特許第6133101号(P6133101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133101
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】配車システムおよび配車方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20170515BHJP
   H04M 1/64 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G08G1/09 F
   H04M1/64 101
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-77171(P2013-77171)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-203173(P2014-203173A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】313006647
【氏名又は名称】セイコーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】川村 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 樹
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−018496(JP,A)
【文献】 特開2007−189363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
H04M 1/00
1/24− 1/82
99/00
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地への配車を行う配車センターに設置されたセンター端末装置と、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置とを備え、
前記センター端末装置は、
前記車両端末装置の各々との通話の開始及び終了を制御する制御メッセージの1つである前記通話への初期リクエストを生成し、前記初期リクエストに前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドを付加する初期リクエスト生成部と、
前記初期リクエストを送信する初期リクエスト送信部とを有し、
前記車両端末装置の各々は、
前記初期リクエストを受信する初期リクエスト受信部と、
受信した前記初期リクエストの前記フック制御コマンドを解釈して前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させるコマンド実行部と
自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させるか否かを判断する自動着呼判断部とを有しており、
前記初期リクエスト生成部は、前記初期リクエストに前記目的地の位置情報を更に付加し、
前記コマンド実行部は、前記自動着呼判断部が、前記目的地の位置情報と前記自車両の位置情報とから算出される距離が所定の距離以内であると判断したときに、前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させる
配車システム。
【請求項2】
前記初期リクエスト生成部は、
前記初期リクエストに前記目的地と車両の位置との間の距離を示す情報である範囲情報を更に付加し、
前記コマンド実行部は、
前記自動着呼判断部が、前記目的地と前記自車両との間の距離が、前記範囲情報の示す距離以内であると判断したときに、前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させる
請求項に記載の配車システム。
【請求項3】
前記車両端末装置は、
前記センター端末装置からの前記初期リクエストによって着呼したことを前記センター端末装置に知らせる応答メッセージを生成する応答メッセージ生成部と、
前記応答メッセージを送信する応答メッセージ送信部とを更に有し、
前記センター端末装置は、
前記応答メッセージを受信する応答メッセージ受信部と、
前記初期リクエストを送信してから経過した時間を測定する時間測定部とを有し、
前記初期リクエスト生成部は、
前記時間測定部の測定する時間が所定の時間を経過しても前記応答メッセージ受信部が前記応答メッセージを受信できないとき、前記範囲情報の示す距離を、送信された前記初期リクエストでの前記範囲情報よりも大きい距離として再度前記初期リクエストを生成し、
前記初期リクエスト送信部は、
前記再度生成された前記初期リクエストを送信する
請求項に記載の配車システム。
【請求項4】
前記初期リクエスト生成部は、
前記車両の進行方向と、前記目的地と前記車両の位置とを結ぶ直線とがなす角度を前記範囲情報に対応付けて記述し、
前記角度が大きいほど、前記範囲情報として小さい距離が対応付けられる
請求項またはに記載の配車システム。
【請求項5】
目的地への配車を行う配車センターに設置されたセンター端末装置にて、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置と前記センター端末装置との通話の開始および終了を制御する制御メッセージの1つである初期リクエストに、前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドと前記目的地の位置情報が付加される工程と、
前記センター端末装置から前記車両端末装置の各々に前記初期リクエストが送信される工程と、
前記車両端末装置の各々にて自車両の位置情報を取得する工程と、
前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させるか否かを判断する工程と、
前記車両端末装置の各々にて、前記初期リクエストが受信されて、受信された前記初期リクエストの前記フック制御コマンドが解釈され、前記目的地の位置情報と前記自車両の位置情報とから算出される距離が所定の距離以内であると判断したときに、前記センター端末装置からの発呼が自動で着呼される工程と、
を含む配車方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、例えばタクシー等の車両を目的地に対して割り振る配車システム、配車方法、配車装置、および、配車プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用客の乗車位置である目的地までのタクシーの配車は、例えば、以下の手順で行われている。まず、利用客が、自身の乗車したい位置をタクシーの配車を行う配車センターに電話等によって連絡する。利用客からの連絡を受けた配車センターは、連絡が可能な範囲に位置している複数のタクシーに対して、利用客の予約に関する情報、例えば、目的地等を一斉に知らせる。複数のタクシーのうちのいずれかが配車センターからの連絡に対して応答することによって、配車センターが、応答のあったタクシーのいずれかを目的地に配車されるタクシーとして選択する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
配車センターと各タクシーとの音声通話に無線機が用いられる場合には、配車センターからの音声は、通常、全てのタクシーに対して一斉に送信される。各タクシーでは、無線機の受信する周波数が、基地局の送信する周波数にあわせられていれば、基地局を介した配車センターからの音声を無線機が受信する。そのため、各タクシーでは、乗務員が無線機の操作を特に行わずとも、配車センターからの音声が無線機から発せられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−312893号公報
【特許文献2】特開2008−078732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配車センターと各タクシーとの音声通話に上述の無線機や基地局を含む無線配車システムが用いられる場合には、基地局等の設備に対する投資や、設備の維持のために費用が嵩む。また、電波法の改正等が行われた場合には、各タクシー会社は無線配車システムを構成する設備の一式を入れ替えなければならず、各タクシー会社が、個別に無線配車システムを維持および管理することは困難であった。
【0006】
近年では、携帯電話の普及により、携帯電話用の通信インフラによる無線通信が簡単に使用できるため、携帯電話用の通信インフラがタクシーの配車システムとして用いられ始めている。携帯電話用の通信インフラを配車システムに用いた場合には、配車センターの携帯電話と、タクシー携帯電話との間で音声通話を行うことが可能であるものの、こうした音声通話では、配車センターは1台のタクシーにしか連絡することができない。そこで、携帯電話用の通信インフラを用いた配車システムでは、音声通話を行うためのデータ通信技術として、音声信号をデジタル化して送信するVoIP(Voice over Internet Protocol)が用いられつつある。
