特許第6133211号(P6133211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133211骨髄線維症を処置するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133211
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】骨髄線維症を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20170515BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20170515BHJP
   A61K 9/64 20060101ALI20170515BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K31/506
   A61K9/48
   A61K47/14
   A61K47/38
   A61K47/42
   A61K9/64
   A61P35/00
【請求項の数】38
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2013-537919(P2013-537919)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2013-541595(P2013-541595A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011059643
(87)【国際公開番号】WO2012061833
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/410,924
(32)【優先日】2010年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507062439
【氏名又は名称】ターゲジェン インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィンド・ジェヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャニス・カカーセ
(72)【発明者】
【氏名】アヤリュー・テフェリー
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/057233(WO,A2)
【文献】 特表2009−513703(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/073575(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0088410(US,A1)
【文献】 特表平05−501109(JP,A)
【文献】 特表2009−532500(JP,A)
【文献】 特表2009−500317(JP,A)
【文献】 橋田充,経口投与製剤の設計と評価,1995年,p.76-79
【文献】 津田恭介ら,医薬品開発基礎講座X 製剤工学,1971年,初版,p.130
【文献】 津田恭介ら,医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(上),1971年,初版,p.50
【文献】 日本医薬品添加剤協会,改訂 医薬品添加物ハンドブック,2007年,p.762-765
【文献】 岡田弘晃ら,製剤の達人による製剤技術の伝承 上巻 経口投与製剤の製剤設計と製造法,2013年,p.176-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含む、経口投与に適したカプセル剤であって、ここで混合物がカプセル中に含まれている、上記カプセル剤。
【請求項2】
カプセル剤が化合物を10mg〜500mg含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である、請求項1に記載のカプセル剤。
【請求項3】
カプセル剤が化合物を10mg、40mg、100mg、又は200mg含む、請求項2に記載のカプセル剤。
【請求項4】
カプセル剤が化合物を100mg含む、請求項3に記載のカプセル剤。
【請求項5】
混合物中の化合物と結晶セルロースの質量比が、1:1.5〜1:15であり、ここで質量比における化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項6】
混合物中の化合物とフマル酸ステアリルナトリウムの質量比が5:1〜50:1であり、ここで質量比における化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項7】
結晶セルロースがケイ化結晶セルロースである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項8】
化合物がN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項9】
結晶セルロースがケイ化結晶セルロースであり、化合物がN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項10】
カプセル剤が、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物12mg、ケイ化結晶セルロース122mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム1mgの混合物を含む、請求項に記載のカプセル剤。
【請求項11】
カプセル剤が、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物47mg、ケイ化結晶セルロース448mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム5mgの混合物を含む、請求項に記載のカプセル剤。
【請求項12】
カプセル剤が、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物117mgの混合物を含む、請求項に記載のカプセル剤。
【請求項13】
カプセル剤が、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物235mg、ケイ化結晶セルロース357mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム6mgの混合物を含む、請求項に記載のカプセル剤。
【請求項14】
フマル酸ステアリルナトリウムが、カプセル充填質量の1%w/wである、請求項1〜のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項15】
化合物とケイ化結晶セルロースの質量比が1:1.5である、請求項7又はに記載のカプセル剤。
【請求項16】
化合物とケイ化結晶セルロースの質量比が1:9である、請求項7又はに記載のカプセル剤。
【請求項17】
カプセル剤がゼラチン硬カプセル剤である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のカプセル剤。
【請求項18】
対象における骨髄線維症の処置用の医薬を製造するための、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物の使用であって、ここで該医薬は経口投与され、そしてここで該医薬は(i)該化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物である、上記使用。
【請求項19】
医薬がカプセル剤中にある、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
医薬が単位投薬形態中にある、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
対象が原発性骨髄線維症を有する、請求項1820のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
対象が真性赤血球増加症後骨髄線維症を有する、請求項1820のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
対象が本態性血小板血症後骨髄線維症を有する、請求項1822のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
医薬が毎日投与される、請求項1823のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
混合物中の化合物と結晶セルロースの質量比が1:1.5〜1:15であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である、請求項1824のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
混合物中の化合物とフマル酸ステアリルナトリウムの質量比が5:1〜50:1であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である、請求項1825のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
対象がヒトである、請求項1826のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
化合物がN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である、請求項1827のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
a)滑沢剤を、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物と混合して顆粒を生じさせる工程;及びb)a)の顆粒を添加剤と混合する工程;を含む、カプセル製剤を調製する方法であって、ここで、滑沢剤がフマル酸ステアリルナトリウムであり、添加剤が結晶セルロースである、前記方法。
【請求項30】
添加剤がケイ化結晶セルロースである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
フマル酸ステアリルナトリウムがカプセル充填質量の1%w/wである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
化合物とケイ化結晶セルロースの質量比が1:1.5である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
化合物とケイ化結晶セルロースの質量比が1:9である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項34】
カプセル剤がゼラチン硬カプセル剤である、請求項2933のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
(a)(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物、並びに(b)該混合物が対象における骨髄線維症を処置するために有用であることを示す添付文書又はラベルを含む製品。
【請求項36】
添付文書又はラベルが見込み購買客に見える位置にある、請求項35に記載の製品。
【請求項37】
化合物がカプセル剤形態中にある、請求項35又は36に記載の製品。
【請求項38】
化合物が単位投薬形態中にある、請求項3537のいずれか1項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第61/410,924号(2010年11月7日出願、これは参照によりその全体として本明細書に加入される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
骨髄線維症を処置するための組成物及び方法が本明細書に提供される。本明細書において提供される組成物及び方法は、JAK2を阻害する化合物又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物を用いる骨髄線維症の処置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
骨髄線維症(「MF」)は、主に高齢の人々が患う稀な疾患である。MFは新規に症状が見つかる(原発性)か、又は真性赤血球増加症(「PV」)若しくは本態性血小板血症(「ET」)が先行し得るBCR−ABL1−陰性骨髄増殖性新生物(「MPN」)である。臨床的特徴としては、進行性の貧血、顕著な巨脾腫、全身症状(例えば、疲労、寝汗、骨痛、かゆみ、及び咳)及び体重減少が挙げられる(非特許文献1)。生存期間中央値は、現在認識されている予後因子に基づいて2年未満から15年超までの範囲に及ぶ(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。JAK2(非特許文献5;非特許文献6)、MPL(非特許文献7)、TET2(非特許文献8)、ASXL1(非特許文献9)、IDH1/IDH2(非特許文献10;非特許文献11)、CBL(非特許文献12)、IKZF1(非特許文献13)、LNK(非特許文献14)、又はEZH2(非特許文献15)に関与する変異がMFを有する患者を含めてMPN患者において記載されている。いくつかの変異は、MFにおいて高頻度で起こり(例えば、約50%の患者におけるJAK2変異)、そして直接的(例えば、JAK2又はMPL変異)又は間接的(例えばLNK又はCBL変異)のいずれかでJAK−STAT過剰活性化を誘導する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tefferi A、N Engl J Med 342:1255−1265、2000
【非特許文献2】Cervantes F et al.、Blood 113:2895−2901、2009
【非特許文献3】Hussein K et al. Blood 115:496−499、2010
【非特許文献4】Patnaik MM et al.、Eur J Haematol 84:105−108、2010
【非特許文献5】James C et al.、Nature 434:1144−1148、2005
【非特許文献6】Scott LM et al.、N Engl J Med 356:459−468、2007
【非特許文献7】Pikman Y et al.、PLoS Med 3:e270、2006
【非特許文献8】Delhommeau F et al.、N Engl J Med 360:2289−2301、2009
【非特許文献9】Carbuccia N et al.、Leukemia 23:2183−2186、2009
【非特許文献10】Green A et al.、N Engl J Med 362:369−370、2010
【非特許文献11】Tefferi A et al.、Leukemia 24:1302−1309、2010
【非特許文献12】Grand FH et al.、Blood 113:6182−6192、2009)
【非特許文献13】Jager R et al.、Leukemia 24:1290−1298、2010
【非特許文献14】Oh ST et al.、Blood 116:988−992、2010
【非特許文献15】Ernst T et al.、Nat Genet 42:722−726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在利用可能な処置は、原発性でも二次的疾患でも、MFの過程の逆行に有効ではない。今までの疾患の治癒の唯一の可能性は骨髄移植である。しかし、大部分の患者は、移植に関連する罹患率及び死亡率が高くなる傾向があるより高齢の診断時年齢中央値のために、適切な骨髄移植候補ではない。従って、MFの管理オプションは、現在は全ての患者の要求を満たすためには不十分である。積極的介入のための主なオプションとしては、細胞減少療法、例えばヒドロキシウレアを用いるもの、アンドロゲン、エリスロポエチン及び脾摘を用いる貧血の処置が挙げられる。これらのオプションは、生存を改善することが示されておらず、そして大部分は姑息的と見られている(Cervantes F.、Myelofibrosis:Biology and treatment options、European Journal of Haematology、2007、79(suppl.68)13−17)。従って、MF患者のためのさらなる治療オプションを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
経口投与に適したカプセル剤が本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、本カプセル剤は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含み、ここでこのこの混合物はカプセル中に含まれる。
【0007】
いくつかの実施態様において、本カプセル剤は化合物を約10mg〜約680mg含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、本カプセル剤は化合物を約10mg〜約500mg含む。いくつかの実施態様において、本カプセル剤は、約10mg、約40mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、又は約600mgのいずれかの化合物を含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤中の結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜1:15であり、ここで質量比における化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤中のステアリルフマル酸ナトリウムに対する化合物の質量比は約5:1〜約50:1であり、そしてここで質量比における化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースは98%の結晶セルロースと2%のコロイド状二酸化ケイ素の組み合わせである。
【0008】
(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含む単位投薬形態もまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、単位投薬形態は本明細書に記載される方法に従う骨髄線維症の処置のような骨髄線維症の処置のためのものである。
【0009】
いくつかの実施態様において、単位投薬形態は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物約10mg〜約680mg(又は約10mg〜約500mg)、[ここで規定される質量は化合物の遊離塩基部分の質量である]、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含む。いくつかの実施態様において、単位投薬形態はカプセル剤の形態であり、そして混合物はカプセル中に含まれる。いくつかの実施態様において、混合物中の化合物は約10mg〜約500mgであり、ここで規定される質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、混合物は(i)約10mg(又は約40mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、若しくは約500mgのいずれか)の化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムを含み、ここで規定される質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、カプセル剤中の結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜1:15であり、ここで質量比における化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤中のフマル酸ステアリルナトリウムに対する化合物の質量比は約5:1〜約50:1であり、そしてここで質量比における化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースは98%の結晶セルロースと2%のコロイド状二酸化ケイ素との組み合わせである。
