【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2007年,Vol.104, No.6,p.1766-1770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランス遺伝子が、阻害的低分子RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、共抑制センスRNA、および/またはアンチセンスRNAを産生することによってMSH1の発現を抑制するトランス遺伝子の群から選択される、請求項1記載の方法。
多くの種子を産生する方法であって、請求項7記載の植物の個体群を自家受粉させるステップ、およびそれから種子を収穫するステップを含み、収穫された種子またはそれから得られた植物が、MSH1遺伝子の発現の抑制を受けていないがそれ以外は前記第1親植物または植物細胞に対して同質遺伝的であった親植物と比較して収穫高の改善を示す、前記方法。
前記選択が、前記改変された染色体座を含む植物もしくは子孫植物を単離すること、または前記改変された染色体座と関連する核酸を得ることを含む、請求項13記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、MSH1抑制を受けたさまざまな植物において観察される、細胞質雄性不稔、斑入りおよび改変されたクロロプラスト発生、低下した成長速度および矮化、改変された開花期もしくは隠花性、減少したフラボノイド生合成およびアントシアニンの欠乏、増強された病原体感受性、改変された葉の形態、およびハイライト耐性などのさまざまな表現型を示す。
【
図2】
図2は、MSH1抑制を受けたシロイヌナズナ(上)、トマト(中)、およびソルガム(下パネル)植物における葉斑入りを示す。
【
図3】
図3は、MSH1抑制を受けたソルガム(上)およびトマト(下パネル)植物における矮化を示す。
【
図4】
図4は、MSH1抑制を受けたシロイヌナズナにおけるミトコンドリアDNA再配列を示す。
【
図5】
図5は、MSH1抑制を受けたトマト、タバコ、およびキビ植物で観察される活性酸素種(ROS)の増加を示す。
【
図6】
図6は、MSH1抑制を受けた結果として本明細書中で「不連続変異」(V
D)と称されるさまざまな種類の遺伝性表現型変異を示す植物を得るため、ならびに「量的変動」または「V
Q」およびさまざまな有用な特徴を示す可能性がある植物系を得るための例示的非限定的スキームを示す。
【
図7】
図7は、MSH1抑制を受けなかった、それ以外は同質遺伝的な親植物(Col−0)に対してバイオマスの増加を示すシロイヌナズナ植物系(msh1×Col−0F
3)を示す。
【
図8】
図8は、MSH1発現が抑制された植物の異系交配から誘導される、異なるソルガム系GAII−11(正方形)、GA11−15(三角形)、GAII−22(逆括弧)、GAII−24、およびGAII−28(丸)で得られる草高(cM)の分布を示す。野生型参照系はfxWT(菱形)である。
【
図9】
図9は、MSH1発現が抑制された植物の異系交配から誘導される、異なるソルガム系GAII−11(正方形)、GA11−15(三角形)、GAII−22(逆括弧)、GAII−24、およびGAII−28(丸)で得られる穂の質量(グラム)の分布を示す。野生型参照系はfxWT(菱形)である。
【
図10】
図10は、MSH1発現が抑制された植物の異系交配から誘導される、異なるソルガム系GAII−11(正方形)、GA11−15(三角形)、GAII−22(逆括弧)、GAII−24、およびGAII−28(丸)で得られる穀粒収量(グラム)の分布を示す。野生型参照系はfxWT(菱形)である。
【
図11】
図11のA〜Hは、シロイヌナズナおよびソルガムにおけるMSH1−エピ系の増大成長表現型を示す。ソルガムおよびシロイヌナズナエピ個体群を誘導するために使用されるトランス遺伝子および交配手順が示される。(A)交配Tx430×MSH1−drから誘導されるF1子孫の表現型。(B)屋外栽培されたエピF2、F3およびF4ソルガム系は、植物構造および高さにおいて変異を示す。(C)Tx430(左、66gm、8mm茎)からの穂対エピ−F2個体(右、112gm、11mm茎)からの穂。(D)Cで示される穂からの種子収量。(E)現地条件下でのMSH1−drソルガム表現型。(F)シロイヌナズナのエピ−F4系における増大したロゼット成長の証拠。(G)シロイヌナズナエピ−F4植物は、Col−0と比較して増大した植物バイオマス、ロゼット直径および花茎直径を示す。>6からの平均±SEとして示されたデータ。(H)開花期のシロイヌナズナエピF4表現型。
【
図12】
図12は、ソルガムMSH1−エピF2系における増大した表現型変異を示す。表現型分布を、2つの屋外植え付けで成長させた3つの独立したソルガムエピF2個体群からの草高および穀粒収量について示す。個体群平均を垂直の点線によって示す。
【
図13】
図13のA、Bは、ソルガムMSH1−エピF2、F3およびF4系における表現型変異を示す。(A)草高および穂あたりの穀粒収量について選択されたMSH1−エピF4系。草高に関して、系4b−10、10.3および3a.2は低草高に選択され、他のすべては、高草高に選択された。穀粒収量に関して、系15.2が低収量に選択され、他のすべては高収量に選択された。(B)4つの独立した個体群の選択に対する個々の個体群応答を示すボックスプロット。水平の点線はTx430野生型の平均を表す。穀粒収量の場合、F3選択を温室で実施した。
【
図14】
図14のA〜Eは、シロイヌナズナにおけるMSH1−エピ増大成長が、クロロプラスト効果と関連することを示す。(A)ミトコンドリア半相補性系AOX−MSH1×Col−0F1;(B)プラスチド−相補SSU−MSH1×Col−0F2は、Col−0野生型と同一であるようである、(C)Col−0と比べたSSU−MSH1由来F2系のロゼット直径および生バイオマス;(D)増大した成長を示すミトコンドリア相補AOX−MSH1×Col−0F2;(E)AOX−MSH1由来F2系のロゼット直径および生バイオマスはCol−0よりも有意に大きい(P<0.05)。(F)A0X−MSH1×Col−0のF4世代での増大成長表現型。
【
図15】
図15のA〜Cは、シロイヌナズナCol−0野生型およびMSH1−エピF3系におけるゲノム規模での5−メチル−シトシンパターンを示す。(A)CG、CHGおよびCHHメチル化のゲノムの差次的および非差次的メチル化への相対的寄与。遺伝子間領域は棒グラフの最上部にあり、そのあと順番にTE遺伝子、偽遺伝子、ncRNA、3’−UTR、5’−UTR、イントロン、およびCDSが続く。(B)各染色体に沿ったCG−DMPおよびCG−N−DMPの分布であって、データをBecker et al. Nature 480, 245(2011)に使用された分析手順に並行して各染色体についての最高値に対して正規化する。(C)NDMPパターンの類似点およびDMPの相違点を示すためのBecker et al.(同書)の
図1cからのCol−0メチル化分析。
【
図16】
図16は、msh1クロロプラスト半相補性系×Col−0野生型の交配から得られるシロイヌナズナF1植物を示す。msh1のトランス遺伝子媒介クロロプラスト半相補性は野生型表現型を復元する。しかしながら、これらの半相補系をCol−0と交配すると、約25%の植物がF1においてさまざまな程度で葉の彎曲を示す。この表現型の原因はまだわかっていないが、誘導されたF2個体群ではもはや見られない。
【
図17】
図17は、シロイヌナズナCol−0、エピF4およびエピF5系における開花期の分布を示す。各分布を最低でも50の植物に基づいてプロットする。
【
図18】
図18のA、B、Cは、亜硫酸水素塩シーケンシングを使用した、シロイヌナズナ系col−0とmsh1−エピf3との差次的にメチル化された領域の検証を示す。AT3G27150(MIR2111−5pの標的遺伝子)内のDMR領域のアラインメント。強調されたG(すなわち、図中で下線を引いたもの)は、Col−0ではメチル化されず、MSH1−エピF3ではメチル化されると予想される。
図18A、B、およびCの配列を配列表で以下のように提供する:AT3G27150(配列番号27)、Col0−MIR2−2(配列番号28)、Col0−MIR2−3(配列番号29)、Col0−MIR2−4(配列番号30)、Col0−MIR2−5(配列番号31)、Col0−MIR2−6(配列番号32)、Col0−MIR2−10(配列番号33)、Col0−MIR2−ll(配列番号34)、Col0−MIR2−12(配列番号35)、Col0−MIR2−26(配列番号36)、Col0−MIR2−27(配列番号37)、Col0−MIR2−28(配列番号38)、Col0−MIR2−29(配列番号39)、F3−Mir2−1(配列番号40)、F3−Mir2−2(配列番号41)、F3−Mir2−4(配列番号42)、F3−Mir2−5(配列番号43)、F3−Mir2−7(配列番号44)、F3−Mir2−11(配列番号45)、F3−Mir2−12(配列番号46)、F3−Mir2−15(配列番号47)、F3−Mir2−16(配列番号48)、F3−Mir2−27(配列番号49)、およびF3−Mir2−28(配列番号50)。
【0026】
詳細な説明
I.定義
本明細書中で用いられる場合、「染色体修飾」という語句は:a)「改変された染色体座(複数可)」;b)「突然変異した染色体座(複数可)」および「染色体突然変異(複数可)」;またはc)トランス遺伝子のいずれかを指す。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、「改変された染色体座」(複数)または「改変された染色体座」(単数)という語句は、対応する親染色体座に対して遺伝性可逆的後成的変化を受けた染色体の部分を指す。改変された染色体座における遺伝性可逆的遺伝子変化としては、染色体DNAのメチル化、特にシトシン残基から5−メチルシトシン残基へのメチル化、および/またはヒストンタンパク質の翻訳後修飾、特にアセチル化、メチル化、ユビキチニル化、リン酸化、およびsumo化(小さなユビキチン様修飾タンパク質の共有結合)を含むがこれらに限定されないヒストン修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で用いられる場合、「染色体座」とは、細胞の核中に位置する染色体中の座を指す。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、「含む(comprising)」という用語は、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、「突然変異した染色体座」(複数)(複数)、「突然変異した染色体座」(単数)、「染色体突然変異(複数可)」という語句は、対応する親の染色体座中のヌクレオチド配列と比べて、ヌクレオチド配列において遺伝性遺伝子変化を受けた染色体の部分を指す。突然変異した染色体座は、ヌクレオチド配列反転、挿入、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない突然変異を含む。ある実施形態において、突然変異した染色体座は、可逆的である突然変異を含み得る。これに関連して、染色体の可逆的突然変異としては、転位性因子の挿入、転位性因子の欠損、およびある反転が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、染色体座は不可逆的である突然変異を含む。これに関連して、染色体における不可逆的突然変異としては、欠失を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本明細書中で用いられる場合、「不連続変異」または「V
D」という用語は、任意の組み合わせまたは単独のいずれかで観察されえる雄性不稔、矮化、斑入り、および/または遅延型開花期の特徴を含む、異なる遺伝性表現型変異を指す。
【0031】
本明細書中で用いられる場合、「MSH−dr」という用語は、MSH1抑制を受けた植物で観察される植物分げつ、高さ、節間伸長および気孔密度における変化を指す。
【0032】
本明細書中で用いられる場合、「量的変動」または「V
Q」という用語は、MSH1発現が抑制された植物の異系交配から誘導される個々の子孫系で観察され、他の植物に対して不連続変異を示す表現型変異を指す。
【0033】
本明細書中で用いられる場合、「ミクロRNA」または「miRNA」という用語は、植物中に存在する天然miRNAに実質的に類似したmiRNAならびに人工miRNAの両方を指す。ある実施形態において、トランス遺伝子は、植物中に存在する天然miRNAに実質的に類似したmiRNAまたは人工miRNAのいずれかを産生するために使用することができる。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、「改変された染色体座に関連する核酸を得る」という慣用句は、変更されていない共有結合した核酸からの改変された染色体座と関連した核酸の物理的分離または濃縮を提供する任意の方法を指す。これに関連して、核酸は必ずしも変化(すなわち、メチル化など)を含まないが、少なくとも改変された1以上のヌクレオチド塩基を含む。改変された染色体座に関連した核酸は、したがって、分子クローニング、PCR、または配列データに基づく直接合成を含むが、これらに限定されない方法によって得られる。
【0035】
「機能的に連結された」という句は、本明細書中で用いられる場合、1つの配列が必要とされる機能を連結された配列に提供することができるような核酸配列の結合を指す。プロモータに関連して、「機能的に連結された」とは、関心対象の配列の転写がそのプロモータによって制御され、調節されるように、プロモータがその関心対象の配列に連結されることを意味する。関心対象の配列がタンパク質をコード化する場合、およびそのタンパク質の発現が望ましい場合、「機能的に連結された」とは、結果として得られる転写産物が効率的に翻訳されるような方法でプロモータが配列に連結されることを意味する。プロモータのコーディング配列に対する連結は転写融合であり、コード化されたタンパク質の発現が望ましい場合、結果として得られる転写産物中の第1翻訳開始コドンがコーディング配列の開始コドンとなるように連結される。あるいは、プロモータのコーディング配列に対する連結が翻訳融合であり、コード化されたタンパク質の発現が望ましい場合、結果として得られる翻訳産物が所望のタンパク質をコード化する翻訳オープンリーディングフレームとフレーム内にあるように連結されるように、プロモータと関連した5’非翻訳配列中に含まれる第1翻訳開始コドンは連結される。機能的に連結させることができる核酸配列としては、遺伝子発現機能を提供する配列(すなわち、遺伝子発現エレメント、たとえばプロモータ、5’非翻訳領域、イントロン、タンパク質コーディング領域、3’非翻訳領域、ポリアデニル化部位、および/または転写ターミネーター)、DNA移入および/または組み込み機能を提供する配列(すなわち、部位特異的リコンビナーゼ認識部位、インテグラーゼ認識部位)、選択的機能を提供する配列(すなわち、抗生物質耐性マーカー、生合成遺伝子)、スコア可能なマーカー機能を提供する配列(すなわち、レポーター遺伝子)、配列のインビトロまたはインビボ操作を容易にする配列(すなわち、ポリリンカー配列、部位特異的組換え配列、相同的組換え配列)、および複製機能を提供する配列(すなわち、細菌複製起源、自律的複製配列、セントロメア配列)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、「MSH1遺伝子(複数可)の発現を抑制する」という表現は、遺伝的または環境的操作を受けていないが、それ以外は同質遺伝的な植物または植物細胞で生じる機能的MSH1活性のレベルに対して、植物または植物細胞で減少したレベルの機能的MSH1活性を提供する遺伝的または環境的操作を指す。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、「トランス遺伝子」という用語は、染色体修飾に関連して、宿主細胞で安定して維持される染色体に組み込まれた非相同源由来の任意のDNAを指す。これに関連して、DNAの非相同源としては、宿主細胞生物と異なる生物由来のDNA、宿主細胞種と異なる種、異なる変種または同一変種のいずれかである同じ種の変種、任意のインビトロ修飾を受けたDNA、組み換えDNA、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、「再生不可能な」という用語は、植物全体を生じさせることができない植物の部分または植物細胞を指す。
