(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133239
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】顆の曲率が制御された、後十字靭帯温存型整形外科的膝関節プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
A61F2/38
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-125191(P2014-125191)
(22)【出願日】2014年6月18日
(62)【分割の表示】特願2009-153355(P2009-153355)の分割
【原出願日】2009年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-208265(P2014-208265A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】12/165,574
(32)【優先日】2008年6月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・エム・ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ・ソコロフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン・エス・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エル・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】サイド・ティー・ゴマ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・アーマコスト
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−108249(JP,A)
【文献】
特表2005−532089(JP,A)
【文献】
特開2001−252295(JP,A)
【文献】
特表2000−514338(JP,A)
【文献】
特表昭55−500222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
矢状面において湾曲した顆表面を有する大腿骨構成要素と、
前記大腿骨構成要素の前記顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を有する脛骨ベアリングと、
を含み、
前記顆表面は、(i)約30°未満である第1の屈曲度において前記顆表面上の第1の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(ii)約45°より大きい第2の屈曲度において前記顆表面上の第2の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(i)前記矢状面における前記顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径を有し、(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第2の接触点における第2の曲率半径を有し、(iii)前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であり、
前記顆表面の曲率半径は、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間で漸進的に推移し、
前記第2の屈曲度は、45°〜90°の範囲内であり、
前記顆表面は、前記大腿骨構成要素が前記第1の屈曲度から前記第2の屈曲度へ動かされると、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
前記複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、前記複数の接触点のうちのそれぞれの前記接触点へ延びる半直線により定められ、各半直線は、以下の多項式により定められる長さを有し:
rθ=(a+(b*θ)+(c*θ2)+(d*θ3))、
式中、rθは、屈曲θ度で接触点を定める前記半直線の前記長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.00、0.00<b<0.30、および、b=0からなる群から選択される範囲の係数値であり、
bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、(i)cは、0.00〜0.012の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0<b<0.30の範囲にある場合、(i)cは、−0.010〜0.00の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0に等しい場合、(i)cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択される範囲の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、約1.35である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項3】
請求項1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の屈曲度は、0°〜10°の範囲内であり、前記第2の屈曲度は、60°〜70°の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項4】
請求項1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記顆表面は、前記第2の屈曲度より大きい第3の屈曲度において前記顆表面上の第3の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第3の接触点における第3の曲率半径であって、前記第3の曲率半径は、前記第2の曲率半径より少なくとも0.5mmだけ大きい、第3の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項5】
請求項4に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項6】
請求項4に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記顆表面は、前記第3の屈曲度より大きい第4の屈曲度において前記顆表面上の第4の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第4の接触点における第4の曲率半径であって、前記第4の曲率半径は、前記第3の曲率半径より小さい、第4の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項7】
請求項6に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.35であり、前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.28であり、前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.305である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【請求項8】
請求項1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の曲率半径は、起点を有し、
前記第1の曲率半径の前記起点と前記半直線の前記共通の起点との間の距離は、0〜10mmの範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連する米国特許出願への相互参照〕
2008年6月30日出願の、Joseph G. Wyssによる、「Posterior Stabilized Orthopaedic Knee Prosthesis Having Controlled Condylar Curvature」と題された米国特許出願第XX/XXX,XXX号;2008年6月30日出願の、John L. Williamsによる、「Orthopaedic Femoral Component Having Controlled Condylar Curvature」と題された米国特許出願第XX/XXX,XXX号;2008年6月30日出願の、Joseph G. Wyssによる、「Posterior Stabilized Orthopaedic Prosthesis」と題された米国特許出願第XX/XXX,XXX号;および、2008年6月30日出願の、Joseph G. Wyssによる、「Orthopaedic Knee Prosthesis Having Controlled Condylar Curvature」と題された米国仮特許出願第XX/XXX,XXX号に対して、相互参照が行われ、これらそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、概して、整形外科的プロテーゼに関し、特に、膝関節置換手術で使用される整形外科的プロテーゼに関する。
【0003】
〔背景〕
関節形成術は、周知の外科処置であり、この処置により、罹患かつ/または損傷した自然の関節が、プロテーゼ関節で置換される。典型的な膝関節プロテーゼは、脛骨トレー、大腿骨構成要素、および脛骨トレーと大腿骨構成要素との間に位置付けられたポリマーインサートまたはベアリングを含む。患者の関節への損傷のひどさによって、様々な可動性の整形外科的プロテーゼを用いることができる。例えば、膝関節プロテーゼは、著しい軟組織の損傷または損失がある場合など、膝関節プロテーゼの動きを制限するのが望ましい場合は、「固定された」脛骨ベアリングを含むことができる。代わりに、膝関節プロテーゼは、動きの、より大きな自由度が望まれる場合は、「可動性」脛骨ベアリングを含むことができる。加えて、膝関節プロテーゼは、患者の大腿骨の両方の顆における大腿骨と脛骨との界面を置換するように設計された全膝関節プロテーゼ(total knee prosthesis)、または、患者の大腿骨の1つの顆における大腿骨と脛骨との界面を置換するように設計された1区画(もしくは1つの顆の)膝関節プロテーゼであってよい。
【0004】
