特許第6133074号(P6133074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133074体型補整衣料に適した弾性編地及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133074
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】体型補整衣料に適した弾性編地及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/18 20060101AFI20170515BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20170515BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20170515BHJP
   D01F 6/66 20060101ALI20170515BHJP
   A41D 31/00 20060101ALI20170515BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20170515BHJP
   D04B 1/24 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   D04B1/18
   D02G3/38
   D02G3/04
   D01F6/66
   A41D31/00 501E
   A41D31/00 501F
   A41D27/00 C
   D04B1/24
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-24290(P2013-24290)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-152420(P2014-152420A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】矢田 和也
(72)【発明者】
【氏名】實成 泰
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−013004(JP,A)
【文献】 特開2004−019059(JP,A)
【文献】 特開2003−166152(JP,A)
【文献】 特開2001−200455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D27/00−27/28
31/00−31/02
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性糸及び非弾性糸からなる伸長状態で着用される弾性編地であって、同時2軸引張伸張試験機に編地を装着し、X軸方向とY軸方向のいずれも有効寸法7.2cmの編地を、該試験機のX軸方向に30%、Y軸方向に0%伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が100cN≦A≦800cNであり、かつ、X軸方向100%、Y軸方向40%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が100cN≦B≦800cNであり、そして、前記弾性糸としてカバーリング糸を用い、編地中の該カバーリング糸を抜出し、芯糸である弾性糸から被覆している非弾性糸を解撚し、該弾性糸及び該非弾性糸をたるみのない状態にした時の該弾性糸の長さをC、該非弾性糸の長さをDとしたとき、3.0≦D/C≦4.5であることを特徴とする前記弾性編地。
【請求項2】
前記弾性糸の少なくとも一部がルーピング組織で編成されている、請求項に記載の弾性編地。
【請求項3】
前記編地より抜き出した弾性糸を300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の伸長時の200%時の伸長荷重E(cN)と回復時の200%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.65である、請求項1又は2に記載の弾性編地。
【請求項4】
前記編地より抜き出した弾性糸を300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の300%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.20cN/dtexである、請求項1〜のいずれか1項に記載の弾性編地。
【請求項5】
前記弾性糸として2,2‐ジメチルプロピレン基成分の側鎖を含有したポリアルキレンエーテルジオールから成る糸を少なくとも1種使用した、請求項1〜いずれか1項に記載の弾性編地。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の弾性編地のY軸方向を着用者身体の高さ方向に、X軸方向を着用者身体の横方向に、配した体型補整衣料。
【請求項7】
