特許第6133312号(P6133312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133312β−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテルおよびそれらのポリマーの樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133312
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】β−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテルおよびそれらのポリマーの樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20170515BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C08F20/26
   C08F8/14
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-538971(P2014-538971)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-501365(P2015-501365A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012061777
(87)【国際公開番号】WO2013066696
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/552,763
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・クリストファー・フィンチ
(72)【発明者】
【氏名】スディール・エム・ムリック
(72)【発明者】
【氏名】シー・ダミエン・ロドウスキー
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ウェインステイン
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−002175(JP,A)
【文献】 特開昭61−069812(JP,A)
【文献】 特開2005−213349(JP,A)
【文献】 特開2012−057030(JP,A)
【文献】 特公昭48−033993(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/26
C08F 8/14
C08F299/00
C08F290/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテル官能性の水溶性またはアルカリ溶解性樹脂を作成する方法であって、
1種または複数の反応物
a)i)エピハロヒドリン、1種または複数のグリコール、オリゴグリコール、グリコールアルキルエーテル、ポリグリコールアルキルエーテル、グリコールアルキルアリールエーテル、ポリグリコールアルキルアリールエーテル、グリコールアリールエーテルまたはポリグリコールアリールエーテルとの反応生成物、あるいはii)グリシジルアルキルエーテル、グリシジルアルキルポリエーテル、グリシジルアリールエーテルまたはグリシジルアリールポリエーテルと、
1種または複数の反応物
b)カルボン酸アニオン含有ビニル化合物またはカルボン酸アニオン含有ポリマーと、を性溶媒中で反応させるステップを含み、
前記水性溶媒中の全ての反応物の固形物は、反応混合物の総重量に基づいて50重量%を超えず、反応物a)においてアルキル基は1から50個の炭素原子を有していてもよく、アリール基は5から40個の炭素原子を有するアリールまたはアルキルアリールでもよい、方法。
【請求項2】
前記カルボン酸アニオン含有ビニル化合物またはポリマーは、水または水性溶媒中でカルボキシル基含有ビニル化合物またはポリマーに塩基を追加することにより形成される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
反応物b)は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ(イタコン酸)、それらのコポリマー、およびそれらのいずれかの塩から選択されるカルボン酸アニオン含有ポリマーである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂性β−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性化合物およびそれらの水溶性のポリマーを含む組成物に関する。より詳細には、(メタ)アクリル酸β−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテル、それらの水溶性のコポリマーおよびそれらのアルカリ溶解性のコポリマー、ならびに単一プロセスにおいてそれらを作成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤用の知られた減水性超可塑剤(water reducing superplasticizer)には、ポリ(メタ)アクリル酸のアルキルキャップしたポリ(エチレングリコール)エステルが含まれる。これらは、マクロモノマー手法において(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレングリコール)(PEG(M)A)マクロモノマーとメタクリル酸(MAA)またはアクリル酸(AA)とを共重合させることによって製造される。あるいは、これらの櫛形ポリカルボン酸エステルは、ポリマー改質手法においてp−MAA、p−AAあるいは、高モル分率の酸モノマーと共にメチルキャップしたポリグリコール、例えばCarbowax(商標)ポリオール(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Co.)またはNeodol(商標)ポリオール(テキサス州ヒューストンのShell Chemicals)エトキシ化脂肪アルコール、例えばAcusol(商標)102ポリオール(Dow Chemical)などを含むコポリマーのエステル化により取得し得る。
