【実施例】
【0095】
実施例1 骨髄線維症におけるTG101348の評価
本明細書で使用される「TG101348」は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物を指す。この研究における被験者は、実施例5に記載されるようなTG101348のカプセル剤形態で投与された。TG101348を骨髄線維症の処置についての第I相試験において評価した。この研究はデータを収集した時点で継続していた。
【0096】
背景:TG101348は有効で、経口で生物が利用可能な、JAK2選択的小分子阻害剤であり、これを骨髄線維症の処置について第I相試験において評価した。用量制限毒性は、可逆性である無症候性のグレード3又は4のアミラーゼ血症(amylasemia)/リパーゼ血症(lipasemia)であり、そして最大許容投与量(「MTD」)は680mgであった。最も頻繁な非血液学的毒性は、容易に管理されるか又は自発的に消散された軽度の悪心、嘔吐、及び/又は下痢であった。グレード3/4の好中球減少及び血小板減少が、それぞれ患者の14%及び25%で観察された。TG101348は脾臓サイズ、白血球数、及びJAK2V617F(「VF」)対立遺伝子比率の減少において活性を有していた。この実施例は、680mg/日の用量で処置を開始した用量確認コホートからのデータに焦点を絞った結果を記載する。
【0097】
結果:59人の患者(年齢中央値=66歳;範囲43〜86)を処置した?28人は用量段階的増大相であり、そして31人は用量確認相であった。全体で、44人の患者がPMFを有しており、12人はPV後MFであり、そして3人はET後MFであり;86%はVF陽性であった。触知可能脾臓サイズ中央値は18cmであり、そして22人の患者は研究登録時に赤血球(「RBC」)輸血が必要であった。中央値12週(範囲<1−76)の経過観察の後、18人(31%)の患者は、毒性(n=7;血小板減少=3、好中球減少=1)、共存症(n=5)、同意の撤回(n=4)、又は服薬不履行/反応の欠如(それぞれ1)に起因して処置を中止した。残りの41人の患者は、この実施例におけるデータを収集したときに以下の用量レベルであった:680mg(n=14)、520〜600mg(n=16)、360〜440mg(n=10)、及び240mg(n=1)。この実施例においてデータ収集したときの時間に対する累積薬物曝露は、362患者−月であり;MTD又はそれ以上の曝露(≧680mg)は154患者−月であった。40人の患者(68%)は処置を≧680mgで開始した。
【0098】
毒性:TG101348は十分に許容的であった。≧680mgで開始した患者のうち、グレード3/4の好中球減少は15/0%で観察され、そしてグレード3/4の血小板減少は20/10%で観察された。24人(60%)の患者は、ベースラインでRBC輸血を必要とせず(ヘモグロビン中央値(「Hgb」)=9.6g/dL;範囲7.4−13.1);これらのうち、患者の42%及び8%がグレード3(「Gr3」)及びグレード4(「Gr4」)の貧血をそれぞれ発症した。≧680mgで開始した患者の大部分は軽度の悪心(1 Gr3)、嘔吐(1 Gr3)、及び/又は下痢(3 Gr3)を発症し、これらは自己限定性であるか容易に管理された。他の非血液学的毒性は、グレード1/2(「Gr1/2」)高トランスアミナーゼ血症(38%)、Gr1/2血清クレアチニン上昇(38%)、及び無症候性高リパーゼ血症(33%)を含んでいた。
【0099】
有効性:≧680mgで開始した33人の患者が、少なくとも3サイクルの処置を完了し;3ヶ月目に、触知可能な脾臓サイズの減少(ベースライン中央値=18cms;範囲6−32)は22人(67%)の患者において少なくとも50%であった;9人(27%)の患者において脾臓は触知できなくなった。≧680mgで開始したベースラインで白血球増加(WBC範囲11〜203x10
9/L)を有する全ての21人の患者は、それらのWBC数の顕著な減少を経験し(範囲4〜90);70%がかれらの最後の経過観察来診時に正常WBC数を有していた。全体としては、51人のVF陽性患者のうち48人は少なくとも1サイクルを完了し、そしてVF対立遺伝子比率について評価可能であり;最後の利用可能な経過観察時には、顆粒球変異体対立遺伝子比率の減少中央値は48%であり;21人(44%)の患者は≧50%の減少を有し、そして≧680mgで処置を開始したグループでは、48%が≧50%の減少を有していた。評価可能な者のうち、臨床的に優位な利益、又は早期満腹、疲労、咳、かゆみ、及び寝汗を含む全身症状の消散があった。
【0100】
結論:TG101348は、骨髄線維症を有する患者において十分許容的であった。脾臓及び白血球の反応は高頻度であり、早期に観察され、そして患者にとっての実質的な臨床的利益をもたらした。これらの反応はVF対立遺伝子比率の有意な減少と関連しており、骨髄線維症における悪性クローンに対するTG101348の活性を指し示していた。
【0101】
実施例2 骨髄線維症におけるTG101348の評価
この研究における被験者に、カプセル剤形態のTG101348を投与した。TG101348を骨髄線維症の処置について第I相研究において評価した。この研究は実施例1にも記載される。この実施例は、データ収集の時点で利用可能なデータを記載する。
【0102】
この研究は、MTDでの広範なコホート用量確認を用いる非盲検、多施設、かつ用量段階的増大の研究であった。この研究の主目的は、MFを有する被験者におけるTG101348の安全性/許容性、DLT、MTD、及び薬物動態を決定することであった。この研究の第二の目的は、予備臨床的及び薬力学的な活性を評価することであった。
【0103】
被験者についての鍵となる適格基準は:骨髄線維症(PMF又はPV/ET後MF);症候性巨脾腫/利用可能な治療に対する不反応性を伴う高リスク又は中程度リスク; ECOGパフォーマンスステータス≦2;ANC≧1x10
9/L;血小板数≧50x10
9/L;血清クレアチニン≦2mg/dL;総ビリルビン≦2mg/dL;AST/ALT≦3X正常上限を含んでいた。
【0104】
この研究についての被験者の性質が表1に含まれる。
【表2】
【0105】
被験者についての人口学的及びベースライン特性を表2に含める。
【表3】
【0106】
この研究は、MTDでの広範なコホート用量確認を用いる用量段階的増大研究であった。680mg/日の用量で処置を開始した用量確認コホートに焦点を絞ったデータを以下に記載する。
【0107】
TG101348 680mg/日(開始用量)で処置された被験者(N=37)についてのサイクルごとの触知可能脾臓の減少を