前記弾性糸のカバーリング時に芯糸となる弾性糸が送り出される速度Hに対して、非弾性糸により被覆された後のドラフトローラー速度Iの比I/Hが、4.0≦I/H≦5.0であるカバーリング糸を用いる工程を含む、請求項に記載の弾性編地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性編地に関し、さらに詳しくはボディシェイパーやファンデーションなどの体型補整用衣料に好適な弾性編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、女性を中心として、体型を美しく見せたいという強いニーズがある。このようなニーズに応えるための技術として、ガードルやボディシェイパーなどの各種のボトム衣料が開発されている。例えば、ガードルには、体型補整などの目的に応じてソフトからハードの種々のパワーレベルの弾性が要求される。しかし、ソフトパワーな特性を有する生地では、着脱性や動作感や編地の追随性には優れるものの、十分な体型補整効果が得にくい。一方、ハードパワーな生地では、体型補整効果はなされるものの、一般に伸度が不足するため、動作に追随しがたく、突っ張り感や、ずれの様な日常動作の妨げになったり、着用時の窮屈感等による不快感が生じたりして、十分に満足できる着用快適性は得られていない。
【0003】
十分な体型補整がなされ、着脱がしやすく、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有した快適な体型補整衣料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−140719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、十分な体型補整がなされ、着脱がしやすく、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有した快適な体型補整衣料用の弾性編地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記従来技術の問題に鑑み、人の動作による皮膚の伸びに追随する編地の伸長特性について鋭意検討し実験を重ねた結果、編地の経及び緯の伸長荷重が着用感に大きく影響を及ぼすことを見出し、編地の経及び緯の伸長荷重を所定の伸長荷重範囲内に抑えることで、適切な体型補整をなしつつ、着脱性や動作性に優れ、かつ、長時間着用した状態においてもストレスを感じにくい、快適な体型補整衣料用の弾性編地が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0007】
[1]弾性糸及び非弾性糸からなる伸長状態で着用される弾性編地であって、同時2軸引張伸張試験機に編地を装着し、X軸方向とY軸方向のいずれも有効寸法7.2cmの編地を、該試験機のX軸方向に30%、Y軸方向に0%伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が100cN≦A≦800cNであり、かつ、X軸方向100%、Y軸方向40%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が100cN≦B≦800cNであり、そして、前記弾性糸としてカバーリング糸を用い、編地中の該カバーリング糸を抜出し、芯糸である弾性糸から被覆している非弾性糸を解撚し、該弾性糸及び該非弾性糸をたるみのない状態にした時の該弾性糸の長さをC、該非弾性糸の長さをDとしたとき、3.0≦D/C≦4.5であることを特徴とする前記弾性編地。
【0009】
]前記弾性糸の少なくとも一部がルーピング組織で編成されている、前記[1]に記載の弾性編地。
【0010】
]前記編地より抜き出した弾性糸を300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の伸長時の200%時の伸長荷重E(cN)と回復時の200%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.65である、前記[1]又は[2]に記載の弾性編地。
【0011】
]前記編地より抜き出した弾性糸を300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の300%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.20cN/dtexである、前記[1]〜[]のいずれかに記載の弾性編地。
【0012】
]前記弾性糸として2,2‐ジメチルプロピレン基成分の側鎖を含有したポリアルキレンエーテルジオールから成る糸を少なくとも1種使用した、前記[1]〜[]のいずれかに記載の弾性編地。
【0013】
]前記[1]〜[]のいずれかに記載の弾性編地のY軸方向を着用者身体の高さ方向に、X軸方向を着用者身体の横方向に、配した体型補整衣料。
【0014】
]前記弾性糸のカバーリング時に芯糸となる弾性糸が送り出される速度Hに対して、非弾性糸により被覆された後のドラフトローラー速度Iの比I/Hが、4.0≦I/H≦5.0であるカバーリング糸を用いる工程を含む、前記[]に記載の弾性編地の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弾性編地を使用することで、十分な体型補整がなされ、着脱がしやすく、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有した快適な体型補整衣料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の弾性編地は、所定の伸長荷重を有する非弾性糸と弾性糸からなる編地であって、かかる弾性編地を使用することで、体型補整の効果を十分に得ながら、着脱が容易で、動作性が良く、長時間着用においてもストレスを感じにくい着用感の優れた快適な体型補整衣料を得ることができる。かかる作用効果は、弾性編地を使用する伸度領域において、編地の伸長荷重を一定の範囲内に制御することで得られる。
【0017】