【0003】
マクロモノマー手法は、特に建設業界において超可塑剤を作る用途のためには、マクロモノマーの高コスト性および利用性が限られているという欠点がある。ポリマー改質手法は、エステル化触媒ならびにポリマーのための2段階ステップ合成に対応するために重合および改質設備双方への投資の必要性があるという欠点がある。例えば、Weinsteinらの米国特許第7,906,591号は、とりわけ超可塑剤として有用であり得る、エステル化またはアミド化されたポリカルボキシポリマーを作る方法を開示している。Weinstein法は、酸性基および次亜リン酸残基を含むポリマーまたはコポリマーを、それとモノアルキルポリグリコールエーテル、モノアルキルポリグリコールアミンまたはエタノールアミン化合物とを反応させることにより改質することを含む。Weinstein法は、前もって形成したポリマーを必要とする。この方法は、融剤内に除去され得る反応の水を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、種々の知られた使用法のための櫛形ポリマー、分散剤または水溶性のポリマーとして手軽に使用でき得る、または重合してこうした櫛形ポリマーを形成する組成物を生じることとなる、モノマーおよびポリマーを含めたβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性樹脂性組成物を単一反応器において作成するための新規の容易な提供する問題を解決しようとしてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、組成物は、(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレエートおよびイタコネート、それらの水溶性のコポリマー、それらのアルカリ溶解性のコポリマー、ならびにそれらの混合物から選択されるβ−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテル官能性樹脂を含む。
【0006】
本発明の樹脂は、(i)下式Iの(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレエートおよびイタコネート、(ii)式Iの(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレエートおよびイタコネートならびに追加の重合性コモノマーから重合した水溶性またはアルカリ溶解性のコポリマー、ならびに(iii)それらの混合物から選択してよい。
【化1】
(式I中、Rは水素、1から4個の炭素アルキルまたはフェニル、好ましくは、Hまたはメチル、Rはそれぞれ独立に水素、1から4個の炭素原子アルキル、または式IIのオキシアルキレンラジカル、好ましくは、H、
【化2】
は水素、1から50個の炭素アルキル、ベンジル(C)、またはアルキルベンジル、好ましくは1から10炭素アルキル、Rは水素、メチルまたは−CHCOOH、またはメチレンカルボキシル塩、例えば−CHCOONa、およびRは水素、カルボキシル、−C(O)NHまたはカルボン酸金属塩、好ましくは、H、およびxは1から200、好ましくは2から120、または好ましくは、最大50である。)
【0007】
本発明の水溶性のコポリマーは、水溶液ポリマーでよく、本発明のアルカリ溶解性のコポリマーは、カルボン酸の、無水物、塩、アミド、アルコールまたはアミン基などの水分散性官能基を含有しない、例えば、次の段落内の(iii)および(iv)の基のモノマーなどのモノマーを最大30wt.%有する物などの水性乳剤コポリマーでよい。好ましくは、水溶性のコポリマーまたはアルカリ溶解性のコポリマーは、ポリマーを含有するカルボン酸アニオンである。
【0008】
本発明のそれらの水溶性のコポリマーおよびアルカリ溶解性のコポリマーは、式Iのモ
ノマー、例えば(メタ)アクリレート、マレエートまたはイタコネートモノマーと、追加の重合性モノマー、例えば1種または複数の(i)カルボキシル官能基またはその塩、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにそれらの塩など;(ii)2つのカルボキシル官能基またはそれらの塩、それらの塩または無水物、例えばマレイン酸またはイタコン酸;(iii)1から18炭素アルキルのカルボン酸エステル基、例えばメタクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチル;(iv)カルボキサミド基、例えば(メタ)アクリルアミド;あるいは(v)フェニルエステル、ベンジルエステル、またはフェニル基、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンを有するエチレン性不飽和ビニルモノマーとから重合してもよい。
【0009】