【0039】
II.概略の記載
有用な特徴を示す植物をもたらす遺伝性および後成的および/または遺伝的変異を導入するための方法が、これらの方法によって得られる植物、植物種子、植物の部分、植物細胞、および加工植物産物とともに提供される。ある実施形態において、本発明によって提供される方法を使用して、変種植物または非ハイブリッド植物に後成的および/または遺伝的変異を導入することができ、その結果、有用な特徴が得られ、また有用な特徴によって付与される利点を示す、有する、または他の方法で反映する有用な植物、種子を含むがこれに限定されない植物の部分、植物細胞、および加工植物産物が得られる。他の実施形態において、これによって提供される方法を使用して、ハイブリダイゼーションも受けやすい植物に後成的および/または遺伝的変異を導入することができる。
【0040】
ほとんどの実施形態において、本発明によって提供される方法は、植物MSH1遺伝子の発現を抑制すること、機能的植物MSH1遺伝子の発現を回復すること、および1以上の有用な特徴を示す子孫植物を選択することを含む。ある実施形態において、これらの有用な特徴は、遺伝性可逆的後成的変化を受けた1以上の改変された染色体座、遺伝性遺伝子変化を受けた1以上の突然変異した染色体座、またはそれらの組み合わせのいずれに関連する。
【0041】
III.植物または植物細胞におけるMSH1発現の抑制
一般的に、後成的および/または遺伝的変異植物を導入するための本発明によって提供される方法は、単にMSH1発現が変異を導入するために十分な時間抑制されることを必要とする。このように、さまざまなMSH1抑制方法を用いて、本発明によって提供される方法を実施することができ、その方法は特定の抑制技術に限定されない。
【0042】
MSH1遺伝子およびMSH1遺伝子枯渇の効果はどちらも植物において高度に保存されるようであるので、本明細書中で提供される方法をさまざまな異なる植物または植物細胞に適用することができることがさらに予測される。シロイヌナズナ、ダイズ、トウモロコシ、ソルガム、米、ヤマカモジグサ、ビィニフェラ、綿、およびキュウリ由来のMSH1遺伝子の配列またはそのフラグメントが本発明によって提供される。ある実施形態において、そのような遺伝子を相同的または非相的同植物種のいずれかで直接使用して、相同的植物種または非相同植物種のいずれかにおいて内因性MSH1遺伝子を抑制することができる。1つの種由来のMSH1遺伝子が相同的種および非相同的種の両方における内因性MSH1遺伝子の抑制に有効であることが示されている非限定的例証がSandhu et al. 2007によって提供され、トマトMSH1配列を有するMSH1阻害的RNA(RNAi)を提供するトランス遺伝子は、トマトおよびタバコの両方の内因性MSH1遺伝子を阻害することが示された。トウモロコシMSH1配列を有するMSH1阻害的RNA(RNAi)を提供するトランス遺伝子は、キビ、ソルガム、およびトウモロコシの内因性MSH1遺伝子を阻害することができる。限定されないが、綿、キャノーラ、小麦、大麦、亜麻、オートムギ、ライムギ、芝草、サトウキビ、アルファルファ、バナナ、ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、セロリ、かんきつ類、ウリ科植物、ユーカリ、ニンニク、ブドウ、タマネギ、レタス、エンドウ豆、ピーナツ、コショウ、ジャガイモ、ポプラ、マツ、ヒマワリ、ベニバナ、ダイズ、イチゴ、サトウダイコン、サツマイモ、タバコ、キャッサバ、カリフラワー、セロリ、かんきつ類、綿、ウリ科植物、ユーカリ、ニンニク、ブドウ、タマネギ、レタス、エンドウ豆、ピーナツ、コショウ、ジャガイモ、ポプラ、マツ、ヒマワリ、ベニバナ、イチゴ、サトウダイコン、サツマイモ、タバコ、キャッサバ、カリフラワー、セロリ、かんきつ類、ウリ科植物、ユーカリ、ニンニク、ブドウ、タマネギ、レタス、エンドウ豆、ピーナツ、コショウ、ポプラ、マツ、ヒマワリ、ベニバナ、ダイズ、イチゴ、サトウダイコン、タバコ、ジャトロファ、アマナズナ、およびリュウゼツランをはじめとする他の植物由来のMSH1遺伝子は、さまざまな技術によって得られ、それらの植物における対応するMSH1遺伝子または異なる植物におけるMSH1遺伝子のいずれかの発現を抑制するために使用することができる。さまざまな植物のMSH1遺伝子を得るための方法としては:i)植物種由来の配列を含むアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列データベースを検索して、配列同一性比較によってMSH1遺伝子を同定する技術;ii)ゲノム配列からのPCRまたは発現されたRNAからのRT−PCRのいずれかによってMSH1遺伝子をクローニングする技術;iii)PCRおよび/もしくはハイブリダイゼーションに基づく技術を使用してゲノムまたはcDNAライブラリからMSH1遺伝子をクローニングする技術;iv)MSH1タンパク質に対する抗体を使用してMSH1含有クローンを同定する、発現ライブライブラリからMSH1遺伝子をクローニングする技術;v)msh1突然変異体またはMSH1欠損植物の相補性によってMSH1遺伝子をクローニングする技術;あるいはvi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、および/または(v)の任意の組み合わせなどの技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。MSH1遺伝子の植物からの回収は、遺伝子の抑制をもたらす植物形質転換ベクターを構築し、植物をそのベクターで形質転換し、そしてそのベクターで形質転換された植物が、葉の斑入り、細胞質雄性不稔(CMS)、低下成長速度表現型、遅延もしくは隠花性表現型、および病原体に対する増大した感受性をはじめとする、MSH1発現が抑制された場合にさまざまな植物種で典型的に観察される特徴的な応答を示すかどうかを確認することによって、容易に決定または確認することができる。
【0043】
ある実施形態において、本明細書中で提供される方法で用いられるMSH1遺伝子またはそれらのフラグメントは、配列番号1、配列番号3〜10、および配列番号14を含むが、これらに限定されない本明細書中で提供される1以上のMSH1遺伝子またはそのフラグメントに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するであろう。ある実施形態において、MSH1タンパク質またはその部分をコード化する、本明細書中で提供される方法で用いられるMSH1遺伝子またはそのフラグメントは、配列番号2を含むがこれに限定されない本明細書中で提供される1以上のMSH1タンパク質、および配列番号3〜10によってコード化されるMSH1タンパク質と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであろう。ある実施形態において、本明細書中で提供される方法で用いられるMSH1遺伝子またはそれらのフラグメントは、配列番号51および配列番号52を含むがこれに限定されない本明細書中で提供される1以上のMSH1遺伝子またはそのフラグメント、そのオルトログ、またはそのホモログと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するであろう。ある実施形態において、MSH1タンパク質またはその部分をコード化する、本明細書中で提供される方法で用いられるMSH1遺伝子またはそのフラグメントは、配列番号51および配列番号52によってコード化されるタンパク質を含むがこれに限定されない本明細書中で提供される1以上のMSH1タンパク質またはMSH1ホモログと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであろう。本明細書中で提供されるもの以外の植物由来のMSH1遺伝子も、多くのMSH1遺伝子を特性化する、コード化されたDNA結合ドメイン(ドメインI)、ATPaseドメイン(ドメインV)、およびカルボキシ末端GIY−YIG型エンドヌクレアーゼドメイン(ドメインVI)によって同定することができる(Abdelnoor et al. 2006)。この点に関して、18〜20ヌクレオチド、さらに好ましくは21ヌクレオチドまたはそれ以上のMSH1核酸フラグメントを使用して、内因性MSH1遺伝子の抑制を行うことができると予想される。ある実施形態において、少なくとも18、19、20、または21ヌクレオチド〜約50、100、200、500もしくはそれ以上のヌクレオチドのMSH1核酸フラグメントを使用して、内因性MSH1遺伝子の抑制を実施することができる。
【0044】
ある実施形態において、植物におけるMSH1の抑制は、トランス遺伝子で実施される。MSH1の発現を抑制するために使用することができるトランス遺伝子としては、限定されないが、MSH1のドミナントネガティブ突然変異体を産生するトランス遺伝子、阻害的低分子RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、共抑制センスRNA、および/またはアンチセンスRNAが挙げられ、これらは内因性MSH1遺伝子の阻害をもたらす。開示内容全体が参考として本明細書で援用される、トランス遺伝子による内因性植物遺伝子の抑制を記載する米国特許としては、米国特許第7,109,393号、米国特許第5,231,020号および米国特許第5,283,184号(共抑制法);ならびに米国特許第5,107,065号および米国特許第5,759,829号(アンチセンス法)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、MSH1遺伝子に対する相同性を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を産生するように特に設計されたトランス遺伝子を使用して、内因性MSH1遺伝子の発現を減少させることができる。そのような実施形態において、dsRNAのセンス鎖配列を、アンチセンス配列からスペーサー配列、好ましくはdsRNA(二本鎖RNA)分子の形成を促進するものによって分離することができる。そのようなスペーサー配列の例としては、Wesley et al., Plant J., 27(6):581−90(2001), and Hamilton et al., Plant J., 15:737−746 (1998)で記載されているものが挙げられるが、これに限定されるものではない。タバコおよびトマトにおけるMSH1を抑制することが示されている1つの例示的非限定的ベクターはSandhu et al., 2007によって記載され、この場合、イントロン配列がMSH1配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を分離する。
【0045】
ある実施形態において、MSH1抑制をもたらすトランス遺伝子は、機能的に連結されたMSH1阻害配列の誘導または下方調節のいずれかを提供する調節されたプロモータを含み得る。これに関連して、MSH1阻害配列は、これらに限定されないが、MSH1のドミナントネガティブ突然変異体、阻害的低分子RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、共抑制センスRNA、および/またはアンチセンスRNAを含み得、これらは植物の内因性MSH1遺伝子の阻害をもたらす。そのようなプロモータは、誘導剤または下方調節剤を提供するかまたは保留するかのいずれかによって、制御された時間中でMSH1の抑制をもたらすことができる。誘導性プロモータとしては、PR−laプロモータ(米国特許出願第20020062502号)またはGST IIプロモータ(WO1990/008826A1)が挙げられるが、これに限定されるものではない。他の実施形態において、誘導または抑圧することができる転写因子ならびにその転写因子によって認識され、MSH1阻害配列に機能的に連結されたプロモータの両方が提供される。そのような転写因子/プロモータ系には:i)メトキシフェノジド、テブフェノジド、および他の化合物によって誘導することができるRF2a酸性ドメイン−エクジソン受容体転写因子/同族プロモータ(米国特許出願第20070298499号);ii)テトラサイクリンで抑圧または抑圧解除することができるキメラテトラサイクリンリプレッサ転写因子/同族キメラプロモータ(Gatz, C., et al. (1992). Plant J. 2, 397−404)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
さらに別の実施形態において、MSH1抑制をもたらすトランス遺伝子がトランス遺伝子の除去をもたらす配列に隣接している、遺伝子組み換え植物が提供される。そのような配列としては、同族トランスポーゼースによって作用を受ける転位性因子配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。遺伝子組み換え植物において使用されるそのような系の非限定的例としては、cre−loxおよびFLP−FRT系が挙げられる。
【0047】
MSH1抑制は、分子技術によって容易に同定、またはモニターすることができる。内因性MSH1はインタクトであるが、その発現が阻害されるある実施形態において、MSH1をコード化するRNAの産生または蓄積をモニターすることができる。MSH1 RNA発現レベルをモニターするための分子法としては、半定量的または定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)技術の使用が挙げられるが、これに限定されるものではない。RNAi媒介抑制から起こるMSH1抑制をモニターするためのMSH1の半定量的PCR技術の使用が記載されている(Sandhu et al. 2007)。TaqMan(商標)反応(Applied Biosystems, Foster City, Calif. US)、Scorpion(商標)もしくはMolecular Beacon(商標)プローブの使用、またはBustin, S. A. (Journal of Molecular Endocrinology (2002) 29, 23−39)で開示されている方法のいずれかをはじめとするさまざまな定量的RT−PCR手順を使用することができる。定量的核酸配列に基づく増幅(Q−NASBA(商標))またはInvader(商標)技術(Third Wave Technologies, Madison, Wis.)などの他のRNA定量技術を使用することも可能である。
【0048】