【0010】
いくつかの実施態様において、フマル酸ステアリルナトリウムはカプセル充填質量(capsule fill weight)の約1%w/wである。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロースに対する化合物の質量比は約40:60〜約10:90(例えば、約40:60すなわち約1:1.5、又は約10:90すなわち約1:9)である。
【0011】
いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、単位投薬形態又はカプセル剤は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約12mg、ケイ化結晶セルロース約122mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約1mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、単位投薬形態又はカプセル剤は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約47mg、ケイ化結晶セルロース約448mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約5mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、単位投薬形態又はカプセル剤は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約117mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、単位投薬形態又はカプセル剤は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約235mg、ケイ化結晶セルロース約357mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約6.00mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、カプセルはゼラチン硬カプセルである。
【0012】
a)滑沢剤を、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物と混合して顆粒を生成すること、及びb) a)の顆粒を添加剤と混合することを含む、カプセル製剤を製造する方法もまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、滑沢剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。いくつかの実施態様において、添加剤は結晶セルロース、例えばケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、フマル酸ステアリルナトリウムはカプセル充填質量の約1%w/wである。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜約1:9である。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5である。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:9である。いくつかの実施態様において、カプセルはゼラチン硬カプセルである。
【0013】
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を経口投与することを含む、対象における骨髄線維症を処置する方法もまた本明細書において提供され、ここでこの化合物は、(i)化合物、(ii)添加剤(例えば、結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。本明細書に記載される単位投薬形態又はカプセル剤のいずれも使用され得る。いくつかの実施態様においてN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を経口投与することを含む対象における骨髄線維症を処置する方法が提供され、ここでこの化合物は、(i)化合物、(ii)結晶セルロース(例えば、ケイ化結晶セルロース)、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含むカプセル剤中にある。
【0014】
有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を対象に投与することを含む、対象における骨髄線維症を処置する方法もまた本明細書において提供され、ここでこの対象は、ヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。
【0015】
有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を対象に投与することを含む、対象における骨髄線維症を処置する方法もまた本明細書において提供され、ここでこの対象は別の骨髄線維症治療を以前に受けている。いくつかの実施態様において、この以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2阻害剤を用いる処置である。いくつかの実施態様において、以前の治療はINCB018424(ルクソリチニブ)の投与を含む。いくつかの実施態様において、対象は以前の治療に対して不反応性である。いくつかの実施態様において、以前の治療はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物を用いる処置である。いくつかの実施態様において、以前の治療は、アミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(「AST」)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(「ALT」)、及び/又はクレアチニンの上昇したレベルが現れた際に中止されている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される血液学的状態が現れた際に中止されている。
【0016】
対象における骨髄線維症(myelofibrosis)に関連する骨髄細胞性又は骨髄線維増多(bone marrow fibrosis)を改善する方法もまた本明細書において提供され、この方法は、対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与することを含む。
【0017】
対象における骨髄線維症に関連するかゆみを改善する方法もまた本明細書において提供され、この方法は、対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与することを含む。
【0018】
対象における骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供され、この方法は、(a)対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること;(b)対象において、アミラーゼレベル、リパーゼレベル、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、及びクレアチニンレベルからなる群より選択される非血液学的パラメーターをモニタリングすること;並びに(c)その対象がその処置を続けるべきか又は中止するべきかを決定する工程を含む。対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供され、この方法は、対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること、及びアミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びクレアチニンからなる群より選択される1つ又はそれ以上の酵素又は分子の、対象の血清中での上昇したレベルが事前の用量減少のない状態で現れた際に、処置を中止することを含む。いくつかの実施態様において、1つ又はそれ以上の上昇したレベルはグレード4の事象である。
【0019】
対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供され、この方法は、(a)対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること;(b)対象の血清における、貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される血液学的パラメーターをモニタリングすること;並びに(c)対象がその処置を続けるべきか又は中止するべきかを決定することを含む。対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書に提供され、この方法は、対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること、並びに貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される1つ又はそれ以上の血液学的状態が、事前の用量減少のない状態で現れた場合に処置を中止することを含む。いくつかの実施態様において、1つ又はそれ以上の血液学的状態はグレード4の事象である。
【0020】
本明細書において提供される処置をモニタリングする方法のいくつかの実施態様において、これらの方法は、対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を、対象が少なくとも2週間処置を中止されていた後に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、対象は少なくとも3週間処置を中止されている。いくつかの実施態様において、対象は少なくとも4週間処置を中止されている。いくつかの実施態様において、処置は事前に用量を減少させることなく中止されている。
【0021】
いくつかの実施態様において、化合物はヒト対象に1日あたり約240mg〜1日あたり約680mgの用量で投与され、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物は1日あたり約300mg〜1日あたり約500mg(例えば、1日あたり約300mg〜1日あたり約400mg、又は1日あたり約400mg〜1日あたり約500mg)の用量で投与され、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物は、1日あたり約240mg、1日あたり約250mg、1日あたり約300mg、1日あたり約350mg、1日あたり約400mg、1日あたり約450mg、1日あたり約500mg、1日あたり約550mg、1日あたり約600mg、1日あたり約650mg、又は1日あたり約680mgのいずれかの用量で投与され、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物は毎日かつ又は経口的に投与される。いくつかの実施態様において、化合物は、28日処置サイクルの少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、又は少なくとも6サイクル(例えば、少なくとも7サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも9サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも11サイクル、少なくとも12サイクル、少なくとも15サイクル、少なくとも18サイクル、又は少なくとも24サイクル)の期間にわたって投与される。いくつかの実施態様において、化合物はカプセル剤中にあり、かつ経口投与される。いくつかの実施態様において、化合物は単位投薬形態中にある。本明細書において記載されるカプセル剤又は単位投薬形態のいずれを投与してもよい。本明細書において提供される方法のいくつかの実施態様において、化合物は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物中にある。いくつかの実施態様において、混合物中の結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜1:15であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、混合物中のフマル酸ステアリルナトリウムに対する化合物の質量比は約5:1〜約50:1であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、対象はヒトである。
【0022】
本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は原発性骨髄線維症を有する。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は真性赤血球増加症後骨髄線維症を有する。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は本態性血小板血症後骨髄線維症を有する。いくつかの実施態様において、対象は高リスク骨髄線維症を有する。いくつかの実施態様において、対象は中程度のリスク骨髄線維症(例えば中リスクレベル2)を有する。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリンのフェニルアラニンへの変異について陽性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陽性である。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリンのフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は触知可能な巨脾腫を有する。いくつかの実施態様において、骨髄線維症を有する対象は、触診により測定して肋下縁の少なくとも5cm下に脾臓を有する。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は輸血依存性である。本明細書において提供される組成物及び方法のいくつかの実施態様において、対象は輸血依存性ではない。
【0023】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施態様において、ヒト対象へ化合物を投与すると、化合物のCmaxが投与後約2〜約4時間以内に達成される。いくつかの実施態様において、ヒト対象へ化合物を投与すると、化合物の消失半減期が約16〜約34時間である。いくつかの実施態様において、化合物の平均AUCが、用量を1日あたり約30mgから約800mgの範囲にわたって増加させるにつれて、比例するよりも多く増加する。いくつかの実施態様において、化合物を1日に1回投与する場合、化合物の蓄積が定常状態で約1.25〜約4.0倍である。いくつかの実施態様において、化合物は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物中にある。いくつかの実施態様において、混合物中の結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜1:15であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、混合物中のフマル酸ステアリルナトリウムに対する化合物の質量比は約5:1〜約50:1であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。
【0024】
(a) 本明細書において提供されるカプセル剤のいずれか1つ、及び(b)カプセル剤が対象における骨髄線維症を処置するために有用であるということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供される。(a)本明細書において提供される単位投薬形態のうちのいずれか1つ、及び(b)カプセル剤が対象における骨髄線維症を処置するために有用であるということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、(a)(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物、並びに(b)この混合物が対象における骨髄線維症を処置するために有用であるということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットが提供される。
【0025】
(a)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、及び(b)この化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得るということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供され、ここで対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。
【0026】
(a)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、及び(b)この化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得ることを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供され、ここで対象は以前に別の骨髄線維症治療を受けている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物でないJAK2阻害剤を用いた処置である。
【0027】
(a) N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、並びに(b)この化合物が骨髄細胞性及び/又は骨髄線維増多を改善するために使用され得るということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供される。
【0028】
(a)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、及び(b)この化合物が骨髄線維症に関連するかゆみを改善するために使用され得るということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供される。
【0029】
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、並びにこの化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得るということ、並びに対象は:アミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びクレアチニンからなる群より選択される1つ若しくはそれ以上の酵素若しくは分子の対象の血清における上昇したレベルが現れた際に、かつ/又は貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される1つ若しくはそれ以上の血液学的状態が現れた際には、その処置を中止すべきであるということを示す添付文書又はラベルを含んでなる製品又はキットもまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、この化合物が、事前に用量を減少させることなく中止され得るということをさらに示す。いくつかの実施態様において、酵素又は分子の上昇したレベルの1つ又はそれ以上はグレード4の事象である。いくつかの実施態様において、血液学的状態の1つ又はそれ以上はグレード4の事象である。
