特許第6133070号(P6133070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133070
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】低温保管システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20170515BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B65G1/00 521A
   G01N1/10 N
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-19472(P2013-19472)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-148415(P2014-148415A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(73)【特許権者】
【識別番号】503370321
【氏名又は名称】株式会社荏原
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】西井 久雄
(72)【発明者】
【氏名】駒田 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−056730(JP,A)
【文献】 特開2004−131249(JP,A)
【文献】 特開2005−187201(JP,A)
【文献】 特開平06−058657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00− 1/20
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した複数の容器を格納する低温格納室と、該低温格納室の上方空間を移動可能、かつ、前記容器を保持可能な容器収容手段とを備えた低温保管システムであって、
前記容器収容手段が、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と、該低温収容槽内を冷却する冷媒管とを備えたことを特徴とする低温保管システム。
【請求項2】
前記低温収容槽が、少なくとも1つの仕切壁によって2つ以上の収容領域に仕切られ、
前記冷媒管が、前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁に沿って設けられたことを特徴とする請求項1に記載の低温保管システム。
【請求項3】
前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁が、金属製であることを特徴とする請求項2に記載の低温保管システム。
【請求項4】
前記収容領域の内部には、仕切板が設けられ、
前記仕切板と前記低温収容槽の内側壁あるいは前記仕切壁との間には冷気循環空間が形成され、
前記冷媒管が、前記冷気循環空間内に設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の低温保管システム。
【請求項5】
前記冷気循環空間の上方に、循環ファンが設けられたことを特徴とする請求項4に記載の低温保管システム。
【請求項6】
前記低温収容槽には、前記収容領域の上方の開口の一部を閉塞する上部壁が設けられたことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の低温保管システム。
【請求項7】
前記冷媒管が、前記上部壁の下面に沿って設けられたことを特徴とする請求項6に記載の低温保管システム。
【請求項8】
前記冷媒管が、前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁と接触するよう設けられたことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の低温保管システム。
【請求項9】
前記冷媒管が、放熱フィンを有することを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれかに記載の低温保管システム。
【請求項10】
前記低温収容槽の内側壁の外側には、断熱壁が設けられ、
前記断熱壁の外側には、前記冷媒管に冷媒を供給する冷却手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の低温保管システム。
【請求項11】
前記低温収容槽には、上方の開口を閉塞および開放可能な開閉蓋が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の低温保管システム。
【請求項12】
前記低温格納室は、複数の保管ラックを上方から出し入れ可能に格納するように構成され、
前記保管ラックは、複数の容器を保持した保管プレートを上下方向に多数収容するものであり、
前記低温収容槽が、少なくとも1つの仕切壁によって2つ以上の収容領域に仕切られ、
前記低温格納室の上方の空間には、前記保管ラックを出し入れする保管ラック搬送手段と、前記保管プレートを前記保管ラックと前記収容領域との間で移送する保管プレート移送手段と、前記保管プレートに保持された前記容器を前記収容領域内で個別にハンドリングするピッキング手段とを備え、