【0007】
しかしながら、配車センターと各タクシーとの間での連絡がVoIPを用いた音声通話によって行われる場合には、配車センターと各タクシーとの通信が成立するために、各タクシーの乗務員は、配車センターからの着信に応答する動作を行わなければならない。つまり、VoIPを用いた配車システムでは、乗務員は、上述した無線配車システムのように着信に対する応答操作を行わずに音声通話を開始することができない。
【0008】
そのため、乗務員が、例えば車両の走行中等であるために応答する操作を行うことができない場合には、目的地からの距離が近いタクシーであっても、そのタクシーは配車されるタクシーとして選択されない。結果として、目的地に対するタクシーの配車効率が低くなってしまうため、より効率よくタクシーを配車することの可能なシステムが望まれている。こうした問題は、利用客を運送するタクシーの配車に限らず、例えば、故障車等を運搬するレッカー車や、荷物の集荷を行う宅配便の車両等の配車システムにおいても共通する。
【0009】
本開示の技術は、車両の配車効率を高めることが可能な配車システム、配車方法、配車装置、および、配車プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の技術における配車システムの一態様は、目的地への配車を行う配車センターに設置されたセンター端末装置と、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置とを備える。前記センター端末装置は、前記車両端末装置の各々との通話の開始及び終了を制御する制御メッセージの1つである前記通話への初期リクエストを生成し、前記初期リクエストに前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドを付加する初期リクエスト生成部と、前記初期リクエストを送信する初期リクエスト送信部とを有する。そして、前記車両端末装置の各々は、前記初期リクエストを受信する初期リクエスト受信部と、受信した前記初期リクエストの前記フック制御コマンドを解釈して前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させるコマンド実行部とを有する。
【0011】
本開示の技術における配車方法の一態様は、目的地への配車を行う配車センターに設置されたセンター端末装置にて、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置と前記センター端末装置との通話の開始および終了を制御する制御メッセージの1つである初期リクエストに前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドが付加される工程と、前記センター端末装置から前記車両端末装置の各々に前記初期リクエストが送信される工程とを含む。そして、前記車両端末装置の各々にて、前記初期リクエストが受信されて、受信された前記初期リクエストの前記フック制御コマンドが解釈され、前記センター端末装置からの発呼が自動で着呼される工程をさらに含む。
【0012】
本開示の技術における配車装置の一態様は、目的地への配車を行う配車センターに設置され、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置との通話の開始及び終了を制御する制御メッセージの1つである前記通話への初期リクエストを生成し、前記初期リクエストに、前記車両端末装置にて解釈可能なコマンドとして、前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドを付加する初期リクエスト生成部と、前記初期リクエストを送信する初期リクエスト送信部とを備える。
【0013】
本開示の技術における配車プログラムの一態様は、目的地への配車を行う配車センターに設置されたセンター端末装置を、複数の車両の各々に搭載された車両端末装置との通話の開始及び終了を制御する制御メッセージの1つである前記通話への初期リクエストを生成し、前記初期リクエストに、前記車両端末装置にて解釈可能なコマンドとして、前記車両端末装置に自動で着呼させるフック制御コマンドを付加する初期リクエスト生成部と、前記初期リクエストを送信する初期リクエスト送信部として機能させる。
【0014】
本開示における技術の一態様によれば、コマンド実行部が、センター端末装置からの初期リクエストに含まれるフック制御コマンドを解釈することによって、センター端末装置からの発呼を自動で着呼させる。そのため、車両の乗務員が着信に応答する操作を行わずとも、センター端末装置と車両端末装置との間での通話が可能になる。それゆえに、車両端末装置では、車両の走行中であってもセンター端末装置からの連絡を受けることができるため、乗務員の操作を必須とする構成と比べて、配車の効率を高めることができる。
【0015】
本開示の技術における配車システムの他の態様では、前記車両端末装置の各々は、自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させるか否かを判断する自動着呼判断部とを更に有する。前記初期リクエスト生成部は、前記初期リクエストに前記目的地の位置情報を更に付加する。そして、前記コマンド実行部は、前記自動着呼判断部が、前記目的地の位置情報と前記自車両の位置情報とから算出される距離が所定の距離以内であると判断したときに、前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させることが好ましい。
【0016】
配車センターが複数の車両に対して予約に関する情報を一斉に知らせた場合には、各車両には、目的地との距離に関わりなく利用客の情報が連絡されるため、目的地に近い車両が配車センターからの連絡に対して応答するとは限らない。つまり、目的地に近い車両が、必ずしも配車される車両として選択されない。それゆえに、車両を目的地に対して効率よく配車する上では、複数の車両のうち、目的地からの距離が近い車両にのみ予約に関する情報が知らされることが好ましい。
【0017】
しかしながら、配車センターが目的地からの距離が近い車両のみに情報を知らせるためには、配車センターが、各車両の位置情報を常に把握していること、および、目的地と各車両の位置との距離を把握することが必要とされる。そのため、配車センターには、これらを実現するための設備が必要になってしまう。
【0018】
この点で、本開示の技術における配車システムの他の態様によれば、車両端末装置が、自車両の位置情報と目的地の位置情報とから、センター端末装置からの発呼を自動で着呼するか否かを判断する。そのため、センター端末装置が各車両の現在位置を把握せずとも、目的地から所定の距離以内の車両のみに配車に関する情報を伝えやすくなる。それゆえに、目的地と車両との距離に関わらず、全ての車両に対して情報を伝える構成と比べて、配車センターが高度な設備を備えることなく、目的地に対する配車の効率を高めることができる。
【0019】
本開示の技術における配車システムの他の態様では、前記初期リクエスト生成部は、前記初期リクエストに前記目的地と車両の位置との間の距離を示す情報である範囲情報を更に付加する。そして、前記コマンド実行部は、前記自動着呼判断部が、前記目的地と前記自車両との間の距離が、前記範囲情報の示す距離以内であると判断したときに、前記センター端末装置からの発呼を自動で着呼させることが好ましい。
【0020】
本開示の技術における配車システムの他の態様によれば、センター端末装置は、各車両の現在位置を把握せずとも、目的地からの距離がセンター端末装置の設定した距離以内である車両のみに自動着呼させることができる。
【0021】
本開示の技術における配車システムの他の態様では、前記車両端末装置は、前記センター端末装置からの前記初期リクエストによって着呼したことを前記センター端末に知らせる応答メッセージを生成する応答メッセージ生成部と、前記応答メッセージを送信する応答メッセージ送信部とを更に有する。前記センター端末装置は、前記応答メッセージを受信する応答メッセージ受信部と、前記初期リクエストを送信してから経過した時間を測定する時間測定部とを有する。そして、前記初期リクエスト生成部は、前記時間測定部の測定する時間が所定の時間を経過しても前記応答メッセージ受信部が前記応答メッセージを受信できないとき、前記範囲情報の示す距離を、送信された前記初期リクエストでの前記範囲情報よりも大きい距離として再度前記初期リクエストを生成し、前記初期リクエスト送信部は、前記再度生成された前記初期リクエストを送信することが好ましい。
【0022】
本開示の技術における配車システムの他の態様によれば、センター端末装置は、範囲情報をより大きい距離に設定し直して初期リクエストを再送信するため、範囲情報に合致する車両が存在しないために、配車が行うことができない状況が継続することを抑えることができる。
【0023】
