(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または請求項2に記載のリンク作動装置において、前記式1における左辺の2行目の正負、および前記式2における右辺の正負は、前記基端側のリンクハブに対して前記基端側の端部リンクを組む方向によって決めるリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題があった。また、リンク長さを長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。これらの理由から、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が要求される医療機器等に用いるのは難しい。
【0005】
特許文献2のリンク作動装置は、4節連鎖のリンク機構を3組以上設けた構成としたことにより、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能である。しかし、このリンク作動装置は、端部リンク部材の回転位置を制御するものであるが、その制御方法については開示されていない。また、基端側の端部リンク部材への回転角入力に対して先端側のリンクハブの姿勢を求めたり、先端側のリンクハブへの姿勢入力に対して基端側の端部リンク部材の回転角を求めたりするための制御手段について開示されていない。
【0006】
そこで、本出願人は、特許文献3でリンク作動装置の制御方法を提案している。提案された制御方法は、端部リンク部材の回転角βn、基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸とが成す角度γ、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基準側の端部リンク部材の円周方向の離間角δn、基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度θ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度φの4つの関数で定義されている。しかし、リンク作動装置を構成するために必要なパラメータである、端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と端部リンク部材に回転自在に連結されたリンクハブとの連結端軸とが成す角度(端部リンク部材の軸角)αの関数が含まれておらず、端部リンク部材の軸角αが90°である場合に限定されている。よって、提案の制御方法は、端部リンク部材の軸角αが90°であるリンク作動装置しか制御することができない。
【0007】
この発明の目的は、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲で動作を行うことができ、端部リンク部材の軸角αが90°以外であっても、動作を制御することができるリンク作動装置を提供することである。
この発明の他の目的は、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲で動作を行うことができ、端部リンク部材の軸角αが90°以外であっても基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢を計算することができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と、前記先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸とがγの角度を成し、前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記基端側および先端側のリンクハブの連結端軸とがαの角度を成し、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設け、さらにこれらアクチュエータを制御する制御装置を設けて成る。
【0009】
この発明のリンク作動装置は、上記基本構成において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn(n=1,2,3,…)、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφ、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部が通る円周上において、基準となる位相に対する各回転対偶部の円周方向の離間角をεn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢が原点位置(θ=0,φ=0)にある状態における基準となる基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部の離間角をε
0とした場合、前記制御装置は、次の関係式
【数1】
で表される関係を充足するように、上記式1を逆変換することにより、目標とする前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)から前記基端側の端部リンク部材の回転角βnを求め、この求めた回転角βnとなるように前記各アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0010】
前記基本構成であると、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の最大折れ角θは約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角φを0°〜360°の範囲に設定できる。3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組について、基端側の端部リンク部材の回転角βnが決まれば基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢も決まる。よって、3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構にアクチュエータを設け、これらアクチュエータを適正に制御することで、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を任意に変更することができる。
【0011】
目標とする先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)が決まると、式1を逆変換することにより、端部リンク部材の回転角βnを求める。この求められた回転角βnとなるように各アクチュエータを制御することで、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)が目標とする姿勢になる。式1には、端部リンク部材の軸角αの関数が含まれているので、式1のαの値をそれぞれのリンク作動装置の端部リンク部材の軸角αとすることで、端部リンク部材の軸角αが90°以外であるリンク作動装置についても、動作を制御することができる。
