(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の如き可変動弁機構は、スイングアームに対するコントロールアームの押圧位置がロッカーアームに対するスイングアームの押圧位置の近くに設定されており、コントロールアームの押圧位置の変化量に対するバルブのリフト状態の変化量の比率が大きいので、特許文献1のようにコントロールアームの押圧位置を直接変化させてバルブのリフト状態を調整しようとすると、バルブのリフト状態が大きく変化してしまい、極僅かなバルブのリフト量や開時期の調整に時間がかかり煩雑であった。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、極僅かなバルブのリフト量や開時期を調整するのが容易な可変動弁機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、スイングアームの位置変更のさせ方を工夫してバルブのリフト量や開時期を微調整するようにしたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、第1の発明では、吸排気用バルブと、エンジンのクランク軸に同期して回転するカムシャフトと、該カムシャフトの軸心と同方向に延びる軸心周りに揺動可能に設けられ、上記カムシャフトの回転動作により押圧されて揺動するコントロールアームと、上記カムシャフトの軸心と同方向に延びる軸心周りに揺動可能に設けられ、上記コントロールアームの揺動動作により押圧されて揺動するとともに、当該揺動動作により上記バルブを直接又間接的に押圧してリフトさせるスイングアームと、該スイングアームに対する上記コントロールアームの相対位置を変化させることにより上記スイングアームに対する上記コントロールアームの押圧位置を変更して上記バルブのリフト量及び開期間を調整するリフト調整手段と、上記スイングアームの揺動軸心の位置を移動させることにより上記バルブのリフト量及び開期間を微調整するリフト微調整手段とを備え、上記リフト調整手段は、上記カムシャフトの軸心と同方向に延びる軸心周りに回転するコントロールシャフトと、該コントロールシャフトに回転一体に設けられ、上記コントロールシャフトの径方向外側に突出して上記コントロールアームを揺動可能に軸支する突出部を有する調整レバーとを備え、該調整レバーは、上記コントロールシャフトと共に当該コントロールシャフトの軸心周りに回動することにより、上記カムシャフトの軸方向から見て、上記コントロールアームの揺動軸心を上記スイングアームの揺動軸心に対して接離させる方向に移動させていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記スイングアームの揺
動軸部が、上記コントロールアームにおける揺動軸部に対して上記カムシャフトの軸心方向と直交する方向から見て上記カムシャフトの軸心方向に重ならないようにずれて配置されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記バルブの閉状態において、上記カムシャフトの軸心方向から見て、上記コントロールアームの揺動軸心が、上記スイングアームの揺動軸心と上記スイングアームに対する上記コントロールアームの押圧位置とを通過する直線上か、又はその直線に接近した位置となっていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記バルブは、エンジンの同一気筒において上記カムシャフトの軸心方向に一対並設され、上記スイングアームは、上記各バルブに対応して一対設けられ、上記コントロールアームは、上記カムシャフトの軸心方向において上記両スイングアーム間に配置された本体部と、該本体部に一体に設けられ、上記各スイングアームをそれぞれ押圧する一対の押圧部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、上記各コントロールアームの上記スイングアームを押圧する押圧部分の形状が互いに異なっていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、上記リフト微調整手段は、上記コントロールシャフトに当該コントロールシャフトの軸心周りに回転可能に外嵌合され、外周面が上記スイングアームにおける揺動軸心周りの外側面に接触する偏心リングを備えていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第6の発明において、上記リフト微調整手段は、上記偏心リングを上記コントロールシャフトの軸心方向の調整レバー側に付勢する付勢手段をさらに備え、上記調整レバーは、上記コントロールシャフト周りに延びる環状突条部を備え、上記偏心リングの上記調整レバー側の端面及び上記環状突条部の側面のいずれか一方には、複数の同形状の係合突起が周方向に等間隔に設けられているとともに、いずれか他方には、上記各係合突起がそれぞれ係脱可能に係合する複数の同形状の係合凹部が周方向に等間隔に設けられ、上記偏心リングを上記付勢手段の付勢力に抗して回転させることにより上記コントロールシャフトに対する偏心リングの周方向の位置を変更することを特徴とする。