本発明に係る体型補整衣料とは、下半身の股下から2つに分かれ、少なくとも臀部と太腿を覆う衣料である。また、股下は、足首丈、ひざ丈など自由にデザインすることができる。上部についても、腰部からアンダーバスト位置まで自由にデザイン可能である。
【0018】
本発明に係る体型補整衣料とは、本発明の弾性編地を少なくとも一部に配しているものであり、好ましくは、太腿を覆う部分に配したものである。
【0019】
本発明者らは、本発明の弾性編地を用いて作製した体型補整衣料を用いて実験を重ねた結果、日常の動作における編地の伸長領域は、身体の高さ方向では平均0〜40%、身体の幅方向では平均30〜100%の範囲であることを見出した。日常生活において、ツッパリ感がなく快適な着用感と、良好な着脱容易性を発揮するためには、同時2軸引張伸張試験機にてX軸方向30%、Y軸方向0%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が100cN≦A≦800cNであり、かつ、X軸方向100%、Y軸方向40%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が100cN≦B≦800cNであることが必要であり、好ましくは100cN≦A≦770cNかつ100cN≦B≦770cNである。
AとBの両者が100cN以上である場合、着用時に体を締め付ける力が十分であり、体型の補整効果を十分に発揮できる。また、AとBの両者が800cN以下であることで、着脱時に生地が突っ張らず、着脱が容易となる。AとBのいずれか一方又は両者が100cN未満では、生地の動作に対する追随性が悪く、動作時に生地のたるみの発生等により、不快感が生じてしまう。また、AとBのいずれか一方又は両者が800cN超では、締め付け感が過大になってしまうことや、ツッパリ感により動きにくさが出てしまい不快感につながってしまう。つまり、本発明においては、AとBの両者が100cN以上800cN以下であることが必要である。
なお、編地の編み方向を装置のX軸方向とし、編地の編み方向と垂直な方向をY軸として測定しても、又は編地の編み方向を装置のY軸方向とし、編地の編み方向と垂直な方向をX軸として測定しても構わない。また、A及びBの値を変化させるには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで、カバーリング時のI/Hを変化させることで、また、編地作成時の編み込み長を変えることで、そして編み組織を変えることで容易に可能となる。
【0020】
本発明の弾性編地の作製において使用する弾性糸は、ベアでもカバーリング糸でもエアー混繊等でも構わない。見栄えの良い編地は、弾性糸を非弾性糸によって被覆したカバーリング糸を用いることで得ることができる。本発明の弾性編地の作製において使用するカバーリング糸としては、弾性糸に非弾性糸を1重に被覆したシングルカバーリング糸、弾性糸に非弾性糸を2重に被覆したダブルカバーリング糸のいずれでもよい。
【0021】
本発明における弾性編地においては、編地中から抜き出した一定の長さのカバーリング糸を解撚し、弾性糸と非弾性糸に分割した後、弾性糸には繊度(dtex)の0.001倍、非弾性糸には繊度繊度(dtex)の0.1倍の荷重(g)を糸の端にかけ、荷重をかけていない側を持ち、糸を宙吊りにして、たるみのない状態にした後の、弾性糸の長さ(Ccm)、及び非弾性糸の長さ(Dcm)を測定した場合、カバーリング糸の非弾性糸と弾性糸の長さ比D/Cは、3.0≦D/C≦4.5であることが好ましく、より好ましくは3.2≦D/C≦4.4である。さらに好ましくは3.3≦D/C≦4.3である。D/Cが3.0未満では、編地のパワーが弱く、身体の曲げ伸ばし時に皺が発生したり、編地にゆるみが生じたりすることがあるため好ましくなく、D/Cが4.5を超える場合には、編地にツッパリ感が生じてしまい、着脱時に着脱しにくい編地となってしまうため、好ましくない。
測定の詳細については、以下の実施例において説明する。D/Cの値を変化させるには、種々の方法にて可能であるが、カバーリング時のI/Hを変化させることで、また、編地加工時の条件を変化させることで容易に可能となる。
【0022】
カバーリング糸の芯糸に使用される弾性糸としては、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系等の弾性糸が挙げられる。例えば、ポリウレタン系弾性糸では、乾式紡糸又は溶融紡糸により得られるものが使用できる。弾性糸の破断伸度は、編地に配した時に良好な伸縮性を有するために、400〜1000%であることが好ましい。弾性糸に用いるポリマーに特に限定されないが、生地の良好な感触や伸縮性を得るためには、ポリアルキレンエーテルジオール成分に2,2‐ジメチルプロピレン基や3‐メチルテトラメチレン基の様な側鎖を持つ成分を含有したものが好ましい。より好ましくは、2,2‐ジメチルプロピレン基成分の側鎖を含有したポリアルキレンエーテルジオールである。弾性糸の繊度は、使用する編み機やゲージ、編組織により適宜選択されるが、通常は22〜130dtexの範囲とされる。編地の破裂強度及び厚み感の観点から、44〜130dtexの繊維の使用が好ましい。また、弾性糸はベア又は被覆糸のいずれであってもよい。また、弾性糸には、通常用いられる他の化合物、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。
【0023】
