(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、放射性物質等の汚染物質を含む汚染土を処理する必要が生じている。この場合、汚染土を処理設備の所定の位置まで輸送しなければならない。上記のような吸い上げ装置を用いて水とともに汚染土を処理設備まで輸送することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記の従来の吸い上げ装置を汚染土の輸送に用いる場合、池の底に沈砂ピットまたは集砂部等の凹部を形成し、その凹部内に汚染土を集める必要がある。汚染土は、池の中だけでなく、陸地にも存在する。このような汚染土を池の底の凹部内に集める作業には、大変な労力およびコストが必要となる。また、従来の吸い上げ装置では、吸い上げられる水に含まれる土砂類の割合(含泥率)が低いため、高い輸送効率を得ることが難しい。所定の輸送効率を得るためには、混気ジェットポンプに圧力水を供給するために大容量の加圧ポンプを用いる必要がある。そのため、吸い上げ装置のコストが増大する。
【0008】
さらに、処理設備では、水中に溶解した汚染物質を凝集させて沈殿物を除去することにより清浄な水を回収する。しかしながら、汚染土から汚染物質を十分に剥離させて水中に溶解させるための有効な装置または方法については実現されていない。そのため、汚染土に付着する汚染物質の量を基準値以下に低減して土を再利用することは困難である。
【0009】
本発明の目的は、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能な汚染土輸送洗浄装置および汚染土輸送洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る汚染土輸送洗浄装置は、汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄するための汚染土輸送洗浄装置であって、下端部に排出口を有し、汚染土を収容するためのホッパと、ホッパ内に水を供給する給水系と、圧力水を供給する圧力水配管と、ホッパの排出口に連通する吸入口、圧力水配管により供給される圧力水が流入する流入口、空気を導入するための空気導入部、および汚染土と圧力水との混合流体を吐出する吐出口を有する混気ジェットポンプと、混気ジェットポンプの吐出口から混合流体を目的地点へ導くための混合流体配管とを備え、混気ジェットポンプは、ホッパの下方に設けられ、流入口から流入する圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流を形成し、ホッパの排出口から排出される汚染土を高圧噴射流により吸入口を通して吸入するとともに高圧噴射流と汚染土との混合流体を吐出口から混合流体配管へ吐出するように構成され
、給水系は、ホッパ内の上部においてホッパの内面に沿うように配置される散水配管を含み、散水配管は、ホッパ内の周方向において分散的に設けられる複数の噴出口を有し、複数の噴出口は、ホッパの内面に向かって下方に水を噴出するように形成されるものである。
【0011】
この汚染土輸送洗浄装置においては、ホッパ内に汚染土が投入される。また、給水系によりホッパ内に水が供給されるとともに、圧力水が圧力水配管を通して混気ジェットポンプの流入口に供給される。ホッパ内に供給された水は汚染土に浸透してホッパの内面を伝って排出口に向かって流れる。それにより、ホッパ内の汚染土とホッパの内面との間に水の流れが形成される。ホッパ内の汚染土は、重力によりホッパの内面を伝って排出口に向かって移動する。このとき、ホッパの内面上を流れる水によりホッパの内面の潤滑性が確保されるため、汚染土がホッパの内面上を円滑に移動する。したがって、汚染土は、排出口の上部で架橋状態(ブリッジ)を形成することなく、排出口内に円滑に吸い込まれる。
特に、散水配管の複数の噴出口からホッパの内面に向かって下方に水が噴出されるので、ホッパの内面に均一に水の流れを形成することが可能となる。それにより、簡単な構成によりホッパの内面の全体の潤滑性を確保することができる。
【0012】
一方、混気ジェットポンプにおいては、流入口に供給される圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流が形成される。高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口付近の領域が負圧状態となり、ホッパの排出口から排出される汚染土が吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入される。
