【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、被写体の像を固体撮像素子上に結像させるための7枚で構成される固定焦点の撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズと、
正の屈折力を有する、少なくとも1面が非球面の第4レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第5レンズと、
正の屈折力を有する、両面が非球面の第6レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第7レンズを、それぞれ接合せずに配置して構成する。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、従来多く提案されてきた撮像レンズに対して、構成するレンズの枚数が多い。構成枚数を増やせば、高性能化に有利になることはもちろんだが、薄型化や低コスト化の観点からは不利な構成と言える。しかし、本発明は益々高画素化が進む撮像素子に十分適用可能な、低F値でありながら高性能の撮像レンズを、従来よりも薄型なものとして実現するという課題に応えるものである。
【0012】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズの正の屈折力に対して第2レンズの正の屈折力を強く設定することで、球面収差、非点収差、軸上色収差を補正するとともに、特に第2レンズに比較的強い正の屈折力を持たせることで光学全長を短縮している。また、第1レンズおよび2レンズの両面に適切な非球面を形成すれば諸収差を更に良好に補正することが可能となる。
【0013】
第3レンズは、比較的強い負の屈折力を持たせることで、第1レンズおよび第2レンズで残存した軸上色収差を良好に補正する。
【0014】
第4レンズは主に収差補正機能の役割が大きく、少なくとも1面に形成した非球面によって、球面収差、非点収差およびコマ収差を補正するとともに、非点隔差の縮小に大きく寄与する。なお、収差補正用のレンズであるため、屈折力は弱く設定することが望ましい。より具体的には撮像レンズ全系の焦点距離に対して1.5倍から2倍程度の焦点距離の範囲にすることが望ましい。また、両面を非球面に形成すれば、より良好に収差を補正することができる。
【0015】
第5レンズは、レンズ系の中で最も弱い正または負の屈折力を有する物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズであり、軸上色収差の更なる補正と、倍率色収差の良好な補正を担うとともに、低像高から像高8割付近の像面における歪曲収差を補正する。
【0016】
第6レンズおよび第7レンズは、それぞれ両面に適切な非球面形状を形成することで、第5レンズから出射した光線を、低像高から最大像高にかけて適切な角度に制御して像面へ結像させると同時に、レンズ周辺部における球面収差や、非点収差、非点隔差、歪曲収差の最終的な補正を担っている。
【0017】
一般に、F値を小さくすればするほど、入射瞳径およびレンズの有効径が大きくなり、レンズ系に入射する光束の径は大きくなる。それは、レンズ周辺部で発生する球面収差、および軸外光線の諸収差の発生量の増大につながる。従って、F値を小さくすればするほど、諸収差を抑えるための補正手段が増えることになる。本発明では、7枚で構成するレンズに、それぞれ最適な屈折力を設定し、且つ適切なレンズ面に適切な非球面を形成して収差補正効果を高めることで、従来の5枚や6枚構成では実現が困難であった、例えばF1.6程度の小さなF値に対応し、且つ良好に収差が補正されたレンズ系を実現している。
【0018】
また、本発明では、接合レンズを用いずに全てのレンズを間隔を設けて配置することで、非球面数を増やせるよう配慮し、高性能化を目指している。また、プラスチック材料を多用することで低コスト化を図っている。
【0019】
また、本発明の第1レンズは、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、レンズ周辺部において両面ともに物体側に湾曲する非球面形状に形成することが望ましい。最も物体側に位置する第1レンズをこのような非球面形状に形成することで、強い屈折力を有する両凸形状の第2レンズで発生する周辺部の球面収差の量を第1レンズの非球面形状によって緩和させることが可能となり、また中間付近の像高から最大像高の範囲における像面湾曲の補正を容易にする。
【0020】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することが望ましい。
(1)50<νd1<60
(2)50<νd2<60
(3)20<νd3<30
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッべ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッべ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッべ数
【0021】
