特許第6133188号(P6133188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧 ▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6133188-乗物用シート 図000002
  • 特許6133188-乗物用シート 図000003
  • 特許6133188-乗物用シート 図000004
  • 特許6133188-乗物用シート 図000005
  • 特許6133188-乗物用シート 図000006
  • 特許6133188-乗物用シート 図000007
  • 特許6133188-乗物用シート 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133188
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B60N2/68
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-204171(P2013-204171)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67174(P2015-67174A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀和
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−126245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0152928(US,A1)
【文献】 特開2008−260323(JP,A)
【文献】 特開2012−062006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0068506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームとして左右両側に配設される一対のサイドフレームと、該サイドフレームの下部位置を連結するロアフレームとを備える乗物用シートであって、
前記ロアフレームは上方が開口した断面U字形状に形成されていると共に、該U字形状の前側部位が当該シートの幅方向で見て中央部位置が両側位置より後退した配設形状とされており、
前記ロアフレームの前記サイドフレームへの連結箇所の端面には、当端面から内方に向けて切り欠きが形成されており、この切り欠きによりロアフレームを矩形形状の展開形状から塑性変形加工により前記前側部位の中央部位置と両側位置の配設形状を前後方向に異ならせることを可能として、前記中央部位置が前記両側位置より後退した配設形状とされていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記ロアフレームの端面に形成される切り欠きは断面U字形状の下部位置に形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記ロアフレームの前記サイドフレームへの連結は溶接によって固定連結されており、その溶接箇所は少なくとも前記切り欠きを挟んだ箇所に設定されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに関する。特に、シートバックフレームとして左右両側に配設される一対のサイドフレームと、該サイドフレームの下部位置を連結するロアフレームとを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物用シートは、着座者の座部となるシートクッションと、背凭れとなるシートバックと、頭部を支持するヘッドレストとから成っている。シートバックは、その骨格を形成するシートバックフレームを有する。シートバックフレームは左右両側に配設される一対のサイドフレームと、該サイドフレームの上部位置を連結するアッパフレームと、その下部位置を連結する板状のロアフレームとが枠状に配設されて構成されている。
なお、シートバックは、その下部位置に備えられるリクライニング機構を介して前後方向に移動可能とされてシートクッションと連結されている。そして、リクライニング機構の位置決め機構が左右両側に配設される場合には、この両側の位置決め機構を連動作動させるため連動回動軸が前述のロアフレームに並行に配置されている。
このロアフレームと連動回動軸の配置関係は、ロアフレームが断面U字形に形成されており、U字形の開口方向が上方となるように配設されている。そして、このU字形の内方位置に連動回動軸が位置する配置関係とされている。これにより、連動回動軸の前部に配置されるシートパッドの支持荷重が作用したとしても、シートパッドの支持荷重が連動回動軸に直接作用することがなく、リクライニング機構の作動に支障がないようにされている。すなわち、U字形状のロアフレームの前側部位がない場合には、シートパッドの支持荷重をロアフレームの後側部位と共に連動回動軸も受けることになる。このような場合には、例えば、車両後突時等においてはシートパッドが受ける荷重によりシートパッドが連動回動軸に対して回転方向の力を及ぼしリクライニング機構を不用意に解除してしまう虞がある。また、通常状態においても着座者の着座時には、常時、シートパッドへの着座者の支持荷重が連動回動軸に作用している。このため、リクライニング機構の作動時に連動回動軸が回動する際に抵抗となる。かかる問題の解消を図るため、従来からロアフレームを断面U字形状として連動回動軸にはシートパッドの支持荷重が作用しなくして対応するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−126245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように連動回動軸をU字形の内方位置としてロアフレームをシートバックの下部位置に配置する場合には、着座者のシートクッションへの着座の際に、着座者の臀部の後方がU字形状のロアフレームの前側部位と当接することが生じ違和感を感じることがある。
この問題を解決するためには、図7に示すように、ロアフレーム130のU字形状の前側部位130aの配設形状を、シートの幅方向で見て、着座者の臀部が位置する中央部位置Xをその両側位置Yより後方に後退した位置として、着座者の臀部の後部の当接を抑制する配設形状とすることが考えられる。
