(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成してあり、該半導体発光層上に、前記n型半導体層に接続された第1の電極及び前記p型半導体層に接続された第2の電極を形成した半導体発光素子において、
前記第1の電極及び第2の電極の間に非発光層を設けてあり、
前記半導体発光層は、
第1の半導体発光層と、前記非発光層を介して前記第1の半導体発光層と分離された第2の半導体発光層とを備え、
前記第1の電極と前記第1の半導体発光層とが重畳して配置された第1領域の面積は、前記第1の半導体発光層の50%以上であり、
前記第2の電極と前記第2の半導体発光層とが重畳して配置された第2領域の面積は、前記第2の半導体発光層の50%以上であることを特徴とする半導体発光素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなフリップチップ構造の半導体発光素子にあっては、放熱特性はサファイア基板の厚みに依存する。一方で、加工の観点からサファイア基板の厚みは所要の厚みを要し、一定以上薄くすることができないため、放熱特性という点では限界がある。このため、フリップチップ構造の半導体発光素子では、熱伝導性に優れた金(Au)を用いてバンプを高密度に形成している。しかし、バンプを高密度に形成するためには、高精度の実装技術が必要となり、生産性が悪く、また生産コストが高くなる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、放熱特性が優れた半導体発光素子及び該半導体発光素子を備える発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る半導体発光素子は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成してあり、該半導体発光層上に、前記n型半導体層に接続された第1の電極及び前記p型半導体層に接続された第2の電極を形成した半導体発光素子において、
前記第1の電極及び第2の電極の間に非発光層を設けてあり、前記半導体発光層は、第1の半導体発光層と、前記非発光層を介して前記第1の半導体発光層と分離された第2の半導体発光層とを備え、前記第1の電極と前記
第1の半導体発光層とが重畳して配置された第1領域
の面積は、前記第1の半導体発光層の50%以上であり、前記第2の電極と前記
第2の半導体発光層とが重畳して配置された第2領域
の面積
は、前記
第2の半導体発光層の50%以上であることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る半導体発光素子は、第1発明において、前記第1領域及び第2領域の面積の合計が前記半導体発光層の面積の70%以上であることを特徴とする。
【0011】
第
3発明に係る半導体発光素子は、第
1発明
又は第2発明において、前記第1領域の面積は、好ましくは前記第1の半導体発光層の70%以上であり、前記第2領域の面積は、好ましくは前記第2の半導体発光層の70%以上であることを特徴とする。
【0012】
第
4発明に係る半導体発光素子は、第
1発明
から第
3発明
のいずれか一つにおいて、前記第1の電極は、前記第1の半導体発光層の内側に重畳して配置してあり、前記第2の電極は、前記第2の半導体発光層の内側に重畳して配置してあることを特徴とする。
【0013】
第
5発明に係る半導体発光素子は、第
1発明
から第
4発明のいずれか
一つにおいて、前記第1の電極及び第2の電極の形状それぞれは、前記第1の半導体発光層及び第2の半導体発光層の形状と略相似形をなすことを特徴とする。
【0014】
第
6発明に係る発光装置は、前述の発明のいずれか
一つに係る半導体発光素子と、該半導体発光素子を実装した実装基板とを備えることを特徴とする。
【0015】
第1発明にあっては、半導体発光素子は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層を形成してあり、半導体発光層上に、n型半導体層に接続された第1の電極及びp型半導体層に接続された第2の電極を形成してある。第1の電極及び第2の電極は、半導体発光素子を実装する実装基板との接合に用いる半田が接合される接合面となる。第1の電極と半導体発光層とが重畳して配置された第1領域、及び第2の電極と半導体発光層とが重畳して配置された第2領域の少なくとも一方の面積が、半導体発光層の面積の50%以上である。半導体発光層の面積のうちの少なくとも50%以上が半田との接合面になるため、半導体発光層で発生する熱を第1の電極及び第2の電極を介して実装基板へ放熱することができる。これにより、金(Au)などのバンプを形成することなく、生産性に優れたPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができるので、生産性の向上及び生産コストの低減を図りつつ十分な放熱特性を得ることができる。
