特許第6133158号(P6133158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133158担保物件任意売却管理プログラムおよび担保物件任意売却管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133158
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】担保物件任意売却管理プログラムおよび担保物件任意売却管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20170515BHJP
   G06Q 30/08 20120101ALI20170515BHJP
【FI】
   G06Q50/16
   G06Q30/08
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-151371(P2013-151371)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-22610(P2015-22610A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】512287610
【氏名又は名称】一般社団法人日本財産管理協会
(73)【特許権者】
【識別番号】398028916
【氏名又は名称】株式会社リーガル
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】篠原 敬郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純通
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 至正
(72)【発明者】
【氏名】重松 学
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌文
【審査官】 田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−242712(JP,A)
【文献】 特開2002−015126(JP,A)
【文献】 特開2002−373248(JP,A)
【文献】 特開2004−240623(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0078086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行され、コンピュータを担保物件任意売却管理システムとして機能させるプログラムであって、
コンピュータに債権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる債権データ登録機能と、
コンピュータに担保権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保権データ登録機能と、
コンピュータに担保物件の入札想定額データと売却予定額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保物件データ登録機能と、
コンピュータに費用控除額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる費用控除額データ登録機能と、
コンピュータに競売費用データを取得させ、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる競売シミュレーション機能と、
債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる任意売却シミュレーション機能と、
コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーション機能を有する担保物件任意売却管理プログラム。
【請求項2】
コンピュータに費用控除額データの総計と売却予定額データの総計の比を算定させ、その比と所定の閾値を比較させ、閾値を超えた場合にはそれを示す表示をさせる費用控除額評価機能と、
コンピュータに競売に関するスケジュールデータを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる競売スケジュールデータ登録機能と
コンピュータに任意売却に関する進捗状況データを取得させ、進捗状況データと競売スケジュールデータを比較させて、その比較結果を表示させる任意売却スケジュール管理機能とを有する請求項1に記載の担保物件任意売却管理プログラム。
【請求項3】
演算装置と、記憶装置と、入力装置と、表示装置を備えたコンピュータと、記憶装置にインストールされコンピュータを担保物件任意売却管理システムとして機能させる担保物件任意売却管理プログラムを有し、
担保物件任意売却管理プログラムは、コンピュータに債権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる債権データ登録機能と、
コンピュータに担保権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保権データ登録機能と、
コンピュータに担保物件の入札想定額データと売却予定額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保物件データ登録機能と、
