特許第6133313号(P6133313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133313濡れた皮膚上で適用するための化粧用または皮膚用の調製物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133313
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】濡れた皮膚上で適用するための化粧用または皮膚用の調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20170515BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20170515BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170515BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61K8/92
   A61Q19/00
   A61Q19/10
【請求項の数】24
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-539284(P2014-539284)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公表番号】特表2015-510492(P2015-510492A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】EP2012070937
(87)【国際公開番号】WO2013064391
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】102011085500.9
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】202012000164.7
(32)【優先日】2012年1月10日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】13/606,536
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398042277
【氏名又は名称】バイエルスドルフ・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Beiersdorf AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イザベル バルケ
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー クレプケ
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−206629(JP,A)
【文献】 特表2008−531735(JP,A)
【文献】 特開2009−040724(JP,A)
【文献】 特表2001−518939(JP,A)
【文献】 特表2008−524264(JP,A)
【文献】 特開2005−281325(JP,A)
【文献】 米国特許第05928632(US,A)
【文献】 特表2005−526118(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0281013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濡れた皮膚または湿った皮膚上に適用するための化粧用または皮膚用の、リンスオフ型水性調製物であって、前記調製物は、(i)少なくとも2種の異なるポリアクリル酸ポリマーと、(ii)少なくとも2種の異なるC14〜C22−脂肪アルコールと、前記調製物の全質量に対して少なくとも13質量%の(iii)微晶蝋とを含み、かつポリアクリル酸ポリマー以外に、乳化剤の濃度は、調製物の全質量に対して、0.02質量%以下である、前記調製物。
【請求項2】
請求項1に記載の調製物であって、前記ポリアクリル酸ポリマー(i)は、アクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートのクロスポリマーおよびカルボマーから選択される前記調製物。
【請求項3】
請求項1に記載の調製物であって、前記ポリアクリル酸ポリマー(i)は、乳化特性を有する少なくとも1種のポリマーを含む前記調製物。
【請求項4】
請求項1に記載の調製物であって、前記ポリアクリル酸ポリマー(i)は、該調製物の知覚特性の少なくとも1つを向上させ、かつ該調製物の安定性を高める、少なくとも1種のポリマーを含む前記調製物。
【請求項5】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、前記(i)を全部で、0.05〜2質量%含む前記調製物。
【請求項6】
請求項5に記載の調製物であって、前記調製物は、全体で、0.2〜1質量%の(i)を含む前記調製物。
【請求項7】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、前記(ii)を全部で、3〜14質量%含む前記調製物。
【請求項8】
請求項7に記載の調製物であって、前記調製物は、全体で、7〜9質量%の(ii)を含む前記調製物。
【請求項9】
請求項1に記載の調製物であって、前記(ii)は、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセテアリルアルコールの少なくとも2種を含む前記調製物。
【請求項10】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、0.5〜2質量%のC14脂肪アルコールと、1.5〜3質量%のC18脂肪アルコールと、4〜6質量%のC16/C18脂肪アルコール混合物とを含む前記調製物。
【請求項11】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、少なくとも15質量%の(iii)を含む前記調製物。
【請求項12】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、35質量%以下の(iii)を含む前記調製物。
【請求項13】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、更に、(iv)1種以上の炭化水素油を含む前記調製物。
【請求項14】
請求項13に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、少なくとも5質量%の(iv)を含む前記調製物。
【請求項15】
