【文献】
Li, Y. et al.,Directed evolution of human T-cell receptors with picomolar affinities by phage display.,Nature Biotech.,2005年 3月,Vol.23 No.3,pages 349-354
【文献】
Int. J. Cance,2002年,Vol.101,No5,p.448-453
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TCRが、SSX−3のKVSEKIVYVのアミノ酸配列部分、SSX−4のKSSEKIVYVのアミノ酸配列部分、SSX−5のKASEKIIYVのアミノ酸配列部分、SSX−9のKSSEKIIYVのアミノ酸配列部分、及びSSX−10のKASEKILYVのアミノ酸配列部分のいずれか1以上を認識する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のTCR。
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含む、単離又は精製されたタンパク質。
請求項1〜7のいずれか1項に記載のTCR、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド、又は請求項11〜15のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
請求項1〜7のいずれか1項に記載のTCR、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項11〜15のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項16〜19のいずれか1項に記載の核酸、請求項20若しくは21に記載の組換え発現ベクター、請求項22〜24のいずれか1項に記載のホスト細胞、又は請求項25に記載の細胞集団、及び医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
(a)癌細胞を含むサンプルを、請求項1〜7のいずれか1項に記載のTCR、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項11〜15のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項16〜19のいずれか1項に記載の核酸、請求項20若しくは21に記載の組換え発現ベクター、請求項22〜24のいずれか1項に記載のホスト細胞、又は請求項25に記載の細胞集団と接触させ、それにより複合体を形成させること、及び
(b)該複合体を検出すること、
を含む、癌の存在を検出する方法であって、該複合体の検出が癌の存在の指標となる、方法。
請求項1〜7のいずれか1項に記載のTCR、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項11〜15のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項16〜19のいずれか1項に記載の核酸、請求項20若しくは21に記載の組換え発現ベクター、請求項22〜24のいずれか1項に記載のホスト細胞、請求項25に記載の細胞集団、又は請求項26に記載の医薬組成物を含む、癌の治療又は予防用医薬組成物。
癌が、頭頸部癌、卵巣癌、肺癌、神経膠腫、メラノーマ、腎臓癌、リンパ腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、滑膜肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫子宮、及び肝細胞癌からなる群より選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
癌が、頭頸部癌、卵巣癌、肺癌、神経膠腫、メラノーマ、腎臓癌、リンパ腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、滑膜肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫子宮、及び肝細胞癌からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、滑膜肉腫Xブレイクポイント(SSX)−2(HOM−MEL−40としても知られている)に対する抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。SSX−2は、SSX−1、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−6、SSX−7、SSX−8、SSX−9、及びSSX−10をも含む、10の相同性の高い核タンパク質のSSXファミリーのメンバーである。SSXタンパク質は、腫瘍細胞及び精巣のMHCを発現しない生殖細胞でのみ発現する癌精巣抗原(CTA)である。SSX−2は、メラノーマ、頭部癌、頸部癌、リンパ腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、肝細胞及び結腸癌を含む種々のヒトの癌で発現するが、これらに限定されない。SSX−2タンパク質は、配列番号1を含み得る、配列番号1からなり得る、又は本質的に配列番号1からなり得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「抗原特異性」は、TCRが高いアビディティでSSX−2に対し特異的に結合し、免疫学的に認識することができることを意味する。例えば、低濃度のHLA−A2制限SSX−2(例えば、約0.01ng/ml〜約1ng/ml、0.01ng/ml、0.1ng/ml、若しくは1ng/ml)との共培養で、TCRを発現しているT細胞が少なくとも約200pg/ml以上(例えば、200pg/ml以上、300pg/ml以上、400pg/ml以上、500pg/ml以上、600pg/ml以上、700pg/ml以上)のIFN−γを分泌する場合、TCRがSSX−2に対する「抗原特異性」を有するとみなすことができる。本発明のTCRは、より高濃度のSSX−2との共培養でもIFN−γを分泌し得る。
【0011】
本発明の実施形態は、滑膜肉腫Xブレイクポイント(SSX)−2、又はSSX−2、並びにSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上に対して抗原反応性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を含む。
【0012】
該TCRは、任意のSSX−2タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに対する抗原特異性を有し得る。本発明の実施形態において、該TCRは、配列番号1を含む、配列番号1からなる、又は本質的に配列番号1からなる、SSX−2タンパク質に対する抗原特異性を有する。本発明の好ましい実施形態において、該TCRは、KASEKIFYV(配列番号2)を含む、配列番号2からなる、又は本質的に配列番号2からなる、SSX−2ペプチドに対する抗原特異性を有する。
【0013】
本発明のTCRはSSX−2に対する抗原特異性を有しているが、本発明のTCRは、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識することもできる。即ち、本発明のTCRは、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上に対し結合し免疫学的に認識することができるが、SSX−2への結合について観察されるよりも低い親和性であるため、これらのタンパク質のうちの1つに対する該TCRの結合は、SSX−2を用いて免疫反応を誘発するのに必要な濃度よりも高い濃度のこれらのタンパク質のいずれか1つで免疫反応を誘発する。例えば、本発明のTCRは、低濃度のSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上(例えば、約0.01ng/ml〜約1ng/ml、0.01ng/ml、0.1ng/ml、若しくは1ng/ml)との共培養で、TCRを発現しているT細胞が少なくとも約200pg/mlのIFN−γを分泌しない(例えば、200pg/ml未満、100pg/ml未満を分泌する)が、より高濃度のSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上(例えば、約10ng/ml〜約100ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、若しくは100ng/ml)との共培養で、少なくとも約200pg/ml以上(例えば、200pg/ml以上、300pg/ml以上、400pg/ml以上、500pg/ml以上、600pg/ml以上、700pg/ml以上)分泌する場合、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を低いアビディティで認識するとみなすことができる。
【0014】
該TCRは、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及び/又はSSX−10タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを認識し得る。本発明の実施形態において、該TCRは、配列番号3(SSX−3)、配列番号4(SSX−4)、配列番号5(SSX−5)、配列番号6(SSX−9)、及び/又は配列番号7(SSX−10)を含む、これら配列からなる、又は本質的にこれら配列からなる、タンパク質を認識する。本発明の好ましい実施形態において、該TCRは、SSX−3ペプチドKVSEKIVYV(配列番号8)、SSX−4ペプチドKSSEKIVYV(配列番号9)、SSX−5ペプチドKASEKIIYV(配列番号10)、SSX−9ペプチドKSSEKIIYV(配列番号11)、及び/又はSSX−10ペプチドKASEKILYV(配列番号12)を含む、これら配列からなる、又は本質的にこれら配列からなる、ペプチドを認識する。
【0015】
本発明のTCRは、HLA−A2依存的に、SSX−2、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及び/又はSSX−10(以下、「SSX癌抗原」)を認識することができる。本明細書で使用される場合、「HLA−A2依存的」とは、HLA−A2分子の背景においてSSX癌抗原に結合した際に、TCRが免疫反応を誘発することを意味する。
【0016】
さらに、いかなる特定の理論にも縛られることなく、本発明のTCRは、CD8及び/又はCD4非依存的にSSX癌抗原を認識することができる。「CD8及び/又はCD4非依存的」とは、本発明のTCRを発現している細胞上に発現したCD8若しくはCD4分子、又はCD8及びCD4の両分子の非存在下において、或いは機能的なCD8若しくはCD4分子又は両分子の非存在下において、本発明のTCRが、SSX癌抗原に結合した際に免疫反応を誘発できることを意味する。従来のTCRとは異なり、本発明のTCRは、CD8又はCD4に対する嗜好性を有しておらず、CD8又はCD4分子のいずれに関しても機能し得る。
【0017】
本発明のTCRは、養子細胞移植に使用される場合を含む、多くの利点を提供する。例えば、特定の理論に縛られることなく、SSX−2、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及び/又はSSX−10は、複数の種類の癌細胞で発現しているので、本発明のTCRは複数の種類の癌の細胞を破壊する性能を有利に提供し、その結果、複数の種類の癌を治療する又は予防すると考えられる。さらに、特定の理論に縛られることなく、SSXタンパク質は、腫瘍細胞及び精巣のMHCを発現していない生殖細胞でのみ発現する癌精巣抗原であるので、正常な非癌性細胞の破壊を最小化し又は排除し、その結果、毒性を減少させながら(例えば、最小化しながら又は排除しながら)、本発明のTCRは癌細胞の破壊を有利に標的化すると考えられる。さらに、本発明のTCRはSSX−2に対する抗原特異性を有する一方で、本発明のTCRはSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上も有利に認識する。特定の理論に縛られることなく、複数の癌抗原を認識する性能は、本発明のTCRにより破壊し得る癌細胞の数を有利に増加すると考えられる。さらに、SSX抗原が変異体となった場合、本発明のTCRはそれでも尚、1つより多くの抗原を認識することが可能である。
【0018】
本発明は、TCRのα鎖、TCRのβ鎖、TCRのγ鎖、TCRのδ鎖、又はそれらの組み合わせ等の、2つのポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。そのようなTCRのポリペプチド鎖は当該技術分野で公知である。本発明のTCRのポリペプチドは、該TCRがSSX−2に対する抗原特異性を有し、並びに/又はSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識する限り、いかなるアミノ酸配列をも含み得る。
【0019】