コンピュータに費用控除額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる費用控除額データ登録機能と、
コンピュータに競売費用データを取得させ、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる競売シミュレーション機能と、
債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる任意売却シミュレーション機能と、
コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーション機能と、
コンピュータに費用控除額データの総計と売却予定額データの総計の比を算定させ、その比と所定の閾値を比較させ、閾値を超えた場合にはそれを示す表示をさせる費用控除額評価機能と、
コンピュータに競売に関するスケジュールデータを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる競売スケジュールデータ登録機能と
コンピュータに任意売却に関する進捗状況データを取得させ、進捗状況データと競売スケジュールデータを比較させて、その比較結果を表示させる任意売却スケジュール管理機能とを有する担保物件任意売却管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相互に関連する担保物件の処分に関する情報を管理し、競売による債権者への配当予想や任意売却による配分案をシミュレーションするシステムおよびそれに用いるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
債務者が通常の返済による債務の履行ができない場合、担保物件の処分がなされる。この担保物件の処分は競売による場合と、任意売却による場合がある。多くの場合、一人の債務者に対して複数の債権と担保が存在しており、それらを一括して管理する必要がある。このうち担保物件の任意売却は債務者自身から委任を受けた代理人や不動産の仲介業者などが行っているが、表計算ソフトなどを使用しながらも、主に手作業で行われる。
【0003】
また、特許文献1には、競売配当計算をおこなうプログラムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−164227号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
担保物件の競売や任意売却は、その必要性が発生してから、債権者へ配当または配分金の支払いが完了するまでに、一定の時間が必要となる。その間にさまざまな手続や検討事項があり、スケジュールに沿って的確に処理する必要がある。競売の場合、法定の手続に沿って裁判所が主導して行うので、担保物件を管理する側としては選択肢がほとんどなく、その管理も比較的画一的であり、手作業でもさほど負担は大きくない。しかし、競売による入札額は一般的に低く、十分な配当を行いにくい。
【0006】
一方、任意売却による処分であれば、競売入札額よりも高い売却が期待でき、より多くの配分を債権者に行うことが可能となる。しかし、配分の仕方によって複数の債権者の相互の利害が衝突する。しかも、任意売却による配分案には強制力がないので、債権者の理解が得られなければ成立しない。そこで、相互に利害がかかわる債権者らの同意を得るためには、複数の配分案を柔軟に準備することが好ましい。また、競売の手続きが平行して進行している場合が多く、任意売却を成立させるためには、スケジュール管理も重要となる。このように、限られた期限内に多数の配分案を作成することは、従来の手作業的な管理方法では困難である。特許文献1の発明も競売配当計算方法に関するものであり、任意売却の配分案としては不十分である。
【0007】
この発明は、コンピュータを使用して任意売却による担保物件の処分を容易にし、しかも、複数の配分案を簡便に作成できる担保物件任意売却管理プログラムおよび担保物件任意売却管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の担保物件任意売却管理プログラムは、コンピュータによって実行され、コンピュータを担保物件任意売却管理システムとして機能させるプログラムであって、
コンピュータに債権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる債権データ登録機能と、
コンピュータに担保権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保権データ登録機能と、
コンピュータに担保物件の入札想定額データと売却予定額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保物件データ登録機能と、
コンピュータに任意売却に伴う費用のうち控除可能な額(費用控除額データ)を取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる費用控除額データ登録機能と、
コンピュータに競売に要する費用(競売費用データ)を取得させ、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる競売シミュレーション機能と、
債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる任意売却シミュレーション機能と、
コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーション機能を有する。
【0009】
上記の機能に加えて、さらに、コンピュータに費用控除額データの総計と売却予定額データの総計の比を算定させ、その比と所定の閾値を比較させ、閾値を超えた場合にはそれを示す表示をさせる費用控除額評価機能と、
コンピュータに競売に関するスケジュールデータを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる競売スケジュールデータ登録機能と
コンピュータに任意売却に関する進捗状況データを取得させ、進捗状況データと競売スケジュールデータを比較させて、その比較結果を表示させる任意売却スケジュール管理機能とを有することが好ましい。
【0010】
また、この発明の担保物件任意売却管理システムは、演算装置と、記憶装置と、入力装置と、表示装置を備えたコンピュータと、記憶装置にインストールされコンピュータを担保物件任意売却管理システムとして機能させる担保物件任意売却管理プログラムを有し、
担保物件任意売却管理プログラムは、コンピュータに債権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる債権データ登録機能と、
コンピュータに担保権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保権データ登録機能と、
コンピュータに担保物件の入札想定額データと売却予定額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保物件データ登録機能と、
コンピュータに費用控除額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる費用控除額データ登録機能と、
コンピュータに競売費用データを取得させ、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる競売シミュレーション機能と、
債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる任意売却シミュレーション機能と、
コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーション機能と、
コンピュータに費用控除額データの総計と売却予定額データの総計の比を算定させ、その比と所定の閾値を比較させ、閾値を超えた場合にはそれを示す表示をさせる費用控除額評価機能と、
コンピュータに競売に関するスケジュールデータを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる競売スケジュールデータ登録機能と
コンピュータに任意売却に関する進捗状況データを取得させ、進捗状況データと競売スケジュールデータを比較させて、その比較結果を表示させる任意売却スケジュール管理機能とを有する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の担保物件任意売却管理プログラムおよび担保物件任意売却管理システムは、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いて競売時配当額を算定できるほか、債権データと担保権データと売却予定額データと費用控除額データに基いて任意売却時配分額を算定できる。さらに、変更された任意売却時配分額を取得してその任意売却時配分額に基いて変更後の任意売却時配分額を算定し、複数の配分案を簡単に作成することができるとともに、容易に競売時配当額と任意売却時配分額を比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】担保物件任意売却管理システムの構成を示す概念図である。
図2】担保物件任意売却管理プログラムの構成を示す概念図である。
図3】案件管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。
図4】基本情報管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。
図5】債権担保管理プログラムにおける債権管理の画面表示の例を示す概念図である。
図6】債権担保管理プログラムにおける担保物件管理の画面表示の例を示す概念図である。
図7】費用管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。
図8】シミュレーションプログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。
図9】シミュレーションプログラムにおける競売シミュレーションの画面表示の例を示す概念図である。
図10】シミュレーションプログラムにおける任意売却シミュレーションの画面表示の例を示す概念図である。
図11】作業管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、担保物件任意売却管理システムの構成を示す概念図である。
【0014】
担保物件任意売却管理システム1において、コンピュータ2は演算装置3と、記憶装置4と、入力装置5と、表示装置6を備える。ここで、コンピュータ2には、特に限定がなく、一定の演算処理機能を有すればよく、汎用のパーソナルコンピュータやサーバでもよい。また、複数のコンピュータがネットで接続されていてもよい。
【0015】
