特許第6133319号(P6133319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133319気相からの堆積によって、かつ液状のシロキサン供給材料を霧化することによる合成石英ガラスの製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133319
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】気相からの堆積によって、かつ液状のシロキサン供給材料を霧化することによる合成石英ガラスの製造法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/14 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   C03B19/14 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-542831(P2014-542831)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-500785(P2015-500785A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012073345
(87)【国際公開番号】WO2013076195
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】102011119339.5
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/569,163
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン レーパー
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−156947(JP,A)
【文献】 特開平08−239226(JP,A)
【文献】 特表2005−511894(JP,A)
【文献】 特開2006−299335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/00− 8/04
19/14
20/00
37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(A)〜(E)の工程段階:
(A)70質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、及び付加的な成分D3(ヘキサメチルシクロトリシロキサン)及び/又は付加的な成分D5(デカメチルシクロペンタシロキサン)を有する液状のSiO2供給材料(105)を準備する工程であって、D3及びD5の質量分率の合計が、液状のSiO2供給材料(105)の全質量の0.5質量%から3質量%の範囲である工程、
(B)該液状のSiO2供給材料(105)を気化させてガス状のSiO2供給蒸気(107)にする工程、
(C)該SiO2供給蒸気(107)を変換してSiO2粒子にする工程、
(D)該SiO2粒子を、300mmを上回る外径を有するSiO2スート体(200)を形成させながら堆積面(160)に堆積させる工程、
(E)該SiO2スート体(200)を、合成石英ガラスを形成させながらガラス化する工程を含む、合成石英ガラスの製造法において、
記気化が、
・ 前記SiO2供給材料(105)を加熱する工程、
前記加熱されたSiO2供給材料(105)を、注入段階中に、前記SiO2供給材料(105)を霧化して微細な液滴にする、膨張チャンバー(125)中に注入する工程であって、該液滴は5μm未満の平均直径を有し、該SiO2供給材料(105)の少なくとも第一の部分を1.8barから5barの間の圧力降下により気化させる工程
を含むことを特徴とする製造法。
【請求項2】
前記SiO2供給材料(105)を霧化して微細な液滴にし、ここで、該液滴は2μm未満の平均直径を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液状のSiO2供給材料(105)が、95質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記液状のSiO2供給材料(105)が、99.5質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記気化が、以下の工程:
・ 前記SiO2供給材料(105)を加熱する工程、
・ 加熱された該SiO2供給材料(105)を膨張チャンバー(125)内に導入する工程、
・ 該SiO2供給材料(105)を、加熱された希釈剤(152)と混合し、そうして該SiO2供給材料(105)の少なくとも第二の部分を、露点を下げることにより気化させる工程
を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記SiO2供給材料(105)を、圧力降下及び/又は分圧を下げることにより、少なくとも99.995質量%で、前記SiO2供給蒸気(107)に変えることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記SiO2供給材料(105)を、圧力降下及び/又は分圧を下げることにより、少なくとも99.9995質量%で、前記SiO2供給蒸気(107)に変えることを特徴とする、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下(A)〜(E)の工程段階:
