特許第6133083号(P6133083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133083ビードセットリングおよび生カバー成形装置、並びにビードホルダおよびビード供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133083
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ビードセットリングおよび生カバー成形装置、並びにビードホルダおよびビード供給装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B29D30/48
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-53573(P2013-53573)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-177067(P2014-177067A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】戸田 善博
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−045725(JP,U)
【文献】 特開2012−139929(JP,A)
【文献】 特開2001−062939(JP,A)
【文献】 特開2009−184212(JP,A)
【文献】 米国特許第04737222(US,A)
【文献】 特開2003−145644(JP,A)
【文献】 特開2012−139871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ステージ成形法のファーストステージにおける生カバー成形に用いられるビードセットリングであって、
ビードコア部と接触する箇所の表面に、前記ビードコア部を摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されており、
前記表面処理が施されている箇所における表面粗さRzが、15〜50μmであることを特徴とするビードセットリング。
【請求項2】
前記表面処理が、表面ブラスト加工により行われていることを特徴とする請求項1に記載のビードセットリング。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載のビードセットリングを備えていることを特徴とする生カバー成形装置。
【請求項4】
生カバー成形装置のビードセットリングにビードを供給するビード供給装置のビードホルダであって、
ビードコア部と接触する箇所の表面に、前記ビードコア部を摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されており、
前記表面処理が施されている箇所における表面粗さRzが、15〜50μmであることを特徴とするビードホルダ。
【請求項5】
前記表面処理が、表面ブラスト加工により行われていることを特徴とする請求項に記載のビードホルダ。
【請求項6】
請求項4または請求項に記載のビードホルダを備えていることを特徴とするビード供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの生カバーを製造する際に使用されるビードセットリングおよび生カバー成形装置、並びにビードホルダおよびビード供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生カバーの製造に際しては、一般に、生カバー成形装置(1stカバー自動成形機)を用いて、各種のタイヤ部材が巻回された1stフォーマーのビードセットリングにビードをセットすることにより1stカバーを成形(1stステージ)した後、トロイド状に膨張させて成形(2ndステージ)する2ステージ成形法が採用されている。
【0003】
図4は従来のビードセットリングを示す斜視図、図5は前記ビードセットリングへのビードのセットを説明する図である。
【0004】
ビードセットリングaは、図4に示すように、リング部a1とフランジ部a2とを備えており、円形に成形されたビード(クリールビード)の内径に合わせた形状になっている。
【0005】
ビードbは、ビード供給装置に設けられたビードホルダ(図示せず)からビードセットリングaに引き渡されて、図5(a)に示すように、ビードコア部でビードセットリングaと密着する形でセットされる。これにより、左右2つのビードb間の距離(コードパス)が決定される。
【0006】
しかしながら、従来は、ビードbのビードセットリングaへのセット時、図5(b)に示すようにビードbのビードコア部が位置ずれを起こす場合があった。
【0007】
このようなビードコア部の位置ずれにより、例えば、ビードホルダからの引き渡し時にビードがビードセットリングから落下したり、セット歪みを生じることがある。そして、図6に示すように、ビードコア部の位置ずれが発生した状態でビードbが1stフォーマーcにセットされると、コードパスが一定に保たれた1stカバーを形成することができない。
【0008】
そこで、ビードのセット時、コードパスを安定化させるために、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−139871号公報
【特許文献2】特開2012−139929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、コードパスの安定化は未だ十分とは言えず、ビードの位置ずれをより十分に解消することができる更なる技術の改善が求められていた。
【0011】
本発明は、ビードの位置ずれを従来よりも十分に解消して、ビード間のコードパスをより安定化することができるビードセットリングおよび生カバー成形装置、並びにビードホルダおよびビード供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項に記載の発明は、
2ステージ成形法のファーストステージにおける生カバー成形に用いられるビードセットリングであって、
ビードコア部と接触する箇所の表面に、前記ビードコア部を摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されており、
前記表面処理が施されている箇所における表面粗さRzが、15〜50μmであることを特徴とするビードセットリングである。
【0014】
請求項に記載の発明は、
前記表面処理が、表面ブラスト加工により行われていることを特徴とする請求項1に記載のビードセットリングである。
【0015】
請求項に記載の発明は、
請求項1または請求項に記載のビードセットリングを備えていることを特徴とする生カバー成形装置である。
【0017】
請求項に記載の発明は、
生カバー成形装置のビードセットリングにビードを供給するビード供給装置のビードホルダであって、
ビードコア部と接触する箇所の表面に、前記ビードコア部を摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されており、
前記表面処理が施されている箇所における表面粗さRzが、15〜50μmであることを特徴とするビードホルダである。
【0018】
請求項に記載の発明は、
前記表面処理が、表面ブラスト加工により行われていることを特徴とする請求項に記載のビードホルダである。
【0019】
請求項に記載の発明は、