患者の自然の膝関節を置換するのに用いられる整形外科的膝関節プロテーゼのタイプは、患者の後十字靭帯が手術中に保持されるかまたは犠牲となる(すなわち除去される)かどうかによって決まることもできる。例えば、患者の後十字靭帯が手術中に損傷され、罹患し、かつ/または別様に除去される場合、後方安定型膝関節プロテーゼを用いて、比較的後期の屈曲度(later degrees of flexion)で追加の支持および/または制御を提供することができる。代わりに、後十字靭帯が無傷である場合、十字靭帯温存型膝関節プロテーゼを用いることができる。
【0005】
典型的な整形外科的膝関節プロテーゼは、概して、患者の関節の自然な動きを再現するように設計される。膝が屈曲および伸展するにつれて、大腿骨構成要素および脛骨構成要素は、関節接合し、また、相対的な前方‐後方運動と相対的な内‐外回転(internal-external rotation)との組み合わせを経験する。しかしながら、患者の周辺軟組織はまた、関節の運動範囲全体にわたって、整形外科的膝関節プロテーゼの運動力学および安定性に影響を与える。すなわち、整形外科的構成要素上の患者の軟組織により整形外科的構成要素に及ぼされた力により、整形外科的膝関節プロテーゼの不必要な、または望ましくない運動が引き起こされる場合がある。例えば、整形外科的膝関節プロテーゼは、大腿骨構成要素が脛骨ベアリングに対する屈曲範囲にわたって動くときに、ある量の不自然な(奇異な(paradoxical))前方並進運動を示す場合がある(すなわち、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの間の接点が前方へ動く)。この奇異な前方並進運動は、関節安定性の損失、磨耗の促進、膝の異常な運動力学(abnormal knee kinematics)を結果として生じ、かつ/または、何らかの活動中、患者に不安定な感覚を経験させる場合がある。
【0006】
〔概要〕
一態様によると、整形外科的膝関節プロテーゼは、大腿骨構成要素と、脛骨ベアリングと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素は、後十字靭帯温存型大腿骨構成要素(posterior cruciate-retaining femoral component)として具体化されてよい。大腿骨構成要素は、矢状面において湾曲している顆表面を含みうる。脛骨ベアリングは、大腿骨構成要素の顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を含むことができる。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素の顆表面は、第1の屈曲度において顆表面上の第1の接触点でベアリング表面に接触し、また、第2の屈曲度において顆表面上の第2の接触点でベアリング表面に接触することができる。第1の屈曲度は約30°未満であってよい。例えば、第1の屈曲度は、0°〜10°の範囲内であってよい。第2の屈曲度は、45°〜90°の範囲内であってよい。例えば、第2の屈曲度は、60°〜90°の範囲内であってよい。特定の一実施形態では、第1の屈曲度は約5°であり、第2の屈曲度は約65°である。
【0007】
大腿骨構成要素の矢状面における顆表面は、第1の接触点における第1の曲率半径と、第2の接触点における第2の曲率半径と、を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であってよい。例えば、特定の一実施形態では、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、約1.35である。
【0008】
いくつかの実施形態では、矢状面における顆表面は、第3の屈曲度において顆表面上の第3の接触点でベアリング表面に接触することもできる。第3の屈曲度は、第2の屈曲度より大きくてよい。例えば、第3の屈曲度は、80°〜110°の範囲内であってよい。特定の一実施形態では、第3の屈曲度は、約90°である。
【0009】
矢状面における顆表面は、第3の接触点における第3の曲率半径も含むことができる。第3の曲率半径は、第2の曲率半径より少なくとも0.5mmだけ大きくてよい。第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であってよく、また、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率より小さくてよい。例えば、特定の一実施形態では、この曲率半径は、約1.28である。
【0010】
加えて、いくつかの実施形態では、顆表面は、第4の屈曲度において顆表面上の第4の接触点でベアリング表面に接触することができる。第4の屈曲度は、第3の屈曲度より大きくてよい。例えば、第4の屈曲度は、90°〜120°の範囲内であってよい。特定の一実施形態では、第3の屈曲度は、約105°である。
【0011】
矢状面における顆表面は、第4の接触点における第4の曲率半径も含むことができる。第4の曲率半径は、第3の曲率半径より小さくてよい。第4の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であってよい。例えば、特定の一実施形態では、この曲率半径は、約1.305である。
【0012】
さらに、いくつかの実施形態では、顆表面は、大腿骨構成要素が第1の屈曲度から第2の屈曲度まで動かされた際に、第1の接触点と第2の接触点との間の複数の接触点でベアリング表面に接触することができる。複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、複数の接触点のうちのそれぞれの接触点まで延びる半直線(ray)により定められることができる。各半直線は、方程式:r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))により定められた長さを有することができ、式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める半直線の長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.0、0.00<b<0.30、およびb=0からなる群から選択された範囲内の係数値である。bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、cは、0.00〜0.012の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。代替的に、bが0<b<0.30の範囲にある場合、cは、−0.010〜0.00の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。さらに代替的に、bが0に等しい場合、cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択された範囲内の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。いくつかの実施形態では、第1の曲率半径の起点と半直線の共通の起点との間の距離は、0〜10mmの範囲内である。
【0013】
いくつかの実施形態では、矢状面における大腿骨構成要素の顆表面は、第1の曲面部分、および第2の曲面部分を含むことができる。第1の曲面部分は、第2の接触点と第3の接触点との間で定められることができる。第2の曲面部分は、第3の接触点と第4の接触点との間で定められることができる。そのような実施形態では、第1の曲面部分は、第3の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有することができる。加えて、第2の曲面部分は、第4の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有することができる。
【0014】
別の態様によると、整形外科的膝関節プロテーゼは、大腿骨構成要素と、脛骨ベアリングと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素は、後十字靭帯温存型大腿骨構成要素として具体化されることができる。大腿骨構成要素は、矢状面において湾曲された顆表面を含むことができる。脛骨ベアリングは、大腿骨構成要素の顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を含むことができる。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素の顆表面は、第1の屈曲度において顆表面上の第1の接触点でベアリング表面に接触し、第2の屈曲度において顆表面上の第2の接触点でベアリング表面に接触し、かつ、大腿骨構成要素が第1の屈曲度から第2の屈曲度へと動かされた際に、第1の接触点と第2の接触点との間の複数の接触点でベアリング表面に接触することができる。第1の屈曲度は、約30°未満であってよい。例えば、第1の屈曲度は、0°〜10°の範囲内であってよい。第2の屈曲度は、45°〜90°の範囲内であってよい。例えば、第2の屈曲度は、60°〜90°の範囲内であってよい。特定の一実施形態では、第1の屈曲度は、約5°であり、第2の屈曲度は、約65°である。
【0015】
複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、複数の接触点のうちのそれぞれの接触点に延びる半直線により定められることができる。各半直線は、方程式:r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))により定められる長さを有してよく、式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める半直線の長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.0、0.00<b<0.30、およびb=0からなる群から選択される範囲内の係数値である。bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、cは、0.00〜0.012の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。代替的に、bが0<b<0.30の範囲にある場合、cは、−0.010〜0.00の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。さらに代替的に、bが0に等しい場合、cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択される範囲内の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。いくつかの実施形態では、第1の曲率半径の起点と半直線の共通の起点との間の距離は、0〜10mm範囲内である。