また、第1の電極及び第2の電極の間に非発光層を設ける。非発光層とは、例えば、n型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成されていない領域である。第1の電極と第2の電極とは、電極間がショートしないように所要寸法以上離隔して設けられる。仮に第1の電極と第2の電極との間に半導体発光層が存在する場合、第1の電極と第2の電極との間にある半導体発光層で発生した熱は、半導体発光層内を第1の電極又は第2の電極の方向へ基板面と略平行に熱伝導し、第1の電極又は第2の電極の近傍に到達した後、第1の電極又は第2の電極から放熱される。半導体発光層の基板面と平行な面の寸法は、半導体発光層の厚みと比べて非常に大きい。このため、半導体発光層内を第1の電極又は第2の電極の方向へ基板面と略平行に熱伝導する距離が長いほど放熱しにくくなり、ジャンクション(pn接合)温度が上昇する。第1の電極及び第2の電極の間に非発光層を設けることにより、基板面と略平行の熱伝導を少なくすることができるので、放熱特性を向上させて、ジャンクション温度を下げることができる。また、ジャンクション温度を下げることにより、半導体発光素子の寿命を改善するとともに品質を向上させることができる。
また、半導体発光層は、お互いに分離して形成された第1の半導体発光層及び第2の半導体発光層を備える。第1の半導体発光層は、第1領域で第1の電極と重畳して配置され、第2の半導体発光層は、第2領域で第2の電極と重畳して配置されている。そして、第1領域の面積は、第1の半導体発光層の50%以上であり、第2領域の面積は、第2の半導体発光層の50%以上である。各半導体発光層の面積のうち50%以上が半田との接合面になるため、各電極を介して各半導体発光層で発生する熱を実装基板へ放熱することができる。また、半導体発光層は、第1の電極及び第2の電極に対応させて、分離した第1の半導体発光層及び第2の半導体発光層に分けられているので、基板面と略平行の熱伝導を少なくすることができ、放熱特性を向上させて、ジャンクション温度を下げることができる。
【0016】
第2発明にあっては、第1領域及び第2領域の面積の合計が半導体発光層の面積の70%以上である。これにより、半導体発光層の面積のうちの70%以上が半田との接合面になるため、半導体発光層で発生する熱を第1の電極及び第2の電極を介して実装基板へさらに放熱することができる。
【0019】
第
3発明にあっては、第1領域の面積は、好ましくは第1の半導体発光層の70%以上であり、第2領域の面積は、好ましくは第2の半導体発光層の70%以上である。これにより、第1の半導体発光層及び第2の半導体発光層で発生する熱を第1の電極及び第2の電極を介して実装基板へさらに放熱することができる。
【0020】
第
4発明にあっては、第1の電極は、第1の半導体発光層の内側に重畳して配置してあり、第2の電極は、第2の半導体発光層の内側に重畳して配置してある。すなわち、第1の電極の直下には、第1の半導体発光層の大部分が存在し、第2の電極の直下には、第2の半導体発光層の大部分が存在することになるので、第1の電極及び第2の電極のすべての領域を放熱面として有効に利用することができる。
【0021】
第
5発明にあっては、第1の電極及び第2の電極の形状それぞれは、第1の半導体発光層及び第2の半導体発光層の形状と略相似形をなす。すなわち、第1の電極の外形と第1の半導体発光層との外形とが略相似形をなすので、第1の半導体発光層のうち第1の電極の直下に存在しない領域での基板面と略平行の熱の移動距離を均等にすることができ、局部的にジャンクション温度が上昇することを防止することができる。また、同様に、第2の半導体発光層のうち第2の電極の直下に存在しない領域での基板面と略平行の熱の移動距離を均等にすることができ、局部的にジャンクション温度が上昇することを防止することができる。
【0022】
第
6発明にあっては、放熱特性が優れた発光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金(Au)などのバンプを形成することなく、生産性に優れたPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができるので、生産性の向上及び生産コストの低減を図りつつ十分な放熱特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態1の半導体発光素子の断面構造の一例を示す断面図であり、
図2は実施の形態1の半導体発光素子の平面構造の一例を示す模式図である。なお、
図1は半導体発光素子の断面構造を便宜的に示すものであり、実際の寸法を正確に表すものではない。
【0026】
本実施の形態の半導体発光素子(以下、「LEDチップ」、「発光素子」ともいう。)は、複数の発光素子が形成されたウエハを所定の寸法で直方体状に切断して各発光素子を分離したものであり、例えば、LEDチップである。