条件式(1)は第1レンズのアッベ数の値を、条件式(2)は第2レンズのアッベ数の値を、条件式(3)は第3レンズのアッベ数の値を、それぞれ適切な範囲に規定するものである。正の屈折力の第1レンズおよび第2レンズを、条件式(1)および条件式(2)の範囲内に規定し、低分散の材料にすることで色収差の発生を抑え、第3レンズを条件式(3)の範囲内に規定することで、第3レンズの負の屈折力を必要以上に強めることなく、第1レンズおよび第2レンズで残存した軸上収差を補正する。条件式(1)、条件式(2)の下限値を下回る場合、軸上色収差の補正が不十分になりやすく、上限値を上回る場合は低コストの材料の選択が困難になる。また、条件式(3)の下限値を下回る場合、低コストの材料の選択が困難になり、上限値を上回る場合は軸上色収差の補正が不十分になる。
【0022】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(4)、(5)を満足することが望ましい。
(4) 50<νd4<60
(5) 20<νd5<30
ただし、
νd4:第4レンズのd線に対するアッべ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッべ数
【0023】
条件式(4)は第4レンズのアッベ数の値を、条件式(5)は第5レンズのアッベ数の値を、それぞれ適切な範囲に規定するものである。第4レンズを条件式(4)の範囲内に規定し、低分散の材料にすることで倍率色収差の発生を抑え、第5レンズを条件式(5)の範囲内に規定することで効果的に倍率色収差を補正する。条件式(4)の下限値を下回る場合および条件式(5)の上限値を上回る場合、倍率色収差の補正が不十分になり、条件式(4)の上限値を上回る場合および条件式(5)の下限値を下回る場合、低コストの材料の選択が困難になる。
【0024】
また、本発明の第4レンズは、光軸近傍で両凸形状であり、像面側の面は周辺部で凹面に変化する非球面形状であることが望ましい。このような非球面形状は、第4レンズの周辺部における正の屈折力を適度に弱めることができ、軸外から入射する光線の角度を適切に制御することを可能にする。また、このような非球面形状は諸収差の補正とともに、像面の中心部と周辺部との明るさの比、すなわち周辺光量比の低下を防止するために有効である。
【0025】
また、本発明の第6レンズは光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、物体側および像面側の非球面には光軸上以外の位置に変極点を有することが望ましい。光軸上以外の位置、すなわちレンズの周辺部に変極点を有することは、周辺部のレンズ形状が両面ともに物体側に湾曲する形状になることを意味する。この様な非球面形状に形成することで、レンズ中心部から周辺部にわたって屈折力を連続的に変化させ、特にレンズ周辺部における球面収差の補正効果と像面湾曲の補正効果を得ている。
【0026】
また、本発明の第7レンズの像面側の非球面は、光軸上以外の位置に変極点を有することが望ましい。変極点を設けることで像面側の周辺部の形状は凸面になるため、第7レンズの負の屈折力を周辺で弱める、または負の屈折力を周辺で正の屈折力に変化させることが出来る。このような非球面を形成することで、各像高における撮像素子への主光線の入射角度を制御することが容易となる。なお、第7レンズの物体側の面も周辺部で正の屈折力を有する非球面形状とすれば同様の効果が得られる。
【0027】
なお、本発明でいう変極点とは、接平面が光軸に垂直に交わる非球面上の点を意味するものとする。
【0028】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)、(7)を満足することが望ましい。
(6) 0.55<f12/f<0.88
(7) −1.2<f3/f<−0.7
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【0029】
条件式(6)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第1レンズと第2レンズの合成焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の下限値を下回る場合は、第1レンズと第2レンズの正の合成屈折力が強くなりすぎて、球面収差、コマ収差、非点収差の補正が困難になり、上限値を上回る場合は、第1レンズと第2レンズの正の合成屈折力が弱くなりすぎて、光学全長を短縮することが困難になる。
【0030】
条件式(7)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第3レンズの焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の下限値を下回る場合は、第3レンズの負の屈折力が弱くなりすぎて、軸上色収差の補正が困難になり、上限値を上回る場合は、第3レンズの負の屈折力が強くなりすぎて、光学全長を短縮することが困難になる。
【0031】
条件式(6)は以下に示す条件式(6a)がより好ましい範囲である。
(6a)0.60<f12/f<0.80
【0032】
条件式(7)は以下に示す条件式(7a)がより好ましい範囲である。
(7a)−1.05<f3/f<−0.70