本発明の一実施形態において、該TCRは2つのポリペプチド鎖を含み、それらはそれぞれ、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域を含む。好ましくは、第一のポリペプチド鎖は、配列番号13のアミノ酸配列(α鎖のCDR1)を含むCDR1、配列番号14のアミノ酸配列(α鎖のCDR2)を含むCDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列(α鎖のCDR3)を含むCDR3を含み、且つ、第二のポリペプチド鎖は、配列番号16のアミノ酸配列(β鎖のCDR1)を含むCDR1、配列番号17のアミノ酸配列(β鎖のCDR2)を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列(β鎖のCDR3)を含むCDR3を含む。この点に関し、本発明のTCRは、配列番号13〜15、16〜18、及び13〜18のいずれか1以上からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、該TCRは配列番号13〜18のアミノ酸配列を含む。
【0020】
或いは又は加えて、該TCRは、上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含み得る。この点に関し、該TCRは、配列番号19(α鎖の可変領域)若しくは20(β鎖の可変領域)、配列番号19及び20の両方、配列番号35(α鎖の可変領域の一部)若しくは36(β鎖の可変領域の一部)、又は配列番号35及び36の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む。
【0021】
或いは又は加えて、該TCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のそれぞれは、いかなるアミノ酸配列をも独立に含み得る。好ましくは、該α鎖は、上記のα鎖の可変領域を含む。この点に関し、本発明のTCRは、配列番号23のアミノ酸配列を含み得る。本発明のこの種のTCRは、TCRのいかなるβ鎖とも組み合わせることができる。好ましくは、本発明のTCRのβ鎖は、上記のβ鎖の可変領域を含む。この点に関し、本発明のTCRは、配列番号24のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のTCRは、配列番号23若しくは24、又は配列番号23及び24の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号23及び24のアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明の実施形態において、該TCRは、ヒト/マウスキメラTCRを含み得る。この点に関し、該TCRは、配列番号21(マウスのα鎖の定常領域)、配列番号22(マウスのβ鎖の定常領域)又は配列番号21及び22の両方を含む、マウス定常領域を含み得る。好ましくは、該TCRは配列番号21及び22両方を含む。
【0023】
或いは又は加えて、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、上記のCDRのいずれかを含み得る。この点に関し、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、配列番号13〜15、16〜18、及び13〜18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、該ヒト/マウスキメラTCRは、配列番号13〜18のアミノ酸配列を含む。
【0024】
或いは又は加えて、該ヒト/マウスキメラTCRは、上記の可変領域のいずれかを含み得る。この点に関し、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、配列番号19(α鎖の可変領域)若しくは20(β鎖の可変領域)、配列番号19及び20の両方、配列番号35(α鎖の可変領域の一部)若しくは36(β鎖の可変領域の一部)、又は配列番号35及び36の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む。
【0025】
或いは又は加えて、該ヒト/マウスキメラTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本発明のヒト/マウスキメラTCRのα鎖及びβ鎖のそれぞれは、任意のアミノ酸配列を独立に含み得る。好ましくは、該α鎖は、上記のα鎖の可変領域を含む。この点に関し、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、配列番号25のアミノ酸配列を含み得る。本発明のこの種のヒト/マウスキメラTCRは、TCRのいかなるβ鎖とも組み合わせることができる。好ましくは、本発明のヒト/マウスキメラTCRのβ鎖は、上記のβ鎖の可変領域を含む。この点に関し、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、配列番号26のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のヒト/マウスキメラTCRは、配列番号25若しくは26、又は配列番号25及び26の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号25及び26のアミノ酸配列を含む。
【0026】
また、本発明により、本明細書に記載の任意のTCRの機能的部分を含む、単離又は精製されたポリペプチドも提供される。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合により連結した単鎖のアミノ酸のことをいう。
【0027】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、該機能的部分がSSX−2に特異的に結合する、並びに/又はSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識する限り、それが一部であるTCRの連続したアミノ酸を含むいかなる部分でもあり得る。TCRに関して使用される場合、用語「機能的部分」は、それが一部であるTCR(元のTCR)の生物学的活性を保持している部分又は断片である、本発明のTCRのいかなる部分又は断片のことをもいう。機能的部分は、例えば、SSX−2に特異的に結合する性能、並びに/又はSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識する性能(例えば、HLA−A2依存的に)を保持している、又は元のTCRと同様な程度、同程度、若しくはより高い程度に、癌を検出、治療、又は予防する、TCRの部分を含む。元のTCRを参照にして、該機能的部分は、例えば、元のTCRの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、又はより高い割合を含み得る。
【0028】
該機能的部分は、該部分のアミノ若しくはカルボキシ末端、又は両末端に、元のTCRのアミノ酸配列には見られない付加的なアミノ酸を含み得る。望ましくは、該付加的なアミノ酸は、例えば、SSX−2に特異的に結合すること;SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識すること;癌を検出する、癌を治療又は予防する性能を有していること等の、該機能的部分の生物学的機能を妨げない。より望ましくは、該付加的アミノ酸は、元のTCRの生物学的活性と比べ、生物学的活性を亢進する。
【0029】
該ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域の、CDR1、CDR2、及びCDR3の1以上を含む機能的部分等の、本発明のTCRのα及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分を含み得る。この点に関して、該ポリペプチドは、配列番号13(α鎖のCDR1)、14(α鎖のCDR2)、15(α鎖のCDR3)、16(β鎖のCDR1)、17(β鎖のCDR2)、18(β鎖のCDR3)、又はこれらの組み合わせのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号13〜15、16〜18、又は配列番号13〜18の全てを含む、機能的部分を包含する。より好ましくは、該ポリペプチドは、配列番号13〜18のアミノ酸配列を含有する機能的部分を含む。
【0030】
或いは又は加えて、本発明のポリペプチドは、例えば、上記のCDR領域の組み合わせを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。この点に関し、該ポリペプチドは、配列番号19(α鎖の可変領域)、20(β鎖の可変領域)、配列番号19及び20の両方、配列番号35(α鎖の可変領域の一部)若しくは36(β鎖の可変領域の一部)、又は配列番号35及び36の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、該ポリペプチドは、配列番号19、配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号19及び20の両方のアミノ酸配列を含む。
【0031】
或いは又は加えて、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRの1つのα又はβ鎖の全長を含み得る。この点に関し、本発明のポリペプチドは、配列番号23、24、25、又は26のアミノ酸配列を含み得る。或いは、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRのα及びβ鎖を含み得る。例えば、本発明のポリペプチドは、配列番号23及び24の両方、又は配列番号25及び26の両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0032】
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つを含む単離され又は精製されたタンパク質をさらに提供する。「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0033】
本発明のタンパク質は、配列番号19又は35のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号20又は36のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。本発明のタンパク質は、例えば、配列番号23又は25のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号24又は26のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。この例において、本発明のタンパク質はTCRであり得る。或いは、例えば、該タンパク質が配列番号23若しくは25、及び配列番号24若しくは26を含む単鎖ポリペプチドを含む場合、又は該タンパク質の第一の及び/若しくは第二のポリペプチド鎖が、例えば免疫グロブリン若しくはその一部をコードするアミノ酸配列などの、その他のアミノ酸配列をさらに含む場合、その結果、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。この点に関し、本発明は、少なくとも1つの他のポリペプチドとともに、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを含む融合タンパク質も提供する。該他のポリペプチドは、融合タンパク質と別個のポリペプチドとして存在することができ、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドの1つとともにインフレームで(直列に)発現するポリペプチドとして存在することができる。該他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子(例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d)等を含むがこれらに限定されない、いかなるペプチド性若しくはタンパク質性分子、又はそれらの一部をもコードし得る。
【0034】
該融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上の複製物、及び/又は他のポリペプチドの1以上の複製物を含み得る。例えば、該融合タンパク質は、1、2、3、4、5、若しくはそれより多くの本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドの複製物を含み得る。融合タンパク質を製造する適切な方法は当該技術分野において公知であり、例えば組換え法が挙げられる。例えば、Choi et al., Mol. Biotechnol. 31: 193-202 (2005)を参照されたい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖をつないでいるリンカーペプチドを含む、単一のタンパク質として発現し得る。この点に関し、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、配列番号37を含有するアミノ酸配列を含むリンカーペプチドをさらに含み得る。本発明の一実施形態において、該リンカーペプチドは、配列番号38を含むヌクレオチド配列によりコードされ得る。該リンカーペプチドは、ホスト細胞において、組換えTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を有利に促進し得る。ホスト細胞による該リンカーペプチドを含むコンストラクトの発現の際に、該リンカーペプチドは切断され得、別々のα及びβ鎖をもたらし得る。