記憶装置4には、担保物件任意売却管理プログラム10がインストールされており、この担保物件任意売却管理プログラム10がコンピュータ2によって実行されることにより、コンピュータ2は担保物件任意売却管理システムとして機能する。図2は担保物件任意売却管理プログラムの構成を示す概念図である。担保物件任意売却管理プログラム10は、案件管理プログラム11と、基本情報管理プログラム12と、債権担保管理プログラム13と、費用管理プログラム14と、シミュレーションプログラム15と、作業管理プログラム16を有する。
【0016】
案件管理プログラム11は、案件情報を取得・登録し、表示するものである。この担保物件任意売却管理プログラム10では、相互に関連する一連の債権や担保物件などを一つの案件とし、この案件ごとに任意売却の管理を行っていく。案件管理プログラム11が実行されると、コンピュータ2の表示装置6に案件情報の入力を促す画面を表示し、ユーザが入力装置5を使って入力した案件データ21を記憶装置4に保存する。
【0017】
基本情報管理プログラム12は、案件の基本情報を取得・登録するものである。基本情報管理プログラム12が実行されると、コンピュータ2の表示装置6に基本情報の入力を促す画面を表示し、ユーザが入力装置5を使って入力した基本情報データ22を記憶装置4に保存する。
【0018】
債権担保管理プログラム13は、債権に関する情報および担保権に関する情報を取得・登録するものである。債権担保管理プログラム13が実行されると、コンピュータ2の表示装置6に債権情報または担保権情報の入力を促す画面を表示し、ユーザが入力装置5を使って入力した債権データ23や担保権データ24を記憶装置4に保存する。
【0019】
費用管理プログラム14は、担保物件の任意売却に伴う控除費用に関する情報を取得・登録するものである。費用管理プログラム14が実行されると、コンピュータ2の表示装置6に費用控除額データの入力を促す画面を表示し、ユーザが入力装置5を使って入力した費用控除額データ26を記憶装置4に保存する。
【0020】
シミュレーションプログラム15は、競売シミュレーションプログラム15aと任意売却シミュレーションプログラム15bを有する。競売シミュレーションプログラム15aは、コンピュータに競売費用データを取得させ、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる。任意売却シミュレーションプログラム15bは、債権データと担保権データと売却予定額データと費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる。さらに、コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーションプログラム15cを有する。
【0021】
作業管理プログラム16は、競売手続および任意売却手続におけるスケジュールに関する情報を取得・登録するものである。作業管理プログラム16が実行されると、コンピュータ2の表示装置6に競売手続上の予定や作業データ、または任意売却手続上の予定や作業データの入力を促す画面を表示し、ユーザが入力装置5を使って入力した予定や作業データを記憶装置4に保存する。
【0022】
担保物件任意売却管理プログラムおよび任意売却管理システムの具体例についてさらに説明する。図3は、案件管理プログラム11における画面表示の例を示す概念図である。担保物件任意売却管理プログラム10が起動されると、最初に案件管理プログラム11が実行され、図3の表示が画面上に現れる。すでに登録されている案件があれば、それらの案件がここで表示される。この表示画面は、進行中案件と終結案件に切り替えることができ、進行中案件のほかに終結した案件も見ることができる。
【0023】
進行中案件の画面においては、「新規登録」という選択ボタンが表示され、これを選択することにより、新規案件を登録できる。任意売却業務を行う者が、新たな案件の依頼を受けた場合、まず、その案件の登録を行う。
【0024】
既に登録された案件は一覧の形で表示される。この画面において、入力装置を用いて案件を選択すれば、その案件について任意売却業務に関する作業を行うことができる。
【0025】
図4は基本情報管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。案件管理プログラム11において案件が選択されたり、あるいは新たな案件が登録されるとこの画面表示が現れる。ここで、画面の左側には、「基本情報」「債権、担保」「費用」「配分表」「作業管理」という選択メニューが表示され、これを選択することによって、基本情報管理プログラム12、債権担保管理プログラム13、費用管理プログラム14、シミュレーションプログラム15と、作業管理プログラム16を呼び出せるようになっている。この選択メニューは、常に画面上に表示されているので、それぞれのプログラムの切替えが自由に行うことができる。したがって、一つの案件について、それぞれの作業の実施順序は自由であるが、ここでは基本的に選択メニューの上から下へ流れる順で説明する。
【0026】
基本情報管理プログラムでは案件情報、債務者・所有者等情報、仲介業者・購入者情報の登録・管理を行うことができる。図4は案件情報の登録管理の画面を示していて、受任日、担当者、紹介者、進捗、依頼者、メモなどの情報を登録することができる。さらに、競売状況に関する情報として、申立状況、申立人、管轄裁判所、事件番号、開札期日、メモなどの情報を登録することができる。ここで登録される開札期日データは、債権者における任意売却同意期限として任意売却スケジュール管理機能において利用される。