【0013】
この場合、汚染土は、自重および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により高い流速で高圧噴射流に衝突するとともに高圧噴射流と混合されることにより、汚染土と高圧噴射流との混合流体が形成され、混合流体配管内に吐出される。それにより、高圧噴射流による汚染土の攪拌作用が生じる。その結果、汚染土に付着した汚染物質が攪拌作用により汚染土から剥離され、水中に溶解する。汚染土を含む混合流体は、混合流体配管を通して目的地点に輸送されるとともに洗浄される。
【0014】
このように、ホッパの内面の潤滑性が確保された状態でホッパ内の汚染土が重力および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により混気ジェットポンプ内に高い流速で吸入される。そのため、混気ジェットポンプ内に汚染土を吸入するために混気ジェットポンプに高い圧力の圧力水を多量に供給する必要がない。したがって、圧力水を混気ジェットポンプに供給するために大容量の加圧ポンプが不要となる。
【0015】
また、給水系によりホッパ内に供給される水はホッパの内面の潤滑性を確保するために用いられるので、ホッパ内の汚染土の全体に水が浸透する程度の水量は必要ではない。そのため、混合流体中の水の体積に対する汚染土の体積の割合を高くすることができる。
【0016】
さらに、汚染土と高圧噴射流との混合流体において生じる攪拌作用により、汚染土に付着していた汚染土の多くが汚染土から剥離された状態で混合流体が目的地点に輸送される。
【0017】
これらの結果、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能となる。
【0022】
(
2)吸入口は混気ジェットポンプの上部に設けられ、混気ジェットポンプは、吸入口がホッパの排出口の直下に位置するように設けられてもよい。
【0023】
この場合、汚染土の自重を最大限に利用してホッパの排出口から排出される汚染土を効率的に混気ジェットポンプの吸入口に導くことができる。
【0024】
(
3)汚染土輸送洗浄装置は、圧力水配管および給水系に圧力水を供給する加圧装置をさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、共通の加圧装置により圧力水配管および給水系に圧力水を供給することができる。それにより、汚染土輸送洗浄装置のコストが低減される。また、ホッパ内への水の供給と混気ジェットポンプへの圧力水の供給とが同時に開始されかつ同時に終了されるので、汚染土の輸送洗浄処理の開始および終了を容易に制御することができる。
【0026】
(
4)本発明に係る汚染土輸送洗浄方法は、汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄するための汚染土輸送洗浄方法であって、下端部に排出口を有するホッパに汚染土を収容するステップと、給水系によりホッパ内に水を供給するステップと、ホッパの下方に設けられた混気ジェットポンプの流入口に圧力水を供給することにより、混気ジェットポンプ内において流入口から流入する圧力水と混気ジェットポンプの空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流を形成し、ホッパの排出口から排出される汚染土を高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入するとともに高圧噴射流と汚染土との混合流体を混気ジェットポンプの吐出口から混合流体配管へ吐出するステップと、混合流体配管を通して混合流体を目的地点まで導くステップとを含
み、ホッパ内の上部においてホッパの内面に沿うように散水配管が配置され、散水配管は、ホッパ内の周方向において分散的に設けられる複数の噴出口を有し、水を供給するステップにおいては、複数の噴出口からホッパの内面に向かって下方に水を噴出するものである。
【0027】
この汚染土輸送洗浄方法によれば、ホッパ内に汚染土が投入される。また、給水系によりホッパ内に水が供給されるとともに、圧力水が圧力水配管を通して混気ジェットポンプの流入口に供給される。ホッパ内に供給された水は汚染土に浸透してホッパの内面を伝って排出口に向かって流れる。それにより、ホッパ内の汚染土とホッパの内面との間に水の流れが形成される。ホッパ内の汚染土は、重力によりホッパの内面を伝って排出口に向かって移動する。このとき、ホッパの内面上を流れる水によりホッパの内面の潤滑性が確保されるため、汚染土がホッパの内面上を円滑に移動する。したがって、汚染土は、排出口の上部で架橋状態(ブリッジ)を形成することなく、排出口内に円滑に吸い込まれる。