本発明の水溶性のコポリマーは、カルボキシル基またはそれらの塩を含まないエチレン性不飽和モノマーが最大95wt.%の共重合生成物でもよい。カルボキシル官能性モノマーにおいて、好ましいカルボキシル塩は、アルカリ(土類)金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩、ならびに二価金属塩、例えば亜鉛塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩である。床手入れの用途のためには、好ましい塩は二価金属塩である。
【0010】
本発明の水溶性のコポリマーは、1,000から250,000または、好ましくは、2,000以上、または、好ましくは、100,000以下、または、好ましくは、4,000以上の重量平均分子量を有していてもよい。床手入れの用途のためには、好ましい重量平均分子量の範囲は、15,000から200,000である。他の用途、例えば分散剤および超可塑剤用途のためには、好ましい重量平均分子量の範囲は、2,000から20,000、または、好ましくは、15,000以下であり得る。
【0011】
本発明によれば、上述のβ−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテル官能性樹脂(モノマー、水溶性のコポリマーまたはアルカリ溶解性のコポリマー)のいずれかは、水性組成物を含んでいてもよく、またはコポリマーの無水物の形態などの乾燥組成物を含んでいてもよい。
【0012】
本発明は、(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレエートおよびイタコネート、それらの水溶性のコポリマーまたはそれらのアルカリ溶解性のコポリマーから選択されるβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性樹脂を作る方法であって、1種または複数の反応物(a)i)エピハロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと、エチレングリコール、オリゴグリコール、グリコールアルキルエーテル、例えばエチレングリコールブチルエーテル、ポリグリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールブチルエーテル、グリコールアルキルアリールエーテル、ポリグリコールアルキルアリールエーテル、グリコールアリールエーテルまたはポリグリコールアリールエーテルなどの1種または複数のグリコールとの反応生成物、あるいはii)グリシジルアルキルエーテル、グリシジルアルキルポリエーテル、グリシジルアリールエーテルまたはグリシジルアリールポリエーテルと、1種または複数の反応物(b)ビニル化合物またはポリマー、好ましくは、ポリマーを含有するカルボン酸アニオンとを水または水性溶媒中で反応させるステップを含み、ビニル化合物またはポリマーを含有カルボン酸アニオンは、水または水性溶媒中でビニル化合物またはポリマーを含有するカルボキシル基に塩基を加えることにより形成してもよく、反応物(a)において、任意のアルキル基は、1から50個の炭素原子、好ましくは1から10炭素原子、最も好ましくは、メチルを有していてよく、任意のアリール基は、5から40個の炭素原子、好ましくは、6から12炭素原子、例えば、CHベンジルおよびフェニルなどを有するアリールまたはアルキルアリールであり得る、方法をさらに含む。
【0013】
カルボン酸アニオン含有ビニル化合物またはポリマーは、水または水性溶媒においてカルボキシル基含有ビニル化合物またはポリマーに塩基を加えることにより形成され得る。
【0014】
本発明のβ−ヒドロキシプロピルガンマ−ポリオキシアルキレンエーテル官能性樹脂が、(メタ)アクリレート、マレエートまたはイタコネートである場合、本発明の方法は、得られる(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレエートおよび/またはイタコネートモノマーを、コモノマー、例えばエチレン性不飽和酸、酸性塩、アミドまたはビニルモノマーと付加共重合をすることをさらに含んでいてもよい。反応物(b)がカルボン酸アニオン含有ポリマーである本発明の方法において、好ましいポリマーは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらのコポリマー、ならびにそれらのいずれかの塩および部分塩である。
【0015】
本発明の方法において、溶媒は、反応物(a)を溶解または分散させる水性溶媒である。水性溶媒と言う語には、水と引火点が38℃より高い1種または複数の水混和性の溶媒との混合物も含まれ、これに限定されないが、アセトニトリル、ジオキサン、水およびアルコール混合物が含まれる。好ましくは、反応物(a)がアルキル基を含有し、水に完全には混和しない場合、共溶媒は、DMSO、アセトニトリル、(ジ)エチレングリコールCからCモノアルキルエーテルまたはグリム、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、あるいは(ジ)エチレングリコールCからCジアルキルエーテルまたはジグリム、例えばエチレングリコールジブチルエーテルである。
【0016】
列挙する全ての範囲は、包括的であり、結合可能である。例えば、開示されている1,000から250,000、または、好ましくは、2,000以上、または、好ましくは、100,000以下、または、好ましくは、4,000以上の重量平均分子量には、1,000から25,0000、2,000から250,000、1,000から100,000、2,000から100,000、4,000から100,000、および4,000から250,000のこうした分子量が含まれることとなる。
【0017】
別段の指示がない限り、全ての温度および圧力単位は、室温および標準気圧である。