カバーリング糸において、被覆に使用される非弾性糸としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維(ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリプロピレン、アクリル系繊維等の合成繊維、キュプラ、レーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらの素材で形成されたブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等を任意に使用できる。繊維の断面形状としては丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意の断面形状が可能である。また、繊維の形態は特に限定されず、原糸、及び仮撚等を施した捲縮加工糸が使用できる。さらに、長繊維、紡績糸、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸としての使用が可能である。さらには、繊維製造時の混合でなく、編機上で2種以上の繊維を混合することも無論可能で、経編機では、2種以上の繊維をそれぞれに対応する筬を準備して編成すればよい。非弾性糸の繊度としては、例えば、11〜44dtexが可能であり、編地の破裂強度及び厚み感の観点から、11〜33dtexの繊維の使用が好ましい。なお、綿及び羊毛については、それぞれ当業者に公知の換算式により使用繊維の太さを求めればよい。
【0024】
本発明の弾性編地に使用されるカバーリング糸の作製においては、弾性糸のカバーリング時に芯糸となる弾性糸が送り出される速度H(m/分)に対して、非弾性糸により被覆された後のドラフトローラー速度I(m/分)の比I/Hが4.0≦I/H≦5.0であることが好ましく、より好ましくは4.2≦I/H≦4.8である。I/H≧4.0とすることで、カバーリング糸を用いて、編地を作製した時に十分な締め付け効果が得られる。
【0025】
本発明の弾性編地は、丸編機、肌着サイズの小寸丸編機、経編機、横編機により製造でき、ジャガード編成可能な編機の使用も可能である。見栄えの良い編地は、弾性糸の少なくとも一部がルーピングされている組織構造とすることにより容易に得られる。これらの編機のゲージについては、任意なゲージの編機が使用可能であるが、横編機では14〜16ゲージ、経編機及び丸編機では22〜36ゲージ程度の編機の使用が好ましい。
【0026】
染色仕上げ方法としては、通常の染色仕上げの工程が使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ビーム染色機、ウインス染色機、パドル染色機など任意に行うことができ、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤を使用することもできる。
【0027】
本発明の弾性編地より抜き出した弾性糸は、300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の伸長時の200%時の伸長荷重E(cN)と回復時の200%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.65であることであることが好ましい。より好ましくはF/E≧0.70である。F/Eが0.65未満である場合、編地の動作時の追随性が悪く、動作感が悪くなってしまう。また、F/Eの値を高めるためには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで容易に可能となる。
【0028】
本発明の弾性編地より抜き出した弾性糸は、300%の伸長回復を繰り返した時、3回目の300%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.20cN/dtexであることが好ましく、より好ましくはG≦0.15cN/dtexである。Gが0.20cN/dtexを超えると、編地のパワーが強すぎるため、弾性編地を用いて体型補整衣料を作製した場合に着脱性が悪くなる。また、Gの値を変化させるためには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで容易に可能となる。
【0029】
また、本編地中におけるカバーリング糸の破断伸度は、編地に配した時に良好な伸縮性を有するために、100%以上であることが好ましい。また、編地の良好な伸縮性及びパワー感を得るためには、編地中のカバーリング糸の混率は25%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。
【0030】
本発明の弾性編地は、弾性糸と非弾性糸からなり、使用する非弾性糸としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維(ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリプロピレン、アクリル系繊維等の合成繊維、キュプラ、レーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらの素材で形成されたブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等を任意に使用できる。繊維の断面形状としては丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意の断面形状が可能である。また、繊維の形態は特に限定されず、原糸、及び仮撚等を施した捲縮加工糸が使用できる。さらに、長繊維、紡績糸、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸としての使用が可能である。さらには、繊維製造時の混合でなく、編機上で2種以上の繊維を混合することも無論可能で、経編機では、2種以上の繊維をそれぞれに対応する筬を準備して編成すればよい。非弾性糸の繊度としては、例えば、20〜160dtexが可能であり、編地の破裂強度及び厚み感の観点から、20〜110dtexの繊維の使用が好ましい。なお、綿及び羊毛については、それぞれ当業者に公知の換算式により使用繊維の太さを求めればよい。
