(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器等において、防水機能に対する要求が高く、これに伴い、外部機器と接続するためのコネクタとして、防水性を備えた防水コネクタの開発が進められている。
この種の防水コネクタとしては、インサート成形等によりコンタクトおよびシェル等の導電部材を絶縁性樹脂からなるハウジング内に一体成形したものがある。一体成形を行うことで、絶縁性樹脂の成形収縮力により、ハウジング内に埋没される部分の導電部材の表面が絶縁性樹脂と密着し、コネクタの外部からハウジングと導電部材との境界部を通してコネクタ内部に水が浸入することが防止される。
【0003】
しかし、一般に、コンタクトおよびシェル等の導電部材を形成する金属材料とハウジングを形成する樹脂材料とでは、互いに熱膨張係数が異なるため、例えば、コネクタを電子機器の回路基板に装着する際のハンダ付け作業等、例えばリフロー実装によりコネクタが高温環境下に晒されると、導電部材の膨張量と絶縁性樹脂の膨張量とが異なり、導電部材の表面に密着していた絶縁性樹脂が導電部材の表面から剥離することがある。一旦、剥離が生じると、導電部材の表面と絶縁性樹脂との間に隙間が形成され、常温まで温度が降下しても、この隙間を通してコネクタ内部に水が浸入するおそれを生じてしまう。
【0004】
また、コネクタに相手側コネクタを嵌合する際に、嵌合軸に対して斜め方向から無理矢理嵌合するような、いわゆる意地悪嵌合が行われて、ハウジングと導電部材との間に大きな応力が作用することがある。この場合にも、ハウジングの絶縁性樹脂が導電部材の表面から剥離して、コネクタの防水性が損なわれるおそれがある。
【0005】
そこで、ハウジング内に埋没される部分の導電部材の表面に溝または突起からなる防水形状部を形成することにより、防水性を向上させた防水コネクタが、本出願人により出願され、登録されている(特許文献1)。
特許文献1の防水コネクタでは、例えば
図15(A)に示されるように、絶縁性樹脂からなるハウジング1内に埋め込まれて固定される導電部材2の固定部の表面に、それぞれ導電部材2の周囲を囲って閉じる複数の溝3が形成される、あるいは、
図15(B)に示されるように、絶縁性樹脂からなるハウジング4内に埋め込まれて固定される導電部材5の固定部の表面に、それぞれ導電部材5の周囲を囲って閉じる複数の突起6が形成される。
【0006】
このような溝3または突起6の存在により、絶縁性樹脂材料と金属材料の熱膨張係数の相違、あるいは、いわゆる意地悪嵌合等に起因して、たとえ、ハウジング1または4を構成する絶縁性樹脂が導電部材2または5の表面から剥離し、ハウジング1または4と導電部材2または5との界面に沿って水が浸入したとしても、浸入した水は、溝3あるいは突起6で遮断されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る防水コネクタの構成を示す。防水コネクタは、ほぼ直方体形状の外形を有するハウジング10と、ハウジング10に固定された複数のコンタクト20と、ハウジング10に固定され且つ複数のコンタクト20をシールドするためのシェル30を有している。ハウジング10は、絶縁性樹脂から形成され、コンタクト20およびシェル30は、導電性を有する金属材料から形成されている。
【0016】
シェル30は、ハウジング10の前面10A側に開口する中空の嵌合部(シェル側コネクタ接続部)31を有し、嵌合部31の内部に、相手側コネクタと嵌合するための空間Sが形成されている。それぞれのコンタクト20の前端に配置された接点部(コンタクト側コネクタ接続部)21が、シェル30の嵌合部31の空間S内に配置されている。一方、それぞれのコンタクト20の後端に配置されたコンタクト側基板接続部22が、ハウジング10の後面10Bからハウジング10の外部に露出している。
また、シェル30は、一対のシェル側基板接続部32を有し、これらのシェル側基板接続部32が、ハウジング10の下面10Cからハウジング10の外部に露出している。
【0017】
図2に示されるように、シェル30の嵌合部31は、中心軸C1を有すると共に、中心軸C1に直交する方向に細長い扁平な断面形状を伴う筒形状を有している。ここで、便宜上、嵌合部31の前方から後方へ向かって中心軸C1と平行に延びる方向をX方向、扁平な嵌合部31の上面31Aが延びる面をXY面、嵌合部31の上面31Aに垂直で且つ下方へ向かう方向をZ方向と呼ぶものとする。