【0012】
また、この発明の他のリンク作動装置は、上記基本構成において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn(n=1,2,3,…)、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφ、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部が通る円周上において、基準となる位相に対する各回転対偶部の円周方向の離間角をεn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢が原点位置(θ=0,φ=0)にある状態における基準となる基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部の離間角をε
0とした場合、次の関係式
【数2】
の式1を順変換することにより、前記基端側の端部リンク部材の回転角βnから現在の前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を計算する姿勢計算装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記基本構成による作用効果は前述の通りである。
また、姿勢計算装置により、現在の基端側の端部リンク部材の回転角βnを式1に代入して順変換することにより、現在の基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)が計算される。式1には、端部リンク部材の軸角αの関数が含まれているので、式1のαの値をそれぞれのリンク作動装置の端部リンク部材の軸角αとすることで、端部リンク部材の軸角αが90°以外であるリンク作動装置についても、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を計算することができる。
【0014】
この発明において、前記式1における左辺の2行目の正負、および前記式2における右辺の正負は、前記基端側のリンクハブに対して前記基端側の端部リンクを組む方向によって決めると良い。
離間角ε
0は、基端側のリンクハブに対する先端側の端部リンク部材の組む方向によって異なる二つの解を有する。よって、式1における左辺の2行目の正負、および式2における右辺の正負は、基端側のリンクハブに対して基端側の端部リンクを組む方向によって決まる。例えば、組む方向が右方向である場合は「+」、左方向の場合が「−」とすることで、式1が確定する。それにより、動作を制御することができ、かつ基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を計算することができる。
【0015】
この発明において、前記端部リンク部材の軸角αを90°とすると良い。
端部リンク部材の軸角αが90°であり、基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された基端側および先端側のリンクハブの連結端軸とが互いに直交していると、端部リンク部材の穴加工等の加工性が良く、量産性に優れる。
【0016】
前記端部リンク部材の軸角αを90°未満としても良い。
端部リンク部材の軸角αを90°未満とすると、機構としてはリンク作動装置の作動範囲が小さくなる場合もあるが、リンク機構同士が干渉しにくい構造となる。また、端部リンク部材の軽量化、コンパクト化を実現でき、端部リンク部材を材料費等の面から低コストで製作することができる。それにより、リンク作動装置全体の軽量化、コンパクト化を実現できる。さらに、リンク作動装置の内部空間が広がり、その内部空間にケーブル類や他の部品を配置するのに適した構造となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と、前記先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸とがγの角度を成し、前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記基端側および先端側のリンクハブの連結端とがαの角度を成し、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設け、さらにこれらアクチュエータを制御する制御装置を設けたリンク作動装置において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn(n=1,2,3,…)、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφ、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部が通る円周上において、基準となる位相に対する各回転対偶部の円周方向の離間角をεn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢が原点位置(θ=0,φ=0)にある状態における基準となる基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部の離間角をε
0とした場合、前記制御装置は、次の関係式
【数3】
で表される関係を充足するように、上記式1を逆変換することにより、目標とする前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)から前記回転角βnを求め、この求めた回転角βnに前記各アクチュエータを制御するため、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲で動作を行うことができ、端部リンク部材の軸角αが90°以外であっても、動作を制御することができる。
【0018】
この発明の他のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と、前記先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸とがγの角度を成し、前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記中央リンク部材の連結端軸と前記基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された前記基端側および先端側のリンクハブの連結端軸とがαの角度を成し、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設け、さらにこれらアクチュエータを制御する制御装置を設けたリンク作動装置において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn(n=1,2,3,…)、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφ、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部が通る円周上において、基準となる位相に対する各回転対偶部の円周方向の離間角をεn(n=1,2,3,…)、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢が原点位置(θ=0,φ=0)にある状態における基準となる基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部の離間角をε