請求項13に記載の調製物であって、質量比(iii):(iv)は、3:1〜1:1である前記調製物。
【請求項16】
請求項13に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、前記(iii)と(iv)を全部で、20〜60質量%含む前記調製物。
【請求項17】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、少なくとも45質量%の水を含む前記調製物。
【請求項18】
請求項1に記載の調製物であって、前記調製物は、更に、少なくとも1種の保湿剤を含む前記調製物。
【請求項19】
請求項18に記載の調製物であって、前記少なくとも1種の保湿剤がグリセロールを含む前記調製物。
【請求項20】
請求項19に記載の調製物であって、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、少なくとも4質量%のグリセロールを含む前記調製物。
【請求項21】
皮膚のケア方法であって、請求項1に記載の調製物を皮膚に適用することを含む前記方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記皮膚が濡れているまたは湿っている前記方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記調製物が、入浴中またはシャワー中に適用される前記方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、前記調製物が、皮膚の洗浄に引き続いて適用される前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年10月31日に独国特許出願第10 2011 085 500.9号と2012年1月10日に出願された独国実用新案出願第20 2012 000 164.7に基づき米国特許法第119条の下で優先権を主張する。これらの文献の全開示内容は、参照をもって明確に本願に開示されたものとする。
【0002】
発明の背景
1. 発明の分野
本発明は、ポリアクリル酸ポリマーと、脂肪アルコールと、微晶蝋とを含む、本質的に乳化剤を含まない化粧用または皮膚用の調製物に関する。前記調製物は、皮膚(特に濡れたまたは湿った皮膚)に適用するために適しており、こうしてシャワー中にクリームを擦り込むことを可能にする。
【0003】
2. 背景情報の議論
化粧用または皮膚用の調製物は、その適用時間とその適用目的に基づき分けることができる。幾つかの製品は、適用後に直ちに洗い落とされ("リンスオフ(rinse-off)")、その他は、より長期にわたり皮膚上に留まることを目的とし、そこで効力があるものである("リーブオン(leave-on)")。
【0004】
スキンケア用の化粧用調製物は、主に、乾燥した皮膚に適用するために開発されている。この形態の調製物は、リーブオン型調製物、例えばクリーム、ローションまたはボディーミルクとして知られている。しばしば、これらはエマルジョンとして、特にW/O型の、O/W型、O/W/O型またはW/O/W型のエマルジョンとして配合される。
【0005】
エマルジョンは、一般に、不混和性であるかもしくは限られた程度までしか混和性でない、通常、相と呼ばれる2種の液体を含む不均質系を意味すると解される。エマルジョンにおいては、前記2種の液体(水または油)の一方は、もう一方の液体中に非常に微細な液滴の形態で分散されている。前記液体(そのものまたは溶液形で)は、エマルジョン中に、多かれ少なかれ一般に限られた程度までしか安定でない微細な分布で存在する。
【0006】
前記の2種の液体が水と油であり、かつ油滴が微細な分布で水中に存在する場合に、これは、水中油エマルジョン(O/W型のエマルジョン、例えばミルク)である。O/W型のエマルジョンの基本特性、例えば導電性、知覚特性、連続相の染みつき性は、水によって規定される。油中水エマルジョン(W/O型のエマルジョン、例えばバター)の場合には、原理は逆になり、基本特性は、ここでは油によって決まる。
【0007】
リーブオン型の調製物は、濡れた皮膚または湿った皮膚に適用するのに適していない。存在する乳化剤のため、該乳化剤は水を乳化することができ、かつ脂質のせいで、幾らかの場合により油膜が残る。
【0008】
リンスオフ型の調製物は、シャワー中または入浴中に適用するために設計されている。しかし、その反対に、リンスオフ型の調製物は、クリームを擦り込むことで得られるようなケアの観点をより少ない程度でしか含まない。
【0009】
スキンケア効果を示し、かつ例えばシャワー中にリンスオフとして適用することもできる調製物を提供することが望ましい。
【0010】
消費者に非常に重要であるが困難をもって定量的に測定できるにすぎない化粧製品の一つの特性は、そのテクスチャと知覚特性である。その用語"テクスチャ"は、感触と触覚の感覚によって知覚される調製物の構成にあるものと言える化粧料の特性を意味するものと解され、前記特性は、幾らかの場合に機械的なまたはレオロジー的な流動特性の点で表現される。テクスチャは、特にセンサリクス(sensorics)によって試験することができる。化粧製品のテクスチャは、場合により添加剤の助けにより影響されうるが、それは、消費者にとっては、目的として確かめられるそれらの効果と事実上同じ重要性がある。
【0011】
用語"センサリクス"は、知覚的印象を基礎として化粧用調製物の評価を扱う科学的学問分野を指す。化粧料の知覚的評価は、視覚的印象と、嗅覚的印象と、触覚的印象とを基礎としてなされる。
【0012】
・ 視覚的印象:目によって知覚できる全ての特徴(色、形状、ストラクチャ)
・ 嗅覚的印象:鼻を通じた空気呼吸により知覚できる全ての匂い印象であって、しばしば初期の匂い(トップノート)、主たる匂い(ミディアムノート、ボディー)および残り香(ベースノート)に分類できる匂い印象。適用後に放出されるにすぎない揮発性物質も嗅覚的印象に貢献する。
・ 触覚的印象:触覚の全ての感覚であって、主に製品の組織と稠性に関連する感覚。
【0013】
知覚的分析は、製品の知覚的印象全体を一体的に確かめる可能性を使用する。知覚的分析の欠点は、試験対象に容易に影響することがあり、かつかなりの結果のばらつきが結果として引き起こされる印象の主観性である。これらの弱点は、今日では、訓練された被験者のグループの使用と、試験者の相互の遮蔽と、大抵広範囲におよぶ分析データの統計的評価とによって対処されている。
【0014】
従って、本発明の更なる課題は、適合性、貯蔵安定性などの化粧品に慣用の基準の他に、消費者に必須の今までに知られていない利益、特に知覚的利益をも与える調製物を提供することであった。特に、その要求される調製物は、ボディーケア分野で使用するために、すなわち全身に適用するために適していると同時に、知覚的に魅力的なものであることが望ましい。
【0015】