本開示の技術における配車システムの他の態様では、前記初期リクエスト生成部は、前記車両の進行方向と、前記目的地と前記車両の位置とを結ぶ直線とがなす角度を前記範囲情報に対応付けて記述し、前記角度が大きいほど、前記範囲情報として小さい距離が対応付けられることが好ましい。
【0024】
本開示の技術における配車システムの他の態様によれば、車両の進行方向が目的地側を向いていないときほど、範囲情報として小さい距離が対応付けられる。そのため、車両端末装置が単に目的地からの距離によって自動で着呼するか否かを判断する構成と比べて、車両端末装置は、より目的地に辿り着きやすい場合に自動で着呼する。それゆえに、目的地に対する配車の効率がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)(b)本開示の技術の第1実施形態における配車システムの全体構成を示す図である。
図2】SIPサーバの構成を示すブロック図である。
図3】メディアサーバの構成を示すブロック図である。
図4】センター端末装置の構成を示すブロック図である。
図5】SIP制御メッセージのデータ構成を示す図である。
図6】タクシー端末装置の構成を示すブロック図である。
図7】配車システムの動作を示すシーケンスチャートである。
図8】タクシー端末装置での自動着呼の処理の手順を示すフローチャートである。
図9】本開示の技術の第2実施形態におけるSIP制御メッセージのデータ構成を示す図である。
図10】タクシー端末装置の構成を示すブロック図である。
図11】タクシー端末装置での自動着呼処理の手順を示すフローチャートである。
図12】本開示の技術の第3実施形態におけるSIP制御メッセージのデータ構成を示す図である。
図13】タクシー端末装置での自動着呼処理の手順を示すフローチャートである。
図14】センター端末装置でのセッション開始の処理の手順を示すフローチャートである。
図15】本開示の技術の第4実施形態におけるSIP制御メッセージのデータ構成図である。
図16】進行方向情報を説明するための図である。
図17】タクシー端末装置での自動着呼処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1から図8を参照して、配車システムの第1施形態を説明する。以下では、配車システムの全体構成、各要素の構成、配車システムの動作の順に説明する。なお、本実施形態における配車システムは、通信制御プロトコルの1つであるSIP(Session Initiation Protocl)を用いて具体化した形態であって、配車システムの一例である。
【0027】
[配車システムの全体構成]
図1(a)および図1(b)に示されるように、配車システムは、SIPサーバ10、メディアサーバ20、SIP端末であるセンター端末装置30、および、SIP端末である複数のタクシー端末装置40を備え、SIPサーバ10、メディアサーバ20、および、センター端末装置30の各々は、IPネットワーク50に接続されている。本実施形態では、タクシー端末装置40が車両端末装置を構成している。
【0028】
SIPサーバ10は、呼制御プロトコルの一例であるSIPプロトコルに則りSIP端末間でのセッションの開始と終了とを制御する。メディアサーバ20は、音声や映像の転送に用いられるプロトコルの一例であるRTP/RTCPプロトコルに則りSIP端末間での音声パケットの送信および受信を可能にする。センター端末装置30は、例えばタクシーの配車センターに設置され、各タクシー端末装置40との音声通話を行う。各タクシー端末装置40は、1台のタクシーに1つずつ搭載され、センター端末装置30との間で音声通話を行う。
【0029】
図1(a)に示されるように、SIPプロトコルによってセッションの開始と終了とが制御される場合には、センター端末装置30が、SIPサーバ10を経由して各タクシー端末装置40と接続される。一方、図1(b)に示されるように、RTP/RTCPプロトコルによる音声通話が行われている場合には、図中の破線で示されるように、センター端末装置30のルータ機能によって、センター端末装置30と、各タクシー端末装置40とが接続される。もしくは、図中の実線で示されるように、センター端末装置30が、メディアサーバ20のルータ機能を用いて各タクシー端末装置40と接続される。なお、センター端末装置30がメディアサーバ20を経由して接続される場合には、センター端末装置30と各タクシー端末装置40との間での音声通話だけでなく、センター端末装置30と複数のタクシー端末装置40との間での会議通話も可能である。
【0030】
[SIPサーバの構成]
図2を参照してSIPサーバ10の構成を説明する。
図2に示されるように、SIPサーバ10は、呼制御部11、プロトコル制御部12、および、メディアサーバ制御部13を備えている。呼制御部11は、プロトコル制御部12およびメディアサーバ制御部13の動作を制御する。呼制御部11は、プロトコル制御部12から入力されたSIP制御メッセージに基づき、音声通話に関するリソースの確保や解放等に関する制御信号を生成し、メディアサーバ制御部13に出力する。
【0031】
プロトコル制御部12は、SIPアドレスやIPアドレスを管理するレジストラ機能、受信した接続要求を他のSIPサーバ等に転送するプロキシサーバ機能、および、接続要求の内容が適当でない場合に、接続要求の送信元に内容の変更を促すダイレクトサーバ機能を有する。プロトコル制御部12は、SIPプロトコルに基づいてSIPサーバ10に接続される端末間での音声通話の開始と終了とを制御する。プロトコル制御部12は、各SIP端末からのSIP制御メッセージを受信し、受信したSIP制御メッセージを呼制御部11に出力する。
【0032】
メディアサーバ制御部13は、セッションが開始された後の音声通話にて、メディアサーバ20が用いられる場合に必要とされ、呼制御部11からの制御信号に基づいて、メディアサーバ20に対する制御信号を生成して出力する。
【0033】
[メディアサーバの構成]
図3を参照してメディアサーバ20の構成を説明する。
図3に示されるように、メディアサーバ20は、制御部21、音声パケット生成部22、音声パケット送受信部23、および、会議通話機能部24を備えている。制御部21は、SIPサーバ10から入力された制御信号に基づき、音声通話に関するリソースの確保や解放等を行う。音声パケット生成部22は、各SIP端末から送信された音声パケットの宛先をメディアサーバ20から送信先のSIP端末に変更することによって音声パケットを生成する。音声パケット送受信部23は、各SIP端末から送信された音声パケットの受信と、各SIP端末に対する音声パケットの送信とを行う。
【0034】
会議通話機能部24は、複数のSIP端末間で会議通話が行われる場合に、各SIP端末から音声パケット送受信部23を経由して受信した圧縮音声をミキシングする。会議通話機能部24は、音声パケット送受信部23を経由してエンコードした圧縮音声を各SIP端末に送信する。
【0035】
[センター端末装置の構成]
図4および図5を参照してセンター端末装置30の構成を説明する。
図4に示されるように、センター端末装置30は、制御メッセージ生成部31、制御メッセージ送受信部32、音声パケット生成部33、および、音声パケット送受信部34を備え、配車プログラムに従って各部での処理を実行する。本実施形態では、制御メッセージ生成部31が初期リクエスト生成部を構成し、制御メッセージ送受信部32がSIP(要求/応答)メッセージ送信部とSIP(要求/応答)メッセージ受信部とを構成している。制御メッセージ生成部31は、SIPプロトコルに則って各種SIP制御メッセージを生成し、SIP制御メッセージ、特に、セッションの確立を要求することを意味する初期リクエストであるINVITEのヘッダ部に、フック制御コマンドを付加する。制御メッセージ送受信部32は、SIPプロトコルに基づいてSIP制御メッセージをSIPサーバ10に向けて送信し、SIPサーバ10からのSIP制御メッセージを受信する。なお、本実施形態では、制御メッセージ送受信部32が、初期リクエスト送信部および応答メッセージ受信部を構成している。
【0036】
音声パケット生成部33は、RTP/RTCPプロトコルに則った形式で、音声情報のパケットを生成する。音声パケット送受信部34は、RTP/RTCPプロトコルに則り生成された音声パケットを各タクシー端末装置40に向けて、あるいは、メディアサーバ20に向けて送信する。
【0037】
図5を参照して、制御メッセージ生成部31にて生成されるSIP制御メッセージを説明する。SIP制御メッセージは、RFC3261の規定において、基本的には、REGISTER、INVITE、ACK、BYE、CANCEL、および、OPTIONSの6種類のメソッドで構成されている。REGISTERは、各SIP端末を登録するときにSIPサーバ10に送信されるメッセージであり、INVITEは、セッションの開始を要求するときにSIPサーバ10に送信されるメッセージである。ACKは、セッションの開始が成立したとき等にSIPサーバ10に送信されるメッセージであり、BYEは、セッションを終了するときにSIPサーバ10に送信されるメッセージである。CANCELは、既に送信したメッセージを取り消すときにSIPサーバ10に送信されるメッセージであり、OPTIONSは、SIPサーバ10の機能や、各SIP端末の機能を問い合わせるときにSIPサーバ10に送信されるメッセージである。