【0018】
シェル30は、嵌合部31と一対のシェル側基板接続部32との間を接続するシェル側固定部33を有している。シェル側固定部33は、嵌合部31の上部後端の中央から、嵌合部31の中心軸C1に沿ってX方向に突出した後方突出部33Aと、後方突出部33Aの後端から扁平な嵌合部31の上面31Aに平行で且つ中心軸C1に垂直な両方向、すなわちY方向および−Y方向へそれぞれ延びる一対の腕部33Bと、双方の腕部33Bの先端からそれぞれ下方、すなわちZ方向へ延びる一対の脚部33Cを含んでいる。そして、一対の脚部33Cの下端に、それぞれシェル側基板接続部32が接続されている。これら一対のシェル側基板接続部32は、嵌合部31の後方から前方へ向かう方向、すなわちXY面上で且つ−X方向に延びるように形成されている。
シェル側固定部33の後方突出部33A、一対の腕部33Bおよび一対の脚部33Cは、いずれも嵌合部31よりも細いシェル狭窄部を形成しており、このようなシェル狭窄部を有するシェル側固定部33は、シェル30がハウジング10にモールド成形される際に、ハウジング10内に埋め込まれる。
【0019】
さらに、一対の腕部33Bの外周面に、腕部33Bとハウジング10との界面に沿った水の浸入を遮断するためのシェル側防水形状部34が形成されている。シェル側防水形状部34は、腕部33Bの周囲を囲って閉じるように形成されており、シェル側防水形状部34の存在により、シェル側固定部33の表面は、嵌合部31側の部分とシェル側基板接続部32側の部分とに分離されている。
【0020】
このような構成のシェル30は、導電性を有する金属板35を、
図3に示されるような形状に切り抜いた後、プレス等により折り曲げ加工することで作製することができる。帯状部分35Aが扁平な筒形状に成形されて嵌合部31を形成し、帯状部分35Aの中央の外縁部から後方突出部33Aが突出し、後方突出部33Aの先端に一対の腕部33Bが接続され、一対の腕部33Bの先端に一対の脚部33Cが接続され、一対の脚部33Cの先端にそれぞれ接続された平板部分35Bによりシェル側基板接続部32が形成される。
図3の展開図から明らかなように、嵌合部31を形成する帯状部分35Aからシェル側基板接続部32を形成する一対の平板部分35Bに至る経路の途中に、それぞれシェル側防水形状部34を有する腕部33Bが存在している。
【0021】
図4にコンタクト20の構成を示す。コンタクト20は、棒状部材または平板部材から形成され、接点部21とコンタクト側基板接続部22との間にコンタクト側固定部23が形成されている。コンタクト側固定部23は、シェル30と共にハウジング10にモールド成形される際に、ハウジング10内に埋め込まれて、コンタクト20をハウジング10に固定する部分である。このコンタクト側固定部23の外周面に、コンタクト側固定部23とハウジング10との界面に沿った水の浸入を遮断するためのコンタクト側防水形状部24が形成されている。コンタクト側防水形状部24は、コンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように形成されており、このコンタクト側防水形状部24により、コンタクト20の表面は、接点部21側の部分とコンタクト側基板接続部22側の部分とに分離されている。
【0022】
図5に、防水コネクタの分解図を示す。シェル30の嵌合部31の内面がハウジング10の前端側に露出し、シェル側防水形状部34が形成されたシェル側固定部33がハウジング10内に埋め込まれ、シェル側基板接続部32がハウジング10の下面10Cから露出し、各コンタクト20の接点部21がシェル30の嵌合部31内で露出し、コンタクト側防水形状部24が形成されたコンタクト側固定部23がハウジング10内に埋め込まれ、コンタクト側基板接続部22がハウジング10の後面10Bから露出するように、ハウジング10がシェル30および複数のコンタクト20と一体にモールド成形される。
このとき、コンタクト20の接点部21がシェル30の嵌合部31内に位置するように複数のコンタクト20とシェル30を図示しない金型内にセットし、金型を閉じて金型内に溶融した絶縁性樹脂材料を注入した後、冷却することで、ハウジング10と複数のコンタクト20およびシェル30とを一体成形して、
図1に示したような防水コネクタを製造することができる。
【0023】
ここで、コンタクト側固定部23の外周面に形成されているコンタクト側防水形状部24を
図6に示す。