【0036】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを含む、組換え抗体であり得る。本明細書で使用される場合、「組換え抗体」は、本発明のポリペプチドの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖又はその一部を含む、組換え(例えば、遺伝子組換えの)タンパク質をいう。抗体のポリペプチド、又はその一部は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変若しくは定常領域、単鎖可変断片(scFv)、又はFc、Fab、若しくはF(ab)
2’断片等であり得る。該抗体のポリペプチド鎖、又はその一部は、別々の組換え抗体のポリペプチドとして存在し得る。或いは、該抗体のポリペプチド鎖、又はその一部は、本発明のポリペプチドとインフレームで(直列に)発現するポリペプチドとして存在し得る。該抗体のポリペプチド、又はその一部は、本明細書に記載の任意の抗体及び抗体断片を含む、いかなる抗体又はいかなる抗体断片のポリペプチドでもあり得る。
【0037】
本明細書に記載の、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質の機能的バリアントは、本発明の範囲に包含される。本明細書で使用される場合、用語「機能的バリアント」は、元のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質に対し実質的な若しくは有意な配列の同一性若しくは類似性を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質であって、機能的バリアントが、それがバリアントであるTCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物学的活性を保持しているものをいう。機能的バリアントは、例えば、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質)のバリアントであって、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と同様な程度、同程度、若しくはより高い程度、元のTCRが抗原特異性を有する、又は元のポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する、SSX−2へ特異的に結合する性能を保持しているものを包含する。或いは又は加えて、機能的バリアントは、例えば、元のポリペプチド又はタンパク質が認識するSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と同様な程度、同程度、若しくはより高い程度に認識する性能を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質)のバリアントをも包含し得る。元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を参照にして、該機能的バリアントは、例えば、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質とアミノ酸配列において、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより高い同一性のものであり得る。
【0038】
該機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は当該技術分野において公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1のアミノ酸を、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸へ交換するアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸に置換される(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸が別の非極性側鎖を有するアミノ酸に置換される(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)、塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸に置換される(Lys、Arg等)、極性側鎖を有するアミノ酸が別の極性側鎖を有するアミノ酸に置換される(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)等であり得る。
【0039】
或いは又は加えて、該機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、該非保存的アミノ酸置換は、元のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と比較して、機能的バリアントの生物学的活性が増大するように、機能的バリアントの生物学的活性を亢進する。
【0040】
該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、例えば他のアミノ酸等の、機能的バリアントの他の構成成分が実質的に機能的バリアントの生物学的活性を変更しないように、本質的に、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(単数又は複数)からなり得る。この点に関し、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、例えば、本質的に配列番号23、24、25、26、配列番号23及び24の両方、又は配列番号25及び26の両方のアミノ酸配列からなり得る。例えば、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本質的に配列番号19、20、21、22、35、36、配列番号19及び20の両方、配列番号21及び22の両方、又は配列番号35及び36の両方のアミノ酸配列からもなり得る。さらに、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本質的に配列番号13(α鎖のCDR1)、14(α鎖のCDR2)、15(α鎖のCDR3)、16(β鎖のCDR1)、17(β鎖のCDR2)、18(β鎖のCDR3)、又はこれらの任意の組み合わせ(例えば、配列番号13〜15、16〜18、若しくは13〜18)のアミノ酸配列からなり得る。
【0041】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、いかなる長さでもあり得、即ち、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質(又はそれらの機能的部分若しくは機能的バリアント)が、それらの生物学的活性(例えば、SSX−2に特異的に結合する;SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識する;ホストにおいて癌を検出する;又はホストにおいて癌を治療する若しくは予防する等の性能)を保持する、いかなる数のアミノ酸をも含み得る。例えば、該ポリペプチドは、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれより長いアミノ酸等の、50〜5000アミノ酸の長さであり得る。この点に関し、本発明のポリペプチドはオリゴポリペプチドも含む。
【0042】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、1以上の天然に生じるアミノ酸の代わりに、合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は当該技術分野において公知であり、例として、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α−アミノ n−デカン酸、ホモセリン、S−アセチルアミノメチル−システイン、トランス−3−及びトランス−4−ヒドロキシプロリン、4−アミノフェニルアラニン、4−ニトロフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−カルボキシフェニルアラニン、β−フェニルセリン β−ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α−ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン−2−カルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’−ベンジル−N’−メチル−リジン、N’,N’−ジベンジルリジン、6−ヒドロキシリジン、オルニチン、α−アミノシクロペンタンカルボン酸、α−アミノシクロヘキサンカルボン酸、α−アミノシクロヘプタンカルボン酸、α−(2−アミノ−2−ノルボルナン)−カルボン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα−tert−ブチルグリシンが挙げられる。
【0043】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N−アシル化、例えばジスルフィド架橋を介した環化、又は酸付加塩への変換及び/若しくは任意で二量体化若しくは重合、又は共役され得る。
【0044】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(機能的部分及び機能的バリアントを含む)が塩の形態である場合、好ましくは、該ポリペプチドは医薬上許容される塩の形である。適切な医薬上許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸等の鉱酸、並びに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、及び、例えばp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸等の有機酸に由来するものを含む。
【0045】
本発明のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、当該技術分野において公知の方法により得ることができる。ポリペプチド及びタンパク質を新規に合成する適切な方法は、Chanら,
Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2005;
Peptide and Protein Drug Analysis,Reid,R.編,Marcel Dekker,Inc.,2000;
Epitope Mapping,Westwoodら編,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;及び米国特許第5,449,752号等の参照文献に記載されている。ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を使用し、本明細書に記載の核酸を使用して、組換えでも産生し得る。例えば、Sambrookら,
Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rded.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;及びAusubelら,
Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994を参照されたい。さらに、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)のいくつかは、植物、細菌、昆虫、例えばラット、ヒトなどの哺乳動物等の供給源から単離及び/又は精製し得る。単離及び精製の方法は、当該技術分野において周知である。或いは、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)、及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)等の会社により商業的に合成され得る。この点に関し、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、合成された、組換え体の、単離された、及び/又は精製されたものであり得る。
【0046】
本発明の範囲には、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質(それらの機能的部分若しくはバリアントの任意のものを含む)、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞、ホスト細胞の集団、又は抗体若しくはその抗原結合部位のいずれかを含む、バイオコンジュゲート(bioconjugate)などの複合物が含まれる。複合物は、一般に、複合物を合成する方法と同様に、当該技術分野において公知である(例えば、Hudecz, F., Methods Mol. Biol. 298: 209-223 (2005)、及びKirinら, Inorg Chem. 44(15): 5405-5415 (2005)を参照されたい)。
【0047】