(A)70質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4を有する液状のSiO2供給材料を準備する工程、
(B)該液状のSiO2供給材料(105)を気化させてガス状のSiO2供給蒸気(107)にする工程、
(C)該SiO2供給蒸気(107)を変換してSiO2粒子にする工程、
(D)該SiO2粒子を、SiO2スート体(200)を形成させながら堆積面(160)に堆積させる工程、
(E)該SiO2スート体を、合成石英ガラスを形成させながらガラス化する工程、
を含む、該合成石英ガラスの製造法に関する。
【0002】
先行技術
商業用途の合成石英ガラスの製造のために、塩素不含の供給材料が試みられている。例として、モノシラン、アルコキシシラン及びシロキサンが挙げられる。塩素不含の供給材料の特に興味深い一群を成しているのが、例えばEP463045A1から公知であるポリアルキルシロキサン(“シロキサン”とも略記される)である。シロキサンの物質群は、開鎖ポリアルキルシロキサンと閉鎖ポリアルキルシロキサンとに分類されることができる。ポリアルキルシロキサンは、一般的な実験式Sipp(R)2pを有し、ここで、Pは≧2の整数である。基“R”はアルキル基であり、最も簡単なケースではメチル基である。
【0003】
ポリアルキルシロキサンは、質量分率でケイ素の特に高い割合によって特徴付けられ、これにより、合成石英ガラスの製造において該ポリアルキルシロキサンは経済的に用いられる。大規模工業的に高い純度で利用できるがゆえに、現在ではオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が有利には用いられる。この物質は、General Electric ゼネラルエレクトリック社により導入された表記法に従って“D4”とも呼ばれ、ここで、“D”は[(CH32Si]−O−の基を表している。
【0004】
技術課題の設定
ケイ素含有の供給材料は、例えば堆積用バーナーといった負荷的な装置(Verbraucher)に液体の形で供給されることができる。しかし、通例、液状の供給材料は、蒸発器によってガス状又は蒸気状の相に変えられ、そして負荷的な装置に連続的なガス流が供給される。公知の蒸発システムの場合、気化されるべき液体が高温表面と接触させられる。高温表面は、殊に有機材料が供給される場合、例えば分解又は重合といった予測不能な変化をもたらしかねず、そのため、蒸気の組成がどの程度なお液体の組成に相当しているのかを容易には突き止めることができない。それにより、粒子形成プロセスにおける欠損及び不均質なスート堆積につながりかねないある特定の変動性及び非再現性がプロセス操作において生じる。
【0005】
本発明の課題は、上記欠点を回避する、高い材料均質性を有するSiO2スート体の製造法を成し遂げることである。
【0006】
本発明の概要
この課題は、冒頭に挙げた方法から出発して、本発明により、加熱されたSiO2供給材料の蒸発が、該SiO2供給材料を微細な液滴−ここで、該液滴は5μm未満の平均直径、好ましくは2μm未満の平均直径を有する−へと霧化する、膨張チャンバーにおける注入段階を包含することによって解決される。
【0007】
可能な限り純粋かつ定義された唯一のケイ素化合物(例えばSiCl4)から成る供給材料が用いられる公知の方法とは異なり、本発明により、オクタメチルシクロテトラシロキサン(ここでもD4と呼ぶ)を主成分として含有するSiO2供給材料を提案する。
【0008】
本発明による方法に固有の特徴は、SiO2供給材料の蒸発が、特に均一な熱の導入の点で際立っていることである。先行技術においては、液体を高温面全体に流すことで、結果的に熱の導入及び蒸発を達成することが知られている。しかしながら、このような手法は、SiO2供給材料がポリアルキルシロキサンD4をベースとする場合、ゲル形成が生じ、これにより蒸発器及び/又は高温面が塞がる可能性がある。この欠点を克服するために、本発明によれば、SiO2供給材料を膨張チャンバー内で気化させることを予定している。ここで、SiO2供給材料は、供給管を通って膨張チャンバー内に流れる。公知の方法に反して、本発明による方法は、噴霧ノズルを用いることを特徴とする。これは、液状のSiO2供給材料をマイクロメートルの大きさの液体球へと霧化することを可能にする。このような液体球−液滴とも呼ばれる−は、体積と比較して大きい面積を有する。球形によってさらに、液体中に均一に熱を導入することが保証される。したがって、D4分子を有する液滴は均一に加熱され、ポリアルキルシロキサンの熱分離が妨げられる。それによって、蒸発プロセスにおいて発生するゲルの量は明らかに減らされ、結果としてスート体−ひいては石英ガラス−のより均質な密度分布−が得られることになる。
【0009】
本発明による利点を達成するために、噴霧ヘッドは、液状のSiO2供給材料が、5マイクロメートル(これ以降“μm”とも)未満の平均直径を有する微細な液滴へと霧化されるようにある必要がある。多数の測定に従って、スート材料のゲル形成若しくは不均質部分は、液滴が0.5μmから2μmの間の平均直径を有する場合に特に大きく減少したことを突き止めることができた。一連の測定から、特に有利なのが0.5μmから20nmの間(d50値)であることがわかった。ここで、メジアン径又はd50値は、平均粒径の尺度として最も重要なパラメーターである。d50値は、液滴の50%がd50より細かく、かつ残りの50%がd50より粗い値を表している。そのうえ、平均粒径の変動幅は可能な限り低くあるべきである。特に有利な結果は、液滴の大きさが2δの分散において+1μm及び−0.35μmだけ変動した場合に達成することができた。この僅かな変動幅により、微細な液滴の非常に均一な霧が膨張チャンバーの内部空間に吹き付けられることになった。