コンタクト側防水形状部24は、コンタクト側固定部23の表面に形成された複数の突起25と複数の溝26を有している。それぞれの突起25は、三角形の断面形状を有し、コンタクト側防水形状部24が存在しない部分のコンタクト側固定部23の表面23Aよりも高さH1だけコンタクト側固定部23の外方へ突出している。また、それぞれの溝26は、三角形の断面形状を有する、いわゆるV溝であり、コンタクト側防水形状部24が存在しない部分のコンタクト側固定部23の表面23Aよりも深さH2だけコンタクト側固定部23の内方に窪んでいる。
図6では、コンタクト側防水形状部24が存在しない部分のコンタクト側固定部23の表面23Aの延長線23Bが、一点鎖線により表されている。
【0024】
そして、突起25と溝26がコンタクト側固定部23の長さ方向に交互に配置され、それぞれの突起25の頂部と、この突起25に隣接する溝26の底部とが、コンタクト側固定部23の表面23Aに対して一様に傾斜する平面形状の障壁面27により接続されている。
複数の突起25および複数の溝26に対応して、このような複数の障壁面27が形成されている。それぞれの障壁面27は、突起25の高さH1と溝26の深さH2の和H1+H2で表される高低差H3を有し、コンタクト側固定部23とハウジング10との界面に沿った水の浸入を遮断するために、高低差H3は0.01mm以上であることが望まれる。
また、複数の突起25と複数の溝26は、それぞれ、コンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように形成されている。
このようなコンタクト側防水形状部24は、例えば、レーザ加工、プレス加工、研削加工等の機械加工、または、エッチング等の化学処理を用いることによって形成することができる。
【0025】
コンタクト側防水形状部24の構成により、水の浸入を遮断するために必要な障壁面27の高低差H3=H1+H2を確保しながらも、コンタクト側防水形状部24が存在しない部分のコンタクト側固定部23の表面23Aからの突起25の頂部の突出量をH1に、溝26の底部の窪み量をH2に、それぞれ抑えることができる。
このため、溝26を形成することによるコンタクト側固定部23の断面積の低減が抑制され、コンタクト20の電気抵抗の低下並びに機械的強度の低下を抑制することが可能になる。
また、突起25の頂部の突出量が、水の浸入を遮断するために必要な高低差H3よりも小さい値H1に抑えられているため、ハウジング10とコンタクト20の一体成形の際に金型内に注入される絶縁性樹脂の流動性の低下に起因したハウジング10の成形性の低下を抑制することが可能となる。さらに、突起25の存在によるハウジング10の厚さの低減が抑制され、ハウジング10を構成する絶縁性樹脂の成形収縮力の低下が抑制されるので、ハウジング10とコンタクト側固定部23との密着性を確保することができる。
さらに、突起25の頂部の突出量が抑制されているので、電気信号の高速伝送を行うことが可能となる。
【0026】
なお、シェル側固定部33の腕部33Bの外周面に形成されているシェル側防水形状部34も、コンタクト側防水形状部24と同様に、シェル側防水形状部34が存在しない部分の腕部33Bの表面よりも外方へ突出する複数の突起と、シェル側防水形状部34が存在しない部分の腕部33Bの表面よりも腕部33Bの内方に窪んだ複数の溝を有し、それぞれの突起の頂部と、この突起に隣接する溝の底部とが、腕部33Bの表面に対して一様に傾斜する障壁面により接続されている。
このため、コンタクト20と同様に、シェル30に対しても、水の浸入を遮断するために必要な障壁面の高低差を確保しながら、シェル30の電気抵抗の低下並びに機械的強度の低下を抑制することが可能になると共に、ハウジング10の成形性の低下を抑制し、ハウジング10とシェル側固定部33の腕部33Bとの密着性を確保することが可能となる。
【0027】
実施の形態1に係る防水コネクタを、シェル30の一対の腕部33Bの高さでXY面に沿って切断した状態を
図7に示す。シェル30のシェル側固定部33がハウジング10内に埋め込まれ、嵌合部31から後方突出部33Aを介して一対の腕部33Bが接続されている。また、嵌合部31の内面は、ハウジング10に覆われることなく露出している。腕部33Bには、シェル側防水形状部34が腕部33Bの周囲を囲って閉じるように形成されており、腕部33Bの切断面の両側縁に、シェル側防水形状部34の断面形状が現れている。
【0028】
また、防水コネクタを、コンタクト20の位置でXZ面に沿って切断した状態を