【0016】
第8の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、上記リフト微調整手段は、上記コントロールシャフトの上記スイングアーム側外周面に着脱可能に取り付けられ、上記コントロールシャフト外周面に取り付けた状態で、外周面が上記コントロールシャフト外周面より外側に飛び出した位置で上記スイングアームにおける揺動軸心周りの外側面に接触するC字状シムであることを特徴とする。
【0017】
第9の発明では、第8の発明において、上記C字状シムの内周側両端部及び上記コントロールシャフトの外周面のいずれか一方には、一対の係止突部が設けられるとともに、いずれか他方には、上記各係止突部が係止する一対の係止凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、スイングアームに対するコントロールアームの押圧位置よりスイングアームの揺動軸心の方がスイングアームのバルブに対する押圧位置から離れた位置にあるので、コントロールアームを揺動軸心周りに直接回動させてバルブのリフト状態を微調整するよりも、スイングアームの揺動軸心の位置を変化させてバルブのリフト状態を微調整する方がスイングアームのバルブに対する押圧位置の変化が大きくならず、極僅かなバルブのリフト量や開時期の調整が容易にできる。
【0019】
また、コントロールアームの揺動軸心をスイングアームの揺動軸心に接近させると、コントロールアームとスイングアームとがそれぞれ揺動する際において、スイングアームに対するコントロールアームの相対位置がずれ難くなるので、コントロールアームの揺動軸心とスイングアームの揺動軸心との間の距離が一定の可変動弁機構に比べてスイングアームに対するコントロールアームの摺動量を小さくすることができる。
【0020】
第2の発明では、カムシャフトの軸心方向から見て、スイングアームの揺動軸部がコントロールアームの揺動軸部に重なるので、コントロールアームの揺動軸心をスイングアームの揺動軸心に接近させる際、スイングアームの揺動軸心とコントロールアームの揺動軸心との間の距離を短くすることができる。
【0021】
第3の発明では、コントロールアームがスイングアームを押圧する際において、スイングアームに対するコントロールアームの押圧位置が大きく変化し難くなり、スイングアームに対するコントロールアームの摺動量をさらに小さくすることができる。
【0022】
第4の発明では、一対のスイングアームに対してコントロールアームが1つであるので、同一気筒における2つのバルブ間が短くなり、コンパクトな可変動弁機構にできる。また、コントロールアームを一体成形することで剛性が高まるとともに製造コストを低減することができる。
【0023】
第5の発明では、同一気筒における2つのバルブのリフト特性を互いに異なるものにできるので、エンジンの仕様に柔軟に対応させることができる。
【0024】
第6の発明では、偏心リングをコントロールシャフトに対して回転させると、偏心リングの偏心分だけ偏心リングの外周面の位置がコントロールシャフトの径方向に変化し、それに伴ってスイングアームにおける揺動軸心周りの外側面の位置が移動するので、スイングアームの揺動軸心の位置を簡単に変えることができる。
【0025】
第7の発明では、偏心リングをコントロールシャフトに対して回転させる際、係合突起を係合凹部に係合させることでコントロールシャフトに対する偏心リングの軸心周りの移動を規制することができる。また、係合突起と係合凹部とがそれぞれ同形状で、且つ、等間隔に形成されているので、偏心リングを回転させて各係合凹部に係合する各係合突起を変えることにより、偏心リングを定量的に回転させることができる。さらに、偏心リングを回転させる際、付勢手段の付勢力に抗して偏心リングを調整レバーから離間させると、各係合突起が各係合凹部から外れるので、コントロールシャフトに対して偏心リングを簡単に回転させることが可能となる一方、コントロールシャフトに対して偏心リングを回転させ、各係合突起を各係合凹部に係合させると、付勢手段の付勢力により偏心リングと調整レバーとが互いに密着するので、コントロールシャフトに対して偏心リングを強固に固定することができる。