SiO2供給材料より成るこれらの均一な液滴は、次いで膨張チャンバーの内壁の放熱及び/又は加熱されたキャリアーガスからの熱伝達によって気相に変えられることができる。本発明による方法の目的はまた、SiO2供給材料の液滴が膨張チャンバーの内壁に衝突し、そこでようやく蒸発することを妨げることである。むしろ蒸発は、もっぱら膨張チャンバーの自由空間内で行われるべきである。たしかに、膨張チャンバーの内壁は加熱されているかもしれず、また、放熱はSiO2供給材料の液滴の蒸発に寄与するかもしれないが、しかし、加熱された−金属性の−内壁とSiO2供給材料との直接的な接触が起こることは防止されなければならない。それというのも、説明した通り、SiO2供給材料と膨張チャンバーの加熱された内壁との接触が、本発明により妨げられるべきゲル形成を引き起こすからである。
【0010】
本発明によれば、ポリアルキルシロキサンとの用語は、線状のみならず環状の分子構造も包含する。しかしながら、SiO2供給材料が主成分としてD4を有する場合に有利である。D3、D4、D5との表記は、ゼネラルエレクトリック社により導入された、“D”が[(CH32Si]−O−の基を表している表記法の1つに由来している。したがって、D3はヘキサメチルシクロトリシロキサンを、D4はオクタメチルシクロテトラシロキサン、D5はデカメチルシクロペンタシロキサンを、かつD6はドデカメチルシクロヘキサシロキサンを表している。有利な変形例においては、SiO2供給材料の主成分はD4である。そのため、D4の割合は、SiO2供給材料の少なくとも70質量%、殊に少なくとも80質量%、有利には少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも94質量%である。
【0011】
本発明によれば、“露点”との用語は、凝縮及び蒸発する液体の平衡状態が生じる温度である。
【0012】
本発明によれば、“希釈剤”と“キャリアーガス”との用語は同じ意味で使用する。
【0013】
本発明によれば、70質量%を上回るポリアルキルシロキサンのオクタメチルシクロテトラシロキサンD4とその線状同族体とから構成されている液状のSiO2供給材料が使用される。付加的に、液状のSiO2供給材料は、D3、D5、D6、D7及びD8といった他のポリアルキルシクロシロキサンの付加的な成分をさらに有してよい。したがって、“付加的な成分”との用語に括られる供給材料の付加的な成分は、D4の相対分子量(約297g/モル)とは上方にも下方にも異なっている分子量と、D4の沸点(約175℃)とは異なる沸点とを有している。付加的な成分を可能性として有する液状のSiO2供給材料は、反応ゾーンにガス状で供給され、その際に酸化及び/又は加水分解及び/又は熱分解によってSiO2へと分解される。
【0014】
ここに開示した方法により、非常に大量のSiO2供給材料を均一かつ迅速に気化させることも可能である。したがって、300mmを上回る外径を有する大きな体積のシリンダー状スート体を作り上げるために必要とされる蒸発器の数を減らすことができる。本発明によれば、蒸発器は、1時間当たり15〜25kgのポリシロキサンD4の蒸発速度を有する。本発明による方法によってのみ、大量のSiO2供給材料を気相に変えることが可能である。公知の蒸発技法の利用は、強く加熱された大きな金属面を蒸発のために利用することを前提とする。しかし、SiO2供給材料と、強く加熱された金属面との接触に従って、D4の重合及び/又は熱分解が生じると考えられる。これらの欠点は、そのとき蒸発器の閉塞及び/又は性能の悪化、並びにスート体若しくは石英ガラス中の不均質部分を生む可能性がある。SiO2供給材料をその液状の形で霧化して僅かな直径を有する小さい液滴にすることによってのみ、蒸発器の効果及び/又はスート体の不均質部分に不利に作用しかねないゲル又はそれ以外の廃産物が発生することなく、大量のSiO2供給材料を均一に加熱することが可能になる。
【0015】
SiO2供給材料の液滴からSiO2供給蒸気への均一な変換を達成するために、好ましくは、蒸発器の膨張チャンバーを通り抜けるキャリアーガスが利用される。好ましくは、この場合、窒素又はアルゴンといった不活性ガスが8から20m3/hの間の量で利用される。このキャリアーガスは、2から8barの間の最大一次圧を有し、その結果、一方では、膨張チャンバーを素早く十分に通り抜けることができ、他方で、噴霧ノズルを損傷するには至らない。好ましくは、キャリアーガスは予熱されており、かつ130℃から180℃の間の範囲の温度を有する。それにより、SiO2供給材料とキャリアーガスとから成る混合物を生成することが可能であり、これも同様に130℃から180℃の間の温度を有し、かつ1.1から2barの圧力で膨張チャンバーから蒸発器の方向に導かれる。蒸発器内部の温度は200℃を超えるべきではなく、それというのも、さもなければD4が重合するかもしれないからである。
【0016】
液滴径の範囲の幅を縮めることは、液体噴流に一様な周期的外乱を与えることによって行うことができる。これは、噴霧ノズルに機械的な振動又は超音波を適用することによって達成することができる。外乱は、噴流に沿って規則的な伝搬波を生み、これが最終的に該噴流をほぼ同形の液滴へと裂開する。本発明によれば、噴霧ヘッドは、液滴径の狭い範囲のみが作り出されるような形態を成しているべきである。
【0017】
製造条件に応じて、スート体は、ある特定の層構造を持ち、ここで、該層は、密度又は化学組成の局所的な変化の領域を表す。本発明による蒸発プロセスを用いた場合、意想外にも高い均質性を有する、殊に層構造が均一かつ目立たない形で現れるSiO2スート体が得られることがわかった。この効果は、液滴径が狭い範囲にある小さい液滴を作製することを本発明による方法の利用によって説明がつく。