EP 1 390 006 A2(それは参照をもって開示されたものとする)は、濡れた皮膚に適用するための水中油型のエマルジョンを開示している。EP 1 390 006 A2の調製物は、水と分散安定剤と、ストラクチャ形成される油相と、前記液体中で離れて分布した固体の安定なネットワークを形成するストラクチャ形成剤(structurant)とを含む。好ましい無機のストラクチャ形成剤の他に、有機のストラクチャ形成剤としては固体脂肪酸エステルおよびワセリンがとりわけ指定される。特定された知覚的向上剤は、付加的に非イオン性ポリマー、例えばポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートピロリドン類、アニオン性ポリマー類、例えばポリアスパルテート、ポリマレエートおよびスルホネート、カチオン性ポリマー類ならびにそれらの混合物である。
【0016】
EP 2 174 639 A2(それは参照をもって開示されたものとする)は、濡れた皮膚に適用するための水中油型のエマルジョンを開示している。前記調製物は、水溶性ポリマーと、ペースト状の油と、液状の油を、大量のグリセロールと組み合わせて含む。水溶性ポリマーの例は、とりわけ天然ポリマー類、例えば植物多糖類、動物タンパク質類、半合成ポリマー類、例えばセルロース、デンプン、アルギン酸塩、多糖誘導体、合成ポリマー類、例えばビニルポリマー類、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー類、アルキル変性カルボキシビニルポリマー類(アクリレート−アルキルメタクリレートコポリマーなど)およびナトリウムポリアクリレートならびにまたポリエチレングリコールおよびエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマー類である。
【0017】
発明の要旨
本発明は、濡れた皮膚または湿った皮膚上での適用に適した化粧用または皮膚用の水性調製物を提供する。前記調製物は、
(i)少なくとも2種の(例えば少なくとも3種の)異なるポリアクリル酸ポリマーと、
(ii)少なくとも2種の(例えば少なくとも3種の)異なるC14〜C22−脂肪アルコールと、前記調製物の全質量に対して、少なくとも約13質量%の
(iii)微晶蝋と、
を含む。更に、前記調製物は、本質的に乳化剤を含まない。
【0018】
一態様においては、前記のポリアクリル酸ポリマー(i)は、アクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートのクロスポリマーおよびカルボマーから選択されるポリマーを含んでよい(例えば前記ポリマーからなってよい)。例えば、前記の調製物は、2種の異なるアクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートのクロスポリマー(異なる特性を有する)および1種のカルボマーを含んでよい。2種の異なるアクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートのクロスポリマーの質量比は、例えば約3:1〜約1:3、例えば約2:1〜約1:2または約1:1であってよい。2種の異なるアクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートのクロスポリマー(一緒になって)の前記カルボマーに対する質量比は、例えば約20:1〜約5:1、例えば約12:1〜約8:1または約10:1であってよい。
【0019】
もう一つの態様においては、成分(i)のポリアクリル酸ポリマーは、乳化特性を有する少なくとも1種のポリマーおよび/または知覚特性を高め、かつ/または調製物の安定性を高める、特に高められた温度で高める少なくとも1種のポリマーを含んでよい。
【0020】
本発明の調製物のもう一つの態様においては、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、成分(i)を全部で、約0.05〜約2質量%、例えば約0.2〜約1質量%、または約0.2〜約0.5質量%含んでよい。
【0021】
もう一つの態様においては、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、成分(ii)を全部で、約3〜約14質量%、例えば約4〜約12質量%、または約7〜約9質量%含んでよい。
【0022】
もう一つの態様においては、成分(ii)は、少なくとも1種のC14脂肪アルコール(C14)、少なくとも1種のC18脂肪アルコール(C18)および少なくとも1種のC16/C18脂肪アルコール混合物(C16/C18)を含んでよい。例えば、前記脂肪アルコールC14、C18およびC16/C18の質量比a:b:cにおいて、aは、約0.5〜約2の範囲であってよく、bは、約1〜約3の範囲であってよく、かつcは、約2〜約6の範囲であってよい。例えば、aは、1であってよく、bは、約2であってよく、かつcは、約5であってよい。
【0023】
前記調製物のもう一つの態様においては、成分(ii)は、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセテアリルアルコールの少なくとも2つ(例えば全て)を含んでよい。
【0024】
もう一つの態様においては、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、約0.5〜約2質量%(例えば約1〜約2質量%)のC14脂肪アルコール、約1.5〜約3.5質量%(例えば約2〜約3質量%)のC18脂肪アルコールおよび約4〜約6質量%(例えば約4.5〜約5.5質量%)のC16/C18脂肪アルコール混合物を含んでよい。
【0025】
更にもう一つの態様においては、本発明の調製物は、少なくとも約15質量%の、例えば少なくとも約16質量%の成分(iii)を含んでよい。
【0026】
もう一つの態様においては、前記調製物は、約35質量%以下の、例えば約30質量%以下の、または約25質量%以下の成分(iii)を含んでよい。
【0027】
更なる一態様においては、本発明の調製物は、更に、成分(iv)として1種以上の炭化水素油を含んでよい。例えば、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、少なくとも約5質量%の、例えば少なくとも約7質量%の成分(iv)を含んでよく、かつ/または成分(iii):成分(iv)の質量比は、約3:1〜約1:1、例えば約2:1であってよい。
【0028】
もう一つの態様においては、前記調製物は、該調製物の全質量に対して、成分(iii)と成分(iv)を全部で、少なくとも20質量%、例えば少なくとも約22質量%、または少なくとも25質量%で、かつ約60質量%以下、例えば約45質量%以下、約40質量%以下、または約35質量%以下で含んでよい。
【0029】