図1に示す。ベースライン脾臓サイズは:中央値=18cm;範囲=6−32cmであった。被験者の49%は、触知可能巨脾腫の減少(IWG反応)に基づく臨床的改善を達成した(12週までに被験者の56%;20週までに被験者の100%)。データ収集の時点では再発も疾患進行もなかった。
【0108】
白血球増加に対するTG101348の効果を
図2に示す。ベースラインWBC数は>11x10
9/Lであった。被験者の73%はそれらの経過観察来診時に正常WBC数を有していた。血小板増加症に対するTG101348の効果は
図3に示される(ベースライン血小板数>450x10
9/L)。TG101348は血小板数を減少させることができる。全身症状に対するTG101348の効果(ベースライン対最後の来診時)を
図4に示す。TG101348はMF関連全身症状を改善することができる。TG101348はサイトカインレベルに対する有意な変化を有していなかった(
図5を参照のこと、示される全ての値は中央値である)。
図6は、ベースライン>20%の被験者(N=22)におけるV617F対立遺伝子比率に対するTG101348の効果を示す。
図6は、TG101348がベースライン>20%の被験者のうち59%においてJAK2 V617F対立遺伝子比率を減少させることができたということを示す。
【0109】
図7は、V617F陰性PMFを有する76歳男性における骨髄細胞性に対するTG101348の効果を示す。開始用量は30mg/日であり、そして経過観察時の用量は520mg/日であった。
図7は、TG101348がこの被験者における骨髄細胞性を、ベースラインで60%の骨髄細胞性から18サイクル後に5−10%の骨髄細胞性まで減少させることができたということを示す。
図8は、V617F陰性PMFを有する56歳男性における骨髄線維増多に対するTG101348の効果を示す。開始用量は240mg/日であり、そして経過観察時の用量は440mg/日であった。
図8はTG101348がこの被験者において骨髄線維増多をベースラインで3+から18サイクル後に0まで減少させることができたということを示す。
【0110】
MTD被験者(N=40)における治療下で発現したグレード3及び4の血液学的毒性を表3に示す。MTD被験者(N=40)における治療下で発現した非血液学的有害事象(少なくとも5被験者について報告される)を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
MTD被験者(N=40)におけるグレード≧2の治療下で発現した非血液学的検査室所見を表5に示す。
【表6】
【0114】
図9は、JAK2V617F陽性PMFを有する被験者における、TG101348 680mg/日で開始した様々な測定を示す。TG101348は、触知可能な脾臓サイズを9から0cmまで減少させ、そしてこの被験者においてかゆみを完全に消散させた。
【0115】
結論:TG101348は、特により高い用量で、管理可能なグレード1の胃腸効果を有し、一般的には十分に許容的であった。データは長期の毒性を示さなかった。期待された的確な(on−target)骨髄抑制効果は、大部分は赤血球生成に限定されるようであり、これはより低いがなお有効である用量に減衰され得る。TG101348は、MF関連巨脾腫において優れた活性を有し;約3分の2は触知可能な巨脾腫において≧50%の減少を有し;約30%は完全に消散した。TG101348は有意な抗骨髄増殖活性を有しており、実質的にすべての処置された被験者は、白血球増加及び血小板増加の完全な消散を経験した。TG101348は、MF関連全身症状、かゆみ及び悪液質に対して優れた活性を有していた。TG101348は、処置された被験者のうち相当な比率でJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少を生じた。TG101348は炎症促進性サイトカインの血清レベルに対して最小の効果を有し;これは研究薬中止の際に即時の有害なサイトカインリバウンド現象が無かったことと一致する。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、TG101348の活性は、そのJAK2阻害活性の直接の結果であり、非特異的な抗サイトカイン活性からの間接的な影響ではないように思われる。さらに、予備的な観察は、延長された処置に伴いBM細胞性及びレチクリン繊維増多における減少を示した。
【0116】
実施例3 骨髄線維症におけるTG101348の評価
この研究における被験者には、カプセル剤形態のTG101348を投与した。
【0117】
研究設計: この研究は第1相、用量段階的増大試験(MF−TG101348−001)を構成した。この研究は実施例1及び2にも記載される。研究適格患者は、≧18歳の年齢で高リスク又は中程度のリスクの原発性骨髄線維症(PMF)、PV後MF、又はET後MFを有していた(Tefferi A et al.、Leukemia 22:14−22、2008)。さらなる適格性基準及び参加施設を表6に列挙する。全ての患者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。主要評価項目は、TG101348の安全性及び許容性、用量制限毒性(「DLT」)、最大許容用量(「MTD」)及び薬物動態(「PK」)挙動の決定であった。副次的評価項目は、治療活性の評価であった。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
標準的な3+3コホートデザインを使用して、1日あたり30〜800mgの範囲に及ぶ8つの用量コホートのうちの1つに患者を割り当てた。24週(6x28日間サイクル)間の連続的な毎日の治療のための処置計画を用いて、TG101348を1日に1回経口投与した。被験者内用量段階的的増加を、開始用量での少なくとも3サイクルの処置完了後に許可した。DLTが確認されると、用量確認コホートはMTDで処置を開始した。患者にとって有益であると判断され、かつ十分に許容される場合に、6サイクルを超える処置が延長研究の際に許可された(MF−TG101348−002;NCT00724334)。
【0121】
毒性及び反応性の評価:安全性評価を、サイクル1の間は毎週、サイクル2及び3の間は1週おきに、そしてその後は4週ごとに行った。国立癌研究所有害事象共通用語規準(NCI−CTCAE)バージョン3.0に従って毒性を等級分けした。
【0122】
MPN研究と治療のためのインターナショナルワーキンググループ(IWG−MRT)の基準(Tefferi A et al.、Blood 108:1497−1503、2006)に従って4週ごとに反応性を測定した。骨髄組織学の評価を、24週の治療ごとにベースラインで行った。末梢血の顆粒球画分におけるJAK2V617F対立遺伝子比率の変化を以前に記載されたように測定した(Kittur J et al.、Cancer 109:2279−2284、2007);これらの評価は、最初の6サイクルでは4週ごとにベースラインで、そして延長研究では治療の6番目のサイクルごとであった。