【0031】
着用における補整性の効果を評価するために、本発明の弾性編地を用いて体型補整衣料を作製し、着用時のウエスト、ヒップ、太腿の3点において、周囲長を測定した。十分な補整効果が得られているかは、ウエスト(へその周囲)、ヒップ(未着用における最も周囲長の大きい部分)、太腿(股関節直下10cm)の3点において未着用の状態の3点の合計に比べ、着用時の周囲長の3点の合計が3.0%以上小さくなっていることが好ましく、より好ましくは4.0%以上である。
【0032】
着用における精神的なストレスを評価するために、心電図から得られるLF/HF値比による評価を行った。本発明における弾性編地において作製された体型補整衣料の着用において、快適感を得るためには、着用直後のLF/HF値をα、6時間着用後のLF/HF値をβとしたとき、β/α≦1.20であることが好ましく、より好ましくは、β/α≦1.10である。心電図の心拍周期の周波数解析から得られるLFは0.1Hz付近にピークを持つ低周波数成分であり、自律神経成分の交感神経成分及び副交感神経成分の活動を表している。HFは0.3Hz付近にピークを持つ高周波数成分であり、副交感神経成分の活動を表している。この2つの成分における面積比がLF/HF比であり、この値が小さいほどストレスが少ない状態を表す。また、ストレスを感じることで、自律神経成分の交感神経成分が高くなるため、このLF/HF値は大きくなることを表している。このため、β/αが1.20を超えると、着用において、ストレスを感じていることを示しており、着用することで不快と感じていることを表している。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における評価は下記の方法で行った。
【0034】
(1)編地の伸長荷重測定
測定は、同時2軸引張伸張試験機(STRIP BIAXIAL TENSILE TESTER KES-G2-SB1 カトーテック社製)において、行った。同時2軸引張伸張試験機においては、X軸方向及びY軸方向の2方向に編地を伸長可能であり、衣料を着用した際の多方向に伸長される編地の再現が可能となる。また、本試験機では、X軸方向及びY軸方向にて伸長量を変えることが可能であり、X軸及びY軸方向に異なった伸長率(例えば、X軸方向に80%伸長しながらY軸方向に30%伸長する)にて編地を伸長できる。また、同時2軸引張伸張試験機における編地の測定時においては、装置のX軸方向を編地の経とし、Y軸方向を編地の緯として測定してもよく、また、装置のX軸方向を編地の緯とし、Y軸方向を編地の経として測定してもよい。
編地を9.0cm×9.0cm ( X軸側×Y軸側)に編み方向に垂直及び平衡に裁断し、同時2軸引張伸張試験機に取り付ける。このとき、荷重がかかる編地の有効寸法は7.2cm×7.2cmであり、伸度を換算する有効長は7.2cmである。引張速度300mm/分で定荷重伸張を行い、X軸方向30%、Y軸方向0%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)、及びX軸方向100%、Y軸方向40%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)を、それぞれ、求めた。また、N=2の平均値を求めた。
【0035】
(2)カバーリング糸の非弾性糸と弾性糸の長さ比の測定
編地中から抜き出した一定の長さのカバーリング糸を解撚し、弾性糸と非弾性糸に分割した後、弾性糸には繊度(dtex)の0.001倍、非弾性糸には繊度繊度(dtex)の0.1倍の荷重を糸の端にかけ、荷重をかけていない側を持ち、糸を宙吊りにして、たるみのない状態にした後の、弾性糸の長さ(Ccm)、及び非弾性糸の長さ(Dcm)を測定した。その後、カバーリング糸の非弾性糸と弾性糸の長さ比D/Cを算出した。
なお、弾性糸及び非弾性糸の繊度については、編地中からカバーリング糸を抜出し、解撚し、弾性糸と非弾性糸に分割した後、長さと重量を測定すればよい。もしくは、編地の非弾性糸を溶解して弾性糸のみとして、弾性糸を解き、長さと重量を測定すればよい。
【0036】
(3)弾性糸の伸長荷重比測定
次の方法により測定した。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)
引っ張り試験機:定速伸長型引張り試験機(RTG−1210 株式会社エー・アンド・デイ社製)
初荷重:0.1mN
引っ張り、戻し速度:300mm/min
引っ張り長:10cm(100%伸長)
引っ張り回数:3回伸長を繰り返す。
測定:上記条件で繰り返し、3回目の伸長時の200%伸長時荷重E(cN)及び回復時の200%伸長時応力荷重F(cN)を求め、次式により伸長荷重比F/Eを求めた。
伸長荷重比F/E(−)=(回復時の200%伸長時応力荷重F(cN))/(伸長時の200%伸長時荷重E(cN))
【0037】
(4)弾性糸の100%伸長応力測定
次の方法により測定した。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)
引っ張り試験機:定速伸長型引張り試験機(RTG−1210 株式会社エー・アンド・デイ社製)
初荷重:0.1mN
引っ張り、戻し速度:300mm/min