本発明の調製物のもう一つの態様においては、前記調製物は、更に、該調製物の全質量に対して、少なくとも約45質量%、例えば少なくとも約50質量%、または少なくとも約55質量%であるが、通常は、約70質量%以下、例えば約65質量%以下、または約60質量%以下の水を含んでよい。
【0030】
本発明の調製物のもう一つの態様においては、前記調製物は、更に、少なくとも1種の保湿剤を含んでよい。例えば、少なくとも1種の保湿剤は、グリセロールを含んでよく、かつ前記調製物は、該調製物の全質量に対して、例えば、少なくとも約4質量%、例えば少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、または少なくとも約15質量%のグリセロールを含んでよい。
【0031】
本発明は、また、濡れた皮膚または湿った皮膚上での適用に適した化粧用または皮膚用の水性調製物を提供する。前記調製物は、少なくとも約50質量%の水を含み、本質的に乳化剤を含まずかつ界面活性剤を含まず、かつ前記調製物の全質量に対して、約0.2〜約1質量%の(i)少なくとも3種の異なるポリアクリル酸ポリマーであってそのうち少なくとも1つが乳化特性を有し、かつ少なくとも1つが該調製物の知覚特性(例えば遊離水の吸収後)の少なくとも1つを向上させ、かつ/または該調製物の安定性(特に高められた温度で)を高める前記ポリマーと、約7〜約9質量%の(ii)少なくとも3種の異なるC14〜C22−脂肪アルコールと、約16〜約30質量%の(iii)微晶蝋と、少なくとも約6質量%の(iv)1種以上の炭化水素油とを含む。更に、質量比(iii):(iv)は、約1.5:1〜約2.5:1、例えば約2:1である。
【0032】
一態様においては、前記調製物は、更に、該調製物の全質量に対して少なくとも約5質量%のグリセロールを含んでよい。
【0033】
本発明はまた、皮膚のためのケア方法を提供する。本方法は、上述の本発明による調製物(それらの様々な態様を含む)を(好ましくは濡れたまたは湿った)皮膚に適用することを含む。好ましくは、本方法は、前記調製物を、シャワー中または入浴中に、および/または少なくとも約30℃であるが、通常は約40℃以下(例えば約35℃以下)の温度を有する水と組み合わせて、および/または皮膚または身体の洗浄の後に使用することを含む。
【0034】
本発明は、またウェットシェービングの方法を提供する。本方法は、上述の本発明による調製物(それらの様々な態様を含む)をウェットシェービング法によるシェービングの前に(濡れた)皮膚に適用することを含む。
【0035】
本発明の詳細な説明
ここで示される詳細は、例としてかつ本発明の実施態様の説明的議論だけを目的とするものであり、最も有用でかつ容易に理解される本発明の原理と概念的態様を説明すると思われるものを提供するために表されている。これに関して、本発明の構造的詳細を、本発明の基本的な理解に必要なものよりも詳細に示すことは試みられず、その発明の詳細な説明は、当業者に、本発明の幾つかの形態を実際にどのように具体化しうるかを明らかにするものである。
【0036】
本発明による調製物は、(慣用の)乳化剤を本質的に含まない。これに関して、明細書と特許請求の範囲で使用される用語"乳化剤"は、乳化特性を有するポリアクリル酸ポリマーを含まず、前記ポリマーは、該調製物の成分(i)中に含まれていてよいことが示される。反対に、本発明による調製物は、好ましくは、乳化特性を有する少なくとも1種のポリアクリル酸ポリマーを含む。言い換えると、ポリアクリル酸ポリマー以外に、更なる乳化剤は、本発明による調製物中に、如何なる効果のある(乳化性の)濃度では存在しない。更に、"乳化剤を含まない"という点に関する"本質的に"という用語は、前記調製物が、著しい乳化をもたらす濃度では乳化剤も乳化剤の組み合わせも含まないことを示している。従って、当該調製物における1種以上の乳化剤の濃度は、ともかく存在しても、通常は、調製物(成分(i)中に含まれうる任意の1種以上のポリアクリル酸ポリマーを含まない)の全質量に対して、約0.02質量%以下、例えば0.01質量%以下または0.001質量%以下である。
【0037】
本発明の調製物は、少なくとも2種の(例えば2種、3種、4種またはそれより多種の、好ましくは少なくとも3種の)異なるポリアクリル酸ポリマーを、すなわちその特性の少なくとも1つの点で互いに異なるポリアクリル酸ポリマーを含む。
【0038】
本願明細書と特許請求の範囲で使用される"ポリアクリル酸ポリマー"という用語は、アクリル酸および/またはメタクリル酸のポリマーならびに化粧品において知られるアクリレートクロスポリマーを示す。好ましくは、それらは、高分子量(>1Mg/モル)を有するポリマー(巨大分子)であって、ポリアクリル酸骨格を有し、かつ少量のポリアルケニルエーテル架橋を含むポリマーを含む。それらは、またカルボマーとも呼ばれる。カルボマーは、例えばタイプA、BおよびCに分けられる。それらは、例えば異なる粘度のゲルを形成する点で異なっている(米国薬局方、USP)。これらの水溶性または水分散性のポリマーは、それらが溶解または分散される液体中でかなりの粘性増加を引き起こしうる。これは、水中でのカルボマーミクロゲルの形成によってもたらされる。
【0039】
本発明で使用するのに好ましい他のポリアクリル酸ポリマーは、ポリマーの乳化剤作用を発揮するアクリレートクロスポリマーを含む。ポリマーの乳化剤は、主に、高分子量を有するポリアクリル酸ポリマーである。これらの乳化作用のあるポリアクリル酸ポリマーは、親水性の主要部に加えて小規模の親油性部分を含む。本発明の文脈で好ましいのは、INCI名で"アクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートクロスポリマー(Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer)"を有するアクリレートクロスポリマーである。その代表例は、例えばPemulen(登録商標)TR-1およびPemulen(登録商標)TR-2という商品名で、またCarbopol(登録商標)1342、Carbopol(登録商標)1382およびCarbopol(登録商標)ETD 2020という商品名でNOVEON社から入手できる。本発明で使用するのに好ましいアクリレート/C10〜C30−アルキルアクリレートクロスポリマーは、Lubrizol社製のPemulen(登録商標)TR-1およびCarbopol(登録商標)3128を含む。
【0040】
本発明で使用するためのポリアクリル酸ポリマーの好ましい組み合わせは、乳化作用を有するポリアクリル酸ポリマー、例えばPemulen(登録商標)TR-1と他のポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)3128との組み合わせであって、知覚特性を向上させ、かつ調製物の安定性(特に高められた温度での)および遊離水との結合を保証するものを含む。