図8に示す。コンタクト20の接点部21がシェル30の嵌合部31内で露出し、コンタクト側基板接続部22がハウジング10の後面10Bから後方へ突出して露出し、コンタクト側固定部23がハウジング10内に埋め込まれている。また、コンタクト20のコンタクト側固定部23の上方には、シェル30の腕部33Bの切断面が示されている。コンタクト20のコンタクト側固定部23には、コンタクト側防水形状部24がコンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように形成されており、コンタクト側固定部23の切断面の両側縁に、コンタクト側防水形状部24の断面形状が現れている。
【0029】
ハウジング10とシェル30およびコンタクト20との一体成形により、ハウジング10内に埋め込まれるシェル30のシェル側固定部33およびコンタクト20のコンタクト側固定部23の表面にハウジング10を構成する絶縁性樹脂が密着される。
【0030】
上述したように、ハウジング10内に埋め込まれるコンタクト20のコンタクト側固定部23には、コンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるようにコンタクト側防水形状部24が形成されている。このため、たとえ、コンタクト20のコンタクト側固定部23の表面に密着されていたハウジング10の絶縁性樹脂がコンタクト側固定部23から剥離し、シェル30の嵌合部31内に露出している接点部21からコンタクト側固定部23とハウジング10との界面に沿って水が浸入したとしても、浸入した水は、コンタクト側防水形状部24によって遮断され、ハウジング10の後面10Bから露出しているコンタクト側基板接続部22にまで至ることが防止される。
【0031】
同様に、ハウジング10内に埋め込まれるシェル30のシェル側固定部33には、嵌合部31からシェル側基板接続部32に至る経路の途中に存在する腕部33Bの周囲を囲って閉じるようにシェル側防水形状部34が形成されているので、ハウジング10を構成する絶縁性樹脂材料とシェル30を形成する金属材料の熱膨張係数の相違等に起因して、あるいは、相手側コネクタとの嵌合時に嵌合軸に対して斜め方向から無理矢理嵌合するような、いわゆる意地悪嵌合が行われて、たとえ、シェル30のシェル側固定部33の表面に密着されていたハウジング10の絶縁性樹脂がシェル側固定部33から剥離し、嵌合部31からシェル側固定部33とハウジング10との界面に沿って水が浸入したとしても、浸入した水は、シェル側固定部33の腕部33Bに到達したところで、シェル側防水形状部34により遮断され、ハウジング10の下面10Cから露出しているシェル側基板接続部32にまで至ることが防止される。
【0032】
特に、シェル側防水形状部34が形成されている腕部33Bは、嵌合部31よりも細いシェル狭窄部を構成するため、水の浸入路が狭められて浸入する水の量が制限されており、シェル側防水形状部34により効果的に防水機能を発揮することができる。
このようにして、ハウジング10とシェル30およびコンタクト20との間の防水性を向上させて装置内部、すなわち防水コネクタが搭載される基板側に水が浸入することを防止することが可能となる。
【0033】
なお、
図6に示したコンタクト側防水形状部24は、複数の突起25と複数の溝26と複数の障壁面27を有していたが、これに限るものではなく、1つの突起25と1つの溝26と1つの障壁面27のみを有するように構成しても、ハウジング10との界面に沿った水の浸入を抑制することはできる。ただし、複数の突起25と複数の溝26と複数の障壁面27を有する方が、より高い防水機能を発揮することができる。
同様に、シェル側防水形状部34も、1つの突起と1つの溝とこれらを接続する1つの障壁面から構成することができるが、複数の突起と複数の溝と複数の障壁面を有する方が、より優れた防水効果を得ることができる。
【0034】
シェル30は、ハウジング10の下面10Cから露出する一対のシェル側基板接続部32を有していたが、1つのシェル側基板接続部32のみ、あるいは、3つ以上のシェル側基板接続部32を有することもできる。シェル側基板接続部32が1つの場合は、嵌合部31からシェル側基板接続部32に至る経路の途中に1つの腕部33Bを形成して、この腕部33Bの表面にシェル側防水形状部34を形成すればよい。また、シェル30が3つ以上のシェル側基板接続部32を有する場合には、嵌合部31からそれぞれのシェル側基板接続部32に至る経路の途中にいずれかのシェル側防水形状部34が存在するように配置すればよく、シェル側防水形状部34が形成される腕部33Bは、シェル側基板接続部32と同数だけ存在しても、あるいは、シェル側基板接続部32の個数より少ない個数でも構わない。