ところで、ロアフレーム130は平板状の鋼板をプレス等の塑性変形加工により成形される。図7に示すロアフレーム130を通常のプレス加工で成形する場合の展開形状130Sは,図5(B)に示すような形状となる。すなわち、ロアフレーム130の前側部位130aにおける両側位置Y箇所が中央部位置X箇所より前方に突出した展開形状130Sとなる。この展開形状130Sを鋼板素材からプレス切断する場合には、この展開形状130Sを投影できる矩形形状の鋼板素材を用意して、当該展開形状130Sをプレス切断することになる。したがって、鋼板素材において中央部位置X箇所の両側位置Y箇所より後退した部分(図5(B)でクロス斜線で示す箇所)がいわゆる無駄な部分となり、歩留りが悪い。すなわち、ロアフレーム130の展開形状130Sは幅方向の長さW1,前後方向の長さL1となる。L1は中央部位置X箇所における前後方向の長さL2より両側位置Yの前方に突出して位置する分だけ長く形成することが必要とされ、中央部位置Xのクロス斜線で示す分だけ素材の無駄が生じ、歩留りが悪くなる。
【0005】
而して、本発明はこのような点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ロアフレームの前側部位の配設形状が中央部位置が両側位置より後方に後退した形状の場合でも、矩形形状の展開形状から成形可能として、歩留りを良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る乗物用シートは次の手段をとる。
すなわち、本発明は、シートバックフレームとして左右両側に配設される一対のサイドフレームと、該サイドフレームの下部位置を連結するロアフレームとを備える乗物用シートであって、前記ロアフレームは上方が開口した断面U字形状に形成されていると共に、該U字形状の前側部位が当該シートの幅方向で見て中央部位置が両側位置より後退した配設形状とされており、前記ロアフレームの前記サイドフレームへの連結箇所の端面には、当端面から内方に向けて切り欠きが形成されており、この切り欠きによりロアフレームを矩形形状の展開形状から塑性変形加工により前記前側部位の中央部位置と両側位置の配設形状を前後方向に異ならせることを可能として、前記中央部位置が前記両側位置より後退した配設形状とされていることを特徴とする。
なお、上記手段における前記ロアフレームの端面に形成される切り欠きは断面U字形状の下部位置に形成されるのが好ましい。
また、上記手段において、前記ロアフレームの前記サイドフレームへの連結は溶接によって固定連結されており、その溶接箇所は少なくとも前記切り欠きを挟んだ箇所に設定されるのが好ましい。
【0007】
上述した本発明によれば、断面U字形状のロアフレームの前側部位の配設形状が、着座者の着座状態において臀部の位置となる中央部位置がその両側位置より後方に後退した配設形状となっているので、着座者の臀部がロアフレームに当接するのを極力抑制することができる。その結果、良好な状態で着座することが可能となる。
また、本発明によれば、ロアフレームの連結端面に内方に向けて切り欠きが形成されており、この切り欠きによりロアフレームを矩形形状の展開形状から塑性変形加工により前記前側部位の中央部位置と両側位置の配設形状を前後方向に異ならせることを可能として、前記中央部位置を両側位置より後方に後退した配設形状としているので、素材の無駄を省くことができて、歩留りを良くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロアフレームの前側部位の配設形状が中央部位置が両側位置より後方に後退した形状の場合でも、端面に切り欠きを設けることにより、成形前の展開形状を矩形形状とすることができて、歩留りを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のシートの骨格を形成するシートクッションフレームとシートバックフレームの配設状態を示す斜視図である。
図2】本実施形態のシートバックフレームを構成するサイドフレームとロアフレームの連結構成箇所を分解した状態として示す分解斜視図である。
図3図1に示す連結構成箇所を連結した状態として示す斜視図である。
図4】シートバックの下部位置の配設状態を示す模式側面図である。
図5】ロアフレームの展開形状をプレス切断される際の配列状態を示し、(A)は切り欠きを形成した本実施形態の場合の配列図であり、(B)は本発明の課題を説明するための切り欠きを形成しない場合の配列図である。
図6】切り欠きの変形例を示す図である。
図7】本発明の課題を説明するためのロアフレームの形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、本説明における、上下、左右、前後等の方向を示す表示はシートに着座した着座者から見た方向を示すものである。
図1は自動車に代表される乗物用シート10(以下、単に「シート10」と称することもある)のシートクッションフレーム16とシートバックフレーム18の配設状態を示している。シート10は着座者の座部となるシートクッション12と、背凭れのシートバック14と、頭部を支持するヘッドレスト(不図示)とから構成される。シートクッションフレーム16はシートクッション12の骨格を形成し、シートバックフレーム18はシートバック14の骨格を形成している。シートバック14はその下部位置においてシートクッション12の後部位置とリクライニング機構20により前後方向に傾動可能に連結されている。本実施形態のリクライニング機構20は左右両側に傾動位置の位置決め機構22を備えて配設されており、左右両側の位置決め機構22を連動作動させるために、左右両側のリクライニング機構20,20間には連動回動軸24が配設されて連結されている。
シートバック14の骨格を形成するシートバックフレーム18は、左右両側に配設されるサイドフレーム26,26と、上部位置に配設されるアッパフレーム28と、下部位置に配設されるロアフレーム30とから構成されており、枠状に形成されている。図2及び図3はその内、サイドフレーム26とロアフレーム30を取り出して示しており、両者26、30の連結構成を示し、図1は分解状態、図2は連結された状態を示している。
サイドフレーム26は板状の長尺形状で形成されており端部が内方に折り曲げ形成されてフランジ部26aが形成されている。このフランジ部26aはサイドフレーム26の両側端から下部位置に亘って連続形成されているが、下部位置の一部26bにおいてはフランジ部26aが欠如されている.