SIP制御メッセージは、ヘッダ部とデータ部とから構成され、ヘッダ部には、メッセージの種類を示すメソッド名、送信者、および、受信者等が記述されている。
【0038】
図5に示されるように、SIP制御メッセージのメソッドがINVITEである場合には、INVITEメッセージ100のヘッダ部101に、フック制御コマンド101aが付加されている。ヘッダ部101にフック制御コマンド101aが付加されている場合には、SIPサーバ10を経由してSIP制御メッセージを受信したタクシー端末装置40が、セッションを自動着呼する。なお、以下では、各タクシー端末装置40にて着信音が鳴った後に、タクシーの乗務員が応答操作を行うことによってセッションが成立することが、通常着呼として設定される。また、各タクシー端末装置40にて着信音が鳴ること、および、乗務員が応答操作を行うことなしにセッションが成立することが、自動着呼として設定される。
【0039】
データ部102には、セッションで使用されるメディアの型、コーデック、RTP/RTCPプロトコルによる音声通話に用いられるIPアドレス、および、ポート番号等が記述され、音声通話が行われる場合には、メディアの型としてaudioが記述されている。
【0040】
[タクシー端末装置の構成]
図6を参照してタクシー端末装置40の構成を説明する。
図6に示されるように、タクシー端末装置40は、制御メッセージ生成部41、制御メッセージ送受信部42、音声パケット生成部43、音声パケット送受信部44、および、コマンド実行部45を備えている。本実施形態では、制御メッセージ生成部41が応答メッセージ生成部を構成し、制御メッセージ送受信部42がSIP(要求/応答)メッセージ送信部とSIP(要求/応答)メッセージ受信部とを構成している。制御メッセージ生成部41、制御メッセージ送受信部42、音声パケット生成部43、および、音声パケット送受信部44の各々は、上述したセンター端末装置30における同じ名称の機能部と同等の機能を有している。コマンド実行部45は、SIPサーバ10から送信されたSIP制御メッセージに含まれるフック制御コマンド101aを解釈し、フック制御コマンド101aに基づいて音声通話を自動着呼と通常着呼とのいずれかに設定する。なお、タクシー端末装置40の制御メッセージ生成部41もセンター端末装置30の制御メッセージ生成部31と同等のSIP制御メッセージを生成することが可能ではある。しかしながら、タクシー端末装置40の生成するINVITEメッセージのヘッダ部には、フック制御コマンドが記述されない。また、本実施形態では、制御メッセージ送受信部42が初期リクエスト受信部および応答メッセージ送信部を構成している。
【0041】
[配車システムの動作]
図7を参照して配車システムの動作を説明する。なお、以下では、タクシー端末装置40が、センター端末装置30からの発呼に対して通常着呼を行う場合を説明する。また、センター端末装置30が、メディアサーバ20を経由して各タクシー端末装置40と音声通話を行う場合を説明した後に、センター端末装置30が、各タクシー端末装置40と直に音声通話を行う場合を説明する。
【0042】
[メディアサーバを経由した音声通話]
図7に示されるように、例えば、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での音声通話が行われる場合には、センター端末装置30が、INVITEメッセージを生成してSIPサーバ10のプロトコル制御部12に送信する(ステップS1)。すなわち、センター端末装置30が、SIPサーバ10を経由してタクシー端末装置40に対して発呼する。ステップS1にて送信されるINVITEメッセージには、センター端末装置30のIPアドレスと、音声通話に用いられるポート番号とが記述されている。プロトコル制御部12は、INVITEメッセージを生成してタクシー端末装置40に送信する(ステップS2)。ステップS2にて送信されるINVITEメッセージには、タクシー端末装置40の接続先となるメディアサーバ20のIPアドレスと、呼制御部11から入力された制御信号に基づいてメディアサーバ20が確保したポート番号とが記述されている。
【0043】
そして、プロトコル制御部12は、ステップS1でのINVITEメッセージに対する処理が試行中であることを意味する100Tryingレスポンスメッセージを生成し、センター端末装置30に送信する(ステップS3)。また、タクシー端末装置40は、ステップS2でのINVITEメッセージに対する100Tryingレスポンスメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信する(ステップS4)。その後、タクシー端末装置40は、呼び出し中であることを意味する180Ringingレスポンスメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信し(ステップS5)、タクシー端末装置40は着信音を鳴らす。プロトコル制御部12は、タクシー端末装置40からの180Ringingレスポンスメッセージを受信すると、180Ringingレスポンスメッセージを生成してセンター端末装置30に送信する(ステップS6)。このとき、センター端末装置30は、RTP/PTCPプロトコルを用いてセンター端末装置30に対して送信されたリングバックトーンを再生する。
【0044】
次いで、タクシーの乗務員が応答操作を行うと、タクシー端末装置40が、ステップS2でのINVITEメッセージによる要求が成功したことを意味する200OKレスポンスメッセージを生成し、プロトコル制御部12に送信する(ステップS7)。ステップS7にて送信される200OKレスポンスメッセージには、タクシー端末装置40のIPアドレスとポート番号とが記述されている。プロトコル制御部12は、200OKレスポンスメッセージを受信すると、200OKメッセージを生成してセンター端末装置30に送信する(ステップS8)。ステップS8にて送信される200OKレスポンスメッセージには、メディアサーバ20のIPアドレスとポート番号とが記述されている。これにより、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが、メディアサーバ20を経由して開始されるため、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での音声通話が可能になる。そして、センター端末装置30とタクシー端末装置40とが、RTP/RTCPプロトコルによる音声通話を行う(ステップS20)。
【0045】
センター端末装置30は、200OKレスポンスメッセージを受信すると、ACKメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信し(ステップS9)、プロトコル制御部12が、ACKメッセージを生成してタクシー端末装置40に送信する(ステップS10)。
【0046】
そして、配車センターの従業員が音声通話を終了するときには、センター端末装置30が、BYEメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信し(ステップS11)、プロトコル制御部12が、BYEメッセージを生成してタクシー端末装置40に送信する(ステップS12)。これにより、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが終了され、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での音声通話が終了される。
【0047】
タクシー端末装置40は、BYEメッセージを受信すると、200OKレスポンスメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信し(ステップS13)、プロトコル制御部12が、200OKレスポンスメッセージを生成してセンター端末装置30に送信する(ステップS14)。
【0048】
[メディアサーバを経由しない音声通話]
図7に示されるように、センター端末装置30が、INVITEメッセージを生成してSIPサーバ10のプロトコル制御部12に送信する(ステップS1)。ステップS1にて送信されるINVITEメッセージには、センター端末装置30のIPアドレスと、音声通話に用いられるポート番号とが記述されている。プロトコル制御部12は、INVITEメッセージを生成してタクシー端末装置40に送信する(ステップS2)。ステップS2にて送信されるINVITEメッセージには、センター端末装置30のIPアドレスとポート番号とが記述されている。
【0049】