【0018】
本発明による方法の更なる好ましい態様は、付加的な成分D3及び/又は付加的な成分D5が、液状のSiO2供給材料の全質量の最大0.1質量%から2質量%の間にあり、殊に質量分率mD3+mD5の合計が、最大で0.5質量%から3質量%の範囲、有利には最大で0.2質量%から2質量%の範囲にあることを特徴とする。ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)及びその線状同族体は、D4と比べてそれらの分子量が大きいことから、早くも少ない濃度で反応ゾーンと粒子形成プロセスの目立った変化を引き起こすので、D6の質量分率は、好ましくは100質量ppmを上回らない。付加的な成分D3及び/又はD5の量が少ないことによって温度と液滴径の範囲をより良好に最適化することができる。この結果、特に均質なSiO2スート体が生じる。
【0019】
公知の蒸発システムの場合、気化されるべき液体が高温表面と接触させられる。高温表面は、殊に有機材料が供給される場合、例えば分解又は重合といった予測不能な変化をもたらしかねず、そのため蒸気の組成がどの程度なお液体の組成に相当しているのかを容易には突き止めることができない。それにより、粒子形成プロセスにおける欠損及び不均質なスート堆積につながりかねないある特定の変動性及び非再現性がプロセス操作において生じる。
【0020】
これらの欠点を克服するために、本発明による蒸発プロセスの更なる好ましい1つの態様であって、
蒸発が、以下の工程:
・ SiO2供給材料を加熱する工程、
・ 加熱された該SiO2供給材料を膨張チャンバー内に導入し、そうして該SiO2供給材料の少なくとも第一の部分及び/又は該SiO2供給材料の液滴を圧力降下により気化させる工程
を含むことを特徴とするプロセスがもたらされる。
【0021】
この態様によれば、SiO2供給材料の加熱が行われる。この場合、150℃から200℃の間のSiO2供給材料の温度が所望されている。これより高い温度だと、場合によっては重合を引き起こす可能性がある。好ましいと判明したのは、SiO2供給材料を、更なる液体、例えば油によって加熱する液/液−加熱システムの使用である。その際、液体から液体への熱交換によって、例えば電熱線の場合がそれに該当するように、単独の高温領域が発生することなく、SiO2供給材料の均一な一定の加熱が行われる。この種の単独の加熱点は、回避すべき重合反応にすぐにつながる。SiO2供給材料の加熱後、この加熱された材料は膨張チャンバー内に霧化される。膨張チャンバー内部では、SiO2供給材料及び/又はSiO2供給材料の液滴が気相に変換される。SiO2供給材料にとって特に優しいのは、この蒸発が圧力降下により行われる場合であることが判明した。そのために、例えば、SiO2供給材料は超臨界流体として加熱してよい。加熱装置内部での相応する圧力によってのみ、SiO2供給材料の沸騰が防がれる。膨張チャンバー内部での膨張に際して、SiO2供給材料及び/又はSiO2供給材料の液滴は、気相に変わるように減圧する。好ましいと判明したのは、1.8barから5barの間の圧力降下である。
【0022】
加圧下にある加熱された供給材料は、供給路を通して膨張チャンバー内に導入され、次いで相応する噴霧ヘッドを介して霧状にされかつ/又は霧化される。噴霧ノズルを介して上述した圧力降下を直接的に行ってもよく、そうしてSiO2供給材料をSiO2供給蒸気へと素早く、それでいて均一に変えられるようになる。この工程段階によれば、SiO2供給材料を加圧下で噴霧ノズルに導入することが予定されている。次いで噴霧ノズルでは、液状のSiO2供給材料が霧化されてSiO2粒子にされる。引き続き、それから−同様に依然として加圧下にある−これらの液滴は膨張チャンバー内に入る。そこでは、液滴の実際の蒸発をもたらす実際の圧力降下が生じる。好ましくは、膨張チャンバー自体も、150℃から200℃の間の範囲の温度に加熱される。たしかに、膨張チャンバーは、蒸発を考慮していないが、利用される熱(膨張チャンバーの壁から膨張チャンバーの内部にも放射する)は、圧力降下による蒸発を補う。
【0023】
液滴の粒度範囲は、多数のパラメーターに依存する。液体のレオロジー特性及び噴霧ノズルの幾何学的形状の他に、これは特に、本質的に差圧により決定される噴霧ノズルからの液体の流出速度である。上記の差圧範囲内で、流出する液体噴流が、乱流により狭い液滴径分布を有する微細な液滴に砕解する。
【0024】
本発明による蒸発プロセスの更なる好ましい1つの態様であって、
蒸発が、以下の工程:
・ SiO2供給材料を加熱する工程、
・ 加熱された該SiO2供給材料を膨張チャンバー内に導入する工程、
・ 該SiO2供給材料及び/又は該SiO2供給材料の液滴を、加熱された希釈剤と混ぜ、そうして該SiO2供給材料の少なくとも第二の部分を、露点を下げることにより気化させる工程
を含むことを特徴とするプロセスがもたらされる。
【0025】
この実施の変形例によれば、SiO2供給材料及び/又は該SiO2供給材料の液滴の蒸発のために希釈剤が用いられる。好ましくは、希釈剤は、膨張チャンバーを通り抜けるキャリアーガスである。そのため、以下では希釈ガスとの用語とキャリアーガスとの用語は同じ意味として使う。
【0026】