0とした場合、次の関係式
【数4】
の式1を順変換することにより、前記基端側の端部リンク部材の回転角βnから現在の前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を計算する姿勢計算装置を設けたため、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲で動作を行うことができ、端部リンク部材の軸角αが90°以外であっても基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を計算することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を
図1〜
図6と共に説明する。
図1は、リンク作動装置の一部を省略した正面図に、各種の円周方向の角度を示す説明図を付加した図である。同図に示すように、このリンク作動装置51は、リンク作動装置本体1と、このリンク作動装置本体1を支持する基台52と、リンク作動装置本体1を作動させる複数(後記リンク機構4と同数)のアクチュエータ53と、これらアクチュエータ53を制御する制御装置58と、姿勢計算装置59とを備える。この例では、制御装置58および姿勢計算装置59がコントローラ54内に設けられているが、制御装置58および姿勢計算装置59はコントローラ54と別に設けてもよい。
【0021】
リンク作動装置本体1から説明する。
図2および
図3はリンク作動装置本体1のそれぞれ異なる状態を示す正面図であり、このリンク作動装置本体1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。
図1〜
図3では、3組のリンク機構4のうちの1組のリンク機構4のみが示されている。リンク機構4の数は、4組以上であってもよい。
【0022】
図4は、リンク作動装置本体1を三次元的に表わした斜視図である。各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、一方端が基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3にそれぞれ回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他方端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0023】
基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3は、その中心部に貫通孔10が軸方向に沿って形成され、外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。貫通孔10の中心はリンクハブ2,3の中心軸QA,QBと一致している。これら基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外周の円周方向に等間隔の位置に、基端側の端部リンク部材5および先端側の端部リンク部材6がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0024】
3組のリンク機構4の各基端側および先端側の端部リンク部材5,6は、球面リンク構造と呼ばれる構造であって、それぞれの球面リンク中心PA,PB(
図2、
図3に図示)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶中心軸S
57,S
67は、ある交差角を持っていてもよいし、平行であってもよい。図の例は交差角を持っており、この交差角を「中央リンク部材の軸角γ」と呼ぶ。回転対偶中心軸S
57は、請求項で言う「基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸」であり、回転対偶中心軸S
67は、請求項で言う「先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸」である。
【0025】
3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、
図5に示すように、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶部T
25,T
57,T
67,T
36と、これら回転対偶部T
25,T
57,T
67,T
36間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図5は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。
【0026】
この実施形態のリンク機構4は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
図2は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとが同一線上にある状態を示し、
図3は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Dは変化しない。
【0027】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θ(
図4)の最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(
図4)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。なお、旋回角φは、先端側のリンクハブ3の側から見て反時計回りの方向を正方向とする。
【0028】
このリンク作動装置本体1において、下記の(1)〜(3)の条件を満たす場合、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。例えば、基端側と先端側のリンクハブ2,3にそれぞれの中心軸QA,QBと同軸に回転軸を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手となる。この等速回転するときの中央リンク部材7の対称面を等速二等分面という。