請求項4または請求項に記載のビードホルダを備えていることを特徴とするビード供給装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ビードの位置ずれを従来よりも解消して、ビード間のコードパスをより安定化することができるビードセットリングおよび生カバー成形装置、並びにビードホルダおよびビード供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るビードセットリングを示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るビードセットリングへのビードのセットを説明する図である。
図3】本発明の実施の形態に係るビードホルダを示す斜視図である。
図4】従来のビードセットリングを示す斜視図である。
図5】従来のビードセットリングへのビードのセットを説明する図である。
図6】従来の生カバー成形装置においてビードセットリングにビードがセットされた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態に基づいて説明する。
【0023】
1.生カバー成形装置
図1は本発明の実施の形態に係るビードセットリングを示す斜視図、図2は前記ビードセットリングへのビードのセットを説明する図である。
【0024】
(1)全体構成
本実施の形態に係る生カバー成形装置は、円筒状のカーカスプライを形成する1stフォーマーと、ビードコア部と接触してビードを保持するビードセットリングとを備えている。なお、ビードは、クリールビードワイヤのビードコア部にエーペックス部が貼り付けられて形成されている。
【0025】
(2)ビードセットリング
ビードセットリング1は、図1に示すように、リング部2と、リング部2の外周面から半径方向外側に突出するフランジ部3とを有している。
【0026】
本実施の形態において、リング部2およびフランジ部3のビードと接する箇所の表面には、ビードコアを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されて、粗面部4が形成されている。このような表面処理の手段としては、例えば、ブラスト加工を挙げることができる。
【0027】
従来は、このような表面加工が施されていなかったため、前記したようにビードのセット時ビードの位置ずれが発生していたが、本実施の形態においては、ビードと接する箇所の表面にビードコアを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐ粗面部4を設けているため、ビードのセット時、ずれや滑りが発生せず、ビードの位置ずれの発生を防いで、ビード間のコードパスを従来に比べて遙かに安定化させることができる。
【0028】
この結果、製品タイヤにおけるユニフォミティのFV値(RFV値やLFV値)の平均値が低減されると共に、そのばらつきも低減されて、より品質が向上した製品タイヤを提供することができる。
【0029】
また、ビードのセット時にずれや滑りが発生しないため、ビード落下やずれの発生に伴う一時的なライン停止(いわゆるチョコ停)が低減され、生産性の向上にも大きく寄与することができる。
【0030】
なお、粗面部4における表面粗さRz(N=10の凹凸の最大高さ)としては、ビードコアを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐことができる表面粗さであればよいが、表面粗さRz(N=10の凹凸の最大高さ)は、15〜50μm(三角記号▽▽)であることが好ましい。Rzが15μmよりも小さい(三角記号▽▽▽)場合には、ビードのビードコア部とのグリップ作用が弱くなり、滑りやすくなる。一方、50μmよりも大きい(三角記号▽)場合には、ビードのビードコア部との接触表面積が少なくなるため、滑りやすくなってグリップ作用がなくなる。
【0031】
また、上記したブラスト加工としては、ゴム材との密着を防止するために行われる一般的なブラスト加工と同様に、鉄粉による加工処理を採用することができる。なお、ブラスト加工に使用される研削材としては、前記鉄粉の他に、アルミナ粒、SUS粒、ガラスビーズ、硅砂なども挙げることができる。
【0032】
2.ビード供給装置
(1)全体構成
ビード供給装置は、ビードを保持して、生カバー成形装置のビードセットリングにビードを引き渡すためのビードホルダと、ビードをビードホルダからビードセットリングに移動させる移動手段とを備えている。
【0033】
(2)ビードホルダ
図3は本実施の形態に係るビードホルダを示す斜視図である。図3に示すように、ビードホルダ5には、ビードコア部と接触する箇所の表面に、ビードセットリングと同様に、ビードコアを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐための表面処理が施されて、粗面部6が形成されている。
【0034】
表面処理の手段としては、ビードセットリングと同様に、ブラスト加工を挙げることができる。また、形成された粗面部6の表面粗さRzとしては、ビードセットリングと同様に、15〜50μmであることが好ましい。
【0035】
なお、ビードホルダ5には、元々、ビードのエーペックス部との密着を防ぐために、表面加工(タックフリー)が施されている。しかし、この加工によって形成される粗面部は、表面粗さが粗すぎるため、ビードの位置ずれの発生を防止するには十分とは言えなかった。
【実施例】
【0036】
1.試験タイヤの作製
粗面部が形成されていないビードセットリングを備えた従来の生カバー成形装置を用いて、実験例1の試験タイヤ(195/65R15)100本を作製すると共に、表1に示すRzの粗面部が形成されているビードセットリングを備えた生カバー成形装置を用いて、実験例2〜7の試験タイヤ100本を同様に作製した。
【0037】
2.評価
作製された各試験タイヤについて、RFVとLFVを測定し、RFV、LFVの平均値Nおよび標準偏差σを求め、評価を行った。また、1日当たりのチョコ停の回数をカウントし、評価を行った。
【0038】
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、粗面部が形成されていない実験例1の結果に比べ、実験例3〜5では、LFVのN、σおよびRFVのN、σが共に小さく、チョコ停も0回になっている。この結果より、ビードコアを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐために適切なRzに粗面部を形成することにより、タイヤのユニフォミティをより向上できることができ、また、チョコ停もなく生産性向上に寄与できることが分かる。
【0041】
これに対して、Rzが小さい実験例2、Rzが大きい実験例6、実験例7では、LFVのN、σおよびRFVのN、σが共に、実験例1の結果に比べて大きくなっていると共に、チョコ停も発生している。これは、前記したように、Rz12μmではビードを摩擦係合させてビードの位置ずれを防ぐ効果が少なく、60μm、100μmでは反対にビードコア部がすべり易いためと思われる。
【0042】
以上の結果より、形成された粗面部におけるRzとしては、15〜50μmが好ましいことが確認できた。
【0043】
なお、上記では、ビードセットリングについて実験を行ったが、ビードホルダについても同様の結果が得られた。
【0044】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、a ビードセットリング
2、a1 リング部
3、a2 フランジ部
4 (ビードセットリングの)粗面部
5 ビードホルダ
6 (ビードホルダの)粗面部
b ビード
c 1stフォーマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6