【0016】
加えて、いくつかの実施形態では、顆表面は、第3の屈曲度において顆表面上の第3の接触点でベアリング表面に接触することができ、また、第4の屈曲度において顆表面上の第4の接触点でベアリング表面に接触することができる。第3の屈曲度は、第2の屈曲度より大きくてよく、第4の屈曲度は、第3の屈曲度より大きくてよい。矢状面における顆表面は、第1の接触点における第1の曲率半径、第2の接触点における第2の曲率半径、第3の接触点における第3の曲率半径、および第4の接触点における第4の曲率半径を含むことができる。第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率より小さくてよい。加えて、第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、第4の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率より小さくてよい。例えば、特定の一実施形態では、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、約1.35であり、第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、約1.28であり、第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、約1.305である。
【0017】
さらに、いくつかの実施形態では、矢状面における大腿骨構成要素の顆表面は、第1の曲面部分、および第2の曲面部分を含むことができる。第1の曲面部分は、第2の接触点と第3の接触点との間で定められることができる。第2の曲面部分は、第3の接触点と第4の接触点との間で定められることができる。そのような実施形態では、第1の曲面部分は、第3の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有しうる。加えて、第2の曲面部分は、第4の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有しうる。
【0018】
さらなる態様によると、整形外科的膝関節プロテーゼは、大腿骨構成要素と、脛骨ベアリングと、を含むことができる。大腿骨構成要素は、矢状面において湾曲された顆表面を含むことができる。脛骨ベアリングは、大腿骨構成要素の顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を含みうる。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素の顆表面は、第1の屈曲度において顆表面上の第1の接触点でベアリング表面に接触し、第2の屈曲度において顆表面上の第2の接触点でベアリング表面に接触し、第3の屈曲度において顆表面上の第3の接触点でベアリング表面に接触し、かつ、大腿骨構成要素が第1の屈曲度から第2の屈曲度へと動かされた際に、第1の接触点と第2の接触点との間の複数の接触点でベアリング表面に接触することができる。第1の屈曲度は、約30°未満であってよく、第2の屈曲度は、45°〜90°の範囲内であってよく、第3の屈曲度は、第2の屈曲度より大きくてよい。
【0019】
大腿骨構成要素の矢状面における顆表面は、第1の接触点における第1の曲率半径、第2の接触点における第2の曲率半径、および第3の接触点における第3の曲率半径を含みうる。第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であってよい。第3の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率は、第2の曲率半径に対する第1の曲率半径の比率より小さくてよく、また、1.10〜1.45の範囲内であってよい。
【0020】
複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、複数の接触点のうちのそれぞれの接触点に延びる半直線により定められうる。各半直線は、方程式:r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))により定められる長さを有することができ、式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める半直線の長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.0、0.00<b<0.30、およびb=0からなる群から選択される範囲内の係数値である。bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、cは、0.00〜0.012の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。代替的に、bが0<b<0.30の範囲にある場合、cは、−0.010〜0.00の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。さらに代替的に、bが0に等しい場合、cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択された範囲内の係数値であり、dは、−0.00015〜0.00の係数値である。いくつかの実施形態では、第1の曲率半径の起点と半直線の共通の起点との間の距離は、0〜10mmの範囲内である。
【0021】
加えて、いくつかの実施形態では、一対の離間した顆のそれぞれが、顆表面を含みうる。そのような実施形態では、顆表面は、実質的に対称であってよく、または非対称であってよい。
【0022】
詳細な説明は、特に、以下の図面に関する。
【0023】
〔図面の詳細な説明〕
本開示の概念は、様々な改変および代替形態が可能であるが、本開示の具体的な例示的実施形態が、図面に例として示されており、本明細書中で詳細に説明されるであろう。しかしながら、本開示の概念を、開示された特定の形態に制限することは意図しておらず、それどころか、添付の特許請求の範囲により定められるような本発明の趣旨および範囲に属する、すべての改変、等価物、および代替案を含むことが意図されていることが、理解されるべきである。
【0024】
前方、後方、内側、外側、上方、下方などといった、解剖学的基準(anatomical references)を表す用語は、本明細書で説明される整形外科的インプラント、および患者の自然な解剖学的構造の双方に関して本開示全体で使用されることができる。そのような用語は、解剖学研究および整形外科分野の双方における、十分に理解された意味を有する。明細書および特許請求の範囲におけるこのような解剖学的参照用語の使用は、特に注記がなければ、それら用語の十分理解された意味と一致することが意図されている。
【0025】
まず
図1を参照すると、一実施形態では、後十字靭帯温存型整形外科的膝関節プロテーゼ10は、大腿骨構成要素12と、脛骨ベアリング14と、脛骨トレー16と、を含む。大腿骨構成要素12および脛骨トレー16は、例証的には、コバルトクロムまたはチタンなどの金属材料から形成されるが、他の実施形態では、セラミック材料、ポリマー材料、生物工学によって作られた材料、または同種のものなど、他の材料から形成されてよい。脛骨ベアリング14は、例証的には、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などのポリマー材料から形成されるが、他の実施形態では、セラミック材料、金属材料、生物工学によって作られた材料、または同種のものなど、他の材料から形成されてよい。
【0026】
以下でさらに詳細に論じるように、大腿骨構成要素12は、脛骨トレー16と連結されるように構成された脛骨ベアリング14と関節接合するように構成されている。例証的な脛骨ベアリング14は、回転する脛骨ベアリングまたは可動性脛骨ベアリングとして具体化されており、使用中、脛骨トレー12に対して回転するように構成されている。しかしながら、他の実施形態では、脛骨ベアリング14は、脛骨トレー16に対して回転することを制限または禁止されうる、固定された脛骨ベアリングとして具体化されうる。
【0027】
脛骨トレー16は、患者の脛骨の、外科的に準備された近位端部(不図示)に固定されるように構成されている。脛骨トレー16は、骨接着剤または他の取付手段を使用することにより、患者の脛骨に固定されることができる。脛骨トレー16は、頂面20および底面22を有するプラットホーム18を含む。例証的には、頂面20は、概して平坦であり、いくつかの実施形態では非常に光沢のあるものであってよい。脛骨トレー16は、プラットホーム18の底面22から下向きに延びるステム24も含む。空洞部またはボア26が、プラットホーム18の頂面20に画定されており、ステム24内へと下向きに延びている。ボア26は、以下でさらに詳細に論じるように、脛骨インサート14の相補的なステムを受容するように形成されている。
【0028】
前記のとおり、脛骨ベアリング14は、脛骨トレー16と連結されるように構成されている。脛骨ベアリング14は、上部ベアリング表面32および底面34を有するプラットホーム30を含む。脛骨ベアリング14が、回転する脛骨ベアリングまたは可動性脛骨ベアリングとして具体化される例証的な実施形態では、ベアリング14は、プラットホーム30の底面32から下向きに延びるステム36を含む。脛骨ベアリング14が脛骨トレー16に連結されると、ステム36は、脛骨トレー16のボア26の中に受容される。使用の際、脛骨ベアリング14は、ステム36により定められた軸の周りで脛骨トレー16に対して回転するように構成されている。脛骨ベアリング14が、固定された脛骨ベアリングとして具体化される実施形態では、ベアリング14は、ステム22を含んでも含まなくてもよく、かつ/または、回転しない構成で脛骨ベアリング14を脛骨トレー12に固定するために、他の装置もしくは特徴部を含むことができる。
【0029】
脛骨ベアリング14の上部ベアリング表面32は、内側ベアリング表面42、および外側ベアリング表面44を含む。内側ベアリング表面42および外側ベアリング表面44は、以下でさらに詳細に論じるように、大腿骨構成要素14の、対応する内側顆および外側顆を受容するか、または別様にそれら顆に接触するように構成されている。したがって、ベアリング表面42、44のそれぞれは、凹状の輪郭を有する。
【0030】