【0026】
第8の発明では、C字状シムの厚みを変更することでC字状シムの外周面の位置がコントロールシャフトの径方向に変化し、それに伴ってスイングアームにおける揺動軸心近傍の外側面の位置が移動するので、スイングアームの揺動軸心の位置を簡単に変えることができる。
【0027】
第9の発明では、C字状シムをコントロールシャフトに取り付けた際、コントロールシャフトに対してC字状シムの位置がずれなくなり、コントロールシャフトに対するC字状シムの取り付けを安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係る可変動弁機構1を示す。該可変動弁機構1は、4バルブのダブルオーバヘッドカム方式を採用したエンジン(図示せず)の吸気側に適用したものであり、吸気ポートの開口部分(図示せず)に設けられた吸気用のバルブ10と、エンジンのクランク軸(図示せず)に同期して回転するカムシャフト2とを備えている。
【0030】
該カムシャフト2は、図示しないクランク軸と同方向に延びるようにエンジンのシリンダヘッド(図示せず)に軸心X1周りに回転自在に軸支されている。
【0031】
上記カムシャフト2には、複数の回転カム3が軸心X1方向に所定の間隔をあけて設けられ、該回転カム3には、ベース円部3aと、該ベース円部3aから半径方向に突出してなるカムノーズ部3bとを有している。
【0032】
上記バルブ10は、エンジンの同一気筒において上記カムシャフト2の軸心X1方向に一対並設され、吸気ポート(図示せず)を開閉する傘部10aと、該傘部10aから反カムシャフト2側の斜め上方に向かって延びる軸部10bとを備えている。該軸部10bの周りには、図示しない弁バネが設けられ、該弁バネにより、上記バルブ10は、上方に付勢されている。
【0033】
上記各バルブ10の上方には、当該各バルブ10をリフトさせるためのロッカアーム41が一対設けられている。
【0034】
該ロッカアーム41は、上記バルブ10の軸部10b上端から上記カムシャフト2の軸心方向と交差するように反カムシャフト2側に略水平方向に延びる形状をなし、その中途部には、回転軸心が上記カムシャフト2の軸心方向に向くローラ42が回転自在に設けられている。
【0035】
上記ロッカアーム41の反カムシャフト2側の端部は、球面ピボット構造を介して液圧式のラッシュアジャスタ43により揺動自在に支持され、この支持部分を支点に上記ロッカアーム41が揺動することにより、上記ロッカアーム41のカムシャフト2側の端部が上記バルブ10の軸部10b上端を下方に押圧して上記バルブ10がリフトするようになっている。
【0036】
上記各ロッカアーム41の上方には、当該各ロッカアーム41に対応する一対のスイングアーム11が設けられ、該スイングアーム11は、上記ローラ42の上方から反カムシャフト2側の斜め上方に延びる形状をなしている。
【0037】
上記スイングアーム11は、上記カムシャフト2の軸心方向に所定の間隔をあけて対向する一対の側板部11aを備え、該両側板部11aの上端部分には、上記カムシャフト2の軸心X1と同方向に延びる揺動軸11b(揺動軸部)が設けられている。
【0038】
該揺動軸11b周りには、当該揺動軸11b周りに回転するローラ12が設けられ、上記スイングアーム11は、上記揺動軸11b(揺動軸心X2)を中心に揺動可能に構成されている。
【0039】
一方、上記両側板部11aの下端には、当該両下端を橋絡する第1押圧部11dが設けられている。
【0040】
該第1押圧部11dは、上記カムシャフト2の軸心X1方向から見て、中途部が上方に位置する湾曲状をなし、上記ロッカアーム41のローラ42に点P(押圧位置)で接触している。
【0041】
また、上記各側板部11aの下端側上方縁部には、上記カムシャフト2の軸心X1方向から見て、上方に湾曲する湾曲面部11eが形成されている。
【0042】
さらに、上記両側板部11aの下端寄りには、当該両側板部11aを連結する連結軸11cが設けられている。
【0043】
上記ローラ12の反カムシャフト2側の斜め下方には、カムシャフト2の軸心X1と同方向に延びるコントロールシャフト31がシリンダヘッド(図示せず)に軸心X4周りに回転可能に軸支されている。
【0044】
該コントロールシャフト31には、上記バルブ10のリフト量及び開時期を変化させる調整レバー33が回転一体に設けられ、該調整レバー33と上記コントロールシャフト31とで本発明のリフト調整手段を構成している。
【0045】