【0027】
図5は債権担保管理プログラムにおける債権管理の画面表示の例を示す概念図である。債権担保管理プログラム13により、コンピュータに債権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる債権データ登録機能が実施される。図5に示す画面が表示装置に表示され、債権者、当初借入額、残債額、代位弁済者、代位額などが債権データとして入力されると、これを記憶装置に保存する。
【0028】
さらに、債権担保管理プログラム13により、コンピュータに担保権データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保権データ登録機能も実施される。担保権データとしては、担保権の種類を示すデータや、担保額データが取得され、さらに、対象となる担保物件との関連を示すデータなどが取得され、これを記憶装置に保存する。
【0029】
図6は債権担保管理プログラムにおける担保物件管理の画面表示の例を示す概念図である。ここでは、債権担保管理プログラム13により、コンピュータに担保物件の入札想定額データと売却予定額データを取得させ、コンピュータの記憶装置に保存させる担保物件データ登録機能が実施される。図6に示す画面が表示装置に表示され、担保物件データとして所在、地番(家屋番号)、固定資産評価額、裁判所評価額、入札想定額、売却予定額などの入力を促し、入力されたデータを取得して、これを記憶装置に保存する。また、各担保物件には識別情報として番号が付され、それが「No.」として左側に表示される。この識別情報により、担保権と担保物件が関連付けられる。
【0030】
担保物件データが入力されていくと、入札想定額、売却予定額がそれぞれ積算され、その合計値が画面下側に表示される。また、入札想定額の合計に対する売却予定額の合計の割合が計算され、百分率で表示されるので、使用者は競売と任意売却のどちらが有利かを判断する資料として活用できる。
【0031】
図7は費用管理プログラム14における画面表示の例を示す概念図である。ここでは、費用管理プログラム14により、コンピュータに費用控除額データの総計と売却予定額データの総計の比を算定させ、その比と所定の閾値を比較させ、閾値を超えた場合にはそれを示す表示をさせる費用控除額評価機能が実施される。図7に示す画面が表示装置に表示され、費用データとして費用項目、金額、支払先、振込先などの入力を促し、入力されたデータを取得して、これを記憶装置に保存する。
【0032】
費用データが入力されていくと、金額(費用控除額データ)が積算され、その合計値が画面下側に表示される。また、売却予定額の合計に対する費用控除額データの合計の割合が計算され、百分率で表示される。費用管理プログラム14では、この割合に関してある閾値が定められており、求められた割合と閾値を比較する。そして、割合がこの閾値を超えるか否かについて、画面に表示する。閾値は任意売却処分が成立しうると考えられる基準となる値が選択され、たとえば10%程度が使用される。多くの場合、費用控除額が売却予定額の10%以上になると、費用が大きくなりすぎて債権者の同意を得ることができず売却処分が困難になる。本例では、算定された割合は8.74%であり、閾値である10%を下回っているので、○印を表示して費用が基準範囲内にとどまっていることを示している。もし、割合が閾値を超えれば、警告を表示して、使用者に注意を促す。
【0033】
図8はシミュレーションプログラム15における画面表示の例を示す概念図である。ここでは、競売シミュレーション機能または任意売却シミュレーション機能が実施される。競売シミュレーションの場合は、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる。画面には、案件に含まれる担保物件が一覧で表示される。そして、それぞれの物件に対応する担保権を順位に従って取得する。たとえば、既に登録されている債権データから選択することを使用者に促す表示を行い、入力装置を操作させて選択させ、選択された債権データを登録するとともに、画面上に表示する。そして、債権データと担保権データと入札想定額データと競売費用データに基いてコンピュータに競売時配当額を算定させる。ある物件について、入札想定額から競売費用データを差し引くことにより、配当可能額が求められる。この配当可能額を上位の担保権の債権者から配分していく。たとえば、物件1では順位番号1として根抵当権(A)が対応している。この根抵当権(A)は極度額120,000,000円であるが、物件1と物件2との共同担保である。したがって、物件1と物件2の配当可能額の比より、物件1に対する金額が求められる(例えば80,000,000円)。配当可能額はその金額を上回るので、順位番号1には満額が配当される。その残額が順位番号2以下の債権者に割り当てられていく。残額が担保権の金額を上回る限りは満額が配当され、それを下回った時は残額が配当され(例えば順位番号3)、それ以下の債権者には配当額は0円となる(例えば順位番号4)。
【0034】
全ての担保物件に関して同様の処理がされると、競売シミュレーションが完了する。図9はシミュレーションプログラム15における競売シミュレーションの画面表示の例を示す概念図である。各債権者ごとに配当額を積算し、合計額を下側に表示する。
【0035】