大腿骨構成要素12は、患者の大腿骨の遠位端部の、外科的に準備された表面(不図示)に連結されるように構成される。大腿骨構成要素12は、骨接着剤または他の取付手段を使用することにより、患者の大腿骨に固定されることができる。大腿骨構成要素12は、一対の内側顆52および外側顆54を有する、外部関節接合表面50を含む。顆52、54は、この顆52、54間に顆間開口部(intracondyle opening)56を画定するように離間している。使用の際、顆52、54は、患者の大腿骨の自然の顆に取って代わり、脛骨ベアリング14のプラットホーム30の、対応するベアリング表面42、44上で関節接合するように構成される。
【0031】
例証的な整形外科的膝関節プロテーゼ10は、患者の右膝に取って代わるように構成されており、したがって、ベアリング表面42および顆52は、内側に位置するものとして言及され、また、ベアリング表面44および顆54は、外側に位置するものとして言及されることが認識されるべきである。しかしながら、他の実施形態では、整形外科的膝関節プロテーゼ10は、患者の左膝に取って代わるように構成されてよい。そのような実施形態では、ベアリング表面42および顆52は外側に位置してよく、ベアリング表面44および顆54は内側に位置してよいことが認識されるべきである。それとは関係なく、本明細書に記載される特徴部および概念は、患者のどちらかの膝関節に取って代わるように構成された整形外科的膝関節プロテーゼに組み込まれることができる。
【0032】
次に
図2を参照すると、大腿骨構成要素12の顆52、54のそれぞれは、顆表面100を含み、顆表面100は、矢状面において凸状に湾曲している。顆表面100は、いくつかの曲面部分102、104、106、および108から形成されており、これら曲面部分のそれぞれは、隣接する曲面部分に接している(tangent)。各曲面部分102、104、106、および108は、種々の屈曲度範囲にわたって、脛骨ベアリング14に接触する。例えば、顆表面100の曲面部分102、104は、初期屈曲の間(during early flexion)、脛骨ベアリング14に接触する。すなわち、大腿骨構成要素12が初期屈曲度にわたって脛骨ベアリング14に対して関節接合されるときに、大腿骨構成要素12は、各初期屈曲度において曲面部分102または曲面部分104上の1つ以上の接触点で脛骨ベアリング14に接触する。例えば、
図3に例示されるように、大腿骨構成要素12が屈曲約0度で位置付けられた場合、大腿骨構成要素12は、顆表面100上の接触点112で脛骨ベアリング14のベアリング表面42に接触する。
【0033】
同様に、顆表面100の曲面部分104は、中間屈曲(mid flexion)の間、脛骨ベアリング14に接触し、顆表面100の曲面部分106は、後期屈曲(late flexion)の間、脛骨ベアリング14に接触する。大腿骨構成要素12が中間屈曲度(middle degrees of flexion)にわたって脛骨ベアリング14に対して関節接合されると、大腿骨構成要素12は、各中間屈曲度において曲面部分104上の1つ以上の接触点で脛骨ベアリング14に接触する。例えば、
図4に例示されるように、大腿骨構成要素12が屈曲約45度で位置付けられた場合、大腿骨構成要素12は、顆表面100上の接触点114で脛骨ベアリング14のベアリング表面42に接触する。加えて、大腿骨構成要素12が後期屈曲度にわたって脛骨ベアリング14に対して関節接合されると、大腿骨構成要素12は、各後期屈曲度において曲面部分106上の1つ以上の接触点で脛骨ベアリング14に接触する。例えば、
図5に例示されるように、大腿骨構成要素12が屈曲約90度で位置付けられた場合、大腿骨構成要素12は、顆表面100上の接触点116で脛骨ベアリング14のベアリング表面42に接触する。当然、大腿骨構成要素12は、任意の1つの特定の屈曲度において顆表面100上の複数の接触点で脛骨ベアリング14に接触することが認識されるべきである。しかしながら、説明を明瞭にするため、接触点112、114、116のみが、
図3〜
図5にそれぞれ例示されている。
【0034】
再び
図2を参照すると、顆表面100の曲面部分102、106、108のそれぞれは、一定の曲率半径R1、R3、R4それぞれによって定められる。しかしながら、以下でさらに詳細に論じるように、曲面部分104は、一定の曲率半径ではなく、複数の半直線により定められている。以下でさらに詳細に論じるように、曲面部分104は、曲面部分102の曲率半径R1から、曲面部分106に接する曲率半径R2へと、顆表面100を徐々に推移させるように設計されている。
【0035】
曲面部分102、104、106、108は、脛骨ベアリング14に対する大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動の量が、減少されるか、または別様に、より大きな屈曲度になるまで遅滞されるように、設計されている。大腿骨構成要素のあらゆる奇異な前方並進運動の開始を、より大きな屈曲度になるまで遅滞させることによって、深い屈曲が通例得られない患者の活動中に、奇異な前方並進運動の全体的な発生が減少されうることが認識されるべきである。
【0036】
典型的な整形外科的膝関節プロテーゼでは、奇異な前方並進運動は、膝関節プロテーゼが0°を超える屈曲度で位置付けられるといつでも起こりうる。前方並進運動の可能性は、整形外科的膝関節プロテーゼが、より大きな屈曲度まで関節運動されるにつれて、増大する。そのような向きでは、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の奇異な前方並進運動は、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの間の接線(牽引)力が以下の方程式を満たすことができない場合はいつでも起こりうる:
T<μN (1)
式中、「T」は、接線(牽引)力であり、「μ」は、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの摩擦係数であり、「N」は、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの間の法線力(normal force)である。一般概念として、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの間の接線(牽引)力は、
T=M/R (2)
として定められてよく、
式中、「T」は、大腿骨構成要素と脛骨ベアリングとの間の接線(牽引)力であり、「M」は、膝のモーメント(knee moment)であり、「R」は、特定の屈曲度で脛骨ベアリングと接触している顆表面の矢状面における曲率半径である。方程式(2)は、支配的な現実の方程式(governing real-world equations)を単純化したものであり、そのような他の因子を慣性および加速(inertia and acceleration)とみなすものではないことが認識されるべきである。それとは関係なく、方程式(2)は、整形外科的膝関節プロテーゼの奇異な前方並進運動が、大腿骨構成要素の顆表面の曲率半径を制御することによって減少または遅滞されうるという見識を提供する。すなわち、顆表面の曲率半径を制御すること(例えば、曲率半径を増大させるかまたは維持すること)によって、方程式(2)の右辺は減少されることができ、それにより、接線(牽引)力の値が減少し、方程式(1)が満たされる。前記のとおり、接線(牽引)力が方程式(1)を満たすことを確実にすることにより、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の奇異な前方並進運動は、減少されるか、または、別様に、より大きな屈曲度になるまで遅滞されることができる。
【0037】
前記の分析に基づいて、大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動を減少または遅滞させる1つの方法は、初期および中間屈曲範囲における顆表面100の曲率半径の変化が、あまり大きくないかまたはあまり突然でない(例えば、屈曲度の変化に対する曲率半径の変化度の比率が大きすぎる)ことを確実にすることである。すなわち、曲率半径R2、R3、またはR4に対する曲率半径R1の比率が大きすぎると、大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動が起こりうる。したがって、(i)初期屈曲の曲面部分(early flexion curved surface section)104の曲率半径R2、(ii)中間屈曲の曲面部分106の曲率半径R3、および(iii)後期屈曲の曲面部分108の曲率半径R4、に対する、初期屈曲の曲面部分102の曲率半径R1の比率が、所定の閾値未満になるように、大腿骨構成要素12の顆表面100を設計することによって、奇異な前方へのスライドは、思いがけず、減少されるか、または別様に遅滞されることができる。
【0038】
したがって、一実施形態では、大腿骨構成要素12の顆表面100は、(i)R2、(ii)R3、および(iii)R4の曲率半径に対するR1の曲率半径の比率が、それぞれ、約1.10〜約1.45になるように、設計される。特定の一実施形態では、顆表面100は、R2の曲率半径に対するR1の曲率半径の比率が約1.30〜約1.40になるように、また、別の特定の実施形態では約1.35になるように、設計される。加えて、特定の一実施形態では、顆表面100は、R3の曲率半径に対するR1の曲率半径の比率が約1.20〜約1.30になるように、また別の特定の実施形態では約1.28になるように、設計される。さらに、特定の一実施形態では、顆表面100は、R4の曲率半径に対するR1の曲率半径の比率が約1.25〜約1.35になるように、また、別の特定の実施形態では約1.305になるように、設計される。
【0039】
加えて、方程式(1)および(2)に関する前記の解析に基づいて、大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動を減少または遅滞させる別の方法は、初期および/または中間屈曲中の顆表面100の曲率半径を増大させることである。したがって、一実施形態では、大腿骨構成要素12の顆表面100は、曲面部分106の曲率半径R3が曲面部分104の曲率半径R2より大きくなるように設計される。
【0040】
曲率半径R2と曲率半径R3との間の増大量、ならびに、そのような増大が起こる顆表面100上の屈曲度は、奇異な前方並進運動の発生に影響を及ぼすように決定されている。本出願と同日付で出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「Orthopaedic Femoral Component Having Controlled Condylar Curvature」と題された米国特許出願第XX/XXX,XXX号において、さらに詳細に論じられているように、初期および中間屈曲における大腿骨構成要素の顆表面の曲率半径を増大させる効果を解析するため、様々な大腿骨構成要素デザインの複数の模擬実験が、カリフォルニア州サンクレメンテのLifeModeler, Inc.から市販されている、LifeMOD/Knee Sim、バージョン2007.1.0 ベータ16ソフトウェアプログラムを用いて実行された。そのような解析に基づいて、脛骨ベアリングに対する大腿骨構成要素の奇異な前方へのスライドは、屈曲約30度〜屈曲約90度の範囲内の屈曲度で、約0.5mm〜約5mmの範囲内の量だけ、顆表面の曲率半径を増大させることにより、減少されるか、または別様に遅滞されることができることが、判断されている。