上記調整レバー33は、上記コントロールシャフト31周りに延びる環状突条部33bと、上記両スイングアーム11の上端間に向かって上記コントロールシャフト31の径方向外側に突出する突出部33cとを備え、該突出部33cには、上記カムシャフト2の軸心X1方向に延びる回転軸33a(揺動軸部)が回転可能に設けられている。
【0046】
また、上記コントロールシャフト31には、上記各ローラ12に対応するように一対の偏心リング32が外嵌合されている。
【0047】
該各偏心リング32は、
図10に示すように、冠歯車状をなし、上記コントロールシャフト31の軸心方向に移動可能となっている。
【0048】
また、上記各偏心リング32は、上記各ローラ12の外周面(スイングアーム11の揺動軸心周りの外側面)にそれぞれ下方から接触していて、上記コントロールシャフト31の軸心X4周りに回転可能となっている。
【0049】
さらに、上記各偏心リング32の上記調整レバー33側の端面には、複数の同形状の歯32b(係合突起)及び歯溝32cが周方向に交互に等間隔に設けられている。
【0050】
それに加えて、上記各偏心リング32の調整レバー33寄りには、上記偏心リング32を回転させる際に工具を差し込むための円形の孔32dが周方向に等間隔に複数貫通形成されている。
【0051】
一方、上記調整レバー33の環状突条部33bの側面には、上記偏心リング32の各歯32b及び歯溝32cにそれぞれ対応する複数の歯33d及び歯溝33e(係合凹部)が周方向に交互に等間隔に設けられ、上記偏心リング32の各歯32bが上記環状突条部33bの各歯溝33eに、上記環状突条部33bの各歯33dが上記偏心リング32の各歯溝32cに係脱可能に係合するようになっている。
【0052】
上記コントロールシャフト31には、1本のバネ鋼を折り曲げて形成されたバネ部材6(付勢手段)が設けられている。
【0053】
該バネ部材6は、上記コントロールシャフト31の軸心X4方向に平行に延びる一対の直線部6aと、上記コントロールシャフト31外周面の周方向に沿ってU字状に湾曲する一対の湾曲部6bとを備え、一方の湾曲部6bの各端部は、上記各直線部6aの一端にそれぞれ連続するとともに、他方の湾曲部6bの各端部は、上記各直線部6aの他端にそれぞれ連続している。
【0054】
上記湾曲部6bは、当該湾曲部6bの直線部6aに対する角度が変わることでバネ機能が発現されるようになっていて、上記各湾曲部6bは、各偏心リング32の反調整レバー33側の開口端を上記コントロールシャフト31の軸心X4方向の調整レバー33側に付勢している。
【0055】
そして、上記偏心リング32を上記バネ部材6の付勢力に抗して回転させることにより、
図7に示すように、上記コントロールシャフト31に対する偏心リング32の周方向の位置を変更するようになっている。
【0056】
上記両スイングアーム11の上方には、上方から見て略T字状のコントロールアーム21が設けられている(
図1参照)。
【0057】
該コントロールアーム21は、上記カムシャフト2の軸心X1方向と交差するように略水平方向に延びる本体部21aを備え、該本体部21aは、上記カムシャフト2の軸心X1方向において上記両スイングアーム11間に配置されている。
【0058】
すなわち、上記スイングアーム11の揺動軸11bが、後述する上記コントロールアーム21の揺動軸となる回転軸33aに対して上記カムシャフト2の軸心方向と直交する方向から見てカムシャフト2の軸心方向に重ならないようにずれて配置されている。
【0059】
上記本体部21aの反カムシャフト2側の端部は、上記突出部33cの回転軸33aに軸着され、上記本体部21aは、上記回転軸33aの揺動軸心X3周りに揺動可能となっている。
【0060】
上記本体部21aのカムシャフト2側の端部には、当該カムシャフト2側の斜め上方に開放する断面略U字状の第2押圧部21bがカムシャフト2の軸心X1方向に離間して一対設けられている。
【0061】
該両第2押圧部21bは、上記本体部21aに一体に設けられ、上記第2押圧部21bの下端側が平面をなして上記スイングアーム11の湾曲面部11eに接触している。
【0062】
上記各第2押圧部21bの内方には、回転軸心がカムシャフト2の軸心X1方向に向くローラ22が回転自在に設けられ、各ローラ22の外周面は、当該各ローラ22に対応する上記回転カム3の外周面に下方から接触している。
【0063】
上記両スイングアーム11の上端側上方には、上記カムシャフト2の軸心X1方向に延びる長方形状の固定ブロック51がエンジンのシリンダヘッド(図示せず)に固定されている。
【0064】