【0018】
括弧を含む全ての表現は、含まれる挿入句の内容およびその欠如のどちらかまたは両方を意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」と言う表現には、選択的に、アクリレートおよびメタクリレートが含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「酸価」と言う語は、1グラムの試料を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラムを指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「水性溶媒」と言う語は、水性溶媒の総量に基づいて≧30wt.%の水を有する、水混和性の有機共溶媒と混合した水を意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「カルボン酸アニオン」と言う語は、いずれかのCOO基、またはそれらの金属塩を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「反応混合物」と言う語は、水性溶媒、反応物a)、反応物b)、および加えた塩基の全体を意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「樹脂」と言う語は、反応して(共)重合または架橋結合などにより共有結合を形成し得る、あるいはケイ酸塩のような無機相材料と錯体を形成することなどにより、イオン結合を形成し得るモノマーまたはポリマーを指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「重量平均分子量」と言う語は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリ(アクリル酸)標準に対するコポリマーの分子量を意味する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「wt.%」と言う語は、重量パーセントを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に従って、新規の水溶性のコポリマーおよび前駆物質モノマーを作るための簡単な方法が提供される。本発明のβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル樹脂(ポリマーおよびモノマー)は、高分子界面活性剤およびレオロジー改質剤が有用である多くの用途で役立ち得る。本開示の特に興味深い用途は、レオロジー改質、一般に可塑剤および超可塑剤(SP)と呼ばれるセメントおよびコンクリート混和剤のための減水剤である。本発明のβ−ヒドロキシプロピルポリエーテルモノマーは、グリシジルエーテルまたはオキシランアルキルもしくはアリール(ポリ)エーテル化合物とカルボン酸アニオン官能性モノマーの部分的に中和された水溶液および(ポリ)グリコールモノエーテルとの反応から生じる(メタ)アクリル酸エステルである。本発明のβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性ポリマーは、グリシジルエーテルまたはオキシラン化合物を部分的に中和されたカルボン酸アニオン官能性コポリマーおよび(ポリ)グリコールモノエーテルと反応させるプロセスによって得られ得る。反応は付加反応であるので、反応の水は無い。したがって、本発明の水性樹脂性組成物は、重合反応器、またはエステル化を行うことができない、反応器内に塔頂(液化装置(devolatilizer))システムが無い他の反応器の排水タンク内で簡単に作り得る。
【0027】
本発明の方法において、カルボン酸アニオンの存在は、グリシジルエーテルまたはオキシランアルキルもしくはアリール(ポリ)エーテル化合物(a)への付加反応および(b)カルボン酸アニオン含有化合物がエステルを形成するのを可能にする求核試薬として機能する。反応は、水酸化カリウムまたはアンモニアまたは水酸化ナトリウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物などの塩基の存在下で実行してよく、カルボン酸含有ビニル化合物またはポリマーに存在する総カルボキシル基の10から80モル%程度、好ましくは30から70%まで酸を脱プロトン化する。塩基の量は遊離のカルボン酸および中和されたカルボン酸塩の両方が存在するように制限され、アンモニアなどの揮発性塩基も用いてもよいが、好ましくない。
【0028】
本発明による反応物(a)および(b)の付加反応において、塩基に加えグリシジルエーテルのモルまたはオキシランアルキルもしくはアリール(ポリ)エーテル化合物反応物のモルa)の総量は、反応物(b)中のカルボン酸含有ビニルモノマーまたはポリマーのモル当量の総数より少なくなければならない。したがって、反応混合物中に存在するグリシジルまたはオキシラン基当量のカルボン酸アニオン基に対する比率は、20:1から1:20、または、好ましくは0.10:1から1:10、またはより好ましくは、3:1から1:5の範囲でなければならない。本反応において、カルボン酸アニオンは、カルボン酸塩または負に帯電した遊離のカルボキシアニオンである。
【0029】
反応は、水性溶媒または水の沸点までの30分から72時間の間の加熱と共に行ってもよく、または加熱せずに行ってもよい。従来と同じように、加熱は反応時間を短くする。
【0030】
反応物(a)および反応物(b)の反応を確実にするために、水性溶媒中の全ての反応物の固形物は、反応混合物の総量に基づいて50wt.%を超えてはならず、かつ好ましくは、10から40wt.%である。