前記容器収容手段が、前記保管ラック搬送手段、保管プレート移送手段およびピッキング手段と一体に前記低温格納室の上方空間を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の低温保管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を収容した複数の容器を格納する低温格納室と、該低温格納室の上方空間を移動可能に構成され前記容器を移送する容器収容手段とを備えた低温保管システムに関し、特に、創薬(drugdiscovery)、すなわち、医学、生物工学および薬学において薬剤を発見したり設計したりするプロセスにおいて用いられる創薬用試料を極低温で保管するために使用される低温保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来、化学、生化学、生体学、製薬などの基礎研究あるいは応用研究においては、大量の生体サンプル、臨床サンプル、化学合成物などの試料を検査等のために保管している。
例えば、創薬研究プロセスにおいて、生体活性等を調査するため、多種多様な検査、実験のために微量で多数の試料を取り扱うことが必要であり、マイクロ(テスト)チューブ等の容器に収められた試料を、極低温の安定した環境のもとで大量に保管するとともに、任意の試料を迅速に取り出す技術が欠かせない。
【0003】
このような低温保管すべき試料を収容した容器を低温格納室に保管し、必要に応じて指定の容器を低温格納室から取り出す低温保管システムは周知であり、低温保管すべき試料を収容した容器を保管プレートに複数保持し、該保管プレートを保管ラックに上下方向に多数収容して低温格納室に保管し、必要に応じて目的の保管プレートを自動的に取り出して、該保管プレートから指定の容器をピッキングする低温保管システムが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この公知の低温保管システム(100)は、容器(201)を複数保持する保管プレート(203)を縦方向に複数収容する保管ラック(104)と、該保管ラック(104)を複数格納する低温格納室(105)と、該低温格納室(105)に隣接して設けられた作業室(106)と、該作業室(106)内に設けられ保管プレート(203)を搬送するとともに保管ラック(104)に出し入れするプレート搬送機構(110)とを有するものである。
【0005】
作業室(106)には、保管プレート(203)から容器(201)を個別に取り出し可能なピックアップ機構(120)が設けられており、作業室(106)に隣接して入出庫室(108)が設けられている。
プレート搬送機構(110)は、保管ラック(104)を低温格納室(105)から作業室(106)に個別に出し入れする保管ラック移動手段(111)と、保管プレート(203)を保管ラック(104)から個別に出し入れする保管プレート移動手段(112)とを有するとともに、作業室内を移動可能に構成されている。
【0006】
このことにより、取り出したい容器(201)を保持した保管プレート(203)を低温格納室(105)からピックアップ機構(120)に搬送して、取り出したい容器のみをピックアップ機構(120)によって個別に取り出して入出庫室(108)から搬出することを可能としている。
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、特許文献1で記載された符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2012−56730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示すような公知の低温保管システムにおいては、低温格納室から保管プレートに支持された複数の容器が作業室まで搬送され、作業室においてピッキング機構によって保管プレートに支持された複数の容器から指定の容器が抽出された後に、残った容器が再び低温格納室に保管されるように構成されている。
このため、再び低温格納室に保管されるべき指定の容器以外の容器も、搬送中および作業室でのピッキング機構による抽出動作中は、それらの雰囲気下に置かれることとなり、容器内の試料の温度が上昇して、試料が変質してダメージが与えられる虞があった。
また、ピッキング機構による抽出動作中に容器に大量の結露が発生し、そのまま再び低温格納室に保管されると、凍結して保管プレートと容器が付着するため次回の容器のピッキングが困難となる虞があり、これを防ぐために搬出領域の雰囲気を強力に除湿する必要があった。
【0009】
これらの問題を低減するために、低温格納室の上方空間や作業室の雰囲気温度を低温格納室に準ずる低温に保つことが考えられる。
しかしながら、そのような低温下で動作する搬送手段、ピッキング機構等を構成するためには特殊な機器類を使用する必要があり、そのような特殊機器類は入手が困難で高価で、通常の機器危機類より動作が低速であるため、製造、コスト、動作速度等の問題が大きい。
また、低温格納室の上方空間や作業室を低温環境にするための低温保管システム全体の空調設備を強化する必要があり、その運転コストも増大するとともに、運転直後のメンテナンス作業等も極低温の機器類に対して行う必要があるため、作業者に大きな負担を与えることとなり、運用面での問題も大きい。
【0010】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、抽出動作中の容器の温度を上昇させず、容器に収められた試料の変質や容器への結露の発生を防止するとともに、特殊な機器類を必要とせず、高速に動作可能で、製造や運用にかかるコストを低減し、運用が容易な低温保管システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本請求項1に係る発明は、試料を収容した複数の容器を格納する低温格納室と、該低温格納室の上方空間を移動可能、かつ、前記容器を保持可能な容器収容手段とを備えた低温保管システムであって、前記容器収容手段が、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と、該低温収容槽内を冷却する冷媒管とを備えたことにより、前記課題を解決するものである。