上記固定ブロック51下面の各揺動軸11bに対応する位置には、下面が当該各揺動軸11bの外周面に接触する一対の支持ブロック51aが突設され、該支持ブロック51aの下端には、反カムシャフト2側に行くにつれて下傾する断面凹状の溝部51bが形成されている。
【0065】
上記両支持ブロック51aは、上記偏心リング32との間で上記揺動軸11bを支持していて、この支持状態で、上記スイングアーム11の揺動中心が上記揺動軸11bの揺動軸心X2に決まるようになっている。
【0066】
上記固定ブロック51の反カムシャフト2側には、上記各スイングアーム11に対応する一対の捩りコイルバネ52が配設されている。
【0067】
該各捩りコイルバネ52の一端は、上記固定ブロック51に固定される一方、他端は、上記スイングアーム11の連結軸11cに下方から引っ掛かり、当該スイングアーム11を上方付勢している。
【0068】
そして、図示しないエンジンのクランク軸に同期してカムシャフト2が回転し、
図3及び
図5に示すように、カムシャフト2の回転動作で上記回転カム3のカムノーズ部3bが上記ローラ22を上方から押圧すると、上記コントロールアーム21が回転軸33aを中心に下方に回動することにより、該コントロールアーム21の第2押圧部21bが上記捩りコイルバネ52の付勢力に抗して上記スイングアーム11の湾曲面部11eを下方に押圧するようになっている。
【0069】
また、上記湾曲面部11eを下方に押圧されたスイングアーム11は、上記揺動軸11bを中心に下方に回動して上記スイングアーム11の第1押圧部11dが上記ロッカアーム41のローラ42を下方に押圧するようになっている。
【0070】
さらに、上記ローラ42を下方に押圧されたロッカアーム41は、該ロッカアーム41の反カムシャフト2側の端部を支点に下方に回動するようになっていて、当該ロッカアーム41の回動により、上記ロッカアーム41のカムシャフト2側の端部が上記バルブ10の軸部10b上端を押圧し、これにより、上記バルブ10がリフトして図示しない吸気ポートが開くようになっている。
【0071】
尚、上記スイングアーム11における第1押圧部11dのうちカムシャフト2側の略半分でローラ42を押圧してバルブ10をリフトさせるようになっており、以下、この部分を作用部11fと呼ぶ。
【0072】
一方、上記カムシャフト2がさらに回転して、上記回転カム3のカムノーズ部3bが上記ローラ22を上方から押圧しなくなると、
図2及び
図4に示すように、上記捩りコイルバネ52及び図示しない弁バネの付勢力により、上記スイングアーム11が上方に回動するとともに、その動きに連動して上記コントロールアーム21も上方に回動し、これにより、上記ロッカアーム41及びバルブ10が元の位置に戻り、図示しない吸気ポートが閉じるようになっている。
【0073】
また、上記コントロールシャフト31を軸心X4周りに回転させて上記調整レバー33を回動させると、上記回転軸33a(揺動軸心X3)が上記スイングアーム11の揺動軸11b(揺動軸心X2)に接離するようになっていて、上記バルブ10の閉状態において、上記カムシャフト2の軸心X1方向から見て、コントロールアーム21の揺動軸心X3は、スイングアーム11の揺動軸心X2とスイングアーム11に対するコントロールアーム21の押圧位置とを通過する直線L1,L2上(
図2,
図4参照)か、又はその直線L1,L2に接近した位置となっている。
【0074】
そして、揺動軸心X2と揺動軸心X3との接離により、上記カムシャフト2と上記コントロールアーム21のローラ22との位置関係、及び、上記コントロールアーム21の第2押圧部21bと上記スイングアーム11の湾曲面部11eとの位置関係が変化するようになっていて、このスイングアーム11に対するコントロールアーム21の相対位置の変化により、上記湾曲面部11eに対する上記第2押圧部21bの押圧位置と回転軸33a(揺動軸心X3)との間の距離が変化するとともに、スイングアーム11の回動前の角度位置(つまり揺動開始角度位置)が変化して、上記第1押圧部11dのローラ42に対する押圧位置Pが変化するようになっている。
【0075】
上記調整レバー33を反時計回りに回動させると、上記回転軸33a(揺動軸心X3)が上記スイングアーム11のローラ12(揺動軸心X2)から次第に離間し、上記第2押圧部21bの上記湾曲面部11eに対する押圧位置と上記回転軸33aとの距離が次第に大きくなるようになっている。そうすると、上記第1押圧部11dのローラ42に対する押圧位置Pがカムシャフト2側にシフトし、
図2及び
図3に示すように、カムシャフト2が回転した際、ローラ42に対する第1押圧部11dの押圧位置Pが作用部11fに大きくかかるようになり、これにより、上記バルブ10のリフト量及び開期間が最も大きくなって、所謂、大リフト状態となるようになっている。