【0031】
本発明によれば、反応生成物がβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性モノマーである場合、生成物モノマーは、従来型の方法による水性付加重合によってエチレン性不飽和共重合性モノマーと共重合してもよい。付加重合は、共重合される全てのモノマーの30wt.%未満が水溶性でない場合は水溶液中で実行してもよい。付加重合は、重合される全てのモノマーの30wt.%以上が水溶性でない場合は乳化重合によって実行してもよい。過硫酸塩、ペルオキシ開始剤、ビス−ニトリル開始剤ならびに酸化還元対、例えば過酸化物−重亜硫酸塩対過硫酸塩および重硫酸塩ならびにイソアスコルビン酸および過酸化物または過硫酸塩などを含めた従来型の乳液および溶液の開始剤を用いてもよく、適したメルカプタン連鎖移動剤、例えばn−ドデシルメルカプタンの追加があっても無くてもよい。溶液付加重合は、次亜リン酸およびそれらの塩、例えば次亜リン酸ナトリウムまたは水溶性のアゾ開始剤との、メルカプタン連鎖移動剤、例えば3−メルカプトプロピオン酸(3−mercpatopropionic acid)または2−メルカプトエタノールの追加のある連鎖移動重合および追加のない連鎖移動重合により実施してもよい。
【0032】
本発明の付加反応において、適した反応物a)には、例えば、工業用のモノ−メチルポリエチレングリコールグリシジルエーテル、CAS#40349−67−5、例えば、BOC Sciences(ニューヨーク州シャーリー)から入手可能なポリエチレングリコール5000類似物が含まれ得る。適した反応物は、慣例的に塩基触媒、例えばアルカリ金属水酸化物、金属水素化物、例えば水素化ナトリウムおよび水素化カルシウムまたは15より高いpKaを有する任意の塩基の存在下で実行されるような、エピクロロヒドリン(epichlorhydrin)のジエチレングリコールブチルエーテル(DBGE)との反応生成物、エピハロヒドリン(epihalodyrin)の任意のポリグリコール、例えばジエチレングリコールまたは3から200個のオキシエチレン基を有するポリエチレングリコール、アルキル化ポリグリコール、例えばメトキシポリエチレングリコール、アリールポリグリコールまたはアルキルアリールポリグリコールとの反応生成物から入手可能である。これらの調製方法は、Macromol. Rapid Commun. 20、598−601、(1999)、Biol.Pharm.Bull.26(4),492−500(2003)およびPolymer 50、3917−3923(2009)に記載されている。
【0033】
本発明の付加反応において、適した水性溶媒には、グリムなどの任意の水混和性の溶媒、例えば、エチレングリコールCからCモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールCからCアルキルエーテル、またはトリエチレングリコールCからCモノアルキルエーテル、または、好ましくは引火点が38℃より高いグリムが含まれる。これらには、Dow Chemical Companyから入手可能なE−シリーズおよびP−シリーズのグリコールエーテル、例えばCarbitol(商標) Methyl Carbitol、Butyl Carbitol、Propyl Cellosolve(商標)、Butyl Cellosolve(商標)、Methoxytriglycol、Dowanol(商標) DPM、 Dowanol(商標) TPM、Dowanol(商標) PnP(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Co.)の製品が含まれる。
【0034】
本発明のβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル官能性モノマー樹脂の共重合において、(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの付加重合に適したコモノマーには、エチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、マレイン酸(MA)、イタコン酸(IA)およびそれらの塩;(メタ)アクリルアミド;ならびにスチレン、CからC10アルキル(メタ)アクリレート、例えばメタクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチル、CからC12シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばアクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸ベンジル、ならびにアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン化モノマー、例えばスチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩、ならびに2−ホスホエチルメタクリル酸(PEM)およびその塩を含めた、疎水性のビニルモノマーが含まれ得る。
【0035】
本発明の(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの水溶性のコポリマーには、β−ヒドロキシプロピルポリエーテル側鎖を有する、カルボキシル官能性コポリマー、例えばポリ(アクリル酸)またはその塩を含む溶液ポリマーが含まれる。こうした側鎖は、モノマー残基の0.5から55%存在していてもよい。これらのポリマーは、好ましくはa)およびb)の反応におけるカルボン酸アニオン含有ポリマーの使用によって形成される。
【0036】