【0123】
薬物動態:血漿中のTG101348の濃度−時間曲線を非コンパートメント解析により(WinNonlin
(R)ソフトウエア、バージョン5.2)評価した。
【0124】
サイトカイン評価:サイトカイン測定のためのサンプルをベースラインで集め、そしてその後4週ごとに集めた。サイトカインレベルを多重サンドイッチELISA(Millipore、St. Charles、MO)を使用して測定した。
【0125】
結果
患者の登録:合計59人の被験者を登録した;用量段階的増大相に28人及び用量確認相に31人(表7)。44人の被験者はPMFを有しており、12人はPV後MF、そして3人はET後MFを有し;86%がJAK2V617F陽性であった。疾患の期間中央値は3.4年(範囲0.06〜25.8)であった。研究登録時に、触知可能脾臓サイズ中央値は左肋下縁の18cm下であり(83%が>10cmの触知可能脾臓サイズを有していた)、ヘモグロビンレベル中央値は9.2g/dLであり(範囲6.6〜15.2)、そして21人(36%)の被験者はIWG−MRT基準により赤血球輸液依存性であった。
【0126】
【表9】
【0127】
用量段階的増大相において、TG101348の開始用量は30mg/日であり、その後の用量レベルは60、120、240、360、520、680及び800mg/日であった(表7)。800mg/日において、6人のうち2人の患者はDLTを経験し;結果として、MTDを680mg/日に指定した。用量確認相において、すべての患者は処置をMTDで開始した。「MTDコホート」(n=40;表7)は、彼らの開始用量として680mg/日を投与された患者(用量段階的増大コホート、n=3;用量確認コホート、n=31)、及び薬物用量を800mg/日(n=6)からMTDが指定された後に680mg/日に減少させた患者を含んでいた。
【0128】
全体(n=59)及びMTD(n=40)コホートについてのTG101348に対する曝露中央値(範囲)は、それぞれ155(2−172)及び147(8−171)日であった。用量コホートごとの各サイクルの最後の時点のTG101348用量を
図10及び11に示す。MTDコホートにおいて、28人の被験者(70%)が最初の6サイクルの間に用量減少を必要とした;主な理由は:血球減少(20%)、胃腸有害事象(12.5%)、アミラーゼ/リパーゼ上昇(10%)、ALT上昇(7.5%)、治験責任医師の裁量(7.5%)、又はその他の有害事象(12.5%)であった。MTDコホートについての用量減少時のサイクル中央値はサイクル3(範囲1−7)であった;サイクル3の最後の時点の用量中央値(範囲)は680mg/日(360−680mg/日)であり;そしてサイクル6の最後の時点で520mg/日(360−680mg/日)であった。
【0129】
MTDコホートからの28人(70%)を含む43人(73%)の被験者は延長研究で処置を継続した;延長研究への登録時に、31人(72%)の被験者は<680mg/日の薬物(中央値520mg/日;範囲120−680mg/日)を投与されていた。データ中断時、43人の被験者についてTG101348への累積曝露中央値(範囲)は380日(170−767)であった。完了した処置サイクル数は7〜29の範囲に及び;MTDコホートからの27人(68%)を含む39人の被験者(66%)は12処置サイクルを完了した。データ中断時、延長研究に参加した被験者の28%及び14%は、それぞれ18及び24処置サイクルを完了した。延長相の間の処置用量中央値(範囲)は440mg/日(120〜680mg/日)であった。
【0130】
薬物動態:TG101348のピーク血漿濃度は投薬の1〜4時間後に達成された。TG101348は、血漿PKパラメーター(C
max及びAUC
0-t)において用量に比例した増加よりも多い増加を示した(表8及び
図12)。平均定常状態C
max及びAUC
0-t値は、用量の27倍増加を超えてそれぞれ約54倍及び88倍増加した。定常状態における最終相半減期は、すべての用量にわって同様のままであり(16〜34時間)、線形薬物消失と一致していた。
図18は、1日に1回の経口投薬後(サイクル1;28日目)の線形プロットでの時間に対する平均血漿TG101348濃度のプロットを示す。この図は、時間とともにTG101348の血漿濃度と関連してTG101348のIC50値、IC90値、及び3倍IC90値(3xIC90)を示す。520mg/日の用量は、この用量が投与された後少なくとも24時間の間にわたって3xIC90を超えるTG101348血漿濃度を示した。360mg/日の用量は、3xIC90を超えるCmax、及びその用量が投与された後少なくとも24時間の間IC90を超えるTG101348の血漿濃度を示した。
【0131】
【表10】
【0132】
安全性プロフィール:800mg/日で処置された6人の患者のうち2人におけるDLTは、可逆性である無症候性グレード3又は4の高アミラーゼ血症(高リパーゼ血症を伴うか又は伴わない)であった。少なくともTG101348に関連する可能性のある最も一般的な非血液学的有害事象は、主にグレード1の悪心、下痢及び嘔吐を含んでおり;グレード3の事象は全体/MTDコホートにおいて被験者のそれぞれ3%/5%、10%/13%、及び3%/3%について報告され、そしてグレード4の事象はなかった(表9)。これらの有害事象は用量依存性であり、観察されたグレード3の発生はほとんど≧680mg/日のTG101348開始用量に伴うもののみだった。胃腸症状は大部分が自己限定的であるか、又は対症療法及び/若しくは用量減少により管理された。他の有害事象(グレード3/4;全体/MTDコホート)は、血清リパーゼ(10%/15%)、AST(2%/3%)、ALT(7%/8%)、クレアチニン(0%/0%)及びアルカリホスファターゼ(0%/0%)の無症候性増加を含んでいた(表9)。
【0133】
【表11】
【0134】
TG101348に関連していると考えられるグレード3/4血液学的有害事象は、貧血(ベースラインで輸血依存性でなかった37人の被験者の35%)、血小板減少(24%)及び/又は好中球減少(10%)を含んでいた(表10)。治療下で発現した血球減少の大部分は処置の最初の3サイクルにおいて見られた。グレード3/4の貧血を発症した13人の被験者(全てMTDコホート)のうち、67%はグレード2の貧血で研究に登録していた。輸液必要性の発生は、680mg/日(72%)で処置を開始した被験者とは対照的に、240〜520mg/日で処置を開始した被験者について有意に低かった(33%)。グレード3/4の血小板減少を有する14人の被験者のうち、4人及び5人の
