(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133096
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 5/18 20060101AFI20170515BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B24B5/18 B
B24B49/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-68881(P2013-68881)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188654(P2014-188654A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原山 佳史
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−079761(JP,A)
【文献】
特開昭55−018394(JP,A)
【文献】
特開2003−025194(JP,A)
【文献】
特開2002−137153(JP,A)
【文献】
米国特許第05674106(US,A)
【文献】
米国特許第05480342(US,A)
【文献】
米国特許第06244930(US,B1)
【文献】
特開2001−277082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00−5/50
B24B41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐部を有する円柱状部材の製造方法であって、送り角を与えた調整砥石とブレードとによって円柱体の被加工物の円柱面を支持するとともに、円柱面を有する研削砥石を前記ブレードを挟んで前記調整砥石に対向せしめて回転させながら前記研削砥石の円柱面を前記被加工物の円柱面に接触させ、前記被加工物の軸心に向かって、前記研削砥石または前記調整砥石を予め設定された移動量と移動時間に応じて連続的に移動させながらスルフィード研削することを特徴とする円柱状部材の製造方法。
【請求項2】
送り角を与えた調整砥石とブレードとによって円柱体の被加工物の円柱面を支持するとともに、円柱面を有する研削砥石を前記ブレードを挟んで前記調整砥石に対向せしめて回転させながら、前記研削砥石の円柱面を前記被加工物の円柱面に接触させてスルフィード研削により円柱部を形成する工程と、前記被加工物のスルフィード研削が任意の箇所に達したら、前記研削砥石または調整砥石を前記被加工物の中心軸に向かって連続的に移動させながらスルフィード研削することで前記円錐部を形成する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の円柱状部材の製造方法。
【請求項3】
前記被加工物のスルフィード研削が任意の箇所に達したことを、前記スルフィード研削の下流側に設けたセンサーにより前記被加工物の先端を認識してからの時間と、前記スルフィード研削の送り速度との関係により算出することを特徴とする請求項2に記載の円柱状部材の製造方法。
【請求項4】
周動可能な円柱状の研削砥石と、該研削砥石に離隔かつ対向して設けられた周動可能な円柱状の調整砥石と、該調整砥石および前記研削砥石の間に配置されたブレードとを備え、前記調整砥石と前記ブレードとによって円柱体の被加工物を支持するとともに前記研削砥石を前記被加工物に接触させスルフィード研削を行うセンタレス研削盤であって、前記スルフィード研削を停止することなく前記被加工物の軸心に向かって、前記研削砥石または前記調整砥石を予め設定された移動量と移動時間に応じて連続的に移動させるための制御部を有することを特徴とするセンタレス研削盤。
【請求項5】
前記被加工物が前記スルフィード研削により任意の位置まで加工されたことを検出するセンサー部を有し、前記センサー部で検出した検出信号に基づき前記制御部が前記前記研削砥石または前記調整砥石を移動させることを特徴とする請求項4に記載のセンタレス研削盤。
【請求項6】
前記センサー部は、前記スルフィード研削の前記被加工物排出側に設置されている事を特徴とする請求項5に記載のセンタレス研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐部を有する円柱状部材を製造するための円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状部材の研削を行う方法として従来より種々の方法が提案されているが、円柱状部材の軸を支持することなく円柱状部材表面の研削を行うセンタレス研削盤は、精度の高い研削表面を容易に形成できるメリットを有しており広く利用されている。従来のセンタレス研削技術は、円柱状の被加工物をブレードで支持し研磨砥石と調整砥石を半径方向に送り込んで研磨するインフィード研削(停止研削)、または調整砥石の軸心を被加工物の軸心に対して傾けることで調整砥石に軸方向分力(推力)を発生させ、この推力によって工作物が軸方向に送られて研磨するスルフィード研削(通過研削)が主流であり、例えばツイストドリルの様な被加工物の円柱部を円錐形状に加工するためにはインフィード研削が利用されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図3はインフィード研削における円錐部を有する円柱状部材の製造方法を示すための図である。