(ポリ)オキシアルキレンエーテルβ−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸コポリマーは、主鎖において30%未満のカルボン酸または塩共重合した残基を有する乳液コポリマーであってもよい。
【0037】
本発明の生成物は、櫛形ポリマーとして、例えば、床手入れ処理剤、洗剤組成物中の原材料、ポリマー分散剤、例えば各種コーティング用途のための顔料分散剤、増粘剤、セメント系材料のための超可塑剤、石こうスラリーのためのレオロジー改質剤および減水剤、液状媒体における懸濁粒子材料用の懸濁化剤などの多くの使用法を有する。加えて、こうした櫛形ポリマーは、各種のコーティング用途のため、例えば建築用塗料、船舶用塗装、紙塗工、缶塗装、繊維製品および不織材料のための結合剤およびコーティング、ロール塗布などのためのポリマー性結合剤としての使用法が見出されている。さらには、櫛形ポリマーは、特にβ−ヒドロキシプロピルポリエーテル側鎖上のアルキル基が8から18炭素原子を有する疎水性、例えば共重合したC12からC18のアルキルまたは脂肪族(メタ)アクリレート、例えばメタクリル酸ラウリル(LMA)および(メタ)アクリル酸セチルであろう場合、革製品のための鞣剤および再鞣剤(retanning agents agents)として、ならびにレオロジー改質剤および増粘剤としての使用法が見出されている。
【0038】
以下の実施例は、本発明を例証する。別段の指示がない限り、全ての部および割合は重量により、全ての温度は℃である。
【実施例】
【0039】
以下の試薬および溶媒を用いた:
ジエチレングリコールブチルエーテル(DGBE、>99.2%、CAS#112−34−5)、水酸化カリウムペレット(KOH)、塩化メチレンおよびジメチルスルホキシドは、全てAldrich Chemicals Co.(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から得た。エピクロロヒドリン(99%)、ジオキサン、メタクリル酸およびNaOH(50%wt/wt溶液)はFischer Scientific Co.(ペンシルベニア州アレンタウン)から購入した;および、重量平均分子量が6,000であるポリ(メタクリル酸)の次亜リン酸ホモテロマーは中和して金属塩を形成させた。以下の分析法を用いた:
【0040】
NMRスペクトル法:Bruker 500 MHz NMR(マサチューセッツ州ビルリカのBruker)を用いて実行した。
【0041】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):アイソクラティックポンプ、真空脱ガス装置、注入量可変式オートサンプラー、およびカラムヒーター、または同等品付きAgilent 1100 HPLCシステム(ミネソタ州ミネアポリスのGMI)で実行した。特に明記しない限り、10mgの試料を、20mM水性ゲル浸透クロマトグラフィー(AQGPC)移動相溶液5mLに溶解した。移動相を作るには、14.52gの第一リン酸ナトリウム(NaHPO)および14.08gの第二リン酸ナトリウム(NaHPO)を11LのMilliQ(商標) HPLC水(ペンシルベニア州アレンタウンのMillipore, Inc.)に溶解し、撹拌して全ての固形物を完全に溶解させた。次いで得られた溶液を、0.5N水酸化ナトリウムでpH7に調整した。フローマーカーは、重量で同量の固体NaHPOとNaHPOを混合することにより調製した。ブレンドした後、1.3グラムを1リットルの20mM AQGPC移動相混合物に溶解させた。
【0042】
以下のパラメータを観察した。
検出器:Agilent 1100 HPLC G1362A屈折率検出器または同等品。
ソフトウェア:Agilent ChemStation、バージョンB.04.02とAgilent GPC AddonバージョンB.01.01。
カラムセット:TOSOH Bioscience(ペンシルベニア州キングオブプラシャのTOSOH Bioscience)のTOSOH Bioscience TSKgel G2500PWxl 7.8mm ID X 30cm、7μmカラム(P/N 08020)とTOSOH Bioscience TSKgel GMPWxl 7.8mm ID X 30cm、13μm(P/N 08025)。
移動相:MilliQ HPLC水中の20mMリン酸緩衝液、pH〜7.0。
流速:1.0ml/分;注入量:20μL
カラム温度:35℃;実行時間:30分
標準:ポリアクリル酸、Na塩、Mp216からMp1,100,000。American Polymer Standards(オハイオ州メンターのAmerican Polymer Standards)のMp900からMp1,100,000標準
校正:Agilent GPC−Addonソフトウェアを用いて多項式フィット(多項式4を使用)。
注入濃度:固形物1〜2mg/mLの20mM GPC移動相希釈液。
フローマーカー:30mMリン酸塩
【0043】
水性ゲル浸透クロマトグラフィー/質量分析法(GPC−MS)
以下の例外を除いて、上述したGPCのための方法に従った:
Bruker micrOTOF−Q(商標) II質量分析計(マサチューセッツ州ビレリカのBruker)を使用。
移動相は、1.54gの酢酸アンモニウムを11LのMilliQ(商標) HPLC水に溶解し、撹拌して全ての固形物を完全に溶解させることにより作成した。
【0044】
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC−MS)