この実施の変形例によれば、同様にSiO2供給材料の加熱が行われる。すでに説明した通り、加熱が熱交換器を用いて行われ、かつ120℃〜200℃の範囲の温度にSiO2供給材料が加熱される場合に好ましいと判明した。SiO2供給材料は、相応する導管を通して膨張チャンバー内に導入され、そこで噴霧ノズルを介して霧化される。SiO2供給材料からSiO2供給蒸気への可能な限り均一な移行を達成するために、希釈剤、例えば窒素は、SiO2供給材料の噴射方向とは反応向きで膨張チャンバー内に導入してよい。選択的に、希釈剤は、SiO2供給材料の液滴の噴射方向で膨張チャンバー内に導きかつ/又はSiO2供給材料の噴射方向で超音波噴霧器へと導いてよい。液状のSiO2供給材料の第二の部分若しくはSiO2供給材料の液滴は、膨張チャンバー内に入る際に蒸発し、それというのも、チャンバー内での液状のSiO2供給材料の分圧が低減されており、そのため該供給材料の露点も同様に下がるからである。この方法固有の特徴は、分圧が下がることによって、液状のSiO2供給材料が気相に変わる温度も下げられる点にある。供給される加熱されたキャリアーガスの量に応じて、SiO2供給材料の露点は30℃までの値だけ低下する。相応して、SiO2供給材料をフィードにおいて非常に強く加熱する必要はない。キャリアーガス若しくは希釈剤として、窒素の他にアルゴン又はヘリウムも有効であることがわかった。これらは、ポリアルキルシロキサンに対して不活性に挙動するガスであり、そのため、液体とキャリアーガスとの、殊に加圧下及び高温下での酸化反応、重合反応又は分解反応、ひいては供給材料の組成の再現可能でない変化が回避されることになる。
【0027】
圧力降下による蒸発の上記の実施の変形例の場合と同じように、分圧の低下による蒸発も、SiO2供給材料の蒸発が金属表面によっては行われないことを可能にする。この金属表面は、均一ではない温度分布を頻繁に示し、そのため特に高温の領域で重合作用が部分的に起こる可能性がある。これを防止するために、本発明によれば、液体が膨張チャンバーの内壁に到達してそこで蒸発することがないように、分圧及び/又は圧力降下による蒸発をSiO2供給材料が膨張チャンバー内に入ったら行うことを予定している。
【0028】
本発明による方法の更なる実施の変形例は、SiO2供給材料を、圧力降下及び又は分圧の低下により、少なくとも99.995質量%で、特に有利には99.9995質量%でSiO2供給蒸気に変えることを特徴とする。この実施形態の場合、3つの変形例がもたらされる:
1.液状のSiO2供給材料の液滴から気相への移行を、膨張チャンバー内に入る際の圧力降下によってのみ行うか、又は
2.液状のSiO2供給材料の液滴から気相への移行を、露点を下げることにより行うか、又は
3.液状のSiO2供給材料の液滴から気相への移行を、圧力降下によってと、露点を下げることにより行う。
【0029】
完全な変換を達成するために、液状SiO2供給材料が非常に微細な液滴へと霧化される場合に好ましいと判明した。それらの平均直径は、この場合、5μm未満、好ましくは2μm未満、特に有利には1μm未満であることが望ましい。このようにして、液状の供給材料は、圧力降下による膨張によって均一に蒸発することができる液滴のクラウドへと変換される。平均直径は、算術平均として出され、つまり、観察された全ての値の合計をその値の数で割った値である。
【0030】
液体から小滴へのこの分割を補うために、超音波の作用によってSiO2供給材料の均一かつ微細な霧化を引き起こす超音波噴霧器を用いることが有用であると判明した。本発明によれば、超音波とは、人間の耳に聞こえる範囲外の周波数を有する音波を表す。これは16kHzから1.6GHzの間の周波数を含む。超音波噴霧器の場合、圧力適用有り若しくは無しで又は加熱有り若しくは無しで液体を霧化してよい。そのため、液体で湿らされた圧電セラミックが高周波交流電圧によって振動させられることができる。これに従って、液体中に超音波が形成され、その最大強度はある特定の液体面に達し、そしていわゆる超音波突起部が発生する。この超音波突起部から、所望の用途に利用することができる小さい液滴又はエアロゾルが分離する。超音波噴霧器の利点は、変わりやすい体積流の均一な霧化、体積流の領域全体にわってほぼ一定の液滴スペクトル及び液滴の僅かな固有速度にあり、それにより噴流を良好に制御することが可能になる。このように、超音波霧化によって再現可能な形で狭い粒径分布を作り出すことができ、これは蒸発の結果としての均一性に良い作用を及ぼす。
【0031】
更なる選択肢として、この本発明による方法の実施の変形例は、液状の供給材料の蒸発が、圧力降下を利用することによっても、分圧の低下によっても行われることを挙げる。この変形例が特に好ましいと判明したが、なぜなら、300mmまでの直径を有する石英ガラスシリンダーの調製のために大量の液状材料が気化されなければならないからである。必要とされる量の材料を優しくかつ均一に液相から気相に変換するために有利であると判明したのは、少なくとも部分成分について過熱されたSiO2供給材料が膨張チャンバー内に導入されて、そこで圧力降下によって及び希釈剤の利用によって該供給材料が気相に変えられる場合である。圧力降下及び露点を下げることによる蒸発のこの組合せにより、液状で蒸発器に導入されたSiO2供給材料の非常に僅かな割合(20ppm未満、有利には10ppm未満、特に有利には5ppm未満)しか蒸発しないことが可能になる。個々の試験においては、蒸発しなかったSiO2供給材料の割合は、それどころか2.5ppm未満に減少させることができた。
【0032】