【0029】
条件を以下に記す。
(1)各リンク機構4の端部リンク部材5,6は、球面リンク中心PA,PBからの距離が等しく、かつ端部リンク部材の軸角α(
図6)が等しい。端部リンク部材の軸角αは、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶中心軸S
25,S
36と端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との回転対偶中心軸S
57,S
67とが成す角度のことである。回転対偶中心軸S
25,S
36は、請求項で言う「基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された基端側および先端側のリンクハブの連結端軸」であり、回転対偶中心軸S
57,S
67は、請求項で言う「基端側および先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸」である。
(2)基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しい。
(3)中央リンク部材7についても基端側の先端側とで形状が等しい。
【0030】
図6は、基端側のリンクハブ2、基端側の端部リンク部材5、および中央リンク部材7を展開して表した断面図である。基端側のリンクハブ2は、前記軸方向の貫通孔10と外周側とを連通する半径方向の軸孔11が円周方向3箇所に形成され、各軸孔11内に設けた二つの軸受12により軸部材13がそれぞれ回転自在に支持されている。図の例では、各軸部材13が円周方向に等配の位置にあるが、これに限定されない。軸部材13の外側端部は基端側のリンクハブ2から突出し、その突出ねじ部13aに基端側の端部リンク部材5が結合され、ナット14によって締付け固定されている。図の例では、端部リンク部材の軸角αが90°であるが、これに限定されない。
【0031】
前記軸受12は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記軸孔11の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材13の外周に嵌合している。外輪は止め輪15によって抜け止めされている。また、内輪と基端側の端部リンク部材5の間には間座16が介在し、ナット14の締付力が基端側の端部リンク部材5および間座16を介して内輪に伝達されて、軸受12に所定の予圧を付与している。
【0032】
各基端側の端部リンク部材5の円周方向位相は、次のように表示する。すなわち、3組のリンク機構4のうちの一つを基準となるリンク機構4に定め、その基準となるリンク機構4における基端側の端部リンク部材5(5A)の連結端軸(回転対偶中心軸S
25を指す)の円周方向位相をδ1(例えばδ1=0°)とする。そして、この基端側の端部リンク部材5Aの連結端軸に対する、他の2つの基端側の端部リンク部材5の連結端軸の円周方向の離間角をそれぞれδ2,δ3とする。離間角δn(n=1,2,3)は、先端側のリンクハブ3の側から見て反時計回りの方向を正方向とする。
【0033】
また、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T
57については、中央リンク部材7の両端に形成された連通孔18に二つの軸受19を設け、これら軸受19により、基端側の端部リンク部材5の先端の軸部20を回転自在に支持する構造である。軸受19は、間座21を介して、ナット22によって締付け固定されている。
【0034】
前記軸受19は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔18の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部20の外周に嵌合している。外輪は止め輪23によって抜け止めされている。軸部20の先端ねじ部20aに螺着したナット22の締付力が間座21を介して内輪に伝達されて、軸受19に所定の予圧を付与している。
【0035】
図6では、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T
57を、その回転対偶中心軸S
57上における二つの軸受19の軸方向の中心位置で表示している。これに代えて、回転対偶部T
57を、回転対偶中心軸S
57上にあり、かつ3組のリンク機構4のすべてにおいて基端側のリンクハブ2の球面中心PAからの距離が同じである位置で表わしても良い。このように、回転対偶部T
57を1点で示される位置で表わした場合、
図1に示すように、各リンク機構4の回転対偶部T
57は常に同じ円周E上に位置する。
【0036】
各リンク機構4の回転対偶部T
57の円周方向位相は、次のように表示する。すなわち、前記基準となるリンク機構4の回転対偶部T
57の、基端側の端部リンク部材5Aの連結端軸に対する円周方向の離間角をε
1とする。そして、この基準となるリンク機構4の回転対偶部T
57に対する、他の2つの回転対偶部T
57の円周方向の離間角をそれぞれε
2,ε
3(図示せず)とする。離間角εn(n=1,2,3)も、先端側のリンクハブ3の側から見て反時計回りの方向を正方向とする。また、
図1のように、先端側のリンクハブ3の姿勢が原点位置(θ=0,φ=0)にある状態における基準となるリンク機構4の回転対偶部T
57の円周方向位相をε
0とする。
【0037】
以上、
図6と共に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の連結構造、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の連結構造について説明したが、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の連結構造、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の連結構造も同じ構成である。
【0038】
このように、各リンク機構4における4つの回転対偶部T
25,T
57,T
67,T
36に軸受12,19を設けた構造とすることにより、各回転対偶部T
25,T
57,T
67,T
36での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0039】
この軸受12,19を設けた構造では、軸受12,19に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶部T
25,T
57,T
67,T
36のがたつきを抑えることができ、基端側のリンクハブ2側と先端側のリンクハブ3側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,19の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0040】