【0035】
なお、シェル30の嵌合部31は、複数のコンタクト20の接点部21の全周を覆うような扁平な筒形状を有していたが、これに限るものではなく、複数のコンタクト20の接点部21の一部のみを覆うものであっても、防水コネクタの使用状況によっては、シールド効果を奏することができる。さらに、シールド効果を得る必要がなく、シェル側基板接続部32を介して防水コネクタを基板に取り付けるためのものとしてシェルを使用する場合には、シェルは、複数のコンタクト20の接点部21を覆っていなくてもよい。
【0036】
実施の形態2
上記の実施の形態1で用いられたコンタクト側防水形状部24は、
図6に示したように、複数の突起25および複数の溝26がそれぞれ三角形の断面形状を有し、突起25の頂部と溝26の底部を接続する障壁面27が平面形状を有していたが、これに限るものではない。
例えば、
図9(A)に示されるように、曲面からなる丸みを帯びた突起25Aと曲面からなる丸みを帯びた溝26Aを形成してもよい。この場合、突起25Aの頂部と溝26Aの底部を接続する障壁面27Aは、平面と曲面を組み合わせたものとなる。また、
図9(B)に示されるように、曲面からなる丸みを帯びた突起25Bと三角形状の溝26Bとを組み合わせることもできる。
【0037】
図9(C)に示されるように、平坦形状の頂部を有する突起25Cと三角形状の溝26Cとを組み合わせてもよい。逆に、
図9(D)に示されるように、三角形状の突起25Dと平坦形状の底部を有する溝26Dを組み合わせることもできる。さらに、
図9(E)に示されるように、平坦形状の底部に1つの三角形状の微小な突部が形成された溝26Eと三角形状の突起25Eの組み合わせ、
図9(F)に示されるように、平坦形状の底部に2つの三角形状の微小な突部が連続して形成された溝26Fと三角形状の突起25Fの組み合わせ、
図9(G)に示されるように、平坦形状の底部に2つの三角形状の微小な突部が間隔を隔てて形成された溝26Gと三角形状の突起25Gの組み合わせも可能である。
【0038】
図9(A)〜(G)に示したコンタクト側防水形状部24は、いずれも、溝26A〜26Gの両側に形成された一対の障壁面27A〜27Gが、コンタクト側固定部23の内方に向かって先細りになるようなテーパ形状を形成していたが、
図9(H)に示されるように、一対の鋭く尖った突起25Hの間に平坦形状の底部を有する溝26Hが配置され、溝26Hの両側に形成された一対の障壁面27Hが、コンタクト側固定部23の外方に向かって先細りになるようなテーパ形状を形成していてもよい。
同様に、
図9(I)に示されるように、平坦形状の頂部を有する一対の突起25Iの間に平坦形状の底部を有する溝26Iが配置され、溝26Iの両側に形成された一対の障壁面27Iが、コンタクト側固定部23の外方に向かって先細りになるようなテーパ形状を形成することもできる。
【0039】
また、
図9(A)〜(I)に示したコンタクト側防水形状部24は、いずれも、障壁面27A〜27Iが、コンタクト側固定部23の表面に対して傾斜していたが、
図9(J)に示されるように、突起25Jの平坦形状の頂部と溝26Jの平坦形状の底部とを、コンタクト側固定部23の表面に対して直交する障壁面27Jにより接続することもできる。このような障壁面27Jを有するコンタクト側防水形状部24を用いても、ハウジング10とコンタクト側固定部23との界面に沿った水の浸入を抑制して、優れた防水効果を得ることができる。
図9(K)に示されるように、三角形状の突起25Kの頂部と平坦形状の溝26Kの底部をコンタクト側固定部23の表面に対して直交する障壁面27Kにより接続してもよい。さらに、
図9(L)に示されるように、三角形状の突起25Lの頂部とU字状の溝26Lの底部を障壁面27Lで接続することもできる。この場合、障壁面27Lは、コンタクト側固定部23の表面に対して直交する平面と曲面を組み合わせたものとなる。
【0040】
また、
図9(M)に示されるように、一対の三角形状の突起25M1の間に平坦形状の頂部を有する突起25M2を配置すると共に、両側の突起25M1と中央の突起25M2の間にそれぞれ三角形状の溝26Mを形成することもできる。突起25M1の頂部と溝26Mの底部が障壁面27M1で接続され、突起25M2の頂部と溝26Mの底部が障壁面27M2で接続され、これら障壁面27M1および27M2が、互いに異なる傾斜角を有している。