【0012】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る低温保管システムの構成に加え、前記低温収容槽が、少なくとも1つの仕切壁によって2つ以上の収容領域に仕切られ、前記冷媒管が、前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁に沿って設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項2に係る低温保管システムの構成に加え、前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁が、金属製であることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に係る低温保管システムの構成に加え、前記収容領域の内部には、仕切板が設けられ、前記仕切板と前記低温収容槽の内側壁あるいは前記仕切壁との間には冷気循環空間が形成され、前記冷媒管が、前記冷気循環空間内に設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
本請求項5に係る発明は、請求項4に係る低温保管システムの構成に加え、前記冷気循環空間の上方に、循環ファンが設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項6に係る発明は、請求項2乃至請求項5のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記低温収容槽には、前記収容領域の上方の開口の一部を閉塞する上部壁が設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項7に係る発明は、請求項6に係る低温保管システムの構成に加え、前記冷媒管が、前記上部壁の下面に沿って設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項8に係る発明は、請求項2乃至請求項7のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記冷媒管が、前記低温収容槽の内側壁および前記仕切壁と接触するよう設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項9に係る発明は、請求項2乃至請求項8のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記冷媒管が、放熱フィンを有することにより、前記課題を解決するものである。
【0014】
本請求項10に係る発明は、請求項1乃至請求項9のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記低温収容槽の内側壁の外側には、断熱壁が設けられ、前記断熱壁の外側には、前記冷媒管に冷媒を供給する冷却手段が設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項11に係る発明は、請求項1乃至請求項10のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記低温収容槽には、上方の開口を閉塞および開放可能な開閉蓋が設けられたことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項12に係る発明は、請求項1乃至請求項11のいずれかに係る低温保管システムの構成に加え、前記低温格納室は、複数の保管ラックを上方から出し入れ可能に格納するように構成され、前記保管ラックは、複数の容器を保持した保管プレートを上下方向に多数収容するものであり、前記低温収容槽が、少なくとも1つの仕切壁によって2つ以上の収容領域に仕切られ、前記低温格納室の上方の空間には、前記保管ラックを出し入れする保管ラック搬送手段と、前記保管プレートを前記保管ラックと前記収容領域との間で移送する保管プレート移送手段と、前記保管プレートに保持された前記容器を前記収容領域内で個別にハンドリングするピッキング手段とを備え、前記容器収容手段が、前記保管ラック搬送手段、保管プレート移送手段およびピッキング手段と一体に前記低温格納室の上方空間を移動可能に構成されたことにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る低温保管システムによれば、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と冷媒管とを備えたことにより、低温収容槽内を低温格納室に準ずる極低温に維持することができ、該低温収容槽を有する容器収容手段が低温格納室の上方空間を移動可能に構成されたことにより、低温格納室の上方空間に取り出した容器を速やかに極低温の低温収容槽に収容することが可能となるため、抽出動作中の容器を極低温の環境下に長く保つことができる。
このことで、複数の容器が保管プレート等に支持され、保管プレートごと取り出して目的とする容器のみを抽出して外部に搬出し、保管プレート等を再び低温格納室に保管する際、再び保管される容器に収められた試料の変質や容器への結露の発生を防止することができ、試料が変質してダメージを与えることなく、また、凍結して保管プレートと容器が付着して次回の容器のピッキングが困難となることがない。