被験者は、それぞれグレード1及び2の血小板減少で研究に登録された。
【0135】
【表12】
【0136】
データ中断時、治療6サイクルを超えてTG101348を継続投与することに伴って現れた固有の安全性知見はなかった。
【0137】
少なくともTG101348に関連すると考えられる重篤な有害事象は8人の被験者において発生し、そしてこれには無症候性高リパーゼ血症、血小板減少/好中球減少、抑うつ、腫瘍崩壊症候群、脳血管障害、及び脱水が含まれた(表11)。一人の被験者はグレード4の血小板減少のために処置を中止し;他の全ての事象は可逆性であり、そして被験者は有害事象の消散後により低い用量で処置を再開することができた。
【0138】
【表13】
【0139】
一人の被験者は、サイクル4(240mg/日)の間に重篤な肺高血圧及び右心不全を示し;この事象は治験責任医師によりTG101348と関係がないとみなされた。
【0140】
15人(25%)の被験者は、治療の最初の6サイクルの間に処置を中止した(表12)。中止の理由には、処置関連有害事象(n=6);治験責任医師の決定/介入性疾病(n=3)又は同意の撤回(n=6)が含まれた。43人の被験者のうち8人(19%)は延長研究の間の処置を中止し、合計24週〜46週の治療後の有害事象による3人が含まれる(表12)。
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
3人の被験者は疾患が進行し(研究開始時及び中止時の用量を示す):それぞれ心内膜炎が重なって進行性肝脾腫大及び腹水症を有し(サイクル2;680及び520mg/日)、骨髄線維症が加速し(サイクル13;520及び200mg/日)、そして白血病性形質転換(leukemic transformation)を有していた(サイクル2;520及び520mg/日)。
【0144】
反応を以下に示す。
【0145】
巨脾腫:脾臓反応の開始は急速であり、一般的には最初の2サイクル以内で見られた。サイクル6までに、36人の被験者(61%)は、触知可能脾臓サイズの最小25%の減少を経験した(MTDコホートにおける65%を含む)(包括解析(intent−to−treat analysis))。この時点までに、少なくとも8週間継続する触知可能脾臓サイズの≧50%の減少(すなわちIWG−MRT基準による臨床改善(「CI」))が全体及びMTDコホートにおいて被験者のそれぞれ39%及び45%で観察された。MTDコホートについての処置サイクルあたりの脾臓反応を
図13に示す。6サイクルの処置を完了したJAK2V617F−陰性MFを有する4人の被験者のうち3人(75%)はCIを達成した。CIが観察された最も低い開始用量は240mg/日であった。あらゆる用量でのCIまでの時間の中央値(範囲)は141日(41〜171)であり、MTDコホートについては113日(41〜170)であった。サイクル12までに、脾臓反応(CI)が、全体及びMTDコホートについてそれぞれ被験者の48%及び50%で観察された。IWG−MRT基準による脾臓反応の平均(標準偏差)期間は、全体及びMTDコホートについてそれぞれ315(±129)日及び288日(±76)であった。
【0146】
全身症状:MTDコホートにおける35人の被験者は、ベースライン及び少なくとも1サイクルの終了時の早期満腹、疲労、寝汗、咳、及びかゆみの存在及び重症度を11点スケール(0=症状のない状態〜10=考えられる最悪の症状)で承認した(endorsed)。症状を「存在しない」(スコア=0)、「軽度」(スコア=1〜3)、「中程度」(スコア=4−7)、又は「重症」(スコア=8〜10)として分類した。
【0147】
早期満腹はベースラインで29人(85%)の被験者により報告された。2サイクルの処置(n=27)の後、56%はこの症状の完全な消散を報告した(
図14A)。疲労はベースラインで26人(76%)の被験者により報告された。6サイクル後(n=16)、63%が改善を報告し、そして25%はこの症状の完全な消散を報告した(
図14B)。寝汗はベースラインで14人(40%)の被験者により報告された。1サイクル後、被験者の64%はこの症状が完全に消散した;6サイクル後、この比率は89%(n=9)に増加した(
図14C)。咳はベースラインで13人(37%)の被験者により報告された。1サイクル後(n=12)、75%がこの症状の改善を報告し、そして67%が完全な消散を報告した。かゆみはベースラインで8人(23%)の被験者により報告され、1サイクル後、75%が改善し、50%は完全な消散を報告した。全身症状における反応は大部分の例において永続的なものであった。
【0148】
体重:6及び12サイクルの終わりに、体重中央値は全体及びMTDコホートについてベースラインと比較して安定していた(表13)。
【0149】
【表16】
【0150】
白血球増加及び血小板増加:白血球増加(WBC数>11×10
9/L)はベースラインで33人の被験者(56%)に存在し、そのうち28人は6サイクルの処置を完了した;これらのうち、18人はMTDコホートであった。6サイクル後、様々な用量にわたる16人の被験者(57%)及びMTDコホートの13人の被験者(72%)は正常WBC数を達成した(
図15);12サイクル後、様々な用量の25人のうち14人(56%)及びMTDコホートの17人のうち10人(59%)は正常WBC数を有していた。
【0151】
血小板増加(血小板数>450×10
9/L)がベースラインで様々な用量の10人(17%)の被験者及びMTDコホート(n=37)の7人(19%)の被験者で見られ、この全てが6サイクルの治療を完了した。この時点で、様々な用量及びMTDコホートの被験者のそれぞれ90%及び100%が正常血小板数を達成した;12サイクル後、様々な用量の8人のうち7人の被験者(88%)及びMTDコホートの全ての6人の被験者が正常血小板数を有していた。
【0152】
JAK2V617F対立遺伝子比率:51人(86%)の被験者はJAK2V617F−陽性であり、対立遺伝子比率中央値(範囲)は20%(3%〜100%)であった;これらのうち、23人(45%)は「有意な」対立遺伝子比率(ベースラインで>20%と定義される)を有し、中央値(範囲)は60%(23%〜100%)であった。全体の変異陽性被験者について、6サイクル(p=0.04)及び12サイクルの処置(p=0.01)後にJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少があった(
図16A及び16B)。6及び12サイクルの処置後に、対立遺伝子比率中央値(範囲)はそれぞれ17%(0%〜100%)及び19%(0%〜100%)であった。同様に、ベースラインJAK2V617F対立遺伝子比率が>20%である23人の被験者について、6サイクル(p=0.002)及び12サイクルの処置(p=0.002)後にJAK2V617F対立遺伝子比率の有意でかつなおさらに顕著な減少があった(