【0030】
いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、見込み購買客に見える位置にある。いくつかの実施態様において、化合物は単位投薬形態又はカプセル剤形態中にある。
【0031】
いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、ヒト対象へ混合物を投与すると、化合物のCmaxが投与後約2〜約4時間以内に達成されるということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、ヒト対象へ化合物を投与すると、化合物の消失半減期が約16〜約34時間であるということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、化合物の平均AUCが、用量を1日あたり約30mgから約800mgの範囲にわたって増加させるにつれて、比例するよりも多く増加するということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、化合物を1日に1回投与する場合、化合物の蓄積が定常状態で約1.25〜約4.0倍であるということを示す。いくつかの実施態様において、化合物は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物中にある。いくつかの実施態様において、混合物中の結晶セルロースに対する化合物の質量比は約1:1.5〜1:15であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、混合物中のフマル酸ステアリルナトリウムに対する化合物の質量比は約5:1〜約50:1であり、ここで化合物についての質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。
【0032】
いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用が提供され、この化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である。いくつかの実施態様において、この化合物は(i)化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。いくつかの実施態様において、この化合物は経口投与される。いくつかの実施態様において、この使用は本明細書に記載される方法に従う。
【0033】
いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、ここで対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、ここで対象は別の骨髄線維症治療を以前に受けている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2阻害剤を含む。いくつかの実施態様において、この使用は本明細書に記載される方法に従う。
【0034】
いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための化合物が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である。いくつかの実施態様において、この化合物は、(i)化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。いくつかの実施態様において、この化合物は経口投与される。いくつかの実施態様において、処置は本明細書に記載される方法に従う。
【0035】
いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための化合物が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、ここで対象は、ヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための化合物が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、ここで対象は別の骨髄線維症治療を以前に受けている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2阻害剤を含む。いくつかの実施態様において、処置は本明細書に記載される方法に従う。
【0036】
当然のことながら、本明細書において記載される様々な実施態様の1つ、一部又は全ての特性を組み合わせて、本明細書に提供される組成物及び方法の他の実施態様を形成し得る。本明細書において提供される組成物及び方法のこれら及び他の局面は、当業者に明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、TG101348 680mg/日(開始用量)で処置された患者についてのサイクルごとの触知可能な脾臓サイズの減少を示す(N=37)。サイクル1についての用量は520〜800mg/日であり、そしてサイクル2〜6についての用量は360〜680mg/日であった。サイクル6の50%以上の対象について、測定直前の約2〜3週間投薬を持続した3対象において22〜47%の増加があった。
図2図2は、TG101348で処置された対象におけるWBC数を示す。ベースラインWBC数は>11x109/Lであった。経過観察(follow−up)時の用量は360〜680mg/日の範囲に及んだ。最後の経過観察来診は8〜24週(中央値24週)の範囲に及んだ。「ULN」は正常上限を意味する。
図3図3は、TG101348で処置された対象における血小板数を示す。ベースライン血小板数>450x109/L。経過観察時の用量は360〜680mg/日の範囲に及んだ。最後の経過観察来診は12〜24週(中央値24週)の範囲に及んだ。「ULN」は正常上限を意味する。
図4図4は、TG101348で処置された対象において、悪化したか、変化しないか、改善されたか、又は消散した全身症状(疲労、早期満腹、咳、寝汗、及びかゆみ)を有する対象のパーセンテージを示す。最後の来診は4〜24週の範囲に及んだ(中央値20週)。ここでのデータは、ベースラインで存在する症状からの変化を反映させた。18対象は、研究の間に1以上の症状の新たな発現を報告した;これらのうち、12対象についての症状は最後の経過観察来診までに消散した。重症度は、対象により1〜10のスケールで評価された:0=消失;1〜3=軽度;4〜7=中程度;8〜10=重症。改善=ベースラインでのより重症な評価から、消失又は軽度又は中程度まで評価が下がった。
図5図5は、TG101348で処置された対象におけるサイトカインレベル(IL−6、IL−8、IL−2及びTNF−α)を示す。示される値は中央値である。
図6図6は、TG101348で処置されたベースライン>20%の対象(N=22)におけるベースラインの比率としての、ベースラインからのV617F対立遺伝子比率(allele burden)の変化を示す。図面は集団全体中のJAK2V617F陽性対象の小集団を示す(N=48)。経過観察時の用量は360〜680mg/日であった。最後の経過観察来診は20〜72週の範囲に及んだ(中央値24週)。
図7図7は、V617F陰性PMFを有する76歳の男性対象における、ベースラインでの骨髄細胞性(60%細胞性)及び18サイクルのTG101348処置後の骨髄細胞性(5〜10%細胞性)を示す。開始用量は30mg/日であり、経過観察時の用量は520mg/日であった。
図8図8は、V617F陰性PMFを有する56歳の男性対象におけるベースライン(3+)及び18サイクルのTG101348処置後(0)の骨髄線維増多を示す。開始用量は240mg/日であり、そして経過観察時の用量は440mg/日であった。
図9図9は、TG101348で処置された(開始用量680mg/日)JAK2 V617F−陽性PMFを有する対象の様々な測定を示す。
図10-1】図10A〜10Bは、それぞれ30mg/日、60mg/日で投薬を開始した対象(n=25)についての各サイクルの最後のTG101348用量の分布を示す。
図10-2】図10C〜10Dは、それぞれ120mg/日、240mg/日で投薬を開始した対象(n=25)についての各サイクルの最後のTG101348用量の分布を示す。
図10-3】図10E〜10Fは、それぞれ360mg/日、520mg/日で投薬を開始した対象(n=25)についての各サイクルの最後のTG101348用量の分布を示す。
図10-4】図10Gは、800mg/日で投薬を開始した対象(n=25)についての各サイクルの最後のTG101348用量の分布を示す。
図11図11は、680mg/日で投薬を開始した対象(n=34)についての各サイクルの最後のTG101348用量の分布を示す。
図12A】平均血漿TG101348濃度対時間の片対数目盛でのプロットを示す(サイクル1、1日目)。
図12B】平均血漿TG101348濃度の時間に対する片対数目盛でのプロットを示す(サイクル1、28日目)。
図13図13は、TG101348治療に対する巨脾腫応答を示す。この図面は、最大耐性用量コホート(n=37)における対象についてのサイクルごとのベースラインからの触知可能脾臓サイズの減少を示す。≧50%及び100%の触知可能巨脾腫の減少を有する対象の比率を示す。6サイクルの処置を完了した対象については、90%が触知可能脾臓サイズの≧25%の減少を有しており、66%が≧50%の減少を有しており、そして31%において脾臓は触知可能でなくなった。
図14-1】骨髄線維症の症状に対するTG101348の効果を示す。(A):最大耐性用量コホートにおける、「軽度」(スコア=1〜3)、「中程度」(スコア=4〜7)、又は「重症」(スコア=8〜10)のベースライン症状スコアから早期満腹が完全に回復した対象のサイクルごとの比率。27人(79%)及び19人(56%)の患者は、それぞれ1サイクル及び6サイクルの終わりに早期満腹における改善について評価可能であった。2サイクルの処置の後、56%がこの症状の完全な消散を報告し、その効果は持続した。(B):最大耐性用量コホートにおける、「軽度」(スコア=1−3)のベースライン症状スコアからサイクルごとに疲労が完全に回復したか、又は「中程度」(スコア=4〜7)若しくは「重症」(スコア=8〜10)のベースラインスコアから疲労が改善したか若しくは完全に回復した対象の比率。24人(71%)及び16人(47%)の患者は、それぞれ1サイクル及び6サイクルの最後に疲労の改善について評価可能であった。6サイクル後に、63%は改善を報告し、そして25%はこの症状が完全に回復した。
図14-2】骨髄線維症の症状に対するTG101348の効果を示す。(C):最大耐性用量コホートにおける、「軽度」(スコア=1〜3)、「中程度」(スコア=4〜7)、又は「重症」(スコア=8〜10)のベーライン症状スコアから、サイクルごとに寝汗が完全に回復した対象の比率。14人(40%)及び9人(26%)の患者は、それぞれ1サイクル及び6サイクルの最後に寝汗の改善について評価可能であった。1サイクル後に、対象の64%はこの症状が完全に消散し;6サイクル後には、この比率は89%まで増加した。
図15図15は、TG101348治療に対する白血球増加の応答を示す。研究に参加した白血球増加(WBC数>11×109/L)を有する対象についての6サイクル後の白血球(WBC)数の変化。6サイクル後に、様々な用量で16人の対象(57%)及びMTDコホートにおいて13人の対象(72%)が正常WBC数を達成し、その効果は持続した。
図16-1】図16A〜16Dは、JAK2V617F対立遺伝子比率に対するTG101348治療の効果を示す。すべての変異陽性対象(n=51;図A及びB)及び>20%のベースライン対立遺伝子比率を有するサブグループ(n=23;図16C及び16D)についてのJAK2V617F対立遺伝子比率データの箱ひげ図。y軸は1.0(100%)から0.0(0%)のJAK2V617F対立遺伝子比率を表す。研究前ベースラインに対して比較した、処置サイクルあたりのJAK2V617F対立遺伝子比率の変化(サイクル12の最後まで;すなわちC13D1)を2グループについて示し(図16A及び16C);サイクル6(すなわちC7D1)及びサイクル12の最後における変化を図16B及び16Dに示す。研究前ベースラインと比較してJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少が、変異陽性グループ(図16B;p=0.04)及び>20%のベースライン対立遺伝子比率を有するサブグループ(図16D;p=0.002)についてサイクル6の最後に観察された;同様の有意な減少が前者(図16B;p=0.01)及び後者(図16D;p=0.002)のグループについてサイクル12の最後に見られた。ウィルコクソンの符号付き順位検定(Wilcoxon matched−pair signed−rank test)を使用して、比較のために中央値JAK2V617F対立遺伝子比率を比較した。
図16-2】図16A〜16Dは、JAK2V617F対立遺伝子比率に対するTG101348治療の効果を示す。すべての変異陽性対象(n=51;図A及びB)及び>20%のベースライン対立遺伝子比率を有するサブグループ(n=23;図16C及び16D)についてのJAK2V617F対立遺伝子比率データの箱ひげ図。y軸は1.0(100%)から0.0(0%)のJAK2V617F対立遺伝子比率を表す。研究前ベースラインに対して比較した、処置サイクルあたりのJAK2V617F対立遺伝子比率の変化(サイクル12の最後まで;すなわちC13D1)を2グループについて示し(図16A及び16C);サイクル6(すなわちC7D1)及びサイクル12の最後における変化を図16B及び16Dに示す。研究前ベースラインと比較してJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少が、変異陽性グループ(図16B;p=0.04)及び>20%のベースライン対立遺伝子比率を有するサブグループ(図16D;p=0.002)についてサイクル6の最後に観察された;同様の有意な減少が前者(図16B;p=0.01)及び後者(図16D;p=0.002)のグループについてサイクル12の最後に見られた。ウィルコクソンの符号付き順位検定(Wilcoxon matched−pair signed−rank test)を使用して、比較のために中央値JAK2V617F対立遺伝子比率を比較した。
図17-1】図17は、サイクル6における炎症促進性サイトカインレベルのベースラインからの絶対変化を示す:IL−6(A)、TNF−α(B)、IL−8(C)、及びIL−2(D)。IL−6(−4719pg/mL)及びIL−2(−1827pg/mL)における絶対差異は、それらが他の対象についてのデータの表示を誤用したものであるため、一人の対象(101−039)について図17A及び17Dからそれぞれ削除される。
図17-2】図17は、サイクル6における炎症促進性サイトカインレベルのベースラインからの絶対変化を示す:IL−6(A)、TNF−α(B)、IL−8(C)、及びIL−2(D)。IL−6(−4719pg/mL)及びIL−2(−1827pg/mL)における絶対差異は、それらが他の対象についてのデータの表示を誤用したものであるため、一人の対象(101−039)について図17A及び17Dからそれぞれ削除される。
図18図18は、1日に1回の経口投薬後の平均血漿TG101348濃度対時間の線形プロットでのプロットを示す(サイクル1;28日目)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
I. 定義
本明細書で使用される「処置」又は「処置すること」は、臨床的結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の臨床的結果としては、限定されないが、以下の1つ又はそれ以上を挙げることができる:その疾患から生じた症状を減少させること、その疾患に罹患した者のクオリティ・オブ・ライフを増加させること、その疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量を減少させること、その疾患の進行を遅らせること、及び/又は個体の生存を延長させること。いくつかの実施態様において、骨髄線維症の処置に関して、有益な臨床的結果としては、巨脾腫の1つ若しくはそれ以上の減少、全身症状(例えば早期満腹、疲労、寝汗、咳及びかゆみ)の改善、白血球増加の減少、血小板増加の減少、JAK2V617F対立遺伝子比率の減少、骨髄線維増多の減少、及び/又は骨髄細胞性の減少が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用される「疾患の発生を遅らせること」は、疾患(例えば骨髄線維症)又は疾患の症状の発生を延期すること、妨げること、遅くすること、遅延させること、安定させること、及び/又は先送りすることを意味し、そしてこれには「無進行生存」が含まれ得る。この遅延は、病歴及び/又は処置される個体に依存して、期間の長さが変動するものであり得る。当業者には明らかなように、十分な又は有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しない予防を包含し得る。
【0040】
本明細書で使用される、薬物、化合物又は医薬組成物の「有効投薬量」又は「有効量」は、有益又は所望の結果を達成するために十分な量である。予防的使用については、有益又は所望の結果としては、例えば、疾患(疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状を含む)、その合併症及び疾患の発症の間に現れる中間病理学的表現型の、リスクの排除若しくは低減、重症度の低下、又は開始の遅延のような1つ又はそれ以上の結果が挙げられ得る。治療的使用については、有益又は所望の結果としては、例えばその疾患から生じるか若しくは疾患に関連する1つ若しくはそれ以上の症状及び病状を減少させること、その疾患に罹患した者のクオリティ・オブ・ライフを増加させること、その疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量を減少させること、標的化によるように別の薬物の効果を増強すること、その疾患の進行を遅らせること、及び/又は生存を延長することのような、1つ又はそれ以上の臨床的結果が挙げられ得る(can include、include)。骨髄線維症の場合、有効量の薬物は、巨脾腫の1つ若しくはそれ以上の減少、全身症状(例えば、早期満腹、疲労、寝汗、咳及びかゆみ)の改善、白血球増加の減少、血小板増加の減少、JAK2V617F対立遺伝子比率の減少、骨髄線維増多の減少、及び/又は骨髄細胞性の減少の1つ又はそれ以上において効果を有し得る。有効投薬量は1回又はそれ以上の投与で投与され得る。薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投薬量は、例えば直接的又は間接的のいずれかで予防的処置又は治療的処置を達成するために十分な量であり得る。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物又は医薬組成物と併せて達成されても達成されなくてもよい。従って、「有効投薬量」は、1つ又はそれ以上の治療剤を投与する状況で検討されてもよいし、1つ又はそれ以上の他の薬剤と併せて、所望の結果が達成され得るか又は達成される場合に、単一の薬剤が有効量で投与されることを検討してもよい。
【0041】
本明細書で使用される骨髄細胞性又は骨髄線維増多を「改善すること」は、対象において、本明細書において提供される化合物を用いた処置を開始する前の骨髄細胞性又は骨髄線維増多のレベルと比較して、骨髄細胞性又は骨髄線維増多を減少させることを指す。骨髄細胞性又は骨髄線維増多の減少は、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%の減少であり得る。
【0042】
本明細書で使用される「と併せて」は、別の治療法に加えて1つの治療法を実施することを指す。そのようなものとして、「と併せて」は、個体への他の治療法の実施の前、実施中、又は実施後の1つの治療法の実施のことを指し得る。
【0043】
本明細書で使用される「患者」又は「対象」は、ヒト、イヌ、ウマ、ウシ又はネコなどを含む哺乳動物を指す。