【0041】
例えば、
図6に例示されたグラフ200は、大腿骨構成要素を用いた、深く曲げた膝の模擬実験の結果を示しており、顆表面の曲率半径は、屈曲30度、屈曲50度、屈曲70度、および屈曲90度で、0.5mmだけ(すなわち、25.0mmから25.5mmへと)増大されている。同様に、
図7に例示されたグラフ300は、大腿骨構成要素を用いた、深く曲げた膝の模擬実験の結果を示しており、顆表面の曲率半径は、屈曲30度、屈曲50度、屈曲70度、および屈曲90度で、1.0mmだけ(すなわち、25.0mmから26.0mmへと)増大されている。
図8に例示されたグラフ400は、大腿骨構成要素を用いた、深く曲げた膝の模擬実験の結果を示しており、顆表面の曲率半径は、屈曲30度、屈曲50度、屈曲70度、および屈曲90度で、2.0mmだけ(すなわち、25.0mmから27.0mmへと)増大されている。加えて、
図9に例示されたグラフ500は、大腿骨構成要素を用いた、深く曲げた膝の模擬実験の結果を示しており、顆表面の曲率半径は、屈曲30度、屈曲50度、屈曲70度、および屈曲90度で、5.0mmだけ(すなわち、25.0mmから26.0mmへと)増大されている。
【0042】
グラフ200、300、400、500では、大腿骨構成要素の内側顆(「med」)および外側顆(「lat」)の、顆の最低点すなわち最遠位点(CLP)は、脛骨ベアリングに対する大腿骨構成要素の相対的な位置付けを表すものとしてグラフ化されている。したがって、下向きに傾斜したラインは、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の巻き返し(roll-back)を表し、上向きに傾斜したラインは、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の前方並進運動を表している。
【0043】
グラフ200、300、400、500に例示されるように、大腿骨構成要素の前方へのスライドは、各実施形態において屈曲約100度の後まで遅滞され、前方並進運動の量は、約1mm未満に制限された。特に、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の「巻き返し」は、初期屈曲度で顆表面の曲率半径がより大きく増大することにより促進された。当然、曲率半径の増大量、およびそのような増大が導入される屈曲度は、患者の膝の解剖学的な関節腔、脛骨ベアリングのサイズ、および同種のものなどの他の要因により制限される。それとは関係なく、グラフ200、300、400、500で報告された模擬実験に基づいて、脛骨ベアリング上での大腿骨構成要素の奇異な前方並進運動は、初期屈曲から中間屈曲の間の大腿骨構成要素の顆表面の曲率半径を増大させることにより、減少されるか、または別様に遅滞されることができる。
【0044】
再び
図2を参照すると、前記の解析に基づいて、大腿骨構成要素12の顆表面100は、曲率半径R3が一実施形態では約0.5mm〜約5mmの範囲の量だけ曲率半径R2より大きくなるように、設計される。以下に論じるように、増大の詳細な量は、いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素のサイズに基づいていてよい。加えて、前記の解析に基づいて、顆表面100は、R2からR3への曲率半径の増大が約45°〜約90°の範囲の屈曲度で起こるように、設計される。特定の一実施形態では、R2からR3への曲率半径の増大は、顆表面100上において屈曲約65度で起こる。
【0045】
前記のとおり、曲面部分104は、曲率半径R1から曲率半径R2への漸進的な推移をもたらすように設計されている。したがって、曲面部分104により定められる角度の大きさは、所望の推移率(rate of transition)に基づいて選択されることができる。例えば、一実施形態では、大腿骨構成要素12の顆表面100は、曲面部分104が約0〜約30°の範囲の第1の屈曲度から屈曲約45度〜屈曲約90度の範囲の第2の屈曲度にかけて延びるように、設計される。特定の一実施形態では、曲面部分104は、屈曲約5度〜屈曲約65度にかけて延びる。曲面部分104の位置付け(すなわち、最初の屈曲度)およびサイズ(すなわち、それによって定められる角度)はまた、少なくとも一部には、初期屈曲の曲面部分102の位置付けおよびサイズを決定することが認識されるべきである。したがって、一実施形態では、曲面部分102は、約−10°(すなわち、過伸展10度)〜屈曲約0度の範囲の第1の屈曲度から、約5°〜約30°の範囲の第2の屈曲度にかけて延びる。特定の一実施形態では、曲面部分102は、屈曲約−10度〜屈曲約5度にかけて延びる。
【0046】
同様に、曲面部分106および108の位置付けおよびサイズは、少なくとも一部には、曲面部分104の位置付けおよびサイズに基づいて、決定される。加えて、曲面部分106および108の位置付けおよびサイズは、膝の関節腔の解剖学的拘束(anatomical restraints)に基づいているか、または別様に、その解剖学的拘束により制限されている。すなわち、大腿骨構成要素12の顆表面100の後ろ側の全体的なサイズおよび構成は、大腿骨構成要素12が膝の関節腔に「嵌まり」込み、また、大腿骨構成要素12を患者の、外科的に準備された遠位大腿骨に適切に固定するように、設計される。したがって、一実施形態では、曲面部分106は、約45°〜約90°の範囲の第1の屈曲度から、約80°〜約110°の範囲の第2の屈曲度にかけて延びる。特定の一実施形態では、曲面部分106は、屈曲約65度〜屈曲約90度にかけて延びる。同様に、一実施形態では、曲面部分108は、約80°〜約110°の範囲の第1の屈曲度から、約90°〜約120°の範囲の第2の屈曲度にかけて延びる。特定の一実施形態では、曲面部分106は、屈曲約90度〜屈曲約105度にかけて延びる。
【0047】
大腿骨構成要素12の顆表面100の曲率半径R2からR3への増大の詳細な量、および/または、顆表面100上でのそのような増大の位置付けはまた、大腿骨構成要素12のサイズに基づいているか、そのサイズによりスケールを変更されるか(scaled)、もしくは、そのサイズにより別様に影響を受けることができることが認識されるべきである。すなわち、0.5mmの、顆表面100の曲率半径R2からR3への増大は、大きなサイズの大腿骨構成要素に比べて、小さなサイズの大腿骨構成要素では比較的大きな増大であることを認識されたい。したがって、大腿骨構成要素12の顆表面100の曲率半径R2からR3への増大の規模は、複数の大腿骨構成要素サイズにわたって変化しうる。しかしながら、一実施形態では、曲率半径R2、R3、およびR4に対する曲率半径R1の比率は、一群の大腿骨構成要素サイズ全体で実質的に一定の値に保たれる。
【0048】
例えば、
図10に例示されるように、表600は、一群の大腿骨構成要素サイズ1〜10について、各曲率半径R1、R2、R3、R4の長さを定めている。表600に例示されるように、大腿骨構成要素12の各サイズ1〜10について、各曲率半径R1、R2、R3、R4の長さは、R1/R2、R1/R3、およびR1/R4の比率がこれらの大腿骨構成要素サイズ全体で実質的に一定となるように、選択される。例証的な実施形態では、先に論じたように、曲率半径R2に対する曲率半径R1の比率は、大腿骨構成要素サイズ1〜10全体で約1.35の値に維持され、曲率半径R3に対する曲率半径R1の比率は、大腿骨構成要素サイズ1〜10全体で約1.28の値に維持され、曲率半径R4に対する曲率半径R1の比率は、大腿骨構成要素サイズ1〜10全体で約1.305の値に維持される。
【0049】
次に
図11を参照すると、方程式(1)および(2)の前記の解析に基づいて、脛骨ベアリング14上での大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動の開始を低減または遅滞させる別の方法は、屈曲度範囲にわたる顆表面100の曲率半径の変化が低減されるように、別個の曲率半径間で徐々に推移することである。したがって、一実施形態では、初期屈曲の曲面部分104は、第1の曲率半径R1から第2の曲率半径R2への漸進的な推移をもたらすように設計される。そのような推移をもたらすために、曲面部分104は、共通の起点Oから始まる複数の半直線120により定められる。複数の半直線120のそれぞれは、曲面部分104上でそれぞれの接触点130を定める。図面を明瞭にするため、3つの半直線120のみが
図11に例示されているが、曲面部分104を定めるために無数の半直線120が用いられてよいことが認識されるべきである。
【0050】
集合的に曲面部分104を定める各接触点130の場所は、各屈曲度における各半直線120の長さに基づいて決定されうる。詳細には、また思いがけないことに、脛骨ベアリング14上での大腿骨構成要素12の奇異な前方並進運動は、以下の多項式に従って曲面部分104を定めることによって減少または遅滞されうることが確認されており:
r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))、 (3)
式中、「r
θ」は、屈曲「θ」度で曲面部分104上の接触点130を定める、(メートル単位での)半直線120の長さであり、「a」は、20〜50のスカラー値であり、「b」は、
−0.30<b<0.00、 (4)
0.00<b<0.30、または、
b=0、となるように選択された係数値である。
【0051】
選択された係数「b」が−0.30<b<0.00の範囲にある場合、係数「c」および「d」は:
0.00<c<0.012、かつ、 (5)
−0.00015<d<0.00、となるように選択される。
【0052】
代替的に、選択された係数「b」が0.00<b<0.30の範囲にある場合、係数「c」および「d」は:
−0.010<c<0.00、かつ、 (6)
−0.00015<d<0.00、となるように選択される。
【0053】
さらに、選択された係数「b」が0に等しい場合、係数「c」および「d」は:
−0.0020<c<0.00、または、 (7)
0.00<c<0.0025、かつ、
−0.00015<d<0.00、となるように選択される。
【0054】