図16C及び16D)。6及び12サイクルの処置後に、対立遺伝子比率中央値(範囲)はそれぞれ31%(4%〜100%)及び32%(7%〜100%)であった。6サイクル後に、ベースライン対立遺伝子比率が>20%の20人の被験者のうちこの時点に到達した16人(80%)は、中央値61%(範囲6%〜96%)の減少を示し、そして9人の被験者(45%)はJAK2V617F対立遺伝子比率が≧50%減少した。対照的に、4人の被験者(20%)は増加を示した(18%、21%、30%、及び58%)。対立遺伝子比率>20%を有するグループのうち18人の被験者(78%)は12サイクルの処置を中央値50%(範囲29%〜82%)の減少を伴って完了し、そして7人(39%)の被験者はJAK2V617Fが≧50%減少した。3人(17%)の被験者は対立遺伝子比率(7%、18%、及び22%)において増加を示し、そしてベースラインで100%対立遺伝子比率の他の2人は変化を示さなかった。
【0153】
考察:この研究において処置された患者のかなりの割合が、症候性巨脾腫、白血球増加、血小板増加、及び全身症状の急速で実質的かつ持続的な制御を経験した。さらに、疾患を改変する活性の可能性を示すゲノム疾病負荷(disease burden)の有意な減少についての証拠もあった。JAK2V617F陰性であるMFの患者において反応があった。この研究における被験者が、JAK−STATシグナル伝達経路における他の変異、例えばMPL、LNK又はまだ知られていない対立遺伝子を有するかどうかは未知である(Pardanani AD et al.、Blood 108:3472−3476、2006; Oh ST et al.、Blood First Edition Paper、prepublished online April 19、2010; DOI 101182/blood−2010−02−270108 2010; Pardanani A et al.、Leukemia In press:2010)。
【0154】
臨床研究結果は、TG101348治療が事前の用量を減少又は漸減することなく中止され得るということを示す。中止した被験者は(後日再継続してもしなくても)「サイトカインリバウンド」を経験しなかった。このことは、この処置が事前に用量を減少することなく中止され得るということを示す。
【0155】
骨髄線維症の状況においてサイトカインリバウンドは、TG101348治療以外の治療を受けており、かついずれかの理由で中止した患者において発生した現象である。いくつかの場合において、中止した患者は、急性脾臓サイズ増大及び全身症状の再発を含む重篤な症状を経験した。いくつかの場合、中止した患者は生命をおびやかす血行動態障害を経験した(Wadleigh and Tefferi、Clinical Advances in Hematology & Oncology、8:557−563、2010)。
【0156】
MFにおけるJAK−STAT経路の小分子阻害剤の中でも中でも注目すべきことに、JAK2V617F変異対立遺伝子比率の有意でかつ持続した減少を誘導するその能力においてTG101348は独特であると思われる。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、疾病負荷に対するJAK2阻害の効果は、JAK1に加えてJAK2にも非特異的活性を有するJAKファミリーアンタゴニストに応じて主要な役割を果たし得る間接的な抗サイトカイン作用とは対照的に、TG101348を用いる骨髄線維症における臨床的有効性の証拠の根拠であると思われる。このことを支持して、TG101348処置の過程においてベースラインと比較して炎症促進性サイトカイン(インターロイキン(「IL」)−6、IL−2、IL−8、及びTNF−α)レベルの一貫した変化は無かった(
図17)。
【0157】
対照的に、かつJAK2に対するTG101348の特異的活性と一致して、ベースラインに対する血清EPOの増加及びより低い程度でTPOレベルの増加が処置開始後に観察された(データは示していない)。
【0158】
TG101348についてのDLT(無症候性高アミラーゼ血症、高リパーゼ血症を伴うこともある)がニロチニブを含む他の小分子阻害剤でで観察された(Kantarjian HM et al.、Blood 110:3540−3546、2007)。胃腸有害事象はこの研究において頻繁であったが、処置中止の原因となったのは1人の被験者においてのみであった。これらの症状は早ければ最初に投与した後に生じ、そして明確な用量依存性の関係を示した。TG101348の骨髄抑制作用もまた用量依存性であった。
【0159】
TG101348のMTD(680mg/日)は最も有効な用量であるが、有害事象の最も高い発生率も伴った。従って、より低い開始用量(例えば400〜500mg/日)が最適なリスク/ベネフィットバランスをもたらし得る。さらに、骨髄線維症は異種疾患(heterogeneous disease)であり、動的投薬スケジュールが患者に特異的な最適用量を同定する機会を最大にし得る。
【0160】
これらの所見は、MFに加えて、TG101348がPV及びETの処置について潜在的な役割も有し得るということを示唆する。
【0161】
実施例4. TG101348の合成
実施例4.1
N−tert−ブチル−3−(2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド (中間体)
実施例4.1(a)
【化3】
2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミン(1)(0.4g、2.8mmol)、3−ブロモ−N−tert−ブチル−ベンゼンスルホンアミド(2)(1.0g、3.4mmol)、Pd
2(dba)
3(0.17g、0.19mmol)、キサントホス(Xantphos)(0.2g、3.5mmol)及び炭酸セシウム(2.0g、6.1mmol)の混合物をジオキサン(25mL)に懸濁し、そしてアルゴン雰囲気下で3時間加熱還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、そしてDCM(30mL)で希釈した。この混合物をろ過し、そしてろ液を真空で濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、そして固形物が沈殿するまでヘキサンを加えた。ろ過した後、表題化合物(1.2g、98%)を淡褐色固体として得た。これを精製することなく次の工程で使用した。MS(ES+):m/z355(M+H)
+。
【0162】