引っ張り長:10cm(100%伸長)
引っ張り回数:3回伸長を繰り返す。
測定:上記条件で繰り返し、3回目の100%伸長時応力G(cN/dtex)を求める。
なお、弾性糸の繊度については、編地中における弾性糸の長さと重量から測定できる。具体的には、編地中から弾性糸を抜き出し、弾性糸を解き、長さと重量を測定すればよい。
【0038】
(5)補整効果の評価
未着用時において、各被験者のウエスト・ヒップ・太腿にマーキングをしておき、周囲長を測定後、各被験者にガードルを着用させ、着用後の各被験者のウエスト・ヒップ・太腿の周囲長を測定した。その後、各部の補整量の合計値を算出した。補整率を以下の式により求めた。
補整率(%)=((未着用時の周囲長の(cm)−着用時の周囲長(cm)))/(未着用時の周囲長の(cm))×100
ウエスト、ヒップ、太腿の補整率を、それぞれ、算出し、その合計値を用いて、補整効果を以下の評価基準で評価した。点数が高いほど、補整効果が高いことを表している。
5(4.0%≦補整率の合計値):十分な補整効果あり
4(3.0%≦補整率の合計値<4.0%):補整効果あり
3(2.0%≦補整率の合計値<3.0%):やや補整効果が弱い
2(1.0%≦補整率の合計値<2.0%):補整効果が弱い
1(補整率の合計値<1.0%):補整効果が非常に弱い
【0039】
(6)ズレ計測
以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、各パネラーにて着用した。
着用直後にウエストバンドの上部の位置及び右脚及び左脚の裾部の端において、人体にマーキングをしておき、その後、トレッドミル上で速度4.0km/hの速度で3分間歩行及び、膝屈伸動作を伴う椅子からの立ち上がり、座りの動作を5回、立位の状態から膝を抱え込む状態までしゃがみ込んだ後立ち上がる動作を5回行った後、着用直後のマーキングの位置より、ガードルがどれだけずれているかを測定した。ウエストの前部、背部のズレの平均をウエスト部のズレ量、裾部の前部、背部のズレの平均を裾部のズレ量とした。その後、ウエスト部のズレ量及び裾部のズレ量の合計値を用いて、以下の評価基準で、評価した。
5(1.5cm≦ズレ量の合計値):ズレにくい
4(2.0cm≦ズレ量の合計値<1.5cm):ややズレにくい
3(2.5cm≦ズレ量の合計値<2.0cm):ズレにくくも、ズレやすくもなく
2(3.0cm≦ズレ量の合計値<2.5cm):ややズレやすい
1(3.0cm<ズレ量の合計値):ズレやすい
【0040】
(7)着用における精神的なストレス評価
株式会社モンテシステム製のMPシステム(MP150)及び、ワイヤレス生体センサー(RF−ECG)を用い、ワイヤレス生体センサーを各パネラーの胸部に設置した。その後、各パネラーに実施例及び比較例にて得られた編地を用いて作製したガードルを着用させた直後に5分間安静にした。その後、5分間心電図を測定した。この時の測定値をA1とする。その後、ガードルを着用した状態で、6時間日常生活を送った後、再度5分間の安静の後、5分間心電図を測定した。この時の測定値をA2とする。その後、検出した信号から抽出した心拍信号及び呼吸信号から自律神経成分の交感神経成分及び副交感神経成分の活動(LF)と副交感神経成分(HF)を算出し、交感神経成分及び副交感神経成分の活動(LF)と副交感神経成分(HF)から導出したパラメータ(LF/HF)をストレス値とし、それぞれ、A1から算出したLF/HF値、A2から算出したLF/HF値において、6時間後のストレス変化値=(A2から算出したLF/HF値/A1から算出したLF/HF値)とし、着用直後のストレス値を基準としたストレスの経時変化として算出した。
【0041】
(8)着脱容易性評価
以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、各パネラーにて着用時及び着脱時に必要な時間を測定した。測定は、ストップウォッチを使用し、未着用の状態から着用し終わるまでの時間(着衣に要する時間)と着用の状態から完全に着脱するまでの時間(脱衣に要する時間)を測定し、両者の合計値(着脱にかかる時間)を算出し、平均値で示した。
着脱にかかった時間を以下の評価基準で評価した。点数が高いほど、着脱にかかる時間が短く、着脱が容易であることを表している。
5(着脱時間<26秒):着用しやすい
4(26秒≦着脱時間<29秒):やや着脱しやすい
3(29秒≦着脱時間<32秒):着脱しやすくもなく、着脱しにくくもない
2(32秒≦着脱時間<35秒):やや着脱しにくい
1(35秒≦着脱時間):着脱しにくい
【0042】
(9)動作感
以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、各パネラーにて着用した。その後、トレッドミル上で速度4.0km/hの速度で3分間歩行及び、膝屈伸動作を伴う椅子からの立ち上がり、座りの動作を5回、立位の状態から膝を抱え込む状態までしゃがみ込んだ後立ち上がる動作を5回行った後、アンケート調査を行った。アンケートは、着用時の動作感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下の評価基準で評価した。
5:非常に動きやすい
4:動きやすい
3:動きやすくもなく、動きづらくもない
2:やや動きにくい
1:動きづらい
【0043】
(10)快適感
前記の動作性の評価と同様の方法で試験した。アンケートは、着用時の快適感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下の評価基準で評価した。
5:非常に快適である
4:快適である
3:快適でもないが、不快でもない