【0041】
特に好ましいのは、(少なくとも)3種のポリアクリル酸ポリマー、すなわち(a)(少なくとも)1種の乳化作用を有するポリアクリル酸ポリマー、例えばPemulen(登録商標)TR-1もしくはPemulen(登録商標)TR-2と、(b)(少なくとも)1種のポリアクリル酸ポリマーであって知覚特性を向上し、かつ調製物の安定性を、特に高められた温度で保証するもの(例えばCarbopol(登録商標)3128)および(c)(少なくとも)1種のポリアクリル酸ポリマーであって遊離水の吸収後の知覚特性を向上させるもの(例えばCarbopol(登録商標)981)との組み合わせである。単なる例として、本発明による調製物の成分(i)は、全部で、約0.05〜1質量%の、例えば約0.09〜約0.25質量%の(a)と(b)(例えば約2:1〜約1:2の質量比で、例えば約1:1で)および約0.05〜約1質量%の、例えば約0.01〜約0.03質量%の(c)を含みうる。例えば、前記調製物は、(1)約0.08〜約0.15質量%のPemulen(登録商標)TR-1(および/またはPemulen(登録商標)TR-2)、(2)約0.08〜約0.15質量%のCarbopol(登録商標)3128および(3)約0.01〜約0.03質量%のCarbopol(登録商標)981の組み合わせを含んでよい。
【0042】
成分(i)は、通常は、本発明の調製物中に、少なくとも約0.05質量%の、例えば少なくとも約0.1質量%の、少なくとも約0.15質量%の、または少なくとも約0.2質量%の(全)濃度で存在するが、通常は約1質量%以下の、例えば約0.5質量%以下の、約0.3質量%以下の、または約0.25質量%以下の濃度で存在する。
【0043】
本発明の調製物中に含まれるポリアクリル酸ポリマーは、また該ポリマーの提供する粘度の点で異なってもよい。例えば、25℃でブルックフィールドRVTまたはRVFで20rpmにおいてスピンドル第5番を用いて0.2質量%溶液中で測定した場合に、Pemulen(登録商標)TR-1は、6500/15500mPasの最低/最高エマルジョン粘度を示し、一方で、Carbopol(登録商標)1342についての相応の値は、4000/11000mPasである。
【0044】
本発明の調製物の成分(ii)に関して、C14〜C22−脂肪アルコールは、14〜22の炭素数を有する、例えば14、16、18、20または22個の炭素原子を有する脂肪アルコールを指す。好ましくは、前記脂肪アルコールは、直鎖状の(飽和)脂肪アルコール、特にミリスチルアルコール(C1430O)、セチルアルコール(もしくはパルミチルアルコール)(C1634O)、ステアリルアルコール(もしくはオクタデシルアルコール)(C1838O)およびセチルステアリルアルコール(セテアリルアルコール)、主としてセチルアルコール(ヘキサデカノール)とステアリルアルコール(オクタデカノール)との混合物(CAS番号8005-44-5)の1つ以上から選択される。
【0045】
前記調製物は、好ましくは、少なくとも3種のC14〜C22−脂肪アルコールを含み、かつ特に少なくとも1種のC14脂肪アルコール(C14)、少なくとも1種のC18脂肪アルコール(C18)および少なくとも1種のC16/C18脂肪アルコール混合物(C16/C18)が存在し、好ましくはそれぞれの場合に1つだけのC14脂肪アルコール、1つだけのC18脂肪アルコールおよび1つだけのC16/C18脂肪アルコール混合物が存在する。2つだけの脂肪アルコールが使用されるべきであれば、C14脂肪アルコールは好ましくは存在しない。
【0046】
通常は、前記のC14〜C22−脂肪アルコールは、本発明の調製物中に、該調製物の全質量に対して、少なくとも約3質量%の、例えば少なくとも約4質量%の、少なくとも約5質量%の、少なくとも約6質量%の、または少なくとも約7質量%の全濃度で存在するが、約14質量%以下の、例えば約13質量%以下の、約12質量%以下の、約11質量%以下の、約10質量%以下の、または約9質量%以下の濃度で存在する。
【0047】
前記脂肪アルコールの質量パーセンテージは、しばしば、前記調製物の全質量に対して、C14脂肪アルコール類(C14)について約0.5〜約2.5質量%であり、C18脂肪アルコール類(C18)について約1.5〜約4.0質量%であり、かつC16/C18脂肪アルコール類(C16/C18)について約3.5〜約6質量%である。例えば、前記本発明の調製物中に含まれる脂肪アルコールは、(1)約0.5〜約2.0質量%のミリスチルアルコールと、(2)約1.5〜約3.5質量%のステアリルアルコールと、(3)約3.5〜約6質量%のセテアリルアルコールとを含むかまたはそれらからなってよい。成分(1)は、任意に存在しなくてよい。
【0048】
少なくとも2種のポリアクリル酸ポリマーと少なくとも2種のC14〜C22−脂肪アルコールとの組み合わせは、本発明の調製物の安定化を助ける。それぞれの場合にポリアクリル酸類および脂肪アルコール類のたった一つの代表物だけしか選択されないのであれば、前記安定性は、不適切となる傾向にあり、かつ特に湿った/濡れた皮膚への適用後の皮膚感覚が不快で、蝋質で、粗く、きしきしする傾向にある。
【0049】
本発明の調製物の成分(iii)に関して、微晶蝋は総称であって、その代替名にはCera Microcristallina[ドイツ語:Mikrokristalline Wachse、フランス語:Cire Minerale]が含まれる。微晶蝋(cera microcristallina)は、石油精錬プロセスの一部としてのペトロラタムの脱油によって生成される蝋の種類である。大抵は非分枝鎖状のアルカン類を含むよりよく知られたパラフィン蝋に対して、微晶蝋は、より高いパーセンテージのイソパラフィン系(分枝鎖状の)炭化水素およびナフテン系炭化水素を含有する。それは、パラフィン蝋よりも微細な結晶を示す。前記微晶蝋は、ほぼ、35個超の炭素原子を分子中に有する高分子量の飽和の脂肪族炭化水素からなる。前記微晶蝋は、一般に、パラフィン蝋よりも暗色であり、より粘性であり、より稠密であり、より粘着性であり、かつより弾性であり、かつより高分子量であり、かつ高融点である。微晶蝋の弾性および接着特性は、それを含む非直鎖成分に関連している。典型的な微晶蝋の結晶構造は小さくて薄く、パラフィン蝋よりもフレキシブルなものにする。本発明で使用するのに適した微晶蝋は、CAS番号63231-60-7(および/またはEINECS/EILINCS番号264-038-1)を有する。
【0050】
微晶蝋は、それが蝋リファイナーによって製造される場合に、一般に、凝固点、針入度(needle penetration)、色および粘性などの多くのASTM規格を満たすように製造される。微晶蝋は、一般に、"ラミネーティング"グレードと"ハーデニング"グレードに分類できる。ラミネーティンググレードは、一般に140〜175Fの融点と、25以上の針入度を有する。ハーデニンググレードの融点は、通常は約175〜200Fの範囲にあり、その針入度は、通常は25以下である。両方のグレードは、本発明で使用するのに適している。
