【実施例】
【0039】
以下の試薬および溶媒を用いた:
ジエチレングリコールブチルエーテル(DGBE、>99.2%、CAS#112−34−5)、水酸化カリウムペレット(KOH)、塩化メチレンおよびジメチルスルホキシドは、全てAldrich Chemicals Co.(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から得た。エピクロロヒドリン(99%)、ジオキサン、メタクリル酸およびNaOH(50%wt/wt溶液)はFischer Scientific Co.(ペンシルベニア州アレンタウン)から購入した;および、重量平均分子量が6,000であるポリ(メタクリル酸)の次亜リン酸ホモテロマーは中和して金属塩を形成させた。以下の分析法を用いた:
【0040】
NMRスペクトル法:Bruker 500 MHz NMR(マサチューセッツ州ビルリカのBruker)を用いて実行した。
【0041】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):アイソクラティックポンプ、真空脱ガス装置、注入量可変式オートサンプラー、およびカラムヒーター、または同等品付きAgilent 1100 HPLCシステム(ミネソタ州ミネアポリスのGMI)で実行した。特に明記しない限り、10mgの試料を、20mM水性ゲル浸透クロマトグラフィー(AQGPC)移動相溶液5mLに溶解した。移動相を作るには、14.52gの第一リン酸ナトリウム(NaH
2PO
4)および14.08gの第二リン酸ナトリウム(NaH
2PO
4)を11LのMilliQ(商標) HPLC水(ペンシルベニア州アレンタウンのMillipore, Inc.)に溶解し、撹拌して全ての固形物を完全に溶解させた。次いで得られた溶液を、0.5N水酸化ナトリウムでpH7に調整した。フローマーカーは、重量で同量の固体NaH
2PO
4とNaH
2PO
4を混合することにより調製した。ブレンドした後、1.3グラムを1リットルの20mM AQGPC移動相混合物に溶解させた。
【0042】
以下のパラメータを観察した。
検出器:Agilent 1100 HPLC G1362A屈折率検出器または同等品。
ソフトウェア:Agilent ChemStation、バージョンB.04.02とAgilent GPC AddonバージョンB.01.01。
カラムセット:TOSOH Bioscience(ペンシルベニア州キングオブプラシャのTOSOH Bioscience)のTOSOH Bioscience TSKgel G2500PWxl 7.8mm ID X 30cm、7μmカラム(P/N 08020)とTOSOH Bioscience TSKgel GMPWxl 7.8mm ID X 30cm、13μm(P/N 08025)。
移動相:MilliQ HPLC水中の20mMリン酸緩衝液、pH〜7.0。
流速:1.0ml/分;注入量:20μL
カラム温度:35℃;実行時間:30分
標準:ポリアクリル酸、Na塩、Mp216からMp1,100,000。American Polymer Standards(オハイオ州メンターのAmerican Polymer Standards)のMp900からMp1,100,000標準
校正:Agilent GPC−Addonソフトウェアを用いて多項式フィット(多項式4を使用)。
注入濃度:固形物1〜2mg/mLの20mM GPC移動相希釈液。
フローマーカー:30mMリン酸塩
【0043】
水性ゲル浸透クロマトグラフィー/質量分析法(GPC−MS):
以下の例外を除いて、上述したGPCのための方法に従った:
Bruker micrOTOF−Q(商標) II質量分析計(マサチューセッツ州ビレリカのBruker)を使用。
移動相は、1.54gの酢酸アンモニウムを11LのMilliQ(商標) HPLC水に溶解し、撹拌して全ての固形物を完全に溶解させることにより作成した。
【0044】
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC−MS):
合成実施例1の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランについては、真空脱ガス装置(G1322A)、バイナリポンプ(G1312A)、オートサンプラー(G1313A)、カラムヒーター(G1316A)およびVWD(G1314A)、または同等品(ミネソタ州ミネアポリスのGMI)の付いたAgilent 1100 HPLCシステムを用いてこれを実行した。質量分析にはBruker micrOTOF−Q(商標) II質量分析計(マサチューセッツ州ビレリカのBruker)を用いた。
カラムセット:Agilent Zorbax Eclipse XDB−C18 3.0×150mm、5μm
以下のパラメータを観察した。
移動相A:H
2O;移動相B:アセトニトリル
流速:0.5ml/分; 注入量:5μL
カラム温度:25℃;
移動相AおよびBを、下表1に記述されている以下の勾配で流させる:
【表1】
流速:〜250ml/分
イオン化:陽イオンモードでエレクトロスプレーイオン化
質量範囲:50〜3000Da
【0045】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS):
合成実施例2のメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルについては、窒素レーザー(λ=337nm)を備えたBruker ultraflex MALDI、およびMALDI Matrixとして2,5−ジヒドロキシ安息香酸をTHF中20mg/mlで用いてこれを実行した。
【0046】