そして、ステップS3からステップS6までは、メディアサーバ20を経由した場合と同様の処理が行われる。次いで、タクシー端末装置40が、200OKレスポンスメッセージを生成してプロトコル制御部12に送信する(ステップS7)。ステップS7にて送信される200OKレスポンスメッセージには、タクシー端末装置40のIPアドレスとポート番号とが記述されている。プロトコル制御部12は、200OKレスポンスメッセージを生成してセンター端末装置30に送信する(ステップS8)。ステップS8にて送信される200OKレスポンスメッセージにも、タクシー端末装置40のIPアドレスとポート番号とが記述されている。これにより、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが開始されるため、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での音声通話が可能になる。
その後、音声通話(ステップS20)を含むステップS9からステップS14までは、メディアサーバ20を経由した場合と同様の処理が行われる。
【0050】
[タクシー端末装置での自動着呼処理]
図8を参照してタクシー端末装置40での自動着呼処理を説明する。なお、自動着呼処理によるセッションの確立は、センター端末装置30と1つのタクシー端末装置40との間で行われる場合と、センター端末装置30と複数のタクシー端末装置40との間で同時に行われる場合とがある。セッションの確立が、センター端末装置30と複数のタクシー端末装置40との間で同時に行われる場合には、自動着呼処理は、各タクシー端末装置40にて行われる。
【0051】
図8に示されるように、セッションが開始されるときには、タクシー端末装置40の制御メッセージ送受信部42が、センター端末装置30から送信されたINVITEメッセージ100をSIPサーバ10のプロトコル制御部12を経由して受信する(ステップS31)。なお、ステップS31での処理は、図7におけるステップS2での処理に相当する。
【0052】
制御メッセージ送受信部42は、INVITEメッセージ100をコマンド実行部45に出力し、コマンド実行部45が、INVITEメッセージ100を解釈する(ステップS32)。
【0053】
コマンド実行部45が、INVITEメッセージ100のヘッダ部101にフック制御コマンド101aが記述されていると判断した場合には(ステップS32:YES)、コマンド実行部45は、フック制御コマンドに基づいてタクシー端末装置40に自動着呼を行わせる(ステップS33)。すなわち、制御メッセージ生成部41は、図7におけるステップS5での180Ringingレスポンスメッセージを生成せず、ステップS7での200OKレスポンスメッセージを生成する。これにより、タクシー端末装置40では、着信音が鳴ること、および、乗務員による応答操作が行われることなく、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが開始される。
【0054】
そのため、車両の乗務員が着信に応答する操作を行わずとも、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での音声通話が可能になる。それゆえに、タクシー端末装置40では、車両の走行中であってもセンター端末装置30からの連絡を受けることができるため、乗務員の応答操作を必須とする構成と比べて、配車の効率を高めることができる。
【0055】
一方、コマンド実行部45が、INVITEメッセージのヘッダ部にフック制御コマンドが記述されていないと判断した場合には(ステップS32:NO)、コマンド実行部45は、センター端末装置30からのセッション確立の要求を受け付けて、タクシー端末装置40に着信音を鳴らさせる(ステップS34)。そして、タクシー端末装置40では、図7を用いて説明した通常着呼が行われる(ステップS35)。すなわち、制御メッセージ生成部41が、図7におけるステップS5での180Ringingレスポンスメッセージを生成し、かつ、タクシー端末装置40が着信音を鳴らす。タクシーの乗務員が応答操作を行った場合には、図7におけるステップS6からステップ10までの処理が行われる。
【0056】
なお、タクシーの乗務員が応答操作を行わなかった場合には、図7におけるステップS7以降の処理が行われない。例えば、SIPサーバ10が、応答しなかったタクシー端末装置40に対しては、CANCELメッセージを生成して制御メッセージ送受信部42に送信する。
以上説明したように、配車システムの第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)コマンド実行部45が、センター端末装置30からのINVITEメッセージ100に含まれるフック制御コマンド101aを解釈することによって、センター端末装置30からの発呼を自動で着呼させる。そのため、車両の乗務員が着信に応答する操作を行わずとも、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間での通話が可能になる。それゆえに、タクシー端末装置40では、車両の走行中であってもセンター端末装置30からの連絡を受けることができるため、乗務員の応答操作を必須とする構成と比べて、配車の効率を高めることができる。
【0058】
[第2実施形態]
図9から図11を参照して、配車システムの第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と比べて、センター端末装置30が送信するINVITEメッセージの構造、タクシー端末装置40の構成、および、タクシー端末装置40での自動着呼処理が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を説明し、その他の説明を省略する。
【0059】
[INVITEメッセージの構造]
図9を参照してINVITEメッセージの構造を説明する。
図9に示されるように、INVITEメッセージ110は、第1実施形態のINVITEメッセージ100と同様、ヘッダ部111とデータ部112とを備えている。ヘッダ部111には、フック制御コマンド111aに加えて、顧客の乗車位置に関する情報である乗車位置情報111bが付加されている。乗車位置情報111bには、例えば、乗車位置の緯度情報と経度情報とが含まれている。
【0060】
[タクシー端末装置の構成]
図10を参照してタクシー端末装置40の構成を説明する。
図10に示されるように、タクシー端末装置40は、第1実施形態のタクシー端末装置40と同様、制御メッセージ生成部41、制御メッセージ送受信部42、音声パケット生成部43、音声パケット送受信部44、および、コマンド実行部45を備えている。タクシー端末装置40は、第1実施形態のタクシー端末装置40とは異なり、位置情報取得部46、および、自動着呼判断部47を備えている。
【0061】
位置情報取得部46は、タクシーの現在位置を検出する位置検出装置、例えば、GPS受信装置等に接続され、位置検出装置から入力される自車両の現在位置情報を取得する。自動着呼判断部47は、INVITEメッセージ110のヘッダ部111に含まれる乗車位置情報と、自車両の現在位置とを用いて、所定の判断条件、例えば、乗車位置と自車両の現在位置とから算出される直線距離に基づいて、通常着呼もしくは自動着呼のいずれかを判断する。
【0062】
[タクシー端末装置での自動着呼処理]
図11を参照してタクシー端末装置40での自動着呼処理を説明する。
図11に示されるように、セッションが開始されるときには、タクシー端末装置40の制御メッセージ送受信部42が、センター端末装置30から送信されたINVITEメッセージ110をSIPサーバ10のプロトコル制御部12を経由して受信する(ステップS41)。なお、ステップS41での処理は、図7におけるステップS2での処理に相当する。
【0063】
制御メッセージ送受信部42は、INVITEメッセージ100をコマンド実行部45に出力し、コマンド実行部45がINVITEメッセージ110を解釈する(ステップS42、ステップS43)。
【0064】
コマンド実行部45が、INVITEメッセージ110のヘッダ部111にフック制御コマンド111aが記述され、かつ、乗車位置情報111bが記述されていると判断した場合には(ステップS42:YES、ステップS43:YES)、位置情報取得部46が、自車両の現在位置を取得する(ステップS44)。そして、自動着呼判断部47が、乗車位置情報111bと、位置情報取得部46の取得した自車両の現在位置を用いて2つの位置間の直線距離を算出する。自動着呼判断部47は、直線距離が指定された所定の距離以内であるか否かを判断する(ステップS45)。なお、直線距離と比べられる所定の距離は、予めタクシー端末装置40に記憶された不変の距離であってもよいし、乗務員による変更が可能な距離であってもよい。
【0065】
自動着呼判断部47が、算出した直線距離が指定された距離以内であると判断した場合には(ステップS45:YES)、タクシー端末装置40では、自動着呼が行われる(ステップS46)。すなわち、第1実施形態と同様、制御メッセージ生成部41が図7におけるステップS7での200OKレスポンスメッセージを生成することで、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが開始される。