本発明により、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれか(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸がさらに提供される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、天然の、非天然の、又は変更したヌクレオチドを含むことができる、及び、天然の、非天然の、又は変更したヌクレオチド間結合(例えば、非修飾のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見られるリン酸ジエステルの代わりの、ホスホロアミド酸(phosphoroamidate)結合若しくはホスホロチオエート結合のような)を含むことのできる、一本鎖若しくは二本鎖であり得、合成された若しくは天然の供給源から得ることができる(例えば、単離及び/又は精製することができる)、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、通常、DNA又はRNAのポリマーを意味する。該核酸は、いかなる挿入、欠失、逆位、及び/又は置換をも含んでいないことが、通常好ましい。しかしながら、本明細書で議論されているように、いくつかの例では、該核酸が1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが適切であり得る。
【0049】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書で使用される場合、用語「組換え体」は、(i)天然の若しくは合成の核酸セグメントを生細胞内で複製可能な核酸分子へ連結することにより生細胞の外で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載の分子の複製によりもたらされた分子をいう。本明細書の目的のために、該複製はin vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0050】
該核酸は、当該技術分野において公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、上記のSambrookら、及び上記のAusubelら、を参照されたい。例えば、核酸は天然に生じるヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大させるように、若しくはハイブリダイゼーションの際に形成した二本鎖の物理的安定性を増大させるように設計された種々の修飾型ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート派生物、及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して化学合成され得る。核酸を産生するために使用され得る修飾型ヌクレオチドの例として、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N
6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2−チオウラシル、ベータ-D−マンノシルキューオシン(mannosylqueosine)、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N
6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるがこれらに限定されない。或いは、1以上の本発明の核酸は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston, TX)等の会社から購入できる。
【0051】
該核酸は、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質、又はそれらの機能的部分若しくは機能的バリアントのいずれかをコードするいかなるヌクレオチド配列をも含み得る。例えば、該核酸は、配列番号27(抗SSX−2 TCRアルファ及びベータ鎖をコードする)又は配列番号28(ヒト/マウスキメラ抗SSX−2 TCRアルファ及びベータ鎖をコードする)を含む、これら配列からなる、又は本質的にこれら配列からなるヌクレオチド配列を含み得る。該ヌクレオチド配列は、或いは、配列番号27又は28に対し縮重するヌクレオチド配列を含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、該核酸配列は最適化し得る。特定の理論に縛られることなく、核酸配列の最適化はmRNA転写産物の翻訳効率を増大すると考えられる。核酸配列の最適化は、元のコドンを、同一のアミノ酸をコードするが、細胞内でより容易に利用可能なtRNAにより翻訳可能な別のコドンへ置換することを伴うことができ、それ故、翻訳効率を増大する。核酸配列の最適化は、翻訳を妨害する可能性のあるmRNAの二次構造も減少することができ、それ故、翻訳効率を増大する。例えば、該最適化核酸は、配列番号29(抗SSX−2 TCRアルファ及びベータ鎖をコードする)、又は配列番号30(ヒト/マウスキメラ抗SSX−2 TCRアルファ及びベータ鎖をコードする)を含む、これら配列からなる、又は本質的にこれら配列からなるヌクレオチド配列を含み得る。該ヌクレオチド配列は、或いは、配列番号29及び30に対し縮重するヌクレオチド配列を含み得る。
【0053】
本発明は、本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸をも提供する。
【0054】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」は、標的配列(本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列)に対し、非特異的ハイブリダイゼーションよりも強く検出可能な量で、ヌクレオチド配列が特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又はわずかな散在するミスマッチのみを含むポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチするわずかな小領域(例えば、3〜10塩基)を偶然に有するランダム配列から区別するであろう条件を含む。そのような相補性小領域は、14〜17又はより長い塩基の全長相補物よりもより容易に融解し、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションはそれらを容易に区別可能とする。相対的に高ストリンジェンシーな条件は、例えば、約0.02〜0.1M NaCl又はそれと同等のもの、約50〜70℃の温度により提供されるような、低塩及び/又は高温条件を含み得る。そのような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列とテンプレート又は標的鎖との間のミスマッチを、たとえあったとしてもほとんど許容せず、本発明の任意のTCRの発現を検出するのに特に適している。ホルムアミドの量を増加して添加することにより、条件をよりストリンジェントにすることができると一般に認められている。
【0055】
本発明の核酸は組換え発現ベクターに組み込むことができる。この点に関し、本発明は、本発明の任意の核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のためには、用語「組換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で、該ベクターを細胞に接触させた場合に、ホスト細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現を可能にする、遺伝子操作したオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体として天然に生じたものではない。しかしながら、該ベクターの一部は天然に生じたものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、一本鎖又は二本鎖であり得、合成の又は一部天然の供給源から得ることができ、天然の、非天然の、又は変更したヌクレオチドを含み得る、DNA及びRNAを含むがこれらに限定されない、いかなる種類のヌクレオチドをも含み得る。該組換え発現ベクターは、天然に生じる、非天然に生じるヌクレオチド間の結合、又は両種類の結合を含み得る。好ましくは、該非天然に生じる若しくは変更したヌクレオチド、又はヌクレオチド間の結合は、該ベクターの転写又は複製を妨げない。
【0056】
本発明の組換え発現ベクターは、いかなる適切な組換え発現ベクターでもあり得、任意の適切なホストを形質転換又はトランスフェクトするのに使用され得る。適切なベクターは、プラスミド及びウイルス等の、増殖及び増幅のために、又は発現若しくは双方のために設計されたものを含む。該ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, CA)からなる群より選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも使用され得る。植物の発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物の発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo (Clontech)が挙げられる。好ましくは、該組換え発現ベクターは、例えばレトロウイルスベクターなどの、ウイルスベクターである。
【0057】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、上記Sambrookら及び上記Ausubelらに記載の、標準的な組換えDNA技術を使用して調製し得る。発現ベクターのコンストラクト(環状又は直鎖状である)は、原核生物の又は真核生物のホスト細胞において機能的な複製システムを含むように調製し得る。複製システムは、例えば、ColEl、2 μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来し得る。
【0058】
望ましくは、該組換え発現ベクターは、必要に応じて、ベクターがDNA又はRNAベースであるかを考慮しながら、ベクターが導入されるホストの種類(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的である、転写及び翻訳開始及び終結コドン等の調節配列を含む。
【0059】
該組換え発現ベクターは、形質転換した又はトランスフェクトしたホストの選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子として、例えば、抗生物質、重金属等への耐性などの殺生物剤抵抗性、原栄養性を提供するための栄養要求性ホストの相補等が挙げられる。本発明の発現ベクターについての適切なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0060】
該組換え発現ベクターは、該TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列、又は該TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的な若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能なように連結した、天然の又は非天然のプロモーターを含み得る。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、及び発生特異的などの、プロモーターの選択は当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組み合わせることも、当業者の技術範囲内である。該プロモーターは、非ウイルスプロモーター、又は例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターなどのウイルスプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列に見られるプロモーターであり得る。
【0061】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現、安定発現のいずれか、又は両方について設計することができる。また、該組換え発現ベクターは、恒常的な発現のため又は誘導性発現のために作製することができる。さらに、該組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、該自殺遺伝子を発現する細胞に死をもたらす遺伝子をいう。該自殺遺伝子は、該遺伝子を発現する細胞に、例えば薬剤などの剤に対する感受性を与え、該細胞が該剤に接触又は曝露した場合に、該細胞に死をもたらすような遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該技術分野において公知であり(例えば、
Suicide Gene Therapy: Methods and Reviews, Springer, Caroline J. (Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey, UK), Humana Press, 2004を参照されたい)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0063】