試料をTHFに〜5mg/mlで溶解した。試料溶液をマトリックス溶液と1:20の比率で予混合した。イオン化を促進するため、NaIを試料/マトリックス混合物にドープした。次いで混合物0.3μlを、MALDI−MS分析用の試料標的板に置いた。
【0047】
合成実施例1:2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランの合成
C
11H
22O
4質量218.29
DGBE、58.44g(0.360モル)を、室温でスターラーおよび水凝縮器を備えた三つ口フラスコ内で水浴中で91mlのジメチルスルホキシドと混合した。水酸化カリウム(KOH、40.42g、0.721モル)ペレットをこの混合物に加え、よく撹拌した。KOHペレットの完全溶解後、100gのエピクロロヒドリン(1.081モル)を、温度を30℃に維持しながら流速1.40ml/分で1時間かけて加えた。エピクロロヒドリンの追加後、30℃で24時間反応を継続した。24時間後、反応混合物をろ過し、固形物を塩化メチレンで洗った。減圧下でろ液から溶媒を除去した。残留物を、エチルエーテル(2×200ml)およびブライン(100ml)の間でさらに分離した。有機層を混ぜ合わせ、MgSO4で乾燥させた。64.0gの最終生成物を、収率81%で単離した。
【0048】
【表2】
上表2に示されるように、3.05ppm、2.69ppmおよび2.52ppmにおける1H NMRピークは、形成されたオキシラン環のプロトンに関係するピークである。0.91ppmにおけるピークは、形成されたブチル基のプロトンに関係するものである。同様に、表2に示す52.1ppmおよび45.0ppmにおける13C NMRピークは、エポキシ環の炭素に関係するピークである。15.2ppmにおけるピークは、ブチル基の炭素に関係するものである。この分析は、2−((2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン反応物a)の合成を裏付ける。
【0049】
【表3】
上表3に示されるように、2−((2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランについてプロトン化された分子イオン(MH+)のm/z219.2におけるピークが、質量分光分析において観察された。m/z236.2および241.1におけるピークは、それぞれナトリウム化(sodiated)(MNa+)およびアンモニア化(MNH
4+)した分子イオンピークである。これは、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランの合成成功を立証する。
【0050】
合成実施例2:メタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピル(C15H28O6)の合成
ジオキサン(5.13g)および蒸留水(11.96g)の混合物(wt/wt%比30/70)を、マグネチックスターラー付きガラスバイアル中で調製した。メタクリル酸(10.0g、0.116モル)をこの混合物に加え、続いて水酸化ナトリウム(1.39g、0.035モル)を追加した。溶液を全ての水酸化ナトリウムが溶解するまで室温で10分撹拌した。2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン(7.60g、0.0348モル)を加え、反応混合物を室温でさらに10分撹拌した。ガラスバイアルを、予熱したオーブン内で60℃で24時間加熱した。24時間後、バイアルをオーブンから取り出し、室温に冷却した。形成された2つの層を分離し、有機層(上部)を特性評価した。メタクリル酸の30モル%のみが中和されたので、残る総投入量の70モル%のメタクリル酸は反応しなかった。
【0051】
【表4】
上表4に示されるように、3.90ppmにおける1H NMRピークは、生成物のβ−ヒドロキシル基のプロトンに関係するものである。表4に示す168.2ppmにおける13C NMRピークは、エステル生成物のカルボニル炭素を裏付ける。
【0052】
【表5】
合成実施例2のメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルの試料を、MALDI質量分析法により特性評価した。質量分光データは、327.2でメタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルのナトリウム化した分子イオン(MNa+)ピークを示す。メタクリル酸3−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)−2−ヒドロキシプロピルのβ−ヒドロキシル基が、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランとさらに反応して二量体または三量体を形成したとみられる。545.4および763.6における副生物のピークは、これらの二量体または三量体に割り当てる。
【0053】
合成実施例3:ポリメタクリル酸(pMAA)グラフト化ジエチレングリコールモノブチルエーテル
周囲pHで、酸価253を有する100gのポリ(メタクリル酸)(pMAA)を、10.82gのNaOH水溶液(固形物50%w/w)と混合して、部分的に中和されたpMAAの溶液を作成した。5.54gの溶液を、マグネチックスターラーを用いてガラスバイアル内で4.06gの水と混合した。1.48gの2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランを、撹拌下でこの混合物に加えた。室温で撹拌を継続し、5時間に両方の相が混和して均質な混合物を形成した。バイアルを、余熱したオーブン内で60℃で72時間加熱した。72時間後、バイアルを室温に冷却し、反応混合物を特性評価した。
【0054】
【表6】
上表6に示す178.