スカラー「a」ならびに係数「b」「c」、および「d」の値の範囲は、多項式(3)の無数の可能な解の部分集合であることが、認識されるべきである。すなわち、前記で提供された範囲の特定の集合は、脛骨ベアリング14に対する大腿骨構成要素12の前方並進運動が減少または遅滞されるように、曲率半径R1から曲率半径R2への顆表面100の漸進的な推移をもたらす曲線群(すなわち曲面部分104)を生み出す無数の可能性から決定されている。加えて、各係数「a」、「b」、「c」、および「d」の値の範囲は、メートル単位系を用いて設計された実施形態について前記で提供されていることが認識されるべきである。しかしながら、そのような範囲の係数値は、英国単位系など他の単位系を用いる実施形態で使用されるように、換算されてよい。
【0055】
曲面部分104の全体的な形状は、複数の半直線120の共通の起点Oの設置によっても影響を受ける。複数の半直線120の共通の起点Oと、初期屈曲の曲面部分102を定める曲率半径R1の起点122との間の距離124を制限することによって、脛骨ベアリング14上での大腿骨構成要素12の奇異な前方へのスライドは、減少または遅滞されうる。したがって、一実施形態では、複数の半直線120の共通の起点Oの場所は、共通の起点Oと曲率半径R1の起点120との間の距離124が約10mm未満になるように、選択される。
【0056】
共通の起点Oと曲率半径R1の起点122との間の距離124、および特定の係数値は、いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素12の特定のサイズ次第であってよいことが認識されるべきである。例えば、
図12に例示されるように、表700は、前記に定めた多項式(3)の係数値、および共通の起点Oと曲率半径R1の起点122との間で定められる距離124の値の特定の一実施形態を示している。表700に示されるように、共通の起点Oと曲率半径R1の起点122との間の距離124、およびスカラー「a」の値は、大腿骨構成要素サイズ全体にわたって変化する。しかしながら、この特定の実施形態では、係数「b」、「c」、および「d」の値は、大腿骨構成要素サイズ全体で一定である。しかしながら、他の実施形態では、係数値「b」、「c」、および「d」は大腿骨構成要素サイズ全体にわたって変化しうることが認識されるべきである。
【0057】
大腿骨構成要素12の顆表面100の全体的な形状およびデザインは、大腿骨構成要素12の単一の顆52、54について前述してある。いくつかの実施形態では、大腿骨構成要素12の双方の顆52、54が対称であり、また、類似した顆表面100を有しうることが認識されるべきである。しかしながら、他の実施形態では、大腿骨構成要素12の顆52、54は、非対称であってよい。例えば、
図13に例示されるように、大腿骨構成要素12は、顆表面800を有する第2の顆52、54を含んでよく、顆表面800は、一部において、複数の曲面部分802、804、806、808により定められている。顆表面100の曲面部分102、104、106、108と同様に、曲面部分802、804、806、808のそれぞれは、顆表面800の、隣接する各曲面部分に接している。加えて、曲面部分802は、曲率半径R5により定められ、曲率半径R5は、曲面部分804により曲率半径R6へ徐々に推移する。曲面部分104と同様に、曲面部分804は、共通の起点O1から始まる複数の半直線820により定められる。加えて、曲面部分806は曲率半径R7により定められ、曲面部分808は曲率半径R8により定められる。
【0058】
したがって、顆52、54が対称である実施形態では、曲面部分202、802は、実質的に等しい屈曲度間に延びる(すなわち、曲面部分202、802のそれぞれは、実質的に等しい初期屈曲度から実質的に等しい後期屈曲度にかけて延びることができる)。同様に、曲面部分204、804は、実質的に等しい屈曲度間に延び、曲面部分206、806は、実質的に等しい屈曲度間に延び、曲面部分208、808は、実質的に等しい屈曲度間に延びる。加えて、曲率半径R5は、曲率半径R1に実質的に等しく、曲率半径R6は、曲率半径R2に実質的に等しく、曲率半径R7は、曲率半径R3に実質的に等しく、曲率半径R8は、曲率半径R4に実質的に等しい。さらに、前記の方程式(4)の係数値「a」、「b」、「c」、および/または「d」の集合は、双方の顆について実質的に同様である。
【0059】
しかしながら、他の実施形態では、顆52、54は非対称である。したがって、曲面部分202、802は、異なる屈曲度間に延びうる。加えて、曲面部分204、804は、異なる屈曲度間に延びることができ、曲面部分206、806は、異なる屈曲度間に延びることができ、曲面部分207、807は、異なる屈曲度間に延びることができる。
【0060】
加えて、顆52、54が非対称である実施形態では、曲率半径R5は曲率半径R1とは異なってよく、曲率半径R6は曲率半径R2とは異なってよく、曲率半径R7は曲率半径R3とは異なってよく、かつ/または、曲率半径R8は曲率半径R4とは異なってよい。さらに、前記の方程式(3)の係数値「a」、「b」、「c」および/または「d」の集合は、顆表面100と顆表面800との間で異なってよい。
【0061】
本開示は、図面および前記の説明において詳細に例示され説明されているが、このような例示および説明は、例示的なものとみなされるものであり、性質が限定的なものとみなされるものではない。例示的な実施形態のみが図示および説明されており、本開示の趣旨に属するすべての変更および改変が保護されるよう望むことを、理解されたい。
【0062】
本明細書で説明した装置および組立体の様々な特徴部から生じる、本開示の複数の利点がある。本開示の装置および組立体の代替的な実施形態は、説明した特徴部の全てを含まなくてよいが、依然としてそのような特徴部の利点のうち少なくともいくつかから利益を得ることに注意されたい。当業者は、本発明の特徴部のうち1つ以上の特徴部を組み込み、かつ、添付の特許請求の範囲により定められる本開示の趣旨および範囲に属する、装置および組立体の独自の実行を、容易に考案するであろう。
〔実施の態様〕
(1) 整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
矢状面において湾曲した顆表面を有する大腿骨構成要素と、
前記大腿骨構成要素の前記顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を有する脛骨ベアリングと、
を含み、
前記顆表面は、(i)約30°未満である第1の屈曲度において前記顆表面上の第1の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(ii)約45°より大きい第2の屈曲度において前記顆表面上の第2の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(i)前記矢状面における前記顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径を有し、(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第2の接触点における第2の曲率半径を有し、(iii)前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(2) 実施態様1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、約1.35である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(3) 実施態様1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の屈曲度は、0°〜10°の範囲内であり、前記第2の屈曲度は、60°〜70°の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(4) 実施態様3に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の屈曲度は、約5°であり、前記第2の屈曲度は、約65°である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(5) 実施態様1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記顆表面は、前記第2の屈曲度より大きい第3の屈曲度において前記顆表面上の第3の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第3の接触点における第3の曲率半径であって、前記第3の曲率半径は、前記第2の曲率半径より少なくとも0.5mmだけ大きい、第3の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(6) 実施態様5に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(7) 実施態様6に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.28である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(8) 実施態様5に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の屈曲度は、80°〜110°の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(9) 実施態様8に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の屈曲度は、約90°である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(10) 実施態様5に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記顆表面は、前記第3の屈曲度より大きい第4の屈曲度において前記顆表面上の第4の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第4の接触点における第4の曲率半径であって、前記第4の曲率半径は、前記第3の曲率半径より小さい、第4の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(11) 実施態様10に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(12) 実施態様11に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.305である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(13) 