特に、散水配管の複数の噴出口からホッパの内面に向かって下方に水が噴出されるので、ホッパの内面に均一に水の流れを形成することが可能となる。それにより、簡単な構成によりホッパの内面の全体の潤滑性を確保することができる。
【0028】
一方、混気ジェットポンプにおいては、流入口に供給される圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流が形成される。高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口付近の領域が負圧状態となり、ホッパの排出口から排出される汚染土が吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入される。
【0029】
この場合、汚染土は、自重および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により高い流速で高圧噴射流に衝突するとともに高圧噴射流と混合されることにより、汚染土と高圧噴射流との混合流体が形成され、混合流体配管内に吐出される。それにより、高圧噴射流による汚染土の攪拌作用が生じる。その結果、汚染土に付着した汚染物質が攪拌作用により汚染土から剥離され、水中に溶解する。汚染土を含む混合流体は、混合流体配管を通して目的地点に輸送されるとともに洗浄される。
【0030】
このように、ホッパの内面の潤滑性が確保された状態でホッパ内の汚染土が重力および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により混気ジェットポンプ内に高い流速で吸入される。そのため、混気ジェットポンプ内に汚染土を吸入するために混気ジェットポンプに高い圧力の圧力水を多量に供給する必要がない。したがって、圧力水を混気ジェットポンプに供給するために大容量の加圧ポンプが不要となる。
【0031】
また、給水系によりホッパ内に供給される水はホッパの内面の潤滑性を確保するために用いられるので、ホッパ内の汚染土の全体に水が浸透する程度の水量は必要ではない。そのため、混合流体中の水の体積に対する汚染土の体積の割合を高くすることができる。
【0032】
さらに、汚染土と高圧噴射流との混合流体において生じる攪拌作用により、汚染土に付着していた汚染土の多くが汚染土から剥離された状態で混合流体が目的地点に輸送される。
【0033】
これらの結果、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置および汚染土輸送洗浄方法について詳細に説明する。
【0037】
(1)汚染土輸送洗浄装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置の正面図である。
図2は
図1の汚染土輸送洗浄装置の側面図である。
図3は
図1の汚染土輸送洗浄装置の平面図である。
【0038】
図1〜
図3に示される汚染土輸送洗浄装置1は、汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄するために用いられる。汚染土とは、例えば放射性セシウム等の放射性物質を含む土砂類である。土砂類とは、土、シルトまたは砂のいずれかまたは全てを含む。
【0039】
図1〜
図3において、汚染土輸送洗浄装置1は、汚染土を収容するためのホッパ10を備える。
図1では、ホッパ10内の構造を示すために、ホッパ10の一部を切り欠いて示している。本実施の形態では、ホッパ10は、略逆円錐形状を有する。ホッパ10は、環状周面部11、逆円錐部12および排出管13により構成される。環状周面部11の下端と逆円錐部12の上端とが一体的に連結され、逆円錐部12の下端に排出管13が一体的に連結される。逆円錐部12の内周面は、円形の水平断面を有し、上部から下部へ漸次減少する直径を有する。逆円錐部12の垂直断面における内周面の角度θは、例えば30°〜120°であり、本例では60°である。
図3に示すように、逆円錐部12の中心部に排出管13に連通する排出口14が形成される。
【0040】
図1および
図2に示すように、ホッパ10は、中心軸が鉛直方向を向くように台座20上に複数の支持部材15により支持される。台座20上には、ホッパ10の上端近傍に達するように梯子16が設けられる。ホッパ10の上端の側方には、デッキ(図示せず)が設けられる。作業者は、梯子16を用いてデッキに上ることができる。