4ppmにおける13C NMRピークは、生成物としてのエステルのカルボニル炭素を証明する。
【0055】
ジエチレングリコールモノブチルエーテルグラフト化pMAAを、サイズ排除クロマトグラフィーに続けて質量分析法も用いて分析した。この方法は、異なる時間間隔で溶離した異なるグラフト化ポリマー鎖を調べて、ポリマー生成物の全体像を得る。下表7、8および9に示されるデータは、異なる時間間隔で溶離したグラフト化ポリマー鎖について観察した脱プロトン化分子イオンピークである。
【0056】
13.8〜14分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表7に記載する。これらの分子イオンピークは、単荷電イオンである。それぞれの所与の分子質量について、第1のカラムに記載された数はメタクリル酸単位の数を示し、第1の行の数は、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン基およびポリマー鎖上の末端基の数を示す。次亜リン酸ナトリウムを連鎖移動剤として用いたため、末端基は次亜リン酸基である。m/z541.3で観察されたピークは、3単位のメタクリル酸(モルwt86.06)および1単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン(モルwt218.28)に割り当てられ得る(校正:3*86+1*218.3+64.9=541.2)。同様に、627.3で観察されたピークは、4単位のメタクリル酸および1単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランに割り当てられ得る(校正:4*86+1*218.3+64.9=627.3)。
【0057】
【表7】
合成実施例3から13.6〜13.8分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表8に記載する。これらの分子イオンピークは二重荷電イオンであり、したがって表に記載した数は、z=2の場合のm/z値を示す。したがってm/z551.3で観察されたピークは、1102.3の分子質量を示し、7単位のメタクリル酸(モルwt86.06)および2単位の2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン単位(モルwt218.28)に割り当てられ得る。
【0058】
【表8】
合成実施例3から13.4〜13.6分で溶離したポリマー画分の分子イオンピークを下表9に記載する。これらの分子イオンピークは三重荷電イオンであり、したがって表に記載した数は、z=3の場合のm/z値を示す。
【0059】
【表9】
上表7、8および9に示されるように、反応物b)のpMAA鎖における繰り返し単位の数が増加するにつれて、対応するグリシドールエーテル単位の数も増加する。下表10は、未反応のpMAAと、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランと反応したpMAAとの間の分子量の差を示す。pMAAの見かけの重量平均分子量は反応後に1.357×104g/molに増加し、2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン単位の組み込み後の分子の大きさの増加を示している。
【0060】
【表10】
上表10に示される分子量は、ポリスチレン標準を用いて測定される相対分子量である。しかしながら反応の前後のpMAAの重量平均分子量の差は、生成物水溶性コポリマーにおけるジエチレングリコールブチルエーテル繰り返し単位の概数を見積もるのに用いてもよい。重量平均分子量における差は、1.357×10
4−5.710×10
3=7860である。2−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランのモルwtは、218.28である。したがって、繰り返し単位の数は、約36単位(7860/218.28=36)である。