合成実施例1の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランについては、真空脱ガス装置(G1322A)、バイナリポンプ(G1312A)、オートサンプラー(G1313A)、カラムヒーター(G1316A)およびVWD(G1314A)、または同等品(ミネソタ州ミネアポリスのGMI)の付いたAgilent 1100 HPLCシステムを用いてこれを実行した。質量分析にはBruker micrOTOF−Q(商標) II質量分析計(マサチューセッツ州ビレリカのBruker)を用いた。
カラムセット:Agilent Zorbax Eclipse XDB−C18 3.0×150mm、5μm
以下のパラメータを観察した。
移動相A:HO;移動相B:アセトニトリル
流速:0.5ml/分; 注入量:5μL
カラム温度:25℃;
移動相AおよびBを、下表1に記述されている以下の勾配で流させる:
【表1】
流速:〜250ml/分
イオン化:陽イオンモードでエレクトロスプレーイオン化
質量範囲:50〜3000Da
【0045】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)
合成実施例2のメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルについては、窒素レーザー(λ=337nm)を備えたBruker ultraflex MALDI、およびMALDI Matrixとして2,5−ジヒドロキシ安息香酸をTHF中20mg/mlで用いてこれを実行した。
【0046】
試料をTHFに〜5mg/mlで溶解した。試料溶液をマトリックス溶液と1:20の比率で予混合した。イオン化を促進するため、NaIを試料/マトリックス混合物にドープした。次いで混合物0.3μlを、MALDI−MS分析用の試料標的板に置いた。
【0047】
合成実施例1:2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランの合成
1122質量218.29
DGBE、58.44g(0.360モル)を、室温でスターラーおよび水凝縮器を備えた三つ口フラスコ内で水浴中で91mlのジメチルスルホキシドと混合した。水酸化カリウム(KOH、40.42g、0.721モル)ペレットをこの混合物に加え、よく撹拌した。KOHペレットの完全溶解後、100gのエピクロロヒドリン(1.081モル)を、温度を30℃に維持しながら流速1.40ml/分で1時間かけて加えた。エピクロロヒドリンの追加後、30℃で24時間反応を継続した。24時間後、反応混合物をろ過し、固形物を塩化メチレンで洗った。減圧下でろ液から溶媒を除去した。残留物を、エチルエーテル(2×200ml)およびブライン(100ml)の間でさらに分離した。有機層を混ぜ合わせ、MgSO4で乾燥させた。64.0gの最終生成物を、収率81%で単離した。
【0048】
【表2】
上表2に示されるように、3.05ppm、2.69ppmおよび2.52ppmにおける1H NMRピークは、形成されたオキシラン環のプロトンに関係するピークである。0.91ppmにおけるピークは、形成されたブチル基のプロトンに関係するものである。同様に、表2に示す52.1ppmおよび45.0ppmにおける13C NMRピークは、エポキシ環の炭素に関係するピークである。15.2ppmにおけるピークは、ブチル基の炭素に関係するものである。この分析は、2−((2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン反応物a)の合成を裏付ける。
【0049】
【表3】
上表3に示されるように、2−((2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランについてプロトン化された分子イオン(MH+)のm/z219.2におけるピークが、質量分光分析において観察された。m/z236.2および241.1におけるピークは、それぞれナトリウム化(sodiated)(MNa+)およびアンモニア化(MNH+)した分子イオンピークである。これは、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランの合成成功を立証する。
【0050】
合成実施例2:メタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピル(C1528)の合成
ジオキサン(5.13g)および蒸留水(11.96g)の混合物(wt/wt%比30/70)を、マグネチックスターラー付きガラスバイアル中で調製した。メタクリル酸(10.0g、0.116モル)をこの混合物に加え、続いて水酸化ナトリウム(1.39g、0.035モル)を追加した。溶液を全ての水酸化ナトリウムが溶解するまで室温で10分撹拌した。2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン(7.60g、0.0348モル)を加え、反応混合物を室温でさらに10分撹拌した。ガラスバイアルを、予熱したオーブン内で60℃で24時間加熱した。24時間後、バイアルをオーブンから取り出し、室温に冷却した。形成された2つの層を分離し、有機層(上部)を特性評価した。メタクリル酸の30モル%のみが中和されたので、残る総投入量の70モル%のメタクリル酸は反応しなかった。
【0051】
【表4】
上表4に示されるように、3.90ppmにおける1H NMRピークは、生成物のβ−ヒドロキシル基のプロトンに関係するものである。表4に示す168.2ppmにおける13C NMRピークは、エステル生成物のカルボニル炭素を裏付ける。
【0052】
【表5】