実施態様10に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第4の屈曲度は、90°〜120°の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(14) 実施態様13に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第3の屈曲度は、約105°である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(15) 実施態様10に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.35であり、前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.28であり、前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.305である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(16) 実施態様10に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記矢状面における前記大腿骨構成要素の前記顆表面は、(i)前記第2の接触点と前記第3の接触点との間で定められた第1の曲面部分、および、(ii)前記第3の接触点と前記第4の接触点との間で定められた第2の曲面部分を含み、
前記第1の曲面部分は、前記第3の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有し、
前記第2の曲面部分は、前記第4の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(17) 実施態様1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の屈曲度は、45°〜90°の範囲内であり、
前記顆表面は、前記大腿骨構成要素が前記第1の屈曲度から前記第2の屈曲度へ動かされると、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
前記複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、前記複数の接触点のうちのそれぞれの前記接触点へ延びる半直線により定められ、各半直線は、以下の多項式により定められる長さを有し:
r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))、
式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める前記半直線の前記長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.00、0.00<b<0.30、および、b=0からなる群から選択される範囲の係数値であり、
bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、(i)cは、0.00〜0.012の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0<b<0.30の範囲にある場合、(i)cは、−0.010〜0.00の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0に等しい場合、(i)cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択される範囲の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(18) 実施態様17に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の曲率半径は、起点を有し、
前記第1の曲率半径の前記起点と前記半直線の前記共通の起点との間の距離は、0〜10mmの範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(19) 実施態様1に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記大腿骨構成要素は、後十字靭帯温存型大腿骨構成要素である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(20) 整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
矢状面において湾曲した顆表面を有する大腿骨構成要素と、
前記大腿骨構成要素の前記顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を有する脛骨ベアリングと、
を含み、
前記顆表面は、(i)約30°未満である第1の屈曲度において前記顆表面上の第1の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(ii)45°〜90°の範囲内である第2の屈曲度において前記顆表面上の第2の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(iii)前記大腿骨構成要素が前記第1の屈曲度から前記第2の屈曲度へ動かされると、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
前記複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、前記複数の接触点のうちのそれぞれの前記接触点へ延びる半直線により定められ、各半直線は、以下の多項式により定められた長さを有し:
r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))、
式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める前記半直線の前記長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.00、0.00<b<0.30、および、b=0からなる群から選択された範囲の係数値であり、
bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、(i)cは、0.00〜0.012の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0<b<0.30の範囲にある場合、(i)cは、−0.010〜0.00の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0に等しい場合、(i)cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択される範囲の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(21) 実施態様20に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記矢状面における前記顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径であって、前記第1の曲率半径は起点を有する、第1の曲率半径を有し、
前記第1の曲率半径の前記起点と前記半直線の前記共通の起点との間の距離は、0〜10mmの範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(22) 実施態様20に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の屈曲度は、0°〜10°の範囲内であり、前記第2の屈曲度は、60°〜70°の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(23) 実施態様22に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第1の屈曲度は、約5°であり、前記第2の屈曲度は、約65°である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(24) 実施態様20に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記顆表面は、前記第2の屈曲度より大きい第3の屈曲度において前記顆表面上の第3の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(ii)前記顆表面は、前記第3の屈曲度より大きい第4の屈曲度において前記顆表面上の第4の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(iii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径、前記第2の接触点における第2の曲率半径、前記第3の接触点における第3の曲率半径、および前記第4の接触点における第4の曲率半径を有し、
(iv)前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率より小さく、
(v)前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率より小さい、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(25) 実施態様24に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.35であり、前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.28であり、前記第4の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率は、約1.305である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(26) 実施態様24に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記矢状面における前記大腿骨構成要素の前記顆表面は、(i)前記第2の接触点と前記第3の接触点との間で定められた第1の曲面部分、および(ii)前記第3の接触点と前記第4の接触点との間で定められた第2の曲面部分を含み、