【0076】
尚、大リフト状態における回転カム3の回転角とバルブ10のリフト量との関係は、
図6のリフトカーブC1のようになる。
【0077】
上記調整レバー33の反時計回りの最大回動位置は、カムシャフト2の軸心X1方向から見て、コントロールアーム21の揺動軸心X3が、スイングアーム11の揺動軸心X2に対して所定距離以内の範囲となる位置に設定されていて、大リフト状態であっても、
図3に示すように、第2押圧部21bが湾曲面部11eを押圧する際の第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する摺動量dは小さくなっている。
【0078】
尚、上記所定距離は、出来る限り小さいことが好ましく、例えば、大リフト状態におけるバルブ10の閉状態において、カムシャフト2の軸心X1方向から見て、スイングアーム11の揺動軸心X2と第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する押圧位置との間の距離としてもよい。
【0079】
また、
図3において一点鎖線で示す線R1は、コントロールアーム21が回転カム3により回動する前の状態(バルブ10の閉状態)において、第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する押圧位置を通る、揺動軸心X2を中心とする円弧であり、二点鎖線で示す線R2は、コントロールアーム21が回転カム3により最大に回動した状態(バルブ10が最大にリフトされた状態)において、第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する押圧位置を通る、揺動軸心X3を中心とする円弧であり、第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する押圧位置における一点鎖線と二点鎖線との間の距離が、上記摺動量dとなっている。
【0080】
一方、
図4及び
図5の状態まで上記調整レバー33を時計回りに回動させると、上記回転軸33a(揺動軸心X3)が上記スイングアーム11のローラ12(回転軸心X2)に次第に接近し、上記第2押圧部21bの上記湾曲面部11eに対する押圧位置と上記回転軸33aとの距離が次第に小さくなるようになっている。そうすると、上記第1押圧部11dのローラ42に対する押圧位置Pが反カムシャフト2側にシフトし、カムシャフト2が回転した際、ローラ42に対する第1押圧部11dの押圧位置Pが作用部11fに少しかかる程度となり、これにより、上記バルブ10のリフト量及び開期間が最も小さくなって、所謂、小リフト状態となるようになっている。
【0081】
尚、小リフト状態における回転カム3の回転角とバルブ10のリフト量との関係は、
図6のリフトカーブC2のようになる。
【0082】
そして、コントロールアーム21の揺動軸心X3がスイングアーム11の揺動軸心X2に接近することで、第2押圧部21bが湾曲面部11eを押圧する際の第2押圧部21bの湾曲面部11eに対する摺動量dは小さくなっている。
【0083】
上記調整レバー33の回動により、各回動位置でのリフトカーブは、
図6に示すように、リフトカーブC1とリフトカーブC2との間で変化し、各リフトカーブの最大リフト量の点を全リフトカーブに亘って繋いだS1(一点鎖線で示す線)が、直線に近似するようになっている。
【0084】
また、上記調整レバー33は、
図4及び
図5の状態からさらに時計回りに回動させてコントロールアーム21の軸心X3をスイングアーム11の軸心X2に接近させることができ、
図8に示すように、湾曲面部11eに対する第2押圧部21bの押圧位置とコントロールアーム21の揺動軸心X3との間の距離が、小リフト状態よりさらに小さくなるとともに、ローラ42に対する第1押圧部11dの押圧位置Pが、小リフト状態よりも上記作用部11fからさらに離間するようになっている。この状態で、
図9に示すように、カムシャフト2が回転し、コントロールアーム21の第2押圧部21bがスイングアーム11の湾曲面部11eを押圧しても、ローラ42に対する第1押圧部11dの押圧位置Pが作用部11fにかからないので、ロッカアーム41が作動せず、所謂、零リフト状態になっている。
【0085】
さらに、
図7に示すように、コントロールシャフト31に対して偏心リング32を回転させると、カムシャフト2の軸心X1方向から見て、ローラ42の中心軸X5と上記支持ブロック51aの溝部51bに対するローラ12の接触位置との間の距離D(