図1及び
図2において、1はサファイア基板である。サファイア基板1(以下、「基板」という。)は平面視が矩形状であって、光透光性を有し、縦横寸法は、例えば、500μm×1000μmである。なお、寸法はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、半導体発光素子は、基板1の一面にn型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を相互に分離して2つ形成してある。それぞれの半導体発光層を第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)と称する。
【0028】
各半導体発光層は、基板1上に、AlNバッファ層(不図示)、約1μmの厚みのアンドープGaN層(不図示)、n型半導体層2、活性層(不図示)、p型半導体層3がこの順に積層してある。n型半導体層2は、例えば、約1μm程度のn−GaN(窒化ガリウム)層、n−AlGaInNクラッド層などから成る。また、活性層は、GaN/InGaN−MQW(Multi-quantum Well、多重量子井戸層)型活性層などから成る。また、p型半導体層3は、p−AlGaInN層、約0.2μm程度のp−GaN層、コンタクト層としてのp−InGaN層などから成る。なお、アンドープGaN層を形成しない構成であってもよい。
【0029】
半導体発光層の活性層は発光面に相当する領域であり、半導体発光層で発生する熱も活性層及び活性層の近傍の領域が最も多い。本実施の形態では、発光面又は放熱部分としての半導体発光層は、例えば、n型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3が重畳する領域であり、平面視では
図2の符号31、32で示す領域である。
【0030】
各半導体発光層のp型半導体層3の表面には、電流拡散層4を形成してある。電流拡散層4は、例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)である。
【0031】
各半導体発光層の電流拡散層4の表面には、p型の反射膜5を形成してある。反射膜5は、Ag合金等からなり、例えば、250nm程度の膜厚を有する。なお、反射膜5の膜厚は250nmに限定されない。
【0032】
図1に示すように、第1の半導体発光層(
図1の右側のLED構造)の反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、後述の第1の電極7との絶縁を確保するとともに、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成してある。保護膜9は、例えば、SiO
2 膜などである。
【0033】
図1に示すように、第2の半導体発光層(
図1の左側のLED構造)の反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、後述の第2の電極8との接続面を除いて、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成してある。
【0034】
第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)は、配線層6により接続されている。配線層6は、例えば、真空蒸着によりCr/Ni/Auを成膜し、リフトオフ法でパターニングを行うことで形成することができる。
【0035】
図1に示すように、配線層6は、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を直列に接続、すなわち、2個のLEDを直列に接続した構造とするように形成されている。なお、配線層6を適宜形成することにより、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を並列に接続してもよく、あるいは第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を逆並列に接続してもよい。
【0036】
図1に示すように、第1の半導体発光層(
図1の右側のLED構造)上には、n型半導体層2に接続された第1の電極7を形成してある。また、第2の半導体発光層(
図1の左側のLED構造)上には、反射膜5及び電流拡散層4を介してp型半導体層3に接続された第2の電極8を形成してある。
【0037】
第1の電極7及び第2の電極8は、半導体発光素子を実装する実装基板との接合に用いる半田(例えば、Pbフリー半田)が接合される接合面となる。
【0038】
なお、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)との間に配線層6を形成することにより、第1の電極7及び第2の電極8の間には、直列接続された2個のLEDを形成してある。なお、配線層6を適宜形成することにより、第1の電極7及び第2の電極8の間に並列接続された2個のLED、あるいは逆並列された2個のLEDを形成することもできる。