31は被加工物であり、32はこの被加工物31の円錐部31aとその近傍の円柱部31bの外形状に対応する外形状を持つ調整砥石、33は同じく被加工物31の円錐部31aとその近傍の円柱部31bの外形状に対応する外形状を持つ研削砥石である。被加工物31は図示されないブレードにより下側を支えられており、研削砥石33を調整砥石32に接近させれば被加工物31は調整砥石32と研削砥石33との間で回転しながら研削される。このときには図示のように被加工物31の頭部はストッパー34により押さえられており、軸方向への移動を停止させた状態で円錐部31aとその近傍の円柱部31bの一部がインフィード方式で研削されることとなる。次にストッパー34を外して被加工物31の軸方向への移動を可能としたうえで調整砥石32を増速すれば、被加工物31は調整砥石33による送りを受けて軸方向に移動しつつその円柱部31bを、研削砥石33の被加工物31の円柱部31bの外形状に対応する部分によりスルフィード方式で研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2501142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインフィード研削による方法では、円錐部の加工は調整砥石及び研削砥石の外形状に倣って形成されるので、研削砥石の被加工物に対する加工可能範囲及び調整砥石の被加工物に対する支持範囲(調整砥石、研削砥石の幅)を超えた円錐部の加工は困難であった。また、インフィード研削はスルフィード研削と比較し被加工物を連続的に供給できないため生産能力に限界がある。本発明はこのような課題を鑑み、円柱体の被加工物から円錐部を有する加工物を製造するための方法であり、研削砥石の被加工物に対する加工可能範囲や調整砥石の被加工物に対する支持範囲に制限されず、生産性の高い円錐部を有する円柱状部材の製造方法と、その製造方法を実現するためのセンタレス研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
円錐部を有する円柱状部材の製造方法であって、送り角を与えた調整砥石とブレードとによって円柱体の被加工物の円柱
面を支持するとともに、円柱面を有する研削砥石をブレードを挟んで調整砥石に対向せしめて回転させながら研削砥石の円柱面を被加工物の円柱面に接触させ、
被加工物の軸心に向かって、研削砥石または調整砥石を予め設定された移動量と移動時間に応じて連続的に移動させながらスルフィード研削する円柱状部材の製造方法とする。
【0007】
送り角を与えた調整砥石とブレードとによって円柱体の被加工物の円柱
面を支持するとともに、円柱面を有する研削砥石を前記ブレードを挟んで調整砥石に対向せしめて回転させながら、研削砥石の円柱面を被加工物の円柱面に接触させてスルフィード研削により円柱部を形成する工程と、被加工物のスルフィード研削が任意の箇所に達したら、研削砥石または砥石を被加工物の中心軸に向かって連続的に移動させながらスルフィード研削することで円錐部を形成する工程と、を有する円柱状部材の製造方法とする。
【0008】
さらに、前記被加工物のスルフィード研削が任意の箇所に達したことを、前記スルフィード研削の下流側に設けたセンサーにより前記被加工物の先端を認識してからの時間と、前記スルフィード研削の送り速度との関係より算出する円柱状部材の製造方法とする。
【0009】
周動可能な円柱状の研削砥石と、該研削砥石に離隔かつ対向して設けられた周動可能な円柱状の調整砥石と、該調整砥石および研削砥石の間に配置されたブレードとを備え、調整砥石と前記ブレードとによって円柱体の被加工物を支持するとともに研削砥石を前記被加工物に接触させスルフィード研削を行うセンタレス研削盤であって、スルフィード研削を停止することなく
被加工物の軸心に向かって、研削砥石または調整砥石を予め設定された移動量と移動時間に応じて連続的に移動させるための制御部を有するセンタレス研削盤とする。
【0010】
前記被加工物が前記スルフィード研削により任意の位置まで加工されたことを検出するセンサー部を有し、前記センサー部で検出した検出信号に基づき前記制御部が前記研削砥石または前記調整砥石を移動させるセンタレス研削盤とする。
【0011】
前記センサー部は、前記スルフィード研削の前記被加工物排出側に設置されているセンタレス研削盤とする。
【発明の効果】
【0012】
研削砥石の加工可能範囲や調整砥石の支持範囲に制限されず、高い生産効率で円錐部を有する円柱状部材を製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤を説明するための図。
【
図2】本発明の円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤を説明するための図。
【
図3】インフィード研削における円錐部を有する円柱状部材の製造方法を示すための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤を図を用いて説明する。
図1は本発明の円柱状部材の製造方法及びセンタレス研削盤を説明するための図であり、
図2は