MSH1抑制が植物の内因性MSH1遺伝子における突然変異の使用によって達成されるある実施形態において、ゲノムDNAにおける突然変異の存在または不在は、さまざまな技術によって容易に決定することができる。半接合状態(すなわち、1つの染色体が突然変異したmsh1遺伝子を有し、他の染色体が野生型MSH1遺伝子を有する場合)の突然変異の同定をもたらすある技術も使用することができる。挿入、欠失、ヌクレオチド置換、およびそれらの組み合わせを含むMSH1 DNA配列における突然変異は、そのすべての開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第5,468,613号、同第5,217,863号;同第5,210,015号;同第5,876,930号;同第6,030,787号;同第6,004,744号;同第6,013,431号;同第5,595,890号;同第5,762,876号;同第5,945,283号;同第5,468,613号;同第6,090,558号;同第5,800,944号;同第5,616,464号;同第7,312,039号;同第7,238,476号;同第7,297,485号;同第7,282,355号;同第7,270,981号および同第7,250,252号で開示されているものを含むが、これらに限定されないさまざまな有効な方法によって実施することができる。たとえば、突然変異は、米国特許第5,468,613号および同第5,217,863号で開示されているような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブに対するハイブリダイゼーションによって検出することができる。米国特許第5,210,015号は、アニールされたオリゴヌクレオチドの検出を開示し、この場合、アニールされていない5’標識ヌクレオチドが5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によって放出される。米国特許第6,004,744号は、DNAプライマー延長反応によるDNAにおける突然変異の存在または不在の検出を開示している。米国特許第5,468,613号は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを開示し、この場合、ヌクレオチド変異を含む配列を増幅させ、支持体に固定させ、そして標識された配列特異性オリゴヌクレオチドプローブに暴露させる方法によって、核酸配列における単一または複数のヌクレオチド変異を検出することができる。突然変異はさらに、米国特許第5,800,944号で開示されるプローブライゲーション法によっても検出することができ、この方法では、関心対象の配列を増幅し、プローブとハイブリダイズさせ、続いてライゲーションを行って、プローブの標識された部分を検出する。米国特許第6,613,509号および同第6,503,710号、ならびにその中で見いだされる参考文献は、質量分析で突然変異を特定するための方法を提供する。本発明の方法はゲノムDNA試料中のMSH1遺伝子における突然変異の存在または不在を特定するための任意の多型性分類法と合わせて使用することができるので、突然変異を特定するこれらのさまざまな方法は、限定的というよりはむしろ例示的であることが意図される。さらに、使用されるゲノムDNA試料としては、植物から直接単離されたゲノムDNA、クローンされたゲノムDNA、または増幅されたゲノムDNAを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
内因性植物MSH1遺伝子における突然変異は、さまざまな供給源から、さまざまな技術によって得られる。MSH1遺伝子において1以上の機能喪失型突然変異を含む相同的置換配列および2本鎖切断の両端での相同的配列は、染色体中に内在する野生型MSH1配列の機能喪失型突然変異(複数可)を有するmsh1置換配列での相同的組換えおよび置換を提供することができる。そのような機能喪失型突然変異には、MSH1機能の完全な損失または他の染色体座において改変(すなわち、遺伝性および可逆的後成的変化)もしくは他の染色体座において突然変異を誘発するために十分なMSH1機能の損失のいずれかをもたらすMSH1遺伝子内の配列の挿入、欠失、および置換が含まれるが、これらに限定されるものではない。MSH1における機能喪失突然変異としては、フレームシフト突然変異、中途翻訳停止コドン挿入、DNA結合ドメイン(ドメインI)、ATPaseドメイン(ドメインV)、および/またはカルボキシ末端GIY−YIG型エンドヌクレアーゼドメインを含むがこれらに限定されない1以上の機能的ドメインの欠失などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様の効果を得るために内因性MSH1植物遺伝子中に操作されるシロイヌナズナmsh1突然変異と類似した突然変異も本明細書中で提供される。内因性染色体配列を相同的2本鎖切断修復によって置換する方法がタバコおよびトウモロコシで報告されている(Wright et al., Plant J. 44, 693, 2005;D’Halluin, et al., Plant Biotech. J. 6:93, 2008)。相同的置換msh1配列(すなわち、MSH1配列において機能喪失型突然変異をもたらすもの)もまた、非相同的末端結合もしくは非相同的末端結合と相同的組換えとの組み合わせによって標的ヌクレアーゼ切断部位に導入することができる(Puchta, J. Exp. Bot. 56, 1, 2005; Wright et al., Plant J. 44, 693, 2005で概説)。ある実施形態において、少なくとも1つの部位特異的2本鎖切断を内因性MSH1遺伝子中にメガヌクレアーゼによって導入することができる。メガヌクレアーゼの遺伝的修飾は、特異的内因性MSH1標的配列と正確に一致するか、または密接に関連する認識配列内で切断するメガヌクレアーゼを提供することができる(WO/06097853Al、WO/06097784A1、WO/04067736A2、U.S.20070117128A1)。したがって、標的MSH1配列内で切断するヌクレアーゼを選択または設計することができると予想される。他の実施形態において、少なくとも1つの部位特異的2本鎖切断を、亜鉛フィンガーヌクレアーゼで内因性MSH1標的配列に導入することができる。植物において相同的組換えを提供するために操作された亜鉛フィンガーヌクレアーゼの使用も開示されている(WO03/080809、WO05/014791、WO07014275、WO08/021207)。さらに別の実施形態において、内因性MSH1遺伝子における突然変異は、Henikoff et alによって記載されるTILLING技術(Targeting Induced Local Lesions in Genomes)の使用によって同定することができ、この場合、伝統的な化学的突然変異に続いてハイスループットスクリーニングを行って、内因性MSH1遺伝子における点突然変異または他の突然変異を含む植物を同定する(Henikoff et al., Plant Physiol. 2004, 135:630−636)。
【0050】
ある実施形態において、MSH1抑制は、植物全体、または植物の生殖構造を、内因性MSH1遺伝子の抑制をもたらすストレス条件にさらすことによって実施することができる。そのようなストレス条件としては、ハイライトストレス、および熱ストレスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的非限定的ハイライトストレス条件は、約300〜約1200マイクロモル光子/m
2へ約24〜約120時間連続暴露することを含む。例示的非限定的熱ストレス条件は、約32℃〜約37℃の温度に約2時間〜約24時間連続暴露することを含む。MSH1抑制も提供することができる例示的非限定的熱、光、および他の環境ストレス条件は、熱(Shedge et al. 2010)ハイライトストレス(Xu et al. 2011)および他の環境ストレス条件(Hruz et al. 2008)についても開示されている。
【0051】
MSH1抑制が培養された植物細胞で実施される方法も本明細書中で提供される。ある実施形態において、MSH1抑制は、内因性MSH1遺伝子の抑制をもたらすストレス条件下で植物細胞を培養することによって実施することができる。そのようなストレス条件には、ハイライトストレスが含まれるが、これに限定されるものではない。例示的非限定的ハイライトストレス条件には、約300〜約1200マイクロモル光子s/m
2に約24〜約120時間連続暴露することが含まれる。例示的非限定的熱ストレス条件には、約32℃〜約37℃の温度に約2時間〜約24時間連続暴露することが含まれる。MSH1抑制を提供することができる例示的および非限定的熱、光、および他の環境ストレス条件は、熱(Shedge et al. 2010)、ハイライトストレス(Xu et al. 2011)および他の環境ストレス条件(Hruz et al. 2008)についても開示されている。ある実施形態において、MSH1抑制は、そのような抑制を提供する核酸を植物細胞に導入することによって、培養された植物細胞において実施される。培養された植物細胞でMSH1の抑制を提供するために用いることができる核酸としては、MSH1遺伝子に対する阻害的低分子RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、共抑制センスRNA、および/またはアンチセンスRNAを産生するトランス遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。培養された植物細胞においてMSH1の抑制を提供するために使用できる核酸には、内因性MSH1遺伝子に対する阻害的低分子RNA(siRNA)またはミクロRNA(miRNA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。MSH1の阻害を提供するRNA分子は、エレクトロポレーションによって導入することができる。標的遺伝子を阻害するための培養された植物細胞に対する阻害的RNAの導入は、ある実施形態では、Vanitharani et al.(Proc Natl Acad Sci USA., 2003, 100(16):9632−6)、Qi et al.(Nucleic Acids Res. 2004 Dec 15;32(22):el 79)、またはJ. Cheon et al. (Microbiol. Biotechnol. (2009), 19(8), 781−786)で開示されているようにして達成することができる。
【0052】
MSH1抑制はさらに、植物表現型が観察される伝統的な方法によって容易に同定またはモニターすることができる。たとえば、MSH1抑制は、葉斑入り、細胞質雄性不稔(CMS)、低下成長速度表現型、遅延もしくは陰花性表現型、および/または病原体に対する増大した感受性を含むオルガネラ効果を観察することによって同定またはモニターすることができる。様々な植物におけるMSH1抑制を示す表現型を
図1、2、および3に示す。MSH1抑制と関連するこれらの表現型を本明細書中では「不連続変異」(V
D)と称する。MSH1抑制はさらに、植物分げつ、高さ、節間伸長および気孔密度における変化(本明細書中で「MSH1−dr」と称する)ももたらすことができ、これを使用して植物におけるMSH1抑制を同定またはモニターすることができる。他の生化学的および分子的特徴をさらに使用して、植物におけるMSH1抑制を同定またはモニターすることができる。そのような分子的特徴としては、細胞周期の調節、ジベレリン酸異化作用、オーキシン生合成、オーキシン受容体発現、開花および春化調節剤(すなわち、増大したFLCおよび減少したSOC1発現)、ならびに増大したmiR156および減少したmiR172レベルに関与する遺伝子の発現における変化を挙げることができるが、これに限定されるものではない。そのような生化学的特徴としては、TCA、NADおよび炭水化物代謝経路のほとんどの化合物の上方調節、アミノ酸配列生合成の下方調節、ある植物におけるスクロースの枯渇、ある植物における糖または糖アルコールの増加、ならびにアスコルビン酸塩、アルファトコフェロール、およびストレス応答性フラボンアピゲニン、およびアピゲニン−7−オグルコシド、イソビテキシン、ケンフェロール3−O−ベータ−グルコシド、ルテオリン−7−O−グルコシド、およびビテキシンの増加を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、分子的、生化学的、および伝統的な方法の両方の組み合わせを使用して、植物におけるMSH1抑制を同定またはモニターすることができることがさらに想定される。
【0053】
IV.MSH1抑制植物の子孫の回収、自家受粉および異系交配
植物におけるMSH1の抑制と、それに続いて子孫植物の回収をもたらす様々な方法であって、MSH1機能が回復される方法が本明細書中で提供される。ある実施形態において、MSH1阻害トランス遺伝子の発現を下方調節することにより、またはMSH1阻害トランス遺伝子をトランスポーゼースで除去することによって、そのような子孫植物を回収することができる。本明細書中で提供される方法のある実施形態では、MSH1が標的植物または植物細胞において抑制され、MSH1を発現する子孫植物が伝統的な遺伝的技術によって回収される。例示的非限定的一実施形態において、子孫植物は、MSH1分離を提供するトランス遺伝子についてヘテロ接合性である植物を自家受粉させることによって得られる。そのようなヘテロ接合性植物の自家受粉(または植物細胞から再生されるヘテロ接合性植物の自家受粉)は、子孫植物個体群のサブセットから分離するためのトランス遺伝子を提供する。内因性MSH1遺伝子(すなわち、msh1植物)における劣性突然変異の使用によってMSH1が抑制される場合、msh1/msh1植物を、さらに別の例示的非限定的実施形態において、MSH1植物と交配、次いで自家受粉させて、機能的野生型MSH1対立遺伝子についてホモ接合性である子孫植物を得ることができる。他の実施形態では、MSH1が標的植物または植物細胞において抑制され、MSH1を発現する子孫植物が分子遺伝的技術によって回復される。そのような分子遺伝的技術の非限定的例示的実施形態としては:i)プロモータの活性に必要な誘導剤の撤収もしくはそのプロモータのリプレッサの導入による調節されたプロモータの制御下でのMSH1抑制トランス遺伝子の下方調節;または、ii)トランスポーゼース認識部位に隣接したMSH1抑制トランス遺伝子の、そのトランス遺伝子の除去をもたらす同族トランスポーゼースへの暴露が挙げられる。
【0054】
本明細書中で提供される方法のある実施形態において、雄性不稔、矮化、斑入り、および/または遅延型開花期を示し、機能的MSH1を発現する、MSH1発現が抑制された植物由来の子孫植物を得、独立育種系として維持する。そのような表現型は分離するようであり、したがって、例えば正常な成長速度を示し、斑入りを示さない細胞質雄性不稔植物、または高度に斑入りの発育不良雄性不稔植物を選択可能であることが見いだされた。本発明者等はこの現象を本明細書では不連続変異(V
D)と称する。この現象が分離によってMSH1阻害トランス遺伝子を喪失した自家受粉させた植物個体群で起こる際の例示的非限定的説明を
図6で提供する。不連続変異(V
D)を示すそのような個々の系は、前述の伝統的な遺伝的技術、分子遺伝的技術、またはそれらの組み合わせによって得られることがさらに想定される。
【0055】
不連続変異(V
D)を示すMSH1発現が抑制された植物から得られる個々の系を、他の植物と交配して、不連続変異(V
D)と関連した表現型が欠損した(すなわち、雄性不稔、矮化、斑入り、および/または遅延型開花期)子孫植物を得ることができる。そのような異系交配の子孫を自家受粉させて、有意な表現型変異を示す個々の子孫系を得ることができることが意外にも見いだされた。MSH1発現が抑制された植物の異系交配から誘導されるこれらの個々の子孫系で観察され、他の植物に対する不連続変異を示すそのような表現型変異を、本明細書中では「量的変動」(V