軸受12を基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に埋設状態で設けたことにより、リンク作動装置本体1全体の外形を大きくすることなく、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外形を拡大することができる。そのため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を他の部材に取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0041】
図1において、基台52は縦長の部材であって、その上面にリンク作動装置本体1の基端側のリンクハブ2が固定されている。基台52の上部の外周にはつば状のアクチュエータ取付台55が設けられ、このアクチュエータ取付台55に前記アクチュエータ53が垂下状態で取付けられている。アクチュエータ53の数は、リンク機構4と同数の3個である。アクチュエータ53はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取付けたかさ歯車56と基端側のリンクハブ2の軸部材13に取付けた扇形のかさ歯車57とが噛み合っている。
【0042】
このリンク作動装置51は、コントローラ54に設けられた操作具(図示せず)を操作して各アクチュエータ53を回転駆動することで、リンク作動装置本体1を作動させる。詳しくは、アクチュエータ53が回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車56,57を介して軸部材13に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変更する。それにより、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢が決まる。ここでは、かさ歯車56,57を用いて基端側の端部リンク部材5の角度を変更しているが、その他の機構(例えば、平歯車やウォーム機構)でも良い。
【0043】
コントローラ54は、各アクチュエータ53を制御する制御装置58、および先端側のリンクハブ3の姿勢(θ,φ)を計算する姿勢計算装置59を有する。これら制御装置58および姿勢計算装置59は、コンピュータによる数値制御式のものである。この例では、制御装置58と姿勢計算装置59が互いに別の装置とされているが、両装置58,59をまとめて1つの装置としても良い。
【0044】
制御装置58は、前記操作具により先端側のリンクハブ3の姿勢が指令されると、その指令された先端側のリンクハブ3の姿勢に応じて、各基端側の端部リンク部材5の回転角βn(n=1,2,3)を求め、この求めた回転角βnとなるように各アクチュエータ53を制御する。回転角βnは、指令された先端側のリンクハブ3の姿勢に対応する各基準側の端部リンク部材5の回転角度であり、例えば
図1のように水平面からの角度とされる。指令された先端側のリンクハブ3の姿勢に対応する回転角βnは、下記の式1で表される関係を充足するように、式1を逆変換することで求める。逆変換とは、前記折れ角θおよび旋回角φ(
図4)から基端側の端部リンク部材5の回転角βnを算出する変換のことである。折れ角θおよび旋回角φと、回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0045】
【数5】
なお、式1の右辺の3×3の行列は、(φ−δn)、θ、−(φ−δn)のオイラー角による変換行列である。
【0046】
基準となるリンク機構4の回転対偶部T
57の円周方向位相ε
0は、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の組む方向によって異なる二つの解を有する。よって、式1における左辺の2行目の正負、および式2における右辺の正負は、基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク5を組む方向によって決める。組む方向が右方向である場合は「+」、左方向の場合が「−」とする。例えば、
図1の実施形態のように基端側の端部リンク部材5を左方向に組んでいる場合、式1、式2が式3、式4のように確定される。
【0048】
このようにして求められた回転角βnとなるように各アクチュエータ53を制御することで、先端側のリンクハブ3の姿勢(θ,φ)が目標とする姿勢になる。式3には、端部リンク部材の軸角αの関数が含まれているので、式3のαにそれぞれのリンク作動装置51の端部リンク部材の軸角αに代入することで、端部リンク部材の軸角αが90°以外であるリンク作動装置51についても、動作を制御することができる。
【0049】
また、姿勢計算装置59により、現在の基端側の端部リンク部材5の回転角βnを式3に代入して順変換することにより、現在の先端側のリンクハブ3の姿勢(θ,φ)が計算される。式3には、端部リンク部材の軸角αの関数が含まれているので、式3のαにそれぞれのリンク作動装置51の端部リンク部材の軸角αを代入することで、端部リンク部材の軸角αが90°以外であるリンク作動装置51についても、先端側のリンクハブ3の姿勢(θ,φ)を計算することができる。
【0050】
図7は、リンク作動装置本体1の各リンク機構4が鏡像対称タイプである実施形態を示す。このリンク作動装置51は、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して鏡像対称となる位置構成になっている。他の構成は、
図1の実施形態と同じである。
図7の実施形態も、
図1の実施形態と同様に、基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク部材5を左方向に組んでいるため、前記式3、式4の関係式を用いて、アクチュエータ53の制御、および先端側のリンクハブ3の姿勢の計算を行うことができる。
【0051】
図8および
図9は、リンク作動装置本体1の各リンク機構4が回転対称タイプであり、かつ基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク部材5を右方向に組んでいる実施形態を示す。このリンク作動装置51の場合、式1における左辺の2行目の正負、および式2における右辺の正負が「+」となり、式5、式6のように確定される。これら式5、式6の関係式を用いて、アクチュエータ53の制御、および先端側のリンクハブ3の姿勢の計算を行うことができる。
【0053】
図10ないし
図12は、リンク作動装置の異なる実施形態を示す。このリンク作動装置51は、
図10に示すように、基台62にスペーサ64を介してリンク作動装置本体1の基端側のリンクハブ2が設置されている。リンク作動装置本体1は、基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク部材5を左方向に組んでいる。そのため、前記式3、式4の関係式を用いて、後記アクチュエータ70の制御、および先端側のリンクハブ3の姿勢の計算を行うことができる。