【0051】
微晶蝋は、潤滑油製造由来の重質留出物の精錬から得られる。この副生成物は、次いで蝋精錬において脱油せねばならない。最終用途と所望の規格に応じて、その生成物は次いでその臭いの除去と色の除去がされてよい。これは、通常は、濾過法によって、または蝋材料の水素処理によって行われる。
【0052】
本発明で使用するための微晶蝋には、通常は、高い品質標準が課されている。本発明で使用するための微晶蝋は、通常は、例えば多環式の芳香族化合物、含硫化合物および他のアレルゲン、例えば穀物保護剤を本質的に含まない。その化学的中立性のため、微晶蝋は、アレルギー誘発性を有さない。微晶蝋によって誘発されるアレルギー反応は、かつて知られていない。動物油または植物油と比較して、微晶蝋は、高い酸化安定性を有する。すなわち、微晶蝋は、酸敗せず、追加の安定剤を必要としない。微晶蝋、ひいてはそれを含む調製物は、従って、追加の保存剤を必要としないか、または比較的少量の追加の保存剤しか必要としない。
【0053】
微晶蝋のスキンケア特性は、主に皮膚保湿の分野にある。微晶蝋は、乾燥から保護する皮膚上に部分的に閉鎖性の保護膜を形成する。これは、乾燥した皮膚または皮膚バリヤが損傷された高いストレスを受けた皮膚の場合に特に極めて重要である。部分的に閉鎖性のケア製品は上部角質層にそれ自体位置し、それにより経表皮水分損失が低下する。皮膚の保湿剤(例えばグリセロール)と組み合わせて、それらは、皮膚の平衡を素早く回復するのを助ける。非常に類似した物質混合物である、いわゆる鉱蝋は、比較的多量に、また様々な植物蝋(例えばカンデリラ蝋)および昆虫蝋(例えば蜜蝋)にも自然に存在することに留意される。
【0054】
微晶蝋は、本発明の調製物において、少なくとも約13質量%の濃度で、例えば少なくとも約14質量%の、少なくとも約15質量%の、または少なくとも約16質量%の濃度で存在し、かつ通常は、約40質量%以下の濃度で、例えば約35質量%以下の、約30質量%以下の、または約25質量%以下の濃度で存在する。
【0055】
成分(i)、(ii)および(iii)に加えて、本発明の調製物は、好ましくはまた成分(iv)、すなわち1種以上の炭化水素油を含む。本発明で使用するのに好ましい炭化水素油は、医療用ホワイト油(白色鉱油とも呼ばれる)を含む。医療用ホワイト油は、由来に応じて様々な組成を有する物質混合物である。例えば、地質学的に古いベネズエラ石油から得られる生成物は、特にナフテン類(シクロアルカン類)に富んでいる。反対に、地質学的に若い北海油は、ナフテン類に乏しく、主に非環式化合物を含んでいる。
【0056】
ナフテンに富んだ鉱油は、世界の選ばれた地域でのみ産する(ベネズエラ、サウジアラビア、ロシア)。それらは、得るのが困難であるため高価である。ナフテンに乏しい鉱油は、得るのがより容易であり、それどころか価値のあるものとして分類される。低ナフテンの鉱油の欠点は、これらの油またはこれらの油を有する混合物が、とりわけエマルジョンに使用される微晶蝋と相まってエマルジョンを脱安定化し、それにより重度の油分離が生ずることである。
【0057】
ナフテン類または脂環式の炭化水素は、環状の炭化水素である。原油のナフテン含有率は、一般に5%であり、ロシアのオイルの場合にはそれはしばしばそれを上回り、かつアメリカのオイルの場合にはそれを下回る。ナフテン類は、分子構造中でパラフィンよりも高い結合張力を有するため、より高い発熱量を有する。
【0058】
シクロアルカン類(シクロパラフィン類)は、一般式Cn2n(n=3、4、5、…)の飽和の環状炭化水素であり、その名称は、相応のアルカンの名称と接頭語シクロ−とから形成される。石油中に存在する、シクロアルカン類、とりわけシクロペンタンおよびシクロヘキサンは、ナフテン類とも呼ばれる。好ましくは、ナフテン含有の医療用ホワイト油は、本発明の調製物中で使用される。
【0059】
成分(iv)は、通常は、本発明の調製物中に、少なくとも約5質量%の、例えば少なくとも約6質量%の、少なくとも約7質量%の、または少なくとも約8質量%の濃度で存在する。更に、成分(iii)と(iv)との全濃度は、しばしば、該調製物の全質量に対して、少なくとも約20質量%の、例えば少なくとも約22質量%の、または少なくとも約25質量%の濃度であるが、通常は、約60質量%以下の、例えば約50質量%以下の、約40質量%以下の、または約35質量%以下の濃度である。成分(iii):成分(iv)の質量比は、好ましくは約3:1〜約1:1、例えば約1.5:1〜約2.5:1である。
【0060】
多くの場合において、成分(iii)と(iv)の組み合わせた濃度が少なくとも約20質量%である場合にのみ、長期持続性で知覚できる感覚的に魅力的な被膜が皮膚上で得られる。約60質量%を上回る全濃度では、前記調製物は、しばしばもはや簡単には拡がることができず、クリーム状となる。成分(iii)と(iv)の全濃度が高くなると、同様に稠性および/または固体性も高くなるが、これは個々の調製物においては望ましいことがある。
【0061】
これに関して、成分(iii)と(iv)の混合物が、時としてまた、"微晶蝋"、"cera microcristallina"または"ワセリン"(現在はCheseBorough Pondsの登録商標名)とも呼ばれることに留意する。しかしながら、本願明細書と特許請求の範囲で使用されるときに、"微晶蝋"という用語は、もっぱら成分(iii)のみを示し、すなわちは成分(iv)を含まない。
【0062】
本発明の調製物における、微晶蝋、すなわち成分(iii)の比較的高い濃度のため、非極性にすぎない液体ないし中程度の極性の液体(例えばグリセロールおよび脂肪酸のエステル)は、存在するのであれば、該調製物(成分(iv)に加えて)中に存在することが好ましい。さもなくば、(慣用の)乳化剤が本質的に存在しないため、安定性の達成はより困難である。任意の割合で、シリコーン油が、好ましくは本発明の調製物中に存在する。シリコーン油が存在する場合、その濃度は、通常は、約1質量%以下、例えば約0.5質量%以下、または約0.1質量%以下である。
【0063】
本発明の開示の文脈内で、表現"脂質"は、脂肪、油、蝋などについての総称として使用される。それは、当業者によく知られている。用語"油相"と"液相"も同義で用いられる。
【0064】
油と脂肪とは、とりわけその極性の点で異なる。水に対する界面張力は、油または油相の極性指数の尺度として採用することが提案される。この場合に、該当する油相の極性が大きくなるほど、この油相と水との間の界面張力は低くなる。本発明によれば、前記界面張力は、所定の油成分の極性の1つの可能性のある尺度と見なされる。
【0065】