【0039】
第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面を除く部分は、保護膜10を成膜してある。保護膜10は、例えば、SiO
2 膜などである。
【0040】
図1に示すように、各半導体発光層から放出した光は、基板1を透過して符号Aで示すように放射される。
【0041】
図2に示すように、基板1上には第1の半導体発光層31を形成してあり、第1の半導体発光層31は平面視が略矩形状をなす。第1の半導体発光層31は、n型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3が重畳する領域である。同様に、第1の半導体発光層31と分離して基板1上に第2の半導体発光層32を形成してあり、第2の半導体発光層32は平面視が略矩形状をなす。
【0042】
第1の半導体発光層31上には、n型半導体層2に接続された第1の電極7を形成してある。また、第2の半導体発光層32上には、p型半導体層3に接続された第2の電極8を形成してある。第1の電極7及び第2の電極8の平面視の形状は略矩形状であるが、形状は矩形状に限定されるものではなく、三角形状、円形状など他の形状であってもよい。
【0043】
第1領域71は、第1の電極7及び第1の半導体発光層31が重畳して配置された領域である。すなわち、第1領域71は、平面視において第1の電極7及び第1の半導体発光層31が重なる共通の仮想的な領域である。同様に、第2領域81は、第2の電極8及び第2の半導体発光層32が重畳して配置された領域である。
【0044】
本実施の形態では、第1領域71の面積は、第1の半導体発光層31の50%以上であり、第2領域81の面積は、第2の半導体発光層32の50%以上である。各半導体発光層の面積のうち50%以上が半田との接合面になるため、各電極7、8を介して各半導体発光層31、32で発生する熱を実装基板(不図示)へ放熱することができる。これにより、金(Au)などのバンプを形成することなく、一般的な電子部品の実装に用いられる生産性に優れたPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができるので、生産性の向上及び生産コストの低減を図りつつ十分な放熱特性を得ることができる。また、Pbフリー半田は、Auなどのバンプに比較して熱伝導率は良くないが、本実施の形態では、半導体発光層で発生する熱を電極7、8から効率的に放熱することができるので、Pbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができる。
【0045】
また、第1の電極7及び第2の電極8に対応させて、分離した第1の半導体発光層31及び第2の半導体発光層32に分けられている。すなわち、第1の電極7及び第2の電極8の間には、非発光層12が存在する。本実施の形態において、非発光層12は、例えば、n型半導体層2、活性層及びp型半導体層3を積層した半導体発光層が形成されていない領域である。なお、非発光層12の幅、すなわち第1の半導体発光層31と第2の半導体発光層32との離隔寸法(離隔幅)は、所要の面積の発光面を確保できる程度に適宜設定すればよい。例えば、幅を小さくすることにより、基板1上の発光面を広くすることができる。
【0046】
次に、非発光層12を設けた場合の放熱特性について説明する。
図3は半導体発光層と電極との配置例を示す模式図である。
図3の例は、
図1に例示した構造に比べて、より実際の寸法に近づけた態様を示す。
図3に示すように、基板1上にn型半導体層2、活性層30及びp型半導体層3を積層した半導体発光層が形成してある。また、半導体発光層上の一部に第2の電極8を形成してあり、第2の電極8と所要寸法離隔した第1の電極7(不図示)を形成してあるとする。
【0047】
第1の電極7と第2の電極8とは、電極間がショートしないように所要寸法以上離隔して設けられる。
図3に示すように、第2の電極8の直下に存在する半導体発光層(
図3の符号Bで示す領域)で発生した熱は、基板1と略垂直方向に沿って第2の電極8の方へ熱伝導し、第2の電極8から直ちに放熱される。
【0048】
一方、第1の電極(不図示)と第2の電極8との間にある半導体発光層(
図3の符号Cで示す領域)で発生した熱は、半導体発光層内を第2の電極8の方向へ基板1面と略平行に熱伝導し、第2の電極8の近傍に到達した後、第2の電極8から放熱される。半導体発光層の基板1面と平行な面の寸法は、半導体発光層の厚みと比べて非常に大きい。このため、半導体発光層内を第2の電極8の方向へ基板1面と略平行に熱伝導する距離が長いほど放熱しにくくなり、ジャンクション(pn接合)温度が上昇する。
【0049】