図10はシミュレーションプログラム15における任意売却シミュレーションの画面表示の例を示す概念図である。ここでは、債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる任意売却シミュレーション機能が実施される。競売シミュレーションと類似の画面が表示される。案件に含まれる担保物件が一覧で表示される。そして、それぞれの物件に対応する担保権を順位に従って取得する。この処理は競売シミュレーションと同様であってもよいが、既に競売シミュレーションにおける登録がされている場合には、それと同じ関係付けで債権を割り当てていってもよい。そして、債権データと担保権データと売却予定額と費用控除額データに基いてコンピュータに任意売却時配分額を算定させる。ある物件について、売却予定額から費用控除額を差し引くことにより、配分可能額が求められる。この配分可能額を上位の担保権の債権者から配分していく。配分の処理は、競売シミュレーションと同様である。こうして、担保権の順位に忠実な配分のシミュレーションが実施される。各債権者ごとに配分額を積算し、合計額を下側に表示する(任売配分額)。さらに、比較のために競売シミュレーションによる配当額も併記するとともに(競売配当額)、その差額も表示する。一般的に、競売入札額よりも任意売却での売却の方が高額であり、より多くの債権者により多くの金額を配分できる場合が多い。それを差額で示すことにより、任意売却をすべきか否かの判断材料となるとともに、債権者を説得するための材料としても有効である。
【0036】
この発明の担保物件任意売却管理プログラムは、さらに、コンピュータに任意売却時配分額の変更の指示を表示装置に表示させ、入力装置を介して変更された任意売却時配分額を取得させ、その任意売却時配分額に基いてコンピュータに変更後の任意売却時配分額を算定させる任意売却修正シミュレーション機能を有する。
【0037】
図10に示す表示画面において、配分額をキーボードなどの入力装置によって入力できるようになっている。たとえば、物件2の順位番号4の債権者の配分額が0円と算定されているところ、使用者が入力装置でカーソルをその位置に移動させ、キーボードで別の数値(例えば100,000)を入力すると、コンピュータはその数値を変更された任意売却時配分額として取得し、登録する。このとき、その増減に対応して、他の債権者の配分額も変更しなければならない。この変更も使用者の手入力で行わせてもよいが、自動修正機能も持たせ、自動的に修正してもよい。たとえば、ある債権者の配分額を増額した場合には、その分を配分に与ることのできる最後(劣後)の債権者(例では物件2の順位番号3の債権者)の配分額から減じることにより調整することができる。このようにして、変更が確定したら、それに基いて配分額の算定を行い、それを画面に表示する。このようにして作成されたシミュレーション結果も一つの配分案として登録することができる。
【0038】
複数の配分案があれば、債権者の理解を得られる可能性が高くなる。しかし、手作業であれば一部の変更であってもほとんどすべての計算をやり直さなければならず、作業の負担が大きい。この発明では、他の債権者の配分額を変更したり、あるいは変更額の異なる複数の案を作成することも、この任意売却修正シミュレーション機能により簡単に実施することができる。債権者との交渉状況に対応してきめ細かく配分案を修正していくことも容易である。任意売却は全ての債権者の同意が得られないと実現できないため、後順位債権者など配分がない債権者へも担保権解除料などの手当てが必要となる。そのため、任意売却修正シミュレーション機能は任意売却を成功させるための重要な機能である。
【0039】
図11は作業管理プログラムにおける画面表示の例を示す概念図である。作業管理プログラム16により、コンピュータに任意売却に関する進捗状況データを取得させ、進捗状況データと競売スケジュールデータを比較させて、その比較結果を表示させる任意売却スケジュール管理機能が実施される。競売手続および任意売却手続に関する予定や作業を使用者に入力させ、コンピュータはそれを取得して登録する。この登録された予定や作業は時間の順序に従って画面に表示される。競売手続および任意売却手続に関する予定や作業が並列して表示されるので、使用者は進捗状況や今後すべきことを把握しやすい。
【0040】
予定や作業データは一つずつ使用者が入力できるほかに、競売テンプレート機能と任意売却テンプレート機能が備えられている。競売手続および任意売却手続における典型的な一連の予定や作業が予め記憶装置に登録されており、使用者はこのテンプレート機能を使用することにより一連の予定や作業が一括して選択できる。
【0041】
各予定や作業に対して、さらに日付けを登録することができ、この組み合わせで進捗状況データと競売スケジュールデータを構成する。競売スケジュールにおいて特に重要なのが開札期日であり、開札期日の2日前までに各債権者の任意売却に関する同意をとり競売取下げの申立をしなければ任意売却を実施することは困難となってしまう。そのため、競売開札期日が所定の日数内まで近づいてきたときは、警告を表示する。
【符号の説明】
【0042】
1.担保物件任意売却管理システム
2.コンピュータ
4.記憶装置
5.入力装置
6.表示装置
10.担保物件任意売却管理プログラム
11.案件管理プログラム
12.基本情報管理プログラム
13.債権担保管理プログラム
14.費用管理プログラム
15.シミュレーションプログラム
16.作業管理プログラム
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図11