【0044】
用語「薬学的に許容しうる」は、担体、希釈剤又は添加剤が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、かつ対象に投与できるものであるということを指す。
【0045】
本明細書で使用される「薬学的に許容しうる塩」は、親化合物がその酸塩又は塩基塩を作製することにより改変されている、開示された化合物の誘導体を指す。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうではないと明確に示していなければ複数の言及を含む。
【0047】
「約」に言及した本明細書における値又はパラメーターは、その値又はパラメーター自体を対象とした実施態様を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に対する言及は「X」の記載を含む。
【0048】
本明細書において提供される組成物及び方法の局面及び変形は、局面及び変形「からなること」及び/又は「本質的に(局面及び変形)からなること」を含み得ると理解される。
【0049】
II. 化合物及び医薬組成物
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物が本明細書において提供される。N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物、及び薬学的に許容しうる添加剤または担体を含む医薬組成物もまた本明細書において提供される。本明細書に記載される化合物及び医薬組成物は、対象における骨髄線維症を処置するか又は骨髄線維症の発症を遅らせるために使用され得る。N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドは以下の化学構造を有する:
【化1】
【0050】
本明細書において提供される化合物は、天然形態又は塩形態として治療用組成物に製剤化され得る。薬学的に許容しうる非毒性塩としては、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノ−エタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導され得る塩基付加塩(遊離カルボキシル基又は他のアニオン性基と形成される)が挙げられる。このような塩はまた、いずれかの遊離カチオン性基との酸付加塩としても形成され得、これらは一般的には無機酸、例えば、塩酸、硫酸、若しくはリン酸、又は有機酸、例えば酢酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などと形成される。
【0051】
本明細書において提供される化合物の塩としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などでアミノ基をプロトン化することにより形成されるアミン塩が挙げられ得る。本明細書において提供される化合物の塩としては、適切な有機酸、例えばp−トルエンスルホン酸、酢酸、メタンスルホン酸などでアミノ基をプロトン化することにより形成されるアミン塩も挙げられ得る。本明細書において提供される組成物及び方法の実施における使用を考慮されるさらなる添加剤は、当業者に利用可能なもの、例えばUnited States Pharmacopeia Vol. XXII and National Formulary Vol. XVII、U.S. Pharmacopeia Convention、Inc.、Rockville、Md. (1989)(その関連する内容は参照により本明細書に加入される)において見い出されるものである。
【0052】
さらに、本明細書において提供される化合物は多形を含み得る。本明細書において記載される化合物は代替の形態で有り得る。例えば、本明細書において記載される化合物は水和物形態を含み得る。本明細書で使用される「水和物」は、分子形態の、すなわちH−OH結合が分裂していない水と会合した、本明細書において提供される化合物を指し、これは例えば式R.H2O[ここでRは本明細書において提供される化合物である]により表され得る。所定の化合物は1つより多くの水和物を形成し得、これには、例えば一水和物(R.H2O)又は例えば二水和物(R.2H2O)、三水和物(R.3H2O)などを含
む多水和物(polyhydrates)(R.nH2O、ここでnは1より大きい整数である)、又は分数(fractional)水和物、例えば、R.n/2H2O、R.n/3H2O、R.n/4H2Oなど[ここでnは整数である]が含まれる。
【0053】
本明細書で記載される化合物には酸塩水和物形態も含まれ得る。本明細書で使用される「酸塩水和物」は、1つ若しくはそれ以上の塩基部分を有する化合物の1つ若しくはそれ以上の酸部分を有する少なくとも1つの化合物との会合により、又は1つ若しくはそれ以上の酸部分を有する化合物の1つ若しくはそれ以上の塩基部分を有する少なくとも1つの化合物との会合により形成され得る複合体を指し、この複合体は、水和物を形成するように水分子とさらに会合し、ここでこの水和物は以前に定義されるとおりであり、そしてRは本明細書において上で記載される複合体を表す。
【0054】
いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物であり、これは以下の化学構造を有する:
【化2】
【0055】
本明細書に記載される化合物の、単独で、又は他の治療剤と組み合わせた投与のための医薬組成物は、投薬単位形態で都合よく提示され得、かつ薬学の技術分野において周知の方法並びに実施例4、5及び6に記載される方法のいずれかにより製造され得る。このような方法は、1つ又はそれ以上の補助成分を構成する活性成分を担体と活性成分を会合(association)させることを含み得る。一般に、医薬組成物は、液体担体又は微粉化された固形担体又はその両方と活性成分を均一かつ密接に会合させ、次いで必要な場合は、生成物を所望の製剤へと成形することにより製造される。医薬組成物において、活性対象化合物は、疾患の過程又は状態に対して所望の効果を生じるために十分な量で含まれる。活性成分を含有する医薬組成物は、経口用途に適した形態で、例えば硬カプセル剤又は軟カプセル剤としての形態で有り得る。適切なカプセルシェルは硬ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)であり得る。
【0056】
(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)1つ又はそれ以上の添加剤、及び(iii)1つ又はそれ以上の滑沢剤を含む製剤が本明細書において提供される。製剤はカプセル剤形態で経口投与され得る。製剤は単位投薬形態であり得る。いくつかの実施態様において、添加剤はラクトース(例えばFast−Flo)、マンニトール(例えばParteck M200)、結晶セルロース(「MCC」)(例えばAvicel PH102)、MCC(例えばProSolv 90 HD)である。いくつかの実施態様において、滑沢剤はステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム(例えばPruv)、又はラウレル(laurel)フマル酸ナトリウムである。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、カプセル剤はゼラチン硬カプセル剤である。
【0057】
いくつかの実施態様において、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物を含む、経口投与に適したカプセル剤が提供され、ここでこの混合物はカプセル中に含まれる。当該分野で公知である方法及び本明細書に記載される方法が本カプセル剤を製造するために使用され得る。例えば、実施例3を参照のこと。結晶セルロースは、本明細書において提供されるカプセル剤においてフィラー及び/又は希釈剤として使用され得る。フマル酸ステアリルナトリウムは、本明細書において提供されるカプセル剤において滑沢剤として使用され得る。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。例えば、ケイ化結晶セルロースは結晶セルロース及びコロイド状二酸化ケイ素粒子から構成され得る。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースは98%の結晶セルロースと2%のコロイド状二酸化ケイ素との組み合わせである。
【0058】
いくつかの実施態様において、カプセル剤は化合物を約10mg〜約680mg含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤は約10mg〜約650mg(又は約10mg〜約550mg又は約10mg〜約500mg)を含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤は約100mg〜約600mg(又は約200mg〜約550mg又は約300mg〜約500mg)を含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤は化合物を約10mg、約20mg、約40mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、又は約650mg含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤はゼラチン硬カプセル剤である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。
【0059】
いくつかの実施態様において、カプセル剤中の添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)に対する化合物の質量は、約1:1.5〜約1:15の間(例えば、約1:5〜約1:10の間、約1:5〜約1:12の間、又は約1:10〜約1:15の間)であり、ここで化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤中の滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)に対する化合物の質量比は、約5:1〜約50:1(例えば、約5:1〜約10:1の間、約5:1〜約25:1の間、約5:1〜約40:1の間、約7:1〜約34:1の間、又は約8:1〜約34:1の間)であり、ここで化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。
【0060】
いくつかの実施態様において、カプセル剤はカプセル剤充填総質量(total fill weight)のうち化合物を約5%〜約50%(例えば、約5%〜約10%又は約5%〜約35%)含み、ここで化合物の質量は、化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤はカプセル剤充填総質量のうち添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)を約40%〜約95%(例えば、約50%〜約90%又は約60%〜約90%)含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤はカプセル充填総質量のうち滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)を約0.2%〜約5%(例えば、約0.2%〜約2%又は約0.5%〜約1.5%、又は約0.5%、約1%、若しくは約1.5%)含む。
【0061】
(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)添加剤(例えば結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えばフマル酸ステアリルナトリウム)の混合物を含む単位投薬形態もまた本明細書において提供される。本明細書において記載されるカプセル剤のいずれか1つは単位投薬形態で使用され得る。いくつかの実施態様において、単位投薬形態は骨髄線維症を処置するためのものである。いくつかの実施態様において、処置は本明細書において記載される方法に従う。
【0062】
いくつかの実施態様において、単位投薬形態は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物約10mg〜約680mg(又は約10mg〜約500mg)、[ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である]、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムの混合物を含む。いくつかの実施態様において、混合物中の化合物は約10mg〜約500mgであり、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。
【0063】
いくつかの実施態様において、単位投薬形態はカプセル剤の形態であり、そして混合物がカプセル中に含まれる。いくつかの実施態様において、単位投薬形態は、化合物を約10mg、約20mg、約40mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、又は約650mg含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。いくつかの実施態様において、この混合物は、(i)化合物約10mg(又は約40mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、又は約500mgのいずれか)、(ii)結晶セルロース、及び(iii)フマル酸ステアリルナトリウムを含み、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。
【0064】
いくつかの実施態様において、単位投薬形態中の添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)に対する化合物の質量比は、約1:1.5〜約1:15の間(例えば、約1:5〜約1:10の間、約1:5〜約1:12の間、又は約1:10〜約1:15の間)であり、ここで化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、単位投薬形態中の滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)に対する化合物の質量比は、約5:1〜約50:1の間(例えば、約5:1〜約10:1の間、約5:1〜約25:1の間、約5:1〜約40:1の間、約7:1〜約34:1の間、又は約8:1〜約34:1の間)であり、ここで化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、結晶セルロースはケイ化結晶セルロースである。いくつかの実施態様において、ケイ化結晶セルロースは98%の結晶セルロースと2%のコロイド状二酸化ケイ素との組み合わせである。
【0065】
いくつかの実施態様において、滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)はカプセル充填質量の約0.1%〜約10%、約0.5%〜約5%、約0.5%〜約3%、約0.5%〜約2%、約0.75%〜約1.5%である。いくつかの実施態様において、滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)は、カプセル充填質量の少なくとも約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、又は約5%のいずれか1つである。いくつかの実施態様において、滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)は、カプセル充填質量の約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、又は約5%のいずれか1つである。
【0066】
いくつかの実施態様において、カプセル剤又は単位投薬形態中の添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)に対するN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物の質量比は約40:60〜約10:90である。いくつかの実施態様において、カプセル剤又は(ot)単位投薬形態中の添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)に対する化合物の質量比は、約95:5、約90:10、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、約15:85、約10:90、又は約5:95のいずれか1つである。いくつかの実施態様において、添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような微結晶)に対する化合物の質量比は、約1:1.5〜約1:9.5、例えば約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、又は約1:9.5のいずれか1つである。いくつかの実施態様において、化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物である。
【0067】
いくつかの実施態様において、カプセル剤は、混合物の総質量の約5%〜約50%(例えば、約5%〜約10%又は約5%〜約35%)の化合物を含み、ここで化合物の質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、カプセル剤は、混合物の総質量の約40%〜約95%(例えば、約50%〜約90%又は約60%〜約90%)の結晶セルロース(例えばケイ化結晶セルロース)を含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤は、混合物の総質量の約0.2%〜約5%(例えば、約0.2%〜約2%又は約0.5%〜約1.5%、又は約0.5%、約1%、若しくは約1.5%)のフマル酸ステアリルナトリウムを含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、カプセル剤又は単位投薬形態は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約12mg、ケイ化結晶セルロース約122mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約1mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤又は単位投薬形態は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約47mg、ケイ化結晶セルロース約448mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約5mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤又は単位投薬形態は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約117mgの混合物を含む。いくつかの実施態様において、カプセル剤又は単位投薬形態は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物約235mg、ケイ化結晶セルロース約357mg、及びフマル酸ステアリルナトリウム約6.00mgの混合物を含む。
【0069】