【0041】
また、ホッパ10内の上部には、環状周面部11に沿うように給水系として環状の散水配管40が配置される。散水配管40は、複数の取付部材41によりホッパ10の環状周面部11に取り付けられる。散水配管40には、
図1および
図3に示すように、複数の噴出口42が下を向くようにホッパ10の周方向に分散的に形成される。
【0042】
台座20上のホッパ10の下方には、混気ジェットポンプ30が配置される。混気ジェットポンプ30は、本体管31、流入管32、空気調整弁33、吸入管34および吐出管35を有する。吸入管34は本体管31の上部に一体的に設けられる。ホッパ10の排出管13は、混気ジェットポンプ30の吸入管34に接続される。混気ジェットポンプ30の詳細な構成については後述する。
【0043】
台座20上には、加圧装置50が配置される。
図2および
図3に示すように、加圧装置50は、加圧ポンプ51およびモータ52により構成される。モータ52は、加圧ポンプ51を駆動する。加圧ポンプ51の吸引口には、水供給源から水供給配管53を通して水が供給される。加圧ポンプ51の吐出口には、圧力水配管60が接続される。圧力水配管60は、加圧ポンプ51の上部から上方に延び、水平方向に屈曲し、さらに下方に屈曲する。圧力水配管60には、圧力計63および流量調整弁64が取り付けられる。圧力水配管60は、2つの圧力水配管61,62に分岐する。圧力水配管61の内径は圧力水配管60の内径よりも小さく、圧力水配管62の内径は圧力水配管60の内径とほぼ等しい。
【0044】
圧力水配管61は、圧力水配管60から水平方向に延び、上方に屈曲し、さらに水平方向に屈曲してホッパ10の環状周面部11を貫通して散水配管40に接続される。
【0045】
圧力水配管62は、圧力水配管60から下方に延び、水平方向に屈曲し、混気ジェットポンプ30の流入管32に接続される。圧力水配管62には、流量計65が取り付けられる。
図1に示すように、混気ジェットポンプ30の吐出管35には混合流体配管80が接続される。混合流体配管80の内径は、吐出管35の内径とほぼ等しいかまたは吐出管35の内径よりも大きい。混合流体配管80は、目的地点まで延びる。目的地点は、例えば汚染土の処理設備における汚染土の投入場所である。
【0046】
台座20上には、制御盤70が設けられる。制御盤70は、主として加圧ポンプ51を駆動するモータ52を制御するために用いられる。
【0047】
図4は
図1〜
図3の汚染土輸送洗浄装置に用いられる混気ジェットポンプ30の一例を示す断面図である。
【0048】
図4に示すように、混気ジェットポンプ30は、本体管31、流入管32、空気調整弁33、吸入管34、吐出管35および噴射管36により構成される。本体管31は水平に配置される。本体管31の上部に吸入管34が垂直方向に延びるように一体的に形成される。吸入管34内に吸入口37が形成される。吸入管34の上端のフランジF1がホッパ10の排出管13の下端のフランジF2に接合される。それにより、吸入口37が
図3の排出口14の直下に位置する。
【0049】
本体管31の内径は、流入管32、噴射管36および吐出管35の外径よりも大きい。本体管31の一端部(上流側の端部)から本体管31の内部に流入管32の下流側の端部が挿入される。流入管32の上流端のフランジF3が圧力水配管62の下流端のフランジF4に接合される。流入管32の上流端に流入口38が形成される。絞り部321の内径は、下流端に向かって漸次減少し、下流端に噴出孔322が形成される。
【0050】
本体管31内において、流入管32の下流端と吸入口37との間の領域に噴射管36が配置される。噴射管36は、流入管32の噴出孔322の内径よりも小さい一定の内径を有する。
【0051】
吐出管35は、上流部351、中間部352および下流部353を含む。本体管31内において、吸入口37と本体管31の他方の端部(下流側の端部)との間の領域に吐出管35の上流部351が挿入される。上流部351は、本体管31の下流端のフランジF5に取り付けられる。吐出管35の中間部352の上流端および下流端には、それぞれフランジF6,F7が設けられる。本体管31の下流端のフランジF5に中間部352の上流側のフランジF6が接合される。中間部352の下流端のフランジF7に混合流体配管80の上流端のフランジF8が接合される。混合流体配管80内に吐出管35の下流部353が挿入される。下流部353は、混合流体配管80のフランジF8に取り付けられる。吐出管35の内径は、噴射管36の内径よりも大きい。吐出管35の下流端に吐出口39が形成される。