2:やや不快である
1:不快である
【0044】
以下の実施例及び比較例にて使用した各弾性糸は以下の方法にて製造した。
平均分子量1,800のポリテトラメチレンエーテルグリコール4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。次いで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度5,200ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を0.5重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分及び熱風温度325℃で乾式紡糸して、78dtex/8フィラメント(PU1とする)の繊維を製造した。
【0045】
テトラメチレン基と2、2−ジメチルプロピレン基からなる平均分子量1,800で2、2−ジメチルプロピレン基の共重合率が10モル%である共重合ポリアルキレンエーテルジオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。次いで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度4,500ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を1.8重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分及び熱風温度325℃で乾式紡糸して、78dtex/8フィラメント(PU2とする)、及び、44dtex/4フィラメント(PU3とする)の繊維を製造した。
【0046】
テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基からなる平均分子量1,800で3−メチルテトラメチレン基の共重合率が10モル%である共重合ポリアルキレンエーテルジオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。次いで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度4,800ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。
このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を1.8重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分及び熱風温度325℃で乾式紡糸して、78dtex/8フィラメント(PU4とする)、及び44dtex/4フィラメント(PU5とする)の繊維を製造した。
【0047】
[実施例1]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU2に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU2の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0048】
[実施例2]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU2に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU2の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.0において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0049】
[実施例3]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU4に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU4の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0050】
[実施例4]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU2に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU2の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は340cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0051】
[実施例5]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU2に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU2の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は360cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0052】
[比較例1]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU1に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU1の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=3.0において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0053】