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を含む経口液剤もまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、経口液剤はさらにメチルセルロースを含む。いくつかの実施態様において、経口液剤はさらにメチルセルロース及びTween 80を含む。いくつかの実施態様において、経口液剤は、約1mg/ml〜約25mg/ml、約2mg/ml〜約20mg/ml、約3mg/ml〜約15mg/ml、約5mg/ml〜約10mg/mlで化合物を含む。いくつかの実施態様において、経口液剤は、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約6.25mg/ml、約6.5mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、又は約12.5mg/ml、又は約15mg/mlのいずれか1つで化合物を含む。いくつかの実施態様において、経口液剤は、約0.1質量%〜約5質量%、0.2質量%〜約3質量%、約0.25質量%〜約2質量%、約0.25質量%〜約1質量%、又は約0.5質量%のメチルセルロースを含む。いくつかの実施態様において、経口液剤は、約0.01質量%〜約0.5質量%、0.02質量%〜約0.3質量%、約0.025質量%〜約0.2質量%、約0.025質量%〜約0.1質量%、又は約0.05質量%のTween 80を含む。
【0070】
いくつかの実施態様において、カプセル剤は吸収促進剤を含まない。いくつかの実施態様において、カプセル剤は吸収促進剤(例えば、Vitamin E TPGS、Gelucire 44/14、Pluronic F127、又はグリセリルモノステアレート)を含む。
【0071】
提供されるカプセル剤又は単位投薬形態は、以下の特性の1つ又はそれ以上を含み得る:(1)ヒト対象のような対象へ投与すると、化合物のCmaxが投与後約2〜約4時間以内に達成される;(2)ヒト対象へ投与すると、化合物の消失半減期が約16〜約34時間である;(3)化合物の平均AUCが、用量を1日あたり約30mgから約800mgの範囲にわたって増加させるにつれて、比例するよりも多く増加する;(4)化合物を1日に1回投与する場合、化合物の蓄積が定常状態で約1.25〜約4.0倍である。
【0072】
a)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を滑沢剤と混合して顆粒を生成すること、及びb) a)の顆粒を添加剤と混合することを含む、カプセル製剤を製造する方法もまた提供される。いくつかの実施態様において、滑沢剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。いくつかの実施態様において、添加剤はケイ化結晶セルロースのような結晶セルロースである。このような方法を使用して、本明細書に記載されるカプセル剤又は単位投薬形態を製造し得る。化合物、添加剤及び/又は滑沢剤に関する質量(例えば質量比又は質量パーセンテージ)及び構成成分は本明細書に記載されるいずれかに従い得る。
【0073】
III. 骨髄線維症の処置及び予防の方法
対象に有効量のN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物(例えば、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物)を投与することを含む、対象における骨髄線維症を処置し、発症を遅らせ、かつ/又は予防するための方法が本明細書において提供される。いくつかの実施態様において対象は骨髄線維症を有する。いくつかの実施態様において、対象は骨髄線維症を発症する危険性がある。いくつかの実施態様において、対象はヒト対象である。本明細書に記載されるカプセル剤又は単位投薬形態のような、本明細書に記載される製剤のいずれか1つは、骨髄線維症を有する対象を処置するために使用され得る。いくつかの実施態様において、化合物は、(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)添加剤(例えば結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えばフマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。
【0074】
本明細書において記載される化合物により処置され得る骨髄線維症には、原発性骨髄線維症(MF)及び続発性骨髄線維症(例えば、先行する真性赤血球増加症(PV後MF)又は本態性血小板血症(ET後MF)から生じた骨髄線維症)が含まれる。本明細書において記載される化合物により処置され得る骨髄線維症には、高リスク、中程度リスク(例えば中リスクレベル2)の骨髄線維症も含まれる。様々な種類の骨髄線維症を診断するための方法は当該分野で公知である。例えば、Cervantes et al.、Blood 2009を参照のこと。いくつかの実施態様において、骨髄線維症を有する対象は、触診により測定して肋下縁の少なくとも少なくとも5cm下に脾臓を有する。
【0075】
いくつかの実施態様において、対象は、対象がヒトである場合は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2キナーゼ)においてバリン617からフェニルアラニンへの点変異(JAK2V617F)を有するか、又は対象がヒトでない場合は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2キナーゼ)におけるバリン617からフェニルアラニンに対応する点変異を有する。いくつかの実施態様において、対象は、対象がヒトである場合、JAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であり、又は対象がヒトでない場合は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2キナーゼ)におけるバリン617からフェニルアラニンに対応する変異について陰性である。対象がJAK2V617Fについて陽性であるか陰性であるかは、骨髄細胞又は血球(例えば、全血白血球)由来のゲノムDNAを使用してポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)分析により決定され得る。PCR分析は対立遺伝子特異的PCR(例えば、対立遺伝子特異的定量的PCR)又はPCR配列決定であり得る。Kittur J et al.、Cancer 2007、109(11):2279−84及びMcLornan D et al.、Ulster Med J. 2006、75(2):112−9(これらはそれぞれ参照により、本明細書に明示的に加入される)を参照のこと。
【0076】
いくつかの実施態様において、本明細書において記載される方法を用いて処置される対象は、以前に別の骨髄線維症治療又は処置を受けている。いくつかの実施態様において、対象は、他の骨髄線維症治療に対して不応答者(non−responder)であるか、又は他の骨髄線維症治療を受けた後に再発をしている。以前の処置は、JAK2阻害剤(例えばINCB018424(ルクソリチニブ(ruxolitinib)としても知られる、Incyteから入手可能)、CEP−701(レスタウルチニブ(lestaurtinib)、Cephalonから入手可能)、又はXL019(Exelixisから入手可能))(Verstovsek S.、Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2009:636−42を参照のこと)又は非JAK2阻害剤(例えばヒドロキシ尿素)であり得る。いくつかの実施態様において、対象は、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)、真性赤血球増加症、又は本態性血小板血症のためのルクソリチニブ処置を少なくとも14日間受けており、かつその処置を少なくとも30日間中止されている。いくつかの実施態様において、以前の治療は本明細書に記載される化合物を用いた処置であり、かつその以前の治療は、対象の血清においてアミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及び/若しくはクレアチニンの1つ又はそれ以上の上昇したレベルが現れた際に、かつ/又は貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される血液学的状態が現れた際に中止されている。いくつかの実施態様において、第二の処置における化合物の用量は、以前の治療における用量と同じか又は以前の治療における用量より低い。
【0077】
対象は経口で、かつ/又は毎日処置され得る。対象(例えばヒト)は、1日あたり約240mg〜1日あたり約680mg(又は1日あたり300mg〜1日あたり約500mg)の用量で投与することにより処置され得、ここで特定された質量は化合物の遊離塩基部分の質量である。いくつかの実施態様において、化合物は、約240mg/日、約250mg/日、約300mg/日、約350my/日、約400mg/日、約450mg/日、約500mg/日、約550mg/日、約600mg/日、約650mg/日、又は約680mg/日のいずれかの用量で投与される。化合物は、本明細書において記載されるカプセル剤及び/又は単位投薬形態中にあり得る。いくつかの実施態様において、投与される化合物は、結晶セルロース及びフマル酸ステアリルナトリウムとの混合物中にあり、そしてこの混合物はカプセル中にある。いくつかの実施態様において、化合物は経口投与される。
【0078】
骨髄線維症に関連する1つ又はそれ以上の症状を改善するための方法もまた本明細書において提供される。例えば、本明細書に記載される化合物を使用する処置は、脾臓サイズの減少、全身症状(例えば早期満腹、疲労、寝汗、咳及びかゆみ)の改善、白血球増加の減少、血小板増加の減少、JAK2V617F対立遺伝子比率の減少、骨髄線維増多の減少、かゆみの改善、悪液質の改善、及び/又は骨髄細胞性の減少において有効である。減少(reduction)、減少(decrease)、改善(amelioration)、又は改善(improvement)は、本明細書に提供される化合物を用いた処置を開始する前のレベルと比較して、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%であり得る。いくつかの実施態様において、脾臓は処置後に対象において触知できなくなる。いくつかの実施態様において、対象は、処置後に白血球増加及び/又は血小板増加が完全に消散する。いくつかの実施態様において、対象は、処置後にかゆみが完全に消散する。
【0079】
いくつかの実施態様において、化合物は、28日のサイクルの少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、又は少なくとも6サイクルの間、毎日対象に投与される。いくつかの実施態様において、化合物は、28日のサイクルの少なくとも6サイクル、28日のサイクルの少なくとも8サイクル、28日のサイクルの少なくとも10サイクル、28日のサイクルの少なくとも12サイクル、28日のサイクルの少なくとも15サイクル、28日のサイクルの少なくとも18サイクル、又は28日のサイクルの少なくとも24サイクルの間、毎日対象に投与される。いくつかの実施態様において、化合物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、又は少なくとも1年の間、毎日対象に投与される。いくつかの実施態様において、化合物は1日に1回投与される。
【0080】
いくつかの実施態様において、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物をヒト対象のような対象に投与すると、化合物のCmaxが投与後約1〜約5時間、約1.5〜約4.5時間、約2〜約4時間、又は約2.5〜約3.5時間以内に達成される。いくつかの実施態様において、ヒト対象に化合物を投与すると、化合物の消失半減期が約12〜約40時間、約16〜約34時間、又は約20〜約30時間である。いくつかの実施態様において、化合物の平均AUCが、用量を1日あたり約30mgから約800mgの範囲にわたって増加させるにつれて、比例するよりも多く増加する。いくつかの実施態様において、化合物の蓄積は、化合物が1日に1回投与される場合、定常状態で約1.1〜約5倍、約1.25〜約4.0倍、約1.5〜約3.5倍、約2〜約3倍である。
【0081】
いくつかの実施態様において、この方法は、空の胃に有効量の化合物を取り入れることを対象に指示することを含む。いくつかの実施態様において、この方法はさらに、CYP3A4の少なくとも中程度の誘発因子又は阻害剤である経口摂取(ingesting)剤を避けるように対象に指示することを含む。いくつかの実施態様において、対象は、CYP3A4の少なくとも中程度の阻害剤又は誘発因子であることが知られている生薬に対する薬物を用いた処置又はそれらの使用を同時に受けていない。インビトロでの評価に基づいて、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドは、ヒトCYP3A4により代謝される。N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド血漿濃度を増加させ得る薬剤(すなわち、CYP3A4阻害剤)、又はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド血漿濃度を減少させ得る薬剤(すなわち、CYP3A4誘発因子)(生薬及び食品を含む(例えばグレープフルーツ/グレープフルーツジュース))は、本明細書に記載されるように処置される対象おいて避けられるべきである。さらに、インビトロデータは、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドがCYP3A4を時間依存性の様式で阻害するということを示した。CYP3A4による代謝について感受性の基質である薬剤は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドとの同時投与がその同時投与された薬剤のより高い血漿濃度を生じ得るので、慎重に使用されるべきである。CYP3A4の臨床的に関連する基質のリストは、アルフェンタニル、シクロスポリン、ジエルゴタミン(Diergotamine)、エチニルエストラジオール、エルゴタミン、フェンタニル、ピモジド、キニジン、シロリムス、タクロリムス、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、テリスロマイシン、アルプラゾラム、ジアゼパム、ミダゾラム、トリアゾラム、インジナビル、リトナビル、サキナビル、運動促進性(prokinetic)、シサプリド、アステミゾール、クロルフェニラミン、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、ニフェジピン、ベラパミル、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アリピプラゾール、グリベック、ハロペリコル(halopericol)、シルデナフィル、タモキシフェン、タキサン、トラゾドン、及びビンクリスチンを含む。CYP3A4の臨床的に関連する誘発因子のリストには、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、リファブチン、リファンピン、セイヨウオトギリソ、及びトログリタゾンが含まれる。CYP3A4の臨床的に関連する阻害剤のリストには、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ネファゾドン、エリスロマイシン、グレープフルーツジュース、ベラパミル、ジルチアゼム、シメチジン、アミオダロン、フルボキサミン、ミベフラジル、及びトロレアンドマイシンが含まれる。参考文献Flockhart et al.、http://medicine.iupui.edu/clinpharm/ddis/clinicaltable.aspx.、2009を参照のこと。
【0082】
(a)対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること;(b)対象において血液学的パラメーター及び/又は非血液学的パラメーターをモニタリングすること;並びに(c)対象がその処置を続けるべきか又は中止するべきかを決定することを含む、対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、血液学的パラメーターは、貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される。いくつかの実施態様において、非血液学的パラメーターは、血液又は血清中の酵素又は分子であり、ここで酵素又は分子の上昇したレベルは組織又は器官の損傷の指標である。いくつかの実施態様において、血清の酵素または分子は、例えば、アミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びカルシウムであり得る。これらのパラメーターをモニタリングする方法は当該分野で公知であり、本明細書に記載される。実施例1〜3を参照のこと。いくつかの実施態様において、この方法はさらに、対象が処置を少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間中止した後に、有効量の本明細書に記載される化合物を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、以前の処置は事前に用量を減少させることなく中止されている。
【0083】
対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること、並びにアミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びクレアチニンからなる群より選択される1つ又はそれ以上の酵素及び/若しくは分子の上昇したレベル並びに/又は事前の用量減少がない状態での対象の血液又は血清における減少したレベルのカルシウムが現れた際に処置を中止することを含む、対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供される。対象に有効量の、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を投与すること、並びに貧血、血小板減少、及び好中球減少からなる群より選択される1つ又はそれ以上の血液学的状態が事前の用量減少のない状態で現れた際に処置を中止することを含む、対象に対する骨髄線維症の処置をモニタリングする方法もまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、1つ又はそれ以上のパラメーター(血液学的パラメーター及び非血液学的パラメーターを含む)がグレード3又は4の事象である場合に処置が中止される。
【0084】
血液学的パラメーター及び非血液学的パラメーターについてのグレード3又は4の有害事象は当該分野で公知であり、そして以下の表に示される。例えば、C Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)、Version 4.0(公開:2009年5月28日(v4.03:2010年6月14日)を参照のこと。
【0085】
【表1】
【0086】
IV. 製品及びキット
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物を含む製品又はキットもまた本明細書において提供される。いくつかの実施態様において、製品又はキットは、本明細書において提供される方法において本明細書に記載される化合物を使用するための指示書をさらに含む。いくつかの実施態様において、製品又はキットはさらに、指示を提供するラベル又は添付文書を含む。いくつかの実施態様において、化合物は本明細書に記載されるカプセル剤及び/又は単位投薬形態中にある。
【0087】
いくつかの実施態様において、製品又はキットは容器をさらに含み得る。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル(例えば、二重チャンババイアル)、シリンジ(例えば単一又は二重チャンバシリンジ)及び試験管が挙げられる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成され得、そして容器は、化合物、例えば投与されるべき製剤中に化合物を保持し得る。製品又はキットは、ラベル又は添付文書をさらに含み得、これは容器上にあるか容器に付着され、化合物の再構成及び/又は使用についての指示を示し得る。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、見込み購買客に見える位置にある。