【0054】
図11および
図12に示すように、リンク作動装置本体1は、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に対して端部リンク部材5,6をそれぞれ回転自在に支持する軸受31を外輪回転タイプとしたものである。基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶を例にとって説明すると、基端側のリンクハブ2の円周方向の3箇所に軸部32が形成され、この軸部32の外周に二つの軸受31の内輪(図示せず)が嵌合し、基端側の端部リンク部材5に形成された連通孔33の内周に軸受31の外輪(図示せず)が嵌合している。軸受31は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット34による締付けでもって所定の予圧量が付与された状態で固定されている。先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶も、上記同様の構造である。
【0055】
また、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の連結部に設けられた軸受36は、基端側の端部リンク部材5の先端に形成された連通孔37の内周に外輪(図示せず)が嵌合し、中央リンク部材7と一体の軸部38の外周に内輪(図示せず)が嵌合している。軸受36は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット39による締付けでもって所定の予圧量が付与された状態で固定されている。先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶も、上記同様の構造である。
【0056】
リンク作動装置本体1の3組のリンク機構4のすべてに、基端側の端部リンク部材5を回動させて先端位置姿勢を任意に変更させるアクチュエータ70と、このアクチュエータ70の動作量を基端側の端部リンク部材5に減速して伝達する減速機構71とが設けられている。アクチュエータ70はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機70a付きのサーボモータであって、モータ固定部材72により基台62に固定されている。減速機構71は、アクチュエータ70の減速機70aと、歯車式の減速部73とでなる。以下では、減速機構71に平歯車を使用しているが、その他の機構(例えば、かさ歯車やウォーム機構)でも良い。
【0057】
歯車式の減速部73は、アクチュエータ70の出力軸70bにカップリング75を介して回転伝達可能に連結された小歯車76と、基端側の端部リンク部材5に固定され前記小歯車76と噛み合う大歯車77とで構成されている。図示例では、小歯車76および大歯車77は平歯車であり、大歯車77は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車77は小歯車76よりもピッチ円半径が大きく、アクチュエータ70の出力軸70bの回転が基端側の端部リンク部材5へ、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸S
25回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。
【0058】
大歯車77のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸S
25の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶中心軸S
57の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸S
25に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0059】
小歯車76は、大歯車77と噛み合う歯部76aの両側に突出する軸部76bを有し、これら両軸部76bが、基台62に設置された回転支持部材79に設けられた二つの軸受80によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受80は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。二つの軸受80の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部76bに螺合したナット81を締め付けることにより、軸受80に予圧を付与する構成としてある。軸受80の外輪は、回転支持部材79に圧入されている。
【0060】
この実施形態の場合、大歯車77は、基端側の端部リンク部材5と別部材であり、基端側の端部リンク部材5に対してボルト等の結合具82により着脱可能に取付けられている。大歯車77は基端側の端部リンク部材5と一体であってもよい。
【0061】
アクチュエータ70の回転軸心O1および小歯車76の回転軸心O2は同軸上に位置する。これら回転軸心O1,O2は、基端側のリンクハブ24と基端側の端部リンク部材5の回転対偶軸O1と平行で、かつ基台62からの高さが同じとされている。
【0062】
図10に示すように、このリンク作動装置51のコントローラ54も、各アクチュエータ70を制御する制御装置58と、先端側のリンクハブ3の姿勢(θ,φ)を計算する姿勢計算装置59を有する。この実施形態は、
図1の実施形態と比べて、上記のように細部の構造はと違うものの、基本的な構成は同じであり、また
図1の実施形態と同様に、基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク部材5を左方向に組んでいる。そのため、制御装置58および姿勢計算装置59により、前記式3、式4の関係式を用いて、アクチュエータ70の制御、および先端側のリンクハブ3の姿勢の計算を行うことができる。
【0063】
このリンク作動装置51は、3組のリンク機構4のすべてにアクチュエータ70および減速機構71を設けたことで、リンク作動装置本体1や減速機構71のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ3の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置51自体の高剛性化を実現できる。
【0064】
また、減速機構71の歯車式の減速部73は、小歯車76と大歯車77の組合せからなり、10以上の高い減速比が得られる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ3の位置決め分解能が向上する。また、低出力のアクチュエータ70を使用することができる。この実施形態では減速機70a付きのアクチュエータ70を使用しているが、歯車式の減速部73の減速比が高ければ、減速機無しのアクチュエータ70を使用することも可能となり、アクチュエータ70を小型化できる。