説明した通り、液状のSiO2供給材料は、個々の気化されるべき量がそれぞれ少なく、かつ大面積を有している場合に、より簡単かつ均一に気相に変えることができる。本発明によれば、この目的はSiO2供給材料の液体が霧化されて微細な液滴にされることによって達成することができる。霧化された液滴は、次いで圧力降下及び/又は加熱された希釈剤/キャリアーガスとの混合を介して気相に変えられることができる。好ましいと判明したのは、微細な液滴と高温キャリアーガスとの接触が、150℃〜200℃の範囲の温度に維持されている膨張チャンバー内で行われる場合である。150℃未満の温度場合、液滴が完全には蒸発せず、そのため液体が反応ゾーンに連行されないことから、粒子形成プロセスにおける不均質部分及びスート体構造における欠陥、例えば気泡が生じるというある一定のリスクが存在する。200℃を上回る温度の場合、非再現可能かつ不所望な反応生成物とのエネルギー的に抑制された反応、殊に分解及び重合反応がさもなければ生じる傾向が高まる。
【0033】
本発明による方法の更なる実施の変形例は、噴霧ノズルにおいて作り出された非常に小さい数マイクロメートルの大きさの液滴を−熱交換器によりまず加熱された−キャリアーガス(希釈ガス)と混合することを特徴とする。この方法は、液状のSiO2供給材料を予熱する必要がないように構成することができる。この変形例の場合、キャリアーガスと液状のSiO2供給材料との混合は、液滴にする実際の霧化前又は噴霧ノズルにおける霧化の間に行われる。
【0034】
本発明による方法の更なる実施の変形例は、SiO2供給材料を膨張チャンバー内に及び/又は噴霧ノズルに導入する際に、SiO2供給材料の組成を濃度検出器によって測定することを特徴とする。供給されたSiO2供給材料及び/又はSiO2供給材料の液滴は、この場合、例えばガスクロマトグラフといった濃度検出器によって分析される。濃度検出器を用いた類似する分析ステーションが、膨張チャンバーの出口に配置されていてもよく、これによりSiO2供給材料の組成を測定することができる。1つ又は両方の検出器は、品質マネジメントシステムの一部であってよく、これは測定した組成をデータ処理システムに伝えることができ、そこで、供給された材料及び蒸気の品質がモニタリングされる。
【0035】
微細な液滴は、液状の出発材料の迅速かつ効果的な−つまり省エネ型の−殊に完全な蒸発を可能にする大面積を提供する。このようにして、殊に分解、重合又は蒸留による組成の変化が実質的に回避され、かつ負荷的な装置に供給されたSiO2供給材料の定義された組成及び再現可能な粒子形成プロセスが保証されるべきである。したがって、ここに開示した方法に従って製造される、光ファイバーの製造のために用いられる合成石英ガラスの使用も特許請求の範囲に同様に記載している。ここに開示した方法は、非常に高い品質の石英ガラスの製造を可能にする。スート体の不均質部分が僅かであることによって、有利には通信ファイバー、光ファイバー用に用いられる、品質的に高価な石英ガラスを調製することができる。
【0036】
ここに開示した方法は、これまで公知の方法と比べて以下の利点を有している:(1)SiO2供給蒸気を均質化して、その結果、スート体を均質化させるという利点;(2)蒸発プロセスを簡略化するという利点。なぜなら、本発明によれば、液状の供給材料をガス状のSiO2供給蒸気に完全に変換することを意図しているからである;及び(3)蒸発プロセス中に希釈ガスを添加することによって蒸発温度を減少させることができ、その結果、供給材料の全てのフラクションを、温度に依存した化学反応なしに気相に変えられるという利点。
【0037】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、下位の請求項及び下記の説明(符号を用いて本発明の1つの実施例を詳細に記載している)から明らかになる。ここで、請求項及び明細書中で述べた特徴は、それぞれ単独でそれ自体が又は任意の組み合わせにおいて、本発明にとって重要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】SiO2スート体を製造するための本発明による方法を実施するための装置を概略的に示す図
図2】本発明による石英ガラス製造システムの様々な部材を概略的に示す図
図3】蒸発チャンバーを概略的に示す図
【実施例】
【0039】
ここでの本発明による方法の出発点は、主成分D4を含有するSiO2供給蒸気107より成るガス流の形成である。ガス流を反応ゾーンに供給し、そこでSiO2供給蒸気が、非晶質SiO2粒子を形成しながら、熱分解、酸化又は加水分解によってSiO2に変換される。非晶質SiO2粒子が堆積面160に引き続き堆積することで、多孔質のSiO2スート体200が形成し、これはガラス化によって合成石英ガラスを形成する。ここで、特に300mmを上回る外径を有する大きい体積のシリンダー状のスート体200の製造を可能にするために、本発明は、加熱されたSiO2供給材料の蒸発が、SiO2供給材料を−殊に液状で−霧化して微細な液滴にする、膨張チャンバー内での注入段階を含み、ここで、該液滴は5μm未満、好ましくは2μm未満の平均直径を有することを開示している。
【0040】
図1に示した装置はSiO2スート体200の製造に用いられる。酸化アルミニウム製の担体管160に沿って、一列に配置された多数の火炎加水分解バーナー140が配置されている。より高い生産性を目的とする方法の変更態様の場合、1つだけバーナー140を用いる代わりに、多数の堆積用バーナーが用いられ、これらはスート堆積のために、一緒になったバーナー列として、回転する担体に沿って逆方向に往復運動し、ここで、各々のバーナー炎は担体管160の部分的な長さにのみ当てられる。
【0041】
SiO2供給材料105は、好ましくは、95質量%を上回る、有利には98質量%を上回る、殊に99.5質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4を有し、該供給材料105は、反応ゾーンにガス状で供給し、その際に酸化及び/又は加水分解及び/又は熱分解によってSiO2に分解する。反応ゾーンは、例えばバーナー炎又はプラズマである。反応ゾーン内ではSiO2粒子148が発生し、該粒子148はSiO2スート体を形成しながら堆積面160に層状で沈積する。SiO2粒子148自体は、ナノメートル領域の粒径を有するSiO2一次粒子のアグロメレート又はアグリゲートの形で存在する。