【0088】
ラベル又は添付文書は、化合物が対象における骨髄線維症を処置又は予防するために有用であるかそれを意図されるということをさらに示し得る。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、化合物が骨髄細胞性及び/又は骨髄線維増多を改善するために使用され得るということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得、ここで対象はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異(JAK2V617F)について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性であるということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得、かつ対象は、アミラーゼ、リパーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、クレアチニン、及び/若しくはアルカリホスファターゼの1つ若しくはそれ以上の上昇したレベル、並びに/又は対象の血清におけるカルシウムの減少したレベルが現れた際に、かつ/又は貧血、血小板減少、及び/若しくは好中球減少の1つ若しくはそれ以上が現れた際に、処置を中止するべきであるということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、事前に用量を減少させることなく化合物を中止し得るということをさらに示す。
【0089】
いくつかの実施態様において、(a)(i)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物、並びに(b)この混合物が対象における骨髄線維症を処置するために有用であるということを示す添付文書又はラベルを含んでなるキット又は製品が提供される。いくつかの実施態様において、(a)N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である化合物、及び(b)この化合物が対象における骨髄線維症を処置するために使用され得、ここで対象は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2阻害剤を用いた別の骨髄線維症治療を以前に受けているということを示す添付文書又はラベルを含んでなるキット又は製品が提供される。
【0090】
いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、ヒト対象に化合物を投与すると、化合物のCmaxが投与後約1〜約5時間以内、約1.5〜約4.5時間以内、約2〜約4時間以内、又は約2.5〜約3.5時間以内に達成されるということを示す。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、ヒト対象に化合物を投与すると、化合物の消失半減期が約12〜約40時間、約16〜約34時間、又は約20〜約30時間であるということを示す。いくつかの実施態様において、化合物の平均AUCは、用量を1日あたり約30mgから約800mgの範囲にわたって増加させるにつれて、比例するよりも多く増加する。いくつかの実施態様において、化合物の蓄積は、化合物を1日に1回投与した場合、定常状態において約1.1〜約5倍、約1.25〜約4.0倍、約1.5〜約3.5倍、約2〜約3倍である。
【0091】
いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、空の胃に有効量の化合物を取り入れることを対象に指示する。いくつかの実施態様において、添付文書又はラベルは、CYP3A4の少なくとも中程度の誘発因子又は阻害剤である薬剤を摂取することを避けるように対象に指示する。いくつかの実施態様において、CYP3A4の誘発因子又は阻害剤は、本明細書に記載されるCYP3A4の誘発因子又は阻害剤のいずれか1つである。
【0092】
対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用もまた提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である。いくつかの実施態様において、この使用は本明細書に記載される方法に従う。いくつかの実施態様において、化合物は、(i)化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。いくつかの実施態様において、化合物は経口投与される。いくつかの実施態様において、この使用は本明細書に記載される方法に従う。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、ここで対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための医薬の製造における化合物の使用が提供され、ここで化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、対象は別の骨髄線維症治療を以前に受けている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2阻害剤を含む。
【0093】
対象における骨髄線維症を処置するための化合物もまた提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物である。いくつかの実施態様において、この処置は本明細書に記載される方法に従う。いくつかの実施態様において、化合物は、(i)化合物、(ii)添加剤(例えば、ケイ化結晶セルロースのような結晶セルロース)、及び(iii)滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)の混合物中にある。いくつかの実施態様において、化合物は経口投与される。いくつかの実施態様において、処置は本明細書に記載される方法に従う。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための化合物が提供され、ここでこの化合物は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、対象はヒトヤヌスキナーゼ2(JAK2)のバリン617のフェニルアラニンへの変異について陰性であるか、又はヒトJAK2のバリン617のフェニルアラニンへの変異に対応する変異について陰性である。いくつかの実施態様において、対象における骨髄線維症を処置するための化合物が提供され、ここで化合物はN−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物であり、対象は別の骨髄線維症治療を以前に受けている。いくつかの実施態様において、以前の治療は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に許容しうる塩若しくはその水和物ではないJAK2を含む。
【0094】
以下は本明細書において提供される方法及び組成物の実施例である。上で提供される一般的な説明を考慮して、様々な他の実施態様が実施され得るということが理解される。
【実施例】
【0095】
実施例1 骨髄線維症におけるTG101348の評価
本明細書で使用される「TG101348」は、N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物を指す。この研究における被験者は、実施例5に記載されるようなTG101348のカプセル剤形態で投与された。TG101348を骨髄線維症の処置についての第I相試験において評価した。この研究はデータを収集した時点で継続していた。
【0096】
背景:TG101348は有効で、経口で生物が利用可能な、JAK2選択的小分子阻害剤であり、これを骨髄線維症の処置について第I相試験において評価した。用量制限毒性は、可逆性である無症候性のグレード3又は4のアミラーゼ血症(amylasemia)/リパーゼ血症(lipasemia)であり、そして最大許容投与量(「MTD」)は680mgであった。最も頻繁な非血液学的毒性は、容易に管理されるか又は自発的に消散された軽度の悪心、嘔吐、及び/又は下痢であった。グレード3/4の好中球減少及び血小板減少が、それぞれ患者の14%及び25%で観察された。TG101348は脾臓サイズ、白血球数、及びJAK2V617F(「VF」)対立遺伝子比率の減少において活性を有していた。この実施例は、680mg/日の用量で処置を開始した用量確認コホートからのデータに焦点を絞った結果を記載する。
【0097】
結果:59人の患者(年齢中央値=66歳;範囲43〜86)を処置した?28人は用量段階的増大相であり、そして31人は用量確認相であった。全体で、44人の患者がPMFを有しており、12人はPV後MFであり、そして3人はET後MFであり;86%はVF陽性であった。触知可能脾臓サイズ中央値は18cmであり、そして22人の患者は研究登録時に赤血球(「RBC」)輸血が必要であった。中央値12週(範囲<1−76)の経過観察の後、18人(31%)の患者は、毒性(n=7;血小板減少=3、好中球減少=1)、共存症(n=5)、同意の撤回(n=4)、又は服薬不履行/反応の欠如(それぞれ1)に起因して処置を中止した。残りの41人の患者は、この実施例におけるデータを収集したときに以下の用量レベルであった:680mg(n=14)、520〜600mg(n=16)、360〜440mg(n=10)、及び240mg(n=1)。この実施例においてデータ収集したときの時間に対する累積薬物曝露は、362患者−月であり;MTD又はそれ以上の曝露(≧680mg)は154患者−月であった。40人の患者(68%)は処置を≧680mgで開始した。
【0098】
毒性:TG101348は十分に許容的であった。≧680mgで開始した患者のうち、グレード3/4の好中球減少は15/0%で観察され、そしてグレード3/4の血小板減少は20/10%で観察された。24人(60%)の患者は、ベースラインでRBC輸血を必要とせず(ヘモグロビン中央値(「Hgb」)=9.6g/dL;範囲7.4−13.1);これらのうち、患者の42%及び8%がグレード3(「Gr3」)及びグレード4(「Gr4」)の貧血をそれぞれ発症した。≧680mgで開始した患者の大部分は軽度の悪心(1 Gr3)、嘔吐(1 Gr3)、及び/又は下痢(3 Gr3)を発症し、これらは自己限定性であるか容易に管理された。他の非血液学的毒性は、グレード1/2(「Gr1/2」)高トランスアミナーゼ血症(38%)、Gr1/2血清クレアチニン上昇(38%)、及び無症候性高リパーゼ血症(33%)を含んでいた。
【0099】
有効性:≧680mgで開始した33人の患者が、少なくとも3サイクルの処置を完了し;3ヶ月目に、触知可能な脾臓サイズの減少(ベースライン中央値=18cms;範囲6−32)は22人(67%)の患者において少なくとも50%であった;9人(27%)の患者において脾臓は触知できなくなった。≧680mgで開始したベースラインで白血球増加(WBC範囲11〜203x109/L)を有する全ての21人の患者は、それらのWBC数の顕著な減少を経験し(範囲4〜90);70%がかれらの最後の経過観察来診時に正常WBC数を有していた。全体としては、51人のVF陽性患者のうち48人は少なくとも1サイクルを完了し、そしてVF対立遺伝子比率について評価可能であり;最後の利用可能な経過観察時には、顆粒球変異体対立遺伝子比率の減少中央値は48%であり;21人(44%)の患者は≧50%の減少を有し、そして≧680mgで処置を開始したグループでは、48%が≧50%の減少を有していた。評価可能な者のうち、臨床的に優位な利益、又は早期満腹、疲労、咳、かゆみ、及び寝汗を含む全身症状の消散があった。
【0100】
結論:TG101348は、骨髄線維症を有する患者において十分許容的であった。脾臓及び白血球の反応は高頻度であり、早期に観察され、そして患者にとっての実質的な臨床的利益をもたらした。これらの反応はVF対立遺伝子比率の有意な減少と関連しており、骨髄線維症における悪性クローンに対するTG101348の活性を指し示していた。
【0101】
実施例2 骨髄線維症におけるTG101348の評価
この研究における被験者に、カプセル剤形態のTG101348を投与した。TG101348を骨髄線維症の処置について第I相研究において評価した。この研究は実施例1にも記載される。この実施例は、データ収集の時点で利用可能なデータを記載する。
【0102】
この研究は、MTDでの広範なコホート用量確認を用いる非盲検、多施設、かつ用量段階的増大の研究であった。この研究の主目的は、MFを有する被験者におけるTG101348の安全性/許容性、DLT、MTD、及び薬物動態を決定することであった。この研究の第二の目的は、予備臨床的及び薬力学的な活性を評価することであった。
【0103】
被験者についての鍵となる適格基準は:骨髄線維症(PMF又はPV/ET後MF);症候性巨脾腫/利用可能な治療に対する不反応性を伴う高リスク又は中程度リスク; ECOGパフォーマンスステータス≦2;ANC≧1x109/L;血小板数≧50x109/L;血清クレアチニン≦2mg/dL;総ビリルビン≦2mg/dL;AST/ALT≦3X正常上限を含んでいた。
【0104】
この研究についての被験者の性質が表1に含まれる。
【表2】
【0105】
被験者についての人口学的及びベースライン特性を表2に含める。
【表3】
【0106】
この研究は、MTDでの広範なコホート用量確認を用いる用量段階的増大研究であった。680mg/日の用量で処置を開始した用量確認コホートに焦点を絞ったデータを以下に記載する。
【0107】
TG101348 680mg/日(開始用量)で処置された被験者(N=37)についてのサイクルごとの触知可能脾臓の減少を図1に示す。ベースライン脾臓サイズは:中央値=18cm;範囲=6−32cmであった。被験者の49%は、触知可能巨脾腫の減少(IWG反応)に基づく臨床的改善を達成した(12週までに被験者の56%;20週までに被験者の100%)。データ収集の時点では再発も疾患進行もなかった。
【0108】
白血球増加に対するTG101348の効果を図2に示す。ベースラインWBC数は>11x109/Lであった。被験者の73%はそれらの経過観察来診時に正常WBC数を有していた。血小板増加症に対するTG101348の効果は図3に示される(ベースライン血小板数>450x109/L)。TG101348は血小板数を減少させることができる。全身症状に対するTG101348の効果(ベースライン対最後の来診時)を図4に示す。TG101348はMF関連全身症状を改善することができる。TG101348はサイトカインレベルに対する有意な変化を有していなかった(図5を参照のこと、示される全ての値は中央値である)。図6は、ベースライン>20%の被験者(N=22)におけるV617F対立遺伝子比率に対するTG101348の効果を示す。図6は、TG101348がベースライン>20%の被験者のうち59%においてJAK2 V617F対立遺伝子比率を減少させることができたということを示す。
【0109】
図7は、V617F陰性PMFを有する76歳男性における骨髄細胞性に対するTG101348の効果を示す。開始用量は30mg/日であり、そして経過観察時の用量は520mg/日であった。図7は、TG101348がこの被験者における骨髄細胞性を、ベースラインで60%の骨髄細胞性から18サイクル後に5−10%の骨髄細胞性まで減少させることができたということを示す。図8は、V617F陰性PMFを有する56歳男性における骨髄線維増多に対するTG101348の効果を示す。開始用量は240mg/日であり、そして経過観察時の用量は440mg/日であった。図8はTG101348がこの被験者において骨髄線維増多をベースラインで3+から18サイクル後に0まで減少させることができたということを示す。
【0110】
MTD被験者(N=40)における治療下で発現したグレード3及び4の血液学的毒性を表3に示す。MTD被験者(N=40)における治療下で発現した非血液学的有害事象(少なくとも5被験者について報告される)を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
MTD被験者(N=40)におけるグレード≧2の治療下で発現した非血液学的検査室所見を表5に示す。
【表6】
【0114】
図9は、JAK2V617F陽性PMFを有する被験者における、TG101348 680mg/日で開始した様々な測定を示す。TG101348は、触知可能な脾臓サイズを9から0cmまで減少させ、そしてこの被験者においてかゆみを完全に消散させた。
【0115】
結論:TG101348は、特により高い用量で、管理可能なグレード1の胃腸効果を有し、一般的には十分に許容的であった。データは長期の毒性を示さなかった。期待された的確な(on−target)骨髄抑制効果は、大部分は赤血球生成に限定されるようであり、これはより低いがなお有効である用量に減衰され得る。TG101348は、MF関連巨脾腫において優れた活性を有し;約3分の2は触知可能な巨脾腫において≧50%の減少を有し;約30%は完全に消散した。TG101348は有意な抗骨髄増殖活性を有しており、実質的にすべての処置された被験者は、白血球増加及び血小板増加の完全な消散を経験した。TG101348は、MF関連全身症状、かゆみ及び悪液質に対して優れた活性を有していた。TG101348は、処置された被験者のうち相当な比率でJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少を生じた。TG101348は炎症促進性サイトカインの血清レベルに対して最小の効果を有し;これは研究薬中止の際に即時の有害なサイトカインリバウンド現象が無かったことと一致する。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、TG101348の活性は、そのJAK2阻害活性の直接の結果であり、非特異的な抗サイトカイン活性からの間接的な影響ではないように思われる。さらに、予備的な観察は、延長された処置に伴いBM細胞性及びレチクリン繊維増多における減少を示した。
【0116】
実施例3 骨髄線維症におけるTG101348の評価
この研究における被験者には、カプセル剤形態のTG101348を投与した。
【0117】
研究設計: この研究は第1相、用量段階的増大試験(MF−TG101348−001)を構成した。この研究は実施例1及び2にも記載される。研究適格患者は、≧18歳の年齢で高リスク又は中程度のリスクの原発性骨髄線維症(PMF)、PV後MF、又はET後MFを有していた(Tefferi A et al.、Leukemia 22:14−22、2008)。さらなる適格性基準及び参加施設を表6に列挙する。全ての患者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。主要評価項目は、TG101348の安全性及び許容性、用量制限毒性(「DLT」)、最大許容用量(「MTD」)及び薬物動態(「PK」)挙動の決定であった。副次的評価項目は、治療活性の評価であった。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
標準的な3+3コホートデザインを使用して、1日あたり30〜800mgの範囲に及ぶ8つの用量コホートのうちの1つに患者を割り当てた。24週(6x28日間サイクル)間の連続的な毎日の治療のための処置計画を用いて、TG101348を1日に1回経口投与した。被験者内用量段階的的増加を、開始用量での少なくとも3サイクルの処置完了後に許可した。DLTが確認されると、用量確認コホートはMTDで処置を開始した。患者にとって有益であると判断され、かつ十分に許容される場合に、6サイクルを超える処置が延長研究の際に許可された(MF−TG101348−002;NCT00724334)。
【0121】
毒性及び反応性の評価:安全性評価を、サイクル1の間は毎週、サイクル2及び3の間は1週おきに、そしてその後は4週ごとに行った。国立癌研究所有害事象共通用語規準(NCI−CTCAE)バージョン3.0に従って毒性を等級分けした。
【0122】