本発明の他の実施形態は、本明細書に記載の任意の組換え発現ベクターを含むホスト細胞をさらに提供する。本明細書で使用される場合、用語「ホスト細胞」は、本発明の組換え発現ベクターを含み得る、いかなる種類の細胞をもいう。該ホスト細胞は、例えば、植物、動物、真菌、若しくは藻類などの真核細胞であり得、又は例えば、細菌若しくは原生生物などの原核細胞であり得る。該ホスト細胞は、培養した細胞、又は初代細胞(即ち、例えばヒトなどの生物から直接単離した)であり得る。該ホスト細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(即ち、懸濁液中で増殖する細胞)であり得る。適切なホスト細胞は当該技術分野において公知であり、例えば、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅する又は複製する目的のためには、該ホスト細胞は、好ましくは、例えばDH5α細胞などの原核細胞である。組換えTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を製造する目的のためには、該ホスト細胞は、好ましくは、哺乳類細胞である。最も好ましくは、該ホスト細胞はヒト細胞である。該ホスト細胞は、いかなる細胞種でもあり得、いかなる種類の組織からも生ずることができ、いかなる発生段階でもあり得るが、該ホスト細胞は、好ましくは、末梢血白血球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、該ホスト細胞はT細胞である。
【0064】
本明細書の目的のためには、該T細胞は、例えば初代T細胞などの培養したT細胞、又は例えばJurkat、SupT1などの培養したT細胞株からのT細胞、又は哺乳動物から得たT細胞等の、いかなるT細胞でもあり得る。哺乳動物から得る場合、該T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又はその他の組織若しくは体液を含むがこれらに限定されない、多くの供給源から得ることができる。T細胞は濃縮又は精製することもできる。好ましくは、該T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、該T細胞はヒトから単離したT細胞である。該T細胞は、CD4
+/CD8
+ダブルポジティブT細胞、例えばTh
1及びTh
2細胞などのCD4
+ヘルパーT細胞、CD8
+ T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤性細胞(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞等を含むがこれらに限定されない、いかなる種類のT細胞、及びいかなる発生段階でもあり得る。好ましくは、該T細胞はCD8
+ T細胞又はCD4
+ T細胞である。
【0065】
本発明により、本明細書に記載の少なくとも1つのホスト細胞を含む細胞集団も提供される。該細胞集団は、例えば、いかなる組換え発現ベクターも含まないホスト細胞(例えばT細胞)などの少なくとも1つの他の細胞、又は例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等のT細胞以外の細胞に加えて、記載された任意の組換え発現ベクター含むホスト細胞を含む異成分からなる集団であり得る。或いは、該細胞集団は、集団が該組換え発現ベクターを含むホスト細胞を主として含む(例えば、本質的に該細胞からなる)、実質的に均一な集団であり得る。該集団は、集団の全ての細胞が該組換え発現ベクターを含むように、集団の全ての細胞が組み換え発現ベクターを含む単一のホスト細胞のクローンである、クローン細胞集団でもあり得る。本発明の一実施形態において、該細胞集団は、本明細書に記載の組換え発現ベクターを含むホスト細胞を含有するクローン集団である。
【0066】
本発明は、本明細書に記載の任意のTCRの機能的部分に特異的に結合する、抗体、又はその抗原結合部分をさらに提供する。好ましくは、該機能的部分は、例えば、配列番号13(α鎖のCDR1)、14(α鎖のCDR2)、15(α鎖のCDR3)、16(β鎖のCDR1)、17(β鎖のCDR2)、18(β鎖のCDR3)、配列番号19、配列番号20、配列番号35、配列番号36、又はこれらの組み合わせ(例えば、13〜15;16〜18;13〜18;19〜20、又は35〜36)のアミノ酸配列を含む機能的部分などの、癌抗原に特異的に結合する。より好ましくは、該機能的部分は、配列番号13〜18のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、6つの全てのCDR(α鎖のCDR1〜3及びβ鎖のCDR1〜3)により形成されるエピトープに結合する。該抗体は当該技術分野において公知である、いかなる種類の免疫グロブリンでもあり得る。例えば、該抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM等の任意のアイソタイプであり得る。該抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。該抗体は、例えば哺乳動物(マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等)から単離及び/又は精製した抗体などの、天然に生じた抗体であり得る。或いは、該抗体は、例えばヒト化抗体又はキメラ抗体などの、遺伝子組換え抗体であり得る。該抗体は、単量体又は重合体の形態であり得る。また、該抗体は、本発明のTCRの機能的部分に対し任意のレベルの親和性又はアビディティを有し得る。望ましくは、他のペプチド又はタンパク質との交差反応が最小となるように、該抗体は本発明のTCRの機能的部分に対し特異的である。
【0067】
本発明のTCRの任意の機能的部分への結合能について抗体を試験する方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、及び競合阻害アッセイ(例えば、以下のJanewayら、及び米国特許出願公開第2002/0197266A1号明細書を参照されたい)等の、いかなる抗体−抗原結合アッセイをも含む。
【0068】
抗体を作製する適切な方法は当該技術分野において公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5, 511-519 (1976)、Harlow and Lane (eds.), Antibodies: A Laboratory Manual, CSH Press (1988)、及びC.A. Janeway et al. (eds.), Immunobiology, 5
thEd., Garland Publishing, New York, NY (2001)等に記載されている。或いは、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer, J. Immunol. Methods, 74(2), 361-67 (1984)、及びRoderら, Methods Enzymol., 121, 140-67 (1986))、並びにバクテリオファージベクター発現システム(例えば、Huseら, Science, 246, 1275-81 (1989)を参照されたい)等の、他の方法が当該技術分野において公知である。さらに、非ヒト動物における抗体の作製方法が、例えば、米国特許第5,545,806号、5,569,825号、及び5,714,352号、並びに米国特許出願公開第2002/0197266 A1号などに記載されている。
【0069】
さらに、ファージディスプレイが本発明の抗体を産生するのに使用され得る。この点に関し、抗体の抗原結合可変(V)領域をコードするファージライブラリーを、標準的な分子生物学及び組換えDNA技術(例えば、Sambrookら (eds.), Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3
rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001)を参照されたい)を使用して産生することができる。望みの特異性を有する可変領域をコードするファージが、望みの抗原に特異的に結合するとして選択され、該選択された可変領域を含む、完全な又は部分的な抗体を再構成する。モノクローナル抗体の特徴を有する抗体が細胞により分泌されるように、該再構成した抗体をコードする核酸配列は、ハイブリドーマ製造に使用されるミエローマ細胞等の適切な細胞株に導入される(例えば、上記Janewayら、上記Huseら、及び米国特許第6,265,150号を参照されたい)。
【0070】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてのトランスジェニックである、トランスジェニックマウスにより製造し得る。そのような方法は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び第5,569,825号、並びに上記Janewayら、などに記載される。
【0071】
ヒト化抗体を産生する方法は当該技術分野において周知であり、例えば、上記Janewayら、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号及び第5,693,761号、欧州特許第0239400 B1号、並びに英国特許第2188638号などに詳細に記載されている。ヒト化抗体は、米国特許第5,639,641号及びPedersenら, J. Mol. Biol., 235, 959-973 (1994)に記載の、抗体リサーフェイシング(resurfacing)技術を使用しても産生し得る。
【0072】
本発明は、本明細書に記載の任意の抗体の抗原結合部位も提供する。該抗原結合部位は、Fab、F(ab’)
2、dsFv、sFv、二重特異性抗体、及び三重特異性抗体(triabody)等の、少なくとも1つの抗原結合部位を有する、いかなる部位でもあり得る。
【0073】
合成ペプチドを介して、抗体軽鎖の可変(V)領域と連結した抗体重鎖のV領域を含む短縮型Fab断片からなる、単鎖可変領域断片(sFv)抗体断片は、慣習的な組換えDNA技術を使用して産生し得る(例えば、上記Janewayらを参照されたい)。同様に、ジスルフィド−安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術により調製し得る(例えば、Reiterら, Protein Engineering, 7, 697-704 (1994)を参照されたい)。本発明の抗体断片は、しかしながら、これらの代表的な種類の抗体断片に限定されるものではない。
【0074】
また、該抗体又はその抗原結合部位は、例えば、ラジオアイソトープ、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及びエレメント粒子(例えば、金粒子)等の、検出可能な標識を含むように修飾し得る。
【0075】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(それらの機能的部分及び機能的バリアントを含む)、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部位を含む)は、単離及び/又は精製し得る。本明細書で使用される場合、用語「単離した」は、その天然の環境から取り出されていることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「精製した」は、純度を増大したことを意味し、ここで「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度と解釈されるものではない。例えば、該純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%若しくは80%、90%を超える、又は100%であり得る。
【0076】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(それらの機能的部分及びバリアントを含む)、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部位を含む)(以下、全てまとめて「本発明のTCRマテリアル」という)は、医薬組成物等の組成物へ処方し得る。この点に関し、本発明は、該TCR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的バリアント、核酸、発現ベクター、ホスト細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部位を含む)、並びに医薬上許容される担体の任意のものを含む医薬組成物を提供する。任意の本発明のTCRマテリアルを含む、本発明の医薬組成物は、例えば、ポリペプチド及び核酸、又は2つ若しくはそれより多い異なるTCRなどの、1より多い本発明のTCRマテリアルを含み得る。或いは、該医薬組成物は、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの化学療法剤等の他の医薬活性剤又は薬剤との組み合わせで、本発明のTCRマテリアルを含み得る。
【0077】
