【実施例】
【0022】
本発明の一実施形態に係る低温保管システム100の概略を、
図1乃至
図5に基づいて説明する(なお、それぞれの図は、説明のため一部構成の省略、簡略化して示されており、実際の寸法、構造を正確に表すものではない。)。
本発明の一実施形態に係る低温保管システム100で取り扱われる試料を収容した複数の容器Cは、
図2に示すように、保管プレートPにマトリクス状に支持される。
低温保管システム100は、
図1、
図3、
図4に示すように、複数の保管プレートPが、保管ラック151に上下方向に重ねて収容され、該保管ラック151が低温格納室101に上方から格納されるように構成されている。
【0023】
低温格納室101の上方空間は作業室102を構成し、作業室102内には、上方が開口し容器を収容する低温収容槽120を備えた容器収容手段110が、作業室102を移動可能に配置されている。
また、
図1、
図3乃至
図5に示すように、保管ラック151を低温格納室101に出し入れする保管ラック搬送手段152と、保管プレートPを保管ラック151と低温収容槽120との間で移送する保管プレート移送手段153(保管プレート引出手段155および保管プレート移載手段156で構成されている)と、保管プレートPに保持された容器Cを低温収容槽120内で個別にハンドリングするピッキング手段154が、容器収容手段110と一体に移動可能に配置されている。
【0024】
なお、本実施形態では作業室102の端部には、外部から保管プレートPを出し入れするための搬出入室103が設けられている。
搬出入室103内には、保管プレートPが載置されるプレート旋回テーブル161が搬出入扉162側および容器収容手段110を向くように旋回可能に配置されており、搬出入扉162を介して外部との保管プレートPの出し入れが行われるとともに、容器収容手段110が隣接する位置まで移動して、保管プレート移載手段156によって低温収容槽120との間で保管プレートPの移載が行われるように構成されている。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係る低温保管システム100の容器収容手段110について、
図6乃至
図10に基づいて説明する(なお、それぞれの図は、説明のため一部構成の省略、簡略化して示されており、実際の寸法、構造を正確に表すものではない。)。
容器収容手段110は、
図6、
図7に示すように、周囲を断熱壁127で囲まれて上方が開口し容器を収容する低温収容槽120を備えるとともに、断熱壁127の外側には、後述する冷媒管121に冷媒を供給する冷却手段113が一体に設けられて、低温収容槽120の上方には開閉蓋128が設けられている。
【0026】
開閉蓋128は、
図8に示すように、その下面側にパッキング129が設けられ、
図7に示すように、閉塞時に低温収容槽120の上方を密閉するように構成されている。
なお、開閉蓋128の開閉動作は、閉塞位置での僅かな上下動と
図7の左右方向へのスライドとによって行うが、他の構成との配置関係に応じて、旋回動等の他の動作や、複数の動作を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0027】
容器収容手段110の低温収容槽120の内部は、
図9、
図10に示すように、3つの仕切壁122によって4つ収容領域111に仕切られ、内部を冷却するための冷媒管121が、各仕切壁122の両面および両端の収容領域111の内側壁123に沿って設けられている。
保管プレートPは、
図9に示すように、各収容領域111の底部に載置されるように構成されている。
本実施形態では、各仕切壁122および内側壁123が金属製であり、冷媒管121を仕切壁122、内側壁123に接するように設けることで、各収容領域をより効率的に均等に冷却するように構成されている。
なお、冷媒管121に適宜放熱フィンを設けることで、さらに冷却効率を上げるように構成してもよい。
また、各仕切壁122が金属製であり、冷媒管121を仕切壁122に接するように設けた場合は、冷媒管121を各仕切壁122のいずれか一方の側面に設けてもよい。
【0028】
各収容領域111の内部には、
図9に示すように、パンチング板、アルミ板等で形成された仕切板124が設けられている。
仕切板124と内側壁123あるいは仕切壁122との間には、冷媒管121が存在する冷気循環空間112が形成されている。
仕切板124の内部の断面積は、ピッキング手段、保管プレート移載手段等による作業が支障なく行われるように設定されている。