図2に示すように、第1の電極7及び第2の電極8の間に非発光層12を設けることにより、基板1面と略平行の熱伝導を少なくすることができるので、放熱特性を向上させて、ジャンクション温度を下げることができる。また、ジャンクション温度を下げることにより、半導体発光素子の寿命を改善するとともに品質を向上させることができる。
【0050】
また、第1領域71の面積は、好ましくは第1の半導体発光層31の70%以上であり、第2領域81の面積は、好ましくは第2の半導体発光層32の70%以上とすることができる。これにより、第1の半導体発光層31及び第2の半導体層32で発生する熱を第1の電極7及び第2の電極8を介して実装基板(不図示)へさらに効率良く放熱することができる。
【0051】
また、第1の電極7は、第1の半導体発光層31の内側に重畳して配置してあり、第2の電極8は、第2の半導体発光層32の内側に重畳して配置してある。すなわち、第1の電極7の直下には、第1の半導体発光層31の大部分が存在し、第2の電極8の直下には、第2の半導体発光層32の大部分が存在することになるので、第1の電極7及び第2の電極8のすべての領域を放熱面として有効に利用することができる。
【0052】
また、第1の電極7及び第2の電極8の形状それぞれは、第1の半導体発光層31及び第2の半導体発光層32の形状と略相似形をなす。
図2の例では、各形状は略矩形状をなしている。すなわち、第1の電極7の外形と第1の半導体発光層31との外形とが略相似形をなすので、第1の半導体発光層31のうち第1の電極7の直下に存在しない領域での基板1面と略平行の熱の移動距離を均等にすることができ、局部的にジャンクション温度が上昇することを防止することができる。また、同様に、第2の半導体発光層32のうち第2の電極8の直下に存在しない領域での基板1面と略平行の熱の移動距離を均等にすることができ、局部的にジャンクション温度が上昇することを防止することができる。
【0053】
次に本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。
図4及び
図5は実施の形態1の半導体発光素子の製造工程を示す説明図である。
図4Aに示すように、有機金属化学気相成長法(MO−CVD法)により、基板(サファイア基板)1上に、最初に約400℃でAlNバッファ層(不図示)を成長させる。その後、約1μmのアンドープGaN層、約1μmのn−GaN層及びn−AlGaInNクラッド層などからなるn型半導体層2、GaN/InGaN−MQW型の活性層(不図示)、さらに、p−AlGaInN層、約0.2μm程度のp−GaN層及びコンタクト層としてのp−InGaN層などからなるp型半導体層3をこの順に形成したLED構造を生成する。MO−CVD装置から取り出した基板1に紫外線を照射しながら、約400℃に加熱し、p型半導体層3の活性化を行う。
【0054】
図4Bに示すように、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、フォトレジストをマスクとして、第1の電極7と接続するためのn型半導体層2を露出させる。
【0055】
図4Cに示すように、真空蒸着あるいはスパッタリング等の成膜法によりITO膜(インジウム錫酸化膜)の透明の電流拡散層4を約30nm成膜し、リフトオフ法によりパターニングする。この後、窒素及び酸素の混合雰囲気中でチューブ炉により約500℃に加熱し、電流拡散層4のアニールを行う。
【0056】
次に、
図4Dに示すように、半導体発光素子(LEDチップ)の中央部15で半導体発光層を電気的に分離するため、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、半導体発光素子の中央部15及び周辺部の半導体発光層を基板1が露出するまでエッチングを行う。
【0057】
次に、
図5Eに示すように、真空蒸着、スパッタリング等の成膜法によりAg等からなるp型の反射膜5を約250nm成膜し、リフトオフ法によりパターニングする。
【0058】
次に、
図5Fに示すように、プラズマCVDにより、SiO
2 膜(保護膜)9を全面に成膜し、希釈フッ酸により、半田と接合するための第1の電極7及び第2の電極8を設ける部分のSiO
2 膜9を除去する。
【0059】
次に、
図5Gに示すように、真空蒸着によりCr/Ni/Auを成膜し、リフトオフ法でパターニングし、第1の電極7、第2の電極8、配線層6を形成する。
【0060】
次に、
図5Hに示すように、プラズマCVDにより、SiO
2 膜(保護膜)10を全面に成膜し、希釈フッ酸により、第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面のSiO
2 膜10を除去する。その後、ウエハの裏面を研磨・ポリッシュを行い、例えば、ウエハの厚みを200μmとする。その後、レーザスクライビングにより素子分離を行って半導体発光素子を完成させる。完成した半導体発光素子は、Pbフリー半田により実装基板に実装することにより発光装置が完成する。