【0042】
火炎加水分解バーナー140は、共通のバーナーブロック141に取り付けられており、これは担体管160の縦軸161と平行に、縦軸161に対して固定されている2つの変向点の間で往復運動し、かつ矢印の向き142で示されるように、該縦軸に対して垂直に移動可能である。バーナー140は、石英ガラスから成る;その互いの平均間隔は15cmである。
【0043】
火炎加水分解バーナー140には、そのつどバーナー炎143が配置されており、これは本発明に従って反応ゾーンを表す。そこではSiO2粒子が形成され、かつその縦軸161を中心に回転する担体管160のシリンダージャケット面に堆積されることで、層状に350mmの外径を有するスート体200が作り上げられる。堆積プロセスの間、スート体表面200に、約1200℃の温度が生じる。火炎加水分解バーナー140には、そのつど燃料ガスとして酸素と水素を供給し、並びにSiO2粒子を形成するための供給材料として供給蒸気107を供給する。本発明に従って、ポリアルキルシロキサンとの用語は、ポルアルキルシクロシロキサンのみならず、それらの線状同族体も包含している。
【0044】
95質量%を上回る、有利には98質量%を上回る、殊に99.5質量%を上回るポリアルキルシロキサンD4より成るSiO2供給蒸気107の製造は、液状混合物用の貯蔵容器110、液体ポンプ122、液体の流量計123、窒素−キャリアーガス流152の供給を制御するためのMFC(マスフローコントローラー)124、及び噴霧ノズル128を備えた加熱式蒸発チャンバー125−膨張チャンバーとも呼ぶ−を含む蒸発器システムによって行う。貯蔵容器110、ポンプ122及び噴霧ノズル128は、たわみ金属管により互いに接合されている。貯蔵容器110を、130〜170℃の温度に加熱し、そして加熱された液体をポンプ122により流量計123に通し、実際の配量で噴霧ノズル128に供給する。噴霧ノズルにおいて及び噴霧ノズルにより、SiO2供給材料を霧化して微細な液滴−SiO2液滴とも呼ぶ−にし、その際にSiO2粒子は、5μm未満、好ましくは2μm未満の平均直径を有する。この場合、流量計123と噴霧器128との間の接合管には、SiO2供給材料105及び/又はSiO2供給蒸気107及び/又はSiO2粒子の組成をモニタリングするための濃度検出器を準備していてよい。
【0045】
噴霧器128−噴霧ノズルとも呼ぶ−は超音波噴霧器であってよい。この噴霧ノズル128は、液状のSiO2供給材料が微細な液滴へと霧化されて、その際に液滴が、5μm未満、好ましくは2μm未満の平均直径を有することを保証する。設計に応じて、SiO2供給材料105及び/又は液滴に窒素−キャリアーガス流を、MFC 123を介して1.5bar〜5barの圧力で供給してよい。好ましい1つの実施形態においては、噴霧ノズル128は、SiO2供給材料105を霧化して1μmの最大直径及び0.7μmの平均直径(d50値)を有する狭い粒径分布を有する微細な液滴にし、その直後にこれらの液滴を、注入段階において蒸発器120の膨張チャンバー125内に噴射する。蒸発器120は、195℃の内部温度を有しており、そのため微細な液滴はすぐに蒸発し、そして蒸気流を、固定されたフローディストリビューターに供給し、かつそこから媒体供給用の断熱されたたわみ管を介して個々の堆積用バーナー140に分配する。
【0046】
フローディストリビューターには、燃料ガスの酸素と水素並びに補助ガス(酸素)(これはバーナー炎143において供給材料の流と燃料ガスの流との間で用いられ、かつ早い段階での混合を妨げる)用の供給ラインも通じている。したがって、燃料ガスとSiO2供給蒸気107との混合は、バーナー炎143の高温ゾーン内でようやく行われる。堆積プロセスの完了後、多孔質のSiO2スートより成る管(スート管)が得られる。
【0047】
図2及び図3は、本発明による方法を利用した、石英ガラスを製造するためのシステム100を示す。この場合、SiO2供給材料105を加熱し、そして霧化を、超音波システムを有する噴霧ノズル128によって行う。該システム100は、貯蔵槽110を有し、そこから液状のSiO2供給材料105が、図示されていないポンプによって予熱装置115にポンプ供給される。公知の方法によって、液状のSiO2供給材料105は、予熱装置105において高温に加熱する。予熱装置115を貫流した後、液状のSiO2供給材料105は、噴霧ノズルにポンプ供給される。そこでは、次いで液体の霧化並びに膨張チャンバー内への液滴の注入が行われる。膨張チャンバー125においては、液状のSiO2供給材料からガス状のSiO2供給蒸気107への移行が行われる。管130を介して、SiO2供給蒸気107はバーナー140へと流れ、そこでSiO2供給蒸気は熱分解又は加水分解により変換されてSiO2粒子となる。
【0048】
予熱装置115は、供給部116及び排出部117を有する。供給部116を通して、SiO2供給材料105を、予熱装置115に供給する。予熱装置115の内部では、SiO2供給材料105の加熱が行われる。これは、熱油システム又は発熱体の使用によって予熱装置の壁で行われることができる。液状のSiO2供給材料105の均一な加熱を高温領域の回避下で達成するために、予熱装置115が、熱油チャネルに取り囲まれている流チャネルを有する場合に好ましいことが判明した。このようにして実現可能な液−液熱伝達により、液状のSiO2供給材料105の均一な加熱が達成される。この種の均一な加熱は、ポリアルキルシロキサンの温度依存性の化学反応が生じないことを保証する。加熱された液状のSiO2供給材料105は、予熱装置115から膨張チャンバー125に供給路145を通して排出する。