実施例4.1(b)
【化4】
この中間体を2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジン(SM1)及びN−t−ブチル−3−アミノベンゼンスルホンアミド(SM2)から以下の工程で合成した:(1)MeOH(6.7UOa)及びSM1(Combi Blocks)(UOa)を混合し;(2)SM2(1.15UOa、082eq)及びH2O(8.5UOa)を加え;(3)45℃に20時間、N
2下で加熱し、IPC CPL SM2<2%;(4)20℃に冷却し;(5)遠心分離し(N
2);(6)H
2O(2.1UOa)+MeOH(1.7UOa)で洗浄し;(7)固形物をH
2O(4.3UOa)+MeOH(3.4UOa)と混合し;(8)遠心分離(N
2)し;(9)H
2O(2.1UOa)+MeOH(1.7UOa)で洗浄し;そして(10)45℃で15時間真空乾燥させる。中間体を得た、質量49.6kg(UOb);収率79%;OP:99.6%。
【0163】
実施例4.2 N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド
【化5】
【0164】
実施例4.2(a)
N−tert−ブチル−3−(2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド(中間体)(0.10g、0.28mmol)及び4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニルアミン(3)(0.10g、0.49mmol)の酢酸(3mL)中の混合物をマイクロ波反応チューブ中に密封し、マイクロ波を150℃で20分間照射した。室温まで冷却した後、キャップを外し、そして混合物を濃縮した。残留物をHPLCにより生成し、そして補正した(corrected)フラクションを合わせて飽和NaHCO
3水溶液(30mL)中に注いだ。合わせた水相をEtOAc(2x30mL)で抽出し、そして合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥し、そしてろ過した。ろ液を濃縮して得られた固形物を最少量のEtOAcに溶解し、そして固体が沈殿するまでヘキサンを加えた。ろ過した後、表題化合物を白色固体として得た(40mg、27%)。
1H NMR(500MHz、DMSO−d
6):δ 1.12(s、9H)、1.65−1.70(m、4H)、2.12(s、3H)、2.45−2.55(m、4H)、2.76(t、J=5.8Hz、2H)、3.99(t、J=6.0Hz、2H)、6.79(d、J=9.0Hz、2H)、7.46−7.53(m、4H)、7.56(s、1H)、7.90(s、1H)、8.10−8.15(m、2H)、8.53(s、1H)、8.77(s、1H). MS (ES+):m/z 525(M+H)
+。
【0165】
実施例4.2(b)
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物を、4−[2−(1−ピロリジニル)エトキシ]アニリン二塩酸塩(SM3)及び中間体から工程(A)及び(B)に従って製造した。
【0166】
工程(A)、SM3からSM3の遊離塩基(3)の製造は、工程(1)?(9)を含んでいた:(1)NaOH(0.42UOb)をH2O(9UOb)に溶解させ;(2)<20℃にN2下で冷却し;(3)TBME(6UOb)を加え、次いでSM3(Malladi Drugs)(1.06UOb)を加え;(4)>20分混合した後止めて;(5)水相を排出させ、次いでTBME(3UOb)で抽出し;(6)有機相を合わせて;(7)真空でT<40℃で濃縮して油状物とし;(8)IPA(2.5UOb)に溶解させ;そして(9)乾燥抽出物23%と算出した。
【0167】
工程(B)は工程(1)−(6)を含んでいた:(1)IPA(10.5UOb)及び中間体(UOb)を混合し;(2)SM3の遊離塩基(0.75UOb、1.33eq/中間体(Interm))を加え;(3)濃HCl(0.413UOb)を加え;(4)70℃に20時間N
2下で加熱し、IPC CPL Interm<2%;(5)<20℃に冷却し;(2)遠心分離し(N
2);(3)IPA(3UOb)で洗浄し;(4)50℃で26時間真空乾燥させ;(5)Fitzmillで塊を砕き(De−lump);そして(6)ポリ袋(x2)/ポリドラムに入れた。得られたTG101348二塩酸塩一水和物、質量83.8kg;収率98%;OP:99.5%。
【0168】
実施例5 TG101348のカプセル剤形態及びTG101348の製造方法
TG101348製剤を10mg、40mg、及び200mgのカプセル強度(strengths)で提供し、ここで質量はTG101348の活性(すなわち遊離塩基)部分の量について規定される。各強度のTG101348カプセル製剤の定量組成を表14に示す。
【0169】
【表17】
【0170】
各強度のカプセル剤の製造過程において使用された成分を、バッチごとに基づいて表15に示す。
【0171】
【表18】
【0172】
TG101348カプセル剤を製造する方法を以下に記載する:
A. 顆粒内成分の乾式造粒(3つの製剤強度全てについて実施される):1.TG101348及び顆粒内フマル酸ステアリルナトリウムをV−ブレンダーで5分間混合した。2.このブレンドを丸型18メッシュ篩及び丸型羽根車を備えたコニカルミルに通した。このブレンドをV−ブレンダー中に再び入れた。3.顆粒内ケイ化結晶セルロースを20メッシュ篩にかけてブレンダーに加えた。この混合物を15分間混合した。4.このブレンドをローラーコンパクターに通した。5.このローラー圧縮されたリボンを丸型16メッシュ篩及び丸型羽根車を備えたコニカルミルに通した。6.粉砕された材料をVブレンダー内で5分間混合した。7.工程内検査(IPC)サンプルを試料採取器を使用してVブレンダーから抜き取った。サンプルを効力分析にかけた。
【0173】
B.顆粒外成分(10mg及び40mgカプセル剤について実施される)の添加:1.顆粒の効力(Aの工程7から)が名目上98〜102%(w/w)の範囲外である場合、顆粒外ケイ化結晶セルロースをそれに従って調整した。2.V−ブレンダーにTG101348二塩酸塩一水和物/ケイ化結晶セルロース/フマル酸ステアリルナトリウム顆粒(Aより)を入れた。3.顆粒外ケイ化結晶セルロースを20メッシュの篩にかけてV−ブレンダーに加えた。4.顆粒外フマル酸ステアリルナトリウムをV−ブレンダーに加えた。5.顆粒内及び顆粒外成分を15分間混合した。6.IPCサンプルをサンプル採取器を使用してV−ブレンダーから抜き取り、そして効力について分析した。
【0174】