図2参照)が変化しないように上記スイングアーム11の揺動軸11bが支持ブロック51aの溝部51bに沿って移動するようになっている(仮想線参照)。すなわち、上記偏心リング32を回転させることにより上記スイングアーム11の揺動軸11bを移動させても上記バルブ10の位置が変化しないようになっている。
【0086】
そして、スイングアーム11の揺動軸11bの移動により、上記スイングアーム11の湾曲面部11eに対するコントロールアーム21の第2押圧部21bの押圧位置が変更されて上記バルブ10のリフト量及び開期間が微調整されるようになっている。
【0087】
尚、上記距離Dが変化しないように上記スイングアーム11の揺動軸11bが移動するとは、上記距離Dが全く変化しないように上記スイングアーム11の揺動軸11bが移動するものだけでなく、上記距離Dが多少変化して上記スイングアーム11の揺動軸11bが移動するものも含む。本実施形態1では、上記コントロールシャフト31に対して偏心リング32を回転させると、上記スイングアーム11における揺動軸心X2側の端部は、上記溝部51bの傾斜方向に移動するので、上記距離Dは多少変化しているが、その値は微少であるので問題にならない。
【0088】
以上より、本発明の実施形態1によると、偏心リング32でバルブ10のリフト状態を微調整すると、スイングアーム11に対するコントロールアーム21の押圧位置よりスイングアーム11の揺動軸心X2の方がスイングアーム11のロッカアーム41におけるローラ42に対する押圧位置P(バルブ10に対する押圧位置)から離れた位置にあるので、コントロールアーム21を揺動軸心X3周りに直接回動させてバルブ10のリフト状態を微調整するよりも、スイングアーム11の揺動軸心X2の位置を変化させてバルブのリフト状態を微調整する方がスイングアーム11のロッカアーム41におけるローラ42に対する押圧位置Pの変化が大きくならず、極僅かなバルブ10のリフト量や開時期の調整が容易にできる。
【0089】
また、コントロールアーム21の揺動軸心X3をスイングアーム11の揺動軸心X2に接近させると、コントロールアーム21とスイングアーム11とがそれぞれ揺動する際において、スイングアーム11に対するコントロールアーム21の相対位置がずれ難くなるので、コントロールアーム21の揺動軸心X3とスイングアーム11の揺動軸心X2との間の距離が一定の可変動弁機構に比べてスイングアーム11に対するコントロールアーム21の摺動量dを小さくすることができる。
【0090】
また、カムシャフト2の軸心X1方向から見て、スイングアーム11の揺動軸11bがコントロールアーム21の回転軸33aに重なるので、コントロールアーム21の揺動軸心X3をスイングアーム11の揺動軸心X2に接近させる際、スイングアーム11の揺動軸心X2とコントロールアーム21の揺動軸心X3との間の距離を短くすることができる。
【0091】
また、上記バルブ10の閉状態において、コントロールアーム21の揺動軸心X3は、直線L1,L2上か、又はその直線L1,L2に接近した位置となっているので、コントロールアーム21がスイングアーム11を押圧する際において、スイングアーム11に対するコントロールアーム21の押圧位置が大きく変化し難くなり、スイングアーム11に対するコントロールアーム21の摺動量dをさらに小さくすることができる。
【0092】
また、一対のスイングアーム11に対してコントロールアーム21が1つであるので、同一気筒における2つのバルブ間が短くなり、コンパクトな可変動弁機構1にできる。また、コントロールアーム21を一体成形することで剛性が高まるとともに製造コストを低減することができる。
【0093】
また、偏心リング32をコントロールシャフト31に対して回転させると、偏心リング32が偏心している分だけ偏心リング32の外周面の位置がコントロールシャフト31の径方向に変化し、それに伴ってスイングアーム11の揺動軸心X2周りの外側面の位置が移動するので、スイングアーム11の揺動軸心X2の位置を簡単に変えることができる。
【0094】