Q)と称する。MSH1発現が抑制された植物と他の植物との異系交配から得られるある個々の子孫植物系は、1以上の特徴がいずれかの親の系と比べて改善され、選択することができる、有用な表現型変異を示す可能性がある。そのような個々の子孫系で選択することができる有用な表現型変異には、いずれかの親の系と比べた生および乾燥質量バイオマスの増加が含まれるが、これに限定されるものではない。不連続変異を示す植物と不連続変異を示さない植物との異系交配のF2子孫で起こるような現象の例示的非限定的説明を
図6で提供する。
【0056】
ある実施形態において、不連続変異を示す個々の系の異系交配は、MSH1抑制を受けていないが、それ以外は不連続変異を示す個々の系に対して同質遺伝的である植物に対するものであり得る。ある例示的実施形態において、不連続変異を示す系は、所与の生殖質においてMSH1を抑制することによって得られ、MSH1抑制を受けなかった同じ生殖質を有する植物と異系交配させることができる。他の実施形態において、不連続変異を示す個々の系の異系交配は、MSH1抑制を受けていないが、不連続変異を示す個々の系と同質遺伝的でない植物に対するものであり得る。したがって、ある実施形態において、不連続変異を示す個々の系の異系交配はさらに、不連続変異を示す個々の系で起こらない1以上の染色体多型性を含む植物、部分的もしくは全体的に異なる生殖質由来の植物、または異なる雑種強勢群の植物(そのような異なる雑種強勢群が存在する場合)に対するものでもあり得る。そのような異系交配をいずれかの方向で作成できることも認められている。したがって、不連続変異を示す個々の系を、そのような異系交配においてMSH1抑制を受けていない植物に対して花粉供与体または花粉受領体のいずれかとして使用することができる。ある実施形態において、異系交配の子孫を次いで自家受粉させて、別々にスクリーニングして親の系と比べて改善された特徴を有する系を同定することができる個々の系を確立する。改善された特徴を示すそのような個々の系を次いで選択し、さらに自家受粉させることによって繁殖させることができる。不連続変異を示す植物の不連続変異を示さない植物との異系交配のF2子孫が得られるこの手順の例示的非限定的説明を
図6に示す。そのようなF2子孫系を親植物と比較した所望の特徴の改善についてスクリーニングし、そのような改善を示す系を選択する。
【0057】
V.有用な特徴を付与することができる植物中の改変された染色体座の比較および選択
有用な特徴を付与することができる改変された染色体座をさらに、有用な特徴を示さない参照植物およびMSH1抑制を受けた親植物または植物細胞から得られた試験植物の適切な比較分析を実施し、改変された座または改変された座を含む植物のいずれかを得ることによって、同定し、選択することができる。さまざまな参照植物および試験植物をそのような比較および選択で使用できることが予想される。ある実施形態において、有用な特徴を示さない参照植物としては:a)野生型植物;b)所定の植物系の植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群(ここで、F2個体群は
図6で示される方法で得られる任意の適用可能な植物型または異種である);c)野生型表現型を示すF1個体群(ここで、F1個体群は、
図6で示される方法で得られる任意の適用可能な植物型または異種である);および/または、d)それらの親植物または植物細胞においてMSH1の抑制の前の試験植物の親植物または親細胞に対して同質遺伝的である植物(すなわち、参照植物は、試験植物を得るために後にMSH1抑制を受けた植物または植物細胞と同質遺伝的である)のいずれかが挙げられるが、これに限定されるものではない。ある実施形態において、有用な特徴を示す試験植物としては:a)有用な特徴を示し、トランス遺伝子媒介MSH1抑制を受けた親植物もしくは植物細胞から誘導された任意の非トランスジェニック分離個体、b)有用な特徴を示す所定の植物系の植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群(ここで、F2個体群は
図6で示される方法で得られる任意の適用可能な植物型または異種である);(c)有用な特徴を示す(a)もしくは(b)の植物から得られる任意の子孫植物;またはd)有用な特徴を示すMSH1抑制を受けた植物もしくは植物細胞、のいずれかが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
一般的に、これらの比較の目的は、有用な特徴を示す試験植物と有用な特徴を示さない参照植物との低分子RNAプロフィールおよび/またはある染色体DNA座のメチル化における差を特定することである。このように特定された改変された座を次いで単離し、植物において選択して、有用な特徴を示す植物を得ることができる。
【0059】
ある実施形態において、改変された染色体座は、試験植物において上方調節または下方調節される低分子RNAを特定することによって(参照植物と比較して)特定することができる。この方法は、一つには、改変された染色体座に基づき、ここで、低分子干渉RNAがRNA介在性DNAメチル化(RdDM)による特異的遺伝子標的のメチル化を引き起こす。RNA介在性DNAメチル化(RdDM)法は記載されている(Chinnusamy V et al. Sci China Ser C−Life Sci. (2009) 52(4): 331−343)。マイクロアレイに基づく方法(Franco−Zorilla et al. Plant J. 2009 59(5):840−50)、大規模シーケンシングに基づく方法(Wang et al. The Plant Cell 21 :1053−1069 (2009))などを含むが、これらに限定されない任意の適用可能な技術基盤を使用して、試験および参照植物における低分子RNAを比較することができる。
【0060】
ある実施形態において、改変された染色体座は、座と関連し、試験植物においてメチル化もしくはアシル化されたヒストンタンパク質を特定することによって特定することができる(参照植物と比較して)。メチル化またはアシル化ヒストンと関連する染色体座の分析は、メチル化もしくはアシル化ヒストンを認識する抗体を使用してそれらの座を濃縮し、配列決定することによって達成することができる。H3K4me3、H3K9ac、H3K27me3、およびH3K36me3について特異的な抗体を使用することによるヒストンH3の特定のリジン残基のメチル化またはアセチル化に関連する染色体領域の同定は記載されている(Li et al., Plant Cell 20:259−276, 2008; Wang et al. The Plant Cell 21 : 1053−1069 (2009)。
【0061】
ある実施形態において、試験植物(参照植物と比較して)における改変されたメチル化状態を有する染色体領域(ゲノムDNA)を特定することによって、改変された染色体座を特定することができる。改変されたメチル化状態は、参照植物と比較して、試験植物の1以上の染色体座におけるメチル化の存在または不在のいずれかを含み得る。任意の適用可能な技術基盤を用いて、試験植物および参照植物中の染色体座のメチル化状態を比較することができる。それらのメチル化状態において変化を有する染色体座を特定するために適用可能な技術としては、5−メチルシチジンを認識する抗体を用いたDNAの免疫沈降に基づく方法、メチル化依存性制限エンドヌクレアーゼおよびMcrBC−PCR法などのPCRの使用に基づく方法(Rabinowicz, et al.Genome Res. 13: 2658−2664 2003; Li et al., Plant Cell 20:259−276, 2008)、亜硫酸水素塩変換DNAのシーケンシング(Frommer et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89 (5): 1827−31 ;Tost et al. BioTechniques 35 (1): 152−156, 2003)、亜硫酸水素塩処理DNAのメチル化特異的PCR分析(Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93 (18): 9821−6, 1996)、大規模シーケンシングに基づく方法(Wang et al. The Plant Cell 21 : 1053−1069 (2009))、メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長法(MsSnuPE; Gonzalgo and Jones Nucleic Acids Res. 25 (12): 2529−2531 , 1997)、蛍光相間分光法(Umezu et al. Anal Biochem. 415(2):145−50, 2011)、単分子リアルタイムシーケンシング法(F1usberg et al. Nature Methods 7, 461−465)、高分解融解分析(Wojdacz and Dobrovic (2007) Nucleic Acids Res. 35 (6): e41)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
VI.有用な特徴に関連する染色体修飾を植物に導入する
有用な特徴を付与することができるさまざまな染色体修飾を植物中鵜に導入するための方法、ならびに植物、植物部分、およびそれらの植物部分の産物も本明細書中で提供される。MSH1の抑制によって誘導された染色体改変および/または染色体突然変異は、本明細書中で記載されるようにして特定することができる。いったん特定されると、染色体改変、染色体突然変異、またはMSH1の抑制によって誘導される染色体改変および/もしくは染色体突然変異と同じ遺伝的効果を提供するトランス遺伝子を含むが、これらに限定されない染色体修飾を宿主植物に導入して、所望の特徴を示す植物を得ることができる。これに関連して、「同じ遺伝的効果」とは、MSH1抑制を受け、有用な特徴を示す植物で観察されるものと類似している1以上の内因性植物遺伝子の発現の増加および/または減少を提供する、導入された染色体修飾を意味する。MSH1抑制を受け、遺伝子の発現の減少および有用な特徴の両方を示す植物において内因性遺伝子がメチル化されているある実施形態において、遺伝子の発現の減少および有用な特徴ももたらす他の植物中の染色体修飾が提供される。MSH1抑制を受け、その遺伝子の発現の増加および有用な特徴の両方を示す植物において内因性遺伝子が脱メチル化されたある実施形態において、当該遺伝子の発現の増加および当該有用な特徴をもたらす他の植物における染色体修飾が提供される。
【0063】
ある実施形態において、導入される染色体修飾は染色体改変である。メチル化状態の差を含むが、これに限定されない染色体改変は、染色体改変を含む植物を染色体改変のない植物と交配し、そしてF1、F2、または交配の任意の次世代子孫植物における改変の存在について選択することによって導入することができる。さらに別の実施形態において、特定の標的遺伝子における染色体改変を、RNA介在性DNAメチル化によってその遺伝子を標的とするsiRNAまたはヘアピンRNAの発現によって導入することができる(Chinnusamy V et al. Sci China Ser C−Life Sci. (2009) 52(4): 331−343; Cigan et al. Plant J 43 929−940, 2005; Heilersig et al. (2006) Mol Genet Genomics 275 437−449; Miki and Shimamoto, Plant Journal 56(4):539−49; Okano et al. Plant Journal 53(l):65−77, 2008)。
【0064】
ある実施形態において、染色体修飾は染色体突然変異である。染色体座の内因性遺伝子の発現の減少または増加をもたらす染色体突然変異としては、遺伝子中のヌクレオチド配列の挿入、欠失、および/または置換を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。染色体突然変異は、ミスセンスコドン、フレームシフト突然変異、中途翻訳停止コドン、プロモータ欠失、mRNAプロセッシングなどを妨害する突然変異の導入を含むが、これらに限定されないさまざまなメカニズムによって遺伝子の発現を減少させることができる。遺伝子の発現増加をもたらす染色体突然変異としては、プロモータ置換、遺伝子からの負の調節エレメントの除去などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。染色体突然変異は、植物の特定遺伝子座に、任意の適用可能な方法によって導入することができる。内因性植物染色体座における染色体突然変異の導入のための適用可能な方法としては、相同的2本鎖切断修復(Wright et al., Plant J. 44, 693, 2005; D’Halluin, et al., Plant Biotech. J. 6:93, 2008)、非相同的末端結合または非相同的末端結合と相同的組換えとの組み合わせ(Puchta, J. Exp. Bot. 56, 1 , 2005; Wright et al., Plant J. 44, 693, 2005で概説)、メガヌクレアーゼ誘発性部位特異的2本鎖切断修復(WO/06097853A1、WO/06097784A1、WO/04067736A2、U.S.20070117128A1)、および亜鉛フィンガーヌクレアーゼ媒介相同的組換え(WO03/080809、WO05/014791、WO07014275、WO08/021207)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに別の実施形態において、内因性植物染色体座における所望の突然変異は、記載されているように(Henikoff et al., Plant Physiol. 2004, 135:630−636)、TILLING技術(Targeting Induced Local Lesions in Genomes)の使用によって特定することができる。
【0065】
他の実施形態において、所望の遺伝的効果を提供する染色体修飾は、トランス遺伝子を含み得る。ドミナントネガティブ突然変異体、阻害的低分子RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、共抑制センスRNA、および/またはアンチセンスRNAなどを含むが、これらに限定されないさまざまなメカニズムによって遺伝子の発現の減少をもたらすことができるトランス遺伝子。トランス遺伝子による内因性植物遺伝子の抑制を記載する、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許としては、米国特許第7,109,393号、米国特許第5,231,020号および米国特許第5,283,184号(共抑制法);ならびに米国特許第5,107,065号および米国特許第5,759,829号(アンチセンス法)が挙げられる。ある実施形態において、染色体座の内因性遺伝子に対する相補性を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を産生するために特に設計されたトランス遺伝子を使用して、その内因性遺伝子の発現を減少させることができる。そのような実施形態において、dsRNAのセンス鎖配列は、スペーサー配列、好ましくはdsRNA(二本鎖RNA)分子の形成を促進するものによってアンチセンス配列から分離することができる。そのようなスペーサー配列の例としては、Wesley et al., Plant J., 27(6):581−90 (2001)、およびHamilton et al., Plant J., 15:737−746 (1998)で記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。内因性植物遺伝子をヘアピンRNAのトランス遺伝子媒介発現で阻害するためのベクターは、それぞれのその開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許出願第20050164394号、同第20050160490号、および同第20040231016号で開示されている。