C. カプセル充填(3つの製剤強度全てについて実施される):1.効力(200mgのカプセル剤についてはAにおける工程7から、又は10mg及び40mgのカプセル剤についてはBにおける工程6から)が名目上98〜102%(w/w)の範囲外である場合、カプセル充填質量をそれに従って調整した。2.製造した材料を自動カプセル充填機を使用してカプセル封入した。製造したカプセル剤を瓶詰めし、そして20〜28°F(68〜82℃)及び周囲湿度で貯蔵した。
【0175】
含量均一性及び溶解を調べた。HPLC法バリデーションを、一分析者、一分析者あたり一回の実行の設計を使用して行い、そして特異性、感受性、精度、真度、直線性、及びサンプル安定性についての全ての必要な基準を満たした。TG101348とその関連化合物、中間体及び分解物の全てとの間のピーク分解能を比較することにより特異性を評価し、そして確認した(強制分解試験により確立された)。定量限界及び検出限界をそれぞれ0.10μg/mL及び0.03μg/mLのTG101348で確立した。含量均一性の精度を、標的アッセイ濃度で調製された10mg及び200mgの強度のカプセル剤の6回のインジェクションにより評価した。RSD結果は10mg及び200mgの強度のカプセルについてそれぞれ3.7%及び5.8%であった。溶解についての精度を、10mg及び200mgの強度のカプセルのそれぞれの溶解の時点での6回のインジェクションにより評価した。全ての強度及び対応する時点での相対標準偏差(「RSD」)の結果はバリデーションプロトコルにおいて規定される許容基準の十分範囲内(±10%)であった。真度(10mg及び200mgの強度のカプセル剤についてプラセボ溶液中に添加された被験者の回収により定義される)を、標的アッセイ標準濃度の70%、100%、及び130%で評価した。全ての測定についての回収値は、バリデーションプロトコルにおいて規定される許容基準内(93%〜105%)であった。直線性を標的アッセイ標準濃度の50%〜120%の範囲にわたって実証し、1.00のr2を示した。サンプル安定性及び方法頑健性も方法バリデーションの間に実証した。
【0176】
実施例6 TG101348についての製剤研究
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド ジ−HCl一水和物塩についての製剤研究を行った。
【0177】
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド
ジ−HCl一水和物塩のカプセルシェルとの適合性
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド ジ−HCl一水和物塩(TG101348 ジ−HCl一水和物)の腐食性/酸性の性質がジ−HCl塩の潜在的な腐食性/酸性の性質に起因してカプセルと不適合性であるかどうかは知られていなかった。
【0178】
硬ゼラチン及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルシェル(サイズ#00250)にTG101348 ジ−HCl一水和物250mgを充填した。この充填したカプセルを加速安定下に置いた(40℃/75%相対湿度(RH)及び25℃/60%RH)。これらのカプセル剤を30mL(1oz)琥珀色高密度ポリエチレン(HDPE)瓶中に入れた。安定性試験のための製剤及び加速安定性プロトコルの要約を表16に示す。
【0179】
【表19】
【0180】
TG101348 ジ−HCL一水和物がゼラチン硬カプセルに適合性であることが見出された。属性(外観、アッセイ、不純物)における検知可能な変化は研究の時点(t=1、2、及び3週)にわたって観察されなかった。
【0181】
薬物物質ブレンドのフィラー及び滑沢剤との適合性
製剤ブレンドのマトリックスを、TG101348 ジ−HCl一水和物の4つのフィラー及び2つの滑沢剤との適合性を調べるために設計した(表17)。500μmの篩に全ての成分を通して予めふるいにかけておき、滑沢剤を除く全ての成分をTurbula
T2Bブレンダーを使用して10分間22rpmでブレンドし、このブレンドを500μmの篩に通し、10分間混合し、滑沢剤(質量調整)を加え、そして5分間混合することにより、それぞれ2.5gのスケールでブレンドを準備した。このブレンドを製造して30mLの琥珀色HDPE瓶中で主条件(60℃/周囲湿度)及びバックアップ条件(40℃/75% RH、25℃/60%RH、及び5℃)で貯蔵した。加速安定性プロトコルの要約を表18に示す。属性(外観、アッセイ、不純物)における検知可能な変化は研究の間に観察されなかった。
【0182】
【表20】
【0183】
【表21】
【0184】
カプセル中粉末の開発
添加剤選択
TG101348 ジ−HCl一水和物の4つのフィラー(ラクトース、マンニトール、結晶セルロース(MCC)Avicel PH102、及びMCC ProSolv 90 HD)及び2つの滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv)との乾式ブレンドの添加剤適合性試験(表17)は不適合性を示さなかった。Prosolv SMCC 90HD(すなわち、ケイ化結晶セルロース)及びラクトースFast−Flo(すなわち、噴霧乾燥ラクトース一水和物)を、直接乾式ブレンドプロセスに適している特性に基づいてさらなる試験のためのフィラーとして選択した。ステアリン酸マグネシウム(食品グレード)及びPruvをさらなる試験のための滑沢剤として選択した。全ての添加剤は固形経口投薬形態における使用ついて世界的に規制当局の認可を受けている(米国、欧州連合、日本)。
【0185】
乾式粉末プロセス開発のための適合性
丸みを帯びた/顆粒の外観の粒子を有するTG101348 ジ−HCl一水和物、ケイ化結晶セルロース(Prosolv SMCC 90HD)、及びフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv)の真密度をヘリウム式粒子密度測定器(helium pycnometer)(Micromeritics Accupyc 1340)を使用して測定した。薬物物質及び添加剤(フィラー/希釈剤)の真密度は十分に適合していることがわかった。
【0186】
カプセル製剤
安定性評価のためのプロトタイプカプセル製剤の「マトリックス」を設計し、それを表19にまとめる。2つの投薬強度10及び125mgを選択した。
【0187】
【表22】
【0188】
加速安定性試験プロトコル
表20は、カプセルプロトタイプに適用された加速安定性プロトコルを要約する。属性(外観、アッセイ、不純物、インビトロ溶解)の感知できる変化は研究の時点にわたって観察されなかった(40℃/75% RH及び25℃/60% RHでt=1、2、4、及び8週)。これらの結果に基づいて、プロトタイプP2及びP6をさらなる評価のために選択した。