【0052】
流入管32の中心軸、噴出孔322の中心、噴射管36の中心軸および吐出管35の中心軸は同一直線上に並ぶ。
【0053】
本体管31の上流側の端部でかつ流入管32の下流端の近傍に空気導入孔331が形成される。空気導入孔331に空気調整弁33が挿入される。この場合、空気調整弁33が空気導入部として機能する。空気調整弁33は、外部の空気(大気)を流入管32の下流端と噴射管36の上流端との間の領域に導入するように設けられる。この空気調整弁33は、本体管31内に導入される空気の量を調整するために用いられる。
【0054】
(2)汚染土輸送洗浄装置の動作
次に、本実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置1による汚染土の輸送洗浄動作について
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0055】
汚染土は、予めフレキシブルコンテナ(フレコン)等の袋状包材に収納される。本例では、汚染土は、汚染物質として放射性セシウムを含む。作業者は、レッカ装置により汚染土を収納した袋状包材をホッパ10の上部まで運ぶ。このとき、防護服を着用した他の作業者がデッキ上で袋状包材の口紐を解く。それにより、袋状包材内の汚染土がホッパ10内に投入される。
【0056】
また、作業者は、制御盤70を操作することにより加圧装置50のモータ52を作動させる。それにより、加圧ポンプ51が水供給配管53を通して供給される水を吸引して加圧する。加圧ポンプ51から吐出される圧力水は、圧力水配管60および圧力水配管61を通してホッパ10内の散水配管40に潤滑水として供給される。それにより、散水配管40の噴出口42から水が下方に噴出される。水は、汚染土に浸透してホッパ10の内周面を伝って排出口14に向かって流れる。それにより、ホッパ10内の汚染土とホッパ10の内周面との間に水の流れが形成される。
【0057】
また、加圧ポンプ51から供給される圧力水は、圧力水配管60および圧力水配管62を通して混気ジェットポンプ30の流入管32に駆動水として流入する。混気ジェットポンプ30に流入する圧力水の流量は、流量調整弁64により調整される。圧力水配管62中の圧力水の流量は、例えば10m3/h〜60m3/hであるが、これに限定されない。
【0058】
ホッパ10内の汚染土は、重力によりホッパ10の内周面を伝って排出口14に向かって移動する。このとき、ホッパ10の内周面上を流れる水によりホッパ10の内周面の潤滑性が確保される。それにより、汚染土がホッパ10の内周面上を円滑に滑動する。したがって、汚染土は、排出口14の上部で架橋状態(ブリッジ)を形成することなく、排出口14内に円滑に吸い込まれ、排出管13を通して下方の混気ジェットポンプ30の吸入管34内に導かれる。
【0059】
なお、散水配管40の噴出口42から噴出される水はホッパ10の内周面の潤滑性を確保するために用いられるので、ホッパ10内の汚染土の全体に水が浸透する程度の水量は必要ではない。
【0060】
図4に示すように、混気ジェットポンプ30の流入管32内に流入した圧力水は、流入管32内の絞り部321を通して噴出孔322から噴射管36内に噴出される。圧力水の流速は絞り部321において急速に増加する。そのため、噴出孔322から噴出される圧力水のエジェクタ作用により空気調整弁33を通して大気が本体管31内に吸入され、混気状態の圧力水が形成される。混気状態の圧力水は、噴射管36内を通過し、吐出管35内に向かう高圧噴射流を形成する。高圧噴射流のエジェクタ作用により、吸入口37付近の領域が負圧状態となり、ホッパ10の排出管13内に導かれる汚染土が吸入管34を通して本体管31内に吸入される。このとき、汚染土は、自重および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により高い流速で高圧噴射流に衝突する。その結果、汚染土が高圧噴射流と混合されることにより混合流体が形成されるとともに、高圧噴射流による汚染土の攪拌作用が生じる。吐出管35を通過した混合流体は混合流体配管80内に吐出される。
【0061】
本体管31内および吐出管35内での攪拌作用により汚染土のシルトに付着した放射性セシウムが剥離される。剥離された放射性セシウムは水中に溶解する。すなわち、汚染土に付着していた汚染物質の多くがシルトから分離して水中に溶解した状態で混合流体が混合流体配管80を通して処理設備に輸送されるとともに洗浄される。