MPN研究と治療のためのインターナショナルワーキンググループ(IWG−MRT)の基準(Tefferi A et al.、Blood 108:1497−1503、2006)に従って4週ごとに反応性を測定した。骨髄組織学の評価を、24週の治療ごとにベースラインで行った。末梢血の顆粒球画分におけるJAK2V617F対立遺伝子比率の変化を以前に記載されたように測定した(Kittur J et al.、Cancer 109:2279−2284、2007);これらの評価は、最初の6サイクルでは4週ごとにベースラインで、そして延長研究では治療の6番目のサイクルごとであった。
【0123】
薬物動態:血漿中のTG101348の濃度−時間曲線を非コンパートメント解析により(WinNonlin(R)ソフトウエア、バージョン5.2)評価した。
【0124】
サイトカイン評価:サイトカイン測定のためのサンプルをベースラインで集め、そしてその後4週ごとに集めた。サイトカインレベルを多重サンドイッチELISA(Millipore、St. Charles、MO)を使用して測定した。
【0125】
結果
患者の登録:合計59人の被験者を登録した;用量段階的増大相に28人及び用量確認相に31人(表7)。44人の被験者はPMFを有しており、12人はPV後MF、そして3人はET後MFを有し;86%がJAK2V617F陽性であった。疾患の期間中央値は3.4年(範囲0.06〜25.8)であった。研究登録時に、触知可能脾臓サイズ中央値は左肋下縁の18cm下であり(83%が>10cmの触知可能脾臓サイズを有していた)、ヘモグロビンレベル中央値は9.2g/dLであり(範囲6.6〜15.2)、そして21人(36%)の被験者はIWG−MRT基準により赤血球輸液依存性であった。
【0126】
【表9】
【0127】
用量段階的増大相において、TG101348の開始用量は30mg/日であり、その後の用量レベルは60、120、240、360、520、680及び800mg/日であった(表7)。800mg/日において、6人のうち2人の患者はDLTを経験し;結果として、MTDを680mg/日に指定した。用量確認相において、すべての患者は処置をMTDで開始した。「MTDコホート」(n=40;表7)は、彼らの開始用量として680mg/日を投与された患者(用量段階的増大コホート、n=3;用量確認コホート、n=31)、及び薬物用量を800mg/日(n=6)からMTDが指定された後に680mg/日に減少させた患者を含んでいた。
【0128】
全体(n=59)及びMTD(n=40)コホートについてのTG101348に対する曝露中央値(範囲)は、それぞれ155(2−172)及び147(8−171)日であった。用量コホートごとの各サイクルの最後の時点のTG101348用量を図10及び11に示す。MTDコホートにおいて、28人の被験者(70%)が最初の6サイクルの間に用量減少を必要とした;主な理由は:血球減少(20%)、胃腸有害事象(12.5%)、アミラーゼ/リパーゼ上昇(10%)、ALT上昇(7.5%)、治験責任医師の裁量(7.5%)、又はその他の有害事象(12.5%)であった。MTDコホートについての用量減少時のサイクル中央値はサイクル3(範囲1−7)であった;サイクル3の最後の時点の用量中央値(範囲)は680mg/日(360−680mg/日)であり;そしてサイクル6の最後の時点で520mg/日(360−680mg/日)であった。
【0129】
MTDコホートからの28人(70%)を含む43人(73%)の被験者は延長研究で処置を継続した;延長研究への登録時に、31人(72%)の被験者は<680mg/日の薬物(中央値520mg/日;範囲120−680mg/日)を投与されていた。データ中断時、43人の被験者についてTG101348への累積曝露中央値(範囲)は380日(170−767)であった。完了した処置サイクル数は7〜29の範囲に及び;MTDコホートからの27人(68%)を含む39人の被験者(66%)は12処置サイクルを完了した。データ中断時、延長研究に参加した被験者の28%及び14%は、それぞれ18及び24処置サイクルを完了した。延長相の間の処置用量中央値(範囲)は440mg/日(120〜680mg/日)であった。
【0130】
薬物動態:TG101348のピーク血漿濃度は投薬の1〜4時間後に達成された。TG101348は、血漿PKパラメーター(Cmax及びAUC0-t)において用量に比例した増加よりも多い増加を示した(表8及び図12)。平均定常状態Cmax及びAUC0-t値は、用量の27倍増加を超えてそれぞれ約54倍及び88倍増加した。定常状態における最終相半減期は、すべての用量にわって同様のままであり(16〜34時間)、線形薬物消失と一致していた。図18は、1日に1回の経口投薬後(サイクル1;28日目)の線形プロットでの時間に対する平均血漿TG101348濃度のプロットを示す。この図は、時間とともにTG101348の血漿濃度と関連してTG101348のIC50値、IC90値、及び3倍IC90値(3xIC90)を示す。520mg/日の用量は、この用量が投与された後少なくとも24時間の間にわたって3xIC90を超えるTG101348血漿濃度を示した。360mg/日の用量は、3xIC90を超えるCmax、及びその用量が投与された後少なくとも24時間の間IC90を超えるTG101348の血漿濃度を示した。
【0131】
【表10】
【0132】
安全性プロフィール:800mg/日で処置された6人の患者のうち2人におけるDLTは、可逆性である無症候性グレード3又は4の高アミラーゼ血症(高リパーゼ血症を伴うか又は伴わない)であった。少なくともTG101348に関連する可能性のある最も一般的な非血液学的有害事象は、主にグレード1の悪心、下痢及び嘔吐を含んでおり;グレード3の事象は全体/MTDコホートにおいて被験者のそれぞれ3%/5%、10%/13%、及び3%/3%について報告され、そしてグレード4の事象はなかった(表9)。これらの有害事象は用量依存性であり、観察されたグレード3の発生はほとんど≧680mg/日のTG101348開始用量に伴うもののみだった。胃腸症状は大部分が自己限定的であるか、又は対症療法及び/若しくは用量減少により管理された。他の有害事象(グレード3/4;全体/MTDコホート)は、血清リパーゼ(10%/15%)、AST(2%/3%)、ALT(7%/8%)、クレアチニン(0%/0%)及びアルカリホスファターゼ(0%/0%)の無症候性増加を含んでいた(表9)。
【0133】
【表11】
【0134】
TG101348に関連していると考えられるグレード3/4血液学的有害事象は、貧血(ベースラインで輸血依存性でなかった37人の被験者の35%)、血小板減少(24%)及び/又は好中球減少(10%)を含んでいた(表10)。治療下で発現した血球減少の大部分は処置の最初の3サイクルにおいて見られた。グレード3/4の貧血を発症した13人の被験者(全てMTDコホート)のうち、67%はグレード2の貧血で研究に登録していた。輸液必要性の発生は、680mg/日(72%)で処置を開始した被験者とは対照的に、240〜520mg/日で処置を開始した被験者について有意に低かった(33%)。グレード3/4の血小板減少を有する14人の被験者のうち、4人及び5人の
被験者は、それぞれグレード1及び2の血小板減少で研究に登録された。
【0135】
【表12】
【0136】
データ中断時、治療6サイクルを超えてTG101348を継続投与することに伴って現れた固有の安全性知見はなかった。
【0137】
少なくともTG101348に関連すると考えられる重篤な有害事象は8人の被験者において発生し、そしてこれには無症候性高リパーゼ血症、血小板減少/好中球減少、抑うつ、腫瘍崩壊症候群、脳血管障害、及び脱水が含まれた(表11)。一人の被験者はグレード4の血小板減少のために処置を中止し;他の全ての事象は可逆性であり、そして被験者は有害事象の消散後により低い用量で処置を再開することができた。
【0138】
【表13】
【0139】
一人の被験者は、サイクル4(240mg/日)の間に重篤な肺高血圧及び右心不全を示し;この事象は治験責任医師によりTG101348と関係がないとみなされた。
【0140】
15人(25%)の被験者は、治療の最初の6サイクルの間に処置を中止した(表12)。中止の理由には、処置関連有害事象(n=6);治験責任医師の決定/介入性疾病(n=3)又は同意の撤回(n=6)が含まれた。43人の被験者のうち8人(19%)は延長研究の間の処置を中止し、合計24週〜46週の治療後の有害事象による3人が含まれる(表12)。
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
3人の被験者は疾患が進行し(研究開始時及び中止時の用量を示す):それぞれ心内膜炎が重なって進行性肝脾腫大及び腹水症を有し(サイクル2;680及び520mg/日)、骨髄線維症が加速し(サイクル13;520及び200mg/日)、そして白血病性形質転換(leukemic transformation)を有していた(サイクル2;520及び520mg/日)。
【0144】
反応を以下に示す。
【0145】
巨脾腫:脾臓反応の開始は急速であり、一般的には最初の2サイクル以内で見られた。サイクル6までに、36人の被験者(61%)は、触知可能脾臓サイズの最小25%の減少を経験した(MTDコホートにおける65%を含む)(包括解析(intent−to−treat analysis))。この時点までに、少なくとも8週間継続する触知可能脾臓サイズの≧50%の減少(すなわちIWG−MRT基準による臨床改善(「CI」))が全体及びMTDコホートにおいて被験者のそれぞれ39%及び45%で観察された。MTDコホートについての処置サイクルあたりの脾臓反応を図13に示す。6サイクルの処置を完了したJAK2V617F−陰性MFを有する4人の被験者のうち3人(75%)はCIを達成した。CIが観察された最も低い開始用量は240mg/日であった。あらゆる用量でのCIまでの時間の中央値(範囲)は141日(41〜171)であり、MTDコホートについては113日(41〜170)であった。サイクル12までに、脾臓反応(CI)が、全体及びMTDコホートについてそれぞれ被験者の48%及び50%で観察された。IWG−MRT基準による脾臓反応の平均(標準偏差)期間は、全体及びMTDコホートについてそれぞれ315(±129)日及び288日(±76)であった。
【0146】
全身症状:MTDコホートにおける35人の被験者は、ベースライン及び少なくとも1サイクルの終了時の早期満腹、疲労、寝汗、咳、及びかゆみの存在及び重症度を11点スケール(0=症状のない状態〜10=考えられる最悪の症状)で承認した(endorsed)。症状を「存在しない」(スコア=0)、「軽度」(スコア=1〜3)、「中程度」(スコア=4−7)、又は「重症」(スコア=8〜10)として分類した。
【0147】
早期満腹はベースラインで29人(85%)の被験者により報告された。2サイクルの処置(n=27)の後、56%はこの症状の完全な消散を報告した(図14A)。疲労はベースラインで26人(76%)の被験者により報告された。6サイクル後(n=16)、63%が改善を報告し、そして25%はこの症状の完全な消散を報告した(図14B)。寝汗はベースラインで14人(40%)の被験者により報告された。1サイクル後、被験者の64%はこの症状が完全に消散した;6サイクル後、この比率は89%(n=9)に増加した(図14C)。咳はベースラインで13人(37%)の被験者により報告された。1サイクル後(n=12)、75%がこの症状の改善を報告し、そして67%が完全な消散を報告した。かゆみはベースラインで8人(23%)の被験者により報告され、1サイクル後、75%が改善し、50%は完全な消散を報告した。全身症状における反応は大部分の例において永続的なものであった。
【0148】
体重:6及び12サイクルの終わりに、体重中央値は全体及びMTDコホートについてベースラインと比較して安定していた(表13)。
【0149】
【表16】
【0150】
白血球増加及び血小板増加:白血球増加(WBC数>11×109/L)はベースラインで33人の被験者(56%)に存在し、そのうち28人は6サイクルの処置を完了した;これらのうち、18人はMTDコホートであった。6サイクル後、様々な用量にわたる16人の被験者(57%)及びMTDコホートの13人の被験者(72%)は正常WBC数を達成した(図15);12サイクル後、様々な用量の25人のうち14人(56%)及びMTDコホートの17人のうち10人(59%)は正常WBC数を有していた。
【0151】
血小板増加(血小板数>450×109/L)がベースラインで様々な用量の10人(17%)の被験者及びMTDコホート(n=37)の7人(19%)の被験者で見られ、この全てが6サイクルの治療を完了した。この時点で、様々な用量及びMTDコホートの被験者のそれぞれ90%及び100%が正常血小板数を達成した;12サイクル後、様々な用量の8人のうち7人の被験者(88%)及びMTDコホートの全ての6人の被験者が正常血小板数を有していた。
【0152】
JAK2V617F対立遺伝子比率:51人(86%)の被験者はJAK2V617F−陽性であり、対立遺伝子比率中央値(範囲)は20%(3%〜100%)であった;これらのうち、23人(45%)は「有意な」対立遺伝子比率(ベースラインで>20%と定義される)を有し、中央値(範囲)は60%(23%〜100%)であった。全体の変異陽性被験者について、6サイクル(p=0.04)及び12サイクルの処置(p=0.01)後にJAK2V617F対立遺伝子比率の有意な減少があった(図16A及び16B)。6及び12サイクルの処置後に、対立遺伝子比率中央値(範囲)はそれぞれ17%(0%〜100%)及び19%(0%〜100%)であった。同様に、ベースラインJAK2V617F対立遺伝子比率が>20%である23人の被験者について、6サイクル(p=0.002)及び12サイクルの処置(p=0.002)後にJAK2V617F対立遺伝子比率の有意でかつなおさらに顕著な減少があった(図16C及び16D)。6及び12サイクルの処置後に、対立遺伝子比率中央値(範囲)はそれぞれ31%(4%〜100%)及び32%(7%〜100%)であった。6サイクル後に、ベースライン対立遺伝子比率が>20%の20人の被験者のうちこの時点に到達した16人(80%)は、中央値61%(範囲6%〜96%)の減少を示し、そして9人の被験者(45%)はJAK2V617F対立遺伝子比率が≧50%減少した。対照的に、4人の被験者(20%)は増加を示した(18%、21%、30%、及び58%)。対立遺伝子比率>20%を有するグループのうち18人の被験者(78%)は12サイクルの処置を中央値50%(範囲29%〜82%)の減少を伴って完了し、そして7人(39%)の被験者はJAK2V617Fが≧50%減少した。3人(17%)の被験者は対立遺伝子比率(7%、18%、及び22%)において増加を示し、そしてベースラインで100%対立遺伝子比率の他の2人は変化を示さなかった。
【0153】
考察:この研究において処置された患者のかなりの割合が、症候性巨脾腫、白血球増加、血小板増加、及び全身症状の急速で実質的かつ持続的な制御を経験した。さらに、疾患を改変する活性の可能性を示すゲノム疾病負荷(disease burden)の有意な減少についての証拠もあった。JAK2V617F陰性であるMFの患者において反応があった。この研究における被験者が、JAK−STATシグナル伝達経路における他の変異、例えばMPL、LNK又はまだ知られていない対立遺伝子を有するかどうかは未知である(Pardanani AD et al.、Blood 108:3472−3476、2006; Oh ST et al.、Blood First Edition Paper、prepublished online April 19、2010; DOI 101182/blood−2010−02−270108 2010; Pardanani A et al.、Leukemia In press:2010)。
【0154】
臨床研究結果は、TG101348治療が事前の用量を減少又は漸減することなく中止され得るということを示す。中止した被験者は(後日再継続してもしなくても)「サイトカインリバウンド」を経験しなかった。このことは、この処置が事前に用量を減少することなく中止され得るということを示す。
【0155】
骨髄線維症の状況においてサイトカインリバウンドは、TG101348治療以外の治療を受けており、かついずれかの理由で中止した患者において発生した現象である。いくつかの場合において、中止した患者は、急性脾臓サイズ増大及び全身症状の再発を含む重篤な症状を経験した。いくつかの場合、中止した患者は生命をおびやかす血行動態障害を経験した(Wadleigh and Tefferi、Clinical Advances in Hematology & Oncology、8:557−563、2010)。
【0156】
MFにおけるJAK−STAT経路の小分子阻害剤の中でも中でも注目すべきことに、JAK2V617F変異対立遺伝子比率の有意でかつ持続した減少を誘導するその能力においてTG101348は独特であると思われる。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、疾病負荷に対するJAK2阻害の効果は、JAK1に加えてJAK2にも非特異的活性を有するJAKファミリーアンタゴニストに応じて主要な役割を果たし得る間接的な抗サイトカイン作用とは対照的に、TG101348を用いる骨髄線維症における臨床的有効性の証拠の根拠であると思われる。このことを支持して、TG101348処置の過程においてベースラインと比較して炎症促進性サイトカイン(インターロイキン(「IL」)−6、IL−2、IL−8、及びTNF−α)レベルの一貫した変化は無かった(図17)。
【0157】
対照的に、かつJAK2に対するTG101348の特異的活性と一致して、ベースラインに対する血清EPOの増加及びより低い程度でTPOレベルの増加が処置開始後に観察された(データは示していない)。
【0158】
TG101348についてのDLT(無症候性高アミラーゼ血症、高リパーゼ血症を伴うこともある)がニロチニブを含む他の小分子阻害剤でで観察された(Kantarjian HM et al.、Blood 110:3540−3546、2007)。胃腸有害事象はこの研究において頻繁であったが、処置中止の原因となったのは1人の被験者においてのみであった。これらの症状は早ければ最初に投与した後に生じ、そして明確な用量依存性の関係を示した。TG101348の骨髄抑制作用もまた用量依存性であった。
【0159】
TG101348のMTD(680mg/日)は最も有効な用量であるが、有害事象の最も高い発生率も伴った。従って、より低い開始用量(例えば400〜500mg/日)が最適なリスク/ベネフィットバランスをもたらし得る。さらに、骨髄線維症は異種疾患(heterogeneous disease)であり、動的投薬スケジュールが患者に特異的な最適用量を同定する機会を最大にし得る。
【0160】
これらの所見は、MFに加えて、TG101348がPV及びETの処置について潜在的な役割も有し得るということを示唆する。
【0161】
実施例4. TG101348の合成
実施例4.1 N−tert−ブチル−3−(2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド (中間体)
実施例4.1(a)
【化3】
2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミン(1)(0.4g、2.8mmol)、3−ブロモ−N−tert−ブチル−ベンゼンスルホンアミド(2)(1.0g、3.4mmol)、Pd2(dba)3(0.17g、0.19mmol)、キサントホス(Xantphos)(0.2g、3.5mmol)及び炭酸セシウム(2.0g、6.1mmol)の混合物をジオキサン(25mL)に懸濁し、そしてアルゴン雰囲気下で3時間加熱還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、そしてDCM(30mL)で希釈した。この混合物をろ過し、そしてろ液を真空で濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、そして固形物が沈殿するまでヘキサンを加えた。ろ過した後、表題化合物(1.2g、98%)を淡褐色固体として得た。これを精製することなく次の工程で使用した。MS(ES+):m/z355(M+H)+
【0162】
実施例4.1(b)
【化4】