【0065】
大歯車77のピッチ円半径を、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としたことで、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の曲げモーメントが小さくなる。そのため、リンク作動装置51全体の剛性を必要以上に高くしなくて済むと共に、基端側の端部リンク部材5の軽量化を図れる。例えば、基端側の端部リンク部材5をステンレス鋼(SUS)からアルミに変更できる。また、大歯車77のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車77の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置51全体の剛性が高くなる。
また、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車77が、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶に設置する軸受12の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車77の歯部と軸受12との間にスペースができ、大歯車77の設置が容易である。
【0066】
特にこの実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上であるため、大歯車77のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車76をリンク機構4よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車76の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車76と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置51の可動範囲が広くなる。
【0067】
小歯車76および大歯車77は、それぞれ平歯車であるため、製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。小歯車76は軸方向両側で軸受80により支持されているため、小歯車76の支持剛性が高い。それにより、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置51の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。また、アクチュエータ70の回転軸心O1、小歯車76の回転軸心O2、および基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶中心軸S
25が同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が良い。
【0068】
大歯車77は、基端側の端部リンク部材5に対して着脱自在であるため、歯車式の減速部73の減速比や、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置51の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置51を、大歯車77を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、歯車式の減速部73に障害が生じた場合に、同減速部73のみを交換するだけで対処可能である。
【0069】
上記の各実施形態は、端部リンク部材の軸角αが90°であるが、端部リンク部材の軸角αは90°以外であっても良い。例えば、
図13に示すリンク作動装置本体1は、
図10〜
図12の実施形態と同様に、各リンク機構4が回転対称タイプであり、かつ基端側のリンクハブ2に対して基端側の端部リンク部材5を左方向に組んだ構成であるが、端部リンク部材の軸角αが45°となっている。このように、端部リンク部材の軸角αを90°未満とすると、各リンク機構4の内側の内部空間を広くすることができる。それにより、内部空間にケーブル類や他の部品を配置することが可能になる。また、リンク作動装置のサイズを大きくしても、各端部リンク部材5,6が軽量、コンパクトな構成となり、リンク作動装置全体の軽量、コンパクト化を実現できる。
【0070】
このリンク作動装置本体1の基端側および先端側のリンクハブ2,3は、貫通孔92aを有する円板部92と、この円板部92の円周方向3箇所にそれぞれ固定された支持部材93と、各支持部材93から前記円板部92と平行に外径側へ延びる軸部材94とでなる。支持部材93は、ボルト等(図示せず)で円板部92に固定される。基端側のリンクハブ2の円板部92がこのリンク作動装置91の土台となり、先端側のリンクハブ3の円板部92に各種器具等が取付けられる。
【0071】
図14(A)は、
図13のリンク作動装置本体1を備えたリンク作動装置51の基端側のリンクハブ2、基端側の端部リンク部材5、および中央リンク部材7を展開して表した断面図である。前記軸部材94は、例えば圧入等により前記支持部材93に固定される。そして、軸部材94に、端部リンク部材5(6)の一方端が2個の軸受31を介して回転自在に連結される。端部リンク部材5(6)の他方端は、2個の軸受36を介して中央リンク部材7の軸部材39に回転自在に連結される。軸部材39は、例えば圧入等により中央リンク部材7に固定される。中央リンク部材7は両端に軸部材39を有し、一方端の軸部材39が基端側の端部リンク部材5に連結され、他方端の軸部材39が先端側の端部リンク部材6に連結される。前記軸受31,36は、共に外輪回転タイプである。
【0072】
図14(A)の部分拡大図である
図14(B)に示すように、リンクハブ2(3)の軸部材94の外周に軸受31の内輪(図示せず)が嵌合し、この内輪とその両側に配した2個のスペーサ95,96とを、軸部材94のフランジ部94aに対してナット97で締め付けてある。これにより、軸受31に予圧を付与した状態で、端部リンク部材5(6)を中央リンク部材7に対して回転自在に連結する。また、中央リンク部材7の軸部材39の外周に軸受36の内輪(図示せず)が嵌合し、この内輪とその両側に配した2個のスペーサ98,99とを、軸部材39のフランジ部39aに対してナット100で締め付けてある。これにより、軸受36に予圧を付与した状態で、端部リンク部材5(6)を中央リンク部材7に対して回転自在に連結する。
他の構造は、
図10〜
図12の実施形態のものと同じである。構造が同じ箇所については、同一符号で表し、説明を省略する。