【0062】
(3)実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置1によれば、ホッパ10の内周面の潤滑性が確保された状態で重力および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方によりホッパ10内の汚染土が混気ジェットポンプ30の本体管31内に高い流速で吸入される。また、吸入された汚染土が高圧噴射流と混合されることにより混合流体として高い流速で吐出管35から混合流体配管80内に吐出される。
【0063】
この場合、ホッパ10内に多量の水を供給する必要はない。そのため、混合流体配管80内の混合流体は、高い含泥率(水に対する土砂類の割合)を有する。したがって、高い輸送効率で汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄することが可能となる。
【0064】
また、加圧装置50の加圧ポンプ51として大容量のポンプを用いる必要がない。したがって、汚染土輸送洗浄装置1の低コスト化が可能となる。
【0065】
さらに、混気ジェットポンプ30内に汚染土が高い流速で吸入されるので、汚染土と高圧噴射流との混合流体において攪拌作用が生じる。それにより、汚染土に付着していた放射性セシウムの多くがシルトから剥離され、混合流体中の水に溶解する。処理設備においては、水中に溶解した放射性セシウムが凝集されて沈殿物が除去される。それにより、清浄な水が回収される。
【0066】
この場合、汚染土輸送洗浄装置1は、処理設備における除染処理の前処理装置として機能する。それにより、処理設備に輸送洗浄された汚染土に含まれる放射性セシウムの量が基準値以下に低減される。したがって、汚染土を清浄な土砂類として再利用することができる。
【0067】
実際に、汚染土輸送洗浄装置1を用いて放射性セシウムが付着した汚染土を混合流体として処理設備まで輸送洗浄し、処理設備において混合流体中の水から放射性セシウムを除去するとともに、土砂類を回収した。このとき、回収された土砂類中の放射性セシウムの量は、汚染土輸送洗浄装置1への投入前の汚染土中の放射性セシウムの量の約10分の1に減少した。処理設備においては、水中の放射性セシウムが凝集されて除去されるため、汚染土輸送洗浄装置1により汚染土が輸送洗浄される過程で汚染土から放射性セシウムが剥離されて水中に溶解したことがわかる。
【0068】
また、本実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置1によれば、共通の加圧装置50により散水配管40および混気ジェットポンプ30に圧力水をそれぞれ潤滑水および駆動水として供給することができる。それにより、汚染土輸送洗浄装置1のコストが低減される。また、ホッパ10内への圧力水の供給と混気ジェットポンプ30への圧力水の供給とが同時に開始されかつ同時に終了される。したがって、汚染土の輸送洗浄処理の開始および終了を容易に制御することができる。
【0069】
(4)他の実施の形態
(a)上記実施の形態では、ホッパ10の内周面が逆円錐形状を有するが、これに限定されない。
【0070】
図5、
図6および
図7はホッパ10の他の例を示す正面図である。
図5の例では、ホッパ10の垂直断面において内周面が凹状に湾曲している。
図6の例では、ホッパ10の垂直断面において内周面が凸状に湾曲している。
図7の例では、ホッパ10の垂直断面において内周面の傾斜角度が複数段階に異なる。
【0071】
図8および
図9はホッパ10のさらに他の例を示す水平断面図である。
図8の例では、ホッパ10の水平断面において内周面が楕円形状を有する。
図9の例では、ホッパ10の水平断面において内面が多角形状を有する。
【0072】
(b)上記実施の形態では、給水系としてホッパ10内の上部に環状の散水配管40が設けられるが、ホッパ10の内面に水を供給することができる他の構成を用いてもよい。
【0073】
図10は給水系の他の例を示す水平断面図である。
図10の例では、ホッパ10の外周面の上端部近傍に周方向に沿うように環状の給水経路400が設けられる。ホッパ10には、周方向において分散的に複数の噴出口401が設けられる。複数の噴出口401は、給水経路400に連通する。それにより、給水経路400に供給される圧力水が複数の噴出口401からホッパ10内に供給される。その結果、ホッパ10の内周面の潤滑性が確保される。
【0074】