【0061】
図6は実施の形態1の半導体発光素子の平面構造の他の例を示す模式図である。
図2の例では、第1の電極7は、第1の半導体発光層31の内側に重畳して配置してあり、第2の電極8は、第2の半導体発光層32の内側に重畳して配置した構造であったが、これに限定されるものではない。
図6に示すように、第1の電極7、第2の電極8、第1の半導体発光層31、第2の半導体発光層32の基板1上の配置関係に応じて、第1の電極7の一部が第1の半導体発光層31の外側に配置するようにしてもよい。また、同様に、第2の電極8の一部が第2の半導体発光層32の外側に配置するようにしてもよい。この場合、例えば、第1の電極7の一部(周辺部)の直下に第1の半導体発光層31が存在しない部分があるが、第1領域71の面積が第1の半導体発光層31の面積より50%以上、好ましくは70%以上であれば、優れた放熱特性を実現することができる。第2の電極8についても同様である。
【0062】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2の半導体発光素子の断面構造の一例を示す断面図であり、
図8は実施の形態2の半導体発光素子の平面構造の一例を示す模式図である。なお、
図7は半導体発光素子の断面構造を便宜的に示すものであり、実際の寸法を正確に表すものではない。実施の形態2は、実施の形態1のように、2つの半導体発光層を分離して基板上に形成した構成と異なり、基板上に1つの半導体発光層を形成し、形成した半導体発光層の上に第1の電極及び第2の電極を形成している。従って、第1の電極と第2の電極との間に非発光層を具備しない構成である。
【0063】
図7及び
図8において、1はサファイア基板である。サファイア基板1(以下、「基板」という。)は平面視が矩形状であって、光透光性を有し、縦横寸法は、例えば、500μm×1000μmである。なお、寸法はこれに限定されるものではない。
【0064】
図7に示すように、半導体発光素子は、基板1の一面にn型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を形成してある。
【0065】
半導体発光層は、基板1上に、AlNバッファ層(不図示)、約1μmの厚みのアンドープGaN層(不図示)、n型半導体層2、活性層(不図示)、p型半導体層3がこの順に積層してある。n型半導体層2は、例えば、約1μm程度のn−GaN(窒化ガリウム)層、n−AlGaInNクラッド層などから成る。また、活性層は、GaN/InGaN−MQW(Multi-quantum Well、多重量子井戸層)型活性層などから成る。また、p型半導体層3は、p−AlGaInN層、約0.2μm程度のp−GaN層、コンタクト層としてのp−InGaN層などから成る。なお、アンドープGaN層を形成しない構成であってもよい。
【0066】
p型半導体層3の表面には、電流拡散層4を形成してある。電流拡散層4は、例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)である。
【0067】
電流拡散層4の表面には、p型の反射膜5を形成してある。反射膜5は、Ag合金等からなり、例えば、250nm程度の膜厚を有する。なお、反射膜5の膜厚は250nmに限定されない。
【0068】
図7に示すように、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、後述の第1の電極7との絶縁を確保するとともに、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成してある。保護膜9は、例えば、SiO
2 膜などである。
【0069】
図7に示すように、半導体発光層上には、n型半導体層2が露出した部分に接続された第1の電極7を形成してある。また、半導体発光層上には、反射膜5及び電流拡散層4を介してp型半導体層3に接続された第2の電極8を形成してある。
【0070】
第1の電極7及び第2の電極8は、半導体発光素子を実装する実装基板との接合に用いる半田(例えば、Pbフリー半田)が接合される接合面となる。
【0071】
第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面を除く部分は、保護膜10を成膜してある。保護膜10は、例えば、SiO
2 膜などである。
【0072】
図8に示すように、基板1上には半導体発光層33を形成してあり、半導体発光層33は平面視が略矩形状をなす。半導体発光層33は、n型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3が重畳する領域である。
【0073】
半導体発光層33上には、n型半導体層2に接続された第1の電極7及び、第1の電極7から適長離隔して、p型半導体層3に接続された第2の電極8を形成してある。第1の電極7及び第2の電極8の平面視の形状は略矩形状であるが、形状は矩形状に限定されるものではなく、三角形状、円形状など他の形状であってもよい。