【0066】
染色体座の遺伝子の発現増大をもたらすトランス遺伝子としては、天然のプロモータよりも強力な非相同プロモータと融合した組み換え遺伝子、発現を増大させる、非相同イントロン、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域などのエレメントを含む組み換え遺伝子、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのようなプロモータ、イントロン、5’非翻訳、3’非翻訳領域、および任意の必要なポリアデニル化領域を、本明細書中で提供される染色体修飾を作成するために有用なトランス遺伝子の一部を含む組み換えDNA分子中の関心対象のDNAに機能的に連結させることができる。
【0067】
トランス遺伝子の発現に有用な例示的プロモータとしては、ウイルスCaMV35SおよびFMV35Sプロモータ(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第5,378,619号)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sプロモータ、米ActlプロモータおよびFigwortモザイクウイルス(FMV)35Sプロモータ(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第5,463,175号)の増強または複製バージョンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。トランス遺伝子発現に有用な例示的イントロンとしては、トウモロコシhsp70イントロン(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第5,424,412号)、米Actlイントロン(McElroy et al., 1990, The Plant Cell, Vol. 2, 163−171)、CAT−1イントロン(Cazzonnelli and Velten, Plant Molecular Biology Reporter 21:271−280, September 2003)、pKANNIBALイントロン(Wesley et al., Plant J. 2001 27(6):581−90; Collier et al., 2005, Plant J 43: 449−457)、PIV2イントロン(Mankin et al. (1997) Plant Mol. Biol. Rep. 15(2): 186−196)および「スーパーユビキチン」イントロン(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,596,925号;Collier et al., 2005, Plant J 43: 449−457)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的ポリアデニル化配列としては、アグロバクテリウム腫瘍誘導(Ti)プラスミドノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子およびエンドウ豆ssRUBISCO E9遺伝子ポリアデニル化配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
VII.MSH1抑制植物または改善された特徴もしくは有用な特徴を示す修飾された染色体座を含む植物の異系交配された子孫のスクリーニングおよび選択
本明細書中で提供される方法によって得られる植物系は、さまざまな有用な特徴について、さまざまな技術を使用することによってスクリーニングすることができ、選択することができる。本明細書中で提供される特定の実施形態では、MSH1発現が抑制された植物と他の植物との異系交配から得られる個々の子孫植物系を所望の有用な特徴についてスクリーニングし、選択する。
【0069】
ある実施形態において、スクリーンされ、選択される特徴は改善された植物収穫高である。ある実施形態において、そのような収穫高の改善は、非ストレス条件下で1以上の親系と比べた植物系の収穫高における改善である。非ストレス条件は、水、温度、栄養素、鉱物、および光が植物種の栽培に典型的な範囲内に含まれる条件を含む。栽培のそのような典型的な範囲は、不十分でも過剰でもない水、温度、栄養素、鉱物、および/または光の量または値を含む。ある実施形態において、そのような収穫高の改善は、非生物的ストレス条件下で親系(複数可)に対する植物系の収穫高における改善である。そのような非生物的ストレス条件には、水、温度、栄養素、鉱物、および/または光が不十分、過剰いずれかである条件が含まれるが、これに限定されるものではない。非生物的ストレス条件にはしたがって、干ばつストレス、浸透圧ストレス、窒素ストレス、リンストレス、鉱物ストレス、熱ストレス、低温ストレス、および/または光ストレスが含まれるが、これらに限定されるものではない。これに関連して、鉱物ストレスには、不十分または過剰のカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、またはケイ素によるストレスが含まれるが、これに限定されるものではない。これに関連して、鉱物ストレスとしては、カドミウム、銅、ニッケル、亜鉛、鉛、およびクロムが含まれるがこれらに限定されない過剰量の重金属によるストレスが挙げられるが、これに限定されない。
【0070】
本明細書中で提供される方法によって得られる植物系における収穫高の改善は、限定されないが、穀粒、リント、葉、茎、または種子を含む湿潤または乾燥バイオマスの直接測定によって特定することができる。収穫高における改善はさらに、限定されないが、100種子質量、収穫指数、および種子質量を含む収穫高に関連する特徴を測定することによって評価することができる。ある実施形態において、そのような収穫高の改善は、1以上の親系と比べた植物系の収穫高における改善であり、本明細書中で提供される方法によって得られる植物系を親植物と平行して成長させることによって容易に決定することができる。ある実施形態において、試験植物および対照植物のプロットが変異のために再現され、ランダム化され、制御される収穫高における差を決定するための野外実験を用いることができる(Giesbrecht FG and Gumpertz ML. 2004. Planning, Construction, and Statistical Analysis of Comparative Experiments. Wiley. New York; Mead, R. 1997. Design of plant breeding trials. In Statistical Methods for Plant Variety Evaluation, eds. Kempton and Fox. Chapman and Hall. London.)。比較に適した収穫高データを得るために試験植物(すなわち、本発明の方法で得られる植物)をチェック植物(親または他の対照)で隔てる方法が、限定されないが、Cullis, B. et al. J. Agric. Biol. Env. Stat.11 :381−393;およびBesag, J. and Kempton, RA. 1986. Biometrics 42: 231−251.)のいずれかを含む文献で記載されている。
【0071】
ある実施形態において、スクリーンされ、選択される特徴は、親の系と比べて、生物的植物ストレスに対して改善された耐性である。生物的植物ストレスとしては、植物真菌性病原体、植物細菌性病原体、植物ウイルス性病原体、昆虫、線虫、および草食動物によって課されるストレスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、アルテルナリア種、アスコキタ種、ボトリティス種;セルコスポラ種、コレトトリカム種、ディアポルテ種、ディプロディア種、エリシフェ種、フサリウム種、ゲウマノミセス種、ヘルミントスポリウム種、マクロフォミナ種、ネクトリア種、ペロノスポラ種、ファコスポラ種、フィアロフォラ種、フォマ種、フィマトトリカム種、フィトフトラ種、プラスモパラ種、プッチニア種、ポドスファエラ種、ピレノフォラ種、ピリクラリア種、ピチウム種、リゾクトニア種、セロチウム種、スクレロチニア種、セプトリア種、チエラビオプシス種、ウンシヌラ種、ベンツリア種、およびバーティシリウム種を含むが、これらに限定されない真菌性病原体に対する耐性を示す植物系のスクリーニングおよび選択が提供される。ある実施形態において、エルウィニア種、シュードモナス種、およびザンタモナス種を含むが、これらに限定されない細菌性病原体に対して耐性を示す植物系のスクリーニングおよび選択が提供される。ある実施形態において、アブラムシおよび他の穿孔性/吸汁性昆虫、たとえばライガス種、鱗翅類昆虫、たとえばアルミゲラ種、ヘリコベルパ種、ヘリオシス種、およびシュードプルシア種、ならびに鞘翅目昆虫、たとえばディアブロチカス種を含むが、これらに限定されない昆虫に対する耐性を示す植物系のスクリーニングおよび選択が提供される。ある実施形態において、メロイドジネ種、ヘテロデラ種、ベロのライムス種、ジチレンカス種、グロボデラ種、ナッコブス種、およびキシフィネマ種を含むが、これらに限定されない線虫に対する耐性を示す植物系のスクリーニングおよび選択が提供される。
【0072】
本明細書中で提供される方法によって得られる他の有用な特徴としては、種子中の油、タンパク質、またはデンプンの組成または量のいずれかにおける改善を含むが、これらに限定されないさまざまな種子品質特性が挙げられる。本明細書中で提供される方法によって得られるさらに他の有用な特徴としては、バイオマス、隠花性、雄性不稔、消化率、種子登熟期間、成熟度(所望により、早期または後期のいずれか)、減少した倒伏、および草高(所望により増加または減少のいずれか)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
前述の特徴のいずれかに加えて、本明細書中で提供される方法によって得られるソルガムの特に有用な特徴としてはさらに:i)農学的特徴(開花期、開花までの日数、開花までの日数(降雨後)、開花までの日数(降雨);ii)真菌性疾患耐性(ソルガムべと病耐性(温室)、ソルガムべと病耐性(田畑)、ソルガム穀粒かび、ソルガム葉枯れ病耐性、ソルガムさび病耐性;iii)穀粒に関連する特徴:(穀粒乾燥質量、穀粒数、1平方メートル当たりの穀粒数、穂分の穀粒質量、種子の色、種子の光沢、種子サイズ);iv)成長および発育段階に関連する特徴(基底ひこばえ数、収穫までの日数、成熟までの日数、節芽、草高、草高(降雨後));v)花序解剖学的形態および形態的特徴(脱粒性);vi)虫害耐性(ソルガムシュートフライ耐性(降雨後)、ソルガムシュートフライ耐性(降雨)、ソルガム茎食い虫耐性);vii)葉に関連する特徴(葉の色、主葉脈の色、葉脈の色、止め葉の質量、葉の質量、葉の残余の質量);viii)鉱物およびイオン含有量に関連する特徴(発芽カリウム含有量、発芽ナトリウム含有量);ix)穂に関連する特徴(穂の数、穂の稠密度および形状、穂労作、穂収穫指数、穂の長さ、穂の質量、穀粒を除く穂の質量、穂幅);x)植物化学化合物含有量(植物色素沈着);xii)小穂解剖学的形態および形態的特徴(苞穎の色、苞穎被覆);xiii)茎に関連する特徴(葉質量、茎質量分の茎);ならびにxiv)種々の特徴(茎葉関連特徴、代謝エネルギー、窒素消化率、有機物消化率、茎葉乾燥質量)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を証明するために含まれる。以下の実施例で開示されている技術は、本発明の実施において十分機能する本発明者によって発見された技術であり、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するとみなすことができることは当業者には理解される。しかしながら、開示され、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく依然として同様の結果を得る特定の実施形態でなすことができる多くの変更を、当業者は本開示を考慮して理解するはずである。
【0075】
実施例1.MSH1の抑制をもたらす遺伝子組み換え植物の構築
トマトおよびタバコにおいてMSH1の抑制をもたらすベクターを次のようにして構築した。MSH1タンパク質のアミノ酸配列651〜870をコード化するセグメントを、プライマー配列TOM−CD1F(5−CGCAGGTATCACGAGGCAAGTGCTAAGG−3;配列番号11)およびTOM−CD1R(5−ATCCCCAAACAGCCAATTTCGTCCAGGATCCCCAAACAGCCAATTTCGTCC AGG−3;配列番号12)を使用することによってトマトEST配列(配列番号5)から誘導し、イントロン配列を挟んで順方向および逆方向でクローンした。ベースベクターであるpUCRNAi−イントロンはシロイヌナズナ小型核リボタンパク質の第2のイントロン(At4g02840;配列番号13)を有する。CaMV35Sプロモータおよび転写ターミネーターは、構築およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)レポーター遺伝子の発現を調節し、そして挿入物は右縁および左縁組み込み配列に隣接している。アグロバクテリウム・ツメファシエンス株C58Cl/pMP90(28)を、タバコ(Horsch RB, et al.(1985) Science 227: 1229−1231)およびトマト(McCormick et al. 1986) Plant Cell Rep 5:81−84)での形質転換に使用した。
【0076】
キビおよびソルガムRNAi系を同様の手順および材料によって誘導し、形質転換および植物再生はHowe et al.の手順にしたがって実施した(Plant Cell Rep 25:784−91, 2006)。キビのRNAiベクターはキビMSH1遺伝子に対するものであり、一方、ソルガムのRNAiベクターはソルガムMSH1遺伝子(配列番号6)に対するものであった。MSH1C末端から157のアミノ酸をコード化するセグメントを、トウジンビエおよびソルガムの全cDNAからプライマー:zm−msf8(5’−GGTTGAGGAGCCTGAATCTCTGAAGAAC−3’;配列番号15)およびzm−msr8(5’−CTCGCCAGAGATTCGAGATATACCGAAG−3’;配列番号16)を使用して増幅した。PCR産物を、イントロン配列を挟んで順方向と逆方向とにクローンした。シロイヌナズナ小型核リボタンパク質の第2のイントロン(At4g02840;配列番号13)を有するベースベクターであるpUCRNAi−イントロンを用いて、H. Cerutti(University of Nebraska, Lincoln,NE)によって提供された。pPZP212の誘導体であるベクターpPTN290(Hajdukiewicz et al. 1994, Plant Mol Biol.; 25(6):989−94)を使用してMshl−RNAiカセットを、その第1イントロンとカップリングしたトウモロコシユビキチン1プロモータの制御下で導入し、その転写はCaMV35Sターミネーターによって停止させる。CaMV35Sプロモータおよびターミネーターは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)レポーター遺伝子の発現を調節し、挿入物は右縁および左縁組み込み配列に隣接している。アグロバクテリウム・ツメファシエンス株NTL4(Luo Z−Q et al., 2001, Mol Plant Microbe Interact., 14(1):98−103)を、トウジンビエ・メインテイナーTift23DBE1およびソルガムTx430系からの胚を播種するために使用した。トウジンビエに使用した詳細な形質転換手順は、ソルガムと同じである(Howe et al., 2006, Plant Cell Rep 25:784−91)。