【0066】
一方、自動着呼判断部47が、算出した直線距離が指定された距離よりも大きいと判断した場合には(ステップS45:NO)、コマンド実行部45は、センター端末装置30からのセッション確立の要求を受け付けて、タクシー端末装置40に着信音を鳴らさせ(ステップS47)、タクシー端末装置40に通常着呼を行わせる(ステップS48)。
【0067】
配車センターが複数の車両に対して予約に関する情報を一斉に知らせた場合には、各車両には、目的地との距離に関わりなく利用客の情報が連絡されるため、目的地に近い車両が配車センターからの連絡に対して応答するとは限らない。つまり、目的地に近い車両が、必ずしも配車される車両として選択されない。それゆえに、車両を目的地に対して効率よく配車する上では、複数の車両のうち、目的地からの距離が近い車両にのみ予約に関する情報が知らされることが好ましい。
【0068】
しかしながら、配車センターが目的地からの距離が近い車両のみに情報を知らせるためには、配車センターが、各車両の位置情報を常に把握していること、および、目的地と各車両の位置との距離を把握することが必要とされる。そのため、配車センターには、これらを実現するための設備が必要になってしまう。
【0069】
上述のように、本実施形態では、タクシー端末装置40が、自車両の位置情報と目的地の位置情報とから、センター端末装置30からの発呼を自動で着呼するか否かを判断する。そのため、センター端末装置30が各車両の現在位置を把握せずとも、目的地から所定の距離以内の車両のみに配車に関する情報を伝えやすくなる。それゆえに、目的地と車両との距離に関わらず、全ての車両に対して情報を伝える構成と比べて、配車センターが高度な設備を備えることなく、目的地に対する配車の効率を高めることができる。
【0070】
なお、第1実施形態と同様のINVITEメッセージ110、すなわち、ヘッダ部111にフック制御コマンド111aのみが付加されたメッセージが、タクシー端末装置40に送信される場合もある。この場合には、コマンド実行部45は、ヘッダ部111にフック制御コマンド111aが記述されている一方、乗車位置情報が記述されていないと判断する(ステップS42:YES、ステップS43:NO)。そして、コマンド実行部45が、タクシー端末装置40に自動着呼を行わせる(ステップS46)。そのため、タクシー端末装置40では、顧客の乗車位置と自車両の現在位置の距離に関わらず、センター端末装置30からの発呼が自動で着呼することによって、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが開始される。
以上説明したように、配車システムの第2実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0071】
(2)タクシー端末装置40が、自車両の位置情報と目的地の位置情報とから、センター端末装置30からの発呼を自動で着呼するか否かを判断する。そのため、センター端末装置30が各車両の現在位置を把握せずとも、目的地から所定の距離以内の車両のみに配車に関する情報を伝えやすくなる。それゆえに、目的地と車両との距離に関わらず、全ての車両に対して情報を伝える構成と比べて、配車センターが高度な設備を備えることなく、目的地に対する配車の効率を高めることができる。
【0072】
[第3実施形態]
図12から図14を参照して、配車システムの第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態は、第2実施形態と比べて、センター端末装置30の備える制御メッセージ生成部31の機能、センター端末装置30が送信するINVITEメッセージの構造、タクシー端末装置40での自動着呼処理、および、センター端末装置30でのINVITEメッセージの生成処理が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を説明し、その他の説明を省略する。
【0073】
[INVITEメッセージの構造]
図12を参照してINVITEメッセージの構造を説明する。
図12に示されるように、INVITEメッセージ120は、第2実施形態のINVITEメッセージ110と同様、ヘッダ部121とデータ部122とを備えている。ヘッダ部121には、フック制御コマンド121aおよび乗車位置情報121bに加えて、範囲情報121cが付加されている。範囲情報121cは、例えば、タクシー端末装置40に自動着呼を行わせる範囲であり、この範囲は、自車両の現在位置と乗車位置とから算出される直線距離の値によって指定されている。
【0074】
[制御メッセージ生成部の機能]
センター端末装置30の制御メッセージ生成部31は、第2実施形態の制御メッセージ生成部31と同様、SIP制御メッセージを生成する。SIP制御メッセージがINVITEメッセージである場合には、制御メッセージ生成部31は、INVITEメッセージ120のヘッダ部に対して上述した3つの情報を付加する。加えて、制御メッセージ生成部31は、タクシー端末装置40に対してINVITEメッセージを送信してから所定の時間内にタクシー端末装置40とのセッションが開始されない場合には、前回よりも大きい値を範囲情報121cとして記述したINVITEメッセージを生成する。制御メッセージ生成部31は、直線距離の値が更新されたINVITEメッセージをタクシー端末装置40に向けて送信する。
【0075】
[タクシー端末装置での自動着呼処理]
図13を参照してタクシー端末装置40での自動着呼処理を説明する。
図13に示されるように、第2実施形態と同様、タクシー端末装置40がINVITEメッセージ120を受信し(ステップS51)、コマンド実行部45が、フック制御コマンド121aおよび乗車位置情報121bがヘッダ部121に記述されているか否かを判断する(ステップS52、ステップS53)。コマンド実行部45が、フック制御コマンド121aおよび乗車位置情報121bがヘッダ部121に記述されていると判断すると(ステップS52:YES、ステップS53:YES)、位置情報取得部46が、自車両の現在位置を取得する(ステップS54)。
【0076】
そして、自動着呼判断部47が、乗車位置情報121b、および、位置情報取得部46の取得した自車両の現在位置を用いて、乗車位置と自車両の現在位置との直線距離を算出する。自動着呼判断部47は、直線距離が、センター端末装置30の指定した距離以内、すなわち、範囲情報121cで指定された直線距離以内であるか否かを判断する(ステップS55)。
【0077】
自動着呼判断部47が、算出した直線距離が範囲情報121cによって指定された距離以内であると判断した場合には(ステップS55:YES)、コマンド実行部45がタクシー端末装置40に自動着呼を行わせる(ステップS56)。一方、自動着呼判断部47が、算出した直線距離が範囲情報121cによって指定された距離よりも大きいと判断した場合には(ステップS55:NO)、コマンド実行部45は、第2実施形態と同様、タクシー端末装置40に着信音を鳴らさせ(ステップS57)、通常着呼を行わせる(ステップS58)。
【0078】
[センター端末装置でのINVITEメッセージ生成処理]
図14を参照してセンター端末装置30でのINVITEメッセージ120の生成処理を説明する。
図14に示されるように、センター端末装置30が、タクシー端末装置40に対してセッションの確立を要求する場合には、センター端末装置30の制御メッセージ生成部31は、INVITEメッセージを生成する。制御メッセージ生成部31は、範囲情報121cとしての直線距離の初期値を読み込む(ステップS61)。初期値は、予め設定された所定の距離であって、センター端末装置30の記憶部に保存されている。制御メッセージ生成部31は、読み込んだ初期値を範囲情報121cとして設定し(ステップS62)、制御メッセージ送受信部32がINVITEメッセージ120をタクシー端末装置40に向けて送信する(ステップS63)。
【0079】
センター端末装置30は、INVITEメッセージの送信から経過した時間を測定し、タクシー端末装置40からの応答を所定時間内に確認できた場合には(ステップS64:YES)、すなわち、図7におけるステップS8の200OKレスポンスメッセージを受信した場合には、センター端末装置30とタクシー端末装置40との間でのセッションが開始される。なお、本実施形態では、センター端末装置30が時間測定部を構成している。
【0080】
一方、センター端末装置30が、タクシー端末装置40からの応答を所定時間内に確認できない場合には(ステップS64:NO)、制御メッセージ生成部31が、前回の直線距離の値に対して所定の距離Aを加算する(ステップS65)。制御メッセージ生成部31は、ステップS65にて算出された直線距離の値を今回の範囲情報121cとして設定する(ステップS62)。その後、センター端末装置30は、送信されたINVITEメッセージ120に対して、タクシー端末装置40から所定時間内に応答があるまで、ステップS62からステップS65までの処理を繰り返し行う。