(c)上記実施の形態に係る汚染土輸送洗浄装置1によれば、共通の加圧装置50により散水配管40および混気ジェットポンプ30に圧力水が供給されるが、これに限定されない。散水配管40および混気ジェットポンプ30にそれぞれ別個の加圧装置により圧力水が供給されてもよい。
(5) 参考形態
(1)参考形態に係る汚染土輸送洗浄装置は、汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄するための汚染土輸送洗浄装置であって、下端部に排出口を有し、汚染土を収容するためのホッパと、ホッパ内に水を供給する給水系と、圧力水を供給する圧力水配管と、ホッパの排出口に連通する吸入口、圧力水配管により供給される圧力水が流入する流入口、空気を導入するための空気導入部、および汚染土と圧力水との混合流体を吐出する吐出口を有する混気ジェットポンプと、混気ジェットポンプの吐出口から混合流体を目的地点へ導くための混合流体配管とを備え、混気ジェットポンプは、ホッパの下方に設けられ、流入口から流入する圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流を形成し、ホッパの排出口から排出される汚染土を高圧噴射流により吸入口を通して吸入するとともに高圧噴射流と汚染土との混合流体を吐出口から混合流体配管へ吐出するように構成されるものである。
この汚染土輸送洗浄装置においては、ホッパ内に汚染土が投入される。また、給水系によりホッパ内に水が供給されるとともに、圧力水が圧力水配管を通して混気ジェットポンプの流入口に供給される。ホッパ内に供給された水は汚染土に浸透してホッパの内面を伝って排出口に向かって流れる。それにより、ホッパ内の汚染土とホッパの内面との間に水の流れが形成される。ホッパ内の汚染土は、重力によりホッパの内面を伝って排出口に向かって移動する。このとき、ホッパの内面上を流れる水によりホッパの内面の潤滑性が確保されるため、汚染土がホッパの内面上を円滑に移動する。したがって、汚染土は、排出口の上部で架橋状態(ブリッジ)を形成することなく、排出口内に円滑に吸い込まれる。
一方、混気ジェットポンプにおいては、流入口に供給される圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流が形成される。高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口付近の領域が負圧状態となり、ホッパの排出口から排出される汚染土が吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入される。
この場合、汚染土は、自重および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により高い流速で高圧噴射流に衝突するとともに高圧噴射流と混合されることにより、汚染土と高圧噴射流との混合流体が形成され、混合流体配管内に吐出される。それにより、高圧噴射流による汚染土の攪拌作用が生じる。その結果、汚染土に付着した汚染物質が攪拌作用により汚染土から剥離され、水中に溶解する。汚染土を含む混合流体は、混合流体配管を通して目的地点に輸送されるとともに洗浄される。
このように、ホッパの内面の潤滑性が確保された状態でホッパ内の汚染土が重力および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により混気ジェットポンプ内に高い流速で吸入される。そのため、混気ジェットポンプ内に汚染土を吸入するために混気ジェットポンプに高い圧力の圧力水を多量に供給する必要がない。したがって、圧力水を混気ジェットポンプに供給するために大容量の加圧ポンプが不要となる。
また、給水系によりホッパ内に供給される水はホッパの内面の潤滑性を確保するために用いられるので、ホッパ内の汚染土の全体に水が浸透する程度の水量は必要ではない。そのため、混合流体中の水の体積に対する汚染土の体積の割合を高くすることができる。
さらに、汚染土と高圧噴射流との混合流体において生じる攪拌作用により、汚染土に付着していた汚染土の多くが汚染土から剥離された状態で混合流体が目的地点に輸送される。
これらの結果、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能となる。
(2)給水系は、ホッパ内の周方向において分散的に設けられる複数の噴出口を有してもよい。
この場合、ホッパの内面に均一に水の流れを形成することが可能となる。それにより、ホッパの内面の全体の潤滑性を確保することができる。