【0077】
実施例2.MSH1抑制の表現型効果
5つの植物種:ダイズ(Glycine max(L.) Merr)、トマト(Solanum lycopersicum L)、タバコ(Nicotiana tabacum L.)、キビ(Pennisetum glaucum (L.)R. Br.)およびソルガム(Sorghum bicolor (L.)Moench)でRNAiの使用により遺伝子組換えで抑制されたMSH1発現。いずれの場合にも、細胞質雄性不稔、斑入りの証拠および改変された葉緑体発生、低下成長速度および矮化、改変された開花期または隠花性、増大した分枝、低下フラボノイド生合成およびアントシアニンの欠乏、増大した病原体感受性、ならびに改変された葉形態(
図1を参照のこと)をはじめとする類似した変化が観察された。斑入り、矮化、およびミトコンドリアDNA再配列は、それぞれ
図2、3、および4で示されるようにMSH1抑制を受けた様々な植物でも観察される。生理学的に、植物は、ATPの減少およびROSレベルの上昇、ミトコンドリア運動性の低下、マイトファジーの増加、ストレス応答経路の発現、ならびに改変されたサイトカイニンおよびGA代謝(
図5中のROSデータ)を示す。
【0078】
植物種間の顕著な表現型類似点は、msh1に関連する変化の多くがプログラムされた応答であることを示す。転写産物および代謝分析により新たな表現型に関連するいくつかの経路が特定された(第1表)。ソルガムおよびシロイヌナズナ転写産物プロファイリング実験は、低下成長表現型において細胞周期遺伝子の発現減少、改変された開花遺伝子発現(F1C)、およびGA異化作用の増強(GA20−o×2およびGA20−o×6)を示す。植物を、ジベレリン酸の適用で成長速度および開花誘導において回復させる。
【0079】
第1表.経路変化において対応を示すシロイヌナズナにおける試料転写産物/代謝プロファイリング結果
【表1】
【0080】
実施例3.暴露後のTx430ソルガム系の遺伝的分析および分離によるMSH1 RNAiトランス遺伝子の喪失
非トランスジェニック高矮化、遅延型開花、斑入りTX430ソルガム植物を、RNA干渉(RNAi)によってMSH1発現を阻害するトランス遺伝子についてヘテロ接合性であった親Tx430ソルガム植物からの子孫植物の分離個体群から得た。Tx430は、MSH1発現を阻害するトランス遺伝子を含むトランスジェニックソルガム植物を得るために使用されるもとの遺伝子型であった。この非トランスジェニック、高矮化、遅延型開花、斑入りTX430ソルガム植物の、花粉親として同質遺伝型TX430野生型による交配によって、野生型F1表現型を得、これはもとの矮化、遅延型開花または斑入り表現型の証拠を示さなかった(
図6)。本発明者等はRNAiで誘発される変化はオルガネラであり、表現型の母性伝播を推測していたため、これは意外な結果であった。野生型ゲノムの導入はもとのRNAiで誘発される効果を中和した。これらのF1植物の自家受粉によって誘導されるF2個体群は量的変動(V
Q)と称される表現型の広域分布をもたらし、その一部を第2表に記載する。SAS PROC MIXEDを第2表におけるすべての分析について使用した。各特徴をモデルにおける固定効果で分析し、系中の異質分散を仮定し、推定値の標準誤差とともに評価した。均質分散モデルに対する異質分散モデルのカイ二乗試験を実施した。有意なカイ二乗値は、系分散間の統計的に有意な差を示す。少ない割合(約1/50植物)は矮化、斑入り表現型を示し、約50%は起こり得るミトコンドリア遺伝子病変として細胞質雄性不稔を示し(Hanson and Bentolila, 2004)、個体群の大部分は、地上の生バイオマス質量および乾燥質量バイオマス、穂の質量、ならびに他の有用な農学的特性において重要な量的変動を示す。これらのデータで特に興味深いのは、いくつかの特徴についていずれかの親より優れた個体群内で観察される能力である。もとの交雑種はTX430×TX430(袋をかけた穂で温室内で作成)であるから、多様性の範囲は核遺伝的変異で合理的に説明することができない。
【0081】
第2表.ソルガムにおける表現型変異の評価
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4.msh1/msh1×MSH1/MSH1交雑種のシロイヌナズナMSH1/MSH1F3子孫の分析
これらの実験では、劣性msh1突然変異を分離によって除去した。劣性msh1/msh1コロンビア生態型親をまず花粉供与体としての野生型コロンビア生態型植物と交配して(Col−0msh1×Col−0wt)、msh1/MSH1植物のF1個体群を得た。F1子孫を(自家受粉させて、msh1座について分離するF2個体群を得る。MSH1/MSH1F2子孫は、F2個体群から選択され、自家受粉させて、選択されたMSH1/MSH1F2親のMSH1/MSH1F3子孫を得た。
【0084】
選択されたF3MSH1/MSH1シロイヌナズナ系における表現型変異を評価するために、測定値を第3表に示す野生型Col−0のそれぞれの4つの植物および選択されたF3子孫系から平均した。生バイオマスはすべての地上の葉組織であり、根元直径は根−茎移行帯の直径であり、茎直径は花柄茎の茎であった。2つの植物個体群(すなわちCol−0およびMSH1/MSH1F3)子孫は遺伝的に同一であるはずだが、各パラメータは選択されたF3子孫系で20〜24%の増加を示した。各群からの植物を発育の同じ段階および同じ葉の枚数(各群の植物あたり平均48枚の葉)になるように選択した。第3表のデータおよび
図7に示される植物は、1つの選択されたF3個体群である。他の選択されたF3個体群(不図示)は野生型よりも一様に低い平均成長を示した。
【0085】
Col−0msh1×Col−0wt交雑種由来の1つのMSH1/MSH1F3子孫は、
図7および第3表で示される顕著に増加した成長を示した。そのような顕著に増加した成長は、交雑種のF3子孫がCol−0親生殖質と比べて成長の増加を示す点で雑種強勢と類似している。しかしながら、これらの実験は、雑種強勢が2つの異なる遺伝的バックグラウンドの親系を交配することによって得られる場合と区別することができる。なぜなら、ここで使用される2つの親系はどちらもコロンビア生態型遺伝的バックグラウンドを有し、コロンビア生態型親の1つにおいて劣性msh1突然変異の存在だけが異なっていたからである。
【0086】
第3表.シロイヌナズナにおける表現型変異の評価
【表4】
【0087】
実施例5.MSH1抑制ソルガムとの異系交配から得られたF2個体群中の個々のソルガム植物における草高、穂の質量、および穀粒収量の変異
図6および実施例3で記載するようなMSH1抑制を受けた親Tx430ソルガム植物由来のソルガム植物のF2個体群を草高(
図8)、穂の質量(
図9)、および穀粒収量(
図10)における変異について、個体群における個々の植物についての値を比較することによって分析した。
【0088】
F2個体群内の個々の植物間で重大な変異が観察された。さらに具体的には、あるソルガム系はこれらの特徴に関してF2個体群内の植物の特有の二相性分布を示した。たとえば、ソルガム系GAII−11のF2個体群は、約105〜125cMの草高の植物の1つの亜個体群と、約185〜215cMの草高の植物の別の亜個体群とを示した。これらの亜個体群は
図8のプロット中の「ピーク」によって表された。亜個体群の同様の分布が、
図8プロットにおいてソルガム系GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24についても観察される。GAl1−11、GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24F2個体群について、亜個体群の1組は重複していた、または野生型TA430対照草高よりも低い値を有していた。一方、別の亜個体群は野生型PA430対照植物よりも明らかに大きい値を有していた(
図8)。GAl1−11、GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24F2個体群における亜個体群および/または個々の植物はさらに、重複していた、または野生型TA430対照草高よりも低い値を有する穂の質量および穀粒収量を示し、一方、他の亜個体群または植物は野生型PA430対照植物よりも明らかに大きな値を有していた(
図9および10)。
【0089】
ソルガム草高、穂の質量、および穀粒収量の差が;a)所定のソルガム系のソルガム植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群;および/または:b)所定のソルガム系および野生型親対照系のソルガム植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群間で観察されると結論づけられる。草高、穂数、および/または穀粒収量において所望の増加を示すソルガム植物のそれらの亜個体群が、それらの染色体DNAメチル化状態、それらの染色体DNA配列、染色体座に関連するヒストンタンパク質の翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせにおいてある相違を含む可能性があり、この相違は、そのような有用な特徴に直接寄与する(すなわち、有用な特徴に対して直接的因果関係を有する)、またはそのような所望の特徴に直接寄与する座に対する遺伝的もしくは後成的連結(複数可)のいずれかに関連することがさらに想定される。
【0090】
実施例6.MSH1抑制に関連する有用な特徴を示す植物における低分子RNAプロフィールおよびDNAメチル化状態の特性化
有用な表現型を示さない参照植物および有用な特徴に関連する改変された染色体座を含む試験植物における低分子RNAプロフィールおよびDNAメチル化状態の比較を用いて、改変された染色体座を特定することができる。さまざまな植物に一般化することができるそのような比較をする方法をこの実施例で提供する。
【0091】
特定の例示的実施形態において:a)所定のソルガム系のソルガム植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群;および/または:b)所定のソルガム系および野生型親対照系のソルガム植物の所定のF2個体群内の植物の異なる亜個体群におけるさまざまな染色体座の低分子RNAプロフィールおよびDNAメチル化状態を比較する。これらの比較の目的は、有用な特徴を示すソルガム植物と有用な特徴を示さないソルガム植物との低分子RNAプロフィールおよび/またはある染色体DNA座のメチル化における差を特定することである。そのような差を次に使用して、そのような有用な特徴に直接寄与するか、またいずれかの遺伝的連結(複数可)によって結合されるかもしくは後成的メカニズムを介してそのような有用な特徴に直接寄与する座に寄与するsRNAまたは染色体座を特定することができる。試験されるソルガム植物としては、野生型植物、野生型TA430対照草高と重複するかもしくは低い値を有するかのいずれかの草高、穂の質量、および/または穀粒収量を示すGAl1−11、GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24または他のソルガム系F2個体群における異なる亜個体群からの植物および/または個々の植物、ならびに野生型TA430対照植物よりも明らかに大きい草高、穂の質量、および/もしくは穀粒収量を示すGAl1−11、GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24または他のソルガム系F2個体群における異なる亜個体群からの植物および/または個々の植物を挙げることができる。そのような植物およびそのような亜個体群を、前記実施例5ならびに
図8、9、および10で例示的に記載する。
【0092】
野生型ソルガム(Tx430)、F1ソルガム、および異なる亜個体群由来の選択されたF2ソルガム植物の低分子RNA(sRNA)プロフィールを決定する。調査されるソルガム亜個体群または植物としては、野生型植物、ならびにGAl1−11、GAl1−15、GAl1−28およびGAl1−24における亜個体群および/または個々の植物または前述の他のソルガムF2個体群を挙げることができる。たとえば、MSH1抑制を受けるあるソルガム個体群は、重複するか、または野生型TA430対照草高よりも低い値を有する穂の質量および穀粒収量を示す可能性があり、一方、他のソルガム亜個体群または植物は、
図9および10において示すように野生型TA430対照植物よりも明らかに大きい値を有し得、種類を特定するための大規模シーケンシング(定性分析)およびこれらのさまざまな植物系中に存在するsRNAの相対量(定量分析)に付すことができる。そのような定性分析および定量的分析を次いで使用して、所定の表現型の存在または不在と、所定のsRNAの存在、不在、または相対的存在量との相関関係を確立することができる。
【0093】
sRNA個体群を特徴づけるための大規模シーケンシング技術を、限定されないが、Zhou et al. PLoS One. 2010; 5(12): el5224; or Glazov et al. PLoS One. 2009 Jul 27;4(7):e6349によって記載されるものを含む方法によって記載されるようにして決定することができる。ある実施形態において、3つの生物学的複製物を各試料について配列決定することができ、sRNAライブラリを、Illumina(商標)プロトコルにしたがって製造することができ、配列決定することができる。手短に言えば、低分子量RNA(長さ17〜27nt)を全RNAからサイズ分画で単離することができる。3’および5’アダプタをsRNAにライゲーションした後、RT−PCRを実施して、sRNAライブラリを構築する。ライブラリを精製し、Illumina(商標)プロトコルにしたがって検証し、そしてライブラリのIllumina(商標)に基づく大規模シーケンシングを実施することができる。
【0094】
共通配列(rRNA、tRNA、snRNA、およびsnoRNA)の除去後、残りのsRNA配列をいくつかの分析に付す。最初の分析では、MSH1機能の破壊によって改変されたsRNA分布を特定するという見込みで、ゲノムにおけるsRNAの分布を評価する。ゲノムクラスタリングの分析を用いて、ゲノムにおけるsRNAを生成する座の分布を調べる。sRNAクラスターは、各低分子RNAがJohnson et al.(2009)で記載されるその最近接から<100ntであるsRNAの基として定義される。この定義に基づいて、クラスターの両端のsRNAは、クラスターの外側の2番目に近い低分子RNAから>100nt離れている(Johnson et al., 2009)。異なる植物系間のsiRNAの差次的発現シグニチャーを比較して、破壊されたMSH1機能との関係を洞察することができる。これは、各植物系由来の各ライブラリにおけるmiRNAまたはsiRNAの相対的存在量を比較することによって行われる。SAMseq法を使用して、有意なレベルの差次的発現の統計分析を実施することができる。大規模シーケンシング分析において差次的発現パターンを示すいくつかのsRNAを、RNAゲルブロット分析を使用する検証のために選択することができる。
【0095】