【0011】
ロアフレーム30は平板状の板状部材から塑性変形加工成形により断面U字形状に形成されている。ロアフレーム30はU字形状であることから前側部位30Aと、後側部位30Bと、底面部位30Cとからなっている。ロアフレーム30のサイドフレーム26への連結は、図2及び図3に示すようにサイドフレーム26の下部に形成された円弧形状のフランジ部26aの内方面にロアフレーム30の端部が重ね合わされて溶接により接合されている。溶接箇所27は×印で示す3箇所であり、後述する切り欠き32の位置の両側位置で行われている。
ロアフレーム30の断面U字形状の内方位置に、図1で示すように左右両側のリクライニング機構を連結する連動回動軸24が配設されている。これにより図4に示すようにこれらの部材30、24の前方位置に配設されているシートパッド34に後方への荷重が作用しても、シートパッド34の荷重はロアフレーム30の前側部位30Aで受けられて連動回動軸24に当接することが避けられて、連動回動軸の作動に影響を及ぼすことがない。
なお、ロアフレーム30のU字形状の前側部位30Aは、着座者の臀部が位置するシート10の幅方向で見て中央部位置Xがその両側位置Yより後退した位置として配設されている。これにより着座者の臀部をシートクッション12に置いたときにロアフレーム30が障害とならないようにしている。なお、ロアフレーム30両側位置Yを前方位置としてサイドフレーム26との連結部を大きな円弧形状とすることは、両者30、26の連結強度,ひいてはシートバックフレーム18の枠形状の剛性を高めることに有利となる。
【0012】
ところで、本実施形態では上述のロアフレーム30の前側部位30Aにおける両側位置Yを中央部位置Xより前方位置とする配設形状は、ロアフレーム30の両端から内方に向けて形成されている切り欠き32により可能とされている。なお、図2及び図3に良く示されるように切り欠き32はU字形状の前側部位30Aと底面部位30Cとの境界位置に形成されている。そして、当該切り欠き32の形成位置は、ロアフレーム30の両端をサイドフレーム26の下部位置に連結した際には、前述したサイドフレーム26のフランジ部26aが欠如された部分26bの位置と同じ位置関係とされており、両者30,26が連結された際には当該箇所26b、32は連通孔となる。そして、この連通孔を通じてシートバック14の内部に装備される機器類の取付け作業等を行うことができる。本実施形態では当該連通孔の上部位置にリクライニング機構20を作動させるためのモータ(不図示)が装備されており、当該モータの取付け作業に用いられている。
【0013】
次に、本実施形態のロアフレーム30の形成方法を説明する。本実施形態のロアフレーム30は、図5(A)に示すように、通常では、ロール巻きされた鋼板素材から引き出された平板状部材から、ロアフレーム30の展開形状30Kをプレス等で打ち抜きカットする。本実施形態の展開形状30Kは幅方向の長さW1、前後方向の長さL2の長方形の矩形形状とされており、幅方向の端面から内方に向けて切り欠き32が入れられている。この切り欠き32が入れられる位置は、前述もしたように前側部位30Aと底面部位30Cの境界位置である。なお、切り欠き32の内方への切り込み長さは前方位置の配設形状とされる両側位置Yの長さに応じて選定される。
展開形状30Kのロアフレーム30はプレス成形等の塑性変形成形により、先ず、中央部位置Xの断面U字形状に成形する。その後、切り欠き32が入れられた両側位置Yの前側部位30A箇所を前方に変形させて、図2に示すようなロアフレーム30の形状とする。すなわち、相対的に中央部位置Xがその両側位置Yより後方に後退した位置関係となる配設形状とする。
図2に示すように形成されたロアフレーム30を図3に示すように×印で示す3箇所で溶接27を行いサイドフレーム26に接合して結合させる。溶接箇所27は前述もしたように切り欠き32の両側で行なわれているので、切り欠き32があっても強固な結合とされている。
【0014】
本実施形態のロアフレーム30の展開形状30Kは、上述したように長方形の矩形形状とされているので、鋼板素材から展開形状30Kを切り抜くとき、図5(B)に示される展開形状130Sの場合にクロス斜線で示すような無駄を省くことができて、歩留りの向上を図ることができる。
【0015】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態で実施可能なものである。
例えば、切り欠き32の形状は、図6に示す変形例のように各種形状が考えられる。図6に示す変形例の切り欠きは、内方ほど広くされた台形形状としたものである。
【符号の説明】
【0016】
10 シート(乗物用シート)
12 シートクッション
14 シートバック
16 シートクッションフレーム
18 シートバックフレーム
20 リクライニング機構
22 位置決め機構
24 連動回動軸
26 サイドフレーム
26a フランジ部
27 溶接箇所
28 アッパフレーム
30 ロアフレーム
30A 前側部位
30B 後側部位
30C 底面部位
32 切り欠き
34 シートパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7