【0081】
そのため、センター端末装置30は、各車両の現在位置を把握せずとも、目的地からの距離がセンター端末装置30の設定した距離以内である車両のみに自動着呼させることができる。
また、センター端末装置30は、タクシー端末装置40からの応答がない場合には、範囲情報をより大きい距離に設定し直してINVITEメッセージ120を再送信するため、範囲情報に合致する車両が存在しないために、配車が行うことができない状況が継続することを抑えることができる。
以上説明したように、配車システムの第3実施形態によれば、上記(1)および(2)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0082】
(3)センター端末装置30は、各車両の現在位置を把握せずとも、目的地からの距離がセンター端末装置30の設定した距離以内である車両のみに自動着呼させることができる。
【0083】
(4)センター端末装置30は、前回のINVITEメッセージ120よりも範囲情報をより大きい距離に設定し直してINVITEメッセージ120を再送信するため、範囲情報に合致する車両が存在しないために、配車が行うことができない状況が継続することを抑えることができる。
【0084】
[第4実施形態]
図15から図17を参照して、配車システムの第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態は、第2実施形態と比べて、センター端末装置30が送信するINVITEメッセージの構造、および、タクシー端末装置40での自動着呼処理が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、その他の説明を省略する。
【0085】
[INVITEメッセージの構造]
図15を参照してINVITEメッセージの構造を説明する。
図15に示されるように、INVITEメッセージ130は、第2実施形態のINVITEメッセージ110と同様、ヘッダ部131とデータ部132とを備えている。ヘッダ部131には、フック制御コマンド131aおよび乗車位置情報131bに加えて、進行方向情報131cが付加されている。進行方向情報131cには、顧客の乗車位置と自車両の現在位置とを結ぶ直線と、自車両の進行方向とのなす角度が、角度θとして設定されている。そして、進行方向情報131cには、角度θが±90°以内であるときの範囲情報と、角度θの絶対値が90°よりも大きく180°以内であるときの範囲情報とが、角度θの範囲に対応付けて各別に記述されている。角度θが±90°以内であるときの範囲情報には、角度θの絶対値が90°よりも大きく180°以内であるときの範囲情報と比べて、相対的に大きい直線距離が設定されている。
【0086】
[進行方向情報]
図16を参照してINVITEメッセージに記述される進行方向情報をより詳しく説明する。
図16に示されるように、タクシー端末装置40は、自車両に設定されている経路情報、あるいは、自車両の現在位置PPと現在の目的地とから自車両の進行方向を決定し、自車両の現在位置PPと乗車位置RPとを結ぶ直線Bとのなす角度を上述した角度θとして算出する。また、センター端末装置30が送信するINVITEメッセージ130には、角度θが±90°以内であるときの範囲情報として大きい円で示される範囲Cが記述され、角度θの絶対値が90°よりも大きく180°以内であるときの範囲情報として小さい円で示される範囲Dが記述されている。
【0087】
図16に示される5台の車両のうち、乗車位置RPに近い2台の車両V1,V2は、現在位置PPと乗車位置RPとの直線距離が範囲Dに含まれているため、各車両V1,V2に搭載されたタクシー端末装置40は、角度θに関わらずセンター端末装置30からの発呼に対して自動着呼する。これに対し、乗車位置RPから遠い3台の車両V3,V4,V5は、現在位置PPと乗車位置RPとの直線距離が範囲Cに含まれてはいるものの、範囲Dには含まれていない。そのため、各車両V3,V4,V5に搭載されたタクシー端末装置40は、角度θが±90°以内の範囲に含まれる場合には、センター端末装置30の発呼に対して自動着呼を行う。一方、各車両V3,V4,V5に搭載されたタクシー端末装置40は、角度θの絶対値が90°よりも大きく180°以内の範囲に含まれる場合には、センター端末装置30の発呼に対して通常着呼を行う。
【0088】
このように、本実施形態では、車両の進行方向が目的地側を向いていないときほど、範囲情報として小さい距離が対応付けられる。そのため、タクシー端末装置40が単に目的地からの距離によって自動で着呼するか否かを判断する構成と比べて、タクシー端末装置40は、より目的地に辿り着きやすい場合に自動で着呼する。それゆえに、目的地に対する配車の効率がより高められる。
【0089】
[タクシー端末装置の自動着呼処理]
図17を参照してタクシー端末装置40の自動着呼処理を説明する。
図17に示されるように、第2実施形態と同様、タクシー端末装置40がINVITEメッセージ130を受信し(ステップS71)、コマンド実行部45が、フック制御コマンド131aおよび乗車位置情報131bがヘッダ部131に記述されているか否かを判断する(ステップS72、ステップS73)。コマンド実行部45が、フック制御コマンド131aおよび乗車位置情報131bがヘッダ部131に記述されていると判断すると(ステップS72:YES、ステップS73:YES)、位置情報取得部46が、自車両の現在位置を取得する(ステップS74)。
【0090】
そして、自動着呼判断部47が、乗車位置情報131b、および、位置情報取得部46の取得した自車両の現在位置を用いて、自車両の現在位置と乗車位置とを結ぶ直線Bと、自車両の進行方向とのなす角度θを算出する。自動着呼判断部47は、算出した角度θと進行方向情報131cを参照して、センター端末装置30によって指定された距離を選択する(ステップS75)。次いで、自動着呼判断部47は、乗車位置と自車両の現在位置との直線距離を算出し、直線距離が、ステップS75で選択した距離以内であるか否かを判断する(ステップS76)。
【0091】
自動着呼判断部47が、算出した直線距離が進行方向情報131cによって指定された距離以内であると判断した場合には(ステップS76:YES)、コマンド実行部45がタクシー端末装置40に自動着呼を行わせる(ステップS77)。一方、自動着呼判断部47が、算出した直線距離が進行方向情報131cによって指定された距離よりも大きいと判断した場合には(ステップS76:NO)、コマンド実行部45は、第2実施形態と同様、タクシー端末装置40に着信音を鳴らさせ(ステップS78)、通常着呼を行わせる(ステップS79)。
以上説明したように、配車システムの第4実施形態によれば、上記(1)および(2)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0092】
(5)車両の進行方向が目的地側を向いていないときほど、範囲情報として小さい距離が対応付けられる。そのため、タクシー端末装置40が単に目的地からの距離によって自動で着呼するか否かを判断する構成と比べて、タクシー端末装置40は、より目的地に辿り着きやすい場合に自動で着呼する。それゆえに、目的地に対する配車の効率がより高められる。
なお、上記各実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
【0093】
・第4実施形態では、自車両の進行方向と、自車両の現在位置PPと乗車位置RPとを結ぶ直線Bとのなす角度θを2つの範囲に分けられ、角度θの絶対値が相対的に小さい範囲ほど、範囲情報として相対的に大きい距離が対応付けられている。これに限らず、角度θは、3以上の範囲に分けられる構成であってもよく、こうした構成であっても、角度θの絶対値が相対的に小さい範囲ほど、範囲情報として相対的に大きい距離が対応付けられる以上は、上記(5)に準じた効果を得ることができる。
【0094】
・第3実施形態では、センター端末装置30が、INVITEメッセージ120を送信してから所定時間以内にタクシー端末装置40の応答を確認できない場合に、センター端末装置30が、範囲情報として設定される距離を更新して、INVITEメッセージを再度送信する構成とした。これに限らず、センター端末装置30は、範囲情報に設定される距離を更新することなく、INVITEメッセージを再度送信する構成であってもよい。こうした構成であっても、センター端末装置30が送信したINVITEメッセージに対して応答するタクシー端末装置40が存在する確率を高めることはできる。
【0095】