【0016】
さらに、低温収容槽の上方が開口していることにより、保管プレート等からのピッキング作業を低温収容槽内に容器を収容した状態で行うことが可能となり、抽出動作中に容器を極低温の環境下にさらに長く保つことも可能となる。
また、低温収容槽内のみを極低温とすることで、その他の空間を極低温に保つ必要がないため、搬送、移動、ピッキング等を行う機器類として、一般的な搬送機構、産業ロボット等を使用することが可能となり、極低温下で動作可能な特殊な機器類を用いる必要がなく、高速に動作可能となり、コストも低減され、運転直後のメンテナンス作業等も容易となる。
【0017】
請求項2に記載の構成によれば、低温収容槽が少なくとも1つの仕切壁によって2つ以上の収容領域に仕切られたことにより、低温収容槽内が低温格納室の上方空間を移動した際、あるいは、低温収容槽内でピッキング作業等が行われる際にも、低温収容槽内の冷気が外部に漏れることが少なくなり、温度の上昇が抑制され、より確実に容器を極低温の環境下に保つことができる。
また、冷媒管が低温収容槽の内側壁および仕切壁に沿って設けられたことにより、低温収容槽内の各収容領域を確実にかつ均等に冷却することが可能となる。
請求項3に記載の構成によれば、低温収容槽の内側壁および仕切壁が金属製であることにより、各収容領域をより効率的に均等に冷却することが可能となる。
請求項4に記載の構成によれば、収容領域の内部に仕切板が設けられ、仕切板と低温収容槽の内側壁あるいは仕切壁との間には冷気循環空間が形成され、冷媒管が冷気循環空間内に設けられたことにより、冷媒管で冷却された冷気が冷気循環空間内で均等に温度を低下させ、仕切板を介して各収容領域をより効率的に均等に冷却することが可能となる。
また、仕切板の下端を底部と離間させてもよく、そのことで、冷媒管で冷却された冷気循環空間内の冷気を各収容領域の底部に載置される保管プレート等に支持された容器に効率的に送り込むことが可能となり、より確実に容器を極低温の環境下に保つことができる。
【0018】
請求項5に記載の構成によれば、冷気循環空間の上方に循環ファンが設けられたことにより、冷媒管で冷却された冷気を、積極的に各収容領域の底部に載置される保管プレート等に支持された容器に向けて送り込むことが可能となり、さらに確実に容器を極低温の環境下に保つことができる。
請求項6に記載の構成によれば、低温収容槽に収容領域の上方の開口の一部を閉塞する上部壁が設けられたことにより、低温収容槽が低温格納室の上方空間を移動した際、あるいは、ピッキング機構等によるピッキング作業が行われる際に、低温収容槽内の冷気が外部に漏れて温度が上昇することをさらに抑制することができる。
請求項7に記載の構成によれば、冷媒管が上部壁の下面に沿って設けられたことで、さらに効果的に低温収容槽内を冷却することが可能となる。
請求項8に記載の構成によれば、冷媒管が低温収容槽の内側壁および仕切壁と接触するよう設けられたことにより、内側壁および仕切壁の熱伝導により、さらに効率的に低温収容槽内を冷却することが可能となる。
請求項9に記載の構成によれば、冷媒管が放熱フィンを有することにより、さらに効率的に低温収容槽内を冷却することが可能となる。
【0019】
請求項10に記載の構成によれば、低温収容槽の内側壁の外側には断熱壁が設けられたことにより、低温収容槽内の温度上昇を防止できるとともに、断熱壁の外側に冷媒管に冷媒を供給する冷却手段が設けられたことにより、低温収容槽が冷却手段と一体となって低温格納室の上方空間を移動可能となり、配管等の機器類を簡略化できる。
請求項11に記載の構成によれば、低温収容槽に、上方の開口を閉塞および開放可能な開閉蓋が設けられたことにより、必要な時以外は開閉蓋を閉じておくことで、低温収容槽内の冷気が外部に漏れて温度が上昇することをさらに抑制することができる。
請求項12に記載の構成によれば、低温格納室の指定された容器が格納された位置の上方に低温収容槽を停止させた状態でピッキング作業を行うことが可能となるため、容器を低温収容槽内に収納した後、再び低温格納室に保管されるべき容器を戻すまでの時間を短くすることができ、また、再び低温格納室に保管されるべき容器を低温収容槽内に収容したまま低温収容槽を移動させる必要がない。
このことで、再び低温格納室に保管されるべき容器に収められた試料の変質や容器への結露の発生をさらに確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの概略の斜視図。
図2】本発明の一実施形態が扱う保管プレート、容器の説明図。
図3】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの正面図。
図4】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの平面図。
図5】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの容器収容手段近傍の斜視説明図。
図6】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの容器収容手段の平面図。
図7】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの容器収容手段の側面図。
図8】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの開閉蓋の(a)底面図及び(b)側面図。