合成実施例2のメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルの試料を、MALDI質量分析法により特性評価した。質量分光データは、327.2でメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルのナトリウム化した分子イオン(MNa+)ピークを示す。メタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルのβ−ヒドロキシル基が、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランとさらに反応して二量体または三量体を形成したとみられる。545.4および763.6における副生物のピークは、これらの二量体または三量体に割り当てる。
【0053】
合成実施例3:ポリメタクリル酸(pMAA)グラフト化ジエチレングリコールモノブチルエーテル
周囲pHで、酸価253を有する100gのポリ(メタクリル酸)(pMAA)を、10.82gのNaOH水溶液(固形物50%w/w)と混合して、部分的に中和されたpMAAの溶液を作成した。5.54gの溶液を、マグネチックスターラーを用いてガラスバイアル内で4.06gの水と混合した。1.48gの2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランを、撹拌下でこの混合物に加えた。室温で撹拌を継続し、5時間に両方の相が混和して均質な混合物を形成した。バイアルを、余熱したオーブン内で60℃で72時間加熱した。72時間後、バイアルを室温に冷却し、反応混合物を特性評価した。
【0054】
【表6】
上表6に示す178.ppmにおける13C NMRピークは、生成物としてのエステルのカルボニル炭素を証明する。
【0055】
ジエチレングリコールモノブチルエーテルグラフト化pMAAを、サイズ排除クロマトグラフィーに続けて質量分析法も用いて分析した。この方法は、異なる時間間隔で溶離した異なるグラフト化ポリマー鎖を調べて、ポリマー生成物の全体像を得る。下表7、8および9に示されるデータは、異なる時間間隔で溶離したグラフト化ポリマー鎖について観察した脱プロトン化分子イオンピークである。
【0056】
13.8〜14分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表7に記載する。これらの分子イオンピークは、単荷電イオンである。それぞれの所与の分子質量について、第1のカラムに記載された数はメタクリル酸単位の数を示し、第1の行の数は、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン基およびポリマー鎖上の末端基の数を示す。次亜リン酸ナトリウムを連鎖移動剤として用いたため、末端基は次亜リン酸基である。m/z541.3で観察されたピークは、3単位のメタクリル酸(モルwt86.06)および1単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン(モルwt218.28)に割り当てられ得る(校正:3*86+1*218.3+64.9=541.2)。同様に、627.3で観察されたピークは、4単位のメタクリル酸および1単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランに割り当てられ得る(校正:4*86+1*218.3+64.9=627.3)。
【0057】
【表7】
合成実施例3から13.6〜13.8分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表8に記載する。これらの分子イオンピークは二重荷電イオンであり、したがって表に記載した数は、z=2の場合のm/z値を示す。したがってm/z551.3で観察されたピークは、1102.3の分子質量を示し、7単位のメタクリル酸(モルwt86.06)および2単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン単位(モルwt218.28)に割り当てられ得る。
【0058】
【表8】
合成実施例3から13.4〜13.6分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表9に記載する。これらの分子イオンピークは三重荷電イオンであり、したがって表に記載した数は、z=3の場合のm/z値を示す。
【0059】
【表9】
上表7、8および9に示されるように、反応物b)のpMAA鎖における繰り返し単位の数が増加するにつれて、対応するグリシドールエーテル単位の数も増加する。下表10は、未反応のpMAAと、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランと反応したpMAAとの間の分子量の差を示す。pMAAの見かけの重量平均分子量は反応後に1.357×104g/molに増加し、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン単位の組み込み後の分子の大きさの増加を示している。
【0060】
【表10】
上表10に示される分子量は、ポリスチレン標準を用いて測定される相対分子量である。しかしながら反応の前後のpMAAの重量平均分子量の差は、生成物水溶性コポリマーにおけるジエチレングリコールブチルエーテル繰り返し単位の概数を見積もるのに用いてもよい。重量平均分子量における差は、1.357×10−5.710×10=7860である。2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランのモルwtは、218.28である。したがって、繰り返し単位の数は、約36単位(7860/218.28=36)である。