・第2実施形態では、タクシー端末装置40による自動着呼が行われる範囲を決定するための距離が、タクシー端末装置40に記憶されている。これに限らず、自動着呼が行われる範囲を決定するための距離は、第3実施形態のように、センター端末装置30によって指定される構成でもよい。すなわち、センター端末装置30から送信されるINVITEメッセージが、範囲情報を含む構成でもよい。こうした構成であれば、センター端末装置30が各タクシーの現在地位に関する情報を有していなくとも、センター端末装置30が指定した距離内のタクシー端末装置40に自動着呼させることが可能である。
【0096】
・配車システムは、第3実施形態の構成と、第4実施形態の構成とを組み合わせた構成であってもよい。すなわち、センター端末装置30から送信されるINVITEメッセージには、フック制御コマンド、乗車位置情報、進行方向情報が含まれる。センター端末装置30は、INVITEメッセージが送信されてから所定時間内にタクシー端末装置40の応答を確認できないときには、進行方向情報に含まれる範囲情報をより大きい距離に更新してINVITEメッセージを送信する。こうした構成であっても、上記(3)から(5)に準じた効果を得ることができる。
【0097】
・第2実施形態から第4実施形態では、範囲情報として、自車両の現在位置と乗車位置とから算出される直線距離が設定されている。これに限らず、例えば、自車両の現在位置と乗車位置との道のりを算出することのできる装置、例えば、ナビゲーション装置等がタクシーに搭載されている場合には、範囲情報には、自車両の現在位置と乗車位置との道のりが設定されてもよい。そして、タクシー端末装置40は、ナビゲーション装置に接続され、ナビゲーション装置から道のりを入力される構成であればよい。こうした構成によれば、範囲情報として直線距離が設定される構成と比べて、センター端末装置30の発呼を自動着呼するタクシー端末装置40が搭載された複数のタクシー間で、現在位置と乗車位置との間の距離にばらつきが生じることを抑えられる。
【0098】
・第2実施形態から第4実施形態では、範囲情報として、自車両の現在位置と乗車位置とから算出される直線距離が設定されている。これに限らず、自車両が、乗車位置に辿り着くまでにかかる時間を算出することのできる装置、例えば、ナビゲーション装置等が搭載されたタクシーである場合には、範囲情報には、乗車位置にたどり着くまでにかかる時間が設定されてもよい。なお、この場合には、ナビゲーション装置等が、渋滞情報や交通規制等の道路情報をリアルタイムに受信できる機能、例えば、VICS(VICSは財団法人道路交通情報通信システムセンターの登録商標)に接続され、VICSの情報をリアルタイムに受信できる機能を有することが好ましい。あるいは、他の方法によって渋滞情報や交通規制等の道路情報をリアルタイムに受信できる機能を有することが好ましい。こうした構成においては、乗車位置にたどり着くまでにかかる時間が、道路情報、例えば、渋滞情報等を加味して算出される構成であれば、配車システムは、乗車位置への配車により適したタクシーを選択することが可能になる。
【0099】
・各実施形態は、タクシーに顧客が乗車している、すなわち、実車であること、あるいは、タクシーに顧客が乗車していない、すなわち、空車であることを示す実車情報をタクシー端末装置40が参照し、実車であるときに、自動着呼を禁止する構成であってもよい。すなわち、コマンド実行部45がフック制御コマンドを実行する条件に、タクシーが空車であることが追加された構成であってもよい。こうした構成では、コマンド実行部45は、センター端末装置30から送信されたINVITEメッセージにフック制御コマンドが記述されていても、フック制御コマンドを無視する構成であればよい。こうした構成によれば、タクシーの乗務員は、配車センターの従業員との通話を顧客に聞かせずに済む。
【0100】
・各実施形態は、タクシーが実車である場合に、タクシー端末装置40が、現在の目的地である降車位置までの距離情報を参照する構成であってもよい。この場合には、タクシー端末装置40は、降車位置と現在地との距離が所定の距離以上であるときに、自動着呼を禁止し、降車位置と現在値との距離が所定の距離未満になるときに、自動着呼の禁止を解除する構成とすればよい。こうした構成によれば、タクシーの乗務員が、顧客が降車する直前に、次の顧客の乗車位置を把握することも可能になるため、タクシーが実車である間は自動着呼を禁止する構成と比べて、タクシーの配車効率を高めることが可能になる。
【0101】
・第2実施形態から第4実施形態では、タクシー端末装置40は、タクシー端末装置40の搭載されたタクシーに対して営業上等の制約から設定される走行範囲情報、すなわち、顧客を乗車させることが可能な範囲を参照する構成でもよい。こうした構成では、タクシー端末装置40が、INVITEメッセージに記述された乗車位置が走行範囲に含まれないと判断したときに、自動着呼ではなく通常着呼を行うことが好ましい。こうした構成によれば、タクシーが、顧客を乗車させることができない位置に配車されない。
【0102】
・第2実施形態から第4実施形態では、INVITEメッセージのヘッダ部には、乗車位置情報に加えて、降車位置情報が記述された構成でもよい。こうした構成では、タクシー端末装置40は、乗車位置情報と降車位置情報との差である乗車距離を算出し、乗車距離が所定の距離以上であるときに、範囲情報や進行方向情報に関わらず、センター端末装置30からの発呼を自動着呼する構成でもよい。この構成によれば、タクシー端末装置40には、所定の距離以上にわたって乗車する顧客の情報が送信されるため、タクシーでは、顧客あたりの運賃が高められやすくなる。
【0103】
・タクシー端末装置40の取得する自車両の現在位置は、GPS受信装置から送信される情報に限らず、例えば、タクシー端末装置40と通信中の基地局からその基地局の位置に関してタクシー端末装置40に対して送信される情報から取得されてもよい。
【0104】
・配車システムは、メディアサーバ20を備えていなくともよく、センター端末装置30と複数のタクシー端末装置40とが、メディアサーバ20を経由せずに接続される構成でもよい。こうした構成であっても、センター端末装置30の生成するINVITEメッセージにフック制御コマンドが含まれる構成であれば、上記(1)に準じた効果を得ることができる。
【0105】
・各実施形態にてセッションの開始と終了に用いられるプロトコルは、SIPプロトコルに限らず、例えば、H.323、MGCP、および、MEGACO等のプロトコルを用いることも可能である。これらのプロトコルを用いた場合には、SIPプロトコルにおけるINVITEメッセージに相当するメッセージ、すなわち、接続先に対する接続を要求する初期リクエストにフック制御コマンドが記述されればよい。
【0106】
・各実施形態にて音声通話に用いられるプロトコルは、RTP/RTCPプロトコルに限らず、音声の転送に用いられる他のプロトコルであってもよい。
【0107】
・このように、各実施家形態にて説明したプロトコルであるSIPおよびRTP/RTCPは、他のプロトコルであってもよく、要は、デジタル化した音声の無線パケット通信を可能とするものであればよい。つまり、各実施形態におけるSIPプロトコル等を実現するためのアプリケーションであるSIPサーバ10、メディアサーバ20、センター端末装置30、および、タクシー端末装置40も、上述した構成に限らず、デジタル化した音声の無線パケット通信を可能とするものであればよい。なお、配車システムを他のプロトコルによる通信を実現するためのアプリケーションとして具体化した場合には、配車システムを構成する各要素の名称、各要素の機能、制御メッセージの名称、制御メッセージのパケット構造等は、各実施形態の記載と異なってもよい。
【0108】
・本開示の技術の配車システムは、各実施形態にて説明したタクシーの配車システムとしてだけではなく、例えば、故障車を引き取るレッカー車の配車や、荷物の集荷を行う宅配便の車両の配車等の配車システムとして適用することも可能である。要は、本開示の技術の車両システムは、車両を配車するセンターと、目的地に対して配車される車両とを備えるシステムであれば適用することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
10…SIPサーバ、11…呼制御部、12…プロトコル制御部、13…メディアサーバ制御部、20…メディアサーバ、21…制御部、22…音声パケット生成部、23…音声パケット送受信部、24…会議通話機能部、30…センター端末装置、31…制御メッセージ生成部、32…制御メッセージ送受信部、33…音声パケット生成部、34…音声パケット送信部、40…タクシー端末装置、41…制御メッセージ生成部、42…制御メッセージ送受信部、43…音声パケット生成部、44…音声パケット送受信部、45…コマンド実行部、46…位置情報取得部、47…自動着呼判断部、50…IPネットワーク、100,110,120,130…INVITEメッセージ、101,111,121,131…ヘッダ部、101a,111a,121a,131a…フック制御コマンド、102,112,122,132…データ部、111b,121b,131b…乗車位置情報、121c…範囲情報、131c…進行方向情報。
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