界面張力は、2つの相間の界面に位置する想像線1メートルに作用する力である。この界面張力に関する物理単位は、古典的には力/長さの関係に従って計算され、通常はmN/m(ミリニュートン/メートル)で示される。それが正の符号を有するのは、界面をより小さくしようとする場合である。逆の場合には、それは負の符号を有する。
【0066】
本発明による調製物は、シャワー中またはバスタブ中でのケアの適用をはじめて可能にするが、前記調製物は、濡れていないまたは湿っていない皮膚上で好ましく適用することもできる。
【0067】
本発明による調製物は、好ましくは、水中での溶解度が20℃で0.75%を上回る保存剤だけを用いて配合される。乳化剤が本質的に不在であるため、さもなくば、不安定化および晶出の結果をまねくことがある。好ましくは、前記の1種以上の保存剤は、少なくともフェノキシエタノール(20℃での水中の溶解度は約2.4質量%である)を含み、好ましくは前記保存剤は、メチルイソチアゾリノンおよび/またはメチルパラベンなどのパラベン類を含まない。
【0068】
本発明による調製物は、好ましくは、慣用のポリアクリル酸含有調製物と異なる様式で製造される。最近の実施は、"ダスト状の"ポリアクリル酸を脂質中に予備分散させ、次いでそれを水相中に導入することである。本発明による調製物の場合には、ポリアクリル酸ポリマーは水中に分散される。それというのも、殆ど感じ取れない残留物が存在して皮膚上で知覚されうるからである。この製造様式の結果として、ポリアクリル酸は、脂質で濡れた場合よりも一層"活性化"されることになる。
【0069】
本発明による調製物は、更に、シェービング成果を向上させるためにプレシェービング製品として使用することもできる。長期持続型の脂質/ポリマー被膜の結果として、かみそりの刃は滑りやすく、より深部にある毛を捉えることもできる。
【0070】
本発明による調製物は、好ましくはまた界面活性剤を本質的に含まない。換言すると、1種以上の界面活性剤は、好ましくは、存在するのであれば、表面張力を顕著に低下させない濃度で存在する。通常は、本発明の調製物中の界面活性剤の全濃度は、存在するのであれば、該調製物の全質量に対して、約0.02質量%以下、例えば0.01質量%以下、または約0.001質量%以下である。
【0071】
界面活性剤は、1種の液体の表面張力または2相間の界面張力を低下させ、かつ分散液の形成を可能にするまたは支持する物質である。界面活性剤は、互いに事実上混和性でない2種の液体、例えば油と水などの液体を分散させることを可能にする。
【0072】
更に、界面活性剤は、水中に非極性有機物質を溶解させることができる両親媒性物質として説明される。少なくとも1つの親水性分子部分と1つの疎水性分子部分とを有するその特定の分子構造の結果として、それらは、水の表面張力の低下と、皮膚の湿潤と、汚れ除去および汚れ溶解の促進と、リンスオフの容易さと、所望であれば起泡制御とを提供する。
【0073】
界面活性剤分子の親水性部分は、大抵は極性の官能基、例えば−COO-、−OSO32-、−SO3-であり、一方で疎水性部分は、一般に非極性の炭化水素基である。界面活性剤は、一般に親水性分子部分の種類と電荷に従って分類される。この関連で、4つのグループに分けることができる:
・ アニオン性界面活性剤、
・ カチオン性界面活性剤、
・ 両性界面活性剤、および
・ 非イオン性界面活性剤。
【0074】
アニオン性界面活性剤は、一般に、官能基として、カルボキシレート基、スルフェート基またはスルホネート基を有する。水溶液中で、それらは酸性媒体または中性媒体において負に荷電した有機イオンを形成する。カチオン性界面活性剤は、ほとんどもっぱら、第四級アンモニウム基の存在を特徴とする。水溶液中で、それらは酸性媒体または中性媒体において正に荷電した有機イオンを形成する。両性界面活性剤は、アニオン性基とカチオン性基の両方を含むため、水溶液中でpHに応じてアニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤のように振る舞う。強酸性媒体中では、前記界面活性剤は正電荷を有し、アルカリ性媒体中では、負電荷を有する。
【0075】
更に、デタージェント物質(detergent substance)、例えばカチオン性界面活性剤、特に第四級アンモニウム化合物などの物質は公知である。デタージェント物質は、洗濯洗剤、皿洗い洗剤、シャンプー、シャワージェルにおいて使用され、洗浄性能または清浄性能に影響を及ぼす配合物の一部を指す。デタージェント物質は、洗濯物または身体に付着する脂肪および汚れ粒子の水中での"可溶性"を高める。前記物質は、天然由来または合成由来であってよい。前記物質は、その電荷の性質に応じて、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性に分けられる。
【0076】
乳化剤は、2種の不混和性の液体(例えば水中の油)を合してエマルジョンを得ることを可能にする。その両親媒性のため、乳化剤は、その脂肪可溶部分により油中に入り込む。親水性部分の結果として、撹拌によりここで形成される油滴は、水性環境で分散させることができる。乳化剤は、主としてデタージェントを有さず、表面張力低下特性を有さない。
【0077】
本発明による好ましい調製物は、該調製物の全質量に対して、
− 約14〜約18質量%の微晶蝋と、
− 約6〜約10質量%の医療用ホワイト油(白色鉱油)と、
− 約0.01〜約0.03質量%の、遊離水の吸収後に知覚特性を向上させる(少なくとも)1種のポリアクリル酸ポリマーA(例えばCarbopol(登録商標)981)と、
− 約0.07〜約0.12質量%の、乳化作用を有する(少なくとも)1種のポリアクリル酸ポリマーB(例えばPemulen(登録商標)TR-1および/またはPemulen(登録商標)TR-2)と、
− 約0.07〜約0.12質量%の、知覚特性を向上させ、かつ該調製物の安定性を、特に高められた温度で保証する(少なくとも)1種のポリアクリル酸ポリマーC(例えばCarbopol(登録商標)3128)と、
− 約0.7〜約1.2質量%のミリスチルアルコールと、
− 約1.5〜約2.5質量%のステアリルアルコールと、
− 約4.5〜約5.5質量%のセテアリルアルコールと、
を含む調製物を含む。
【0078】
ポリアクリル酸ポリマーCおよび/またはミリスチルアルコールは、任意に前記調製物に存在しなくてよい。この場合に、ポリアクリル酸ポリマーBの濃度は、約0.15質量%までであってよく、かつ/またはステアリルアルコールの濃度は、約3.5質量%までであってよい。
【0079】
本発明による調製物は、化粧用助剤と、化粧用調製物において慣用される更なる有効成分、例えば染料および着色顔料、保湿物質および/または湿潤物質(例えばグリセロール、尿素およびある特定のアミノ酸)、充填剤(例えばオクテニルコハク酸デンプンアルミニウム)、整泡剤、UVフィルタ物質、電解質(例えば海塩)、フレグランスおよび有機溶剤などの成分を含んでもよいが、但し、それらは前記調製物の所望の特性に悪影響を及ぼさないものとする。