【0074】
第1領域71は、第1の電極7及び半導体発光層33が重畳して配置された領域である。すなわち、第1領域71は、平面視において第1の電極7及び半導体発光層33が重なる共通の仮想的な領域である。同様に、第2領域81は、第2の電極8及び半導体発光層33が重畳して配置された領域である。なお、実施の形態2の半導体発光素子の製造方法は、実施の形態1とほぼ同様であるので説明は省略する。
【0075】
第1領域71及び第2領域81の面積の合計が半導体発光層33の面積の70%以上である。これにより、半導体発光層33の面積のうちの70%以上が半田との接合面になるため、半導体発光層33で発生する熱を第1の電極7及び第2の電極8を介して実装基板へさらに放熱することができる。これにより、金(Au)などのバンプを形成することなく、一般的な電子部品の実装に用いられる生産性に優れたPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができるので、生産性の向上及び生産コストの低減を図りつつ十分な放熱特性を得ることができる。また、Pbフリー半田は、Auなどのバンプに比較して熱伝導率は良くないが、本実施の形態では、半導体発光層で発生する熱を電極7、8から効率的に放熱することができるので、Pbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができる。
【0076】
図9は実施の形態2の半導体発光素子の平面構造の他の例を示す模式図である。第1の電極7と半導体発光層33とが重畳して配置された第1領域71、及び第2の電極8と半導体発光層33とが重畳して配置された第2領域81の少なくとも一方(
図9の例では、第1領域71)の面積が、半導体発光層33の面積の50%以上である。半導体発光層の面積のうちの少なくとも50%以上が半田との接合面になるため、半導体発光層で発生する熱を第1の電極及び第2の電極を介して実装基板へ放熱することができる。これにより、金(Au)などのバンプを形成することなく、生産性に優れたPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装することができるので、生産性の向上及び生産コストの低減を図りつつ十分な放熱特性を得ることができる。
【0077】
図10は本実施の形態1及び2の半導体発光素子の放熱特性の一例を示す説明図であり、
図11は
図10での熱抵抗の測定値の一例を示す説明図である。
図10において、横軸は経過時間(ms)であり、半導体発光素子に電流を流した時点(電源を投入した時点)からの経過時間を示し、縦軸は熱抵抗を示す。電流印加直後(例えば、10ms以内)の熱抵抗の値が、半導体発光素子(LEDチップ)と実装基板との間の熱抵抗を表している。なお、熱抵抗の絶対値は、実装基板の材質等により変化するので、
図10の例では、すべて同一の材質の実装基板を使用している。また、半導体発光素子と実装基板とはPbフリー半田で接続してある。
【0078】
図10において、「50%」で示すグラフは、電極と半導体発光層とが重畳して配置された領域の面積が半導体発光層の面積の50%である場合、「70%」で示すグラフは、電極と半導体発光層とが重畳して配置された領域の面積が半導体発光層の面積の70%である場合、「70%(非発光層あり)」で示すグラフは、
図2又は
図6に示すように、分離した2つの半導体発光層上に電極を形成し、電極と半導体発光層とが重畳して配置された領域の面積が半導体発光層の面積の70%である場合を示す。また、比較例は従来のフリップチップ構造であって、Au等のバンプを使用せずにPbフリー半田を使用した場合を示す。なお、比較例では、電極の面積は半導体発光層の面積の37%である。
【0079】
図11に示すように、電流印加後1.0ms後の熱抵抗は、比較例の場合は37(℃/W)であり、「50%」の場合は28(℃/W)であり、「70%」の場合は15(℃/W)であり、「70%(非発光層あり)」の場合は10(℃/W)である。比較例の場合の熱抵抗を基準とした熱抵抗の低減率は、「50%」の場合が76%であり、「70%」の場合が41%であり、「70%(非発光層あり)」の場合が27%である。
【0080】
図11から解るように、本実施の形態1、2の半導体発光素子にあっては、従来に比べて放熱特性が優れている。そして、Au等のバンプを高密度に形成するために高価なワイヤボンダ又はフリップチップボンダ等の装置が不要となり、一般的な電子部品の実装に使用されるPbフリー半田を用いて半導体発光素子を実装基板に実装することができる。
【0081】
上述の実施の形態1、2では、GaN系の半導体発光層を用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、AlGaInP等の半導体発光層を用いることもできる。