好ましくは、該担体は医薬上許容される担体である。医薬組成物に関し、該担体は、通常使用される任意のものであり得、溶解性や活性化合物(単数又は複数)との反応性の欠如等の物理化学的検討事項、及び投与の経路によってのみ限定される。例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、及び希釈剤などの、本明細書に記載の医薬上許容される担体は、当業者に周知であり、公衆に容易に利用可能である。該医薬上許容される担体は、活性剤(単数又は複数)に対し化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有しないものであることが好ましい。
【0078】
担体の選択は、部分的には、特定の本発明のTCRマテリアルにより、及び本発明のTCRマテリアルを投与するのに使用される特定の方法により、決定されるであろう。従って、本発明の医薬組成物の多様な適切な製剤が存在する。経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、及び腹腔内投与のための以下の製剤は、代表的なものであり、決して限定しているのではない。1より多い経路が、本発明のTCRマテリアルを投与するのに使用可能であり、場合により、特定の経路が他の経路よりも、より迅速でより効果的な反応を提供し得る。
【0079】
局所製剤は当業者に周知である。そのような製剤は、本発明の皮膚への適用に関し、特に適切である。
【0080】
経口投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、又はオレンジジュースなどの希釈剤に溶解した有効量の本発明のTCRマテリアル等の液体溶液;(b)それぞれ所定量の有効成分を固形物又は顆粒として含有する、カプセル、サシェ(sachet)、錠剤、ドロップ剤、及びトローチ;(c)粉末;(d)適当な液体中の懸濁液;並びに(e)適切な乳濁液からなり得る。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤を添加した又は無添加のいずれかである、水及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール)等の希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、潤滑剤、並びに例えば乳糖、スクロース、リン酸カルシウム、及びコーンスターチなどの不活性賦形剤、を含む通常のハード又はソフト殻ゼラチン型であり得る。錠剤形態は、1以上の乳糖、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香料、並びにその他の医薬上許容される賦形剤を含み得る。ドロップ剤形態は、香味料(通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント)中の本発明のTCRマテリアル、並びに当該技術分野において公知である賦形剤を含むことに加え、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア、乳濁液、ゲル等の不活性な基剤中に本発明のTCRマテリアルを含むトローチを包含し得る。
【0081】
本発明のTCRマテリアルは、単独で又は他の適切な構成成分との組み合わせで、吸入を介して投与するためにエアロゾル製剤で製造し得る。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧した許容される推進剤中に含めることができる。それらは、噴霧器又は霧吹き等の非加圧製剤の医薬としても処方し得る。そのようなスプレー製剤も粘膜に噴霧するのに使用し得る。
【0082】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の、等張で無菌の注入溶液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る、水性及び非水性の無菌の懸濁液を含有する。本発明のTCRマテリアルは、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、アルコール(エタノール若しくはヘキサデシルアルコール等)、グリコール(プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール等)、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール等)、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又は医薬上許容される界面活性剤(石鹸若しくは洗剤等)を添加した若しくは無添加のアセチル化脂肪酸グリセリド、懸濁剤(ペクチン等)、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、若しくはカルボキシメチルセルロース、又は乳化剤及びその他の医薬アジュバントを含む、無菌の液体又は液体混合物等の医薬担体中の生理学的に許容される希釈剤中において、投与し得る。
【0083】
非経口製剤中に使用しうるオイルは、石油、動物油、植物油、又は合成油を含む。オイルの具体例として、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン、及び鉱油が挙げられる。非経口製剤における使用に適した脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸を含む。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0084】
非経口製剤における使用に適した石鹸は、脂肪族アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩を含み、適切な洗剤は、(a)例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、及びアルキルピリジニウムハロゲン化物等のカチオン洗剤、(b)例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホン酸、アルキル、オルフェン、エーテル及びモノグリセリド硫酸、及びスルホサクシネート等のアニオン洗剤、(c)例えば、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体等の非イオン性洗剤、(d)例えば、アルキル−β−アミノプロピオン酸、及び2−アルキル−イミダゾリン第4級アンモニウム塩等の両性洗剤、並びに(e)これらの混合物、を含む。
【0085】
該非経口製剤は、通常、約0.5重量%〜約25重量%の本発明のTCRマテリアルを溶液中に含むであろう。防腐剤及び緩衝剤が使用され得る。注入部位での刺激を最小化する又は除くために、そのような組成物は、約12〜約17からの親水性・親油性バランス(HLB)を有する、1以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。そのような製剤における界面活性剤の量は、通常、約5重量%〜約15重量%の範囲であろう。適切な界面活性剤は、プロピレングリコールを用いたプロピレンオキシドの縮合により形成される、ソルビタンオレイン酸モノエステル及び疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物等のポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルを含む。該非経口製剤は、アンプル及びバイアル等の、単位用量又は複数回用量の密封した容器中に提供され得、使用前すぐに注入のために、例えば水などの無菌の液体賦形剤の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)で保存することができる。即時注入溶液及び懸濁液は、前述の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤等から調製することができる。
【0086】
注入可能な製剤は本発明に従う。注入可能な組成物のための有効な医薬担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、 及びASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622-630 (1986)を参照されたい)。好ましくは、例えばT細胞などの細胞を投与する場合は、該細胞は注入を介して投与される。
【0087】
上記の医薬組成物に加え、本発明のTCRマテリアルは、シクロデキストリン包接錯体等の包接錯体、又はリポソームとして処方し得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0088】
本発明の目的のためには、投与される本発明のTCRマテリアルの量又は用量は、合理的なタイムフレームに渡って被検対象又は動物において、例えば治療又は予防反応などの、効果を発揮するのに十分であろう。例えば、本発明のTCRマテリアルの用量は、癌抗原に結合するのに、又は投与の時から約2時間若しくはより長い時間(例えば、12〜24若しくはより長時間)、癌を検出し、治療し、又は予防するのに十分であろう。特定の実施形態において、前記期間はさらに長い可能性がある。該用量は、特定の本発明のTCRマテリアルの有効性及び動物(例えばヒト)の状態、並びに治療する動物(例えばヒト)の体重により決定されるであろう。
【0089】
投与した用量を決定するための多くのアッセイが当該技術分野において公知である。本発明の目的のためには、それぞれ異なる用量のT細胞を投与した一連の哺乳動物の間で、所定用量の当該T細胞の哺乳動物への投与の際に、標的細胞が溶解した度合い、又は本発明のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質を発現しているT細胞によりIFN−γが分泌された度合いを比較することを含む、アッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際の、標的細胞が溶解した度合い、又はIFN−γが分泌された度合いは、当該技術分野において公知の方法によりアッセイすることができる。
【0090】
本発明のTCRマテリアルの用量は、特定の本発明のTCRマテリアルの投与に付随して生じ得る、任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定されるであろう。通常、担当医が、年齢、体重、一般的健康状態、食事、性別、投与する本発明のTCRマテリアル、投与経路、及び治療している病気の重篤度等の様々な要因を考慮しつつ、それぞれ個別の患者を治療するのに用いる本発明のTCRマテリアルの用量を決定するであろう。本発明を限定することを意図しない例示目的で、本発明のTCRマテリアルの用量は、約0.001〜約1000mg/kg治療する被検対象の体重/日、約0.01〜約10mg/kg体重/日、約0.01mg〜約1mg/kg体重/日であり得る。
【0091】
当業者は、本発明のTCRマテリアルが、修飾を介して本発明のTCRマテリアルの治療又は予防効果が増大するように、あらゆる方法で修飾され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCRマテリアルは、直接的又はブリッジを介して間接的のいずれかにより、標的成分に結合し得る。化合物(例えば、本発明のTCRマテリアル)を標的成分へ結合することの実施は、当該技術分野において公知である。例えば、Wadwaら, J. Drug Targeting 3: 111 (1995)及び米国特許第5,087,616号を参照されたい。本明細書で使用される場合、用語「標的成分」は、該標的成分が本発明のTCRマテリアルの送達を、表面上に受容体を発現する細胞の集団に対して向けるように、細胞表面受容体を特異的に認識し結合するいかなる分子又は剤をもいう。標的成分は、抗体若しくはその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び細胞表面受容体(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来成長因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)等)に結合する、いかなる他の天然若しくは非天然のリガンドをも含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「ブリッジ」は、本発明のTCRマテリアルを標的成分へ連結する、いかなる剤又は分子をもいう。当業者は、本発明のTCRマテリアルの機能に必要ではない本発明のTCRマテリアルの部位が、ブリッジ及び/又は標的成分が本発明のTCRマテリアルへ付着した際に本発明のTCRマテリアルの機能(即ち、SSX−2へ結合する性能;SSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上を認識する;又は癌を検出、治療、または予防する)を妨害しないような、ブリッジ及び/又は標的成分を付着するための理想的な部位であることを認識する。
【0092】
或いは、本発明のTCRマテリアルがそれを投与した体へ放出される方法が、体内における時期及び場所に関して制御されるように、本発明のTCRマテリアルはデポー形態へと修飾され得る(例えば、米国特許第4,450,150号を参照されたい)。本発明のTCRマテリアルのデポー形態は、例えば、本発明のTCRマテリアル、及び多孔性又は非多孔性マテリアル(ポリマー等)を含む、植え込み型組成物であり得、該本発明のTCRマテリアルは、該マテリアル及び/若しくは非多孔性マテリアルの分解により封入される又は全体に拡散する。該デポーは、次いで、体内の所望の場所へ植え込まれ、本発明のTCRマテリアルが所定の割合で該植込物から放出される。
【0093】