この中間体を2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジン(SM1)及びN−t−ブチル−3−アミノベンゼンスルホンアミド(SM2)から以下の工程で合成した:(1)MeOH(6.7UOa)及びSM1(Combi Blocks)(UOa)を混合し;(2)SM2(1.15UOa、082eq)及びH2O(8.5UOa)を加え;(3)45℃に20時間、N2下で加熱し、IPC CPL SM2<2%;(4)20℃に冷却し;(5)遠心分離し(N2);(6)H2O(2.1UOa)+MeOH(1.7UOa)で洗浄し;(7)固形物をH2O(4.3UOa)+MeOH(3.4UOa)と混合し;(8)遠心分離(N2)し;(9)H2O(2.1UOa)+MeOH(1.7UOa)で洗浄し;そして(10)45℃で15時間真空乾燥させる。中間体を得た、質量49.6kg(UOb);収率79%;OP:99.6%。
【0163】
実施例4.2 N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド
【化5】
【0164】
実施例4.2(a)
N−tert−ブチル−3−(2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド(中間体)(0.10g、0.28mmol)及び4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニルアミン(3)(0.10g、0.49mmol)の酢酸(3mL)中の混合物をマイクロ波反応チューブ中に密封し、マイクロ波を150℃で20分間照射した。室温まで冷却した後、キャップを外し、そして混合物を濃縮した。残留物をHPLCにより生成し、そして補正した(corrected)フラクションを合わせて飽和NaHCO3水溶液(30mL)中に注いだ。合わせた水相をEtOAc(2x30mL)で抽出し、そして合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そしてろ過した。ろ液を濃縮して得られた固形物を最少量のEtOAcに溶解し、そして固体が沈殿するまでヘキサンを加えた。ろ過した後、表題化合物を白色固体として得た(40mg、27%)。1H NMR(500MHz、DMSO−d6):δ 1.12(s、9H)、1.65−1.70(m、4H)、2.12(s、3H)、2.45−2.55(m、4H)、2.76(t、J=5.8Hz、2H)、3.99(t、J=6.0Hz、2H)、6.79(d、J=9.0Hz、2H)、7.46−7.53(m、4H)、7.56(s、1H)、7.90(s、1H)、8.10−8.15(m、2H)、8.53(s、1H)、8.77(s、1H). MS (ES+):m/z 525(M+H)+
【0165】
実施例4.2(b)
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド二塩酸塩一水和物を、4−[2−(1−ピロリジニル)エトキシ]アニリン二塩酸塩(SM3)及び中間体から工程(A)及び(B)に従って製造した。
【0166】
工程(A)、SM3からSM3の遊離塩基(3)の製造は、工程(1)?(9)を含んでいた:(1)NaOH(0.42UOb)をH2O(9UOb)に溶解させ;(2)<20℃にN2下で冷却し;(3)TBME(6UOb)を加え、次いでSM3(Malladi Drugs)(1.06UOb)を加え;(4)>20分混合した後止めて;(5)水相を排出させ、次いでTBME(3UOb)で抽出し;(6)有機相を合わせて;(7)真空でT<40℃で濃縮して油状物とし;(8)IPA(2.5UOb)に溶解させ;そして(9)乾燥抽出物23%と算出した。
【0167】
工程(B)は工程(1)−(6)を含んでいた:(1)IPA(10.5UOb)及び中間体(UOb)を混合し;(2)SM3の遊離塩基(0.75UOb、1.33eq/中間体(Interm))を加え;(3)濃HCl(0.413UOb)を加え;(4)70℃に20時間N2下で加熱し、IPC CPL Interm<2%;(5)<20℃に冷却し;(2)遠心分離し(N2);(3)IPA(3UOb)で洗浄し;(4)50℃で26時間真空乾燥させ;(5)Fitzmillで塊を砕き(De−lump);そして(6)ポリ袋(x2)/ポリドラムに入れた。得られたTG101348二塩酸塩一水和物、質量83.8kg;収率98%;OP:99.5%。
【0168】
実施例5 TG101348のカプセル剤形態及びTG101348の製造方法
TG101348製剤を10mg、40mg、及び200mgのカプセル強度(strengths)で提供し、ここで質量はTG101348の活性(すなわち遊離塩基)部分の量について規定される。各強度のTG101348カプセル製剤の定量組成を表14に示す。
【0169】
【表17】
【0170】
各強度のカプセル剤の製造過程において使用された成分を、バッチごとに基づいて表15に示す。
【0171】
【表18】
【0172】
TG101348カプセル剤を製造する方法を以下に記載する:
A. 顆粒内成分の乾式造粒(3つの製剤強度全てについて実施される):1.TG101348及び顆粒内フマル酸ステアリルナトリウムをV−ブレンダーで5分間混合した。2.このブレンドを丸型18メッシュ篩及び丸型羽根車を備えたコニカルミルに通した。このブレンドをV−ブレンダー中に再び入れた。3.顆粒内ケイ化結晶セルロースを20メッシュ篩にかけてブレンダーに加えた。この混合物を15分間混合した。4.このブレンドをローラーコンパクターに通した。5.このローラー圧縮されたリボンを丸型16メッシュ篩及び丸型羽根車を備えたコニカルミルに通した。6.粉砕された材料をVブレンダー内で5分間混合した。7.工程内検査(IPC)サンプルを試料採取器を使用してVブレンダーから抜き取った。サンプルを効力分析にかけた。
【0173】
B.顆粒外成分(10mg及び40mgカプセル剤について実施される)の添加:1.顆粒の効力(Aの工程7から)が名目上98〜102%(w/w)の範囲外である場合、顆粒外ケイ化結晶セルロースをそれに従って調整した。2.V−ブレンダーにTG101348二塩酸塩一水和物/ケイ化結晶セルロース/フマル酸ステアリルナトリウム顆粒(Aより)を入れた。3.顆粒外ケイ化結晶セルロースを20メッシュの篩にかけてV−ブレンダーに加えた。4.顆粒外フマル酸ステアリルナトリウムをV−ブレンダーに加えた。5.顆粒内及び顆粒外成分を15分間混合した。6.IPCサンプルをサンプル採取器を使用してV−ブレンダーから抜き取り、そして効力について分析した。
【0174】
C. カプセル充填(3つの製剤強度全てについて実施される):1.効力(200mgのカプセル剤についてはAにおける工程7から、又は10mg及び40mgのカプセル剤についてはBにおける工程6から)が名目上98〜102%(w/w)の範囲外である場合、カプセル充填質量をそれに従って調整した。2.製造した材料を自動カプセル充填機を使用してカプセル封入した。製造したカプセル剤を瓶詰めし、そして20〜28°F(68〜82℃)及び周囲湿度で貯蔵した。
【0175】
含量均一性及び溶解を調べた。HPLC法バリデーションを、一分析者、一分析者あたり一回の実行の設計を使用して行い、そして特異性、感受性、精度、真度、直線性、及びサンプル安定性についての全ての必要な基準を満たした。TG101348とその関連化合物、中間体及び分解物の全てとの間のピーク分解能を比較することにより特異性を評価し、そして確認した(強制分解試験により確立された)。定量限界及び検出限界をそれぞれ0.10μg/mL及び0.03μg/mLのTG101348で確立した。含量均一性の精度を、標的アッセイ濃度で調製された10mg及び200mgの強度のカプセル剤の6回のインジェクションにより評価した。RSD結果は10mg及び200mgの強度のカプセルについてそれぞれ3.7%及び5.8%であった。溶解についての精度を、10mg及び200mgの強度のカプセルのそれぞれの溶解の時点での6回のインジェクションにより評価した。全ての強度及び対応する時点での相対標準偏差(「RSD」)の結果はバリデーションプロトコルにおいて規定される許容基準の十分範囲内(±10%)であった。真度(10mg及び200mgの強度のカプセル剤についてプラセボ溶液中に添加された被験者の回収により定義される)を、標的アッセイ標準濃度の70%、100%、及び130%で評価した。全ての測定についての回収値は、バリデーションプロトコルにおいて規定される許容基準内(93%〜105%)であった。直線性を標的アッセイ標準濃度の50%〜120%の範囲にわたって実証し、1.00のr2を示した。サンプル安定性及び方法頑健性も方法バリデーションの間に実証した。
【0176】
実施例6 TG101348についての製剤研究
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド ジ−HCl一水和物塩についての製剤研究を行った。
【0177】
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド
ジ−HCl一水和物塩のカプセルシェルとの適合性
N−tert−ブチル−3−[(5−メチル−2−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]アミノ}ピリミジン−4−イル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド ジ−HCl一水和物塩(TG101348 ジ−HCl一水和物)の腐食性/酸性の性質がジ−HCl塩の潜在的な腐食性/酸性の性質に起因してカプセルと不適合性であるかどうかは知られていなかった。
【0178】
硬ゼラチン及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルシェル(サイズ#00250)にTG101348 ジ−HCl一水和物250mgを充填した。この充填したカプセルを加速安定下に置いた(40℃/75%相対湿度(RH)及び25℃/60%RH)。これらのカプセル剤を30mL(1oz)琥珀色高密度ポリエチレン(HDPE)瓶中に入れた。安定性試験のための製剤及び加速安定性プロトコルの要約を表16に示す。
【0179】
【表19】
【0180】
TG101348 ジ−HCL一水和物がゼラチン硬カプセルに適合性であることが見出された。属性(外観、アッセイ、不純物)における検知可能な変化は研究の時点(t=1、2、及び3週)にわたって観察されなかった。
【0181】
薬物物質ブレンドのフィラー及び滑沢剤との適合性
製剤ブレンドのマトリックスを、TG101348 ジ−HCl一水和物の4つのフィラー及び2つの滑沢剤との適合性を調べるために設計した(表17)。500μmの篩に全ての成分を通して予めふるいにかけておき、滑沢剤を除く全ての成分をTurbula
T2Bブレンダーを使用して10分間22rpmでブレンドし、このブレンドを500μmの篩に通し、10分間混合し、滑沢剤(質量調整)を加え、そして5分間混合することにより、それぞれ2.5gのスケールでブレンドを準備した。このブレンドを製造して30mLの琥珀色HDPE瓶中で主条件(60℃/周囲湿度)及びバックアップ条件(40℃/75% RH、25℃/60%RH、及び5℃)で貯蔵した。加速安定性プロトコルの要約を表18に示す。属性(外観、アッセイ、不純物)における検知可能な変化は研究の間に観察されなかった。
【0182】
【表20】
【0183】
【表21】
【0184】
カプセル中粉末の開発
添加剤選択
TG101348 ジ−HCl一水和物の4つのフィラー(ラクトース、マンニトール、結晶セルロース(MCC)Avicel PH102、及びMCC ProSolv 90 HD)及び2つの滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv)との乾式ブレンドの添加剤適合性試験(表17)は不適合性を示さなかった。Prosolv SMCC 90HD(すなわち、ケイ化結晶セルロース)及びラクトースFast−Flo(すなわち、噴霧乾燥ラクトース一水和物)を、直接乾式ブレンドプロセスに適している特性に基づいてさらなる試験のためのフィラーとして選択した。ステアリン酸マグネシウム(食品グレード)及びPruvをさらなる試験のための滑沢剤として選択した。全ての添加剤は固形経口投薬形態における使用ついて世界的に規制当局の認可を受けている(米国、欧州連合、日本)。
【0185】
乾式粉末プロセス開発のための適合性
丸みを帯びた/顆粒の外観の粒子を有するTG101348 ジ−HCl一水和物、ケイ化結晶セルロース(Prosolv SMCC 90HD)、及びフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv)の真密度をヘリウム式粒子密度測定器(helium pycnometer)(Micromeritics Accupyc 1340)を使用して測定した。薬物物質及び添加剤(フィラー/希釈剤)の真密度は十分に適合していることがわかった。
【0186】
カプセル製剤
安定性評価のためのプロトタイプカプセル製剤の「マトリックス」を設計し、それを表19にまとめる。2つの投薬強度10及び125mgを選択した。
【0187】
【表22】
【0188】
加速安定性試験プロトコル
表20は、カプセルプロトタイプに適用された加速安定性プロトコルを要約する。属性(外観、アッセイ、不純物、インビトロ溶解)の感知できる変化は研究の時点にわたって観察されなかった(40℃/75% RH及び25℃/60% RHでt=1、2、4、及び8週)。これらの結果に基づいて、プロトタイプP2及びP6をさらなる評価のために選択した。
【0189】
【表23】
【0190】
インビトロ溶解性能の考察
インビトロ溶解試験において、ゼラチンカプセルシェル中に充填されたプロトタイプ製剤(P1、P2、P5、P6)は、15分位内に>85%の薬物放出を示した。HPMCカプセルシェル中に充填されたプロトタイプ製剤(例えば、P3、P4、P7、P8)は、典型的には60分後に<60%の薬物放出を示した。従ってHPMCカプセルのプロトタイプはt=0試験より先に進めなった。
【0191】
吸収促進薬カプセル開発
TG101348はcaco−2透過性データに基づいて、「低」透過性と「高」透過性の間の境界線上にある。さらに、複数の種におけるバイオアベイラビリティは典型的には20〜25%であった。従って、「吸収促進薬」が適切なバイオアベイラビリティを達成するために製剤において必要であるかどうかは分からなかった。
【0192】
添加剤の選択
上記の添加剤の適合性に基づいて、ケイ化結晶セルロース(Prosolv SMCC
90HD)を吸収促進製剤のための主フィラー/担体添加剤として使用した。4つの吸収促進添加剤候補をさらなる試験のために選択した(表21)。
【0193】
【表24】
【0194】
製剤及び製造方法
表22は、試験した吸収促進製剤を要約する。直接ブレンド製造プロセスと対照的に、溶融造粒を製剤を製造するために選択した。
【0195】
【表25】
【0196】
交差ビーグル犬PK研究
交差ビーグル犬PK研究を、5つの製剤を試験して行った:以下に記載されるような経口液剤、吸収促進薬を含まない2つのカプセル製剤及び吸収促進薬を含む2つのカプセル製剤。
【0197】
5匹のビーグル犬に125mgのTG101348用量で、又は平均体重にもとづいて約11mg/kgで各製剤を投与し、投与の間には1週間「休薬(washout)」した。投与した製剤を表23にまとめる。
【0198】
【表26】
【0199】
4つのカプセル製剤全てが参照液剤用量に対して生物学的同等性を示すとともに即時放出特性を示した。従って、ヒトcaco−2細胞における境界線の透過性及び様々な動物種における20〜25%のバイオアベイラビリティにもかかわらず、吸収促進製剤を用いないカプセル製剤は即時放出特性を示した。
【0200】
プロセス開発
薬物物質粒子形態
丸みを帯びたもの、顆粒状粒子(平均粒径約25μm)から小さい針状物まで(平均粒径約7〜10μm)の様々な粒子形態が薬物物質の異なるロット間で見られた。針状形態は高度に静的であることが分かり、これは製剤製造に悪影響を及ぼし得、そして製剤含有物均一性にも悪影響を及ぼし得る。
【0201】
乾式造粒プロセス
平均粒径25μmを有する丸みを帯びた顆粒状粒子を有する薬物物質を用いて開発された初期処方は、0.5%w/wの滑沢剤を含む、50:50質量比のTG101348薬物物質及びフィラーであった。ローラー圧縮の前に、薬物、フィラー及び滑沢剤のブレンドを準備した。本明細書に記載されるように、薬物物質を、製剤化添加剤とブレンドする前に、co−milを通して解砕(de−agglomerate)した。小針状物を有する薬物物質は貯蔵の際に凝集する高い傾向を示した。小針状物を有する薬物物質を解砕した後、かなりの再凝集又は「集塊」がほとんど瞬時に起こるだろう。この再凝集は、製粉の前に滑沢剤と薬物をブレンドすることにより有意に低減された。
【0202】
TG101348 ジ−HCL一水和物の初期処方は、約50:50の質量比のTG101348薬物物質及びフィラーと共に0.5%w/wの滑沢剤を含んでいた。この処方は、流動性が乏しく、ローラーコンパクター内で金属ロールにかなりの付着を示した。
【0203】
ステアリン酸マグネシウム滑沢剤の量はこの処方において増加され得るが、処方内の濃度を増加させると、薬物放出速度論に悪影響を及ぼし得る。滑沢剤ラウレル(laurel)フマル酸ナトリウムもまたTG101348 ジ−HCl一水和物と適合性であることが示され、そしてステアリン酸マグネシウムよりも低い吸湿性であり、これをステアリン酸マグネシウムの代わりに(2.0%w/wの質量比で)加えて、これはローラーコンパクターの金属ロールへの製剤の付着を最小にした。しかし、粉末の流動性は乏しいままであった。
【0204】
フィラーに対するTG101348薬物物質の比を約50:50から約40:60に減らした。滑沢剤(Pruv)含量も1%w/wに減らし、これはローラーコンパクター内での許容出来る流動性及び最小の付着をもたらした。
【0205】
多用量製剤の開発
カプセルの手作業による充填(hand−filling)の試験において、サイズ#00のゼラチンカプセルシェル中に積極的に充填して、顆粒約600mgが最大の達成可能な重点であるようであった。従って、製剤中の40%w/wの薬物物質充填、及び83.78%の遊離塩基含量を含むTG101348ジ−HCL一水和物バッチで、200mg強度という高いカプセル剤強度が実行可能と思われた。
【0206】
顆粒内TG101348ジ−HCL一水和物及びラウレル(laurel)フマル酸ナトリウムを有する粒子を製造するための、本明細書に記載されるように開発された乾式造粒プロセスは、乾式ブレンドプロセスを使用する様々な投薬量のカプセル剤の製造を可能にした。
【0207】
平均顆粒サイズは約300μmであり、そしてケイ化結晶セルロース平均粒径は約100μmであった。従って、40mg及び10mgのカプセル強度の製剤が、顆粒外ケイ化結晶セルロースでの顆粒の希釈により製造された。顆粒及び顆粒外ケイ化結晶セルロースのサイズ内の全体的な粒径は、均質な混合を可能にするために十分に似たものであった。
【0208】
40mg強度のカプセル剤を、200mg製剤と同程度の充填体積を同じカプセルシェル内に含む処方を使用して製造した(サイズ#00ゼラチン硬カプセル)。10mg強度のカプセル剤については、40mgカプセル強度製剤と共通のブレンドを、より小さなカプセルサイズに充填することにより使用した。
【0209】
経口液剤処方
薬物物質、0.5%メチルセルロース(MC)及び0.05%Tween 80を含有する経口液剤処方を開発した。pH安定性研究を、0.22μmポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通した製剤において60℃で行った。属性(外観、アッセイ、不純物)における感知できる変化は研究の過程(14日)にわたって観察されなかった。薬物物質及び0.5%MCを含有する第二の経口液剤を開発した。この第二の経口液剤をイヌのPK研究において使用した。
【0210】
前述の実施例は、理解の明確さのための説明及び実施例としていくらか詳細に記載されてきたが、これらの説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11
図12A
図12B
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18