さまざまな試料におけるDNAメチル化およびsRNAレベルにおける改変間の関係に関する情報を得るために、DNAメチル化を含む領域(後述)を、この研究および他の公的に入手可能なデータベースから得られるsRNAに対してマッピングして、sRNAによって潜在的に標的化されるDNAメチル化を含む領域を特定することができる。
【0096】
異なる系から得られたsRNAおよびDNAメチル化プロフィールを比較して、DNAメチル化含有量における変化が異なるMSH−1で誘導される表現型を示すさまざまな植物試料におけるsRNA存在量における変化と相関するかどうかを決定することができる。そのような分析における1つの問題は、sRNAが検出するには短すぎる可能性があるということである。sRNAを、典型的には植物においてはるかに長い転写産物から生成させる。したがって、報告されているように、DNAメチル化の分析を、sRNAを含む染色体座のいずれかの側での500bpに拡大することができる(Wang et al., 2009)。この分析は、DNAメチル化がsRNAによって潜在的に誘導され得るかどうかを示す。そのような研究を使用して、MSH1抑制から得られるゲノムメチル化パターニングを改変するsRNA個体群における検出可能な変化を特定することができる。そのような研究で特定されるsRNAおよび/またはゲノム領域のいずれかを、トランスジェニックまたは他のゲノム改変に基づくアプローチを使用して抑制および/または上方調節して、MSH1抑制から得られる所望の表現型を得ることができる。
【0097】
さまざまな植物および植物系においてMSH1抑制によって誘導される有用な表現型と染色体変化との関連性は、全ゲノム亜硫酸水素塩シーケンシング実験におけるメチルC検出によっても決定することができる。ゲノム亜硫酸水素塩大規模シーケンシング法(Lister 2009)を使用して、限定されないが、望ましい表現型または望ましくない表現型を示す植物を含むMSH1抑制を受けた植物、ならびに限定されないが、MSH1抑制を受けていない親系を含む好適な対照植物のゲノムにおけるすべての可能なメチル化シトシンのゲノムの全体像を得ることができる。例示的方法において、約5マイクログラムのゲノムDNAを単離することができ、非メチル化シトシンヌクレオチドのウラシルへの亜硫酸水素塩変換の効率についての内部対照として機能する25ナノグラムの非メチル化ラムダDNAでスパイクすることができる。DNAを音波処理して約300bpの平均的長さにすることができ、DNAライブラリを構築することができる。末端修復カクテルがdCTPを含まず、アダプタがメチル化シトシン(Illumina(商標))を含む修飾を含むIllumina(商標)Paired Endプロトコルにしたがう例示的方法を使用することができる。アダプタにライゲートされたDNAの亜硫酸水素塩変換に続いて、ウラシル非感受性PfuTurboCx DNAポリメラーゼ(Stratagene(商標))を用いたPCRの限定されたサイクルを行うことができる。ゲル単離された200〜300bp産物をIllumina(商標)GAII系で110塩基の長さに配列化する。標準的Illumina(商標)画像分析、ベースコーリングおよびプロセッシングパイプラインを使用して、初期プロセッシング化配列を得る。ある実施形態において、内部Illumina(商標)フィルターを通過する配列(純度>0.6)だけをFastQファイル中にPHRED様配列品質スコアとともに保存する。低質塩基(PHREDスコア<2)の第1Project Description 12発生前に配列リードを整える。配列中の任意の残存するシトシン塩基をチミンに変換することができ、これのゲノム位置はメチルC包括度ファイルに保管される。ある実施形態において、2つの参照ゲノムを生成させることができる。「ワトソン」鎖に相当する第1参照ゲノムにおいて、シトシンをチミンに変換することができる。クリック鎖に相当する第2のものにおいて、グアニンをアデニンに変換することができる。同じ変換を内部対照ラムダDNAについて実施することができ、これを非メチル化シトシンの変換効率について別の参照ゲノムとして分析する。Illumina配列を2つの参照ゲノムとBowtieで整列させる(Langmead et al., 2009)。ある実施形態において、特有の出発位置を有するシーケンシングリードのみを採点する(同じ位置から開始する第2の配列を捨てて、データの特有のPCR増幅ひずみを最小限に抑える)。ラムダ内部対照について、99%を超える非メチル化シトシンからチミンへの変換率を予想し、内部ラムダDNA対照配列を使用して測定される、予備実験および各ライブラリのシングルレーン分析(ライブラリのさらなるシーケンシングの前に)で確認する。亜硫酸水素塩処理されたラムダDNAにおけるシトシンの発生率を配列包括度の関数として計算することができる(各配列リード数を包括度1とみなす)。シーケンシング誤差またはウラシルへの不完全変換によるシトシン発生について<0.01のp値となるように閾値を確立させる。
【0098】
2つの生物学的複製物を分析されるゲノムの各種類について使用することができる。包括度は各鎖について10×である可能性がある。これは、個々の変異についてほとんどの位置で個々の生物学的複製物を比較するために十分な包括度でなければならない。2つの個体からの組み合わされた配列データは、異なる遺伝子型試料を比較した場合、各鎖の20×包括度になるよう組み合わせられる。個々の生物学的複製物を使用して、包括度およびメチル化パーセンテージ閾値を確立して、特定の位置での差について<0.05の偽陽性率(FDR)を有するようにすることができる。メチルC差を示す選択された領域を伝統的な亜硫酸水素塩PCRクローニング法によって分析して、全ゲノムデータおよびFDR予測を検証することができる。
【0099】
実施例7.MSH1抑制に反応したメチル化および表現型変異の定量分析
MSH1 RNAi由来の表現型変異体×野生型を交配することによって誘導されるF2個体群で出現する定量的表現型変異を利用することが可能である。MSH1抑制を受けたさまざまなソルガム個体群および本明細書中で記載される対照ソルガム植物における遺伝率および量的変動を測定して、有用な特徴を付与する染色体改変を特定することができる。ある実施形態において、これらの方法は、SNP発現および検出におけるソルガムショットガンシーケンシング実験によって特定される亜硫酸水素塩由来DNA SNP多型性の使用の使用を必要とする可能性がある。ソルガムゲノムは約1628cMであり、本発明者等は約1SNP/10cM(センチモルガン)のSNPマーカー密度を目標とする。したがって、QTL分析についての163Me−C部位が、5つの試料種(すなわち、(1)野生型、(2)大幅に低下した成長速度および遅延型開花を示すトランスジェニックMSH1ノックダウン植物、(3)改変された成長表現型を保持する非トランスジェニック分離個体、(4)F1植物(図(6)で示されるとおり、および(5)量的変動を示す選択されたF2植物(
図6))までの全ゲノム分析におけるそれらの差次的メチル化に基づいて、ソルガムゲノム全体にわたって10cMの等間隔で選択される。
【0100】
200のF2個体からのDNAを亜硫酸水素塩処理して、その後のPCR産物においてC/TのSNPを形成することができる。C/T比は各メチル化部位でのMe−Cの度数に依存するであろう。C枯渇配列に対して設計されたPCRプライマーを使用して、亜硫酸水素塩処理されたDNA中の標的化Me−CSNP領域を増幅させる。C/T多型を、Hybprobes(商標)(Roche, Indianapolis, IN, USA)を使用してLightCycler480PCRシステムで検出する。Hybprobes(商標)はPCR産物とハイブリダイズされた隣接プローブ間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および分別溶融を使用して、Me−C SNP位置でのC/T度数を決定する。LightCycler(商標)Probe Design Software(Roche)を使用して、センサープローブの中央のC/T多型を有するHybProbesを設計する。HybProbes(商標)に対するハイブリダイゼーションのためのMe−C鎖の最適非対称PCRを得るためのPCRプライマー比を各SNPについて実験的に決定する。
【0101】
遺伝率分析。約200までまたはそれ以上のF3ファミリーをソルガムで発生させることができる。DNAを各F2個体から抽出して、各F3ファミリーを生じさせることができる。F3ファミリーの再現された野外実験を実施して、MSH1 RNAiトランス遺伝子の継代効果によって生じる推定的後成的変異の遺伝率分析を実施することができる(すなわち、MSH1抑制)。各種について、1本3メートルの列をランダム化完全ブロックデザインに2連で配置する。個体群を実験的田畑で成長させる。
【0102】
QTL分析。200のF2個体に関するマーカーデータとともに、表現型データをQTL分析で使用して、MSH1により影響を受けたゲノム領域を、全バイオマスおよび種子収量について観察される変異を生じさせる前世代に入れる。メチル化部位変化に関する分離データを使用して遺伝子マップを構築し、続いて標準的複合区間マッピングを行う。
【0103】
実施例8.エピゲノムを改変して、植物成長における大幅な遺伝的変化を生じさせるためのMshl抑制の使用
Mshl抑制を使用して、表現型および後成的変異を誘導し、作物種Sorghum bicolor (L.) Moenchおよびモデル植物Arabidopsis thaliana (L.) Heynhにおいて誘導された表現型を選択した。
【0104】
図11は、シロイヌナズナおよびソルガムの両方についてこの研究で使用したトランス遺伝子および交配法を示す。ソルガムにおいて、全ての実験は近交系Tx430で実施し(F.R. Miller, Crop Sci. 24, 1224, 1984)、一方、シロイヌナズナ実験は近交系生態型コロンビア−0で実施した。MSH1−RNAiトランス遺伝子を含まないMSH1−drソルガム植物を正常なMSH1転写産物レベルまで回復させる;それでもなお、それらは自家受粉の数世代にわたって改変された成長表現型を維持する。野生型近交系Tx430系と相互に交配させた場合、子孫は正常な表現型に修復される。MSH1−エピF1と指定される誘導されるF1子孫は、もはや矮化、分げつ、遅延開花表現型を示さない。実際、植物は野生型よりも高く成長し、一般的により多くの種子をつける(
図11A)。MSH1−エピF1植物の自家受粉は植物表現型が著しく変わり得るF2個体群(MSH1−エピF2)を生じたが、MSH1−dr表現型を示さなかった(
図11B〜D)。温室で成長させた−MSH1−エピF3ファミリーの割合は、約8%の頻度でMSH1−dr表現型を示し(第4表)、エピ−F4系で矮小表現型は現れなかった。
【0105】
第4表.ソルガムTx430MSH1−dr×Tx430から誘導され、温室で成長させたエピ−F3ファミリーにおけるMSH1−dr表現型の頻度(8.4%)
誘導されたエピ−F4ファミリーはMSH1−dr表現型の証拠を示さなかった(不図示)。
【0106】
【表5】
【0107】
F2植物、および自家受粉によって誘導されるその後の個体群は、穂および植物構造、分げつ時間および数、草高および地上のバイオマス、ならびに穂の収穫高成分および種子質量をはじめとする農学的性能特徴について変異を示した(草高および穀粒収量について第5表)。msh1突然変異体と野生型とを交配させ、それに続いてホモ接合性MSH1/MSH1F2植物について選択し、連続自家受粉することから誘導されるシロイヌナズナ個体群において、同様に大幅な成長の変化が観察された(
図11F〜H)。
【0108】
2010および2011年に現地条件下で成長させたソルガムMSH1−エピF2、MSH1−エピF3、およびMSH1−エピF4個体群は、植物成長変化の大規模評価を可能にした(第5表、第6表、第7表)。表現型分布は、2つのソルガム野外実験の結果から明らかになり、MSH1−エピF2において二峰性に近いパターンを示す(
図12)。すべての特徴は変異の定量的パターンを示した。F3およびF4子孫を現地条件下および温室条件下の両方で試験したところ、植物間で各世代で均一性が増加する草高の遺伝率を示し、穀粒収量をあげるための選択に反応したが、この特徴は温室中での成長の間それほど厳密な選択を受けなかった(
図13)。これらの結果は、観察される変異についての高度の遺伝率および選択応答を示唆する。
【0109】
成長速度、分枝、成熟および開花における変異をはじめとするソルガムMSH1−drおよびシロイヌナズナmsh1突然変異体系における改変された植物発育を、クロロプラスト変化によって調整した(以下の実施例9を参照のこと)。本発明者らは、これらのオルガネラの影響に対するMSH1−エピF2変異の関係の評価に関心があった。ミトコンドリア標的化MSH1トランス遺伝子対クロロプラスト−標的化MSH1トランス遺伝子をmsh1突然変異体系に導入することによって誘導されるシロイヌナズナMSH1半相補性系(Y.−Z. Xu et al. Plant Cell 239:3428, 2011)は、その現象に対するミトコンドリアの寄与およびクロロプラストの寄与を識別する。ミトコンドリア半相補性系およびクロロプラスト半相補性系の両方を雌性として野生型(Col−0)と交配して、F1およびbF2子孫を得た。クロロプラスト相補系との交配から得られるF1植物は野生型と類似した表現型をもたらしたが、F1植物の約25%は改変された葉萎縮および遅延型開花を示した(
図16)。この萎縮表現型はMSH1過剰発現の結果である可能性がある。なぜなら、F1植物は野生型MSH1対立遺伝子およびトランス遺伝子の両方を含むからである。表現型は改変されたサリチル酸経路調節の効果、後成的に調節された過程と類似している(T.L.Stokes et al. Genes Dev 16, 171, 2002)。ミトコンドリア相補系との交雑種からのF1子孫は、植物成長において表現型変異を示し、MSH1−エピF3表現型と同様、30%を超える植物が成長の増強、より大きなロゼット直径、より太い花柄茎およびより早い開花期を示した(
図14Aおよび17;第8表)。これらの結果は、ミトコンドリア対クロロプラスト相補F2個体群でさらに確認され(
図14B〜E)、MSH1−エピF3が、MSH1−dr発生再プログラミング現象を受けた植物に対してMSH1機能を回復させることから誘導される成長変化を増強したことを示唆する。
【0110】
どちらもCol−0バックグラウンドであるシロイヌナズナ野生型およびMSH1−エピF3植物を、遺伝性MSH1由来の表現型を伴う可能性があるメチローム変化の証拠について調査した。実験は、亜硫酸水素ナトリウム処理されたゲノムDNAおよびゲノム規模でのnext−gen配列分析を使用した(Lister et al. Cell 133, 523, 2008)。メチル化変化は広範囲に及び、差次的にメチル化された位置は主にCpG部位を含み、91,000を超える差次的にメチル化された位置が1700を超える領域にある(第11表、
図15A)。メチル化変化のパターンは、改変された表現型の観察された遺伝率と一致し、ゲノムの遺伝子コーディング領域における変化の大部分は自然の後成的変異の研究から得られるデータと類似していた(C. Becker et al. Nature 480, 245,2011; R.J. Schmitz et al. Science 334, 369, 2011)。この研究の野生型およびMSH1−エピF3系における非差次的メチル化パターンと、天然のメチル化変異の最近のシロイヌナズナ研究によって報告されているパターン(C. Becker et al. Nature 480, 245,2011)とを比較することによって、パターンの顕著な対応性(