【0080】
本発明の調製物は、更に、皮膚に対して好都合な影響を及ぼす1種以上の有効成分を含んでよい。本発明で使用するための有効成分は、好ましくは、皮膚保湿効果を示し、かつ/または皮膚のバリヤ機能を強化し、かつ/または結合組織の再構築を促進し、かつ/または乾燥肌の機能を支持し、かつ/または刺激された皮膚(一般に敏感肌と紫外光もしくは化学薬品などの病毒によって刺激された皮膚の両方)に好ましい影響を及ぼし、かつ/または皺を減らし、かつ/または老化肌などの美観的に魅力のない皮膚を保護し、かつ/または乾燥肌もしくは荒れ肌の見た目を改善させ、かつ/または色素沈着過度、低色素沈着、色素沈着不足および/または老人斑を減らし、かつ/または痒みおよび/または末梢血管拡張症もしくはクペローシス(cuperosis)などの可視的血管拡張を減らす。
【0081】
本発明の調製物中に含まれうる有効成分の制限されない特定の例は、生体キノン類、例えばユビキノンQ10、イソフラボンおよびイソフラボノイド類ならびにイソフラボノイド含有の植物抽出物、例えばダイズ抽出物およびクローバー抽出物、フラボノイド類、ゲニステイン、アルクチイン、カルジオリピン、不凍化タンパク質、ホップ抽出物、ホップ麦芽抽出物、アスコルビン酸およびそれらの誘導体、トコフェロールおよびそのエステル類、ビオチン、クレアチン、クレアチニン、プロピオン酸、緑茶抽出物および緑茶溶液、白茶抽出物または白茶溶液、セリコサイド(sericoside)類、甘草根の様々な抽出物、リコカルコンA、シリマリン、シリフォス、デキサパンテノール(dexpanthenol)、エタノール、プロスタグランジン代謝の阻害剤および特にシクロオキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン代謝の阻害剤および特に5−リポキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤タンパク質の阻害剤、FLAP、葉酸、フィトエン、フラボン配糖体、例えばα−グルコシルルチン、カルニチン、ポリドカノール、カロテノイド類、タウリン、ジヒドロキシアセトン、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸、レチノールおよびそのエステル、ビタミンEおよびその誘導体、長鎖ヒアルロン酸(例えば100万から300万ダルトンの平均分子量を有するもの)ならびに短鎖ヒアルロン酸(例えば5000〜100万ダルトンの平均分子量を有するもの)を含む。
【0082】
前記の1種以上の有効成分は、存在するのであれば、通常は、該調製物の全質量に対して、約0.1〜約30質量%の全体濃度で存在する。
【0083】
驚くべきことに、本発明の調製物は、そこに含まれるある特定の有効成分および他の任意の成分の利用性を高めうることが判明した。換言すると、より少量の成分で同じ効果が達成される。これは消費者にとって大きな利点である。それというのも、香油などの多くの任意の成分は、アレルギー反応などの引き金となりうる成分を含有するからである。このように、前記成分の濃度をそれらの効果を下げることなく低下させることは、また、調製物の穏やかさと許容性の点で好ましい。
【0084】
本発明の調製物の粘度は、通常は、約1000mPas以上、例えば約2000mPas以上、約3000mPas以上、または約3500mPas以上であるが、通常は、約10000mPas以下、例えば約8000mPas以下、約7000mPas以下、約6000mPas以下、または約5500mPas以下であり、前記粘度は、25℃で、調製物の調製の24時間後に回転レオメータ、例えばドイツのproRheo GmbH社の装置Rheomat R 123(スピンドル番号1)によって測定される。
【0085】
本発明の調製物は、特に好ましくは、濡れた皮膚または湿った皮膚上で((ウェット)シェービングのためにも)使用されうる。特に、前記調製物は、シャワー中にまたは入浴中に、かつ皮膚/身体の洗浄の後に使用されうる。前記調製物の適用後に、水ですすいで、例えばタオルで皮膚を乾かすことだけが、該調製物のスキンケア効果を得るために必要なことである。前記調製物の一部は、皮膚にクリームを塗るのと同様に皮膚上に残る。換言すると、前記調製物は、髪の毛の洗浄後のヘアーコンディショナーの使用と同様に香膏として使用されうる。
【0086】
本発明の調製物は、化粧用組成物または皮膚用組成物に適した任意の容器中に準備することができる。例えば、前記組成物は、(プラスチック製)ボトル、例えば逆さまにして貯蔵されるべきボトル中に入れておくことができる。
【0087】
以下の実施例は、本発明による調製物を概説するものである。数値は、該調製物の全質量に対する質量パーセントを表す。
【0088】
実施例
【表1】
【0089】
比較試験
以下の表に示される本発明による調製物Aは、訓練を受けた被験者(60)によって知覚的に、乳化剤を含む調製物Bおよび1種だけの脂肪アルコールと1種だけのポリアクリル酸ポリマーを含む調製物Cと比較された。
【0090】
【表2】
【0091】
結果:
【表3】
【0092】
より高い値が良い値である(0〜7の段階)。
【0093】
それらの結果は、驚くべきことに、1種だけの脂肪アルコールを有する調製物は、あまり容易に広げることができず、更に調製物(C)は、シャワーで洗い落とした後に快い感じがせず、乾燥した皮膚上で張った感覚が残る(調製物Aと調製物Cの比較)ことを示している。
【0094】
同様に、乳化剤を有する調製物は、あまり簡単には洗い落とすことができず、シャワーで洗い落とした後の皮膚の感覚はより不快であり、かつ皮膚はつっぱり感を示す(調製物Aと調製物Bの比較)ことが判明した。
【0095】
上記の実施例は、単に説明を目的とするものであって、本発明をなんら制限するものと解釈されるものではない。本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されているが、一方で、本願で使用されている用語は、制限のための用語というよりはむしろ説明および概説のための用語であると理解される。本願に示され、かつ補正された特許請求の範囲内で、本発明のその態様における範囲および趣旨から逸脱することなく変更が行われてよい。本発明は特定の手段、材料および実施形態を参照して本願で説明されているが、本発明は、本願に開示される特定のものに制限されることを意図するものではなく、むしろ本発明は、特許請求の範囲内の全ての機能的に等価な構造、方法および使用にまでおよぶものである。
【0096】
これと同時に出願された"濡れた皮膚上での香料の固定"を発明の名称とする同時係属出願(代理人整理番号:3321-P50023)の全開示内容は、参照をもって明確に開示されたものとする。