[比較例2]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU1に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU1の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=4.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は360cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0054】
[比較例3]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機((SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU1に、ナイロン加工糸22dtex/10fを撚り数1400T/mで、かつ、PU1の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後ドラフトローラー速度Iの比がI/H=3.6において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸78dtex/56fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は355cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0055】
[比較例4]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。得られた編地はパドル染色機を使用して、ナイロンの染色を行い、脱水、乾燥後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
編成では、PU3に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU3の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後のドラフトローラー速度Iの比がI/H=3.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、編み込み長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0056】
[比較例5]
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径13インチ、28ゲージのコンピュータ制御丸編機(SANTONI社製 SM8−8 TOP1)を使用して編地を作製した。
編成では、PU5に、ナイロン加工糸22dtex/20fを撚り数1400T/mで、かつ、PU5の送り出し速度Hに対する、ナイロンにて被覆した後に巻き取るときの速度Iの比がI/H=3.5において、カバーリングした弾性糸を用いて、ナイロン加工糸56dtex/48fと天竺組織のプレーティング編みにより編成し、腹部を覆う部分では、編み組織をニットとミスとが混在するように編成し、編地を編成した。なお、ランナー長は350cm/周にて編成を行った。得られた編地はパドル染色機を使用して、染色を95℃で45分間行い、脱水後、ボディサイズに模した型枠にセットし、110℃、20秒でスチームセットした。
【0057】
実施例1〜5、及び比較例1〜5の編地の評価結果、及び、編地を使用し、ガードルを作製した後に着用試験を行った結果を、以下の表1に示す。また、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配した。
【0058】
実施例1〜5、及び比較例1〜5におけるガードルの作製においては、太腿部及び股部については、S、M、Lのレディース用マネキンにフィットするように、ガードルを縫製した。着用については、それぞれ、SはSサイズの被験者に、MはMサイズの被験者に、LはLサイズの被験者に対応したガードルを着用させた。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1の編地においては、生地伸長荷重の平均値Aが138cNであり、Bが744cNであった。得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、十分な体型補整効果が得られていながら、長時間の着用においても、ストレスを感じにくく、着脱性、動作性、快適性において良好な結果が得られた。
【0061】
実施例2〜5の編地においては、得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、実施例1の編地に比べ、効果は弱いものの良好な結果が得られた。
【0062】
比較例1〜3の編地においては、編地のパワーが強すぎるため、補整効果は十分あるものの、着脱が困難であり、動作性及び快適性に劣る結果となった。
【0063】
比較例4と5の編地においては、編地のパワーが弱く、着脱性は良好なものの、補整性が弱く、動作性及び快適性に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の弾性編地を使用することで、体型補整の効果を十分に得ながら、着脱が容易でかつ、動作性が良く、長時間着用においてもストレスを感じにくい着用感の優れた体型補整衣料を得ることができる。