図15B、MSH1−エピF5系2)が示され、2つの研究間でCol−0ゲノムメチル化分析の一致が確認された。差次的にメチル化された位置について濃縮された染色体の領域についての2つの研究で顕著な差が明らかであった;
図15Cの説明目的で示された天然の変異のBecker et alの分析は、各染色体にわたる差次的メチル化のかなり均一な分布を示し、一方、MSH1−エピF3系は、ゲノムの独立した領域に集中した差次的メチル化の不規則なパターンを明らかにした(
図5B、赤線)。メチル化において変化を示すいくつかのDMRを、標的化PCR増幅および亜硫酸水素塩で処理されたDNA間隔のシーケンシングによって確認した(
図18、第9表)。これらの結果から、本発明者らはMSH1破壊を伴う発生的変異が植物のメチル化構造において顕著な変化を含むと推測する。トランス遺伝子からの独立性および多くの発生経路の関与を示すMSH1−dr表現型の遺伝的形質パターンはさらに、後成的変化がMSH1−dr系で起こることも示す。
【0111】
第5表.ソルガムF
2エピ系ファミリーの大部分は、野生型Tx430と比較して草高および穀粒収量における変異(p値<0.05)において一貫して統計的に有意な増加を示す。データは2010年および2011年に現地条件下で成長させた植物から集めた。
【0112】
【表6】
【0113】
第6表.乾燥バイオマスについて測定した5つのソルガムエピ−F2系ファミリーのうち3つが野生型Tx430と比較して変異において統計的に有意な増加(p値<0.05)を示す。データは2011年に現地条件下で成長させた植物から集めた。
【0114】
【表7】
【0115】
第7表.野生型Tx430と比較して、草高(39系のうち37)および穀粒収量(39系のうち11)において多くのエピ−F4ファミリーに関して有意差(p値<0.05)を示すソルガムF
4世代データ。データは2011年に現地条件下で成長させた植物から集めた。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
第8表.半相補性系×Col−0野生型の交配によって誘導される個々のシロイヌナズナF
2ファミリーからの表現型データの分析。SSU−MSH1は、MSH1のプラスチド−標的化形態で形質転換された系を指す;AOX−MSH1は、MSH1トランス遺伝子のミトコンドリアl標的化形態を含む系を指す。半相補性を用いた全ての遺伝実験において、トランス遺伝子の存在は、PCRに基づくアッセイで裏付けられた。
【0119】
【表10】
【0120】
第9表.シロイヌナズナ野生型Col−0およびMSH1−エピF3系からの亜硫酸水素塩処理されたDNAのPCRに基づく分析によって誘導される4つのDMRの試料差次的メチル化データ
【表11】
【0121】
【表12】
【0122】
第10表.研究で使用されるプライマー
亜硫酸水素塩シーケンシングに関して:
【表13】
【0123】
第11表.シロイヌナズナCol−0およびMSH1−エピF3植物におけるゲノム規模での5−メチルシトシン分析
【表14】
【0124】
メチローム変化は結果として得られる個体群において明らかであったが、MSH1−dr選択の野生型との交配から誘導される植物表現型は他の種類の誘導されたメチル化変化から報告されるものと類似していないようであった。シロイヌナズナ metl突然変異体を含む交雑種から生じるEpiRIL個体群は、さまざまな変異表現型を生じさせた(J. Reinders et al., Genes Dev. 23, 939 (2009)。しかしながら、これら以前の研究は、MSH1操作でみられる、増加した活力、著しく大きな植物および茎サイズ、または多くの種子産生を報告していない。
【0125】
実施例で使用する材料および方法は以下に記載するとおりである。
【0126】
植物材料および成長条件
シロイヌナズナCol−0およびmsh1突然変異体系をシロイヌナズナストックセンターから入手し、メトロミックス中12時間日光を当て、22℃で成長させた。MSH1−エピ系は、MSH1−dr系を野生型植物と交配することによって誘導した。シロイヌナズナ植物バイオマスおよびロゼット直径を4週令植物で測定した。シロイヌナズナ開花期を最初に目に見える花芽が出現した日として測定した。半相補性交雑種に関して、ミトコンドリア1(AOX−MSH1)およびプラスチド(SSU−MSH1)相補ホモ接合性系をコロンビア−0野生型植物と交配した。各F1植物をトランス遺伝子および野生型MSH1対立遺伝子について遺伝子型を同定し、別々に収集した。AOX−MSH1×Col−0からの3つのF2ファミリーおよびSSU−MSH1×Col−0からの2つのF2ファミリーを成長パラメータについて評価した。すべてのファミリーを同じ条件下で成長させ、バイオマス、ロゼット直径および開花期を測定した。両側スチューデントt試験を使用してp値を算出した。
【0127】
これらの実験で使用されるソルガム生殖質は、Tx430近交系ソルガム系由来であった(Miller, 1984)。いくつかのT3ソルガム同胞種は、温室条件下で成長させ、GAII1−GAII30と指定される単一のMSH1−dr植物由来であった。系のそれぞれは、トランス遺伝子ヌルであることが確認された。それらのうちの6つ、GAII11、GAII15、GAII22、GAII24、GAII25、およびGAII28を野生型近交系Tx430との交雑種で雌性として使用して、F1種子を誘導した。3つのさらなる植物、GAII22、GAII23、およびGAII27を相反する交雑種において雄性として使用した。温室中の日中温度は79〜83°Fであり、夜は69〜73°Fであった。植物を短い(10時間)日照時間で成長させた。
【0128】
F1子孫を同じ温室条件下で成長させ、子孫は5〜19個体のサイズであった。誘導されるT4子孫を、F1を誘導するために用いられる6つの母系msh1−dr植物(GAII11、GAII15、GAII22、GAII24、GAII25、およびGAII28)から成長させ、個体群は15〜19個体のサイズであった。全てのF1植物の自家受粉種子を個別に収穫して、対応するF2ファミリーを誘導した。
【0129】
野外実験
2010年および2011年の夏の間、F2ファミリーをリンカーン市ネブラスカ大学のハブロック試験場にて天水条件下、2つの野外実験で成長させた。実験を不完備型ブロックデザインで用意し、2010年の実験は15ブロックからなる1ブロックあたり30エントリー(30×15アルファ格子)の1つの複製から構成されていた。個々の系を列あたり1穂、長さ5m、列間隔0.75m列間隔の列区画で植え付けた。F3種子を個々の植物から収穫した。
【0130】
2011年の実験は、それぞれ28エントリーの7ブロック(28×7アルファ格子)と、追加量100kg/haの窒素で施肥した2つの複製を含んでいた。2010年の実験からの48試料を、F3を構成するように選択した。これらの試料は6のもとの交雑種由来であり、高いF2穀粒収量値および低いF2穀粒収量値を含んでいた。加えて、F3試料の温室で成長させた亜群17を乾燥穂質量に基づいて選択して、F4種子を誘導した。したがって、2011年の野外実験は、それぞれF2、F3およびF4世代に対応する48、77、および42エントリーと、対照の野生型Tx430を含んでいた。
【0131】
ソルガム表現型評価
2010および2011年の野外実験で、記録したソルガム表現型特徴には、草高(PH)、すなわち地面から穂先まで(cm)、穂の長さ(PL)、すなわち穂の基底部から先端まで(cm)、生穂の質量および乾燥した穂の質量(FPWおよびDPW)(g)、生バイオマスおよび乾燥バイオマス収量(FBYおよびDBY)(g)、ならびに総穀粒収量(NGY)(g)が含まれていた。PH、PL、FPW、DPWおよびNGYの試料サイズは、列あたりの列内植物が5から10までランダムに変化した。自家受粉させるために開花前に健常な形の良い頭部に袋をかけ、生理的成熟後に収穫し、この時にFPWを測定した。試料を80°Fで30日間乾燥した後、DPWおよびNGYを測定した。バイオマス試料は3植物試料から構成され、袋に詰め、切断した後秤量して、FBWを得た。植物はランダムな列内選択であり、DBWのために試料を160°Fで15日間完全に乾燥した。
【0132】
RNAiトランス遺伝子のPCRアッセイ
ソルガム材料中のMSH1−RNAiトランス遺伝子の存在についてのPCRアッセイは第S7表に記載したプライマーを使用した。反応条件は:95℃で5分、95℃で30秒、55℃で1分、72℃で2分を30サイクル;最後の延長期間は72℃で10分であった。正の対照および負の対照をそれぞれ確認されたトランスジェニック系および野生型Tx430から含めた。
【0133】
亜硫酸水素塩処理されたゲノムライブラリ構築およびシーケンシング
Col−0およびエピ−F3植物から製造したシロイヌナズナゲノムDNA(約15ug)を200bp〜600bpのピーク範囲まで音波処理し、フェノール/クロロホルム精製し、エタノール沈殿させた。音波処理されたDNA(約12ug)をマングビーンヌクレアーゼ(New England Biolabs)で処理し、フェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させた。マングビーンヌクレアーゼ処理されたゲノムDNA(約3ug)を末端修復し、Illumina Genomic DNA Samples Prep Kit(Illumina, San Diego CA)で3’末端アデニル化した。アデニル化DNAフラグメントを次いでメチル化アダプタ(Illumina, San Diego, CA)にライゲートした。試料を次いでカラム精製し、アガロース中で分画した。280bp〜400bpのフラクションをQIAquick Gel Purificationキット(Qiagen, Valencia, CA)でゲル精製した。さらに3ugのマングビーンヌクレアーゼ処理されたゲノムDNAを使用して、処理を繰り返し、2つのフラクションをプールし、MethylEasy Xceedキット(Human Genetic Signatures Pty Ltd, North Ryde, Australia)を使用して製造業者の指示にしたがって亜硫酸水素ナトリウム処理に付した。3つの独立ライブラリPCR濃縮を、インプットテンプレートとして合計30ul硫酸水素塩で処理されたDNAから10ulを用いて実施した。PCR反応混合物は10ulのDNA、5ulの10×pfuTurbo Cx緩衝液、0.7ulのPE1.0プライマー、0.7ulのPE2.0プライマー、0.5ulのdNTP(25mM)、lulのPfuTurbo Cx Hotstart DNA Polymerase(Stratagene, Santa Clara, CA)、および合計50ulにするための水であった。PCRパラメータは2分間950Cであり、続いて950Cで30秒、650Cで30秒および720Cで1分、次いで720C で5分を12サイクルであった。PCR産物をカラム精製し、各PCR反応からの等しい容積を合わせてプールして、10nMの最終濃度にした。
【0134】
ライブラリは、3つの36サイクルTrueSeqシーケンシングキットv5でIllumina Genome Analyzer IIでDNA配列決定して、各挿入物の一端からの配列の116ヌクレオチドを読み取る(V8プロトコル)。
【0135】
PCR分析のためのDNAの亜硫酸水素塩処理
製造業者の指示にしたがってMethylEasy Xceedを使用して、シロイヌナズナゲノムDNAを亜硫酸水素塩処理した。第S7表に記載したプライマーを使用してPCRを実施し、PCR産物をクローンし(Topo TAクローニングキット、Invitrogen)、DNA配列決定した。配列アラインメントは、T−Coffee多重配列アラインメントサーバーを使用して実施した(C Notredame, et al., J Mol Biol. 302:205−217 , 2000)。
【0136】
差次的にメチル化されたシトシン(DMC)のDNA配列分析および同定
Bismark(F Krueger, SR Andrews. Bioinformatics 27:1571−1572 (2011)を使用してFastqファイルをTAIR10参照ゲノムと整列させ、これを使用して、シトシンのメチル化状態を決定した。リードの最初の50ヌクレオチドで1つのミスマッチが許容された。Bismarkはゲノムの位置に対して独自にマッピング可能なリードのみを保持する。
【0137】
少なくとも1つの遺伝子型について少なくとも2つのリードでメチル化として同定され、遺伝子型のそれぞれで少なくとも4回配列決定されたシトシン位置だけをDMCの同定に使用した。これらのシトシン位置に関して、各遺伝子型についてメチル化または非メチル化を示すリードの数を、Rを使用して表にした(http://www.r−project.org)。各位置での差次的メチル化を試験するためにフィッシャーの直接検定を実施した。ゲノム全体にわたる複合試験についての調節を、Storey and Tibshirani (JD Storey, R Tibshirani. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:9440−9445 (2003)で示唆されているようにして実施し、0.05の偽陽性率(FDR)を差次的にメチル化されたシトシンを同定するために使用した。メチローム配列データはGene Expression Omnibusにアクセッション番号GSE36783でアップロードされている。
【0138】
ゲノム構成に対するDMCマッピングおよび差次的にメチル化された領域(DMR)の同定
TAIR10アノテーション(インターネットftpサイト"ftp.arabidopsis.org/home/tair/Genes/TAIR10_genome_release/ TAIR10_gff3"で入手可能)を使用して、遺伝子コーディング領域、5’−UTR、3’−UTR、イントロン、偽遺伝子、非コーディングRNA、転位性因子遺伝子、および遺伝子間領域におけるDMCまたは非特異的メチル化シトシンのカウントを測定した。遺伝子間領域は、任意のアノテーション特性に対応しない領域と定義された。
【0139】
各メチル化構成(CpG、CHG、CHH)に関して、100−bpの増分で1−kbウィンドウを用いてDMCを多く含む領域についてゲノムをスキャンした。少なくとも4つのDMCを有するウィンドウを保持し、重複するウィンドウを領域中に統合した。少なくとも10のDMCを有する領域を、領域中で最も遠いDMCまで境界を整えて保持した。次いで領域中の全てのシトシン位でのすべてのメチル化/非メチル化リードカウントを統合することによって、フィッシャーの直接検定を各領域について実施した。すべての試験した領域について調節して、FDRを0.1に制御する。
【0140】
実施例10.核酸配列および配列番号のまとめの表
第12表.配列表で提供されるヌクレオチド配列
【表15】
【0141】
【表16】
【0142】
【表17】
【0143】
【表18】
【0144】
【表19】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
本発明の原理を示し、記載してきたが、本発明をそのような原理から逸脱することなく、配列および詳細において修飾することができることは、当業者には明らかである。
【0149】
本発明の物質および方法をさまざまな実施形態および実例において記載してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された物質および方法にさまざまな変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。当業者に自明のそのような類似の代替物および修飾はすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲および概念内に含まれると考えられる。