【0041】
図9(A)〜(M)に示したコンタクト側防水形状部24は、いずれも、コンタクト側固定部23の長手方向に垂直な面に対して対称な断面形状を有していたが、非対称な断面形状を有していてもよい。
例えば、
図9(N)に示されるように、比較的頂角の大きな三角形状の突起25N1と比較的頂角の小さな三角形状の突起25N2の間に三角形状の溝26Nを形成することができる。双方の突起25N1および25N2の頂角が異なることから、突起25N1の頂部と溝26Nの底部を接続する障壁面27N1と、突起25N2の頂部と溝26Nの底部を接続する障壁面27N2とが互いに異なる傾斜角を有している。
【0042】
図9(A)〜(N)に示したコンタクト側防水形状部24は、いずれも、コンタクト側固定部23の長手方向に垂直な面内で、コンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように形成されているが、
図9(O)に示されるように、コンタクト側固定部23の長手方向に対して傾斜した面内で、コンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように、突起25O、溝26Oおよび障壁面27Oを形成することもできる。このような構成とすれば、コンタクト側固定部23の表面に形成された溝26Oと、コンタクト側固定部23の裏面に形成された溝26Oとが、互いにコンタクト側固定部23の長手方向にずれた位置を占めるため、溝26Oの形成によるコンタクト側固定部23の断面積の低減を効果的に抑制することができ、コンタクト20の電気抵抗の低下並びに機械的強度の低下の抑制に有利である。
【0043】
なお、
図9(A)〜(O)には、溝26A〜26L、26Nおよび26Oの両側に一対の障壁面27A〜27L、27N1および27N2、27Oが形成される、あるいは、一対の溝26Mの両側にそれぞれ一対の障壁面27M1および27M2が形成された基本的な構造のみを示したが、複数の突起25A〜25L、25M1、25M2、25N1、25N2および25Oと複数の溝26A〜26Oをコンタクト側固定部23の表面に連続して形成することにより、複数の障壁面27A〜27L、27M1、27M2、27N1、27N2および27Oを形成すれば、さらに優れた防水効果を得ることができる。
【0044】
また、この発明におけるコンタクト側防水形状部は、コンタクト側固定部の表面からコンタクト側固定部の外方へ突出する突起と、この突起に隣接し且つコンタクト側固定部の表面からコンタクト側固定部の内方に窪んだ溝を有し、突起の頂部と突起に隣接する溝の底部とが、コンタクト側固定部23の表面に対して傾斜または直交する障壁面により接続されていればよく、
図6および
図9(A)〜(O)に示した断面構造に限るものではない。
さらに、実施の形態1におけるシェル側防水形状部34に対しても、
図9(A)〜(O)に示したコンタクト側防水形状部24と同様の構造を採用することができる。
【0045】
実施の形態3
上記の実施の形態1で用いられたシェル30では、シェル側防水形状部34が、シェル側固定部33の腕部33Bに形成されていたが、腕部33Bに限るものではなく、ハウジング10内に埋め込まれて嵌合部31からシェル側基板接続部32に至る経路の途中に配置されるシェル側固定部33の狭窄部に形成されていればよい。
【0046】
例えば、
図10に示されるシェル50のように、嵌合部51の後端から後方に突出する後方突出部53Aの表面にシェル側防水形状部54を形成することもできる。シェル側防水形状部54は、
図6に示した実施の形態1におけるコンタクト側防水形状部24およびシェル側防水形状部34と同様の構造を有している。このシェル50は、シェル側防水形状部54が後方突出部53Aに形成された点以外は、実施の形態1で用いられたシェル30と同様の構成を有している。すなわち、嵌合部51と一対のシェル側基板接続部52の間にシェル側固定部53が配置され、シェル側固定部53が、後方突出部53Aと、後方突出部53Aの後端に接続された一対の腕部53Bと、双方の腕部53Bの先端に接続された一対の脚部53Cを含み、それぞれの脚部53Cの先端に対応するシェル側基板接続部52が接続されている。
【0047】