また、偏心リング32をコントロールシャフト31に対して回転させる際、各歯32bを各歯溝33eに係合させるとともに、各歯33dを各歯溝32cに係合させることでコントロールシャフト31に対する偏心リング32の軸心X4周りの移動を規制することができる。また、歯32bと歯溝32cとがそれぞれ同形状で、且つ、等間隔に形成されるとともに、歯33dと歯溝33eとがそれぞれ同形状で、且つ、等間隔に形成されているので、偏心リング32を回転させて各歯溝33eに係合する各歯32bを変えるとともに、各歯溝32cに係合する各歯33dを変えることにより、偏心リング32を定量的に回転させることができる。さらに、偏心リング32を回転させる際、バネ部材6の付勢力に抗して偏心リング32を調整レバー33から離間させると、各歯32bが各歯溝33eから外れるとともに各歯33dが各歯溝32cから外れるので、コントロールシャフト31に対して偏心リング32を簡単に回転させることが可能となる一方、コントロールシャフト31に対して偏心リング32を回転させ、各歯32bを各歯溝33eに係合させるとともに、各歯33dを各歯溝32cに係合させると、バネ部材6の付勢力により偏心リング32と調整レバー33とが互いに密着するので、コントロールシャフト31に対して偏心リング32を強固に固定することができる。
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2に係る可変動弁機構1を示す。この実施形態2では、第2押圧部21bの構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0095】
実施形態2では、一方のコントロールアーム21の第2押圧部21bにおける上記スイングアーム11の湾曲面部11eに接触する部分が、上記カムシャフト2の軸心X1方向から見て中途部が下方に位置する湾曲状をなしている。
【0096】
すると、実施形態2の一方のコントロールアーム21に対応するバルブ10の各リフトカーブ自体の図示は省略するが、その各リフトカーブの最大リフト量の点を全リフトカーブに亘って繋いだ線が、
図6に二点鎖線で示す曲線S2のようになる。すなわち、一方のコントロールアーム21に対応するバルブ10が他方のコントロールアーム21に対応するバルブ10よりも早開き傾向になる。
【0097】
したがって、同一気筒内における2つのバルブ10のリフト特性を互いに異なるものにできるので、エンジンの仕様に柔軟に対応させることができる。
《発明の実施形態3》
図12は、本発明の実施形態3に係る可変動弁機構1を示す。この実施形態3では、コントロールシャフト31周りの構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0098】
実施形態3のコントロールシャフト31には、各ローラ12に対応する位置に一対の真円の環状リング34が外嵌合されて固定され、該環状リング34外周面の上下部分には、係止凹部34aがそれぞれ凹陥形成されている。
【0099】
上記環状リング34外周面のスイングアーム11側には、C字状シム7(リフト微調整手段)が着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0100】
該C字状シム7両端の内周側両端部には、上記各係止凹部34aにそれぞれ係止する一対の係止突部7aが突設され、上記C字状シム7は、上記環状リング34外周面に取り付けた状態で、外周面が上記環状リング34より外側に飛び出した位置でスイングアーム11における揺動軸心X2周りの外側面に接触するようになっている。尚、
図11の仮想線は、環状リング34にC字状シム7を取り付けない状態のときのスイングアーム11の姿勢を示している。
【0101】
したがって、C字状シム7の厚みを変更することでC字状シム7の外周面の位置がコントロールシャフト31の径方向に変化し、それに伴ってスイングアーム11における揺動軸心X2周りの外側面の位置が移動するので、スイングアーム11の揺動軸心X2の位置を簡単に変えることができる。
【0102】
また、C字状シム7をコントロールシャフト31に取り付けた際、コントロールシャフト31に対してC字状シム7の位置がずれなくなり、コントロールシャフト31に対するC字状シム7の取り付けを安定させることができる。
【0103】
尚、本発明の実施形態1〜3では、可変動弁機構1を吸気用のバルブ10に適用したが、排気用のバルブ10に適用することも可能である。
【0104】
また、本発明の実施形態1〜3では、スイングアーム11がロッカアーム41を介してバルブ10を間接的に押圧しているが、ロッカアーム41を介さずに直接バルブ10を押圧する構成であってもよい。
【0105】
また、本発明の実施形態1,2では、偏心リング32の歯32bを本発明の係合突起と、環状突条部33bの歯溝33eを本発明の係合凹部と定義したが、偏心リング32の歯溝32cを本発明の係合凹部と、環状突条部33bの歯33dを本発明の係合突起と定義してもよい。
【0106】
また、本発明の実施形態3では、C字状シム7に係止突部7aを、環状リング34に上記係止突部7aが係止する係止凹部34aを設けたが、環状リング34に係止凹部34aを、C字状シム7に係止突部7aが係止する係止凹部34aを設けてもよい。