【0189】
【表23】
【0190】
インビトロ溶解性能の考察
インビトロ溶解試験において、ゼラチンカプセルシェル中に充填されたプロトタイプ製剤(P1、P2、P5、P6)は、15分位内に>85%の薬物放出を示した。HPMCカプセルシェル中に充填されたプロトタイプ製剤(例えば、P3、P4、P7、P8)は、典型的には60分後に<60%の薬物放出を示した。従ってHPMCカプセルのプロトタイプはt=0試験より先に進めなった。
【0191】
吸収促進薬カプセル開発
TG101348はcaco−2透過性データに基づいて、「低」透過性と「高」透過性の間の境界線上にある。さらに、複数の種におけるバイオアベイラビリティは典型的には20〜25%であった。従って、「吸収促進薬」が適切なバイオアベイラビリティを達成するために製剤において必要であるかどうかは分からなかった。
【0192】
添加剤の選択
上記の添加剤の適合性に基づいて、ケイ化結晶セルロース(Prosolv SMCC
90HD)を吸収促進製剤のための主フィラー/担体添加剤として使用した。4つの吸収促進添加剤候補をさらなる試験のために選択した(表21)。
【0193】
【表24】
【0194】
製剤及び製造方法
表22は、試験した吸収促進製剤を要約する。直接ブレンド製造プロセスと対照的に、溶融造粒を製剤を製造するために選択した。
【0195】
【表25】
【0196】
交差ビーグル犬PK研究
交差ビーグル犬PK研究を、5つの製剤を試験して行った:以下に記載されるような経口液剤、吸収促進薬を含まない2つのカプセル製剤及び吸収促進薬を含む2つのカプセル製剤。
【0197】
5匹のビーグル犬に125mgのTG101348用量で、又は平均体重にもとづいて約11mg/kgで各製剤を投与し、投与の間には1週間「休薬(washout)」した。投与した製剤を表23にまとめる。
【0198】
【表26】
【0199】
4つのカプセル製剤全てが参照液剤用量に対して生物学的同等性を示すとともに即時放出特性を示した。従って、ヒトcaco−2細胞における境界線の透過性及び様々な動物種における20〜25%のバイオアベイラビリティにもかかわらず、吸収促進製剤を用いないカプセル製剤は即時放出特性を示した。
【0200】
プロセス開発
薬物物質粒子形態
丸みを帯びたもの、顆粒状粒子(平均粒径約25μm)から小さい針状物まで(平均粒径約7〜10μm)の様々な粒子形態が薬物物質の異なるロット間で見られた。針状形態は高度に静的であることが分かり、これは製剤製造に悪影響を及ぼし得、そして製剤含有物均一性にも悪影響を及ぼし得る。
【0201】
乾式造粒プロセス
平均粒径25μmを有する丸みを帯びた顆粒状粒子を有する薬物物質を用いて開発された初期処方は、0.5%w/wの滑沢剤を含む、50:50質量比のTG101348薬物物質及びフィラーであった。ローラー圧縮の前に、薬物、フィラー及び滑沢剤のブレンドを準備した。本明細書に記載されるように、薬物物質を、製剤化添加剤とブレンドする前に、co−milを通して解砕(de−agglomerate)した。小針状物を有する薬物物質は貯蔵の際に凝集する高い傾向を示した。小針状物を有する薬物物質を解砕した後、かなりの再凝集又は「集塊」がほとんど瞬時に起こるだろう。この再凝集は、製粉の前に滑沢剤と薬物をブレンドすることにより有意に低減された。
【0202】
TG101348 ジ−HCL一水和物の初期処方は、約50:50の質量比のTG101348薬物物質及びフィラーと共に0.5%w/wの滑沢剤を含んでいた。この処方は、流動性が乏しく、ローラーコンパクター内で金属ロールにかなりの付着を示した。
【0203】
ステアリン酸マグネシウム滑沢剤の量はこの処方において増加され得るが、処方内の濃度を増加させると、薬物放出速度論に悪影響を及ぼし得る。滑沢剤ラウレル(laurel)フマル酸ナトリウムもまたTG101348 ジ−HCl一水和物と適合性であることが示され、そしてステアリン酸マグネシウムよりも低い吸湿性であり、これをステアリン酸マグネシウムの代わりに(2.0%w/wの質量比で)加えて、これはローラーコンパクターの金属ロールへの製剤の付着を最小にした。しかし、粉末の流動性は乏しいままであった。
【0204】
フィラーに対するTG101348薬物物質の比を約50:50から約40:60に減らした。滑沢剤(Pruv)含量も1%w/wに減らし、これはローラーコンパクター内での許容出来る流動性及び最小の付着をもたらした。
【0205】
多用量製剤の開発
カプセルの手作業による充填(hand−filling)の試験において、サイズ#00のゼラチンカプセルシェル中に積極的に充填して、顆粒約600mgが最大の達成可能な重点であるようであった。従って、製剤中の40%w/wの薬物物質充填、及び83.78%の遊離塩基含量を含むTG101348ジ−HCL一水和物バッチで、200mg強度という高いカプセル剤強度が実行可能と思われた。
【0206】
顆粒内TG101348ジ−HCL一水和物及びラウレル(laurel)フマル酸ナトリウムを有する粒子を製造するための、本明細書に記載されるように開発された乾式造粒プロセスは、乾式ブレンドプロセスを使用する様々な投薬量のカプセル剤の製造を可能にした。
【0207】
平均顆粒サイズは約300μmであり、そしてケイ化結晶セルロース平均粒径は約100μmであった。従って、40mg及び10mgのカプセル強度の製剤が、顆粒外ケイ化結晶セルロースでの顆粒の希釈により製造された。顆粒及び顆粒外ケイ化結晶セルロースのサイズ内の全体的な粒径は、均質な混合を可能にするために十分に似たものであった。
【0208】
40mg強度のカプセル剤を、200mg製剤と同程度の充填体積を同じカプセルシェル内に含む処方を使用して製造した(サイズ#00ゼラチン硬カプセル)。10mg強度のカプセル剤については、40mgカプセル強度製剤と共通のブレンドを、より小さなカプセルサイズに充填することにより使用した。
【0209】
経口液剤処方
薬物物質、0.5%メチルセルロース(MC)及び0.05%Tween 80を含有する経口液剤処方を開発した。pH安定性研究を、0.22μmポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通した製剤において60℃で行った。属性(外観、アッセイ、不純物)における感知できる変化は研究の過程(14日)にわたって観察されなかった。薬物物質及び0.5%MCを含有する第二の経口液剤を開発した。この第二の経口液剤をイヌのPK研究において使用した。
【0210】
前述の実施例は、理解の明確さのための説明及び実施例としていくらか詳細に記載されてきたが、これらの説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。