本発明の実施形態において、該医薬組成物は5-アザ-2'-デオキシシチジン(DAC)をさらに含む。特定の理論に縛られることなく、脱メチル化剤DACは、癌細胞によるSSX−2の発現を上方制御することにより、任意の本発明のTCRマテリアルによる癌細胞の認識を亢進すると考えられる。
【0094】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、抗体、ホスト細胞、又は細胞集団が、癌を治療する又は予防する方法に使用され得ると考えられる。特定の理論に縛られることなく、本発明のTCRは、該TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)が、細胞により発現された場合、SSX−2を発現する細胞に対して免疫反応を媒介することができ、及びSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上に対しても免疫反応を媒介し得るように、SSX−2に特異的に結合すると考えられ、及びSSX−3、SSX−4、SSX−5、SSX−9、及びSSX−10のいずれか1以上をも認識し得る。この点に関し、本発明は、本明細書に記載の任意の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質、本明細書に記載の任意のTCR、ポリペプチド、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、本明細書に記載の任意の抗体、又は本明細書に記載の任意のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードする組換えベクターを含む任意のホスト細胞若しくは細胞集団を、ホストにおいて癌を治療又は予防するのに有効な量でホストに投与することを含む、ホストにおける癌を治療又は予防する方法を提供する。
【0095】
本発明の実施形態において、ホストにおける癌を治療又は予防する方法は、DACをホストに投与することをさらに含む。該方法は、任意の本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞、又は細胞集団をホストに投与する前に、同時に、又は後にDACを投与することを含み得る。特定の理論に縛られることなく、脱メチル化剤DACは、癌細胞によるSSX−2の発現を上方制御することによって、任意の本発明のTCRマテリアルによる癌細胞の認識を亢進すると考えられる。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」及び「予防する」並びにこれらに由来する単語は、必ずしも100%又は完全な治療又は予防を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有するものとして認識する、様々な程度の治療又は防止が存在する。この点に関し、本発明の方法は、哺乳動物における癌の、いかなる量のいかなるレベルでの治療又は予防をも提供し得る。さらに、本発明の方法により提供される治療又は予防は、治療又は予防している疾患(例えば、癌)の1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。本明細書の目的のためには、「予防」は、疾患又はその症状若しくは状態の発症を遅らせることをも包含し得る。
【0097】
また、ホストにおける癌の存在を検出する方法が提供される。該方法は、(i)癌細胞を含むサンプルを、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部位のいずれかに接触させ、それによって複合体を形成させること、及び該複合体を検出することを含み、該複合体の検出はホストにおける癌の存在の指標となる。
【0098】
ホストにおける癌を検出する本発明の方法に関して、癌細胞のサンプルは、細胞全体、その溶解物、又は細胞全体の溶解物のフラクション(例えば、核若しくは細胞質フラクション、全タンパク質フラクション、又は核酸フラクション)を含むサンプルであり得る。
【0099】
本発明の検出方法の目的のためには、該接触工程は、ホストについてin vitro又はin vivoで行うことができる。好ましくは、該接触はin vitroである。
【0100】
また、該複合体の検出は、当該技術分野において公知のいかなる方法を介しても起き得る。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部位は、例えば、ラジオアイソトープ、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及びエレメント粒子(例えば、金粒子)等の、検出可能な標識を用いて標識することができる。
【0101】
ホスト細胞又は細胞集団を投与する、本発明の方法の目的のためには、該細胞はホストに対し同種異系の又は自己の細胞であり得る。好ましくは、該細胞はホストの自己のものである。
【0102】
本発明の方法に関し、癌は、肉腫(例えば、滑膜肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫子宮、及び胞巣型横紋筋肉腫)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫、及び非ホジキンリンパ腫)、肝細胞癌、神経膠腫、頭頸部癌、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管、若しくは肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢、若しくは胸膜の癌、鼻、鼻腔、若しくは中耳の癌、口腔癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、大腸癌(例えば、結腸癌)、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、下咽頭癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網、腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、小腸癌、軟部組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、並びに膀胱癌の任意のものを含むいかなる癌でもあり得る。これらの内、肉腫(例えば、滑膜肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫子宮、及び胞巣型横紋筋肉腫)、肝細胞癌、神経膠腫、肝臓癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、及び前立腺癌が好ましく治療される。
【0103】
本発明の実施形態は、ホストにおける癌の治療又は予防のために、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、ホスト細胞、細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部位のいずれか、又は医薬組成物の使用を提供する。実施形態において、該使用は、DACの使用をさらに含み得る。
【0104】
本発明の方法において参照するホストは、いかなるホストでもあり得る。好ましくは、該ホストは哺乳動物である。本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、マウス及びハムスター等の齧歯目の哺乳動物、及びラビット等のウサギ目(Logomorpha)の哺乳動物を含むが、これらに限定されない、いかなる哺乳動物をもいう。該哺乳動物は、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む食肉目からの動物であることが好ましい。該哺乳動物は、ウシ亜科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含む偶蹄目からの動物、又はウマ科(ウマ)を含む奇蹄目(Perssodactyla)の動物であることがより好ましい。該哺乳動物は霊長目、Ceboid、若しくはSimoid(サル)、又は類人猿(ヒト及び類人猿)であるのが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0105】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、決して本発明の範囲を限定していると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0106】
実施例1
本実施例は、SSX−2を発現するためのレトロウイルスベクターの作製を説明し、特定の細胞株におけるSSX−2の発現を示す。
【0107】
SSX−2遺伝子を発現ベクターpMSGV1及びpRRLSIN.cPPT.PGKへ挿入した。挿入したSSX−2の配列は:ATGaacggagacgacgcctttgcaaggagacccacggttggtgctcaaataccagagaagatccaaaaggccttcgatgatattgccaaatacttctctaaggaagagtgggaaaagatgaaagcctcggagaaaatcttctatgtgtatatgaagagaaagtatgaggctatgactaaactaggtttcaaggccaccctcccacctttcatgtgtaataaacgggccgaagacttccaggggaatgatttggataatgaccctaaccgtgggaatcaggttgaacgtcctcagatgactttcggcaggctccagggaatctccccgaagatcatgcccaagaagccagcagaggaaggaaatgattcggaggaagtgccagaagcatctggcccacaaaatgatgggaaagagctgtgccccccgggaaaaccaactacctctgagaagattcacgagagatctggaaatagggaggcccaagaaaaggaagagagacgcggaacagctcatcggtggagcagtcagaacacacacaacattggtcgattcagtttgtcaacttctatgggtgcagttcatggtacccccaaaacaattacacacaacagggacccaaaaggggggaacatgcctggacccacagactgcgtgagagaaaacagctggTGA(配列番号31)であった。該pRRLSINベクターには、WPRE(ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)も挿入した。
【0108】
SSX−2の発現は、624.38細胞、及び上記のSSX2ベクターで形質導入したCOS7−A2細胞でも、ウェスタンブロットにより観察された。H508、Panc2551、A549、若しくはOVCAR3細胞、又は形質導入していないCOS7−A2細胞においては、SSX−2の発現は観察されなかった。
SSX−2は938mel、U251、T567A、SKMEL23、及びSKMEL37細胞においても測定された。β−アクチンに対して基準化したSSX−2のコピー数を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
さらなるSSX−2発現の研究を、リアルタイムPCRを使用して行った。結果を表2に示す。
【0111】
【表2-1】
【0112】
【表2-2】
【0113】
【表2-3】
【0114】
実施例2
本実施例は、SSX−2特異的TCRを発現するためのレトロウイルスベクターの作製を説明する。
【0115】
天然のT細胞クローンからのHLA−A2制限TCRを、5’−RACEを使用して、SSX−2に対し血清陽性であるメラノーマ患者(該患者の腫瘍はSSX−2を発現する)の腫瘍浸潤性リンパ節(TILN)から単離した。
【0116】
該T細胞クローンは:TRAV14/DV4*01(細菌クローン陽性数21/23)及びTRBV15*02-CB1(細菌クローン陽性数23/23)、を示した。
【0117】
TCRα及びβ鎖を発現する、2a切断ペプチドを組み込んでいる、レトロウイルスベクターを作製した。α鎖及びβ鎖についての別々のPCR反応を行った。α鎖については、フォワードプライマーはNcoI制限酵素部位のATGを組み込んだ。リバースプライマーは、認識配列の前に組み込まれたフューリン−SGSG−P2aを有していた。β鎖のフォワードプライマーも認識配列の前にフューリン−SGSG−P2aを組み込んでおり、リバースプライマーは終止コドン及びNotI制限酵素部位を有していた。
【0118】
完了した際に、前記の別々のPCR反応物を混合し、さらなるPCRを外側のプライマーを用いて行い、α鎖(TRAV14)−リンカー−β鎖(TRBV15-CB1)コンストラクトを産生した。該コンストラクトは、抗SSX−2 TCRα及びβ鎖をコードする配列番号27を含んでいた。
【0119】
該コンストラクトを、NcoI及びNotI制限酵素部位を使用して、pMSGV1レトロウイルスベクターへクローン化した。
【0120】
実施例3
本実施例は、SSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、SSX−2ペプチド特異的反応性及びテトラマー結合を示すことを明らかにする。
【0121】
ヒトドナー由来PBLを、実施例2のSSX−2 TCRベクターで形質導入し、ペプチド反応及びテトラマー結合を試験した。
【0122】
テトラマー結合はCD4及びCD8細胞において観察された。
【0123】