前記第1の曲面部分は、前記第3の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有し、
前記第2の曲面部分は、前記第4の曲率半径に実質的に等しい、実質的に一定の曲率半径を有する、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(27) 整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
矢状面において湾曲した顆表面を有する大腿骨構成要素と、
前記大腿骨構成要素の前記顆表面と関節接合するように構成されたベアリング表面を有する脛骨ベアリングと、
を含み、
前記顆表面は、(i)約30°未満である第1の屈曲度において前記顆表面上の第1の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(ii)45°〜90°の範囲内である第2の屈曲度において前記顆表面上の第2の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(iii)前記第2の屈曲度より大きい第3の屈曲度において前記顆表面上の第3の接触点で前記ベアリング表面に接触し、(iv)前記大腿骨構成要素が前記第1の屈曲度から前記第2の屈曲度へ動かされると、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記ベアリング表面に接触し、
(i)前記矢状面における前記顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径を有し、(ii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第2の接触点における第2の曲率半径を有し、(iii)前記矢状面における前記顆表面は、前記第3の接触点における第3の曲率半径を有し、
(i)前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であり、(ii)前記第3の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の比率は、前記第2の曲率半径に対する前記第1の曲率半径の前記比率より小さく、また、1.10〜1.45の範囲内であり、
前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の前記複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、前記複数の接触点のうちのそれぞれの前記接触点に延びる半直線により定められ、各半直線は、以下の方程式により定められる長さを有し:
r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))、
式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める前記半直線の前記長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.00、0.00<b<0.30、および、b=0からなる群から選択された範囲の係数値であり、
bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、(i)cは、0.00〜0.012の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0<b<0.30の範囲にある場合、(i)cは、−0.010〜0.00の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0に等しい場合、(i)cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択された範囲の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(28) 実施態様27に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
(i)前記大腿骨構成要素の前記顆表面は、内側顆表面であり、前記脛骨ベアリングの前記ベアリング表面は、内側ベアリング表面であり、
(ii)前記大腿骨構成要素は、前記矢状面において湾曲した外側顆表面をさらに含み、
(iii)前記脛骨ベアリングは、前記大腿骨構成要素の前記外側顆表面と関節接合するように構成された外側ベアリング表面をさらに含む、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(29) 実施態様28に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記外側顆表面は、前記内側顆表面に対して実質的に対称である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(30) 実施態様28に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記外側顆表面は、(i)約30°未満である第4の屈曲度において前記外側顆表面上の第1の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(ii)45°〜90°の範囲内である第5の屈曲度において前記外側顆表面上の第2の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(iii)前記第5の屈曲度より大きい第6の屈曲度において前記外側顆表面上の第3の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(iv)前記大腿骨構成要素が前記第4の屈曲度から前記第5の屈曲度へ動くと、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、
(i)前記矢状面における前記外側顆表面は、前記第1の接触点における第1の曲率半径を有し、(ii)前記矢状面における前記外側顆表面は、前記第2の接触点における第2の曲率半径を有し、(iii)前記矢状面における前記外側顆表面は、前記第3の接触点における第3の曲率半径を有し、
(i)前記外側顆表面の前記第2の曲率半径に対する前記外側顆表面の前記第1の曲率半径の比率は、1.10〜1.45の範囲内であり、(ii)前記外側顆表面の前記第3の曲率半径に対する前記外側顆表面の前記第1の曲率半径の比率は、前記外側顆表面の前記第2の曲率半径に対する前記外側顆表面の前記第1の曲率半径の前記比率より小さく、また、1.10〜1.45の範囲内である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
(31) 実施態様28に記載の整形外科的膝関節プロテーゼにおいて、
前記外側顆表面は、(i)約30°未満である第4の屈曲度において前記外側顆表面上の第1の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(ii)45°〜90°の範囲内である第5の屈曲度において前記外側顆表面上の第2の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(iii)前記第5の屈曲度より大きい第6の屈曲度において前記外側顆表面上の第3の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、(iv)前記大腿骨構成要素が前記第4の屈曲度から前記第5の屈曲度へ動かされると、前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の複数の接触点で前記外側ベアリング表面に接触し、
前記外側顆表面の前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の前記複数の接触点のうちの各接触点は、共通の起点から、前記複数の接触点のうちのそれぞれの前記接触点へ延びる半直線により定められ、各半直線は、以下の方程式により定められる長さを有し:
r
θ=(a+(b*θ)+(c*θ
2)+(d*θ
3))、
式中、r
θは、屈曲θ度で接触点を定める前記半直線の前記長さであり、aは、20〜50の係数値であり、bは、−0.30<b<0.00、0.00<b<0.30、および、b=0からなる群から選択される範囲の係数値であり、
bが−0.30<b<0.00の範囲にある場合、(i)cは、0.00〜0.012の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0<b<0.30の範囲にある場合、(i)cは、−0.010〜0.00の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値であり、
bが0に等しい場合、(i)cは、−0.0020<c<0.00、および0.00<c<0.0025からなる群から選択された範囲の係数値であり、(ii)dは、−0.00015〜0.00の係数値である、整形外科的膝関節プロテーゼ。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、整形外科的膝関節プロテーゼの一実施形態の分解組立斜視図である。
【
図2】
図2は、切断線2‐2に概ね沿った、
図1の整形外科的プロテーゼの大腿骨構成要素の一実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、屈曲約0度で、
図1の整形外科的プロテーゼの脛骨ベアリング上に位置付けられた、
図2の大腿骨構成要素の断面図である。
【
図4】
図4は、屈曲約45度で位置付けられた、
図3の大腿骨構成要素および脛骨ベアリングの断面図である。
【
図5】
図5は、屈曲約90度で位置付けられた、
図3の大腿骨構成要素および脛骨ベアリングの断面図である。
【
図6】
図6は、様々な屈曲度で位置する、曲率半径が増大された模擬大腿骨構成要素の前方‐後方並進運動のグラフである。
【
図7】
図7は、様々な屈曲度で位置する、曲率半径が増大された、別の模擬大腿骨構成要素の前方‐後方並進運動のグラフである。
【
図8】
図8は、様々な屈曲度で位置する、曲率半径が増大された、別の模擬大腿骨構成要素の前方‐後方並進運動のグラフである。
【
図9】
図9は、様々な屈曲度で位置する、曲率半径が増大された、別の模擬大腿骨構成要素の前方‐後方並進運動のグラフである。
【
図10】
図10は、一群の大腿骨構成要素サイズの曲率半径の長さの値および比率の一実施形態の表である。
【
図11】
図11は、
図1の整形外科的プロテーゼの大腿骨構成要素の一実施形態の断面図である。
【
図12】
図12は、一群の大腿骨構成要素サイズについて
図1の大腿骨構成要素の湾曲を定める多項式の係数値の一実施形態の表である。