図9】本発明の一実施形態に係る低温保管システムの低温収容槽の平面視断面図。
図10図9の断面図。
図11】本発明の他の実施形態に係る低温保管システムの低温収容槽の平面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の低温保管システムは、試料を収容した複数の容器を格納する低温格納室と、該低温格納室の上方空間を移動可能、かつ、前記容器を保持可能な容器収容手段とを備えた低温保管システムであって、容器収容手段が、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と、該低温収容槽内を冷却する冷媒管とを備え、抽出動作中の容器の温度を上昇させず、容器に収められた試料の変質や容器への結露の発生を防止するとともに、特殊な機器類を必要とせず、高速に動作可能で、製造や運用にかかるコストを低減し、運用が容易ものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
【実施例】
【0022】
本発明の一実施形態に係る低温保管システム100の概略を、図1乃至図5に基づいて説明する(なお、それぞれの図は、説明のため一部構成の省略、簡略化して示されており、実際の寸法、構造を正確に表すものではない。)。
本発明の一実施形態に係る低温保管システム100で取り扱われる試料を収容した複数の容器Cは、図2に示すように、保管プレートPにマトリクス状に支持される。
低温保管システム100は、図1図3図4に示すように、複数の保管プレートPが、保管ラック151に上下方向に重ねて収容され、該保管ラック151が低温格納室101に上方から格納されるように構成されている。
【0023】
低温格納室101の上方空間は作業室102を構成し、作業室102内には、上方が開口し容器を収容する低温収容槽120を備えた容器収容手段110が、作業室102を移動可能に配置されている。
また、図1図3乃至図5に示すように、保管ラック151を低温格納室101に出し入れする保管ラック搬送手段152と、保管プレートPを保管ラック151と低温収容槽120との間で移送する保管プレート移送手段153(保管プレート引出手段155および保管プレート移載手段156で構成されている)と、保管プレートPに保持された容器Cを低温収容槽120内で個別にハンドリングするピッキング手段154が、容器収容手段110と一体に移動可能に配置されている。
【0024】
なお、本実施形態では作業室102の端部には、外部から保管プレートPを出し入れするための搬出入室103が設けられている。
搬出入室103内には、保管プレートPが載置されるプレート旋回テーブル161が搬出入扉162側および容器収容手段110を向くように旋回可能に配置されており、搬出入扉162を介して外部との保管プレートPの出し入れが行われるとともに、容器収容手段110が隣接する位置まで移動して、保管プレート移載手段156によって低温収容槽120との間で保管プレートPの移載が行われるように構成されている。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係る低温保管システム100の容器収容手段110について、図6乃至図10に基づいて説明する(なお、それぞれの図は、説明のため一部構成の省略、簡略化して示されており、実際の寸法、構造を正確に表すものではない。)。
容器収容手段110は、図6図7に示すように、周囲を断熱壁127で囲まれて上方が開口し容器を収容する低温収容槽120を備えるとともに、断熱壁127の外側には、後述する冷媒管121に冷媒を供給する冷却手段113が一体に設けられて、低温収容槽120の上方には開閉蓋128が設けられている。
【0026】
開閉蓋128は、図8に示すように、その下面側にパッキング129が設けられ、図7に示すように、閉塞時に低温収容槽120の上方を密閉するように構成されている。
なお、開閉蓋128の開閉動作は、閉塞位置での僅かな上下動と図7の左右方向へのスライドとによって行うが、他の構成との配置関係に応じて、旋回動等の他の動作や、複数の動作を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0027】
容器収容手段110の低温収容槽120の内部は、図9図10に示すように、3つの仕切壁122によって4つ収容領域111に仕切られ、内部を冷却するための冷媒管121が、各仕切壁122の両面および両端の収容領域111の内側壁123に沿って設けられている。
保管プレートPは、図9に示すように、各収容領域111の底部に載置されるように構成されている。
本実施形態では、各仕切壁122および内側壁123が金属製であり、冷媒管121を仕切壁122、内側壁123に接するように設けることで、各収容領域をより効率的に均等に冷却するように構成されている。
なお、冷媒管121に適宜放熱フィンを設けることで、さらに冷却効率を上げるように構成してもよい。
また、各仕切壁122が金属製であり、冷媒管121を仕切壁122に接するように設けた場合は、冷媒管121を各仕切壁122のいずれか一方の側面に設けてもよい。
【0028】
各収容領域111の内部には、図9に示すように、パンチング板、アルミ板等で形成された仕切板124が設けられている。
仕切板124と内側壁123あるいは仕切壁122との間には、冷媒管121が存在する冷気循環空間112が形成されている。
仕切板124の内部の断面積は、ピッキング手段、保管プレート移載手段等による作業が支障なく行われるように設定されている。