図1に記載のセンタレス研削盤のA−A断面を模式的に示す図である。センタレス研削盤10は、周動可能な円柱状の研削砥石13と、研削砥石13に離隔かつ対向して設けられた周動可能な円柱状の調整砥石12と、調整砥石12および研削砥石13の間に配置されたブレード14とを備えている。調整砥石12は、円柱状の被加工物11の軸心に対して移動可能な移動テーブル15上に固定され搭載されており、移動テーブル15はリニアモータや送りねじ機構からなる駆動装置16と連結され、駆動装置16により移動テーブルが移動する構成となっている。調整砥石12は、スルフィード研削のための推力を発生させるため軸心を被加工物11の軸心に対して1°〜4°傾けられている。また、駆動装置16は制御部17に接続されており、制御部17に任意の移動量、移動時間を入力することで、その入力値に応じて移動テーブル15と移動テーブル15上の調整砥石12を移動させる構成となっている。スルフィード研削における被加工物11の排出方向には、加工された被加工物11を支持するためのレール18が設置されている。
【0015】
またスルフィード研削における被加工物11の排出方向には、被加工物11の加工進行状況を検出するためのセンサー19を設置することも可能である。センサー19は制御部17と接続され、加工された被加工物11がレール18の特定の地点を通過したことをセンサー19が検出すると、その検出信号を得た制御部17は、予め測定されたスルフィード研削の送り速度とセンサー19の検出からの経過時間から算出される加工位置と、加工者が任意に設定しておいた円錐部の加工開始位置とが一致したところで移動テーブル15の移動を開始し、被加工物11に円錐部を形成するよう構成されている。また被加工物11に形成する円錐部の傾斜は、インフィード研削の送り速度と予め加工者により入力する移動テーブル18(調整砥石12)の移動量、移動時間に応じて移動テーブル15が移動するよう設定しておくことで調整することができる。
【0016】
次にセンタレス研削盤10を用いて円柱部と円錐部を有する円柱状部材を製造する方法を説明する。まず円柱体の被加工物11をセンタレス研削盤10に供給する。円柱状の被加工物11は、ブレード14と、回転砥石車である調整砥石12とによって支持される。そして回転砥石車である研削砥石13が円弧矢印R1方向に回転しつつ上記被加工物11に接触して、被加工物11の表面を研削する。
【0017】
ブレード14と調整砥石12により支持された被加工物11は研削砥石13によりスルフィード研削され、円柱部が加工される。被加工物11はスルフィード研削により加工されるので、加工された被加工物11はレール18上に排出される。レール18上に排出された被加工物11の端部は、スルフィード研削が進むにつれレール18上を移動していき、センサー19が加工された被加工物11の端部を検知する。
【0018】
センサー19が加工された被加工物11の端部を検知すると、その検知信号は制御部17に送られ、円錐部を形成するために予め設定しておいた任意の移動量と移動時間に基づき駆動装置16により移動テーブル15と移動テーブル15上に固定、搭載された調整砥石12が被加工物11の軸心へ向かい連続的に移動を開始する。この調整砥石12の移動に伴い被加工物11の切り込みが大きくなり円錐部が形成されることとなる。以上のようにして、円柱部と円錐部を有する円柱状部材を製造することができる。
【0019】
本発明によれば、予め測定したスルフィード研削の送り速度と、加工者が任意に設定する調整砥石の移動量、移動時間により、急峻な円錐や緩やかな円錐が自由に形成することができ、研削砥石の加工可能範囲、調整砥石の支持範囲を超えて様々な円錐部を形成することが可能である。また、円錐部を有する円柱状部材の製造をインフィード研削ではなくスルフィード研削により実現しているので、被加工物の供給を連続的に行うことができ従来のインフィード研削による製造に比べ生産効率が良い。
【0020】
以上、実施例を基に本発明のセンタレス研削盤および円柱部と円錐部を有する円柱状部材の製造方法を説明してきたが、本発明は実施例に記載の形態に限定されるものではなく、その範囲において種々の設計変更が可能である。例えば、本発明は調整砥石を被加工物の軸心に対して移動可能としたが、調整砥石にかわり研削砥石を被加工物の軸心に対し移動可能としても良い。
【0021】
また、被加工物の加工状況を検知するセンサーを被加工物の排出側に配置するのではなく、被加工物の供給側に配置しても良い。この際は、被加工物の加工進行の先端部を円錐部形成の基準とするのではなく、加工進行側の末端部を円錐部の位置基準として円錐部が形成される。
【0022】
また被加工物の供給開始直後より調整砥石を任意の移動量、移動時間によって被加工物の軸心に対して移動させることで円錐部のみからなる円柱状部材の製造も可能であり、また調整砥石の移動を複数回に分けて行えば、例えば複数の円柱部と複数の円錐部を持つ多段形状を持つ円柱状部材の製造が可能である。さらに、調整砥石の移動量、移動時間を複数設定することで、円錐の急峻な部分と緩やかな部分とからなる多段の円錐部を有する円柱状部材なども製造可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 センタレス研削盤11 被加工物
12 調整砥石
13 研削砥石
14 ブレード
15 移動テーブル
16 駆動装置
17 制御部
18 レール
19 センサー
31 被加工物
31a 円錐部
31b 円柱部
32 調整砥石
33 研削砥石
34 ストッパー