072】
上述したように、各実施の形態に係る撮像レンズを、小型化、薄型化が進むスマートフォンや携帯電話機およびPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末機器等、更には、ゲーム機やPCなどの情報端末機器等に搭載される撮像装置に内蔵する光学系に適用した場合、当該カメラの小型化と高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0073】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
L7 第7レンズ
IR フィルタ
IM 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10