シェル50の表面に沿って嵌合部51から双方のシェル側基板接続部52に至るには、後方突出部53Aを通る必要があり、この後方突出部53Aの外周面にシェル側防水形状部54を形成することで、固定部53とハウジング10との界面に沿った水の浸入を遮断することが可能となる。
同様にして、後方突出部53Aの代わりに、一対の脚部53Cの表面にそれぞれシェル側防水形状部54を形成してもよい。
この実施の形態3によっても、防水性を向上させながら、コンタクト20およびシェル50の電気抵抗の低下およびハウジング10の成形性の低下を抑制することが可能となる。
【0048】
実施の形態4
上記の実施の形態1および3で用いられたシェル30および50では、シェル側防水形状部34および54が、狭窄部である脚部33Cおよび後方突出部53Aにそれぞれ形成されていたが、必ずしも、狭窄部に形成しなくてもよい。
図11に、実施の形態4に係る防水コネクタの分解図を示す。この防水コネクタは、実施の形態1の防水コネクタにおいて、シェル30の代わりに、狭窄部を有しないシェル60を用いたものである。
【0049】
シェル60は、
図12に示されるように、中空の扁平な筒形状の嵌合部61を有すると共に、嵌合部61の後端側に連結された中空の扁平な筒形状のシェル側固定部63を有し、シェル側固定部63の後端から一対のシェル側基板接続部62が突出形成されている。すなわち、1つの筒状体を前端側部分と後端側部分とに二分し、前端側部分を嵌合部61、後端側部分をシェル側固定部63としている。
嵌合部61は、複数のコンタクト20の前端に配置された接点部21の周囲を覆いながら、内面部分がハウジング10から露出し、シェル側固定部63は、内面部分および外面部分がすべてハウジング10内に埋め込まれる。
【0050】
そして、シェル側固定部63の外周面に、シェル側防水形状部64が形成されると共に、シェル側固定部63の内周面にも、シェル側防水形状部65が形成されている。シェル側防水形状部64は、シェル側固定部63の外周を囲って閉じるように形成され、シェル側防水形状部65は、シェル側固定部63の内周を囲って閉じるように形成されている。シェル側防水形状部64および65は、
図6に示した実施の形態1におけるコンタクト側防水形状部24およびシェル側防水形状部34並びに実施の形態2におけるシェル側防水形状部54と同様の構造を有している。
シェル60の表面に沿って嵌合部61から双方のシェル側基板接続部62に至るには、シェル側防水形状部64あるいはシェル側防水形状部65を越える必要があり、これらのシェル側防水形状部64および65により、シェル側固定部63とハウジング10との界面に沿った水の浸入を遮断することが可能となる。
【0051】
この実施の形態3に係る防水コネクタを、シェル側基板接続部62の位置でXZ面に沿って切断した状態を
図13に示す。シェル60の嵌合部61の内面がハウジング10に覆われることなく露出し、シェル側固定部63がハウジング10内に埋め込まれ、シェル側固定部63の後端に接続されたシェル側基板接続部62がハウジング10の後面10Bから突出して露出している。シェル側固定部63の外周面および内周面にそれぞれシェル側防水形状部64および65が形成されているため、シェル側固定部63の切断面の両側縁には、シェル側防水形状部64および65の断面形状が現れている。
【0052】
また、防水コネクタを、コンタクト20の位置でXZ面に沿って切断した状態を
図14に示す。コンタクト20の接点部21がシェル60の嵌合部61内で露出し、コンタクト側基板接続部22がハウジング10の後面10Bから後方へ突出して露出し、コンタクト側固定部23がハウジング10内に埋め込まれている。コンタクト20のコンタクト側固定部23には、複数のコンタクト側防水形状部24がコンタクト側固定部23の周囲を囲って閉じるように形成されているため、コンタクト側固定部23の切断面の両側縁には、コンタクト側防水形状部24の断面形状が現れている。
このように、中空のシェル側固定部63を有するシェル60を用いても、ハウジング10とシェル60およびコンタクト20との間に優れた防水効果が得られると共に、コンタクト20およびシェル60の電気抵抗の低下およびハウジング10の成形性の低下を抑制することが可能となる。
【0053】
なお、実施の形態3におけるシェル側防水形状部54、実施の形態4におけるシェル側防水形状部64および65に対しても、
図9(A)〜(O)に示したコンタクト側防水形状部24と同様の構造を採用することができる。