SSX−2 TCR形質導入PBLを、様々な濃度のSSX−2:41〜49(KASEKIFYV)ペプチドでパルスした、2人のヒトドナーからのT2細胞と共培養した。
図1A及び1Bは、測定された結果的なインターフェロンγレベル(pg/ml)を示す。これらのデータは、SSX−2 TCR形質導入PBLが、0.01ng/ml又はそれ未満まで、SSX−2:41〜49ペプチドを認識することを示す。
図1Aと1B間の違いは、ドナーの変動性に起因している可能性がある。
【0124】
SSX−2 TCR形質導入PBLは、SSX−2遺伝子を発現するようにレトロウイルスで操作した実施例1の細胞とも共培養した。
図2は、SSX−2遺伝子を発現している293−A2及びCOS7−A2細胞、並びにSSX−2:41〜49ペプチドでパルスしたT2細胞と、該PBLを共培養した際の、測定された結果的なインターフェロンγレベル(pg/ml)を示す。SSX−2 TCRを形質導入してないPBLはこれらの細胞に対し反応を示さなかった。
【0125】
実施例4
本実施例は、実施例2のSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが腫瘍細胞株に対して反応性を示すことを明らかにする。
【0126】
SSX−2 TCR形質導入PBLを様々な腫瘍細胞株と共培養した。
図3は、測定された結果的なインターフェロンγレベル(pg/ml)を示す。これらのデータは、SSX−2 TCRで操作したT細胞が、メラノーマ(624及び1300)並びに神経膠芽腫細胞株(U251)の両方において、自然に処理され提示されたSSX−2タンパク質を認識したことを示す。SSX−2 TCRを形質導入していないPBL(UT)は、わずかな反応性を示す、又は全く反応性を示さなかった。
【0127】
図4A及び4B、
図11、並びに表3及び4は、実施例2のSSX−2 TCRで形質導入したヒトドナーからのPBLを、様々な腫瘍細胞と共培養した場合の、さらなる結果を示す。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
実施例5
本実施例は、SSX−2 TCRで操作したPBLが、他のSSXタンパク質ペプチドに対し反応性を示すことを明らかにする。
【0131】
共培養アッセイは、実施例2のSSX−2 TCRを形質導入したPBL及びペプチドでパルスしたT2細胞を用いて行った。
【0132】
図5は、SSX−2 TCRが、SSX−2のペプチドと最も反応し、また、他のSSXペプチドよりもSSX−3、−4、−5、−9、及び−10のペプチドを認識する(より強い認識はより高いペプチド濃度で見られるが)ことを示す。
【0133】
実施例6
本実施例は、コドン最適化及びマウス定常領域の導入が、ヒトPBLにおいてSSX−2 TCRの発現及び機能を改善したことを明らかにする。
【0134】
ヒトPBLを、配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)を含むベクターで、形質導入しなかった又は形質導入した。発現はFACS解析で測定した。平均蛍光強度は、配列番号27(SSX−2 TCR)で形質導入した細胞は656、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)で形質導入した細胞は910、及び配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)で形質導入した細胞は949であると計測された。
【0135】
その他の実験において、テトラマー結合の測定は、コドン最適化及びマウス定常領域の導入がヒトPBLにおけるSSX−2 TCRの発現を改善したことを確認した。
【0136】
その他の実験において、FACS解析は、活性化マーカーCD137(4−1BB)が、配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)で形質導入したヒトPBLと、COS−A2−SSX2細胞との共培養後に上方制御されたことも明らかにした。
【0137】
その他の実験は、COS−A2−SSX−2細胞との共培養後のCD107aの動員を測定することにより、SSX−2 TCRの機能を評価した。Day0で、PBLをOKT3で刺激した。Day2で、該PBLを本実施例に記載されているように形質導入した。Day15で、該PBLをCOS−A2細胞又はCOS−A2−SSX−2細胞と2時間共培養した。Day16で、CD107aの動員をFACS解析により測定した。コドン最適化及びマウス定常領域の導入が、COS−A2−SSX−2細胞との共培養後の、CD107aの動員による測定で、SSX−2 TCRの機能を改善したという結果が示された。
【0138】
SSX−2 TCRの機能は、COS−A2−SSX−2細胞又は938−A2 mel細胞との共培養後のIL−2及びIFN−γ産生によっても測定した。PBLはOKT3で刺激し、本実施例に記載のように形質導入した。Day10で、該PBLをCOS−A2細胞、COS−A2−SSX−2細胞、938−A2 mel細胞、又は938mel細胞と共培養した。Day11で、IL−2及びIFN−γ産生をFACS解析により測定した。コドン最適化及びマウス定常領域の導入が、COS−A2−SSX−2細胞及び938−A2 mel細胞との共培養後のIL−2及びIFN−γ産生による測定で、SSX−2 TCRの機能を改善したという結果が示された。
【0139】
実施例7
本実施例は、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はコドン最適化ヒト−マウスキメラSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、腫瘍細胞株に対して反応性を示すことを明らかにする。
【0140】
配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)を含むベクターで、形質導入していない(UT)又は形質導入したPBLを、様々な腫瘍細胞株と共培養した。表5及び6は、2人の異なるドナーからのPBLについて、測定された結果的なインターフェロン−γのレベル(pg/ml)を示す。これらのデータは、複数の腫瘍細胞株において、形質導入したT細胞が自然に処理され提示されたSSX−2タンパク質を認識したことを示す。SSX−2 TCRを形質導入していないPBL(UT)は、わずかな反応性を示す又は全く反応性を示さなかった。
【0141】
【表5】
【0142】
【表6】
【0143】
実施例8
本実施例は、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はコドン最適化ヒト−マウスキメラSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、SSX2+/HLA−A2+標的細胞との共培養の際に増殖することを明らかにする。
【0144】
配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)を含むベクターで形質導入していない(UT)又は形質導入した、ドナー1又はドナー2からのPBLを、COS−A2−SSX−2細胞と共培養した。[
3H]−チミジンの取込み(CPM)に関しての増殖を測定し、
図6A(ドナー1)及び6B(ドナー2)に示す。これらのデータは、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はマウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCRを形質導入したPBLが、COS−A2−SSX−2細胞との共培養に反応して増殖することを示す。
【0145】
その他の実験において、本実施例に記載されるように形質導入したPBLを、1300 mel細胞、624 mel細胞、888 mel細胞、SK mel 37細胞、又はCOS−A2−SSX−2細胞と共培養した。[
3H]−チミジンの1分当りの取込みカウント(CPM)に関しての増殖を測定し、
図9A〜9Eに示す。これらのデータは、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はマウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCRで形質導入したPBLが、SSX2+/HLA−A2+標的細胞との共培養に反応して増殖することを示す。
【0146】
実施例9
本実施例は、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はコドン最適化ヒト−マウスキメラSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、SSX−2
+/HLA−A2
+標的細胞に対して特異的溶解活性を示すことを明らかにする。
【0147】
配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)を含むベクターで形質導入していない(UT)又は形質導入したPBLを、標的細胞、938 mel(HLA−A2−/SSX−2+)、COS−A2、938−A2 mel、COS−A2−SSX−2、624 mel、1300 mel、SK mel 37、又は888 melと、
図7A〜D及び
図8A〜Dに記載のエフェクター対標的比で共培養した。標的細胞の溶解パーセントを測定し、
図7A〜D及び
図8A〜Dに示す。形質導入していない細胞は、わずかな反応性〜反応性無し、を示した。これらのデータは、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はコドン最適化ヒト−マウスキメラSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、SSX−2
+/HLA−A2
+標的細胞に対して特異的溶解活性を示すことを明らかにする。
【0148】
実施例10
本実施例は、SSX−2 TCR、コドン最適化SSX−2 TCR、又はコドン最適化ヒト−マウスキメラSSX−2 TCRを用いて操作したPBLが、ペプチドパルスしたT2細胞と共培養した際にサイトカインを分泌することを明らかにする。
【0149】
配列番号27(SSX−2 TCR)、配列番号29(コドン最適化SSX−2 TCR)、又は配列番号30(マウス定常領域を含むコドン最適化SSX−2 TCR)を含むベクターで形質導入していない(UT)又は形質導入したPBLを、SSX−2でパルスした、様々な濃度のSSX−2:41〜49(KASEKIFYV)(配列番号1)ペプチドでパルスした、T2細胞と共培養した。
図10は、測定された結果的なインターフェロンγのレベル(pg/ml)を示す。これらのデータは、SSX−2 TCRを形質導入されたPBLがSSX−2:41〜49ペプチドを認識することを示す。
【0150】
実施例11
本実施例は、脱メチル化剤、5−アザ−2’−デオキシシチジン(DAC)、がSSX2−TCRで操作したPBLによるmel1300細胞の認識を亢進することを明らかにする。
【0151】
3人のドナーからのSSX−2 TCRを形質導入したPBLを、DAC無し、又は0.1μM若しくは1.0μM DACと共に、mel1300細胞と共培養した。
図12は、測定された結果的なインターフェロン−γのレベル(pg/ml)を示す。これらのデータは、DACが、SSX2−TCRで操作されたPBLによるmel1300細胞の認識を亢進することを示す。
【0152】
本明細書に引用される、刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照は、それぞれの参照が個別に具体的に示され、参照により組み込まれ、及びその全体が本明細書中に記載されたのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
本発明を記述することに関して(特に以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中で指示がない場合又は明らかに文脈と矛盾する場合を除き、単数及び複数の両方を対象とすると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特に指示の無い場合は、制約のない用語として解釈されるべきである(即ち、「を含むが、これに限定されるものではない」ということを意味する)。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に特記のない限り、この範囲内に入る各個別の値を個々に言及する、簡単な方法としての役割を単に意図したものであり、各個別の値はそれが個々に本明細書に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記のない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中に提供される任意の全ての例、又は例示的語句(例えば、「等(such as)」)の使用は、本発明をより明確に説明することを単に意図するにすぎず、別途特許請求されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0154】
本発明を実施するための本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、上記要素の全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に特記のない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。