このことにより、冷気循環空間112内で均等に温度を低下させ、仕切板124を介して各収容領域111をより効率的に均等に冷却することができる。
なお、仕切板124の下端を図示のように底部と離間させた場合には、冷気循環空間112がダクトとして機能し、冷媒管121によって冷却された空気が冷気循環空間112内を下降して各収容領域111の底部に載置される保管プレートPに効率的に送り込むことが可能となり、確実に保管プレートPが支持する容器を極低温の環境下に保つことができる。
なお、この空気の流れをさらに積極的に行うため、図11に示すように、冷気循環空間112の上方に、循環ファン125を設けてもよい。
【0029】
各収容領域111の上方の開口には、図10に示すように、上部壁126が側方から一部を閉塞するように設けられており、冷媒管121が上部壁126の下面に沿って設けられている。
このことで、低温格納室101の上方空間を移動した際、あるいは、ピッキング手段、保管プレート移載手段等による作業が行われる際に、各収容領域111内の冷気が外部に漏れて温度が上昇することを抑制できるとともに、上部壁126の下面に沿って設けられた冷媒管121によって効果的に各収容領域111内を冷却することが可能となる。
【0030】
以上のように構成された本発明の一実施形態に係る低温保管システム100における指定の容器Cの抽出動作について説明する。
まず、作業者が、空の保管プレートPを搬出入室103の側面の搬出入扉162からプレート旋回テーブル161に載置し、搬出入扉162を閉じた後に、制御装置(図示せず)に開始指示を与える。
空の保管プレートPは、プレート旋回テーブル161が旋回することにより、容器収容手段110に対向する側に向けられ、容器収容手段110は保管プレート移送手段153と一体となって搬出入室103に隣接する位置まで移動する。
この状態で、保管プレート引出手段155が保管プレートPをプレート旋回テーブル161から取り出し、保管プレート移載手段156が、容器収容手段110のいずれかの収容領域111の底部に空の保管プレートPを移載する。
【0031】
次いで、容器収容手段110が、指定の容器Cを支持する保管プレートPが収容された保管ラック151の位置まで移動する。ここで、保管ラック搬送手段152が保管ラック151を低温格納室101から上方に引き上げ、保管プレート引出手段155が指定の容器Cを支持する保管プレートPを保管ラック151から取り出す。
そして、保管プレート移載手段156が移動し、指定の容器Cを支持する保管プレートPを容器収容手段110のいずれかの収容領域111の底部に移載する。
【0032】
この状態で、ピッキング手段154が動作して、指定の容器Cが空の保管プレートPに移載される。
その後、上記の動作と逆の手順で、指定の容器Cを支持する保管プレートPは元の保管ラック151に戻されて低温格納室101に格納され、指定の容器Cが移載された保管プレートPは、搬出入室103に戻されて作業者が搬出入扉162から搬出する。
取り出すべき容器Cを複数指定した場合は、指定の容器Cを支持する保管プレートPを低温格納室101から取り出し、戻すまでの工程が複数回繰り返される。
【0033】
以上の動作において、低温収容槽120内の収容領域111を低温格納室101に準ずる極低温に維持されているため、容器Cが作業室102の雰囲気温度に曝される時間はごく短時間であり、再び保管される容器Cに収められた試料の変質や容器Cへの結露の発生を防止することができ、試料が変質してダメージを与えることなく、また、凍結して保管プレートPと容器Cが付着して次回の容器Cのピッキングが困難となることがない。
また、低温収容槽120内が仕切壁122によって複数の収容領域111に仕切られたことにより、低温格納室101の上方空間を移動した際、あるいは、ピッキング作業等が行われる際にも、収容領域111の冷気が外部に漏れることが少なくなり、これらの作業が複数回行われても温度の上昇が抑制され、確実に容器Cを極低温の環境下に保つことができる。
【0034】
本発明に係る低温保管システム100は、上述した実施形態のものに限定されるものではなく、容器収容手段が、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と、該低温収容槽内を冷却する冷媒管とを備えたものであれば、個々の具体的な構成は公知の低温保管システムの構成と置換可能である。
また、冷凍保管される対象は、化学、生化学、生体学、製薬などの基礎研究あるいは応用研究に用いられる試料等に限定されるものではなく、いかなる対象であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
100 ・・・ 低温保管システム
101 ・・・ 低温格納室
102 ・・・ 作業室
103 ・・・ 搬出入室
110 ・・・ 容器収容手段
111 ・・・ 収容領域
112 ・・・ 冷気循環空間
113 ・・・ 冷却手段
120 ・・・ 低温収容槽
121 ・・・ 冷媒管
122 ・・・ 仕切壁
123 ・・・ 内側壁
124 ・・・ 仕切板
125 ・・・ 循環ファン
126 ・・・ 上部壁
127 ・・・ 断熱壁
128 ・・・ 開閉蓋
129 ・・・ パッキング
151 ・・・ 保管ラック
152 ・・・ 保管ラック搬送手段
153 ・・・ 保管プレート移送手段
154 ・・・ ピッキング手段
155 ・・・ 保管プレート引出手段
156 ・・・ 保管プレート移載手段
161 ・・・ プレート旋回テーブル
162 ・・・ 搬出入扉
P ・・・ 保管プレート
C ・・・ 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11