【0049】
膨張チャンバー125は、SiO2供給蒸気が自由に膨張するための内容積を規定する。SiO2粒子をガス状の供給蒸気にするこの蒸発は、予熱装置115において、液状のSiO2供給材料の温度を、膨張チャンバーの運転圧力にてSiO2供給材料の沸点より高めると好ましいことが判明した。予熱装置115の有利な運転温度は、およそ180℃である。雰囲気圧力下でのD4の沸点は、およそ175℃である。液状のSiO2供給材料が沸騰することを回避するために、予熱装置115において逆圧が必要とされる。このようにして、液状の反応物質は、過冷却(圧縮)された液体として予熱装置115に保持される。
【0050】
図3がはっきりと示しているように、液状のSiO2供給材料は、予熱装置115から供給路145を通って膨張チャンバー125の内部空間に流れる。予熱装置115は、液状のSiO2供給材料105を、これがほぼ完全に気化するように十分に加熱し、その一方で、この圧力は膨張チャンバー125の内部空間に入ると降下する。このような迅速な蒸発は、予熱装置115が、液状のSiO2供給材料の温度を、膨張チャンバー125の運転圧力にてSiO2供給材料の沸点より高めた場合にのみ行われる。SiO2供給材料の沸点より高められる場合に好ましいと判明した。したがって、すぐに蒸発するSiO2供給材料の量は、予熱装置115において液状のSiO2供給材料に供給される加熱量に依存する。
【0051】
選択的に、SiO2供給材料105を加熱せずにシステム100を利用することも可能である。この場合、SiO2供給材料の霧化は、該SiO2供給材料を高温に加熱することなく単に噴霧ノズルを用いてのみ行われる。付加的な熱の導入は、この場合、例えば噴霧ノズル128を通して同様に導かれるキャリアーガスによって行うことができる。基本構造について、このような実施の変形例は、予熱装置115を必要としないという点でのみ、図3に示したものとは異なる。
【0052】
希釈剤152として、殊に窒素が好ましいと判明した。例えばアルゴン又はヘリウムといった他の希釈剤も、これが所望されている場合には使用してよい。これらは、ポリアルキルシロキサンに対して不活性に挙動するガスであり、そのため液体とキャリアーガスとの、殊に加圧下及び高温下での酸化反応、重合反応又は分解反応、ひいては供給材料の組成の再現可能ではない変化が回避されることになる。希釈剤を導くことによって、膨張チャンバー125内での液状のSiO2供給材料−ここではSiO2供給材料の液滴−の分圧は減少し、そのため該供給材料の露点が下がる。これにより予熱装置115内でSiO2供給材料を高温に加熱する必要がなくなる。SiO2供給材料からSiO2供給蒸気への完全な変換を保証するのには、むしろ130℃から170℃の間の温度で十分である。ここでの目的は、SiO2供給材料の蒸発が、供給材料を液状で霧化して微細な液滴にする注入段階と、微細な液滴を高温のキャリアーガスと接触させ、しかし膨張チャンバー125の壁とは接触させずに、素早くかつ効果的に完全に気化させる蒸発段階とを含むことである。
【0053】
図3は、本発明による蒸発をはっきりと示す。加熱されたSiO2供給材料105は、供給管145を通して膨張チャンバー125に供給する。膨張チャンバー125の内部における供給管145の終端で、該供給管145は、ノズル状の噴霧ノズル128を有する。噴霧ノズル128−好ましくは超音波噴霧器である−により、液状のSiO2供給材料105を、5μm未満、有利には2μm未満、殊に1μm未満の平均直径を有する微細な液滴へと霧化する。一連の測定から、特に有利なのが0.5μmから20nmの間(d50値)であることがわかった。ここで、メジアン径又はd50値は、平均粒径の尺度として最も重要なパラメーターである。d50値は、液滴の50%がd50より細かく、かつ残りの50%がd50より粗い値を表している。
【0054】
噴霧ノズル128から出る際に起こる圧力降下によって、液滴の本質的な部分が気相に変えられる。付加的に、媒体管150を通して、約130℃〜約200℃に予熱された窒素流が膨張チャンバー125及び/又は噴霧ノズル128に導かれる。好ましくは、窒素流は、本質的に−つまり±10℃−液状の供給材料105の温度に相当する温度を有する。窒素流は、液状のSiO2供給材料105の噴射方向とは逆向きに流してよく、そうして強い混合と十分な熱伝達が保証されることになる。
【0055】
液状のSiO2供給材料−液滴−の一部が、膨張チャンバー125の壁に沈積しかつ/又はそこで熱により気化させることは意図していない。管130を通して、バーナー140に向けてのガス状のSiO2供給蒸気107の排出を行う。バーナー140では、熱分解、酸化又は加水分解によりSiO2供給蒸気107がSiO2粒子148−SiO2又はスート又はSiO2スートとも呼ばれる−に変換される。
【符号の説明】
【0056】
100 システム
105 SiO2供給材料
107 SiO2供給蒸気
110 貯蔵槽/貯蔵容器
115 予熱装置
116 供給部
117 排出部
120 蒸発器/蒸発器システム
122 液体ポンプ
123 流量計
124 MFC(マスフローコントローラー)
125 膨張チャンバー/蒸発チャンバー
126
28 噴霧ノズル
130 管
140 バーナー/火炎加水分解バーナー
141 バーナーブロック
142 140の動作
143 バーナー炎
145 供給管
148 SiO2スート
150 媒体管
151 貯蔵容器
152 希釈剤
160 堆積面/担体管
161 160の縦軸
200 スート体
図1
図2
図3