このことにより、冷気循環空間112内で均等に温度を低下させ、仕切板124を介して各収容領域111をより効率的に均等に冷却することができる。
なお、仕切板124の下端を図示のように底部と離間させた場合には、冷気循環空間112がダクトとして機能し、冷媒管121によって冷却された空気が冷気循環空間112内を下降して各収容領域111の底部に載置される保管プレートPに効率的に送り込むことが可能となり、確実に保管プレートPが支持する容器を極低温の環境下に保つことができる。
なお、この空気の流れをさらに積極的に行うため、
図11に示すように、冷気循環空間112の上方に、循環ファン125を設けてもよい。
【0029】
各収容領域111の上方の開口には、
図10に示すように、上部壁126が側方から一部を閉塞するように設けられており、冷媒管121が上部壁126の下面に沿って設けられている。
このことで、低温格納室101の上方空間を移動した際、あるいは、ピッキング手段、保管プレート移載手段等による作業が行われる際に、各収容領域111内の冷気が外部に漏れて温度が上昇することを抑制できるとともに、上部壁126の下面に沿って設けられた冷媒管121によって効果的に各収容領域111内を冷却することが可能となる。
【0030】
以上のように構成された本発明の一実施形態に係る低温保管システム100における指定の容器Cの抽出動作について説明する。
まず、作業者が、空の保管プレートPを搬出入室103の側面の搬出入扉162からプレート旋回テーブル161に載置し、搬出入扉162を閉じた後に、制御装置(図示せず)に開始指示を与える。
空の保管プレートPは、プレート旋回テーブル161が旋回することにより、容器収容手段110に対向する側に向けられ、容器収容手段110は保管プレート移送手段153と一体となって搬出入室103に隣接する位置まで移動する。
この状態で、保管プレート引出手段155が保管プレートPをプレート旋回テーブル161から取り出し、保管プレート移載手段156が、容器収容手段110のいずれかの収容領域111の底部に空の保管プレートPを移載する。
【0031】
次いで、容器収容手段110が、指定の容器Cを支持する保管プレートPが収容された保管ラック151の位置まで移動する。ここで、保管ラック搬送手段152が保管ラック151を低温格納室101から上方に引き上げ、保管プレート引出手段155が指定の容器Cを支持する保管プレートPを保管ラック151から取り出す。
そして、保管プレート移載手段156が移動し、指定の容器Cを支持する保管プレートPを容器収容手段110のいずれかの収容領域111の底部に移載する。
【0032】
この状態で、ピッキング手段154が動作して、指定の容器Cが空の保管プレートPに移載される。
その後、上記の動作と逆の手順で、指定の容器Cを支持する保管プレートPは元の保管ラック151に戻されて低温格納室101に格納され、指定の容器Cが移載された保管プレートPは、搬出入室103に戻されて作業者が搬出入扉162から搬出する。
取り出すべき容器Cを複数指定した場合は、指定の容器Cを支持する保管プレートPを低温格納室101から取り出し、戻すまでの工程が複数回繰り返される。
【0033】
以上の動作において、低温収容槽120内の収容領域111を低温格納室101に準ずる極低温に維持されているため、容器Cが作業室102の雰囲気温度に曝される時間はごく短時間であり、再び保管される容器Cに収められた試料の変質や容器Cへの結露の発生を防止することができ、試料が変質してダメージを与えることなく、また、凍結して保管プレートPと容器Cが付着して次回の容器Cのピッキングが困難となることがない。
また、低温収容槽120内が仕切壁122によって複数の収容領域111に仕切られたことにより、低温格納室101の上方空間を移動した際、あるいは、ピッキング作業等が行われる際にも、収容領域111の冷気が外部に漏れることが少なくなり、これらの作業が複数回行われても温度の上昇が抑制され、確実に容器Cを極低温の環境下に保つことができる。
【0034】
本発明に係る低温保管システム100は、上述した実施形態のものに限定されるものではなく、容器収容手段が、上方が開口し容器を収容する低温収容槽と、該低温収容槽内を冷却する冷媒管とを備えたものであれば、個々の具体的な構成は公知の低温保管システムの構成と置換可能である。
また、冷凍保管される対象は、化学、生化学、生体学、製薬などの基礎研究あるいは応用研究に用いられる試料等に限定されるものではなく、いかなる対象であってもよい。