(3)給水系は、ホッパ内の上部においてホッパの内面に沿うように配置される散水配管を含み、散水配管は複数の噴出口を有してもよい。
この場合、簡単な構成によりホッパの内面の全体の潤滑性を確保することができる。
(4)吸入口は混気ジェットポンプの上部に設けられ、混気ジェットポンプは、吸入口がホッパの排出口の直下に位置するように設けられてもよい。
この場合、汚染土の自重を最大限に利用してホッパの排出口から排出される汚染土を効率的に混気ジェットポンプの吸入口に導くことができる。
(5)汚染土輸送洗浄装置は、圧力水配管および給水系に圧力水を供給する加圧装置をさらに備えてもよい。
この場合、共通の加圧装置により圧力水配管および給水系に圧力水を供給することができる。それにより、汚染土輸送洗浄装置のコストが低減される。また、ホッパ内への水の供給と混気ジェットポンプへの圧力水の供給とが同時に開始されかつ同時に終了されるので、汚染土の輸送洗浄処理の開始および終了を容易に制御することができる。
(6)参考形態に係る汚染土輸送洗浄方法は、汚染土を目的地点まで輸送するとともに洗浄するための汚染土輸送洗浄方法であって、下端部に排出口を有するホッパに汚染土を収容するステップと、給水系によりホッパ内に水を供給するステップと、ホッパの下方に設けられた混気ジェットポンプの流入口に圧力水を供給することにより、混気ジェットポンプ内において流入口から流入する圧力水と混気ジェットポンプの空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流を形成し、ホッパの排出口から排出される汚染土を高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入するとともに高圧噴射流と汚染土との混合流体を混気ジェットポンプの吐出口から混合流体配管へ吐出するステップと、混合流体配管を通して混合流体を目的地点まで導くステップとを含むものである。
この汚染土輸送洗浄方法によれば、ホッパ内に汚染土が投入される。また、給水系によりホッパ内に水が供給されるとともに、圧力水が圧力水配管を通して混気ジェットポンプの流入口に供給される。ホッパ内に供給された水は汚染土に浸透してホッパの内面を伝って排出口に向かって流れる。それにより、ホッパ内の汚染土とホッパの内面との間に水の流れが形成される。ホッパ内の汚染土は、重力によりホッパの内面を伝って排出口に向かって移動する。このとき、ホッパの内面上を流れる水によりホッパの内面の潤滑性が確保されるため、汚染土がホッパの内面上を円滑に移動する。したがって、汚染土は、排出口の上部で架橋状態(ブリッジ)を形成することなく、排出口内に円滑に吸い込まれる。
一方、混気ジェットポンプにおいては、流入口に供給される圧力水と空気導入部から導入される空気とからなる高圧噴射流が形成される。高圧噴射流により混気ジェットポンプの吸入口付近の領域が負圧状態となり、ホッパの排出口から排出される汚染土が吸入口を通して混気ジェットポンプ内に吸入される。
この場合、汚染土は、自重および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により高い流速で高圧噴射流に衝突するとともに高圧噴射流と混合されることにより、汚染土と高圧噴射流との混合流体が形成され、混合流体配管内に吐出される。それにより、高圧噴射流による汚染土の攪拌作用が生じる。その結果、汚染土に付着した汚染物質が攪拌作用により汚染土から剥離され、水中に溶解する。汚染土を含む混合流体は、混合流体配管を通して目的地点に輸送されるとともに洗浄される。
このように、ホッパの内面の潤滑性が確保された状態でホッパ内の汚染土が重力および高圧噴射流のエジェクタ作用の両方により混気ジェットポンプ内に高い流速で吸入される。そのため、混気ジェットポンプ内に汚染土を吸入するために混気ジェットポンプに高い圧力の圧力水を多量に供給する必要がない。したがって、圧力水を混気ジェットポンプに供給するために大容量の加圧ポンプが不要となる。
また、給水系によりホッパ内に供給される水はホッパの内面の潤滑性を確保するために用いられるので、ホッパ内の汚染土の全体に水が浸透する程度の水量は必要ではない。そのため、混合流体中の水の体積に対する汚染土の体積の割合を高くすることができる。
さらに、汚染土と高圧噴射流との混合流体において生じる攪拌作用により、汚染土に付着していた汚染土の多くが汚染土から剥離された状態で混合流体が目的地点に輸送される。
これらの結果、高い輸送効率でかつ低コストで汚染土を輸送および洗浄するとともに汚染土に含まれる汚染物質の量を低減することが可能となる。